説明

界面にてポリカーボネートを重合する方法において、アミン触媒を再利用する方法

本発明は、界面にてポリカーボネートを重合する方法において、カップリング触媒、好ましくはアミン触媒を再利用するための改良方法に関する。詳細には、このアミン触媒は酸性洗浄溶液中で再利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年11月24日出願の米国仮出願番号No.61/117,308の利益を享受する。
本発明は、界面にてポリカーボネートを重合する方法において、アミン触媒を再利用するための改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートを製造するための界面重合において、有機溶媒の存在下、界面反応条件においてビスフェノールとフェノール連鎖停止剤の混合物がホスゲン化される。ビスフェノールはアルカリ金属塩として水相中に存在し、ホスゲンは有機相に溶解される。連鎖成長反応は3級アミンのようなカップリング触媒によって強力に促進される。この連鎖成長反応は全ての反応性末端基、例えばクロロホルメート末端基が反応した後に終了する。
【0003】
重合工程が終了後、ポリカーボネート樹脂を含む有機相が水相から分離される。通常、アミン触媒は希塩酸のような酸水溶液による抽出によってポリカーボネート樹脂を含む有機相から除去される。ここで、酸性洗浄水はアミンヒドロクロリドとしてアミン触媒を含んでいる。
【0004】
環境及び経済的な観点から、希水性洗浄水からアミン触媒を回収しないことは望ましくない。アミン触媒を回収するための多くの多段階方法が報告されてきた。図1は、界面にてポリカーボネートを製造する方法においてアミン触媒を回収する従来の方法を、フローチャートの形態で示している。USP5,759,406には、アミン触媒の塩を吸着性樹脂に吸着させ、他のイオン性物質から分離させ、次いで第2の水溶液によって吸着された化合物を脱離させることによって、アミン触媒の塩を回収する方法が開示されている。しかしながら、USP5,759,406には第2の水性洗浄液からアミン触媒をいかに回収するかについては記載されていない。JP2002-356549及びJP2001-164033には、(1)アミン触媒の塩を含む酸性洗浄液を中和すること、次いで(2)費用がかかりかつエネルギーを大量消費する蒸気蒸留工程を用いて水溶液からアミン触媒を回収することからなる2段階方法が開示されている。JP2001-329059には、アミン触媒を回収する2つの方法が開示されている。第一の方法は、(1)アミン触媒の塩を含む酸性洗浄液を中和すること、及び(2)得られた中和されたアミン触媒を含む水溶液を有機溶媒で抽出し、次いでアミン触媒を含む有機溶液を界面ポリカーボネート製造方法に戻すことからなる2段階方法である。また第二の方法は、(1)酸性洗浄液を中和してアミン触媒を含む水溶液を形成すること、(2)中和された水溶液からアミン触媒を抽出すること、次いで(3)蒸留によりアミン触媒から有機溶媒を分離させること、の3段階方法である。しかしながら、これらの方法には欠点があることが示された。2段階方法では、アミン触媒が有機溶媒、例えば塩素化炭化水素と反応して4級アンモニウム塩化物を形成する副反応が存在する。重合工程に戻した場合、少量であっても4級アンモニウム塩化物は熱及び加水分解不安定性を引き起こし、カーボネート樹脂の着色及び/又は曇りを高め、遊離ビスフェノール及びフェノールヒドロキシル基の含量を高め、分子量を低下させ、及び/又は粘度を低下させることになる。そのような4級アンモニウム塩はポリカーボネート溶液から完全に除去することは困難であることが知られており、従って最終ポリカーボネートに含まれると前記欠点を引き起こすことになる。3段階方法は4級アンモニウム塩化物を形成する可能性を避けるが、費用がかかりかつエネルギーを大量消費する蒸留工程を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、(1)環境に対しての潜在的損失および4級アンモニウム塩の形成を最小にする、再使用可能なアミン触媒をより簡潔で、より効率的で、かつコスト的に有効に回収するシステム、及び(2)安定性が向上しかつ着色及び/又は曇りのより少ないポリカーボネート樹脂を提供する、界面にてポリカーボネートを製造する方法におけるアミン触媒を再使用する改良方法に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様において、本発明は、界面にてポリカーボネートを製造する方法において、酸性水溶液中のカップリング触媒、好ましくはアミン触媒を再利用する方法である。
【0007】
第二の態様において、本発明は、界面重縮合反応によりカップリング触媒を用いて、二価フェノール、カーボネート前駆体、及びモノフェノール連鎖停止剤よりポリカーボネート樹脂を製造するための改良方法であって、以下の工程、
(a)二相反応混合物を用いてカーボネート前駆体と二価フェノールを反応させてカーボネートオリゴマーを形成すること、ここでこの反応混合物は水性のアルカリ性相と不混和性の有機相とを含み、カーボネート前駆体は有機相に溶解され、二価フェノールの塩とモノフェノール連鎖停止剤の塩は水性相に溶解されている、
(b)カップリング触媒の存在下においてカーボネートオリゴマーを重合させてポリカーボネート樹脂を形成すること、
(c)水性相と有機相を分離させること、ここで有機相はカップリング触媒とポリカーボネート樹脂を含む、
(d)分離させた有機相を酸性洗浄水溶液で処理して、この酸性洗浄水溶液に可溶であるカップリング触媒の塩を形成することによりアミンカップリング触媒を除去すること、
(e)ポリカーボネート樹脂を回収すること、
を含み、さらに以下の工程
(i)カップリング触媒の塩を含む酸性洗浄水溶液を重合工程(b)に戻して再利用すること
を含む、方法である。
【0008】
第三の態様において、本発明は、上記発明においてカップリング触媒の塩を含む酸性洗浄水溶液を塩基性材料、好ましくは苛性溶液、で処理して溶液のpHを少なくとも12に調整し、カップリング触媒を含むアルカリ性洗浄水溶液を形成し、このカップリング触媒を含むアルカリ性洗浄水溶液を重合工程(b)に戻して再利用すること、をさらに含む。
【0009】
本発明の好ましい態様において、二価フェノールはビスフェノールAであり、カーボネート前駆体はホスゲンであり、モノフェノール連鎖停止剤はフェノール、パラ−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、又はパラ−t−オクチルフェノールであり、アミンカップリング触媒は3級アミンであり、より好ましくはトリエチルアミンである。
【0010】
本発明の他の態様において、この方法は分枝ポリカーボネート樹脂を提供する分枝剤をさらに含む。
【0011】
本発明の他の態様は、上記の方法により製造されるポリカーボネート樹脂又は分枝ポリカーボネート樹脂である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】界面にてポリカーボネート樹脂を製造する方法においてカップリング触媒を回収するための従来の方法のフローチャートである。
【図2】界面にてポリカーボネート樹脂を製造する方法においてカップリング触媒を再利用するための本発明の改良方法の一態様のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、界面にてポリカーボネートを製造する方法において、有機相の処理に用いられる酸性水性洗浄水中からカップリング触媒、好ましくはアミンカップリング触媒を再利用する方法である。
【0014】
図1は、工程20の重合の前に工程10においてホスゲン化反応が行われる、従来の界面にてポリカーボネートを製造する方法を、フローチャートの形態で示している。ホスゲン化反応10において、水不混和性有機液体に溶解されたカーボネート前駆体、好ましくはホスゲンが二価フェノールの塩、通常は二ナトリウムビスフェノールAと反応され、反応性クロロホルメート末端基を有するカーボネートオリゴマーを形成する。この有機液体は通常、塩素化炭化水素、例えばジクロロメタンであるが、エーテル、エステルもしくはケトンのような他の有機液体も用いることができる。ホスゲンは、ビスフェノールに対して化学量論過剰、通常10〜40パーセント過剰で用いられる。ホスゲン化の間、2相反応混合物の水相は通常アルカリ性pHであり、好ましくは9〜14であり、ビスフェノール材料、一般にはビスフェノールAの塩、例えばナトリウムビスフェノレートのようなビスフェノレート塩を含む。このフェノレートは水溶液の総重量を基準として、10〜25重量パーセントの量で溶解される。
【0015】
水相は通常、一官能性フェノール化合物、例えばフェノールもしくは4-tert-ブチルフェノールのような連鎖停止剤、及び所望により多官能性フェノール化合物のナトリウム塩のような分枝剤を含む。この連鎖停止剤及び所望の分枝剤はカップリング触媒の前又は同時に加えてよい。
【0016】
ホスゲン化反応の間、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムのような塩が形成し、水相に溶解する。形成したカーボネートオリゴマーは有機相に入る。
【0017】
ホスゲン化後、カップリング触媒、通常はアミンカップリング触媒、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、もしくはトリブチルアミンのような3級脂肪族アミンが反応混合物に加えられる。ジメチルピリジンのような環式3級アミンもカップリング触媒として用いてよい。反応性カーボネートオリゴマーは、重合工程20の間、カップリング触媒の存在下において重合される。
【0018】
再び図1を参照し、ホスゲン化反応終了後、工程30において水相と有機相が分離される。この2つの相を有効に分離する方法はよく知られており、本発明において用いることができる。この分離に用いる特定の条件及び方法は本発明の実施において重要ではなく、どのようなものも用いることができる。この分離は通常及び好ましくは、遠心を用いて行われる。
【0019】
図1に示す方法において、分離された水相31(これを排水とよぶ)が排水収集工程60に送られる。この排水はホスゲン化反応の間に形成された塩、通常はNaCl及びNa2CO3を含むが、少量の有機相、反応媒体、並びにビスフェノール及び/又は他のフェノール化合物をも含む。
【0020】
分離された水相中の特定の材料及びその量は反応に用いた反応条件及び原料によって異なる。フェノール化合物もしくは成分は通常、ビスフェノール並びにカーボネートオリゴマー及びポリマーである。他のフェノール化合物はフェノール、パラ3級ブチルフェノール、1,1,1-トリス(ヒドロキシフェニル)エタン及び塩素化、臭素化、もしくはメチル化ビスフェノールを含む。分離された水相は、有機反応液体で飽和され、少量の(例えば0.1重量パーセント未満)カップリング触媒を含む。さらに、少量のフェノール停止剤(例えばフェノール)、コモノマー(用いた場合)、及び分枝剤をも含み得る。
【0021】
分離された有機相32は、有機反応溶媒、ポリカーボネート樹脂、並びにカップリング触媒及びビスフェノレート塩、典型的にはナトリウムビスフェノレートを含む。カップリング触媒は通常、分離された有機相の総重量を基準として0.05〜1重量パーセントの量である。ビスフェノレート塩(例えばナトリウムビスフェノレート)の残留量は通常0.1重量パーセント未満である。
【0022】
分離された有機相は工程40において洗浄される。有機相を洗浄する方法は当該分野において公知であり、本発明においては問題ではない。通常、有機相は希酸(例えば、0.5〜30重量パーセント塩酸もしくはリン酸溶液)により洗浄されてアミンカップリング触媒が抽出され、次いで純水で1〜5回洗浄される。この水洗浄は、ロータリーミキサー及び液−液遠心もしくは遠心抽出器のような従来のミキサー−セトラータイプの分離器で行われる。
【0023】
図1に示す従来の方法において、酸性洗浄水41及び洗浄水42は排水収集工程60に送られる。洗浄後の洗浄水42は、フェノール化合物、カップリング触媒、及び所望により少量の有機液体、水溶性ポリカーボネートオリゴマー及び分散したポリカーボネート粒子を含む。抽出工程70において、排水、及び/又は酸性洗浄水、及び/又は洗浄水を含む水性混合物溶液は、苛性もしくは他の適当な塩基性材料で処理され、この水性混合物溶液を12以上のpHを有しかつアミンを含まないアルカリ性水性混合物溶液に調整される。
【0024】
この抽出は抽出カラム又は遠心抽出器において行われる。この抽出は、有利には、Podbielniak遠心抽出器において行われる。撹拌器、回転ポンプ、バルブ等が混合、重力沈降、凝集、ヒドロサイクロンもしくは液体/液体遠心を行うミキサー−セトラー装置のような抽出に従来より用いられている他の装置も用いてよい。この抽出は有利には、液体−液体抽出により行われる。この抽出は、一工程又は多工程抽出で行ってよい。通常、これは水相中のフェノール成分、水溶性オリゴマー、及び分散したポリカーボネート粒子のレベル、及び所望の精製度(すなわち、処理された水の所望の純度)によってきまり、多工程抽出は、水性液体が比較的高い濃度のフェノール成分、水溶性オリゴマー、分散したポリカーボネート粒子を含む場合、及び/又は高純度が必要である場合に用いられる。
【0025】
有機抽出溶液の流れに対して流れる水性液体により向流形態で抽出を行う場合、交差流もしくは同時抽出が可能である。向流抽出が好ましい。抽出は、水性液体中のフェノール成分、水溶性オリゴマー、分散したポリカーボネート粒子のレベルが望ましいほど低くなるまで行われる。通常、抽出はフェノール成分、水溶性オリゴマー、分散したポリカーボネート粒子が100ppm未満、好ましくは10ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.005ppm未満となるまで行われる。
【0026】
抽出工程70において、フェノール材料、水溶性オリゴマー、及び分散したポリカーボネート粒子が、アミンカップリング触媒を含む有機液体による抽出によって洗浄水および排水から除去される。さらなる処理を容易にするため、洗浄水及び/又は排水の処理に用いられる有機液体は、揮発分除去工程50において除去される反応層52並びに有機反応相10に用いられる有機液体であることが好ましい。有機液体、カップリング触媒、及び抽出されたもしくは除去されたフェノール材料は、図1に示すように反応混合物、重合工程20に戻される。リサイクルシステムにおける滞留時間及び/又は貯蔵時間が長すぎる場合には、アミンカップリング触媒が塩素化炭化水素溶媒、例えばジクロロメタンと反応して望ましくない4級アンモニウム塩を形成するため、直接20に戻すことが望ましい。有機液体並びに少量のカップリング触媒を含む処理された水は、72から蒸気ストリップ工程80に送られる。
【0027】
蒸気ストリップは当該分野において公知の方法である。これは、水性液体から蒸気の形態で残留有機液体及びカップリング触媒を除去する条件で行われる。通常、蒸気ストリップ操作は、水性液体を100〜200℃の温度で蒸気にさらすことにより行われる。蒸気ストリップ操作において気化された有機液体及びカップリング触媒は凝縮し81、処理された洗浄水及び排水から抽出工程70に戻される。または、除去された有機液体及びカップリング触媒81は、全体としてもしくは一部が、反応混合物に、好ましくは重合反応20に戻される。
【0028】
蒸気ストリップの後、水相82を捨てる。フェノール成分、水溶性オリゴマー、分散したポリカーボネート粒子の濃度が十分に低い場合、この水相を、更に処理することなく海もしくは汽水のような塩含有環境に放出してもよい。または、この水相を、クロロ−アルカリ電気分解のような他の操作において用いてもよい。
【0029】
洗浄後、ヘキサン等のポリカーボネートの非溶媒による沈殿、又は揮発分除去(すなわち、溶媒の蒸気蒸留又は溶媒の蒸発)のような、当該分野において公知の方法を用いて回収工程50において有機相からポリカーボネートを単離する。工程50からの水51(これは通常、有機液体反応媒体で飽和している)は、好ましくは洗浄部位40または蒸気ストリップ80のようなこの方法の異なるポイントに戻され、又は図1に示すように抽出工程70に送られる。
【0030】
図2に示す本発明の態様において、排水31及び洗浄水42は従来の方法、すなわち排水収集し60、次いで抽出及び/又は蒸留、と同様にして処理する。図1では洗浄水41及び42と排水31の両者を同時に処理しているが、図2に示すように、本発明では、酸性洗浄水41は重合工程20に戻され、カップリング触媒を含む溶液の中和、抽出、蒸留、及び単離工程が排除されている。有機液体73は好ましくは、この方法の異なるポイント、例えば重合工程20に戻され、又は蒸気ストリップ工程に送ってもよい。
【0031】
本発明の他の態様において、塩酸塩の形態にあるアミンカップリング触媒を含む酸性洗浄水41は他の排水と混合されないが、苛性もしくは他の塩基性材料により処理され、そのpHを12以上に調整され、アミンが除去される。次いでこの混合物は重合工程20に直接送られる。換言すると、カップリング触媒の塩を含む酸性洗浄水を塩基性材料で処理して溶液のpHを少なくとも12に調整すると、カップリング触媒を含むアルカリ性洗浄水溶液が形成され、このカップリング触媒を含むアルカリ性洗浄水溶液は重合工程20に戻される。
【0032】
図2の本発明の態様に示す様々な工程に関して、ホスゲン化及び重合は当該分野において公知の従来の方法によって行ってよい。例えば、条件及び原料を含むこの方法は、Ullmann's Encyclopedia of Inductrial Chemistry, 5版、Completely Revised Eddition, 21A巻:Plastics, Properties and Testing to Polyvinyl Compounds, 210及び211頁に説明されている。界面におけるポリカーボネート製造法のオリゴマー化及び重合に用いられる特定の条件及び方法は本発明の実施において重要ではなく、あらゆる方法を用いることができる。
【0033】
ポリカーボネートの製造(ホスゲン化及び重合の両方)は、回分式または連続で行うことができる。回分式製造法は撹拌タンク内で行われ、一方、より好ましい連続法は一連の撹拌タンク又は1以上のチューブ状反応器を用いる。通常、ホスゲン化及び重合は同じ反応容器で行われ、又はホスゲン化と重合の間で中間の精製もしくは他の工程を行うことなく実施される。
【0034】
本発明において用いられる二価フェノールはカーボネート重合の分野において一般に知られており、縮重合条件において反応性である基のみが2つのフェノールヒドロキシル基である。有用な二価フェノールは、例えば一般式HO−Z−OH(式中、Zはフェノール酸素原子が直接結合している、炭素数6〜30のモノもしくはポリ芳香族ジラジカルである)を有するものである。この芳香族基は1以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、また1以上の基、例えば1以上の酸素、窒素、硫黄、リン及び/又はハロゲン、1以上の一価炭化水素基、例えば1以上のアルキル、シクロアルキルもしくはアリール基及び/又は1以上のアルコキシ及び/又はアリールオキシ基で置換していてもよい。好ましくは、二価フェノールHO−Z−OHの2つのヒドロキシ基は芳香族環においてパラ位に配置されている。
【0035】
本発明の方法に用いられる二価フェノールは、US-A-2,999,835、US-A-3,038,365、US-A-3,334,154及びUS-A-4,299,928に開示されているようなビス(アリールヒドロキシフェニル)アルキリデン(その芳香族及び脂肪族置換誘導体を含む)、及びUS-A-3,169,121に記載されているような芳香族ジオールを含む。
【0036】
式HO−Z−OHを有する二価フェノールの好ましい例は、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、例えば9,9-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン;ジヒドロキシベンゼン及びハロ及びアルキル置換ジヒドロキシベンゼン、例えばヒドロキノン、レゾルシノール、もしくは1,4-ジヒドロキシ-2-クロロベンゼン;α,α'-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン;ジヒドロキシビフェニレン、例えば4,4'-ジヒドロキシジフェニル;ハロ及びアルキル置換ジヒドロキシビフェニレン;ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、もしくは最も好ましくは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」);アルキル、アリールもしくはハロ置換ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、例えば1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(「ビスフェノールAP」)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「テトラブロモビスフェノールA」)、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「テトラメチルビスフェノールA」);所望によりアルキル、アリールもしくはハロ置換したビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン;所望によりアルキル、アリールもしくはハロ置換したビス(ヒドロキシフェニル)エーテル;所望によりアルキル、アリールもしくはハロ置換したビス(ヒドロキシアリール)スルホン、好ましくはビス(ヒドロキシフェニル)スルホン;又はビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシドである。好適な二価フェノールの他の例は、US-A-4,627,949、第2欄68行〜第3欄1−22行、US-A-4,962,144、第2欄17−46行、及びEP423,562、2頁24−55行及び3頁1−19行に示されている。2種以上の二価フェノールの混合物を用いてもよく、例えば1〜99重量パーセントのビスフェノールAと99〜1重量パーセントの他の二価フェノール、例えば9,9-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンの混合物を用いてもよい。
【0037】
本発明におけるポリカーボネートの製造に適した好ましい二価フェノールは、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、テトラブロモビスフェノールA、及びテトラメチルビスフェノールAである。最も好ましい二価フェノールはビスフェノールAである。
【0038】
本発明において適したカーボネート前駆体は、二価フェノール化合物のアニオンによる攻撃においてカルボニル炭素から移動する脱離基を含み、必ずしも限定するものではないが、カルボニルハロゲン化物もしくはアシルハロゲン化物を含み、最も好ましくはホスゲンである。このカーボネート前駆体、好ましくはホスゲン、は水性アルカリ性溶液中において二価フェノール化合物と接触し、水不混和性非反応性有機溶媒中の溶液として加えられ、水相とよく混合され、又は気体の形態で反応混合物中に吹き込んでもよく、有機相に溶解する。
【0039】
連鎖停止剤は、オリゴマーもしくはポリマー鎖の末端に残っている未反応ヒドロキシルもしくはカルボン酸エステル基を移動させることができるアニオンを生じさせる、官能性基(ヒドロキシル基)を含む一官能性化合物である。本発明においてポリカーボネートの製造に有用な停止剤の例は、フェノール及びその誘導体、飽和脂肪族アルコール、亜硫酸金属塩、アルキル酸塩化物、トリアルキルもしくはトリアリールシラノール、モノハロシラン、アミノアルコール、トリアルキルアルコール、アニリン及びメチルアニリンである。これらのうち、フェノール、パラ-t-ブチルフェノール(PTBP)、p-クミルフェノール及びパラ-t-オクチルフェノール(4-(1,1,2,2-テトラメチルブチル)フェノールもしくはPTOP)が最も好ましい。
【0040】
所望の分子量及び分枝度を有する分枝ポリカーボネートを得るために、分枝剤(通常3以上のヒドロキシもしくは縮合反応性基を有するフェノール)を用いることができる。好適な分枝剤は1以上の以下のものである。フロログルシン;フロログルシド;2,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン-3;4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2;4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ペンテン-2;4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン;1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン;1,3,5-トリ(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾール;1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン;2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール;テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン;トリスフェノール;ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン;1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン;α,α',α"-トリ(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン;3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインドール;イサチンビスフェノール;5-クロロイサチン;5,7-ジクロロイサチン;5-ブロモイサチン;トリメリット酸;ピロメリット酸;ベンゾフェノンテトラカルボン酸;並びにこれらの酸塩化物もしくは他の縮合反応性誘導体、例えばトリメリティックトリクロリド、トリメソイルクロリド、及びトリメリティック無水クロリド。特に好ましい分枝剤は、フロログルシン;フロログルシド;1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン;トリメリット酸;トリメリティックトリクロリド;ピロメリティック酸;ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸塩化物;2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール及び1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼンを含む。
【0041】
本発明において用いる分枝カーボネートポリマー成分中の分枝剤のレベルは、ジヒドロキシ化合物1モルあたり約0.005〜約1モル、好ましくは約0.01〜約0.8モル、より好ましくは約0.1〜約0.6モルの分枝剤である。
【0042】
好適なカップリング触媒は、3級アミン、例えばトリエチルアミン(TEA)、ジメチルアミノピリジンもしくはN,N-ジメチルアニリン;環式アザ化合物、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジンもしくは1,2-ジメチルイミダゾール;イミノエーテルもしくはイミノカルボキシレート化合物、例えば1-アザ-2-メトキシ-1-シクロヘプテンもしくはt-ブチルシクロヘキシルイミノアセテート;又はホスホニウム、スルホニウム、アルソニウムもしくは4級アンモニウム化合物、例えばセチルトリエチルアンモニウムブロミドを含む。3級アミンが本発明において好ましいカップリング触媒であり、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、及び4-N,N-ジメチルアミノピリジンを含む。
【0043】
この方法において、カップリング触媒は通常、二価フェノール化合物の1モルあたり約0.001〜約0.1モルの量である。この触媒は、二価フェノール化合物の1モルあたり少なくとも約0.0025、好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.015モルの量で加えられる。この触媒は、二価フェノール化合物の1モルあたり約0.15モル以下、好ましくは約0.1モル以下、より好ましくは約0.075モル以下の量で加えられる。触媒の一部もしくはすべては重合の開始時に加えられる。所望により、このカップリング触媒の添加は重合の後半において分けて加えられる。
【実施例】
【0044】
本発明の界面にてポリカーボネートを製造する方法の進歩性を、実施例1〜4並びに比較例A及びBにより示す。以下の例において、ビスフェノールA、苛性アルカリ、水、ホスゲン、ジクロロメタン、及びフェノール連鎖停止剤を従来の界面ポリカーボネート製造方法において反応させる。すべての成分を混合した後、撹拌反応器から二相反応混合物のサンプルを取り出す。水相と有機相を分離させる。有機相は、クロロホルメート含量が約10重量パーセントであるカーボネートオリゴマーを14重量パーセント服務。水相のpHは約13である。本発明の実施例1〜4の各サンプル並びに比較例A及びBの各サンプルについて、各々の相75mLを250mLの撹拌反応フラスコに入れ、合計150mLの反応混合物を得る。実施例1及び3並びに比較例Aは350回転/分(RPM)の撹拌速度で、実施例2及び4並びに比較例Bは500rpmの撹拌速度で行う。撹拌開始後、カップリング触媒溶液を各反応フラスコに入れる。
【0045】
比較例A及びB用のカップリング触媒溶液は、ジクロロメタン中の10重量パーセントのトリエチルアミンの溶液であり、従来の界面ポリカーボネート製造方法においてカップリング触媒をいかに加えるかを示している。ジクロロメタン中の10パーセントのトリエチルアミン2.5mLを加え、有機相に対して約3300ppmのトリエチルアミンの濃度を得る。
【0046】
実施例1及び2用のカップリング触媒溶液は、酸性洗浄水41を表す。これはpHが0.3であるトリエチルアミンヒドロクロリドの4.6重量パーセント水溶液である。この酸性トリエチルアミンヒドロクロリド溶液7mLを加え、有機相に対して約3300ppmのトリエチルアミン濃度とする。
【0047】
実施例3及び4用のカップリング触媒は、中和した酸性洗浄水を表す。これはpHが8.3である水溶液を与える、30重量パーセントの苛性アルカリの添加によってpHが0.3である4.6重量パーセントのトリエチルアミンを含むトリエチルアミンヒドロクロリドの水溶液の中和により得られる。7mLの中和された酸性トリエチルアミンヒドロクロリド溶液を加え、有機相に対して約3300ppmのトリエチルアミン濃度を得る。
【0048】
カップリング触媒溶液を撹拌反応混合物に加えてから開始し、1分間隔で反応混合物のサンプルを取り出し、クロロホルメートについてテストし、重合度を調べる。
【0049】
クロロホルメートの量は以下の方法により決定する。
4-(4-ニトロベンジル)ピリジンで処理したクロロホルメートは反応すると、黄橙色の錯体を生ずる。この錯体は438nmの波長において分光的に検出することができる。カーボネートエステルオリゴマー及び/又はポリマーの含量が公知である各例の有機相のサンプル20mLに、1重量パーセントの4-(4-ニトロベンジル)ピリジンを含む2mLのジクロロメタンを加え、5分間よく振盪する。その後、この溶液を石英製のキュベット(10-50mm)に入れる。ポリマーもしくはオリゴマーを含まないブランクに対して438nmでの光吸収を測定する。フェニルクロロホルメートを用いて調製したスタンダードにより吸光係数をもとめる。
【0050】
カップリング反応終了後、有機相及び水相を分離させ、有機相を洗浄し、ジクロロメタンの蒸発によりポリカーボネート樹脂を単離する。得られたポリカーボネート樹脂の分子量を測定する。
【0051】
実施例1〜4並びに比較例A及びBの時間に対するクロロホルメート濃度及び得られるポリカーボネート分子量を表1に示す。この表1において、TEAはトリエチルアミンであり、CH2Cl2はジクロロメタンであり、クロロホルメート濃度はオリゴマー/ポリマーについてであり、Mn及びMwはそれぞれ数平均分子量及び重量平均分子量であり、ダイオードアレイ検出器(DAD)及び粘度検出器を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定する。
【0052】
【表1】

【0053】
上記データより明らかなように、本発明の例(ならびに比較例)の完全なカップリングは2〜3分以内に達成され、比較例に比べて良好な分子量を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面にてポリカーボネートを製造する方法において、酸性水溶液中のカップリング触媒を再利用する方法。
【請求項2】
アミンカップリング触媒を用いて、二価フェノール、カーボネート前駆体、及びモノフェノール連鎖停止剤よりポリカーボネート樹脂を界面にて製造する方法であって、以下の工程、
(a)二相反応混合物を用いてカーボネート前駆体と二価フェノールを反応させてカーボネートオリゴマーを形成すること、ここでこの反応混合物は水性のアルカリ性相と不混和性の有機相とを含み、カーボネート前駆体は有機相に溶解され、二価フェノールの塩とモノフェノール連鎖停止剤の塩は水性相に溶解されている、
(b)カップリング触媒の存在下においてカーボネートオリゴマーを重合させてポリカーボネート樹脂を形成すること、
(c)水性相と有機相を分離させること、ここで有機相はカップリング触媒とポリカーボネート樹脂を含む、
(d)分離させた有機相を酸性洗浄水溶液で処理して、この酸性洗浄水溶液に可溶であるカップリング触媒の塩を形成することによりアミンカップリング触媒を除去すること、
(e)ポリカーボネート樹脂を回収すること、
を含み、さらに以下の工程
(i)カップリング触媒の塩を含む酸性洗浄水溶液を重合工程(b)に戻して再利用すること
を含む、方法。
【請求項3】
以下の工程、
(ii)カップリング触媒の塩を含む酸性洗浄水溶液を塩基性材料で処理して溶液のpHを少なくとも12に調整し、カップリング触媒を含むアルカリ性洗浄水溶液を形成し、このカップリング触媒を含むアルカリ性洗浄水溶液を重合工程(b)に戻して再利用すること
をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アミンカップリング触媒が3級アミンである、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
アミンカップリング触媒がトリエチルアミンである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
二価フェノールがビスフェノールAであり、カーボネート前駆体がホスゲンであり、モノフェノール連鎖停止剤がフェノール、パラ−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、又はパラ−t−オクチルフェノールであり、アミンカップリング触媒がトリエチルアミンである、請求項2記載の方法。
【請求項7】
分枝ポリカーボネート樹脂を提供する分枝剤をさらに含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項8】
塩基性材料が苛性溶液である、請求項3記載の方法。
【請求項9】
請求項2、3、又は6記載の方法により製造されるポリカーボネート樹脂。
【請求項10】
請求項7記載の方法により製造される分枝ポリカーボネート樹脂。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−509957(P2012−509957A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537528(P2011−537528)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/064521
【国際公開番号】WO2010/059544
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(510288530)スティロン ヨーロッパ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【Fターム(参考)】