界面の屈折調節レンズ(IRAL)
【課題】本発明は眼内レンズに関するものである。特に、本発明は、眼の毛様体筋または毛様体の張力もしくはそれ以外の何らかの調節力に反応して光屈折力を変動させることができる眼内レンズに関連している。
【解決手段】本発明のレンズは、一般に、界面レンズと呼ばれ、すなわち、屈折率が互いに異なる2種の液体相互の界面としてレンズ特性が規定されている、界面の屈折調節レンズ(IRAL)である。
【解決手段】本発明のレンズは、一般に、界面レンズと呼ばれ、すなわち、屈折率が互いに異なる2種の液体相互の界面としてレンズ特性が規定されている、界面の屈折調節レンズ(IRAL)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本件は2007年2月2日出願の2件の米国特許仮出願連続番号60/887,933号および60/887,928号の優先権を主張するものであるが、両出願の開示内容はそれぞれの全体がここに引例に挙げることにより(両仮出願のいずれか一方または両方に言及することで両出願の一部を構成している全ての引例を含めて)本件の一部を成すものとする。
【0002】
本発明は眼内レンズに関するものである。特に、本発明は眼の毛様体筋または毛様体の張力変動またはそれ以外の何らかの調節力の変動に応じて光屈折力を変動させることができる眼内レンズに関連している。本発明のレンズは広く調節用レンズのことを指している。
【背景技術】
【0003】
人間の眼の天然レンズは透明な水晶質体であり、虹彩の背後で、尚且つ、硝子液が満ちた空洞の正面に位置する後眼房として周知の領域の被膜嚢の内側に包含されている。この被膜嚢はその全面が毛様小帯と呼ばれる繊維によって毛様体筋に付着されている。ゲルが充満している硝子体はその背後に網膜を更に有しており、レンズを通過してきた光線がこの網膜上で合焦される。毛様体が収縮・弛緩することで被膜嚢とその中の天然レンズとを変形させることにより、多様な距離にある各物体から発した光線を網膜上で合焦させる。
【0004】
眼またはその周囲の透明膜からなる天然レンズが曇ると白内障が起こり、光の通過を遮蔽し、多様な程度の視力障害が生じる結果となる。患者のこのような症候を矯正する目的で、曇りが生じた天然レンズすなわち水晶体混濁部位を摘出して人工眼内レンズと置換する外科手術処置が施される。白内障外科手術中は、被膜嚢の前部が水晶体混濁部位と一緒に除去され、被膜嚢の後部で後水晶体包と呼ばれる部位は無傷のまま眼内レンズ(IOL)を移植するための支持部位として作用するように残すことがある。しかし、このような従来の眼内レンズには欠点があり、すなわち、屈折力が一定であるせいで、焦点距離を変動させる必要、例えば、読書をしたりコンピュータで作業をするといったような患者の必要に応じて焦点を変えることができない。
【0005】
眼に備わっている天然レンズの性能を複製しようと試みて、屈折力を変動させることができる多様なタイプの眼内レンズが従来から提案されてきた。このような調節用の眼内レンズは、当該技術で従来公知であるが、患者が焦点を合わせて複数の異なる距離に位置する多数の物体を明瞭に見ることができるようにする目的で、多様な設計のものがある。具体例は、米国特許第4,254,509号、米国特許第4,932,966号、米国特許第6,299,641号、および、米国特許第6,406,494号などのような公開公報に見ることができる。
【0006】
ギャラベット(Garabet)に交付された米国特許第5,443,506号は、レンズの2面の間の媒体を変えることで遠近調節を変動させるようにした可変焦点の眼内レンズを開示している。第5,443,506号特許のレンズには、眼内レンズの第1部分の水路を連結する、切れ目なく連続する複数の流れループが設けられている。これら連続する流れループは、水路を設けているのみならず、眼内レンズを眼の中に設置して保持する手段を提供している。或る実施例では、連続する流れループ(単数または複数)はレンズの触覚部を含んでおり、すなわち、レンズ本体部の支持構造体を含んでいる。
【0007】
米国特許第5,489,302号は、後眼房へ移植する調節用の眼内レンズを開示している。このようなレンズは短い管状の剛性フレームと、フレームの基部に取付けられている弾性膜とを備えている。フレームおよび膜は、気体を充満させた封鎖空間を画定している。フレームはその可撓性領域で触覚部により後水晶体包に取付けられている。眼の毛様体筋によって水晶体包が伸張すると可撓性領域が互いから引き離され、それにより、封鎖空間内の容積を増大させるとともに該空間内の圧力を減少させる。これが膜の曲率を変化させ、従って、レンズの屈折力を変動させる。
【0008】
米国特許第6,117,171号は、被膜剛性殻の内側に包含された、眼内環境の変化に実質的に反応しないようにされた調節用の眼内レンズを開示している。レンズは後水晶体包の内側に移植される構成になっており、可撓性の透明膜を備えていることで眼内レンズの内部を前後の別個の空間に分けているが、前後空間の各々が互いに屈折率が異なる液で充満されている。後空間の周辺は触覚部に付着状態であり、該触覚部は後水晶体包に付着している。眼の毛様体筋によって水晶体包が伸張すると触覚部と後空間周辺とが捻転分離され、後空間の容積を増大させるとともに前後の両空間の間の圧力差を変動させる。その結果、膜の曲率が変化し、従って、レンズの屈折力が変動する。
【0009】
眼内レンズの焦点を変動させるもう1つ別の取組みは、従来の硬質眼内レンズを形成するにあたり、可撓性の外側面をシリコーンなどのような素材から作ることである。次に、レンズの従来の硬質部と可撓性の外側面との間に水が注入される。水が外側の可撓性の層を伸張させて眼内レンズの曲率半径を変えることにより、レンズの屈折調節を変動させる。このような取組みの欠点の1つは、液源、液体ポンプ、および、流量制御弁の設けられている位置が全てレンズの内側でレンズの極めて近位になければならないことである。眼の水晶レンズの周辺領域は全く限られているので、液注入成分の大半はレンズそのものに接触供給される必要がある。更に、液を汲出すためにエネルギー源が設けられている必要がある。液を汲出すのに十分な強さの機械力を眼内で生成することはできないため、ポンプを作動させるのに外部電源が必要となる。このような外部電源は、通常は、ライフサイクルが限られているバッテリーを使って実現される。
【0010】
眼内レンズの屈折調節を変動させるために従来使用されてきた更にもう1つ別の取組みは、液晶素材で従来の眼内レンズを被覆することである。液晶を分極させるために、液晶素材に電圧源が印加される。液晶が分極すると液晶素材の屈折率が変動することにより、眼内レンズの屈折調節を変動させる。この種のシステムの主たる欠点の1つは、液晶素材を分極させるのに比較的大量のエネルギーを要することであり、その量は約25ボルトである。体内にそのレベルの電圧を生成する公知の方法は無いので、バッテリーなどのような外部電源が必要である。
【0011】
幾つかの従来の調節用眼内レンズは、屈折させるのに固体曲面に依存している。このように、光屈折力および屈折調節力の増大を誘導するのに相当十分なだけ曲率を変化させるのに要する力は、毛様体筋によって供与される力よりも遥かに大きく、老年用レンズでは特にこの傾向が強い。これ以外の調節用眼内レンズは、光軸に沿って眼内レンズ全体を変位させて屈折調節をもたらすことに関与している。これには比較的大きな力を要するのみならず、前眼房の空隙が不足しているせいで、光屈折をもっと大きく変動させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,254,509号
【特許文献2】米国特許第4,932,966号
【特許文献3】米国特許第6,299,641号
【特許文献4】米国特許第6,406,494号
【特許文献5】米国特許第5,443,506号
【特許文献6】米国特許第5,489,302号
【特許文献7】米国特許第6,117,171号
【特許文献8】米国特許公開第2004/0181279号
【特許文献9】米国特許第7,025,783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
可変調節を行える眼内レンズを提案しようとの前述の試みとそれ以外の先行技術の試みのシステムは大抵が複雑である。このような複雑なシステムはコスト高につくうえに製造が困難であり、人間の眼に実装するのは現実的ではない場合が多い。よって、現在の調節用レンズは屈折調節力を作用させることはほとんど無い(約1ジオプターから2.5ジオプター)。性能が大幅に改善された真の調節用レンズは少なくとも約4ジオプターの屈折調節力を示す必要があり、少なくとも約6ジオプターまたはそれ以上が好ましい。よって、より高いレベルの調節力を示し、人間の眼によって供与される力のみに依存して作動する、複雑ではない眼内レンズが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、先行技術のレンズおよびレンズ集成体の欠点に対処するにあたり、2種の互いに不相溶性の液と液との間に自然に設けられる界面に基づく新規な屈折システムを利用するものである。屈折力の相当な変化は、本発明を実施する場合は、微小な垂直方向力を付与するとともに力変化を供与することで達成することができるが、具体的には、力の付与および変動は毛様体筋または毛様体によって達成されるのであって、光軸に沿って眼内レンズを移動させる必要はない。
【0015】
本発明の眼内レンズは、内部で2種の不相溶性の液を互いに接触させてメニスカスを形成する水晶体嚢を備えている。これら2種の液と液の間の界面は屈折面として作用し、光を屈折させて網膜上の1点で合焦させる。メニスカス曲線を変化させ、従って、レンズ焦点を変化させる手段として、レンズ周辺に圧力を加える方法が採られるが、大抵は、レンズの触覚部によって圧力が加えられる。メニスカス曲率を相当に変化させるのには、触覚部に付与される毛様体筋収縮などによる非常に小さい力が必要となるが、メニスカス曲率の変化によりレンズの光屈折を変動させ、多様な距離にある複数の物体に焦点を合わせるよう作用する。この力は触覚部により毛様体筋からメニスカスに伝達される。触覚部は多様な形状にされてもよいが、例えば、C字型ループ、変形C字型ループ、方形、円盤状、板状などに形成されるとよい。
【0016】
本発明のまた別な局面は、エネルギー変換素子を使用して、毛様体筋力を電気衝撃に変換することである。上述の電気衝撃は液が充満した水晶体嚢の特定領域の表面エネルギー変化を誘導して、メニスカスを急峻化させる。
【0017】
本発明には多様な液が使用されてもよい。最重要パラメータは透明度、表面エネルギー、密度、粘性、および、屈折率である。実際には液をどのように組合せて使用してもよい。多様な液体組合せごとの屈折調節力の算定値は、メニスカス曲率変化に基づいて求められた。後段の表1はその結果の幾つかを概説している。
【0018】
本発明のもう1つ別な実施例においては、液と液の不相溶性は任意にすぎない(すなわち、互いに相溶性であってもよい)。この実施例では、任意で容認できる膜または薄膜によって液と液とが分離されるようになっている。本発明によれば、薄膜は互いに相溶性の液と液を分離状態に保ち、液Iと液IIを閉じ込めることで可変な光屈折変化を生じるようになっている。薄膜または膜は円盤状部の端縁に付着され、互いに異なる屈折率(RI)を示す互いに相溶性の液と液が混和するのを阻止するように図っている。
【表1】
【0019】
本発明の方法および調節用眼内レンズの利点は、当該技術で従来公知ではない。
1. 自由エネルギーを斟酌したせいで2種の互いに不相溶性の液と液の間の界面が自然に安定しているゆえに、屈折も安定している。
2. 界面は微小な力を利用して変動させることができる。これにより、毛様体筋由来の微小な力で曲率を変化させることができ、よって、光屈折を相当に大きく変動させることができる。
3. この設計は比較的簡単で、従来の眼内レンズの設計に類似している。本質的に、方形端縁が設計に組入れられて、後水晶体包の混濁化(PCO)を防止している。
レンズは真の屈折調節を行い、実質的にレンズ光屈折変化を増大させるものであり、当該技術で従来公知ではない。
【0020】
従って、本発明は、一局面では、少なくとも2ジオプターの光屈折変化を得る方法であり、光屈折変化を得る手段として、そのような変化に対する移植後の眼内レンズ装着者の生理学的要求に応じて調節を行う眼内レンズを採用しており、上述の光屈折変化量は少なくとも4ジオプターであるのが好ましく、少なくとも6ジオプターであるのが最も好ましい。極めて現実的な意味で、本発明の調節法および調節用眼内レンズ装置は、若くて健康で白内障に罹患したことのない眼のレンズ焦点調節と反応とに極めて似せて模倣するものである。
【0021】
「水晶体嚢ユニット」という表現は、本発明の詳細な説明および特許請求の範囲で使用されている場合は、後水晶体包、毛様小帯、および、毛様体について言及したものであり、これら眼の構成体は相互接続されて連携作用し、本発明によれば或る種のケーブルを形成し、このケーブルの可変張力により軸線方向の力を供与しているが、この力が本発明のレンズ集成体に付与されて利用されることで、屈折調節を達成する。
【0022】
本発明のレンズは、天然のレンズを眼から切除した後でその代用となるが、本発明のレンズ集成体の移植後はより良好に眼を見えるようにする(または、完璧に見えるようにする)のみならず、眼の屈折調節を行うことで、連続する複数の距離に位置している多数の物体に焦点を合わせることができるようにもする。屈折調節を達成する目的で、集成体は水晶体嚢の後水晶体包、または、毛様溝に固定される設計になっており、この場合、弾性体が後水晶体包または毛様溝に軸線方向に当接する。
【0023】
本発明のレンズ集成体は、水晶体嚢ユニットまたは毛様溝が自然に収縮および弛緩するのを利用して弾性体に軸線方向の力を付与することで、弾性体にレンズの作用をさせ、このレンズの曲率半径の変動、よって、このレンズが示す屈折力の変動が上述の軸線方向の力で決まるように図っている。このようにして、レンズ集成体は眼の自然な作用と協働することで屈折調節して、複数の異なる距離に位置する多数の物体をより明瞭に見ることができるようにしている。
【0024】
本発明による集成体の触覚部は当該技術で周知の多様な設計のいずれを採用していてもよく、例えば、湾曲していてもよいし、または、板状の形態を呈していてもよい。これに加えて、触覚部は完全に透明でもよいし、または、不透明であってもよい。本発明によるレンズ集成体の触覚部は、観血治療で使用するのに好適で、尚且つ、触覚部を形成するのに使用することができることが当該技術で周知である、多様な見込みのある剛性素材から作られているようにするとよい。
【0025】
本発明の屈折調節用レンズ集成体により得られる利点は多数ある。レンズ集成体は水晶体嚢の寸法または形状に一致している必要はなく、それゆえ、より多様な設計を自由に取入れることができる。更に、水晶体嚢は天然レンズを切除する外科手術中に損傷を受けることがあるが、本発明のレンズ集成体は、水晶体嚢の水晶体を包んでいる部位の形状が完全に無傷であることを必要とせず、水晶体嚢が水晶体嚢ユニットの一部として信頼できる接続状態を維持していることのみを必要とする。レンズ集成体を後水晶体包の外側に設置することに起因するもう1つ別な利点は、天然レンズを切除するための外科手術の後で、通常は「水晶体嚢繊維増多」と呼ばれ、全ての患者にそれぞれ異なる重度で生じる瘢痕ができるせいで水晶体嚢が被ることを避けがたい、恒久的かつ予測できない収縮の影響を受けずに済むことである。調節を作用させるためにレンズ光学系が前方へ移動することに依存している従来の調節用眼内レンズでは、水晶体嚢繊維増多が眼内レンズの動きを封じて光学系の前方移動を制限してしまい、一貫性を欠いた臨床結果を生じたり調節範囲を制限してしまう原因となる。本発明の眼内レンズは、光学系が前方を移動することを必要としない。
【0026】
更に、一実施例においては、本発明のレンズは折曲げることができる。この実施例では、レンズは光学的に容認できる褶曲可能な素材を含んでいる。従って、当業者に周知の褶曲可能な眼内レンズの各種利点を全て備えている。
【0027】
上述の事柄に加えて、本発明のレンズ集成体は、簡単かつ廉価な構造などの利点を呈する。本発明のレンズ集成体はまた、屈折力を広範囲に調節することもでき、例えば、加齢による黄斑変性(AMD)などのような上述とはことなる眼の疾患の場合などは必要に応じて、天然の眼が備えている屈折率の全範囲とそれを遥かに超える範囲の調節を行う能力もある。また、レンズ集成体は、水晶体嚢ユニットによって供与される力に応じて、その感度を変化させる手段を備えている。これに加えて、レンズ集成体は設計が従来の単焦点眼内レンズと類似しており、既存の外科手術器具および外科手術技術を利用して移植することができる。特殊な外科手術技術または訓練を全く必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】調節用眼内レンズと患者の光感知機構との間で相互作用して視覚的鋭敏さを向上させているのを例示したフロー図である。
【図2】本発明による界面屈折調節レンズまたは界面屈折レンズ集成体(IRAL)を例示した正面図である。
【図3】図2に例示されている界面屈折調節レンズの断面図である。
【図4】本発明のもう1つ別な実施例すなわち第2実施例において、毛様体筋によって触覚部に力が付与される方向を矢印(11)で例示し、第2実施例の調節レンズの触覚部形状が図1および図2のレンズのものとは異なっていることを示した斜視図である。
【図5】本発明の圧電調節レンズまたは電気調節レンズを例示した斜視図である。
【図6】本発明の更に別な実施例において、図6Aは本発明の眼内レンズが調節完了状態にあるのを示し、図6Bは図6Aに示されているのと同じ眼内レンズが未調節状態にあるのを示した図である。
【図7】本発明の眼内レンズの更に別な実施例において、図7Aは調節完了状態にあるのを示し、図7Bは未調節状態にあるのを示した図である。
【図8】本発明の更に別な実施例すなわち第3実施例の調節用眼内レンズを例示した断面図である。
【図9】図8に例示されているような眼内レンズが未調節状態にある、すなわち、触覚部が後ろ寄りに配置されていない状態を例示した図である。
【図10】図9のレンズを同図中の線10A−10Aに沿って破断し、図9を右方向(背面方向)に見たところを例示した断面図である。
【図11】本発明の更に別な調節用眼内レンズの側面図である。
【図12】図11に例示されている実施例の頂面図である。
【図13】図12の線13−13に沿って破断した断面図である。
【図14】図13の眼内レンズが調節中の状態にあって、触覚部が図の下に向かう矢印の方向に僅かに屈曲され、押下げられ、または、移動させられているのを例示した図である。
【図15】本発明の眼内レンズが実装位置にあって、調節完了状態にあるのを例示した図である。
【図16】図15の眼内レンズが、移植完了しているが、未調節状態にあるのを例示した図である。
【図17】本発明の眼内レンズのまた別な実施例の側面図である。
【図18】図17の実施例の頂面図である。
【図19】図18の線19−19に沿って破断した断面図である。
【図20】図17から図19の眼内レンズが実装位置にあって、調節完了状態にあるのを例示した図である。
【図21】図17から図19の眼内レンズが実装位置にあって、未調節状態にあるのを例示した図である。
【図22】本発明の更に別な実施例の側面図である。
【図23】図22の実施例の頂面図である。
【図24】図23の線24−24に沿って破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を理解する目的で、また、実際には本発明がどのように実現されるかが分かるようにするために、ここで添付の図面を参照しながら好ましい実施例を説明してゆくが、実施例は限定する意図のない具体例にすぎない。
【0030】
調節用レンズの基本原理は、勿論のこと、当業者には周知である。そのような原理は、米国特許第5,489,302号の図1および図2に(第4欄20行から52行の関連開示部にも)例示されているが、かかる特許の開示内容は特にここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
【0031】
一般に、一局面においては、本発明は移植可能な界面の屈折調節レンズ(IRAL)集成体またはIRAL装置であり、レンズ装着者(例えば、レンズの移植を既に受けた患者)の生理学的必要が変わったのに応じて焦点距離を調節する集成体または装置である。レンズは可撓性の光学小室レンズ体、または、光学協働触覚部を備えている。「光学小室」は、互いに対向し実質的に互いに平行で視覚的に透明な略円盤状の2つの構成部がそれぞれの端縁で撓曲可能に連結されているとともに互いから離隔されて、閉鎖状態の液体小室として画定されたもの、と定義される。この液体小室は第1液および第2液を包含しており、これら2種の液体は屈折率が互いに異なっており、その差はΔRIであり、一実施例では、互いに不相溶性であるため、液と液の間に変動自在球面の界面または変形球面の界面、すなわち、レンズ界面を画定する。触覚部は光学小室の端縁に連結されているとともに、その液体小室それ自体に連結されて、触覚部に力が加えられると液体小室を変形させて液体界面の球形度を変動させるように図っている。従って、触覚部に力が加わったのに応じてレンズ集成体の焦点距離が変化することで、レンズ装着者の視野焦点を変動させる。
【実施例】
【0032】
一実施例においては、任意で、両液は互いに不溶性であり、円盤状の構成部(2枚)の端縁に密着封鎖された膜によって互いから分離されて、撓曲自在な液体小室を画定している。
【0033】
本発明はまた、界面の屈折調節レンズ(IRAL)を使用することにより視覚活動を矯正する方法を含んでおり、該方法は、
(i)自分の眼のレンズをIRALと置換する必要がある患者の欠陥のある天然レンズをIRALと置換する工程と、
(ii)IRALが患者の必要に適合して眼の焦点を変動させ、例えば、網膜合焦させることができるようにするにあたり、光屈折強度を変動させる、従って、IRALの焦点変動させるという手段を採用し、IRALの光屈折強度の変化が少なくとも2ジオプターであるようにする工程とを含んでおり、
(iii)IRALは屈折率が互いに異なる複数の液を利用して液と液の境界を画定して光屈折強度を変動させ、従って、界面を変動させるようにしたことを特徴とする。
【0034】
図1は光学機械原理を例示したフロー図であるが、この原理により、屈折調節用眼内レンズ(IOL)などのような屈折調節レンズが生理学的な光学信号と相互作用し、レンズの装着者の遠近両方の視覚的敏感さを向上させることができる。簡単に説明すると、脳が毛様体筋(眼の筋肉)に収縮するように指令を与える。そのような筋収縮は、微小で概ね後方に向かう力を毛様小帯繊維を介してレンズ触覚部(後段で説明する)に与える。触覚部に付与された力により調節レンズの光学力を変動させることによって、より高精度でより明瞭に入射光を網膜上に合焦させる。図中の囲み100は、そのようなプロセスにおいて、本発明のレンズなどのような屈折調節眼内レンズまたは遠近調節眼内レンズの触覚部とそこに連結された光学機械系のそれぞれの機能を概略的に例示している。触覚部は眼内レンズを眼の焦点域または合焦軸線の中心に置き、毛様体筋の力を受けて、その力を光学小室すなわちレンズ本体部に伝達する(後段でより詳細に説明する)。調節用眼内レンズが毛様溝に移植された場合、触覚部は眼の筋肉と直接接触することができる。そうして、本発明の調節用眼内レンズの光学機械系が毛様体筋の力をレンズの光屈折変化に変換する。
【0035】
図2は、本発明の界面の屈折調節レンズ(IRAL)の正面図である。図2においては、レンズ集成体10が光学小室すなわちレンズ本体部12と触覚部14とを備えているのが例示されている。図2に例示されている触覚部14は見込みのある触覚構造のうちの一例にすぎず、本件開示内容に鑑みて、当業者が容易に想起しそうな触覚構造は他にも多数あることが分かる。また、点線の円16、16'によって光学小室12の内側に例示されているのは、毛様体筋によって及ぼされる力に反応した場合の屈折表面(すなわち、2種の液と液の間の界面)の位置である。
【0036】
図3は、図2に例示されている界面の屈折調節レンズにおいて、触覚部変形角度または触覚部変位角度15、15’と、僅かな触覚部変形角度変化によって達成される界面の曲率半径16、16’の変化との間の関係を示した断面図である。図2に例示されている界面16の形状変化は、触覚部圧が変化すると屈折表面の曲率半径が増大することを説明している。触覚部圧の変化は、触覚部変形の度合いが変わることによって得られるが、触覚部変形を起こす原因となるのは毛様体筋または水晶体嚢の圧力上昇である。図示のように、内部包絡面16、16’の曲率半径は触覚部変形角度の変化に応じて変動する。液Iおよび液II(後段で詳述する屈折率特性を示す)に関連した曲率半径の上述のような変動は、僅少な毛様体筋の一挙動(または、連続運動)ごとに実質的な光屈折変化を生じる。多様な液Iおよび液IIについての変形角度変化1度あたりの光屈折の変動が上記の表1に例示されている。本発明が、先行技術に開示されている全てについて実質的にそれを超える光屈折変化をもたらすのは明らかである。従って、例えば、本発明を実施すれば、光屈折変化量(および、上述のような屈折調節量)は4ジオプターの範囲で変化させることができ、この変化範囲は6ジオプターであるのが好ましく、約7.5ジオプター以上の範囲であるのが最も好ましい。
【0037】
図4は、本発明のもう1つ別な実施例において、毛様体筋により加えられる力などの力の付与方向を矢印11で例示した斜視図である。触覚部14は、本発明の教示内容と矛盾のない部分ループのまた別な変形例である。光学小室としての液体小室、すなわち、レンズ本体部12の更に別な実施例も後段で説明してゆく。
【0038】
図5は、本発明の電機設計または圧電設計、すわなち、電気的または圧電的な取組みを説明している。留意すべきこととして、変換素子または円形触覚部40が導電素子または接続素子42により液体小室44に連結または接続されている。この取組みによれば、装着者の毛様体筋による変換素子・触覚部40の運動によって、導電素子42により液体小室44に電気信号が送信される。眼の調節は毛様体筋(図示せず)の収縮および水晶体嚢(図示せず)の収縮により誘導される。本発明の方法は、変換素子40が毛様体筋の力を感知して光学小室44を通る電流または電圧を生成することを含んでいる。電圧は光学小室44の表面に沿って表面エネルギーの変動を誘発し、この変動が原因で2種の液と液との間の界面の曲率が急峻になる。次に、一局面では、本発明は、界面の曲率変化が収縮中の毛様体筋によって生成される電気衝撃により直接誘発される調節用眼内レンズである。この実施例では、触覚部は導電材から作られている。触覚部には導電素子が埋設されているようにしてもよい。
【0039】
毛様体筋の運動または水晶体嚢の運動を電気信号に変換することができる変換器を利用して、メニスカスの形状を効果的に変化させて屈折調節を行えるようにしている。変換器は圧電素子、力センサー、アクチュエータ、または、それ以外の何らかの素子であって、力を電気信号に変換することができるものにするとよい。触覚部は力検知素子から作られているようにするとよい。触覚部は複数の形状のいずれに形成されてもよく、例えば、C字型ループ、修正型C字型ループ、方形、円盤状、板状などであってもよい。
【0040】
本発明を実施するために選択することができる素材は当業者には容易に明らかである。一実施例では、触覚部素材の具体例として、ポリメタクリ酸メチル(PMMA)、ボリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、または、それ以外の各種重合体が挙げられる。光学小室12の素材としては、疎水性アクリル重合体またはその共重合体(HAC)、親水性アクリル重合体またはその共重合体、シリコーン重合体またはその共重合体(ポリジメチルシロキサンすなわちPDMS)、または、それ以外の各種重合体が挙げられる。好ましい重合体としては、ポリジメチルシロキサンまたは疎水性アクリル共重合体がある(光学小室12と触覚部14は同じ素材から作られている)。留意すべきこととして、本発明の利点を達成するのに、液Iの屈折率と液IIの屈折率の間の関係が必要となる。
【0041】
ここで、本発明の更に幾つかの実施例が例示されている図6から図14を参照してゆく。図6においては、移植片、レンズ本体部、または、レンズ集成体の前面20は左側であり、背面22は右側である。レンズ本体部すなわち光学小室は一般に円盤24、26から構成されており、これら円盤はそれぞれの端縁28で撓曲可能に連結されている。図示のように、可撓性の連結部材または側壁28は圧縮可能であり、円盤24、円盤26および連結部材28の相互の間で環状接続部を設けている。
【0042】
円盤24、26は(移植時には)眼の焦点軸線に沿って互いから離隔されているので、閉鎖状態の液体小室30が画定される。液体小室30は、本発明に従って、屈折率が互いに異なっている2種の互いに不相溶性の液32と液34を包含している。一般に、屈折率の高いほうの液体34がレンズ本体部の背面側に配置され、屈折率の低いほうの液体32が前面側に配置される。
【0043】
互いに不相溶性の液32、34のせいで、球面に湾曲した界面36が形成される。この界面はその外辺部では、界面が移植片側壁28に一定の接触角40Aで合流している。液体界面の曲率は、両液体の特性および移植片素材の特性(表面張力)で決まる。これはエネルギー最小化原理に合致している。眼の筋肉からの力は、矢印42で概略表示された触覚部によって移植片に伝達され、太字の矢印は力がより大きいことを示している。このように加えられた力が側壁28を変形する。接触角40Aが一定であるせいで、側壁の傾斜変化により液体界面36の曲率半径が変動することになる(エネルギー最小化が達成される)。曲率半径の変化により装置10の光学力が変化させられ、すなわち、装置10の光屈折率が変化させられる。このようにして、眼内レンズの焦点距離が変動することで、網膜(図示せず)上に衝突した光をより良好に合焦させている。
【0044】
図7では、眼の筋肉からの力が触覚部によって移植片の変位可能な環状側壁50に伝達される変形例が例示されている。矢印52で図示されている加えられた力は可変曲線を描いた側壁50に沿って液体界面を押す。これは、移植片と一体成型されている蝶番構造部56を変形させることにより達成される。上述のような構造の側壁50に沿って液体界面を移動させるのに、上記以外にも見込みのある機械的な解決案が思い浮かぶ。側壁54の傾斜が変化するにつれて、液体界面はその曲率を適応させて一定の接触角を達成する。これもエネルギー最小化原理に合致している。曲率半径の変化は装置の光学力の変化を生じさせる。
【0045】
互いに不相溶性の液のせいで、球面に湾曲した界面36が形成される。界面36はその外辺部54では、移植片10の内側の可動リング構造に一定の接触角で合流している。この液体界面の曲率は各液体および移植片素材それぞれの特性(表面張力)で決まる。眼の筋肉由来の力が触覚部により移植片に伝達される。図8、図9、および、図10は、本発明の更に別な実施例を例示している。この実施例の触覚部80は可動内部リング81に内部結合されている。矢印82として加えられている力は移植片の内側でリング構造部81を移動させる。可動リング構造部は移植片の素材とは異なる素材(例えば、硬質素材など)から作られていてもよい。液体界面を横断してリング構造部を走らせると、液体界面の或る半径が形成されるが、これはエネルギー最小化原理に合致している。従って、半径の変化により移植片の光学力の変化が生じることになる。
【0046】
図11から図14は、静的屈折力と屈折調節力の両方が2種の液と液との間の界面によって生成されるところを例示している。移植片は、触覚部が毛様溝と接触状態になるように設計されている。移植片が水晶体嚢に載置される設計も好適である。この設計では、4本の触覚部90が例示されているが、これら触覚部が毛様溝に接触する。触覚部の本数がこれよりも少ない、または、これよりも多い設計も思い浮かぶ。調節完了状態では、収縮した毛様体筋が触覚部を硝子液の方向に押す。これが原因で、移植片内部のリングをその反対方向に移動させることになる。液体界面は或る曲率半径を形成することになるが、これはエネルギー最小化原理に合致している(リング構造部の設計と関与している素材に依存する)。矢印98は概ね、調節完了状態または調節時の状態を達成するように触覚部90を変形させる際の移動方向を例示している。図14では、液体界面の曲率が未調節状態の界面96(図11、図12、図13)と比較して大きくなっており、移植片の光学力も増大している。
【0047】
<レンズパラメータの算定>
以下の公式を利用して結果を求めた(近軸近似)。
【数1】
【0048】
以下の公式を利用して結果を以下に求めた(近軸近似)。
未調節状態の液体界面の半径
【数2】
調節完了状態の液体界面の半径
【数3】
側壁変形角度
【数4】
【0049】
テイラー近似を利用して、上記公式は更に次にように簡略化することができる。
【数5】
この場合、DLens は単位がミリメートル(mm)であり、調節力は単位がジオプター(D)である。
【0050】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0051】
図15および図16は、本発明のレンズが設置されることになる眼内の移植片部位を概略的に例示している。眼の前方は図面左側で、眼の後方は図面右側である。衝突光は左から入射してから、網膜(図示せず)上で焦点合わせされることになる。図15は、例えば、図9から図14のレンズにおいて、収縮した毛様体筋110が触覚部90に力を付与し、レンズ本体部10の内部の互いに不相溶性の2種の液の表面を変形させることでレンズの光学特性を変動させ、すなわち、移植を受けた患者の光学的必要を調節しているのを例示している。毛様溝112、硝子体114、角膜116、虹彩118、崩壊した水晶体嚢120、毛様小帯122などの眼の構造部が例示されている。図16は、図15と同じ移植片位置と同じ眼内レンズにおいて、毛様体筋が弛緩している(未調節状態)のを例示している。
【0052】
図17から図19は、前凸レンズ140が採用されている変形例を示している。これ以外の構成部材は全て同じである。
【0053】
図20および図21は、図17から図19のレンズが移植状態にあるのを例示している。
【0054】
図22から図24は、本発明の均等凸眼内レンズすなわち両凸眼内レンズ160の設計を例示している。移植片の図は、図15および図16に例示されている移植片の図と類似している。
【0055】
上記の表2から表7までを参照する。上述の数式的概念を表中に含まれている情報と関連させることで、特定の患者の視覚的必要に対して特に適用できる本発明の調節用レンズを当業者であれば設計することができる。「静的屈折力」とは、例えば、車両運転またはスポーツ競技の観戦などで、或る距離で正確な視覚的鋭敏さをもたらすのに必要なレンズ力の測定値のことである。本発明のレンズによってもたらされる調節は、同じ1つのレンズが読書に必要となるような近視野矯正の作用もすることである。従って、或る1人の患者に対して定められた所与の静的屈折力の全域について、上述のレンズ本体部である光学小室内に包含されている液Iと液II(参照番号32、34)の屈折率の所与の差(ΔRI)に対して得られる曲率半径を上記の各表は例示している。屈折率の差(ΔRI)が大きいほど、液体界面の半径は長くなり、許容されるレンズ調節力も大きくなることは明らかである。側壁変形角度が多様なレンズ調節力ごとに例示されている。上記の各表で採用されている屈折率の差(ΔRI)が0.1および0.23である点については、具体例にすぎないと解釈するべきであり、上記以外の屈折率の差を利用して、尚且つ、本発明で思量する範囲に入ることもある。
【0056】
ここで注目すべきは、本発明の一実施例では、屈折率が互いに異なっていて、尚且つ、互いに相溶性である複数の液体が使用される。この構成では、2種類の液が光学的に容認できる膜、薄膜、または、分離装置によって互いから分離されている。この時、膜は液と液の間に界面またはメニスカスを画定し(例えば、図3では16、16’、図13では96、図6から図9では36、36’で例示されている)、従って、調節の程度を決める曲率半径を定めることになる。液Iを液IIと分離している膜はどちらの液も透過させることができず、どちらの液からも化学作用を被らず、光学小室すなわちレンズ本体部の端縁に内部接着されて液と液が混和するのを防いでいる。
【0057】
本発明の界面の屈折調節レンズ(IRAL)は完全な気密封鎖構造である点に注目するべきである。本発明のIRALは丈夫で、長期に亘る移植を意図しており、何年にも及ぶ天然レンズに近い屈折調節を患者にもたらす。
【0058】
本発明の界面の屈折調節レンズ(IRAL)は、好ましい実施例では、折曲げることができる。IRALの褶曲自在な実施例では、レンズは移植時の切開部を小さくすることができるという利点の他に、褶曲自在な眼内レンズが示す医学的利点を備えている。折曲げることができるようにするために、多様なレンズ構成ごとに選択された素材は比較的高い撓曲性または相対的な剛性を示すことで、光学的に意図した機能を実施し、構造上の保全性を確保しなければならないのと同時に、レンズ構造全体が十分な柔軟性または撓曲性を示すことで、褶曲状態で保管したり、移植処置中には小さな切開部から折曲げた状態または巻上げた状態で挿入してから広げることができなければならない。
【0059】
上記のような構造上の機能および医学的機能と機械的構成を斟酌すると、当業者には多様なレンズ構成ごとに素材を選択するという示唆が与えられるだろう。光学的に容認できる素材はそれぞれの機能次第で必要な透光性を示し、長期に亘り眼に移植することができる。免疫反応、生体適合性(または、生体適合性の欠落)、および、それ以外の多様な生理学的要因は全て、そのような素材を選択する際に考慮される必要がある。本発明の構成の大半に適するものとしては、各種重合体または重合体化合物のアクリル樹脂類が提案される。
【0060】
次に列挙する特許および特許公開出願は、ここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
米国特許公開第2004/0181279号
米国特許第7,025,783号
米国特許第5,443,506号
本明細書の段落[0004]から[0007]に見られるような、本件で既述の特許も、ここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
【0061】
上述の実施例は本発明による眼に移植するための調節レンズ集成体の具体例を扱っているにすぎず、本発明の範囲は当業者には自明であるような他の実施例を完全に包含しているものと解釈するべきである。例えば、レンズ集成体の人体への移植を説明してきたが、集成体は他の動物にも適用できることは明らかである。上述のような多数の異なる特徴の順序入替え例、各種組合せ、または、順序を入替えた各種組合せのうち見込みのあるものはどんなものであれ全て、本発明の範囲に入るものである。
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本件は2007年2月2日出願の2件の米国特許仮出願連続番号60/887,933号および60/887,928号の優先権を主張するものであるが、両出願の開示内容はそれぞれの全体がここに引例に挙げることにより(両仮出願のいずれか一方または両方に言及することで両出願の一部を構成している全ての引例を含めて)本件の一部を成すものとする。
【0002】
本発明は眼内レンズに関するものである。特に、本発明は眼の毛様体筋または毛様体の張力変動またはそれ以外の何らかの調節力の変動に応じて光屈折力を変動させることができる眼内レンズに関連している。本発明のレンズは広く調節用レンズのことを指している。
【背景技術】
【0003】
人間の眼の天然レンズは透明な水晶質体であり、虹彩の背後で、尚且つ、硝子液が満ちた空洞の正面に位置する後眼房として周知の領域の被膜嚢の内側に包含されている。この被膜嚢はその全面が毛様小帯と呼ばれる繊維によって毛様体筋に付着されている。ゲルが充満している硝子体はその背後に網膜を更に有しており、レンズを通過してきた光線がこの網膜上で合焦される。毛様体が収縮・弛緩することで被膜嚢とその中の天然レンズとを変形させることにより、多様な距離にある各物体から発した光線を網膜上で合焦させる。
【0004】
眼またはその周囲の透明膜からなる天然レンズが曇ると白内障が起こり、光の通過を遮蔽し、多様な程度の視力障害が生じる結果となる。患者のこのような症候を矯正する目的で、曇りが生じた天然レンズすなわち水晶体混濁部位を摘出して人工眼内レンズと置換する外科手術処置が施される。白内障外科手術中は、被膜嚢の前部が水晶体混濁部位と一緒に除去され、被膜嚢の後部で後水晶体包と呼ばれる部位は無傷のまま眼内レンズ(IOL)を移植するための支持部位として作用するように残すことがある。しかし、このような従来の眼内レンズには欠点があり、すなわち、屈折力が一定であるせいで、焦点距離を変動させる必要、例えば、読書をしたりコンピュータで作業をするといったような患者の必要に応じて焦点を変えることができない。
【0005】
眼に備わっている天然レンズの性能を複製しようと試みて、屈折力を変動させることができる多様なタイプの眼内レンズが従来から提案されてきた。このような調節用の眼内レンズは、当該技術で従来公知であるが、患者が焦点を合わせて複数の異なる距離に位置する多数の物体を明瞭に見ることができるようにする目的で、多様な設計のものがある。具体例は、米国特許第4,254,509号、米国特許第4,932,966号、米国特許第6,299,641号、および、米国特許第6,406,494号などのような公開公報に見ることができる。
【0006】
ギャラベット(Garabet)に交付された米国特許第5,443,506号は、レンズの2面の間の媒体を変えることで遠近調節を変動させるようにした可変焦点の眼内レンズを開示している。第5,443,506号特許のレンズには、眼内レンズの第1部分の水路を連結する、切れ目なく連続する複数の流れループが設けられている。これら連続する流れループは、水路を設けているのみならず、眼内レンズを眼の中に設置して保持する手段を提供している。或る実施例では、連続する流れループ(単数または複数)はレンズの触覚部を含んでおり、すなわち、レンズ本体部の支持構造体を含んでいる。
【0007】
米国特許第5,489,302号は、後眼房へ移植する調節用の眼内レンズを開示している。このようなレンズは短い管状の剛性フレームと、フレームの基部に取付けられている弾性膜とを備えている。フレームおよび膜は、気体を充満させた封鎖空間を画定している。フレームはその可撓性領域で触覚部により後水晶体包に取付けられている。眼の毛様体筋によって水晶体包が伸張すると可撓性領域が互いから引き離され、それにより、封鎖空間内の容積を増大させるとともに該空間内の圧力を減少させる。これが膜の曲率を変化させ、従って、レンズの屈折力を変動させる。
【0008】
米国特許第6,117,171号は、被膜剛性殻の内側に包含された、眼内環境の変化に実質的に反応しないようにされた調節用の眼内レンズを開示している。レンズは後水晶体包の内側に移植される構成になっており、可撓性の透明膜を備えていることで眼内レンズの内部を前後の別個の空間に分けているが、前後空間の各々が互いに屈折率が異なる液で充満されている。後空間の周辺は触覚部に付着状態であり、該触覚部は後水晶体包に付着している。眼の毛様体筋によって水晶体包が伸張すると触覚部と後空間周辺とが捻転分離され、後空間の容積を増大させるとともに前後の両空間の間の圧力差を変動させる。その結果、膜の曲率が変化し、従って、レンズの屈折力が変動する。
【0009】
眼内レンズの焦点を変動させるもう1つ別の取組みは、従来の硬質眼内レンズを形成するにあたり、可撓性の外側面をシリコーンなどのような素材から作ることである。次に、レンズの従来の硬質部と可撓性の外側面との間に水が注入される。水が外側の可撓性の層を伸張させて眼内レンズの曲率半径を変えることにより、レンズの屈折調節を変動させる。このような取組みの欠点の1つは、液源、液体ポンプ、および、流量制御弁の設けられている位置が全てレンズの内側でレンズの極めて近位になければならないことである。眼の水晶レンズの周辺領域は全く限られているので、液注入成分の大半はレンズそのものに接触供給される必要がある。更に、液を汲出すためにエネルギー源が設けられている必要がある。液を汲出すのに十分な強さの機械力を眼内で生成することはできないため、ポンプを作動させるのに外部電源が必要となる。このような外部電源は、通常は、ライフサイクルが限られているバッテリーを使って実現される。
【0010】
眼内レンズの屈折調節を変動させるために従来使用されてきた更にもう1つ別の取組みは、液晶素材で従来の眼内レンズを被覆することである。液晶を分極させるために、液晶素材に電圧源が印加される。液晶が分極すると液晶素材の屈折率が変動することにより、眼内レンズの屈折調節を変動させる。この種のシステムの主たる欠点の1つは、液晶素材を分極させるのに比較的大量のエネルギーを要することであり、その量は約25ボルトである。体内にそのレベルの電圧を生成する公知の方法は無いので、バッテリーなどのような外部電源が必要である。
【0011】
幾つかの従来の調節用眼内レンズは、屈折させるのに固体曲面に依存している。このように、光屈折力および屈折調節力の増大を誘導するのに相当十分なだけ曲率を変化させるのに要する力は、毛様体筋によって供与される力よりも遥かに大きく、老年用レンズでは特にこの傾向が強い。これ以外の調節用眼内レンズは、光軸に沿って眼内レンズ全体を変位させて屈折調節をもたらすことに関与している。これには比較的大きな力を要するのみならず、前眼房の空隙が不足しているせいで、光屈折をもっと大きく変動させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,254,509号
【特許文献2】米国特許第4,932,966号
【特許文献3】米国特許第6,299,641号
【特許文献4】米国特許第6,406,494号
【特許文献5】米国特許第5,443,506号
【特許文献6】米国特許第5,489,302号
【特許文献7】米国特許第6,117,171号
【特許文献8】米国特許公開第2004/0181279号
【特許文献9】米国特許第7,025,783号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
可変調節を行える眼内レンズを提案しようとの前述の試みとそれ以外の先行技術の試みのシステムは大抵が複雑である。このような複雑なシステムはコスト高につくうえに製造が困難であり、人間の眼に実装するのは現実的ではない場合が多い。よって、現在の調節用レンズは屈折調節力を作用させることはほとんど無い(約1ジオプターから2.5ジオプター)。性能が大幅に改善された真の調節用レンズは少なくとも約4ジオプターの屈折調節力を示す必要があり、少なくとも約6ジオプターまたはそれ以上が好ましい。よって、より高いレベルの調節力を示し、人間の眼によって供与される力のみに依存して作動する、複雑ではない眼内レンズが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、先行技術のレンズおよびレンズ集成体の欠点に対処するにあたり、2種の互いに不相溶性の液と液との間に自然に設けられる界面に基づく新規な屈折システムを利用するものである。屈折力の相当な変化は、本発明を実施する場合は、微小な垂直方向力を付与するとともに力変化を供与することで達成することができるが、具体的には、力の付与および変動は毛様体筋または毛様体によって達成されるのであって、光軸に沿って眼内レンズを移動させる必要はない。
【0015】
本発明の眼内レンズは、内部で2種の不相溶性の液を互いに接触させてメニスカスを形成する水晶体嚢を備えている。これら2種の液と液の間の界面は屈折面として作用し、光を屈折させて網膜上の1点で合焦させる。メニスカス曲線を変化させ、従って、レンズ焦点を変化させる手段として、レンズ周辺に圧力を加える方法が採られるが、大抵は、レンズの触覚部によって圧力が加えられる。メニスカス曲率を相当に変化させるのには、触覚部に付与される毛様体筋収縮などによる非常に小さい力が必要となるが、メニスカス曲率の変化によりレンズの光屈折を変動させ、多様な距離にある複数の物体に焦点を合わせるよう作用する。この力は触覚部により毛様体筋からメニスカスに伝達される。触覚部は多様な形状にされてもよいが、例えば、C字型ループ、変形C字型ループ、方形、円盤状、板状などに形成されるとよい。
【0016】
本発明のまた別な局面は、エネルギー変換素子を使用して、毛様体筋力を電気衝撃に変換することである。上述の電気衝撃は液が充満した水晶体嚢の特定領域の表面エネルギー変化を誘導して、メニスカスを急峻化させる。
【0017】
本発明には多様な液が使用されてもよい。最重要パラメータは透明度、表面エネルギー、密度、粘性、および、屈折率である。実際には液をどのように組合せて使用してもよい。多様な液体組合せごとの屈折調節力の算定値は、メニスカス曲率変化に基づいて求められた。後段の表1はその結果の幾つかを概説している。
【0018】
本発明のもう1つ別な実施例においては、液と液の不相溶性は任意にすぎない(すなわち、互いに相溶性であってもよい)。この実施例では、任意で容認できる膜または薄膜によって液と液とが分離されるようになっている。本発明によれば、薄膜は互いに相溶性の液と液を分離状態に保ち、液Iと液IIを閉じ込めることで可変な光屈折変化を生じるようになっている。薄膜または膜は円盤状部の端縁に付着され、互いに異なる屈折率(RI)を示す互いに相溶性の液と液が混和するのを阻止するように図っている。
【表1】
【0019】
本発明の方法および調節用眼内レンズの利点は、当該技術で従来公知ではない。
1. 自由エネルギーを斟酌したせいで2種の互いに不相溶性の液と液の間の界面が自然に安定しているゆえに、屈折も安定している。
2. 界面は微小な力を利用して変動させることができる。これにより、毛様体筋由来の微小な力で曲率を変化させることができ、よって、光屈折を相当に大きく変動させることができる。
3. この設計は比較的簡単で、従来の眼内レンズの設計に類似している。本質的に、方形端縁が設計に組入れられて、後水晶体包の混濁化(PCO)を防止している。
レンズは真の屈折調節を行い、実質的にレンズ光屈折変化を増大させるものであり、当該技術で従来公知ではない。
【0020】
従って、本発明は、一局面では、少なくとも2ジオプターの光屈折変化を得る方法であり、光屈折変化を得る手段として、そのような変化に対する移植後の眼内レンズ装着者の生理学的要求に応じて調節を行う眼内レンズを採用しており、上述の光屈折変化量は少なくとも4ジオプターであるのが好ましく、少なくとも6ジオプターであるのが最も好ましい。極めて現実的な意味で、本発明の調節法および調節用眼内レンズ装置は、若くて健康で白内障に罹患したことのない眼のレンズ焦点調節と反応とに極めて似せて模倣するものである。
【0021】
「水晶体嚢ユニット」という表現は、本発明の詳細な説明および特許請求の範囲で使用されている場合は、後水晶体包、毛様小帯、および、毛様体について言及したものであり、これら眼の構成体は相互接続されて連携作用し、本発明によれば或る種のケーブルを形成し、このケーブルの可変張力により軸線方向の力を供与しているが、この力が本発明のレンズ集成体に付与されて利用されることで、屈折調節を達成する。
【0022】
本発明のレンズは、天然のレンズを眼から切除した後でその代用となるが、本発明のレンズ集成体の移植後はより良好に眼を見えるようにする(または、完璧に見えるようにする)のみならず、眼の屈折調節を行うことで、連続する複数の距離に位置している多数の物体に焦点を合わせることができるようにもする。屈折調節を達成する目的で、集成体は水晶体嚢の後水晶体包、または、毛様溝に固定される設計になっており、この場合、弾性体が後水晶体包または毛様溝に軸線方向に当接する。
【0023】
本発明のレンズ集成体は、水晶体嚢ユニットまたは毛様溝が自然に収縮および弛緩するのを利用して弾性体に軸線方向の力を付与することで、弾性体にレンズの作用をさせ、このレンズの曲率半径の変動、よって、このレンズが示す屈折力の変動が上述の軸線方向の力で決まるように図っている。このようにして、レンズ集成体は眼の自然な作用と協働することで屈折調節して、複数の異なる距離に位置する多数の物体をより明瞭に見ることができるようにしている。
【0024】
本発明による集成体の触覚部は当該技術で周知の多様な設計のいずれを採用していてもよく、例えば、湾曲していてもよいし、または、板状の形態を呈していてもよい。これに加えて、触覚部は完全に透明でもよいし、または、不透明であってもよい。本発明によるレンズ集成体の触覚部は、観血治療で使用するのに好適で、尚且つ、触覚部を形成するのに使用することができることが当該技術で周知である、多様な見込みのある剛性素材から作られているようにするとよい。
【0025】
本発明の屈折調節用レンズ集成体により得られる利点は多数ある。レンズ集成体は水晶体嚢の寸法または形状に一致している必要はなく、それゆえ、より多様な設計を自由に取入れることができる。更に、水晶体嚢は天然レンズを切除する外科手術中に損傷を受けることがあるが、本発明のレンズ集成体は、水晶体嚢の水晶体を包んでいる部位の形状が完全に無傷であることを必要とせず、水晶体嚢が水晶体嚢ユニットの一部として信頼できる接続状態を維持していることのみを必要とする。レンズ集成体を後水晶体包の外側に設置することに起因するもう1つ別な利点は、天然レンズを切除するための外科手術の後で、通常は「水晶体嚢繊維増多」と呼ばれ、全ての患者にそれぞれ異なる重度で生じる瘢痕ができるせいで水晶体嚢が被ることを避けがたい、恒久的かつ予測できない収縮の影響を受けずに済むことである。調節を作用させるためにレンズ光学系が前方へ移動することに依存している従来の調節用眼内レンズでは、水晶体嚢繊維増多が眼内レンズの動きを封じて光学系の前方移動を制限してしまい、一貫性を欠いた臨床結果を生じたり調節範囲を制限してしまう原因となる。本発明の眼内レンズは、光学系が前方を移動することを必要としない。
【0026】
更に、一実施例においては、本発明のレンズは折曲げることができる。この実施例では、レンズは光学的に容認できる褶曲可能な素材を含んでいる。従って、当業者に周知の褶曲可能な眼内レンズの各種利点を全て備えている。
【0027】
上述の事柄に加えて、本発明のレンズ集成体は、簡単かつ廉価な構造などの利点を呈する。本発明のレンズ集成体はまた、屈折力を広範囲に調節することもでき、例えば、加齢による黄斑変性(AMD)などのような上述とはことなる眼の疾患の場合などは必要に応じて、天然の眼が備えている屈折率の全範囲とそれを遥かに超える範囲の調節を行う能力もある。また、レンズ集成体は、水晶体嚢ユニットによって供与される力に応じて、その感度を変化させる手段を備えている。これに加えて、レンズ集成体は設計が従来の単焦点眼内レンズと類似しており、既存の外科手術器具および外科手術技術を利用して移植することができる。特殊な外科手術技術または訓練を全く必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】調節用眼内レンズと患者の光感知機構との間で相互作用して視覚的鋭敏さを向上させているのを例示したフロー図である。
【図2】本発明による界面屈折調節レンズまたは界面屈折レンズ集成体(IRAL)を例示した正面図である。
【図3】図2に例示されている界面屈折調節レンズの断面図である。
【図4】本発明のもう1つ別な実施例すなわち第2実施例において、毛様体筋によって触覚部に力が付与される方向を矢印(11)で例示し、第2実施例の調節レンズの触覚部形状が図1および図2のレンズのものとは異なっていることを示した斜視図である。
【図5】本発明の圧電調節レンズまたは電気調節レンズを例示した斜視図である。
【図6】本発明の更に別な実施例において、図6Aは本発明の眼内レンズが調節完了状態にあるのを示し、図6Bは図6Aに示されているのと同じ眼内レンズが未調節状態にあるのを示した図である。
【図7】本発明の眼内レンズの更に別な実施例において、図7Aは調節完了状態にあるのを示し、図7Bは未調節状態にあるのを示した図である。
【図8】本発明の更に別な実施例すなわち第3実施例の調節用眼内レンズを例示した断面図である。
【図9】図8に例示されているような眼内レンズが未調節状態にある、すなわち、触覚部が後ろ寄りに配置されていない状態を例示した図である。
【図10】図9のレンズを同図中の線10A−10Aに沿って破断し、図9を右方向(背面方向)に見たところを例示した断面図である。
【図11】本発明の更に別な調節用眼内レンズの側面図である。
【図12】図11に例示されている実施例の頂面図である。
【図13】図12の線13−13に沿って破断した断面図である。
【図14】図13の眼内レンズが調節中の状態にあって、触覚部が図の下に向かう矢印の方向に僅かに屈曲され、押下げられ、または、移動させられているのを例示した図である。
【図15】本発明の眼内レンズが実装位置にあって、調節完了状態にあるのを例示した図である。
【図16】図15の眼内レンズが、移植完了しているが、未調節状態にあるのを例示した図である。
【図17】本発明の眼内レンズのまた別な実施例の側面図である。
【図18】図17の実施例の頂面図である。
【図19】図18の線19−19に沿って破断した断面図である。
【図20】図17から図19の眼内レンズが実装位置にあって、調節完了状態にあるのを例示した図である。
【図21】図17から図19の眼内レンズが実装位置にあって、未調節状態にあるのを例示した図である。
【図22】本発明の更に別な実施例の側面図である。
【図23】図22の実施例の頂面図である。
【図24】図23の線24−24に沿って破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を理解する目的で、また、実際には本発明がどのように実現されるかが分かるようにするために、ここで添付の図面を参照しながら好ましい実施例を説明してゆくが、実施例は限定する意図のない具体例にすぎない。
【0030】
調節用レンズの基本原理は、勿論のこと、当業者には周知である。そのような原理は、米国特許第5,489,302号の図1および図2に(第4欄20行から52行の関連開示部にも)例示されているが、かかる特許の開示内容は特にここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
【0031】
一般に、一局面においては、本発明は移植可能な界面の屈折調節レンズ(IRAL)集成体またはIRAL装置であり、レンズ装着者(例えば、レンズの移植を既に受けた患者)の生理学的必要が変わったのに応じて焦点距離を調節する集成体または装置である。レンズは可撓性の光学小室レンズ体、または、光学協働触覚部を備えている。「光学小室」は、互いに対向し実質的に互いに平行で視覚的に透明な略円盤状の2つの構成部がそれぞれの端縁で撓曲可能に連結されているとともに互いから離隔されて、閉鎖状態の液体小室として画定されたもの、と定義される。この液体小室は第1液および第2液を包含しており、これら2種の液体は屈折率が互いに異なっており、その差はΔRIであり、一実施例では、互いに不相溶性であるため、液と液の間に変動自在球面の界面または変形球面の界面、すなわち、レンズ界面を画定する。触覚部は光学小室の端縁に連結されているとともに、その液体小室それ自体に連結されて、触覚部に力が加えられると液体小室を変形させて液体界面の球形度を変動させるように図っている。従って、触覚部に力が加わったのに応じてレンズ集成体の焦点距離が変化することで、レンズ装着者の視野焦点を変動させる。
【実施例】
【0032】
一実施例においては、任意で、両液は互いに不溶性であり、円盤状の構成部(2枚)の端縁に密着封鎖された膜によって互いから分離されて、撓曲自在な液体小室を画定している。
【0033】
本発明はまた、界面の屈折調節レンズ(IRAL)を使用することにより視覚活動を矯正する方法を含んでおり、該方法は、
(i)自分の眼のレンズをIRALと置換する必要がある患者の欠陥のある天然レンズをIRALと置換する工程と、
(ii)IRALが患者の必要に適合して眼の焦点を変動させ、例えば、網膜合焦させることができるようにするにあたり、光屈折強度を変動させる、従って、IRALの焦点変動させるという手段を採用し、IRALの光屈折強度の変化が少なくとも2ジオプターであるようにする工程とを含んでおり、
(iii)IRALは屈折率が互いに異なる複数の液を利用して液と液の境界を画定して光屈折強度を変動させ、従って、界面を変動させるようにしたことを特徴とする。
【0034】
図1は光学機械原理を例示したフロー図であるが、この原理により、屈折調節用眼内レンズ(IOL)などのような屈折調節レンズが生理学的な光学信号と相互作用し、レンズの装着者の遠近両方の視覚的敏感さを向上させることができる。簡単に説明すると、脳が毛様体筋(眼の筋肉)に収縮するように指令を与える。そのような筋収縮は、微小で概ね後方に向かう力を毛様小帯繊維を介してレンズ触覚部(後段で説明する)に与える。触覚部に付与された力により調節レンズの光学力を変動させることによって、より高精度でより明瞭に入射光を網膜上に合焦させる。図中の囲み100は、そのようなプロセスにおいて、本発明のレンズなどのような屈折調節眼内レンズまたは遠近調節眼内レンズの触覚部とそこに連結された光学機械系のそれぞれの機能を概略的に例示している。触覚部は眼内レンズを眼の焦点域または合焦軸線の中心に置き、毛様体筋の力を受けて、その力を光学小室すなわちレンズ本体部に伝達する(後段でより詳細に説明する)。調節用眼内レンズが毛様溝に移植された場合、触覚部は眼の筋肉と直接接触することができる。そうして、本発明の調節用眼内レンズの光学機械系が毛様体筋の力をレンズの光屈折変化に変換する。
【0035】
図2は、本発明の界面の屈折調節レンズ(IRAL)の正面図である。図2においては、レンズ集成体10が光学小室すなわちレンズ本体部12と触覚部14とを備えているのが例示されている。図2に例示されている触覚部14は見込みのある触覚構造のうちの一例にすぎず、本件開示内容に鑑みて、当業者が容易に想起しそうな触覚構造は他にも多数あることが分かる。また、点線の円16、16'によって光学小室12の内側に例示されているのは、毛様体筋によって及ぼされる力に反応した場合の屈折表面(すなわち、2種の液と液の間の界面)の位置である。
【0036】
図3は、図2に例示されている界面の屈折調節レンズにおいて、触覚部変形角度または触覚部変位角度15、15’と、僅かな触覚部変形角度変化によって達成される界面の曲率半径16、16’の変化との間の関係を示した断面図である。図2に例示されている界面16の形状変化は、触覚部圧が変化すると屈折表面の曲率半径が増大することを説明している。触覚部圧の変化は、触覚部変形の度合いが変わることによって得られるが、触覚部変形を起こす原因となるのは毛様体筋または水晶体嚢の圧力上昇である。図示のように、内部包絡面16、16’の曲率半径は触覚部変形角度の変化に応じて変動する。液Iおよび液II(後段で詳述する屈折率特性を示す)に関連した曲率半径の上述のような変動は、僅少な毛様体筋の一挙動(または、連続運動)ごとに実質的な光屈折変化を生じる。多様な液Iおよび液IIについての変形角度変化1度あたりの光屈折の変動が上記の表1に例示されている。本発明が、先行技術に開示されている全てについて実質的にそれを超える光屈折変化をもたらすのは明らかである。従って、例えば、本発明を実施すれば、光屈折変化量(および、上述のような屈折調節量)は4ジオプターの範囲で変化させることができ、この変化範囲は6ジオプターであるのが好ましく、約7.5ジオプター以上の範囲であるのが最も好ましい。
【0037】
図4は、本発明のもう1つ別な実施例において、毛様体筋により加えられる力などの力の付与方向を矢印11で例示した斜視図である。触覚部14は、本発明の教示内容と矛盾のない部分ループのまた別な変形例である。光学小室としての液体小室、すなわち、レンズ本体部12の更に別な実施例も後段で説明してゆく。
【0038】
図5は、本発明の電機設計または圧電設計、すわなち、電気的または圧電的な取組みを説明している。留意すべきこととして、変換素子または円形触覚部40が導電素子または接続素子42により液体小室44に連結または接続されている。この取組みによれば、装着者の毛様体筋による変換素子・触覚部40の運動によって、導電素子42により液体小室44に電気信号が送信される。眼の調節は毛様体筋(図示せず)の収縮および水晶体嚢(図示せず)の収縮により誘導される。本発明の方法は、変換素子40が毛様体筋の力を感知して光学小室44を通る電流または電圧を生成することを含んでいる。電圧は光学小室44の表面に沿って表面エネルギーの変動を誘発し、この変動が原因で2種の液と液との間の界面の曲率が急峻になる。次に、一局面では、本発明は、界面の曲率変化が収縮中の毛様体筋によって生成される電気衝撃により直接誘発される調節用眼内レンズである。この実施例では、触覚部は導電材から作られている。触覚部には導電素子が埋設されているようにしてもよい。
【0039】
毛様体筋の運動または水晶体嚢の運動を電気信号に変換することができる変換器を利用して、メニスカスの形状を効果的に変化させて屈折調節を行えるようにしている。変換器は圧電素子、力センサー、アクチュエータ、または、それ以外の何らかの素子であって、力を電気信号に変換することができるものにするとよい。触覚部は力検知素子から作られているようにするとよい。触覚部は複数の形状のいずれに形成されてもよく、例えば、C字型ループ、修正型C字型ループ、方形、円盤状、板状などであってもよい。
【0040】
本発明を実施するために選択することができる素材は当業者には容易に明らかである。一実施例では、触覚部素材の具体例として、ポリメタクリ酸メチル(PMMA)、ボリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリプロピレン(PP)、または、それ以外の各種重合体が挙げられる。光学小室12の素材としては、疎水性アクリル重合体またはその共重合体(HAC)、親水性アクリル重合体またはその共重合体、シリコーン重合体またはその共重合体(ポリジメチルシロキサンすなわちPDMS)、または、それ以外の各種重合体が挙げられる。好ましい重合体としては、ポリジメチルシロキサンまたは疎水性アクリル共重合体がある(光学小室12と触覚部14は同じ素材から作られている)。留意すべきこととして、本発明の利点を達成するのに、液Iの屈折率と液IIの屈折率の間の関係が必要となる。
【0041】
ここで、本発明の更に幾つかの実施例が例示されている図6から図14を参照してゆく。図6においては、移植片、レンズ本体部、または、レンズ集成体の前面20は左側であり、背面22は右側である。レンズ本体部すなわち光学小室は一般に円盤24、26から構成されており、これら円盤はそれぞれの端縁28で撓曲可能に連結されている。図示のように、可撓性の連結部材または側壁28は圧縮可能であり、円盤24、円盤26および連結部材28の相互の間で環状接続部を設けている。
【0042】
円盤24、26は(移植時には)眼の焦点軸線に沿って互いから離隔されているので、閉鎖状態の液体小室30が画定される。液体小室30は、本発明に従って、屈折率が互いに異なっている2種の互いに不相溶性の液32と液34を包含している。一般に、屈折率の高いほうの液体34がレンズ本体部の背面側に配置され、屈折率の低いほうの液体32が前面側に配置される。
【0043】
互いに不相溶性の液32、34のせいで、球面に湾曲した界面36が形成される。この界面はその外辺部では、界面が移植片側壁28に一定の接触角40Aで合流している。液体界面の曲率は、両液体の特性および移植片素材の特性(表面張力)で決まる。これはエネルギー最小化原理に合致している。眼の筋肉からの力は、矢印42で概略表示された触覚部によって移植片に伝達され、太字の矢印は力がより大きいことを示している。このように加えられた力が側壁28を変形する。接触角40Aが一定であるせいで、側壁の傾斜変化により液体界面36の曲率半径が変動することになる(エネルギー最小化が達成される)。曲率半径の変化により装置10の光学力が変化させられ、すなわち、装置10の光屈折率が変化させられる。このようにして、眼内レンズの焦点距離が変動することで、網膜(図示せず)上に衝突した光をより良好に合焦させている。
【0044】
図7では、眼の筋肉からの力が触覚部によって移植片の変位可能な環状側壁50に伝達される変形例が例示されている。矢印52で図示されている加えられた力は可変曲線を描いた側壁50に沿って液体界面を押す。これは、移植片と一体成型されている蝶番構造部56を変形させることにより達成される。上述のような構造の側壁50に沿って液体界面を移動させるのに、上記以外にも見込みのある機械的な解決案が思い浮かぶ。側壁54の傾斜が変化するにつれて、液体界面はその曲率を適応させて一定の接触角を達成する。これもエネルギー最小化原理に合致している。曲率半径の変化は装置の光学力の変化を生じさせる。
【0045】
互いに不相溶性の液のせいで、球面に湾曲した界面36が形成される。界面36はその外辺部54では、移植片10の内側の可動リング構造に一定の接触角で合流している。この液体界面の曲率は各液体および移植片素材それぞれの特性(表面張力)で決まる。眼の筋肉由来の力が触覚部により移植片に伝達される。図8、図9、および、図10は、本発明の更に別な実施例を例示している。この実施例の触覚部80は可動内部リング81に内部結合されている。矢印82として加えられている力は移植片の内側でリング構造部81を移動させる。可動リング構造部は移植片の素材とは異なる素材(例えば、硬質素材など)から作られていてもよい。液体界面を横断してリング構造部を走らせると、液体界面の或る半径が形成されるが、これはエネルギー最小化原理に合致している。従って、半径の変化により移植片の光学力の変化が生じることになる。
【0046】
図11から図14は、静的屈折力と屈折調節力の両方が2種の液と液との間の界面によって生成されるところを例示している。移植片は、触覚部が毛様溝と接触状態になるように設計されている。移植片が水晶体嚢に載置される設計も好適である。この設計では、4本の触覚部90が例示されているが、これら触覚部が毛様溝に接触する。触覚部の本数がこれよりも少ない、または、これよりも多い設計も思い浮かぶ。調節完了状態では、収縮した毛様体筋が触覚部を硝子液の方向に押す。これが原因で、移植片内部のリングをその反対方向に移動させることになる。液体界面は或る曲率半径を形成することになるが、これはエネルギー最小化原理に合致している(リング構造部の設計と関与している素材に依存する)。矢印98は概ね、調節完了状態または調節時の状態を達成するように触覚部90を変形させる際の移動方向を例示している。図14では、液体界面の曲率が未調節状態の界面96(図11、図12、図13)と比較して大きくなっており、移植片の光学力も増大している。
【0047】
<レンズパラメータの算定>
以下の公式を利用して結果を求めた(近軸近似)。
【数1】
【0048】
以下の公式を利用して結果を以下に求めた(近軸近似)。
未調節状態の液体界面の半径
【数2】
調節完了状態の液体界面の半径
【数3】
側壁変形角度
【数4】
【0049】
テイラー近似を利用して、上記公式は更に次にように簡略化することができる。
【数5】
この場合、DLens は単位がミリメートル(mm)であり、調節力は単位がジオプター(D)である。
【0050】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0051】
図15および図16は、本発明のレンズが設置されることになる眼内の移植片部位を概略的に例示している。眼の前方は図面左側で、眼の後方は図面右側である。衝突光は左から入射してから、網膜(図示せず)上で焦点合わせされることになる。図15は、例えば、図9から図14のレンズにおいて、収縮した毛様体筋110が触覚部90に力を付与し、レンズ本体部10の内部の互いに不相溶性の2種の液の表面を変形させることでレンズの光学特性を変動させ、すなわち、移植を受けた患者の光学的必要を調節しているのを例示している。毛様溝112、硝子体114、角膜116、虹彩118、崩壊した水晶体嚢120、毛様小帯122などの眼の構造部が例示されている。図16は、図15と同じ移植片位置と同じ眼内レンズにおいて、毛様体筋が弛緩している(未調節状態)のを例示している。
【0052】
図17から図19は、前凸レンズ140が採用されている変形例を示している。これ以外の構成部材は全て同じである。
【0053】
図20および図21は、図17から図19のレンズが移植状態にあるのを例示している。
【0054】
図22から図24は、本発明の均等凸眼内レンズすなわち両凸眼内レンズ160の設計を例示している。移植片の図は、図15および図16に例示されている移植片の図と類似している。
【0055】
上記の表2から表7までを参照する。上述の数式的概念を表中に含まれている情報と関連させることで、特定の患者の視覚的必要に対して特に適用できる本発明の調節用レンズを当業者であれば設計することができる。「静的屈折力」とは、例えば、車両運転またはスポーツ競技の観戦などで、或る距離で正確な視覚的鋭敏さをもたらすのに必要なレンズ力の測定値のことである。本発明のレンズによってもたらされる調節は、同じ1つのレンズが読書に必要となるような近視野矯正の作用もすることである。従って、或る1人の患者に対して定められた所与の静的屈折力の全域について、上述のレンズ本体部である光学小室内に包含されている液Iと液II(参照番号32、34)の屈折率の所与の差(ΔRI)に対して得られる曲率半径を上記の各表は例示している。屈折率の差(ΔRI)が大きいほど、液体界面の半径は長くなり、許容されるレンズ調節力も大きくなることは明らかである。側壁変形角度が多様なレンズ調節力ごとに例示されている。上記の各表で採用されている屈折率の差(ΔRI)が0.1および0.23である点については、具体例にすぎないと解釈するべきであり、上記以外の屈折率の差を利用して、尚且つ、本発明で思量する範囲に入ることもある。
【0056】
ここで注目すべきは、本発明の一実施例では、屈折率が互いに異なっていて、尚且つ、互いに相溶性である複数の液体が使用される。この構成では、2種類の液が光学的に容認できる膜、薄膜、または、分離装置によって互いから分離されている。この時、膜は液と液の間に界面またはメニスカスを画定し(例えば、図3では16、16’、図13では96、図6から図9では36、36’で例示されている)、従って、調節の程度を決める曲率半径を定めることになる。液Iを液IIと分離している膜はどちらの液も透過させることができず、どちらの液からも化学作用を被らず、光学小室すなわちレンズ本体部の端縁に内部接着されて液と液が混和するのを防いでいる。
【0057】
本発明の界面の屈折調節レンズ(IRAL)は完全な気密封鎖構造である点に注目するべきである。本発明のIRALは丈夫で、長期に亘る移植を意図しており、何年にも及ぶ天然レンズに近い屈折調節を患者にもたらす。
【0058】
本発明の界面の屈折調節レンズ(IRAL)は、好ましい実施例では、折曲げることができる。IRALの褶曲自在な実施例では、レンズは移植時の切開部を小さくすることができるという利点の他に、褶曲自在な眼内レンズが示す医学的利点を備えている。折曲げることができるようにするために、多様なレンズ構成ごとに選択された素材は比較的高い撓曲性または相対的な剛性を示すことで、光学的に意図した機能を実施し、構造上の保全性を確保しなければならないのと同時に、レンズ構造全体が十分な柔軟性または撓曲性を示すことで、褶曲状態で保管したり、移植処置中には小さな切開部から折曲げた状態または巻上げた状態で挿入してから広げることができなければならない。
【0059】
上記のような構造上の機能および医学的機能と機械的構成を斟酌すると、当業者には多様なレンズ構成ごとに素材を選択するという示唆が与えられるだろう。光学的に容認できる素材はそれぞれの機能次第で必要な透光性を示し、長期に亘り眼に移植することができる。免疫反応、生体適合性(または、生体適合性の欠落)、および、それ以外の多様な生理学的要因は全て、そのような素材を選択する際に考慮される必要がある。本発明の構成の大半に適するものとしては、各種重合体または重合体化合物のアクリル樹脂類が提案される。
【0060】
次に列挙する特許および特許公開出願は、ここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
米国特許公開第2004/0181279号
米国特許第7,025,783号
米国特許第5,443,506号
本明細書の段落[0004]から[0007]に見られるような、本件で既述の特許も、ここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
【0061】
上述の実施例は本発明による眼に移植するための調節レンズ集成体の具体例を扱っているにすぎず、本発明の範囲は当業者には自明であるような他の実施例を完全に包含しているものと解釈するべきである。例えば、レンズ集成体の人体への移植を説明してきたが、集成体は他の動物にも適用できることは明らかである。上述のような多数の異なる特徴の順序入替え例、各種組合せ、または、順序を入替えた各種組合せのうち見込みのあるものはどんなものであれ全て、本発明の範囲に入るものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の生理学的必要の変化に応じて焦点距離を調節する、移植可能な界面の屈折調節用眼内レンズ集成体において、前記レンズ集成体は撓曲自在な光学小室およびこれと協働する触覚部を備えており、
前記光学小室はその外郭が、互いに対向して実質的に互いに平行な視覚的に透明な2枚の円盤によって画定されており、前記2枚の円盤はそれぞれの端縁で撓曲自在に連結されているとともに互いから離隔されて閉鎖状態の液体小室を画定しており、前記液体小室は屈折率が互いに異なっている第1液および第2液を包含しているとともに互いに不相溶性であって、液と液との間に球面界面またはレンズ界面を画定しており、
前記触覚部は前記光学小室の端縁に連結されているとともに前記液体小室それ自体にも連結されて、前記触覚部に力が加えられると前記液体小室を変形させて、液体界面の球面形状を変化させ、
前記触覚部に力が加えられたのに応じてレンズの焦点距離が変動し、装着者の焦点を変動させるようにしたことを特徴とする、移植可能な界面の屈折調節用眼内レンズ。
【請求項2】
界面の屈折調節用眼内レンズIRALを使用することにより視覚的活動を矯正する方法において、前記方法は、
眼の欠陥のある天然レンズを前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALと置換する処置を、その必要のある患者に施す工程と、
界面の屈折調節用眼内レンズIRALが患者の必要に適合して眼の焦点を変動させることができるようにするにあたり、界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度を変動させる手段を利用し、従って、前記眼内レンズの焦点を変動させる手段を利用する工程とを含んでおり、前記界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度の変化が少なくとも2ジオプターであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記光屈折度の変化は少なくとも4ジオプターであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光屈折度の変化はすくなくとも6ジオプターであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
装着者の生理学的必要が変化するのに応じて焦点距離を調節する、移植可能な界面の屈折調節用眼内レンズ集成体において、前記レンズ集成体は撓曲自在な光学小室およびこれと協働する触覚部を備えており、
前記光学小室はその外郭が、互いに対向して実質的に互いに平行な視覚的に透明な2枚の円盤によって画定されており、前記2枚の円盤はそれぞれの端縁で撓曲自在に連結されているとともに互いから離隔されて閉鎖状態の液体小室を画定しており、前記液体小室は屈折率が互いに異なっている第1液および第2液を包含しており、前記第1液および前記第2液は光学的に容認できる膜によって互いから分離されており、前記膜は前記円盤のそれぞれの端縁に接着されて、液と液との間に球面界面またはレンズ界面を画定しており、
前記触覚部は前記光学小室の端縁に連結されているとともに前記液体小室それ自体にも連結されて、前記触覚部に力が加えられると前記液体小室を変形させて、液体界面の球面形状を変化させ、
前記触覚部に力が加えられたのに応じてレンズの焦点距離が変動し、装着者の焦点を変動させるようにしたことを特徴とする、レンズ集成体。
【請求項6】
前記レンズ集成体は褶曲自在であることを特徴とする、請求項5に記載のレンズ集成体。
【請求項7】
前記レンズ集成体は、眼内レンズ注入装置を利用して眼内に移植することができる構成になっていることを特徴とする、請求項6に記載のレンズ集成体。
【請求項8】
前記第1液の屈折率と前記第2液の屈折率との間の差(ΔRI)は少なくとも約0.1であることを特徴とする、請求項5に記載のレンズ集成体。
【請求項9】
前記屈折率の差(ΔRI)は少なくとも約0.2であることを特徴とする、請求項5に記載のレンズ集成体。
【請求項10】
界面の屈折調節用眼内レンズIRALを使用することにより視覚的活動を矯正する方法において、前記方法は、
眼の欠陥のある天然レンズを前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALと置換する処置を、その必要のある患者に施す工程と、
界面の屈折調節用眼内レンズIRALが患者の必要に適合して眼の焦点を変動させることができるようにするにあたり、界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度を変動させる手段を利用し、従って、前記眼内レンズの焦点を変動させる手段を利用する工程とを含んでおり、前記界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度の変化が少なくとも2ジオプターであり、
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALが互いに屈折率の異なる複数の液体を利用して界面を画定するようにしたことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALの光屈折度の変動は、毛様体筋の収縮に反応して起こることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALは圧電反応を利用して前記界面を変動させるようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALは力を機械的に加えることにより前記界面を変動させるようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項1】
装着者の生理学的必要の変化に応じて焦点距離を調節する、移植可能な界面の屈折調節用眼内レンズ集成体において、前記レンズ集成体は撓曲自在な光学小室およびこれと協働する触覚部を備えており、
前記光学小室はその外郭が、互いに対向して実質的に互いに平行な視覚的に透明な2枚の円盤によって画定されており、前記2枚の円盤はそれぞれの端縁で撓曲自在に連結されているとともに互いから離隔されて閉鎖状態の液体小室を画定しており、前記液体小室は屈折率が互いに異なっている第1液および第2液を包含しているとともに互いに不相溶性であって、液と液との間に球面界面またはレンズ界面を画定しており、
前記触覚部は前記光学小室の端縁に連結されているとともに前記液体小室それ自体にも連結されて、前記触覚部に力が加えられると前記液体小室を変形させて、液体界面の球面形状を変化させ、
前記触覚部に力が加えられたのに応じてレンズの焦点距離が変動し、装着者の焦点を変動させるようにしたことを特徴とする、移植可能な界面の屈折調節用眼内レンズ。
【請求項2】
界面の屈折調節用眼内レンズIRALを使用することにより視覚的活動を矯正する方法において、前記方法は、
眼の欠陥のある天然レンズを前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALと置換する処置を、その必要のある患者に施す工程と、
界面の屈折調節用眼内レンズIRALが患者の必要に適合して眼の焦点を変動させることができるようにするにあたり、界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度を変動させる手段を利用し、従って、前記眼内レンズの焦点を変動させる手段を利用する工程とを含んでおり、前記界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度の変化が少なくとも2ジオプターであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記光屈折度の変化は少なくとも4ジオプターであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光屈折度の変化はすくなくとも6ジオプターであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
装着者の生理学的必要が変化するのに応じて焦点距離を調節する、移植可能な界面の屈折調節用眼内レンズ集成体において、前記レンズ集成体は撓曲自在な光学小室およびこれと協働する触覚部を備えており、
前記光学小室はその外郭が、互いに対向して実質的に互いに平行な視覚的に透明な2枚の円盤によって画定されており、前記2枚の円盤はそれぞれの端縁で撓曲自在に連結されているとともに互いから離隔されて閉鎖状態の液体小室を画定しており、前記液体小室は屈折率が互いに異なっている第1液および第2液を包含しており、前記第1液および前記第2液は光学的に容認できる膜によって互いから分離されており、前記膜は前記円盤のそれぞれの端縁に接着されて、液と液との間に球面界面またはレンズ界面を画定しており、
前記触覚部は前記光学小室の端縁に連結されているとともに前記液体小室それ自体にも連結されて、前記触覚部に力が加えられると前記液体小室を変形させて、液体界面の球面形状を変化させ、
前記触覚部に力が加えられたのに応じてレンズの焦点距離が変動し、装着者の焦点を変動させるようにしたことを特徴とする、レンズ集成体。
【請求項6】
前記レンズ集成体は褶曲自在であることを特徴とする、請求項5に記載のレンズ集成体。
【請求項7】
前記レンズ集成体は、眼内レンズ注入装置を利用して眼内に移植することができる構成になっていることを特徴とする、請求項6に記載のレンズ集成体。
【請求項8】
前記第1液の屈折率と前記第2液の屈折率との間の差(ΔRI)は少なくとも約0.1であることを特徴とする、請求項5に記載のレンズ集成体。
【請求項9】
前記屈折率の差(ΔRI)は少なくとも約0.2であることを特徴とする、請求項5に記載のレンズ集成体。
【請求項10】
界面の屈折調節用眼内レンズIRALを使用することにより視覚的活動を矯正する方法において、前記方法は、
眼の欠陥のある天然レンズを前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALと置換する処置を、その必要のある患者に施す工程と、
界面の屈折調節用眼内レンズIRALが患者の必要に適合して眼の焦点を変動させることができるようにするにあたり、界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度を変動させる手段を利用し、従って、前記眼内レンズの焦点を変動させる手段を利用する工程とを含んでおり、前記界面の屈折調節用眼内レンズの光屈折度の変化が少なくとも2ジオプターであり、
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALが互いに屈折率の異なる複数の液体を利用して界面を画定するようにしたことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALの光屈折度の変動は、毛様体筋の収縮に反応して起こることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALは圧電反応を利用して前記界面を変動させるようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記界面の屈折調節用眼内レンズIRALは力を機械的に加えることにより前記界面を変動させるようにしたことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図6】
【図7】
【図2】
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【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
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【図12】
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【図21】
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【図23】
【図24】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−517639(P2010−517639A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548490(P2009−548490)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/052933
【国際公開番号】WO2008/097915
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507188902)キー メディカル テクノロジーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/052933
【国際公開番号】WO2008/097915
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(507188902)キー メディカル テクノロジーズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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