説明

畦塗り機

【課題】硬さが均一な畦側面を形成できる畦塗り機を提供する。
【解決手段】畦塗り機は、土を盛り上げる盛土手段と、回転中心軸線Xを中心として回転しながら盛土を締め固めて畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成体27とを具備する。畦側面形成体27は、回転中心軸線を中心として放射状に位置する複数の作用面部31を備える。各作用面部31は、回転方向後側に接触面32を有し、回転方向前側に非接触面33を有する。畦側面形成体27の縮径側では、一方の作用面部31の接触面32と他方の作用面部31の非接触面33との境界線である縮径側境界線Aが畦側面形成体27の径方向に沿って位置する。畦側面形成体27の拡径側では、一方の作用面部31の接触面32と他方の作用面部31の非接触面33との境界線である拡径側境界線Bが畦側面形成体27の径方向に対して回転方向側にずれて位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬さが均一な畦側面を形成できる畦塗り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば土を盛り上げる盛土手段と、水平な回転中心軸線を中心として回転しながら盛土手段にて盛り上げられた盛土を締め固めて畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成体とを具備し、畦側面形成体は、回転中心軸線を中心として放射状に配設され回転方向後側に接触面を有し回転方向前側に非接触面を有する複数の作用面部を備え、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線が畦側面形成体の径方向に沿って位置する畦塗り機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−313603号公報(図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の畦塗り機では、略円錐台状をなす畦側面形成体の拡径側の周速が縮径側の周速より速く、また土が落下して量が多くなるため、畦側面の下部が畦側面の上部より硬くなり、畦側面の硬さが不均一になるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、硬さが均一な畦側面を形成できる畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の畦塗り機は、土を盛り上げる盛土手段と、回転中心軸線を中心として回転しながら、前記盛土手段にて盛り上げられた土を締め固めて畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成体とを具備し、前記畦側面形成体は、前記回転中心軸線を中心として放射状に配設され、回転方向後側に接触面を有し、回転方向前側に非接触面を有する複数の作用面部を備え、前記畦側面形成体の縮径側では、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線である縮径側境界線が、前記畦側面形成体の径方向に沿って位置し、前記畦側面形成体の拡径側では、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線である拡径側境界線が、前記畦側面形成体の径方向に対して回転方向側にずれて位置するものである。
【0006】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、拡径側境界線は、畦側面形成体の径方向に対して回転方向側に所定角度傾いた方向に沿って位置する直線であるものである。
【0007】
請求項3記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、拡径側境界線は、回転方向側とは反対側に向って凸状の湾曲線であるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、畦側面形成体の縮径側では、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線である縮径側境界線が畦側面形成体の径方向に沿って位置し、畦側面形成体の拡径側では、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線である拡径側境界線が畦側面形成体の径方向に対して回転方向側にずれて位置する構成であるから、従来の構成に比べて、作用面部の接触面の面積が小さくなり、また落下する土の量が少なくなるため、硬さが均一な畦側面を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の畦塗り機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、1は畦塗り機で、この畦塗り機1は、走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結されて使用される牽引式のものである。
【0011】
畦塗り機1は、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結された機体2と、機体2の一側前部に回転可能に設けられ田面および畦の土を耕耘して畦の田面側の側面上および上面上に盛り上げるロータリ式の盛土手段3と、機体2の一側後部に回転可能に設けられ盛土手段3の後方位置で水平な回転中心軸線Xを中心として回転しながら盛土手段3にて盛り上げられた盛土を締め固めて畦(新畦)を形成する畦形成手段4と、盛土手段3の前方位置で畦の上面を削る回転可能な上面削り手段5とを具備している。
【0012】
機体2は、トラクタ(図示せず)の後部の3点リンクを介して連結された固定機枠7と、固定機枠7に平行リンク8を介して左右方向に移動可能(オフセット可能)に設けられた可動機枠9と、可動機枠9を左右方向に移動させる電動油圧シリンダ等の駆動手段10とを備えている。
【0013】
固定機枠7は、軸保持部11を有し、この軸保持部11に略前後方向の入力軸12が回転可能に設けられ、この入力軸12はトラクタのPTO軸にユニバーサルジョイントを介して接続されている。可動機枠9は、伝動ケース機能を兼ね備えたもので、枠部14と、枠部14に上下方向に回動可能に設けられ盛土手段3を保持する盛土手段用枠部15と、枠部14に設けられ畦形成手段4を保持する畦形成手段用枠部16とを有している。盛土手段用枠部15は電動油圧シリンダ等の駆動手段(図示せず)にて枠部14に対して上下方向に回動し、この盛土手段用枠部15の上下回動によって盛土手段3の畦形成手段4に対する上下方向位置が調整可能となっている。また、可動機枠9にはゲージ輪17が設けられ、このゲージ輪17は高さ調整用のハンドル18の回動操作によって上下位置調整可能となっている。
【0014】
盛土手段3は、機体2の可動機枠9の盛土手段用枠部15にて回転可能に水平状に軸支された回転軸21と、回転軸21に設けられこの回転軸21と一体となって回転しながら田面および畦の土を耕耘して畦の田面側の側面上および上面上に盛り上げる複数の盛土爪22とを備えている。回転軸21は、入力軸12側からの動力を動力伝達手段23から受けて所定方向に駆動回転する。複数の盛土爪22の上方部は、図示しないカバー体にて覆われている。
【0015】
畦形成手段4は、機体2の可動機枠9の畦形成手段用枠部16にて回転可能に水平状に軸支された回転軸26と、回転軸26に設けられ回転中心軸線Xを中心として回転しながら盛土手段3にて盛り上げられた盛土を締め固めて田面側に向って下り傾斜する畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成体27と、回転軸26に設けられ回転中心軸線Xを中心として回転しながら盛土手段3にて盛り上げられた盛土を締め固めて水平な畦上面を形成する略円筒状の畦上面形成体28とを備えている。回転軸26は、入力軸12側からの動力を動力伝達手段23から受けて所定方向に駆動回転する。畦側面形成体27は、機体2側に向って拡径する略円錐台状に形成され、この畦側面形成体27の縮径端部に畦上面形成体28が連設されている。
【0016】
ここで、畦側面形成体27は、図2に示すように、回転中心軸線Xを中心として放射状に配設され周方向に並んで位置する略扇形状でかつやや湾曲面状の複数、例えば8つの作用面部31を備えている。
【0017】
各作用面部31は、盛土と接触してその盛土を畦側に向けて押し込むようにして締め固める接触面(図2中、平行斜線が施された部分)32を回転方向後側の略半部に有し、かつ盛土と接触しない非接触面33を回転方向前側の略半部に有している。すなわち作用面部31は、回転方向前側の非接触面33と、回転方向後側の接触面32とにて構成されている。また、作用面部31は、図3に示すように、回転中心軸線Xからの距離が回転方向前端から回転方向後端に向って徐々に増大する状態に設けられ、隣合う作用面部31のうちの一方の作用面部31の回転方向後端部が他方の作用面部31の回転方向前端部に段差部35を介して連結されている。
【0018】
そして、図2に示されるように、畦側面形成体27の縮径側、つまり畦側面形成体27の回転中心軸線(回転中心)Xに近い部分では、隣合う作用面部31のうちの一方の作用面部31の接触面32と他方の作用面部31の非接触面33との境界線である直線状の縮径側境界線Aが、回転中心軸線Xと交わる畦側面形成体の径方向に沿って位置する。すなわち、縮径側境界線Aの延長線が畦側面形成体27の回転中心を通る構成となっている。
【0019】
また、畦側面形成体27の拡径側、つまり畦側面形成体27の回転中心軸線(回転中心)Xから遠い部分では、隣合う作用面部31のうちの一方の作用面部31の接触面32と他方の作用面部31の非接触面33との境界線である拡径側境界線Bが、畦側面形成体27の径方向に対して接触面32の周方向長さが回転中心軸線Xからの距離に拘わらず略一定になるように回転方向側にずれて位置する。すなわち、拡径側境界線Bの延長線が畦側面形成体27の回転中心を通らない構成となっている。
【0020】
この拡径側境界線Bは、例えば畦側面形成体27の径方向に対して回転方向側に所定の鋭角的な傾斜角度αだけ傾いた方向に沿って位置する直線である。傾斜角度αは例えば5度〜20度で、好ましくは略10度である。なお、作用面部31の回転方向後端縁(境界線)が、縮径側境界線Aおよび拡径側境界線Bにて構成され、中間の1箇所で屈曲した略く字状に形成されている。つまり段差部35が正面視で略く字状になっている。
【0021】
次に、上記畦塗り機1の作用等を説明する。
【0022】
トラクタの後部の3点リンクに畦塗り機1を連結してトラクタを走行させると、畦塗り機1はトラクタとともに進行方向前方に向って移動し、トラクタから出力される動力が入力軸12および動力伝達手段23を経て回転軸21,26等に伝達され、その結果、盛土手段3および畦形成手段4がそれぞれ所定方向に駆動回転する。
【0023】
盛土手段3および畦形成手段4が駆動回転すると、田面および元の畦の土が盛土爪22によって耕耘されて畦の田面側の側面上および上面上に盛り上げられ、この畦上に盛り上げられた盛土は、畦上面形成体28にて締め固められて畦上面が形成され、畦側面形成体27にて締め固められて畦側面が形成される。
【0024】
特に、畦側面に関しては、畦側面形成体27の各作用面部31の接触面32が、盛土に対して断続的に接触することで盛土を叩くようにして締め固める。このとき、接触面32と接触した土は、図2の矢印方向に移動するが、その土の移動方向は、畦側面形成体27の拡径側では、畦側面形成体27の縮径側に比べて進行方向後方を向いており、土が落下しにくく、縮径側の土の流れと拡径側の土の流れとが交差する部分では、土が集められ、また土の逃げ場がないため、強固な畦側面が形成される。また、土を集める場所は、境界線の屈曲点の位置を変更することで任意に決められる。境界線の屈曲点は、1つ以上(土を集める場所は1箇所以上)で境界線(段差部35)の形状は直線に限らない。
【0025】
そして、この畦塗り機1によれば、畦側面形成体27の縮径側では縮径側境界線Aが畦側面形成体27の径方向に沿って位置し、畦側面形成体27の拡径側では拡径側境界線Bが畦側面形成体27の径方向に対して回転方向側にずれて位置する構成であるから、従来の構成に比べて、畦側面形成体27の作用面部31の接触面32の面積が小さくなり、また落下する土の量が少なくなるため、畦側面形成体27で硬さが均一な畦側面を形成でき、崩れにくい強固な畦を形成することができる。
【0026】
また、畦側面形成体27の拡径側では、畦側面を締め固める力による反力が分散されるため、トラクタの後輪が横滑りする等の不具合が生じにくくなり、トラクタの直進走行性を向上させることができる。
【0027】
なお、上記実施の形態では、拡径側境界線Bが畦側面形成体27の径方向に対して回転方向側に所定角度傾いた方向に沿って位置する直線である構成について説明したが、例えば図4に示すように、拡径側境界線Bが回転方向側とは反対側に向って凸状の湾曲線である構成でもよい。
【0028】
また、例えば図示しないが、拡径側境界線Bがさらに中間で屈曲した構成や、拡径側境界線Bが部分的に湾曲した構成等でもよい。
【0029】
また一方、畦側面形成体27の作用面部31の数は、6つ、8つ或いはそれ以上でもよく、任意である。
【0030】
さらに、畦側面形成体27は、円錐台状のベースの外面側に複数枚の略扇形状の作用板を取り付けて構成してもよく、複数枚の略扇形状の作用板を溶接等にて連結して構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面図である。
【図2】同上畦塗り機の畦側面形成体を示す正面図である。
【図3】同上畦塗り機の畦側面形成体の部分端面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る畦塗り機の畦側面形成体を示す正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 畦塗り機
3 盛土手段
27 畦側面形成体
31 作用面部
32 接触面
33 非接触面
A 縮径側境界線
B 拡径側境界線
X 回転中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を盛り上げる盛土手段と、
回転中心軸線を中心として回転しながら、前記盛土手段にて盛り上げられた土を締め固めて畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成体とを具備し、
前記畦側面形成体は、前記回転中心軸線を中心として放射状に配設され、回転方向後側に接触面を有し、回転方向前側に非接触面を有する複数の作用面部を備え、
前記畦側面形成体の縮径側では、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線である縮径側境界線が、前記畦側面形成体の径方向に沿って位置し、
前記畦側面形成体の拡径側では、隣合う作用面部のうちの一方の作用面部の接触面と他方の作用面部の非接触面との境界線である拡径側境界線が、前記畦側面形成体の径方向に対して回転方向側にずれて位置する
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
拡径側境界線は、畦側面形成体の径方向に対して回転方向側に所定角度傾いた方向に沿って位置する直線である
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【請求項3】
拡径側境界線は、回転方向側とは反対側に向って凸状の湾曲線である
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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