説明

異常判定装置およびこれを備える車両並びに異常判定方法

【課題】大気圧を検出する大気圧センサの異常の有無をより適正に判定する。
【解決手段】路面勾配θと車軸回転量Awとに基づいて車両が位置する推定標高hestを演算し(S120,130)、大気圧センサにより検出される実測大気圧Paと推定標高hestに基づく推定大気圧Pestとの差である大気圧差DPが閾値DPref未満のときや大気圧差DPが閾値DPref以上であっても実測大気圧Paの変化量ΔPaと推定大気圧Pestの変化量ΔPestとの差である変化量差ΔDPが所定時間に亘って閾値ΔDPref未満となるときには大気圧センサに異常は生じていないと判定し(S180〜S230)、大気圧差DPが閾値DPref以上で変化量差ΔDPが所定時間以内に閾値ΔDPref以上となるときには大気圧センサに異常が生じている判定する(S180〜S220,S260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常判定装置およびこれを備える車両並びに異常判定方法に関し、詳しくは、大気圧を検出する大気圧検出手段と共に車両に搭載されて大気圧検出手段の異常を判定する異常判定装置およびこれを備える車両並びに車両における大気圧検出手段の異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の異常判定装置としては、大気圧を検出する大気圧センサと、車両の速度を検出する車両速度センサと、を備え、現在地の勾配と車両の速度とに基づいて推定標高を算出すると共に推定標高から推定される推定大気圧と大気圧センサにより検出される実測大気圧とを比較することによって大気圧センサの異常の有無を判定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この異常判定装置では、こうした異常の判定により複数の大気圧センサを備えることなく、より正確に大気圧センサの異常を検出することができるとしている。
【特許文献1】特開2006−37924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、大気圧センサにより検出される大気圧を用いて制御が行なわれる車両では、大気圧センサの異常の有無をより適正に判定することが望まれている。また、この大気圧センサの異常判定としては、部品点数の削減の観点などから、単一の大気圧センサを備える構成においても可能な手段が望ましい。このため、上述した異常判定装置のように路面勾配と車両の速度とに基づいて推定標高を算出し大気圧センサの異常判定を行なうことも考えられるが、車輪がスリップした場合などには推定標高に誤差が生じて大気圧センサの異常の有無を誤判定するおそれがある。
【0004】
本発明の異常判定装置およびこれを備える車両並びに異常判定方法は、大気圧を検出する大気圧検出装置の異常の有無をより適正に判定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の異常判定装置およびこれを備える車両並びに異常判定方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の異常判定装置は、
大気圧を検出する大気圧検出手段と共に車両に搭載されて該大気圧検出手段の異常を判定する異常判定装置であって、
路面勾配を検出する路面勾配検出手段と、
車軸の回転量を検出する車軸回転量検出手段と、
前記検出された路面勾配と前記検出された車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に該推定した車両位置標高の変化量を積算することにより前記車両位置標高を演算する車両位置標高演算手段と、
前記演算された車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と前記検出された大気圧との差が所定大気圧未満のとき又は前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上であっても前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となる変化量差所定量未満時には前記大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上で且つ前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が前記所定時間以内に前記所定量以上となるときには前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定する異常判定手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の異常判定装置は、路面勾配と車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に推定した車両位置標高の変化量を積算することにより車両位置標高を演算し、演算した車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と大気圧検出手段により検出された大気圧との差が所定大気圧未満のときや推定大気圧と検出された大気圧との差が所定大気圧以上であっても推定大気圧の単位時間当たりの変化量と検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となるときには大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、推定大気圧と検出された大気圧との差が所定大気圧以上で推定大気圧の単位時間当たりの変化量と検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間以内に所定量以上となるときには大気圧検出手段に異常が生じていると判定する。これにより、単一の大気圧検出手段を備える構成においても大気圧検出手段の異常判定をすることができる。また、スリップなどによって車両位置標高に誤差が生じ、大気圧検出手段により検出された大気圧と推定大気圧との差が所定大気圧以上に至ったときでも、その後所定時間に亘って検出された大気圧の単位時間当たりの変化量の差が所定量未満のときには大気圧検出手段に異常は生じていないと判定されるため、大気圧検出手段の異常の有無をより適正に判定することができる。
【0008】
こうした本発明の異常判定装置において、前記車両位置標高演算手段は、前記変化量差所定量未満時には前記車両位置標高を前記検出された大気圧に基づく標高に補正してその後の該車両位置標高の演算を行なう手段であるものとすることもできる。こうすれば、スリップなどによって車両位置標高に誤差が生じたときにも適正に補正してその後の異常判定を行なうことができる。
【0009】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の異常判定装置、即ち、基本的には、大気圧を検出する大気圧検出手段と共に車両に搭載されて該大気圧検出手段の異常を判定する異常判定装置であって、路面勾配を検出する路面勾配検出手段と、車軸の回転量を検出する車軸回転量検出手段と、前記検出された路面勾配と前記検出された車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に該推定した車両位置標高の変化量を積算することにより前記車両位置標高を演算する車両位置標高演算手段と、前記演算された車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と前記検出された大気圧との差が所定大気圧未満のとき又は前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上であっても前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となる変化量差所定量未満時には前記大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上で且つ前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が前記所定時間以内に前記所定量以上となるときには前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定する異常判定手段と、を備える異常判定装置を搭載し、走行用の動力を出力する電動機と、充放電可能な蓄電手段と、前記蓄電手段からの電力を昇圧して前記電動機に供給する昇圧回路と、前記異常判定手段により前記大気圧検出手段に異常が生じていないと判定されるときには前記検出された大気圧に基づく昇圧制限の範囲内で前記蓄電手段からの電力を昇圧して走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記電動機と前記昇圧回路とを制御し、前記異常判定手段により前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定されるときには所定の昇圧制限の範囲内で前記蓄電手段からの電力を昇圧して前記要求駆動力により走行するよう前記電動機と前記昇圧回路とを制御する制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0010】
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の異常判定装置を備えるから、本発明の異常判定装置が奏する効果、例えば、単一の大気圧検出手段を備える構成においても大気圧検出手段の異常判定をすることができる効果や大気圧検出手段の異常の有無をより適正に判定することができる効果を奏することができる。また、大気圧検出手段に異常が生じていないと判定されるときには大気圧検出手段により検出された大気圧に基づく昇圧制限の範囲内で蓄電手段からの電力を昇圧して走行に要求される要求駆動力により走行するよう電動機と昇圧回路とを制御し、大気圧検出手段に異常が生じていると判定されるときには所定の昇圧制限の範囲内で蓄電手段からの電力を昇圧して要求駆動力により走行するよう電動機と昇圧回路とを制御する。これにより、検出された大気圧に基づいて昇圧回路をより適正に制御することができる。ここで、「所定の昇圧制限」としては、例えば、大気圧が比較的低いときの大気圧に基づく昇圧制限を用いることができる。
【0011】
こうした本発明の車両において、内燃機関と、動力を入出力する発電機と、前記車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備えるものとすることもできる。ここで、「3軸式動力入出力手段」としては、シングルピニオン式またはダブルピニオン式の遊星歯車機構やデファレンシャルギヤなどが含まれる。
【0012】
本発明の異常判定方法は、
大気圧を検出する大気圧検出手段を備える車両における該大気圧検出手段の異常を判定する異常判定方法であって、
(a)路面勾配と車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に該推定した車両位置標高の変化量を積算することにより前記車両位置標高を演算し、
(b)前記演算した車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と前記大気圧検出手段により検出された大気圧との差が所定大気圧未満のとき又は前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上であっても前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となるときには前記大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上で且つ前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が前記所定時間以内に前記所定量以上となるときには前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定する、
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の異常判定方法は、路面勾配と車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に推定した車両位置標高の変化量を積算することにより車両位置標高を演算し、演算した車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と大気圧検出手段により検出された大気圧との差が所定大気圧未満のときや推定大気圧と検出された大気圧との差が所定大気圧以上であっても推定大気圧の単位時間当たりの変化量と検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となるときには大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、推定大気圧と検出された大気圧との差が所定大気圧以上で推定大気圧の単位時間当たりの変化量と検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間以内に所定量以上となるときには大気圧検出手段に異常が生じていると判定する。これにより、単一の大気圧検出手段を備える構成においても大気圧検出手段の異常判定をすることができる。また、スリップなどによって車両位置標高に誤差が生じ、大気圧検出手段により検出された大気圧と推定大気圧との差が所定大気圧以上に至ったときでも、その後所定時間に亘って検出された大気圧の単位時間当たりの変化量の差が所定量未満のときには大気圧検出手段に異常は生じていないと判定されるため、大気圧検出手段の異常の有無をより適正に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例としての異常判定装置を搭載した電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、駆動輪24a,24bに動力を出力する周知の同期発電電動機としてのモータMGと、直流電流を交流電流に昇圧してモータMGに供給可能なインバータ22と、バッテリ30からの電力をその電圧を変換してインバータ22に供給可能な昇圧回路34と、駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dの回転位置θwa〜θwdを検出する回転位置センサ58a〜58dと、大気圧Paを検出する大気圧センサ60と、路面勾配θを検出する勾配センサ61と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット40とを備える。なお、昇圧回路34のバッテリ30側およびインバータ22側の正極母線と負極母線とには、それぞれ平滑用のコンデンサ32,36が取り付けられている。ここで、異常判定装置としては、回転位置センサ58a〜58dや勾配センサ61,電子制御ユニット40が相当する。
【0016】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に処理プログラムを記憶するROM44と、データを一時的に記憶するRAM46と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。電子制御ユニット40には、イグニッションスイッチ50からのイグニッション信号,シフトレバー51の操作位置を検出するシフトポジションセンサ52からのシフトポジションSP,アクセルペダル53の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル55の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ56からのブレーキペダルポジションBP,駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dの回転位置を検出する回転位置センサ58a〜58dからの回転位置θwa〜θwd,大気圧センサ60からの大気圧Pa,勾配センサ61からの路面勾配θなどが入力ポートを介して入力されており、電子制御ユニット40からは、インバータ22のスイッチング素子へのスイッチング制御信号や昇圧回路34のスイッチング素子へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、電子制御ユニット40は、駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dの回転位置θwa〜θwdに基づいて車速Vや駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dに接続された車軸の回転変化量としての車軸回転量Awの演算もしている。
【0017】
こうして構成された実施例の電気自動車20は、運転者によるアクセルペダル53の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動輪24a,24bに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動輪24a,24bに連結された車軸に出力されるようにモータMGが制御される。また、昇圧回路34は、バッテリ30とインバータ22との間で電力のやりとりが円滑に行なわれるように、インバータ22に印加される電圧(以下、高圧系の電圧という)Vhが電圧指令Vh*となるよう制御される。
【0018】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作について説明する。図2は電子制御ユニット40により実行される異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0019】
異常判定ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、まず、大気圧センサ60からの大気圧(以下、実測大気圧という)Paや勾配センサ61からの路面勾配θ,車軸回転量Awなどの制御に必要なデータを入力する処理を実行し(ステップS100)、後述する推定標高hestの値を補正する必要があるか否かを示す補正フラグFの値を調べる(ステップS110)。ここで、車軸回転量Awは、回転位置θwa〜θwdに基づいて前回この処理が行なわれたときからの車軸の回転量として演算されRAM46の所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。また、補正フラグFは、推定標高hestの値を補正する必要はないときに値0が設定され、推定標高hestの値を補正する必要があるときに値1が設定されるフラグである。
【0020】
補正フラグFが値0のときには、路面勾配θや車軸回転量Aw,車軸回転量Awを車両が移動した距離に換算する換算係数kに基づいて次式(1)により車両が現在位置する標高の変化量としての標高変化量Δhを演算すると共に(ステップS120)、演算した標高変化量Δhを前回このルーチンを実行したときの推定標高(前回hest)に加えて推定標高hestを演算する(ステップS130)。即ち、路面勾配θと車軸回転量Awとに基づいて標高変化量Δhを演算すると共にこの標高変化量Δhを積算することにより推定標高hestを演算するのである。
【0021】
Δh = k・Aw・sinθ (1)
【0022】
続いて、演算した推定標高hestを用いて推定大気圧Pestを設定すると共に(ステップS160)、大気圧センサ60によって検出された実測大気圧Paと設定した推定大気圧Pestとの差として大気圧差DPを計算し(ステップS170)、大気圧差DPを閾値DPrefと比較する(ステップS180)。推定大気圧Pestは、実施例では、推定標高hestが高いほどリニアに小さくなるよう予め定められたマップを用いて設定されるものとした。また、閾値DPrefは、実測大気圧Paと推定大気圧Pestとが略同一であるか否かを判定するために用いられるものであり、実測大気圧Paや車軸回転量Aw,路面勾配θの検出精度などに基づいて予め定めた値を用いることができる。大気圧差DPが閾値DPref未満のときには、大気圧センサ60に異常は発生していないと判断して異常判定ルーチンを終了する。一般的に大気圧は標高に依存するため、車両が位置する標高から大気圧を推定することができる。このため、実施例では、大気圧差DPが閾値DPref未満のときには、即ち、実測大気圧Paと推定大気圧Pestとが略同一のときには、大気圧センサ60に異常は発生していないと判断するものとした。
【0023】
大気圧差DPが閾値DPref以上のときには、即ち、実測大気圧Paと推定大気圧Pestとが略同一でないときには、大気圧センサ60に異常が生じている可能性があると判断し、現在、車両がスリップしている最中であるか否かを判定し(ステップS185)、車両がスリップしている最中は異常判定ルーチンを終了する。ここで、車両がスリップしている最中であるか否かの判定は、回転位置θwa〜θwdに基づいて図示しないスリップ判定ルーチンによって行なわれるが、スリップの判定については本発明の中核をなさないため詳細な説明は省略する。また、車両がスリップしている最中は異常判定ルーチンを終了する理由については、説明の都合上、後述する。
【0024】
そして、車両がスリップしている最中でないときには、実測大気圧Paから前回このルーチンを実行したときの実測大気圧(前回Pa)を減じて実測大気圧変化量ΔPaを設定すると共に(ステップS190)、推定大気圧Pestから前回このルーチンを実行したときの推定大気圧(前回Pest)を減じて推定大気圧変化量ΔPestを設定し(ステップS200)、計算した実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとの差として変化量差ΔDPを計算し(ステップS210)、変化量差ΔDPを閾値ΔDPrefと比較する(ステップS220)。実施例の異常判定ルーチンは所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行されるため、実測大気圧変化量ΔPaは実測大気圧Paの所定時間当たりの変化量を示し、推定大気圧変化量ΔPestは推定大気圧Pestの所定時間当たりの変化量を示すことになる。また、閾値ΔPrefは、実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとが略同一であるか否かを判定するために用いられるものであり、実測大気圧Paや車軸回転量Aw,路面勾配θの検出精度などに基づいて予め定めた値を用いることができる。
【0025】
変化量差ΔDPが閾値ΔDPref未満のときには、即ち、実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとが略同一のときには、この状態が所定時間(例えば、数十分)に亘って継続しているか否かを判定し(ステップS230)、所定時間が経過するまでは大気圧センサ60の異常の有無を判定するのに十分な時間が経過していないと判断して異常判定ルーチンを終了する。そして、変化量差ΔDPが閾値ΔDPref未満の状態が所定時間に亘って継続するときには、大気圧センサ60に異常は生じていないと判断すると共にスリップなどのために推定標高hestに誤差が生じていて補正する必要があると判断し、補正フラグFに値1を設定して(ステップS240)、異常判定ルーチンを終了する。一方、所定時間が経過するまでに変化量差ΔDPが閾値ΔDPref以上になるときには(ステップS220)、大気圧センサ60に異常が生じていると判断して図示しない警告灯を点灯すると共に(ステップS250)、大気圧センサ60の異常の有無を示す異常フラグGに値1を設定して(ステップS260)、異常判定ルーチンを終了する。上述したように、一般的に大気圧は標高に依存し車両が位置する標高は車軸回転量Awと路面勾配θとに基づいて積算により演算することができる。しかし、例えば登坂路で車両がスリップした場合には車両が移動していないにも拘わらず車軸が回転するため推定標高hestに誤差が生じてしまい、また、気候や天候によって同じ標高においても大気圧が異なる場合もある。したがって、単に実測大気圧Paと推定大気圧Pestの差に基づいて大気圧センサ60の異常の有無を判定すると誤判定するおそれがある。このため実施例では、大気圧差DPが閾値DPref以上であっても所定時間に亘って変化量差ΔDPが閾値ΔDPref未満のときには大気圧センサ60に異常は生じていないと判断し、大気圧差DPが閾値DPref以上で且つ所定時間以内に変化量差ΔDPが閾値ΔDPref以上となるときには大気圧センサ60に異常が生じていると判断するものとした。これは、大気圧は一般に標高に対してリニアに変化するため、大気圧センサ60に異常が生じていなければ、実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとは略同一となると考えられることに基づく。また、車両がスリップしている最中は、推定大気圧変化量ΔPestについても誤差が生じるおそれがあるため、ステップS185で大気圧センサ60の異常の有無を判定することができないと判断して異常判定ルーチンを終了するものとした。このように異常判定を行なうことにより、大気圧センサ60の異常の有無をより適正に判定することができる。また、実施例では、実測大気圧Paを推定大気圧Pestと比較して大気圧センサ60の異常の有無を判定するから、単一の大気圧センサを備える車両においても大気圧センサ60の異常の有無を判定することができる。
【0026】
こうして補正フラグFに値1が設定されると、ステップS110で補正フラグFが値1であると判定され、推定標高hestを大気圧センサ60により検出された実測大気圧Paに基づく標高に補正すると共に(ステップS140)、補正フラグFを値0にリセットして(ステップS150)、ステップS160以降の処理を実行する。ここで、実測大気圧Paに基づく標高は、上述した推定標高hestと推定大気圧Pestの関係と同様の関係として実測大気圧Paが小さいほどリニアに高くなるよう予め定められたマップを用いて設定するものとした。これにより、推定標高hestをより適正に設定することができ、推定標高hestに基づく大気圧センサ60の異常の有無をより適正に判定することができる。
【0027】
以上、異常判定ルーチンについて説明した。次に、大気圧センサ60により検出した実測大気圧Paや異常判定ルーチンによって設定された異常フラグGなどに基づく制御について説明する。図3は電子制御ユニット40により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、異常判定ルーチンと並行して所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0028】
制御ルーチンでは、まず、アクセルペダルポジションセンサ54からのアクセル開度Accや車速V,大気圧センサ60からの実測大気圧Paや異常判定ルーチンによって設定された異常フラグGを入力し(ステップS300)、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪24a,24bに連結された車軸に出力すべき要求トルクTd*を設定すると共に(ステップS310)、要求トルクTd*に基づいて要求トルクTd*が大きいほど大きくなる傾向にインバータ22に印加べき目標電圧Vhtmpを設定する(ステップS320)。ここで、車速Vは、回転位置θwa〜θwdに基づいて演算されRAM46の所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。また、要求トルクTd*は、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTd*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM44に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTd*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。
【0029】
続いて、異常フラグGの値を調べ(ステップS330)、異常フラグGが値0のときには、大気圧センサ60に異常は生じていないと判断して実測大気圧Paに基づいて昇圧回路34における昇圧してもよい最大昇圧制限である昇圧制限Vmaxを設定し(ステップS340)、異常フラグGが値1のときには、大気圧センサ60に異常が生じていると判断して昇圧制限Vmaxに所定電圧Veを設定し(ステップS350)、目標電圧Vhtmpを設定した昇圧制限Vmaxで制限して電圧指令Vh*を設定し(ステップS360)、インバータ22に印加される高圧系の電圧Vhが電圧指令Vh*となるよう昇圧回路34を制御すると共に(ステップS370)、要求トルクTd*により走行するようモータMGを制御して(ステップS380)、制御ルーチンを終了する。ここで、大気圧センサ60に異常は生じていないと判断されるときの昇圧制限Vmaxは、実施例では、実測大気圧Paと昇圧制限Vmaxとの関係を予め定めて昇圧制限設定用マップとしてROM44に記憶しておき、実測大気圧Paが与えられると記憶したマップから対応する昇圧制限Vmaxを導出して設定するものとした。図5に昇圧制限設定用マップの一例を示す。実施例の昇圧制限設定用マップでは、図示するように、実測大気圧Paが所定の気圧Pa1以下の領域では所定の電圧V1(例えば、450Vや500Vなど)が昇圧制限Vmaxとして設定され、実測大気圧Paが所定の気圧Pa2以上の領域では所定の電圧V2(例えば、650Vや700Vなど)が昇圧制限Vmaxとして設定され、実測大気圧Paが気圧Pa1以上で気圧Pa2未満の領域では電圧V1から電圧V2に向けてリニアに大きくなる電圧が昇圧制限Vmaxとして設定されるものとした。ここで、昇圧制限Vmaxを実測大気圧Paが小さいほど小さくなる傾向に設定するのは、気圧が低いほどモータMGの絶縁体の部分放電による絶縁性能の劣化を抑制するために高圧系の電圧Vhを低く抑える必要があるからである。また、大気圧センサ60に異常が生じていると判断されるときに昇圧制限Vmaxとして設定される所定電圧Veは、標高が高い地域を走行していると仮定して設定することができ、例えば、電圧V1を用いることができる。このように、昇圧制限Vmaxや電圧指令Vh*を設定することにより、大気圧センサ60に異常が生じていると判定されたときにもモータMGの絶縁体の部分放電による絶縁性能の劣化を抑制してより適正に昇圧回路34やモータMGを制御することができる。
【0030】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、路面勾配θと車軸回転量Awとに基づいて車両が位置する標高の変化量としての標高変化量Δhを演算すると共に演算した標高変化量Δhを積算することにより推定標高hestを演算し、大気圧センサ60により検出される実測大気圧Paと推定標高hestに基づく推定大気圧Pestとの差である大気圧差DPが閾値DPref未満のときや大気圧差DPが閾値DPref以上であっても実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとの差である変化量差ΔDPが所定時間に亘って閾値DPref未満となるときには大気圧センサ60に異常は生じていないと判定し、大気圧差DPが閾値DPref以上で変化量差ΔDPが所定時間以内に閾値ΔDPref以上となるときには大気圧センサ60に異常が生じていると判定するから、例えばスリップなどによって推定標高hestに誤差が生じたときにもより適正に大気圧センサ60の異常の有無を判定することができる。また、推定標高hestに基づいて大気圧センサ60の異常の有無を判定するから、単一の大気圧センサを備える車両においても大気圧センサ60の異常の有無を判定することができる。さらに、大気圧差DPが閾値DPref以上であっても変化量差ΔDPが所定時間に亘って閾値ΔDPref未満となるときには、推定標高hestを実測大気圧Paに基づく標高に補正するから、推定標高hestをより適正に設定することができ、推定標高hestに基づく大気圧センサ60の異常の有無をより適正に判定することができる。
【0031】
また、大気圧センサ60に異常が生じていないと判定されるときには実測大気圧Paに基づく昇圧制限Vmaxの範囲内で昇圧回路34を制御し、大気圧センサ60に異常が生じていると判定されるときには標高が高い地域を走行していると仮定して設定された昇圧制限Vmaxの範囲内で昇圧回路34を制御し、走行に要求される要求トルクTd*により走行するようモータMGを制御するから、より適正に昇圧回路34やモータMGを制御することができる。
【0032】
実施例の電気自動車20では、大気圧差DPが閾値DPref以上のときには、車両がスリップしている最中でないときに変化量差ΔDPと閾値ΔDPrefを比較するものとしたが、大気圧差DPが閾値DPref以上に至ってから一定の時間(例えば、数秒)が経過してから変化量差ΔDPと閾値ΔDPrefを比較するものとしても構わない。
【0033】
実施例の電気自動車20では、大気圧差DPが閾値DPref以上のときには、所定時間以内に変化量差ΔDPが閾値ΔDPref以上となるときに大気圧センサ60に異常が生じていると判定するものとしたが、一定の時間(例えば、数秒)に亘って変化量差ΔDPが閾値ΔDPref以上となるときに大気圧センサ60に異常が生じていると判定するものとしても構わない。こうすれば、ノイズなどによる誤判定を抑制することができ、より適正に大気圧センサ60の異常の有無を判定することができる。
【0034】
実施例の電気自動車20では、大気圧差DPが閾値DPref以上であっても、車両がスリップしている最中や変化量差ΔDPが閾値ΔDPrefで所定時間が経過するまでの間は、大気圧センサ60の異常の有無を判定することができないと判断して異常判定ルーチンを終了するものとしたが、大気圧差DPが閾値DPref以上のときには、大気圧センサ60を仮異常であると判定すると共に、大気圧センサ60に異常は生じていないと判定されるまで昇圧制限Vmaxに所定電圧Veを設定して昇圧回路34を制御するものとしてもよい。こうすれば、大気圧センサ60の異常の有無を判定するまでの間についても、モータMGの絶縁体の部分放電による絶縁性能の劣化を確実に抑制してより適正に昇圧回路34やモータMGを制御することができる。
【0035】
実施例では、駆動輪24a,24bに連結された車軸に駆動力を出力可能なモータMGやバッテリ30からの電力を昇圧してモータMGに供給する昇圧回路34などを備える電気自動車20に適用するものとしたが、大気圧を検出する大気圧検出手段を備える車両であれば、如何なる構成の車両に適用するものとしてもよい。例えば、エンジンとモータとを備えるハイブリッド自動車に適用するものとしてもよく、図6に示すように、エンジン122と、キャリアがエンジン122の出力軸に接続された遊星歯車機構130と、遊星歯車機構130のサンギアに接続された発電可能なモータMG1と、遊星歯車機構130のリングギヤに接続されると共に駆動輪24a,24bに連結された車軸に接続されたモータMGとを備えるハイブリッド自動車120に適用することもできる。また、自動車以外の列車などの車両に搭載される異常判定装置の形態としても構わない。さらに、こうした車両に搭載された大気圧検出装置の異常判定方法の形態としてもよい。
【0036】
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、大気圧センサ60が「大気圧検出手段」に相当し、勾配センサ61が「路面勾配検出手段」に相当し、駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dの回転位置θwa〜θwdを検出する回転位置センサ58a〜58dと回転位置θwa〜θwdに基づいて駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dに接続された車軸の回転変化量しての車軸回転量Awを演算する電子制御ユニット40とが「車軸回転量検出手段」に相当し、路面勾配θや車軸回転量Aw,車軸回転量Awを車両が移動した距離に換算する換算係数kに基づいて車両が現在位置する標高の変化量としての標高変化量Δhを演算すると共に演算した標高変化量Δhを積算することにより推定標高hestを演算し、補正フラグFが値1のときには推定標高hestを実測大気圧Paに基づく標高に補正する図2の異常判定ルーチンのステップS110〜S150の処理を実行する電子制御ユニット40が「車両位置標高演算手段」に相当し、大気圧センサ60により検出される実測大気圧Paと推定標高hestに基づく推定大気圧Pestとの差である大気圧差DPが閾値DPref未満のときや大気圧差DPが閾値DPref以上であっても実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとの差である変化量差ΔDPが所定時間に亘って閾値DPref未満のときには大気圧センサ60に異常は生じていないと判定し、大気圧差DPが閾値DPref以上で変化量差ΔDPが所定時間以内に閾値ΔDPref以上となるときには大気圧センサ60に異常が生じていると判定する図2の異常判定ルーチンのステップS160〜S260の処理を実行する電子制御ユニット40が「異常判定手段」に相当する。また、モータMGが「電動機」に相当し、バッテリ30が「蓄電手段」に相当し、昇圧回路34が「昇圧回路」に相当し、大気圧センサ60に異常が生じていないと判定されるときには実測大気圧Paに基づいて昇圧制限Vmaxを設定し、大気圧センサ60に異常が生じていると判定されるときには標高が高い地域を走行していると仮定して昇圧制限Vmaxを設定し、昇圧制限Vmaxの範囲内で電圧指令Vh*を設定して高圧系の電圧Vhが電圧指令Vh*となるよう昇圧回路34を制御すると共に走行に要求される要求トルクTd*により走行するようモータMGを制御する図3の制御ルーチンを実行する電子制御ユニット40が「制御手段」に相当する。さらに、エンジン122が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、遊星歯車機構130が「3軸式動力入出力手段」に相当する。
【0037】
ここで、「大気圧検出手段」としては、大気圧センサ60に限定されるものではなく、大気圧を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「路面勾配検出手段」としては、勾配センサ61に限定されるものではなく、駆動輪に連結された駆動軸に出力するトルクや加速度,車重に基づいて設定するものなど、路面勾配を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「車軸回転量検出手段」としては、駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dの回転位置θwa〜θwdを検出する回転位置センサ58a〜58dと回転位置θwa〜θwdに基づいて駆動輪24a,24bや従動輪24c,24dに接続された車軸の回転変化量しての車軸回転量Awを演算する電子制御ユニット40とに限定されるものではなく、車軸の回転量を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「車両位置標高演算手段」としては、路面勾配θや車軸回転量Aw,車軸回転量Awを車両が移動した距離に換算する換算係数kに基づいて車両が現在位置する標高の変化量としての標高変化量Δhを演算すると共に演算した標高変化量Δhを積算することにより推定標高hestを演算し、補正フラグFが値1のときには推定標高hestを実測大気圧Paに基づく標高に補正するものに限定されるものではなく、検出された路面勾配と検出された車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に推定した車両位置標高の変化量を積算することにより車両位置標高を演算するものであれば如何なるものとしても構わない。「異常判定手段」としては、大気圧センサ60により検出される実測大気圧Paと推定標高hestに基づく推定大気圧Pestとの差である大気圧差DPが閾値DPref未満のときや大気圧差DPが閾値DPref以上であっても実測大気圧変化量ΔPaと推定大気圧変化量ΔPestとの差である変化量差ΔDPが所定時間に亘って閾値DPref未満のときには大気圧センサ60に異常は生じていないと判定し、大気圧差DPが閾値DPref以上で変化量差ΔDPが所定時間以内に閾値ΔDPref以上となるときには大気圧センサ60に異常が生じていると判定するものに限定されるものではなく、演算した車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と大気圧検出手段により検出された大気圧との差が所定大気圧未満のときや推定大気圧と検出された大気圧との差が所定大気圧以上であっても推定大気圧の単位時間当たりの変化量と検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となるときには大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、推定大気圧と検出された大気圧との差が所定大気圧以上で推定大気圧の単位時間当たりの変化量と検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間以内に所定量以上となるときには大気圧検出手段に異常が生じていると判定するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMGに限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ30に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段や電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「昇圧回路」としては、昇圧回路34に限定されるものではなく、蓄電手段からの電力を昇圧して電動機に供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、大気圧センサ60に異常が生じていないと判定されるときには実測大気圧Paに基づいて昇圧制限Vmaxを設定し、大気圧センサ60に異常が生じていると判定されるときには標高が高い地域を走行していると仮定して昇圧制限Vmaxを設定し、昇圧制限Vmaxの範囲内で電圧指令Vh*を設定して高圧系の電圧Vhが電圧指令Vh*となるよう昇圧回路34を制御すると共に走行に要求される要求トルクTd*により走行するようモータMGを制御するものに限定されるものではなく、異常判定手段により大気圧検出手段に異常が生じていないと判定されるときには検出された大気圧に基づく昇圧制限の範囲内で蓄電手段からの電力を昇圧して走行に要求される要求駆動力により走行するよう電動機と昇圧回路とを制御し、異常判定手段により大気圧検出手段に異常が生じていると判定されるときには所定の昇圧制限の範囲内で蓄電手段からの電力を昇圧して要求駆動力により走行するよう電動機と昇圧回路とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。さらに、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の遊星歯車機構130に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせたものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0038】
なお、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0039】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、異常判定装置や車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例としての異常判定装置を搭載した電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電子制御ユニット40により実行される異常判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】電子制御ユニット40により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】昇圧制限設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0042】
20 電気自動車、22 インバータ、24a,24b 駆動輪、24c,24d 従動輪、30 バッテリ、32,36 コンデンサ、34 昇圧回路、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、50 イグニッションスイッチ、51 シフトレバー、52 シフトポジションセンサ、53 アクセルペダル、54 アクセルペダルポジションセンサ、55 ブレーキペダル、56 ブレーキペダルポジションセンサ、58a〜58d 回転位置検出センサ、60 大気圧センサ、61 勾配センサ、120 ハイブリッド自動車、122 エンジン、130 遊星歯車機構、MG,MG1 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧を検出する大気圧検出手段と共に車両に搭載されて該大気圧検出手段の異常を判定する異常判定装置であって、
路面勾配を検出する路面勾配検出手段と、
車軸の回転量を検出する車軸回転量検出手段と、
前記検出された路面勾配と前記検出された車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に該推定した車両位置標高の変化量を積算することにより前記車両位置標高を演算する車両位置標高演算手段と、
前記演算された車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と前記検出された大気圧との差が所定大気圧未満のとき又は前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上であっても前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となる変化量差所定量未満時には前記大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上で且つ前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が前記所定時間以内に前記所定量以上となるときには前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定する異常判定手段と、
を備える異常判定装置。
【請求項2】
前記車両位置標高演算手段は、前記変化量差所定量未満時には前記車両位置標高を前記検出された大気圧に基づく標高に補正してその後の該車両位置標高の演算を行なう手段である請求項1記載の異常判定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の異常判定装置を備える車両であって、
走行用の動力を出力する電動機と、
充放電可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段からの電力を昇圧して前記電動機に供給する昇圧回路と、
前記異常判定手段により前記大気圧検出手段に異常が生じていないと判定されるときには前記検出された大気圧に基づく昇圧制限の範囲内で前記蓄電手段からの電力を昇圧して走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記電動機と前記昇圧回路とを制御し、前記異常判定手段により前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定されるときには所定の昇圧制限の範囲内で前記蓄電手段からの電力を昇圧して前記要求駆動力により走行するよう前記電動機と前記昇圧回路とを制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項4】
請求項3記載の車両であって、
内燃機関と、
動力を入出力する発電機と、
前記車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
を備える車両。
【請求項5】
大気圧を検出する大気圧検出手段を備える車両における該大気圧検出手段の異常を判定する異常判定方法であって、
(a)路面勾配と車軸の回転量とに基づいて車両の位置する標高である車両位置標高の変化量を推定すると共に該推定した車両位置標高の変化量を積算することにより前記車両位置標高を演算し、
(b)前記演算した車両位置標高に基づく大気圧である推定大気圧と前記大気圧検出手段により検出された大気圧との差が所定大気圧未満のとき又は前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上であっても前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が所定時間に亘って所定量未満となるときには前記大気圧検出手段に異常は生じていないと判定し、前記推定大気圧と前記検出された大気圧との差が前記所定大気圧以上で且つ前記推定大気圧の単位時間当たりの変化量と前記検出された大気圧の単位時間当たりの変化量との差が前記所定時間以内に前記所定量以上となるときには前記大気圧検出手段に異常が生じていると判定する、
異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−301214(P2009−301214A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153301(P2008−153301)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】