説明

異常監視装置

【課題】モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出すること。
【解決手段】外乱成分算出部3は、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdを算出し、回転同期外乱成分抽出部4は、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdから、モータ2の回転数に同期した周期のトルク外乱τdの大きさを抽出し、回転数同期振動増加判別部8は、回転同期外乱成分抽出部4からの出力値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異常監視装置に関し、特に、産業用ロボット、実装機、射出成形機、工作機械、印刷機、半導体製造装置、包装機、エレベータ、空調機、車載機器などの設備診断方式に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット、実装機、射出成形機、工作機械、印刷機、半導体製造装置、包装機、エレベータ、空調機、車載機器などで用いられる回転機械に異常が発生すると、その回転に同期した振動が発生もしくは大きくなる場合がある。このため、その異常に伴なって発生する回転機械の振動を検出し、その検出結果に基づいて回転機械の異常の発生を判別することが行われることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、モータなどの回転機械で構成されたメカニカルシステムにおいて、回転機械の振動を検知することで、異常部位や異常原因を判定する方法が開示されている。すなわち、モータなどの回転系で発生する振動の変位、速度、加速度が回転系の回転速度と共に測定され、測定された振動の加速度信号は、ハイパスフィルタに通されることで高周波領域成分のみが抽出される。そして、測定された振動の信号が整流され包絡線処理が行われた後、包絡線処理された振動信号及び回転周期信号が一定のサンプリング周期でサンプリングされる。続いて、予め設定された標準回転周期と回転系の回転周期との比率から、回転周期信号と同時にサンプリングされた振動信号の時間間隔の変更処理が行われ、この変更処理が施された振動信号の周波数解析若しくは自己相関解析に基づいて、異常部位又は異常原因の判定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−279826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、モータの加減速動作の制御に用いられる状態量(回転位置、速度、印加する電流値など)だけでなく、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器(センサ)が必要となる。このため、メカニカルシステムの制御系にかかるコストが高くなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に開示された方法では、周波数解析もしくは自己相関解析を行う必要があるとともに、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを一旦記録しておく必要がある。このため、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを記憶するメモリが必要となるほか、周波数解析もしくは自己相関解析を行う機能を持たせる必要があり、異常部位又は異常原因の判定を行う診断装置のコストが高くなるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することが可能な異常監視装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の異常監視装置は、モータ電流指令、モータ電流、モータ加速度およびモータ速度のいずれか少なくとも1つの信号に含まれる外乱成分を算出する外乱成分算出部と、前記外乱成分算出部にて算出された外乱成分から、モータの回転数に同期した周期の外乱成分の大きさを抽出する回転同期外乱成分抽出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することが可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態4の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態5の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態6の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、図5のモデル速度算出部10の概略構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る異常監視装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。図1において、異常監視装置11には、外乱成分算出部3、回転同期外乱成分抽出部4および回転数同期振動増加判別部8が設けられている。また、回転同期外乱成分抽出部4には、回転数同期信号サンプリング部5、回転数同期周期バンドパスフィルタ6および実効値算出部7が設けられている。また、異常監視装置11にて異常の監視が行われる回転系には、位置・速度制御部1およびモータ2が設けられている。
【0013】
ここで、外乱成分算出部3は、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdを算出することができる。回転同期外乱成分抽出部4は、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdから、モータ2の回転数に同期した周期のトルク外乱τdの大きさを抽出することができる。なお、モータ2の回転数に同期した周期は、モータ2の回転数のn(nは正の整数)倍に対応した周期(例えば、モータ2の回転数の2倍、4倍などに対応した周期)とすることができる。回転数同期振動増加判別部8は、回転同期外乱成分抽出部4からの出力値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別することができる。
【0014】
回転数同期信号サンプリング部5は、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τd所定のモータ変位幅sdに従ってサンプリングすることができる。回転数同期周期バンドパスフィルタ6は、回転数同期信号サンプリング部5にてサンプリングされたトルク外乱τdから、モータ2の回転数のn倍の周波数成分を抽出することができる。例えば、回転数同期周期バンドパスフィルタ6は、モータ2の回転数のn倍の周波数成分に対応した通過帯域を持つように構成することができる。実効値算出部7は、モータ2の回転数に同期した周期のトルク外乱τdの大きさの実効値を算出することができる。
【0015】
そして、位置指令spが位置・速度制御部1に入力されると、位置指令spに対応したモータ電流指令siが生成され、モータ2および外乱成分算出部3に送られる。そして、モータ電流指令siがモータ2に送られると、そのモータ電流指令siに基づいてモータ2が回転する。また、モータ速度vmおよびモータ位置pmがモータ2から検出され、モータ速度vmは外乱成分算出部3に送られるとともに、モータ位置pmは回転数同期信号サンプリング部5に送られる。
【0016】
そして、モータ電流指令siとモータ速度vmが外乱成分算出部3に送られると、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdが算出され、トルク外乱τdが回転数同期信号サンプリング部5に出力される。
【0017】
ここで、トルク外乱τdは、以下のようにして求めることができる。すなわち、モータ2のトルク定数をKt、モータ2と機械を合計した等価イナーシャをJ、モータ速度vmの差分から算出したモータ加速度をam、粘性摩擦係数をfv、クーロン摩擦係数をfcとすると、vm>0の場合、モータトルクの推定値τhは、以下の(1)式で与えることができる。
τh=J*am+fv*vm+fc ・・・(1)
【0018】
一方、vm<0の場合、モータトルクの推定値τhは、以下の(2)式で与えることができる。
τh=J*am+fv*vm−fc ・・・(2)
【0019】
(1)式および(2)式から、実際のトルクτがτ=Kt*iで与えられるものとすると、トルク外乱τdは、以下の(3)式で与えることができる。
τd=τ−τh ・・・(3)
【0020】
次に、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdと、モータ2から検出されたモータ位置pmが回転数同期信号サンプリング部5に入力されると、モータ位置pmがモータ変位幅sdに基づいて決定される刻み位置を越えるごとに、トルク外乱τdの値が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力される。
【0021】
例えば、第k(kは正の整数)回目の周期のトルク外乱τdをτd[k]、モータ位置pmをpm[k]とする。また、回転数同期周期バンドパスフィルタ6への前回の出力が第j回目の出力であったとし、第j回目の出力を行った時の刻み位置をkpm[j]とする。
【0022】
そして、vm>0の場合、pm[k]−kpm[j]<sdの時は刻み位置を越えていない。このため、回転数同期信号サンプリング部5では、この時に入力されたトルク外乱τd[k]のサンプリングは行われず、トルク外乱τdの値は回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力されない。
【0023】
一方、pm[k]−kpm[j]>sdの時は、回転数同期信号サンプリング部5では、以下の(4)式および(5)式に従って、dp1、dp2が算出される。
dp1=pm[k]−kpm[j]−sd ・・・(4)
dp2=sd−pm[k−1]+kpm[j] ・・・(5)
【0024】
そして、dp1<dp2の場合は、トルク外乱τd[k]が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力され、dp1>dp2の場合は、トルク外乱τd[k−1]が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力される。
【0025】
そして、トルク外乱τdの値が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力されると、その出力は第j+1回目の出力であるので、第j+1回目の出力を行った時の刻み位置kpm[j+1]をkpm[j]+sdに更新される。
【0026】
なお、上記の例では、モータ位置pmが、モータ変位幅sdに基づいて決定される刻み位置を越えるごとに、刻み位置に近い方の値を出力する方法について説明したが、刻み位置までの距離に応じて重み付け和を算出して出力するようにしてもよい。例えば、(dp2*τd[k]+dp1*τd[k−1])/(dp1+dp2)という値を回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力してもよい。また、上記の例では、vm>0の場合を例に挙げたが、vm<0の場合も同様である。
【0027】
回転数同期周期バンドパスフィルタ6では、回転数同期信号サンプリング部5からデータが入力されるたびに、バンドパスフィルタの演算を実施する。バンドパスフィルタのパラメータは指定された回転数のn倍の成分を通過させる値に設定しておく。このようにしておくことにより、回転数同期信号サンプリング部5にてサンプリングされたトルク外乱τdの値からモータ2の回転数のn倍の周波数成分が抽出される。回転数同期周期バンドパスフィルタ6の出力は、実効値算出部7へ出力される。
【0028】
そして、モータ2の回転数のn倍の周波数成分が実効値算出部7に入力されると、その絶対値が算出され、さらに1次遅れフィルタなどのローパスフィルタに通されることで、モータ2の回転数のn倍の周波数成分の実効値が算出され、回転数同期振動増加判別部8に出力される。
【0029】
そして、回転数同期振動増加判別部8において、モータ2の回転数のn倍の周波数成分の実効値がしきい値と比較され、モータ2の回転数のn倍の周波数成分の実効値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別される。
【0030】
これにより、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することができる。このため、メカニカルシステムの制御系にかかるコストを下げることができる。
【0031】
また、周波数解析もしくは自己相関解析を行うことなく、回転数同期振動の増加を判別することが可能となる。このため、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを一旦記録しておく必要がなくなるとともに、周波数解析もしくは自己相関解析を行う機能を持たせる必要がなくなる。この結果、異常監視装置11のコストを下げることが可能となるとともに、モータ2を通常に動作させることで取得可能なデータから、回転数同期振動が増加したかどうかを判別することができ、回転機械の異常の発生を常時監視することが可能となる。
【0032】
さらに、回転数同期信号サンプリング部5にてサンプリングされたトルク外乱τdから、モータ2の回転数のn倍の周波数成分を抽出させることにより、異常により励起される振動の周波数成分が、加減速による信号の周波数成分に埋もれた場合においても、加減速による信号の周波数成分を除去することができる。このため、振動測定用の測定器を用いることなく、異常により励起される振動の周波数成分の変化を抽出させることができ、異常診断精度の低下を抑制することができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態1では、回転同期外乱成分抽出部4に実効値算出部7を設ける方法について説明したが、実効値算出部7はなくてもよい。また、上述した実施の形態1では、異常監視装置11に回転数同期振動増加判別部8を設ける方法について説明したが、回転数同期振動増加判別部8は異常監視装置11とは別個に設けるようにしてもよい。
【0034】
実施の形態2.
図2は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。図2において、異常監視装置21には、図1の回転同期外乱成分抽出部4の代わりに、回転同期外乱成分抽出部14が設けられている。そして、回転同期外乱成分抽出部14には、図1の回転数同期信号サンプリング部5および回転数同期周期バンドパスフィルタ6の代わりに、回転数同期振動振幅同定部9が設けられている。
【0035】
ここで、回転数同期振動振幅同定部9は、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdから、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅を同定し、モータ2の回転数に同期した周期のトルク外乱τdの大きさとして出力することができる。
【0036】
そして、位置指令spが位置・速度制御部1に入力されると、位置指令spに対応したモータ電流指令siが生成され、モータ2および外乱成分算出部3に送られる。そして、モータ電流指令siがモータ2に送られると、そのモータ電流指令siに基づいてモータ2が回転する。また、モータ速度vmおよびモータ位置pmがモータ2から検出され、モータ速度vmは外乱成分算出部3に送られるとともに、モータ位置pmは回転数同期振動振幅同定部9に送られる。
【0037】
そして、モータ電流指令siとモータ速度vmが外乱成分算出部3に送られると、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdが算出され、トルク外乱τdが回転数同期振動振幅同定部9に出力される。
【0038】
次に、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdと、モータ2から検出されたモータ位置pmが回転数同期振動振幅同定部9に入力されると、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅が同定され、モータ2の回転数に同期した周期のトルク外乱τdの大きさとして実効値算出部7に出力される。
【0039】
ここで、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅は、以下のようにして同定することができる。すなわち、外乱成分算出部3で算出されたトルク外乱τdが、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動であるとみなすと、トルク外乱τdは、以下の(6)式で与えることができる。
τd=vl*sin(n*Pm+φ) ・・・(6)
【0040】
ただし、vlは、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅である。
【0041】
ここで、para1=vl*cosφ、para2=vl*sinφと定義すると、(6)式は、以下の(7)式で与えることができる。
τd=para1*sin(n*Pm)+para2*cos(n*Pm)・・・(7)
【0042】
ここで、第k回目の同定周期での値をkとする(例えば、Pm、Pvibなど)。また、para1、para2の逐次推定値をph1、ph2とする。さらに、ベクトルyp、p、rpと、行列Rpをそれぞれ以下の(8)式〜(11)式で定義する。
yp=[sin(n*Pm), cos(n*Pm)] ・・・(8)
=[ph1,ph2] ・・・(9)
Rp=Rpk−1+moit*(−σ*Rpk−1+ypyp) ・・・(10)
rp=rpk−1+moit*(−σ*rpk−1+τd*yp) ・・・(11)
【0043】
この場合、第k回目の同定周期でのpara1、para2の逐次推定値は、以下の(12)式で与えることができる。
=pk−1−moit*G(Rp・pk−1−rp) ・・・(12)
【0044】
ただし、moitは推定周期、σは定数、Gは定数行列である。
【0045】
そして、逐次推定したp=[ph1,ph2]から、振幅vlの第k周期での推定値は、以下の(13)式で与えることができる。
vl=sqrt(ph1*ph1+ph2*ph2) ・・・(13)
【0046】
そして、回転数同期振動振幅同定部9は、(13)式で算出したvlを出力することができる。
【0047】
そして、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅が実効値算出部7に入力されると、その絶対値が算出され、さらに1次遅れフィルタなどのローパスフィルタに通されることで、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅の実効値が算出され、回転数同期振動増加判別部8に出力される。
【0048】
そして、回転数同期振動増加判別部8において、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅の実効値がしきい値と比較され、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅の実効値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別される。
【0049】
これにより、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することができる。このため、メカニカルシステムの制御系にかかるコストを下げることができる。
【0050】
また、周波数解析もしくは自己相関解析を行うことなく、回転数同期振動の増加を判別することが可能となる。このため、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを一旦記録しておく必要がなくなるとともに、周波数解析もしくは自己相関解析を行う機能を持たせる必要がなくなる。この結果、異常監視装置21のコストを下げることが可能となるとともに、モータ2を通常に動作させることで取得可能なデータから、回転数同期振動が増加したかどうかを判別することができ、回転機械の異常の発生を常時監視することが可能となる。
【0051】
さらに、回転数同期振動振幅同定部9にてモータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅を同定させることにより、異常により励起される振動の周波数成分が、加減速による信号の周波数成分に埋もれた場合においても、加減速による信号の周波数成分を除去することができる。このため、振動測定用の測定器を用いることなく、異常により励起される振動の周波数成分の変化を抽出させることができ、異常診断精度の低下を抑制することができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態2では、異常監視装置21に回転数同期振動増加判別部8を設ける方法について説明したが、回転数同期振動増加判別部8は異常監視装置21とは別個に設けるようにしてもよい。
【0053】
実施の形態3.
上述した実施の形態2では、回転数同期振動振幅同定部9は、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdから、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅を同定する方法について説明した。これに対して、回転数同期振動振幅同定部9は、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdから、モータ2の回転数のna(naは正の整数)倍に対応した周期の振動の振幅およびモータ2の回転数のnb(nbはnaと異なる正の整数)倍に対応した周期の振動の振幅を同定し、モータ2の回転数に同期した周期の外乱成分の大きさとして出力するようにしてもよい。
【0054】
すなわち、回転数同期振動振幅同定部9は、トルク外乱τdがモータ2の回転数のna倍に対応した周期の振動と、nb倍に対応した周期の振動の和であるとみなし、na倍に対応した周期の振動の振幅と、nb倍に対応した周期の振動の振幅を一括して算出するようにしてもよい。
【0055】
すなわち、外乱成分算出部3で算出されたトルク外乱τdが、モータ2の回転数のna倍に対応した周期の振動と、nb倍に対応した周期の振動の和であるとみなすと、トルク外乱τdは、以下の(14)式で与えることができる。
τd=vla*sin(na*Pm+φa)+vla*sin(na*Pm+φa)
・・・(14)
【0056】
ただし、vlaは、モータ2の回転数のna倍に対応した周期の振動の振幅、vlbは、モータ2の回転数のnb倍に対応した周期の振動の振幅である。
【0057】
ここで、para1a=vla*cosφa、para2a=vla*sinφa,para1b=vlb*cosφb、para2b=vlb*sinφbと定義すると、(14)式は、以下の(15)式で与えることができる。
τd=para1a*sin(na*Pm)+para2a*cos(na*Pm)
+para1b*sin(nb*Pm)+para2b*cos(nb*Pm)
・・・(15)
【0058】
ここで、para1a、para2a、para1b、para2bの逐次推定値をph1a、ph2a、ph1b、ph2bとする。さらに、ベクトルyp、p、rpと行列Rpをそれぞれ以下の(16)式〜(19)式で定義する。
yp=[sin(na*Pm),cos(na*Pm),sin(nb*Pm),cos(nb*Pm)] ・・・(16)
=[ph1a,ph2ak,ph1b,ph2b] ・・・(17)
Rp=Rpk−1+moit*(−σ*Rpk−1+ypyp) ・・・(18)
rp=rpk−1+moit*(−σ*rpk−1+τd*yp) ・・・(19)
【0059】
この場合、第k回目の同定周期でのpara1a、para2a、para1b、para2bの逐次推定値は、以下の(20)式で与えることができる。
=pk−1−moit*G(Rp・pk−1−rp) ・・・(20)
【0060】
そして、逐次推定したpから、振幅vla、vlbの第k周期での推定値は、以下の(21)式および(22)式で与えることができる。
vla=sqrt(ph1a*ph1a+ph2a*ph2a)・・・(21)
vlb=sqrt(ph1b*ph1b+ph2b*ph2b)・・・(22)
【0061】
そして、回転数同期振動振幅同定部9は、(21)式および(22)式で算出したvla、vlbを出力することができる。
【0062】
なお、上述した実施の形態3では、トルク外乱τdがモータ2の回転数のna倍に対応した周期の振動と、nb倍に対応した周期の振動の和であるとみなし、na倍に対応した周期の振動の振幅と、nb倍に対応した周期の振動の振幅を一括して算出する方法について説明した。これに対して、トルク外乱τdがモータ2の回転数の整数倍に対応した3個以上の周期の振動の和であるとみなし、モータ2の回転数の整数倍に対応した3個以上の周期の振動の振幅を一括して算出するようにしてもよい。
【0063】
実施の形態4.
図3は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態4の概略構成を示すブロック図である。図3において、異常監視装置31には、図1の回転同期外乱成分抽出部4の代わりに、回転同期外乱成分抽出部24が設けられている。そして、回転同期外乱成分抽出部24には、図1の回転数同期信号サンプリング部5、回転数同期周期バンドパスフィルタ6および実効値算出部7に加え、図2の回転数同期振動振幅同定部9が設けられている。
【0064】
そして、位置指令spが位置・速度制御部1に入力されると、位置指令spに対応したモータ電流指令siが生成され、モータ2および外乱成分算出部3に送られる。そして、モータ電流指令siがモータ2に送られると、そのモータ電流指令siに基づいてモータ2が回転する。また、モータ速度vmおよびモータ位置pmがモータ2から検出され、モータ速度vmは外乱成分算出部3に送られるとともに、モータ位置pmは回転数同期信号サンプリング部5および回転数同期振動振幅同定部9に送られる。
【0065】
そして、モータ電流指令siとモータ速度vmが外乱成分算出部3に送られると、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdが算出され、トルク外乱τdが回転数同期信号サンプリング部5に出力される。
【0066】
次に、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdと、モータ2から検出されたモータ位置pmが回転数同期信号サンプリング部5に入力されると、モータ位置pmがモータ変位幅sdに基づいて決定される刻み位置を越えるごとに、トルク外乱τdの値が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力される。
【0067】
次に、回転数同期信号サンプリング部5にてサンプリングされたトルク外乱τdの値が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に入力されると、そのトルク外乱τdの値から、モータ2の回転数のn倍の周波数成分が抽出され、回転数同期振動振幅同定部9に出力される。
【0068】
次に、回転数同期周期バンドパスフィルタ6に抽出されたモータ2の回転数のn倍の周波数成分と、モータ2から検出されたモータ位置pmが回転数同期振動振幅同定部9に入力されると、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅が同定され、モータ2の回転数に同期した周期のトルク外乱τdの大きさとして実効値算出部7に出力される。
【0069】
そして、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅が実効値算出部7に入力されると、その絶対値が算出され、さらに1次遅れフィルタなどのローパスフィルタに通されることで、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅の実効値が算出され、回転数同期振動増加判別部8に出力される。
【0070】
そして、回転数同期振動増加判別部8において、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅の実効値がしきい値と比較され、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅の実効値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別される。
【0071】
これにより、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することができる。このため、メカニカルシステムの制御系にかかるコストを下げることができる。
【0072】
また、周波数解析もしくは自己相関解析を行うことなく、回転数同期振動の増加を判別することが可能となる。このため、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを一旦記録しておく必要がなくなるとともに、周波数解析もしくは自己相関解析を行う機能を持たせる必要がなくなる。この結果、異常監視装置31のコストを下げることが可能となるとともに、モータ2を通常に動作させることで取得可能なデータから、回転数同期振動が増加したかどうかを判別することができ、回転機械の異常の発生を常時監視することが可能となる。
【0073】
さらに、回転数同期振動振幅同定部9にてモータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅を同定させることにより、異常により励起される振動の周波数成分が、加減速による信号の周波数成分に埋もれた場合においても、加減速による信号の周波数成分を除去することができる。このため、振動測定用の測定器を用いることなく、異常により励起される振動の周波数成分の変化を抽出させることができ、異常診断精度の低下を抑制することができる。
【0074】
なお、上述した実施の形態4では、回転同期外乱成分抽出部24に実効値算出部7を設ける方法について説明したが、実効値算出部7はなくてもよい。また、上述した実施の形態4では、異常監視装置31に回転数同期振動増加判別部8を設ける方法について説明したが、回転数同期振動増加判別部8は異常監視装置31とは別個に設けるようにしてもよい。
【0075】
実施の形態5.
図4は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態5の概略構成を示すブロック図である。図4において、異常監視装置41には、図2の回転同期外乱成分抽出部14の代わりに、回転同期外乱成分抽出部34が設けられている。そして、回転同期外乱成分抽出部34には、回転数同期振動振幅同定部9が設けられている。
【0076】
そして、位置指令spが位置・速度制御部1に入力されると、位置指令spに対応したモータ電流指令siが生成され、モータ2および外乱成分算出部3に送られる。そして、モータ電流指令siがモータ2に送られると、そのモータ電流指令siに基づいてモータ2が回転する。また、モータ速度vmおよびモータ位置pmがモータ2から検出され、モータ速度vmは外乱成分算出部3に送られるとともに、モータ位置pmは回転数同期振動振幅同定部9に送られる。
【0077】
そして、モータ電流指令siとモータ速度vmが外乱成分算出部3に送られると、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdが算出され、トルク外乱τdが回転数同期振動振幅同定部9に出力される。
【0078】
次に、外乱成分算出部3にて算出されたトルク外乱τdと、モータ2から検出されたモータ位置pmが回転数同期振動振幅同定部9に入力されると、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅が同定され、回転数同期振動増加判別部8に出力される。
【0079】
そして、回転数同期振動増加判別部8において、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅がしきい値と比較され、モータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別される。
【0080】
これにより、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することができる。このため、メカニカルシステムの制御系にかかるコストを下げることができる。
【0081】
また、周波数解析もしくは自己相関解析を行うことなく、回転数同期振動の増加を判別することが可能となる。このため、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを一旦記録しておく必要がなくなるとともに、周波数解析もしくは自己相関解析を行う機能を持たせる必要がなくなる。この結果、異常監視装置41のコストを下げることが可能となるとともに、モータ2を通常に動作させることで取得可能なデータから、回転数同期振動が増加したかどうかを判別することができ、回転機械の異常の発生を常時監視することが可能となる。
【0082】
さらに、回転数同期振動振幅同定部9にてモータ2の回転数のn倍に対応した周期の振動の振幅を同定させることにより、異常により励起される振動の周波数成分が、加減速による信号の周波数成分に埋もれた場合においても、加減速による信号の周波数成分を除去することができる。このため、振動測定用の測定器を用いることなく、異常により励起される振動の周波数成分の変化を抽出させることができ、異常診断精度の低下を抑制することができる。
【0083】
なお、上述した実施の形態5では、異常監視装置41に回転数同期振動増加判別部8を設ける方法について説明したが、回転数同期振動増加判別部8は異常監視装置41とは別個に設けるようにしてもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態では、外乱成分算出部3は、モータ電流指令siとモータ速度vmとからモータ電流指令siに含まれるトルク外乱τdを算出する方法について説明したが、モータ電流指令、モータ電流、モータ加速度およびモータ速度のいずれか少なくとも1つの信号に含まれる外乱成分を算出するようにしてもよい。例えば、外乱成分算出部3は、モータ電流とモータ速度vmとからモータ電流に含まれるトルク外乱を算出するようにしてもよい。あるいは、理想的なモータ速度に対応するモデル速度とモータ速度との差分に基づいて外乱成分を算出するようにしてもよい。あるいは、理想的なモータ加速度に対応するモデル加速度とモータ加速度との差分に基づいて外乱成分を算出するようにしてもよい。
【0085】
実施の形態6.
図5は、本発明に係る異常監視装置の実施の形態6の概略構成を示すブロック図である。図5において、異常監視装置51には、図1の外乱成分算出部3の代わりに、外乱成分算出部13が設けられている。また、異常監視装置11にて異常の監視が行われる回転系には、位置・速度制御部1およびモータ2に加え、モデル速度算出部10が設けられている。ここで、モデル速度算出部10は、位置指令spに基づいてモデル速度mvを算出することができる。外乱成分算出部13は、モデル速度mvとモータ速度vmとの差分に基づいて外乱成分dを算出することができる。
【0086】
そして、位置指令spが位置・速度制御部1に入力されると、位置指令spに対応したトルク指令stが生成され、モータ2に送られる。そして、トルク指令stがモータ2に送られると、そのトルク指令stに基づいてモータ2が回転する。また、モータ速度vmおよびモータ位置pmがモータ2から検出され、モータ速度vmは外乱成分算出部13に送られるとともに、モータ位置pmは回転数同期信号サンプリング部5に送られる。
【0087】
また、位置指令spがモデル速度算出部10に入力されると、位置指令spに基づいてモデル速度mvが算出され、外乱成分算出部13に送られる。
【0088】
そして、モデル速度mvとモータ速度vmが外乱成分算出部13に送られると、モデル速度mvとモータ速度vmとの差分から外乱成分dが算出され、外乱成分dが回転数同期信号サンプリング部5に出力される。
【0089】
次に、外乱成分算出部13にて算出された外乱成分dと、モータ2から検出されたモータ位置pmが回転数同期信号サンプリング部5に入力されると、モータ位置pmがモータ変位幅sdに基づいて決定される刻み位置を越えるごとに、外乱成分dの値が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に出力される。
【0090】
次に、回転数同期信号サンプリング部5にてサンプリングされた外乱成分dの値が回転数同期周期バンドパスフィルタ6に入力されると、その外乱成分dの値から、モータ2の回転数のn倍の周波数成分が抽出され、実効値算出部7に出力される。
【0091】
そして、モータ2の回転数のn倍の周波数成分が実効値算出部7に入力されると、その絶対値が算出され、さらに1次遅れフィルタなどのローパスフィルタに通されることで、モータ2の回転数のn倍の周波数成分の実効値が算出され、回転数同期振動増加判別部8に出力される。
【0092】
そして、回転数同期振動増加判別部8において、モータ2の回転数のn倍の周波数成分の実効値がしきい値と比較され、モータ2の回転数のn倍の周波数成分の実効値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別される。
【0093】
これにより、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することができる。このため、メカニカルシステムの制御系にかかるコストを下げることができる。
【0094】
また、周波数解析もしくは自己相関解析を行うことなく、回転数同期振動の増加を判別することが可能となる。このため、回転周期信号と同時にサンプリングされたデータを一旦記録しておく必要がなくなるとともに、周波数解析もしくは自己相関解析を行う機能を持たせる必要がなくなる。この結果、異常監視装置51のコストを下げることが可能となるとともに、モータ2を通常に動作させることで取得可能なデータから、回転数同期振動が増加したかどうかを判別することができ、回転機械の異常の発生を常時監視することが可能となる。
【0095】
さらに、回転数同期信号サンプリング部5にてサンプリングされた外乱成分dから、モータ2の回転数のn倍の周波数成分を抽出させることにより、異常により励起される振動の周波数成分が、加減速による信号の周波数成分に埋もれた場合においても、加減速による信号の周波数成分を除去することができる。このため、振動測定用の測定器を用いることなく、異常により励起される振動の周波数成分の変化を抽出させることができ、異常診断精度の低下を抑制することができる。
【0096】
なお、上述した実施の形態6では、回転同期外乱成分抽出部4に実効値算出部7を設ける方法について説明したが、実効値算出部7はなくてもよい。また、上述した実施の形態6では、異常監視装置51に回転数同期振動増加判別部8を設ける方法について説明したが、回転数同期振動増加判別部8は異常監視装置51とは別個に設けるようにしてもよい。また、上述した実施の形態6では、異常監視装置51とは別個にモデル速度算出部10を設ける方法について説明したが、異常監視装置51にモデル速度算出部10を設けるようにしてもよい。
【0097】
また、上述した異常監視装置51では、図5の外乱成分算出部13にて算出された外乱成分dを回転同期外乱成分抽出部4に入力する方法について説明したが、図5の外乱成分算出部13にて算出された外乱成分dを図2の回転同期外乱成分抽出部14に入力するようにしてもよいし、図5の外乱成分算出部13にて算出された外乱成分dを図3の回転同期外乱成分抽出部24に入力するようにしてもよいし、図5の外乱成分算出部13にて算出された外乱成分dを図4の回転同期外乱成分抽出部34に入力するようにしてもよい。
【0098】
図6は、図5のモデル速度算出部10の概略構成例を示すブロック図である。図6において、モデル速度算出部10には、減算器61、63、比例制御器62、64および積分制御器65、66が設けられている。ここで、減算器61の後段には比例制御器62が接続されている。また、比例制御器62の後段には減算器63が接続されている。また、減算器63の後段には比例制御器64が接続されている。また、比例制御器64の後段には積分制御器65が接続されている。また、積分制御器65の後段には積分制御器66が接続されている。そして、積分制御器65の出力は減算器63に戻され、積分制御器66の出力は減算器61に戻されている。
【0099】
そして、位置指令spが減算器61に入力されると、積分制御器66から出力されたモデル位置mpと減算され、比例制御器62に出力される。そして、比例制御器62において減算器61の出力が増幅された後、減算器63に入力される。そして、減算器63において比例制御器62の出力が積分制御器65から出力されたモデル速度mvと減算され、比例制御器64に出力される。そして、比例制御器64において減算器63の出力が増幅されることで、モデル加速度maが生成され、積分制御器65に入力される。そして、モデル加速度maが積分制御器65にて積分されることで、モデル速度mvが生成され、積分制御器66に入力されるとともに、図5の外乱成分算出部13に入力される。さらに、モデル速度mvが積分制御器66にて積分されることで、モデル位置mpが生成される。
【0100】
なお、上述した実施の形態では、位置指令spに基づいて回転系の位置制御を行う制御装置に異常監視装置を適用した場合を例に挙げて説明した、速度指令に基づいて回転系の速度制御を行う制御装置に異常監視装置を適用するようにしてもよいし、トルク指令(もしくは力指令)に基づいて回転系のトルク制御(もしくは力制御)を行う制御装置に適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように本発明に係る異常監視装置は、モータなどの回転系で異常が発生した際に励起される振動を測定するための専用の測定器を用いることなく、その異常により励起される振動を抽出することができ、産業用ロボット、実装機、射出成形機、工作機械、印刷機、半導体製造装置、包装機、エレベータ、空調機、車載機器などの回転系での異常を診断する方法に適している。
【符号の説明】
【0102】
1 位置・速度制御部
2 モータ
3、13 外乱成分算出部
4、14、24、34 回転同期外乱成分抽出部
5 回転数同期信号サンプリング部
6 回転数同期周期バンドパスフィルタ
7 実効値算出部
8 回転数同期振動増加判別部
9 回転数同期振動振幅同定部
10 モデル速度算出部
11、21、31、41、51 異常監視装置
61、63 減算器
62、64 比例制御器
65、66 積分制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ電流指令、モータ電流、モータ加速度およびモータ速度のいずれか少なくとも1つの信号に含まれる外乱成分を算出する外乱成分算出部と、
前記外乱成分算出部にて算出された外乱成分から、モータの回転数に同期した周期の外乱成分の大きさを抽出する回転同期外乱成分抽出部とを備えることを特徴とする異常監視装置。
【請求項2】
前記外乱成分算出部は、前記モータ電流指令と前記モータ速度とから前記外乱成分としてトルク外乱を算出することを特徴とする請求項1に記載の異常監視装置。
【請求項3】
前記外乱成分算出部は、前記モータ電流と前記モータ速度とから前記外乱成分としてトルク外乱を算出することを特徴とする請求項1に記載の異常監視装置。
【請求項4】
前記外乱成分算出部は、モデル速度と前記モータ速度との差分に基づいて前記外乱成分を算出することを特徴とする請求項1に記載の異常監視装置。
【請求項5】
前記外乱成分算出部は、モデル加速度と前記モータ加速度との差分に基づいて前記外乱成分を算出することを特徴とする請求項1に記載の異常監視装置。
【請求項6】
前記回転同期外乱成分抽出部は、
前記外乱成分算出部にて算出された外乱成分を所定のモータ変位幅に従ってサンプリングする回転数同期信号サンプリング部と、
前記回転数同期信号サンプリング部にてサンプリングされた外乱成分から、前記モータの回転数のn(nは正の整数)倍の周波数成分を抽出する回転数同期周期バンドパスフィルタとを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の異常監視装置。
【請求項7】
前記回転同期外乱成分抽出部は、
前記外乱成分算出部にて算出された外乱成分から、前記モータの回転数のn(nは正の整数)倍に対応した周期の振動の振幅を同定し、前記モータの回転数に同期した周期の外乱成分の大きさとして出力する回転数同期振動振幅同定部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の異常監視装置。
【請求項8】
前記回転同期外乱成分抽出部は、
前記外乱成分算出部にて算出された外乱成分から、前記モータの回転数のna(naは正の整数)倍に対応した周期の振動の振幅および前記モータの回転数のnb(nbはnaと異なる正の整数)倍に対応した周期の振動の振幅を同定し、前記モータの回転数に同期した周期の外乱成分の大きさとして出力する回転数同期振動振幅同定部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の異常監視装置。
【請求項9】
前記回転同期外乱成分抽出部は、
前記モータの回転数に同期した周期の外乱成分の大きさの実効値を算出する実効値算出部をさらに備えることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の異常監視装置。
【請求項10】
前記回転同期外乱成分抽出部からの出力値がしきい値以上となった場合、回転数同期振動が増加したと判別する回転数同期振動増加判別部をさらに備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の異常監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−271185(P2010−271185A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123298(P2009−123298)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】