説明

異形断面バー材の供給装置及び加工装置

【課題】軸回りの回転を伴わない細長いバー材への各種の加工を短いタクトタイムで行うことが可能な汎用的で経済的な装置を提供することを課題としている。
【解決手段】対向する2本の主軸と、その主軸軸線を挟んで対向配置された2個の回転工具タレットとを備えた汎用の2主軸対向旋盤を用いて、異形断面バー材の加工を可能にするバー材供給装置及び加工装置を提供している。バー材供給装置2は、異形断面バー材の位相を一定にして、その軸方向に加工機1へと供給する。バー材を軸方向に移動自在に支持するV形受部材41は、バー材の長手方向に細長い昇降移動台45からその長手直角方向に延びる腕44の先端に設けられている。複数のV形受部材41で支持されたバー材は、昇降移動台45の昇降及び横移動により、その断面中心が送り軸線上に位置決めされ、プッシャ51で後端を押されて加工機1に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周面の少なくとも一部に当該バー材の水平面上での転動を妨げる平面や凹面などの定置面(当該面を底にして水平面上に定置することができる面)を長手方向全長に亘って備えた異形断面のバー材を、その長手方向に送って旋盤その他の加工機に供給するバー材供給装置、及びそのようなバー材供給装置と加工機とを備えた異形断面バー材の加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バー材から多数の加工済品を連続加工する手段として、バー材供給装置から加工機にバー材を長手方向に送り込み、送り込まれたバー材の先端部を加工機に設けたチャックで把持し、チャックから突出したバー材の先端部を加工機に設けた工具で加工した後、その加工した部分をバー材の先端から切り離して加工済品とし、次にチャックを開いてバー材を所定長さ送ってチャックを閉じるという動作を繰り返すという加工手段は公知である。
【0003】
このような加工に用いるバー材供給装置は、バー材を送り軸線上で軸方向(バー材の長手方向。以下同じ。)に移動自在に支持する受部材と、この受部材で支持されたバー材の後端(反加工機側の端)を軸方向に押動するプッシャとを備えている。更にこの種のバー材供給装置には、複数本のバー材を連続的に加工機に供給することができるように、受部材の側方に当該受部材上に送出す複数本のバー材を貯留する貯留部を設けることも一般に行われている。一般的な構造では、貯留部に並べて貯留されたバー材は、その送出し端側に設けた送出し装置により、一本ずつ受部材上に落とし込まれる。
【0004】
この種のバー材供給装置として、特許文献1には、バー材の送り軸線の側方に設けられる貯蔵棚を多段とし、この貯蔵棚の送出側端部(送り軸線側の端部)からバー材を一旦持ち上げて受部材上に送り出す構造のバー材供給装置が提案されている。また、特許文献2には、主軸の軸中心に設けた貫通孔を通してバー材を旋盤に送り込む際に、チャック側から主軸の貫通孔に挿入されるストッパを軸方向に往復移動可能に設け、異形断面バー材の先端がチャックの爪と干渉して貫通孔を通過不能となったとき、ストッパをプッシャの送り力より大きい力で反送り方向に押してバー材を後退させた状態で主軸の位相を変更するインチング動作で異形断面バー材の旋盤への供給を可能にする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5‐17012号公報
【特許文献2】特開平7‐204905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造のバー材供給装置は、主軸の軸心に設けた貫通孔を通してバー材を旋盤に供給し、供給されたバー材の先端に旋削加工を行う加工に広く用いられている。このようなバー材供給装置では、バー材を受部材上で回転可能に支持する構造が採用されており、バー材としては丸棒が多く、異形バー材といわれるものであっても正六角断面等の正多角形断面のバー材が殆どである。
【0006】
しかし、バー材は円形断面や正多角形断面のものばかりではなく、矩形断面や円周の一箇所に定置面一般的には平面)を備えた例えばDカット材と呼ばれる断面のものなどもあり、これらの異形断面バー材の機械加工も広く行われている。しかし従来は、この種の異形断面バー材の加工を一工程で連続的に行う汎用的な加工装置がなく、特に短いタクトタイムで加工を行うためには、高価な専用機が必要であった。
【0007】
この発明は、軸回りの回転を伴わない細長いバー材への各種の加工を短いタクトタイムで行うことが可能な汎用的で経済的な装置を提供することを課題としている。この課題を解決するため、この発明では、対向する2本の主軸と、その主軸軸線を挟んで対向配置された2個の回転工具タレットとを備えた汎用の2主軸対向旋盤を用いて、上述した異形断面バー材の定置面を基準とした加工などを可能にするバー材供給装置、及び当該バー材供給装置と2主軸対向旋盤などの加工機とを含んでなるバー材加工装置を提供している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のバー材供給装置2は、異形断面バー材Wの位相(中心軸周りの角度)を定められた一定の角度にして、その軸方向に加工機1へと供給するものである。加工機1に送り込まれるバー材Wをその軸方向に移動自在に支持する受部材は、バー材Wの周面に形成された定置面Waを支持する第1ガイド部41aとこれに交叉する第2ガイド部41bとを備えたV形の受部材とする。好ましいV形受部材は、バー材の定置面Waと平行な送り直角方向の軸回りに自由回転する第1ローラと、当該第1ローラの軸と交叉する第2の送り直角方向の軸回りに自由回転する第2ローラとからなる受ローラ対である。複数のV形受部材41のそれぞれは、バー材Wの長手方向に細長い昇降移動台45からその長手直角方向に延びる複数の腕44の先端に設けられている。複数のV形受部材41で軸方向に移動自在に支持されたバー材Wは、昇降移動台45の昇降及び横移動により、その断面中心が送り軸線上に位置決めされ、プッシャ51で後端を押されて加工機1に供給される。
【0009】
この発明の加工装置は、同一軸線Ca上に配置した2本の主軸(バー材を把持するチャックを装着する軸)11a、11bの対向端に設けたチャック13a、13bの位相を固定して、当該主軸を挟む両側に設けた回転工具タレット15a、15bでバー材Wに主として軸直角方向の加工を行うものである。チャック13a、13bは、加工されるバー材Wの断面形状に応じた爪18(18a〜18d)を有するものとし、チャック13a、13bの位相をバー材供給装置2から送り込まれるバー材Wの位相に合わせた位相に固定して、当該バー材の把持及び開放を行う。バー材供給装置2側のチャック13bは、、加工済品の長さに対応する所定のストロークで軸方向に往復動し、この往復動側チャック13bの背後からバー材Wが供給されるようにし、反対側のチャック13aの背後から加工済品が排出されるようにする。
【0010】
往復動側チャック13bの移動ストロークは、加工済品の長さに応じて予めNC装置に登録したストロークとされ、往復動側チャック13bを閉じて反対側のチャック13aを開いた状態で往復動側チャック13bを反対側チャック13aに向けて前進させることにより、バー材Wを次の加工箇所へと順送りするための軸方向の間歇送りが行われる。バー材Wの加工は、両方のチャック13a、13bを共に閉じて加工箇所の両側でバー材Wを把持した状態で、主軸軸線Caを挟んで配置されたタレット15a、15bに装着されている回転工具をタレットの割出し動作により選択して、バー材Wの両側方から好ましくは同時に加工を行う。バー材Wの一加工箇所の加工が終了したら、往復動側チャック13bを開いて所定ストローク後退し、次に往復動側チャック13bを閉じたあと反対側チャック13aを開いて、往復動側チャック13bが所定ストローク前進することにより、次の加工箇所を2個のチャック13a、13bの間に位置させ、両側のチャック13a、13bを閉じて次の加工を行う。この動作を繰り返すことで、バー材供給装置2から供給されるバー材Wに所定間隔で所定の加工を行う。
【0011】
バー材Wの切断は、回転工具タレット15a、15bの一方をY軸方向に移動可能とし、当該タレットにエンドミルを装着し、このエンドミルを割出して当該タレットをバー材Wを横切るようにY軸移動させることにより、行うことができる。
【0012】
この出願の請求項1の発明に係る異形断面バー材の供給装置は、供給されるバー材Wの長手方向に所定間隔で配置された複数の受部材41と、当該複数の受部材で送り軸線Cb上に支持されたバー材の終端を制限された力で押して当該バー材を長手方向に送るプッシャ51とを備えた加工機へのバー材の供給装置において、前記受部材のそれぞれは、バー材の周面に形成された定置面Waと平行な第1ガイド部41aと、当該第1ガイド部と交叉する第2ガイド部41bとを備えたV形受部材41であり、当該各V形受部材は、バー材の長手方向に細長い昇降移動台45からその長手直角方向に延びる複数の腕44の先端に設けられ、前記昇降移動台の昇降及び横移動により、前記複数のV形受部材を同期昇降及び同期横移動させて当該V形受部材に支持されたバー材の断面中心を送り軸線Cb上に位置決めすることを特徴とする、加工機への異形断面バー材の供給装置である。
【0013】
また、この出願の請求項2の発明に係る異形断面バー材の加工装置は、上記手段を備えたバー材の供給装置と加工機1とを備え、当該加工機は、バー材供給装置2から送り込まれるバー材Wの送り軸線Cb上に対向配置された2個のワーク把持チャック13a、13bと、2個のワーク把持チャックの間の位置で前記送り軸線Cbを挟んで対向する位置に配置された2個の回転工具タレット15a、15bとを備え、前記ワーク把持チャックは、バー材が通過する貫通孔12a、12bを備え、送り軸線Cbと一致する軸線Ca回りの回転を固定された、少なくともバー材供給装置側のもの13bが送り軸線方向であるZ軸方向に移動位置を制御されるチャックであり、前記回転工具タレットは、前記Z軸方向及び送り軸線に近接離隔する方向であって水平面に対して傾斜したX軸方向に移動位置を制御されるタレットであり、前記バー材供給装置の第1ガイド部41a前記X軸方向と直交する方向にして設けられている、異形断面バー材の加工装置である。
【0014】
この出願の請求項3の発明に係る異形断面バー材の加工装置は、上記手段を備えた異形断面バー材の加工装置において、前記2個の回転工具タレット15a、15bの少なくとも一方は前記Z軸方向及びX軸方向と直交するY軸方向にも移動位置を制御されるタレットであることを特徴とするものである。
【0015】
この出願の請求項4の発明に係る異形断面バー材の加工装置は、上記請求項2又は3記載の手段を備えた異形断面バー材の加工装置において、前記加工機1が、ベッド面が操作者側が低くなる方向に傾斜したスラント形のベッド面14と、主軸軸線Caを挟んで上下に配置された回転工具タレット15a、15bとを備えた2主軸対向旋盤であることを特徴とするものでせある。
【0016】
この出願の請求項6の発明に係る異形断面バー材の加工装置は、前記請求項2、3又は4記載の手段を備えたバー材の加工装置において、バー材供給装置2が、複数個のV形受板32でバー材を支持して当該バー材の長手方向と直交する方向に間歇走行する複数本の周回体(チェーン)31を備えた貯留部を備え、前記複数のV形受部材41が、隣接する2本の周回体の間の位置であって当該周回体の走行方向終端側の位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
また、この出願の請求項5記載のバー材の供給装置は、前記請求項1に記載の手段を備えたバー材の供給装置において、複数個のV形受板32でバー材Wを支持して当該バー材の長手方向と直交する方向に間歇走行する複数本の周回体(チェーン)31を備えた貯留部3を備え、前記複数のV形受部材41が、隣接する2本の周回体の間の位置であって当該周回体の走行方向終端側の位置に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明のバー材供給装置2は、周面に長手方向に連続する定置面Waを備えた異形断面のバー材Wを、その定置面Waを基準とした一定の位相で加工機に軸方向に供給することができるものである。この発明のバー材供給装置2は、バー材Wを支持するV形受部材41の昇降及び横移動により、断面寸法(幅や高さ)が異なるバー材の断面中心を加工機1の主軸軸線Caに一致させてバー材Wを供給することができる。また、バー材Wを支持するV形受部材41が昇降移動台45から軸直角方向に延びる腕44の先端に装着されているので、V形受部材41上にバー材Wを送り込む搬送チェーン31や貯留棚の棚板とを干渉させることなく、V形受部材41の上昇動作によってバー材Wを貯留部の搬送チェーン31や棚板から受け取ることができる。すなわち、複数本のバー材Wを貯蔵している搬送チェーン31や棚板の少なくとも送出し部分を腕44の間に配置すればよい。
【0019】
この発明のバー材加工装置は、バー材Wの送り軸線Cbを挟んで配置された2個の回転工具タレット15a、15bに装着された工具により、バー材Wの両側から当該バー材の定置面Waを基準とした加工を行うことが可能である。例えばバー材Wにその定置面Waと直交する方向の段付き孔を加工する場合、バー材Wの両側から大径孔(例えば座ぐり孔や孔周囲の面取など)の加工を同時に行うことができる。
【0020】
この発明のバー材加工装置では、バー材供給装置のV形受部材41の第1ガイド部41aの軸方向と加工機1のX軸方向(工具の切込み方向)とが直交しているので、第1ガイド部41aで規定されかつチャックの爪18で規定された定置面Waに直交する孔の加工に特に好適である。
【0021】
また、加工機1として回転工具タレット15a、15bを備えた2主軸対向NC旋盤を用いた場合、各タレットに装着された複数の回転工具とNC制御されるタレット15a、15bのX軸及びZ軸方向移動によって、長孔や長溝の加工も可能であり、更にY軸方向にも移動可能な回転工具タレットを備えた上記旋盤を用いることにより、マシニングセンタに匹敵するような複雑な加工をバー材Wの必要な箇所に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に図面を参照して、この発明を更に説明する。図1は、この発明の加工装置の一例を示す正面図で、1は2主軸対向旋盤、2はバー材供給装置、6は加工済品受取り装置である。図2は、2主軸対向旋盤の要部をそのベッド面に垂直な方向から見た模式図で、バー材供給装置の一部が模式的に示されている。図3及び図4はバー材供給装置の平面図及び側面図、図5は、バー材供給装置の要部を示す斜視図、図6は旋盤の主軸軸線及びX軸方向とバー材供給装置の要部との位置及び移動関係を示す側面図、図7は、コレットチャックの爪とバー材の関係を示す説明図、図8は、加工済品受取装置6の要部を示す模式的な斜視図である。
【0023】
2主軸対向旋盤1は、軸方向に送られるバー材Wの供給及び排出用の貫通孔12a、12bを軸中心に備えた2主軸対向旋盤で、図の左側の主軸(左主軸)11aが軸方向移動不能な固定側主軸、図の右側の主軸(右主軸)11bが軸方向移動可能、かつその移動位置をNC装置で制御されている移動側主軸である。バー材供給装置2は、旋盤1の移動側主軸11b側に配置されており、加工されるバー材は、移動側主軸の貫通孔12bを通って供給され、固定側主軸の貫通孔12aを通って排出される。
【0024】
2主軸対向旋盤1は、そのベッド面14が操作者側が低くなる方向に傾斜した、いわゆるスラント型のベッドを備えており、タレット15a、15bの工具切込み方向(X軸方向)は、水平面に対して60度傾斜している。
【0025】
旋盤1は、主軸軸線Caを挟んで対向する位置にそれぞれ1個の回転工具タレット、すなわちタレットに装着されたドリルやフライスカッタなどの回転工具を駆動する工具駆動装置を備えたタレット15a、15bを備えている。上下のタレット15a、15bは、それぞれX軸方向及びZ軸方向に移動可能であり、上タレット15aは、Y軸方向にも移動可能であり、上タレット15aの一箇所に取付けた座ぐり孔加工用のエンドミルTaを使って、上タレット15aのY軸方向移動により、バー材の切断を可能としている。下タレット15bの一箇所には、主軸軸線Ca上に前進して供給されるバー材の先端の位置決めをするストッパ17が装着されている。
【0026】
主軸11a、11bの対向端には、加工されるバー材の断面形状に合った把持爪18を供えたコレットチャック13a、13bが装着されている。例えば図7に示すような略矩形断面のバー材Wを加工するときは、その四方の面に当接する4個の爪18a〜18dを有するコレットチャックが取付けられる。
【0027】
バー材供給装置2は、平行に配置された複数本の搬送チェーン31で形成された貯留部3と、送り部4を備えている。送り部4は、同期昇降及び前後方向(図4の左右方向)に同期移動する受ローラ対(V形受部材)41と、この受ローラ対41で支持されて、その断面中心が旋盤の主軸軸線Caと一致する位置に移動したバー材Wの後端(反旋盤側の端)を押動するプッシャ51とを備えている。
【0028】
各搬送チェーン31は、そのリンク1つおきのリンクプレートに上辺をV形の受辺とした受板32が装着されている。複数本の搬送チェーン31は、送出側のチェーンスプロケット34を固定した1本の駆動軸35で同期駆動されている。複数の搬送チェーン31に設けた受板32の受部33のそれぞれは、バー材と平行な同一軸線上に配置されている。搬送チェーン31は、駆動軸35を駆動するモータ36の間歇回転により、受板32の配置ピッチに相当する距離ずつ間歇走行する。受板32の送り部4側の最終停止位置は、駆動軸35の略真上の位置であり、この位置が旋盤の主軸軸線Caの延長線の略直下の位置となっている。
【0029】
貯留部3と送り部4とは、バー材供給装置のフレーム21の上面に配置されており、当該フレーム上面の最も手前側の位置(図4の左側の位置)には、前後方向の複数本のガイドバー22が固定され、このガイドバー22と平行な送りねじ23及びその駆動モータ(前後動モータ)24が搭載されている。ガイドバー22には、送り方向に細長い前後移動台25が、そのガイド方向に移動自在に搭載され、この前後移動台25の下面に固定した送りナット26が送りねじ23に螺合している。すなわち、前後動モータ24の正逆回転により、前後移動台25が前後方向に移動位置決めされる。
【0030】
前後移動台25には、旋盤に近い側と遠い側とに二組の昇降ユニット40が搭載されている。各昇降ユニット40には、旋盤に近い側と遠い側とに分割したそれぞれが送り方向に細長い昇降移動台45が昇降自在に装着されている。
【0031】
各昇降ユニット40は、昇降移動台45を上下移動自在に案内する2個のリニアガイド46と、その中間位置に配置された昇降駆動装置47とを備えている。昇降駆動装置47は、出力軸にピニオン27を固定した昇降モータ28と、昇降移動台45に固定した上下方向のラック48とを備え、ラック48をピニオン27とは噛合している。前後動モータ24及び昇降モータ28は、NC装置で回転角を制御されたサーボモータである。昇降移動台45は前後動モータ24の回転により、前後方向(水平方向)に移動位置決めされ、昇降モータ28の回転により、高さ方向に移動位置決めされる。
【0032】
旋盤1に送られる1本のバー材を支持する複数の受ローラ対41は、基端を昇降移動台45に固定されて貯留部3側へと延びる複数本の腕44の先端にそれぞれ装着されている。腕44及びその先端の受ローラ対41は、貯留部に配置されている複数の搬送チェーン31の間の位置に配置されており、受ローラ対41の概略の位置は、搬送チェーンの駆動軸35の略直上の位置である。
【0033】
受ローラ対41は、互いに交差する軸回りに回転する第1ローラ41aと第2ローラ41bとで形成されている。第1ローラ41a及び第2ローラ41bは、ローラ取付ブロック42に互いに交差する方向で植立した2個のローラ軸回りに自由回転可能である。ローラ取付ブロック42は、第1ローラ41aの軸方向が次に述べる方向となるようにして、腕44の先端にねじで固定されている。
【0034】
受ローラ対41の第1ローラ41aの軸及び搬送チェーン31に設けた受板の受部の第1辺33aは、加工機である旋盤のY軸と平行である。受ローラ対の第2ローラ41bの軸及び受部の第2辺33bは、第1ローラ41a及び第1辺33aと直行する方向とするか、加工するバー材が基準となる定置面Waと略直交する平面Wbを備えているときは、その第2の平面と平行な方向とする。
【0035】
バー材Wが略矩形断面である場合の受ローラ対41と受板の受部33の例が、図6に示されている。このバー材Wの定置面Waは、幅広い側の下面であり、この下面が第1ローラ41a及び第1辺33aにより、旋盤のX軸と直交する方向にして支持されている。
【0036】
バー材供給装置2の送り軸線の上方には、送り方向と平行な送りガイド52と、このガイドと平行な送りベルト53とが装架され、この送りガイド52に摺動自在かつ送りベルト53の一箇所に固定された送り台54にバー材Wの後端を押動するプッシャ51が固定されている。送りベルト53は、旋盤1側のプーリ55に連結した送りモータ56(図2参照)で駆動される。この送りモータ56は、バー材の先端が旋盤の主軸軸線Ca上に前進したストッパ17に当接したときに停止するトルクでトルク制限されたインバータモータである。
【0037】
図2に示すように、バー材供給装置2の送り軸線上の旋盤1の直近の位置に、バー材を検出するセンサ57が設けられている。供給されるバー材Wの長さは、このセンサ57がバー材Wの先端を検出したときの送りモータ56の回転位置によってNC装置で検出することができる。また、旋盤1とバー材供給装置2の送り方向の位置関係を予めNC装置に登録しておくことにより、旋盤の下タレットに装着したストッパ17でバー材Wの先端を停止させたときの下タレット15bの位置と、送りモータ56の回転位置とで検出することもできる。
【0038】
旋盤1の左側に配置されている加工済品受取装置は、図8に模式的に示すように、旋盤の固定主軸11aの後端(反チャック側の端)から軸方向に押し出されてくる加工済バー材を受ける送り方向に細長い帯状の受部61と、その側方に斜め下方に延びる貯留板62と、受部61上に落下したバー材を貯留板62側へと押し出す電磁ソレノイド型の横押しプッシャ63と、受部61上に落下した加工済品を検出する光電センサ64(投光器64aと受光器64b)とを備えている。
【0039】
横押しプッシャ63は、光電センサ64のバー材検出信号を受けてロッド63aを貯留板62側へ突出させ、受部61上の加工済バー材を貯留板62の方へ押し動かす。押し動かされたバー材は、貯留板62の上を滑って貯留板62上に順次貯留される。
【0040】
次に上述のように構成されたバー材加工装置の動作について説明する。加工前のバー材は、バー材供給装置2の貯留部3に設けられている搬送チェーンの受部33上に、その定置面(基準面)Waを受部の第1辺33aに載置した状態で、搭載されている。搬送チェーン31は、送り部4のバー材が旋盤1へと送り出された後、受ローラ対41が受板32より下方の高さまで下降した後のタイミングで、受板32の一配設ピッチ分間歇走行し、貯留部の最先端のバー材を下降した受ローラ対41の上方で停止させる。
【0041】
次に受ローラ対41が受板32より高い位置まで上昇して、最先端のバー材Wを受ローラ対41で支持した状態で持ち上げる。持ち上げられたバー材の定置面は、受ローラ対の第1ローラ41aで支持されることとなる。受ローラ対41は、持ち上げたバー材の断面中心が旋盤の主軸軸線Caの位置と一致する高さまで上昇及び前後移動する。この上昇と前後移動は、NC装置の制御の下での前後動モータ24と昇降モータ28の駆動により行われる。
【0042】
旋盤1内へ送り込まれた先のバー材に対する総ての加工が終了して、当該バー材が旋盤1の加工領域Aから排出されると、旋盤1の下タレット15bに装着したストッパ17が主軸軸線Ca上に位置決めされ、プッシャ51が受ローラ対41で支持されたバー材の後端を押して、当該バー材を旋盤1へと供給する。この供給途中において、バー材の先端がセンサ57で検出され、当該バー材は、移動側主軸の貫通孔12bを通って先端が加工領域Aへと送り出され、ストッパ17に先端が衝突した時点でバー材の送り負荷が送りモータ56の制限トルクを越えて、送りモータ56が強制的に停止させられる。
【0043】
次に移動側主軸のチャック13bが閉じてバー材を把持し、移動側主軸11bが固定側主軸11a側へと移動して、バー材の先端が固定側主軸のチャック13aに挿入された時点で移動側主軸11bが停止し、固定側主軸のチャック13aが閉じ、送り込まれたバー材の先端部が対向する両チャックで把持された状態となる。この状態で上タレット15a及び下タレット15bの所定の回転工具Ta、Tb、Tcが割出され、当該工具の回転と上下のタレット15a、15bのX−Z軸方向及び必要なY軸方向移動により、両チャック13a、13bで把持された間の箇所のバー材の加工が行われる。
【0044】
所定の加工が終了したら、移動側チャック13bが開き、移動側主軸11bは、バー材の加工箇所の1ピッチ分(隣接する加工箇所の間隔分)後退してそのチャック13bを閉じ、次に固定側チャック13aが開いて移動側主軸11bが当該1ピッチ分前進する。そして、その前進端位置で固定側チャック13aが閉じ、両チャックの中間の加工箇所に上下のタレット15a、15bに装着した回転工具で加工が行われる。
【0045】
この動作の繰り返しにより、バー材の軸方向送りと所定箇所への加工が順次行われ、必要な加工が行われた後、要すれば両チャック13a、13bでバー材の切断部の両側を把持した状態で、上タレット15aに装着したエンドミルをY軸方向に移動させてバー材を切断する。加工済のバー材は、続いて送り込まれるバー材の先端によって押されて、固定側主軸の貫通孔12aを通過し、その終端が貫通孔12aを離脱したときに、加工済品受取装置の受部61上に落下する。落下したバー材が光電センサ64で検出され、横プッシャ63で傾斜貯留部62へと押し出されて順次貯留される。
【0046】
以上の動作を繰り返すことによって、バー材供給装置の貯留部3に搭載された複数本のバー材の加工が連続的に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の加工装置の一例を示す正面図
【図2】2主軸対向旋盤の要部とバー材供給装置の一部を旋盤のベッド面に垂直な方向から見た模式図
【図3】バー材供給装置の平面図
【図4】バー材供給装置の側面図
【図5】バー材供給装置の要部を示す斜視図
【図6】旋盤の主軸軸線とバー材供給装置の要部との位置関係を示す側面図
【図7】コレットチャックの爪とバー材の関係を示す説明図
【図8】加工済品受取装置の要部を示す模式的な斜視図
【符号の説明】
【0048】
1 加工機(2主軸対向旋盤)
2 バー材供給装置
3 バー材供給装置の貯留部
4 バー材供給装置の送り部
11a、11b 主軸
12a、12b 主軸の貫通孔
13a、13b ワーク把持チャック
14 ベッド面
15a、15b 回転工具タレット
31 周回体(チェーン)
32 V形受板
41 受部材(受ローラ対)
41 V形受部材(受ローラ対)
41a 第1ガイド部(第1ローラ)
41b 第2ガイド部(第2ローラ)
44 腕
45 昇降移動台
51 プッシャ
Ca 主軸軸線
Cb 送り軸線
Ta〜Tc 回転工具
W バー材
Wa バー材の定置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるバー材(W)の長手方向に所定間隔で配置された複数の受部材(41)と、当該複数の受部材で送り軸線(Cb)上に支持されたバー材の終端を制限された力で押して当該バー材を長手方向に送るプッシャ(51)とを備えた加工機へのバー材の供給装置において、
前記受部材のそれぞれは、バー材の周面に形成された定置面(Wa)と平行な第1ガイド部(41a)と、当該第1ガイド部と交叉する第2ガイド部(41b)とを備えたV形受部材(41)であり、当該各V形受部材は、バー材の長手方向に細長い昇降移動台(45)からその長手直角方向に延びる複数の腕(44)の先端に設けられ、
前記昇降移動台の昇降及び横移動により、前記複数のV形受部材を同期昇降及び同期横移動させて当該V形受部材に支持されたバー材の断面中心を送り軸線(Cb)上に位置決めすることを特徴とする、
加工機への異形断面バー材の供給装置。
【請求項2】
請求項1記載のバー材の供給装置と加工機(1)とを備え、当該加工機は、
供給装置(2)から送り込まれるバー材(W)の送り軸線(Cb)上に対向配置された2個のワーク把持チャック(13a,13b)と、2個のワーク把持チャックの間の位置で前記送り軸線(Cb)を挟んで対向する位置に配置された2個の回転工具タレット(15a,15b)とを備え、
前記ワーク把持チャックは、バー材が通過する貫通孔(12a,12b)を備え、送り軸線(Cb)と一致する軸線(Ca)回りの回転を固定された、少なくとも供給装置側のもの(13b)が送り軸線方向であるZ軸方向に移動位置を制御されるチャックであり、
前記回転工具タレットは、前記Z軸方向及び送り軸線に近接離隔する方向であって水平面に対して傾斜したX軸方向に移動位置を制御されるタレットであり、
前記供給装置の第1ガイド部(41a)前記X軸方向と直交する方向にして設けられている、
異形断面バー材の加工装置。
【請求項3】
前記2個の回転工具タレット(15a,15b)の少なくとも一方は前記Z軸方向及びX軸方向と直交するY軸方向にも移動位置を制御されるタレットである、請求項2記載の加工装置。
【請求項4】
前記加工機(1)が、ベッド面が操作者側が低くなる方向に傾斜したスラント形のベッド面(14)と、主軸軸線(Ca)を挟んで上下に配置された回転工具タレット(15a,15b)とを備えた2主軸対向旋盤である、請求項2又は3記載の加工装置。
【請求項5】
複数個のV形受板(32)でバー材Wを支持して当該バー材の長手方向と直交する方向に間歇走行する複数本の周回体(チェーン)(31)を備えた貯留部(3)を備え、前記複数のV形受部材(41)が、隣接する2本の周回体の間の位置であって当該周回体の走行方向終端側の位置に配置されている、請求項1記載のバー材の供給装置。
【請求項6】
前記供給装置(2)が、複数個のV形受板(32)でバー材を支持して当該バー材の長手方向と直交する方向に間歇走行する複数本の周回体(チェーン)(31)を備えた貯留部を備え、前記複数のV形受部材(41)が、隣接する2本の周回体の間の位置であって当該周回体の走行方向終端側の位置に配置されている、請求項2、3又は4記載の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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