説明

畳ベッド昇降機構

【課題】
本発明は小さな力で大きな変位が得られる畳ベッドを提供することである。
【解決手段】
従来、畳ベッドとしてカム機構とリンク機構は知られている。しかしカム機構には大きなリフト力が出せるという利点がある反面、大きな変位を得ることが出来ないという欠点がある。リンク機構はその逆である。本発明は、この両者の利点と欠点を上手く組み合わせることで両者の利点のみを出せるようにしたものである。即ち最初持ち上げるのに大きなリフト力を必要とする前段階はカムによる駆動で行い、ある程度持ち上がり大きなリフト力を必要としない後段階を変位量が大きく取れるリンクにより駆動するようにしたものである。これにより全体的に大きな容量のアクチュエータを使わず、スムーズに変位することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は畳の底面に折り畳み式の昇降機構を組みつけた畳ベッドの昇降機構に関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの力に逆らって物を変位させる、例えば重いものを持ち上げる場合などにも色々な機構が使用されている。その中でカム機構とリンク機構がありその両者に利点と欠点がある。
【0003】
リンクの一端に設けた回転軸を中心に円運動するリンクが,ほぼ水平に位置している時,水平方向の力により回転運動を生じさせるには,無限大の力が必要であるが,リンクと一体で水平と角度をなすカムに水平方向の力を加えれば,容易に回転力を生じさせることが可能である。
【0004】
しかしリンクが水平に対して傾斜角を持った場合には,リンク先端にかかる水平方向の力で回転力を生じさせることは容易であり,逆にカムはストロークを確保しようとするとき,不便である。
【0005】
【特許文献1】特開2004-329622
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1には上下に移動する畳ベッドは提案されているが、カム機構とリンク機構を組み合わせる具体的な構造などが開示されていない。本発明はカム機構とリンク機構の特徴を生かし、それをうまく組み合わせることにより、限られたスペース内で小さな力で大きな変位が得られる畳ベッド昇降機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は畳の底面に折り畳み式の昇降機構を組みつけた畳ベッドにおいて、請求項1はカムによる駆動よりもリンクにより駆動する力が大きくなった点でリンクによる駆動に切り替えることを特徴とする畳ベッド昇降機構を特徴とする。
【0008】
請求項2はリンク中心点からカム回転軸の長さとリンク中心点から回転部の長さの比を2対1乃至4対1にしたところでリンクによる駆動に切り替えることを特徴とする畳ベッド昇降機構を特徴とする。
【0009】
請求項3は可動側付勢ローラーが可動部カムに接触し固定側付勢ローラーが固定部カムに接触してカムにより駆動することを特徴とする前記の畳ベッド昇降機構を特徴とする。
【0010】
請求項4はカムにより駆動するための一個の原動機の回転ねじがリンクによる駆動のため運動伝達部を通過しその先に設けられた加圧部が前記運動伝達部に接触してリンクによる駆動することを特徴とする前記の畳ベッド昇降機構を特徴とする。
【0011】
請求項5はカムにより駆動するための一個の原動機の回転ねじがリンクによる駆動のため運動伝達部を通過しその先に設けられた加圧部が前記運動伝達部に接触してリンクによる駆動するようにした請求項4の発明で、カムにより駆動するための回転ねじのピッチがリンクによる駆動するための回転ねじのピッチと異なることを特徴とする畳ベッド昇降機構を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により畳ベッドにおいて上下移動用モーター等の動力を小さな定格動力採用が出来るため畳の厚みのなかに上下移動機構をコンパクトに収納することができるとともに、上下移動機構でのカムとリンクの切替のタイミングを最適にすることで畳ベッドが上下するときカムとリンク切替時に生ずる加速度の変化を低減することにより乗りごこちの不具合を改善できる昇降機構を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明になる畳ベッド昇降機構(以下単にベッド昇降機構という)の一実施例の斜視図である。
【0014】
図において1a及び2aは可動リンクであり、回転部3aにより自由に回転するX型機構である。同様に別の1bと2bの可動リンクが回転部3bで自由に回転するX型機構があり両者は回転軸4で結合されてリンク機構を形成している。5a、5b、5c、5dは各可動リンク1a、2a、1b、2bの上側の端に設けられたリンクローラーでありこの上に図示していないベッド板が乗る。6a、6bは夫々後述するカム機構とリンク機構用原動機の第一と第二のアクチエーターである。
【0015】
次にこのベッドの動作を説明する。
【0016】
図2は第一のアクチエーター6aにより駆動されるカム機構部分の斜視図である。ベッドが一番下まで下ろされ、可動リンク1a、2a、1b、2bが折畳まれた状態でアクチエーター6aを駆動する。それにより第一のアクチエーター6aに直結した第一回転ねじ7が回転しコ字型のカム駆動部8が矢印の左側へ動く。コ字型のカム駆動部8の両端には夫々に同一軸の固定側付勢ローラー9aと可動側付勢ローラー9b及び固定側付勢ローラー10aと可動側付勢ローラー10bが設けられている。これらのローラー群が矢印の左側へ動くことにより、固定側付勢ローラー9aと10aは夫々固定部カム11aと12aの上を接触して転がり又可動側付勢ローラー9bと10bは夫々可動部カム13aと14aに接触し回転する。そのため可動部カム13aと14aはカム回転軸15aと15bを軸として上方に持ち上がり固着している可動棒リンク2aと2b(図1)が上に持ち上がりリンク機構全体が徐々に立ち上がって行く。図3は固定側付勢ローラー9a及び10aと可動側付勢ローラー9b及び10bを異なる軸に設けた他の実施例の側面図である。なお固定側付勢ローラー9a及び10aと可動側付勢ローラー9b及び10bは当然回転方向が逆になるため別々に設けたが、これらを一個の固定軸とし、固定部カム11aと可動部カム13a及び固定部カム12aと可動部カム14aの間を滑らせて使用しても良い。
【0017】
カム機構による駆動の特徴としてカム駆動部8がカム回転軸15aと15bに近づく即ちベッド昇降機構が低い状態から高い状態になるにしたがって、カムで構成されるくさびを大きく広げることになるためにだんだんと大きなリフト力が必要になっていく。そこで駆動を図1に示す第二のアクチエーター6bに切り替える。
【0018】
図において16は第二のアクチエーター6bに直結した第二回転ねじであり、軸受け17に支えられ第二のアクチエーター6bにより回転する。18は第二回転ねじ16で左右に動く運動伝達部でありそれと回転自在に連結された可動棒リンク1aと1bの下側の可動端1aa、1bbが左右に動くリンクによる駆動となっている。このリンク駆動の特徴はカムの場合と逆でベッドが低い状態のとき、つまり初期立上げに大きいリフト力を必要とし高くなるに従って必要なリフト力は小さくなって行くということである。
【0019】
ベッドが低い位置にあるときは,最初にカム駆動が働きベッド昇降機構を上下させる。その間,第二のアクチエーター6bは第二回転ねじ16を回転させ、運動伝達部18を介して可動棒リンク1aと1bの上昇力するための動力として働いてはいるが,ベッド全体のリフト力に対しては第一のアクチエーター6aと可動棒リンク2aと2bが負担している。第一のアクチエーターから発生するベッド上昇に対して、第二のアクチエーター6bの駆動は、可動棒リンク2aと2bの動きに対してバランスよく可動棒リンク1aと1bが上昇できれば良く、可動棒リンク1aと1bは追随するだけのリフト力があれば良いのである。追随する以上の不要な駆動力を第二のアクチエーター6bが供給すると、受台21を変形させたり、第二回転ねじ16と運動伝達部18との間のかじり等のエネルギー損として使われるために、返ってベッド上昇・下降に不具合となってしまう。そのような不具合を防止するには第二のアクチエーター6bに掛かる電圧を第一のアクチエーター6aに掛かる電圧より低くするとか、第二のアクチエーター6bが四個のモーターで構成されている場合その内の一個或いは数個を駆動するようにする。
【0020】
ベッドが高い位置にくると,第二のアクチエーター6bによるリンクのリフト力が,第一のアクチエーター6aのリフト力より勝ることとなり,駆動が第二のアクチエーター6bに切り替わることによりベッドが更に高い状態になってゆく。この切換はカムによる駆動よりもリンクによる駆動するリフト力が大きくなった点で例えば左に動くカム駆動部8が本体側に設けられたマイクロスイッチをONにすることなどにより自動的に行われる。
【0021】
この切替のタイミングは、次のタイミングで行うことにより、小さな駆動力でかつ駆動切替がスムーズに行なえることが得られた。以下実施例にて説明する。図1で回転部3aより垂直に下ろした線と受台21と交わる点をPとする。回転部3aとPと結ぶ線分をXとする。カム回転軸15aとPを結ぶ線分をYとする。カム駆動力とリンク駆動力をそれぞれ最小にできるタイミングとしてはY対Xの比が2対1から3対1の間にカムからリンクに切替えるのが良い。このタイミングはカムからリンク駆動へ切替える加速度変動も少なくできる範囲でもあった。以下リフト力とリフトスピードの実施例を表に示す。第一のアクチエーター6aはカムを駆動、第二のアクチエーター6bはリンクを駆動する。第一のアクチエーター及び第二のアクチエーターともアクチエーター出力はで6000Nm(ニュートン・メーター)を使用した。このアクチエーターは外形厚み寸法が53mmであり、小型畳ベッドへ収納可能とするものである。XYの条件において、夫々のアクチエーターで駆動したときの畳ベッドが上下するためのリフト力を表した。畳ベッドへは体重140Kg、ベッド筐体や布団重量等を加味して180kg以上のリフト力を設定した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

カム駆動では、表1の1800N以上のリフト力が得られるのはY対Xの比が2対1から5対1までである。表2からリンク駆動による1800N以上の発生リフト力はY対Xの比が1対1から3対1までである。ここでベッドが畳み込まれた状態(初期の状態)はY対Xの比は5対1より小さくY対Xの比は5対0ともいえる。この初期の状態からベッドを駆動するにはカム駆動はリフト力が大きく、1800N以上のリフト力を満足する。カム駆動Y対Xの比2対1までに、リンク駆動に切替えれば良い。リンク駆動ではY対Xの比が4対1から2対1までの間に切替えタイミングとなる。カム駆動とリンク駆動を組合わせることでリフト力は1800Nかそれ以上を確保できる駆動装置となる。
又カムによる駆動期間が終わった後、約0.5秒遅らせてリンクによる駆動をスタートさせてると加速度変化の少ない切替えが行なえた。
図4はベッド板19が乗った状態の側面図である。
【0024】
図5は他の実施例である。この例ではアクチエーターは第一のアクチエーター6aだけであり、軸受け17に支えられた第一回転ねじ7は先の実施例と異なりばか穴が設けられている運動伝達部18を通過しその右側まで延びていてその先に加圧部20が第一回転ねじ7に螺合し左右に動くよう設けられている。本実施例の場合、カムによる駆動とリンクによる駆動が一体化した構造でありアクチエーターが一個で良いという利点がある。しかしリンクによる駆動がまだ働いていないときにベッドに人が乗ったときにリンクのあそび分が移動するためにベッド高さが下がる不具合に備え運動伝達部18を右から支える機構(図示しない)があったほうが良い。
【0025】
この実施例において先ず第一のアクチエーター6aが駆動されるときカム機構が働くことは先の実施例と同じである。このとき加圧部20は運動伝達部18より離れた状態にある。第一回転ねじ7の回転により加圧部20は運動伝達部18に近づく。そして加圧部20は運動伝達部18に接触するとそこからリンクによる駆動となる。この実施例では駆動用のアクチエーターは一個で良く、しかもカムによる駆動からリンクによる駆動は機械的に切り替わるので構造がシンプルである。なお第一回転ねじ7のねじのピッチはカムによる駆動の所とリンクによる駆動の所で変えてあるので駆動が切り替わってもベッド昇降機構の上下移動は滑らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明になる畳ベッド昇降機構の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明になる畳ベッド昇降機構の実施例のカム機構を示す斜視図である。
【図3】本発明になる畳ベッド昇降機構の他実施例のカム機構を示す側面図である。
【図4】本発明になる畳ベッド昇降機構の実施例を示す側面図である。
【図5】本発明になる畳ベッド昇降機構の他実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1a、1b、2a、2b 可動リンク
3a、3b 回転部
4 回転軸
5a、5b、5c、5d リンクローラー
6a、6b アクチエーター
7 第一回転ねじ
8 カム駆動部
9a、10a 固定側付勢ローラー
9b、10b 可動側付勢ローラー
11a、12a 固定部カム
13a、14a 可動部カム
15a、15b カム回転軸
16 第二回転ねじ
17 軸受け
18 運動伝達部
19 ベッド板
加圧部
受台
P リンク中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畳の底面に折り畳み式の昇降機構を組みつけた畳ベッドにおいて、カム駆動よりもリンク駆動によるリフト力が大きくなった点でリンク駆動に切り替えることを特徴とする畳ベッド昇降機構。
【請求項2】
回転部3aとPと結ぶ線分をXとし、カム回転軸15aとPを結ぶ線分をYとし、YとXとの比を2対1乃至4対1にしたことを特徴とする請求項1に記載の畳ベッド昇降機構。
【請求項3】
可動側付勢ローラーが可動部カムに接触し固定側付勢ローラーが固定部カムに接触してカムにより駆動することを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の畳ベッド昇降機構。
【請求項4】
カムにより駆動するための一個の原動機の回転ねじがリンクによる駆動のため運動伝達部を通過しその先に設けられた加圧部が前記運動伝達部に接触してリンクによる駆動することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の畳ベッド昇降機構。
【請求項5】
カムにより駆動するための回転ねじのピッチがリンクによる駆動するための回転ねじのピッチと異なることを特徴とする請求項4に記載の畳ベッド昇降機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−61941(P2008−61941A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245600(P2006−245600)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(301065814)日精電機株式会社 (8)
【出願人】(506308297)株式会社丸信製作所 (2)
【出願人】(506308301)株式会社サワイ (2)
【出願人】(506308312)株式会社佐々木工業 (1)
【出願人】(393015302)有限会社上原工業所 (3)
【出願人】(506308334)特別医療法人 恵仁会 (1)