説明

畳及び畳表

【課題】風情のある装飾性を有するとともに、実用性のある畳表を提供する。
【解決手段】蓄光物質を含むプラスチックイ草を含む畳表。また、その畳表を用いた畳。或いは、畳縁地(織物)に蓄光物質を含む繊維を用いた畳。蓄光物質を含むプラスチックイ草は、通常の畳表のイ草の一部を代替するものでもよいし、畳表の全てを蓄光物質を含むプラスチックイ草で製作してもよい。暗くなると該プラスチックイ草がぼんやりと光り、そこに畳が存在すること、或いは、そこが床面であることを人に知らせる。従って、本発明に係る畳表或いは畳を、段差や階段の前等の危険な場所の近くに配置しておくことにより、住居の安全性を高める。また、薄暗がりの中では、蓄光プラスチックイ草が風情のある装飾性を醸し出す。畳縁地に蓄光物質入り繊維を用いた場合も同様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畳及び畳表に関する。
【背景技術】
【0002】
日本家屋の代表的な床材である畳は、畳床の上面を畳表で覆い、両側部を縁(へり)で固定したものである。畳表は一般的にはイ草(藺草)を密に並べて織ったものであり、通常の畳では、イ草は刈り取った後に泥染めを行うものの、使用時にはその泥を拭き取り、畳表はイ草の自然の色をそのまま表した状態で用いられる。
【0003】
マンション等において洋間と和室が共存する状態においては、和室の外観において大きな部分を占める畳が洋間ともマッチすることが求められるようになる。それに応えるべく、従来、カラフルな縁を用いたり、イ草に染色をしたものが考案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-133078号公報
【特許文献2】意匠登録第1147339号公報
【特許文献3】実用新案登録第3160216号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「機能性とカラーバリエーションを追求した新素材畳」,積水成型工業株式会社,[平成22年2月9日検索],インターネット<URL:http://www.sekisuimigusa.jp/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件出願人は、純和風に近い、風情のある装飾畳を作ることのできる畳表及びそれを用いた畳として、着色されたイ草がランダムに混在する畳表及び畳に関する実用新案登録出願を行った(特許文献3)。
【0007】
しかし、これは主に装飾性を主眼としたものであり、実用性に関しては特に配慮はなされていなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、風情のある装飾性を有するとともに、実用性も兼ね備えた畳表及びそれを用いた畳を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る畳表は、蓄光物質を含むプラスチックイ草を含むことを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る畳は、畳表に蓄光物質を含むプラスチックイ草を含むか、或いは、畳縁地(織物)に蓄光物質を含む繊維を用いることを特徴とする。もちろん、畳表と畳縁地の双方にそれぞれ蓄光物質を含むプラスチックイ草及び蓄光物質を含む繊維を用いてもよい。
【0011】
蓄光物質を含むプラスチックイ草は、通常の畳表のイ草の一部を代替するものでもよいし、畳表の全てを蓄光物質を含むプラスチックイ草で製作してもよい。
ここで、プラスチックイ草は中空のチューブ状であってもよいし、中実の棒状のものであってもよい。
蛍光物質入りプラスチックとしては、市販の様々なものを用いることができる。例えば、根本特殊化学株式会社(東京都杉並区)製のルミノーバ(登録商標)などを好適に用いることができる。
更に、プラスチック自体は蛍光物質を含まず、通常のイ草やプラスチックチューブ/プラスチック棒に蛍光物質入りの箔を巻いたイ草を用いてもよい。
【0012】
通常の畳表のイ草の一部を代替する場合、蓄光物質を含む(或いはそれを被覆した)プラスチックイ草はイ草と同じ太さとするか、やや太くしておく。やや太くしておくことにより、滑りにくくなり、安全性が高まる。
【0013】
畳縁地についても、蓄光物質を含む繊維を一部に織り込んだ布地としてもよいし、全てを蓄光物質を含む繊維で織成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る畳表は、蓄光物質を含むプラスチックイ草又は蛍光物質入りの箔を巻いたイ草を含むため、暗くなると該プラスチックイ草がぼんやりと光り、そこに畳が存在すること、或いは、そこが床面であることを人に知らせる。従って、本発明に係る畳表或いは畳を、段差や階段の前等の危険な場所の近くに配置しておくことにより、住居の安全性を高める。また、薄暗がりの中では、蓄光プラスチックイ草が風情のある装飾性を醸し出す。畳縁地に蓄光物質入り繊維を用いた場合も同様である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る畳表を使用した畳の平面図。
【図2】本発明に係る畳表の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る畳表の製造方法を図2により説明する。まず、天然のイ草を用意する。それとは別に、蓄光物質入プラスチックイ草を用意する。プラスチックの素材としては、ポリプロピレン等、従来の畳表用材料として用いられていたものに蓄光物質を混入させたものを用いることができる。プラスチックイ草は、踏んだときの触感としてはチューブ状が好ましいが、低コストが必要とされる場合は中実の棒状であっても良い。蛍光物質の色は、薄いグリーンが見た目も良く、目立ちやすいという点で良好であるが、状況に応じてその他の色を用いてももちろん構わない。
【0017】
この蓄光物質入プラスチックイ草を天然イ草に、本数にして1/10〜1/1000の割合となるように混ぜ、良く混合する(ステップS11)。こうして混合したイ草を、通常の方法で製織する(ステップS12)。製織の際、縦糸としては、一般に用いられる麻糸や綿糸、合成繊維糸等を用いることができる。これで本発明に係る畳表が完成する。
【0018】
この畳表を所定の長さ及び幅に切断し、畳床の上に置いて縁12で固定することにより、畳が完成する(図1)。畳表には、通常、約4000本のイ草が並んでいる。従って、本発明に係る畳表11を用いた畳10では、1枚の畳に約4本から400本の蓄光物質入プラスチックイ草13が存在することとなる。
【0019】
本実施例の畳は、昼間の太陽光や夜間の照明により蓄光した後、その部屋の照明を消した後は、畳中の蓄光物質入プラスチックイ草13がぼんやりと光り、そこに畳が存在することを人に知らせる。従って、人は、そこがちゃんとした床面であることが分かり安全に歩くことができる。逆に、そのような光りが存在しない部分は、壁であるか、或いは段差や階段など、近づかない方が良い場所であるということが分かり、安全な行動をすることができる。
【0020】
上記の例では、蓄光物質入プラスチックイ草が偶然に2本以上並ぶこともあるが、殆どの場合は蓄光物質入プラスチックイ草は畳表の中で1本ずつランダムに配置されている。これに対し、蓄光物質入プラスチックイ草をまとめて数本(例えば2〜5本程度)並べて入れるようにしてもよい。この場合、蓄光物質入プラスチックイ草群はランダムに入れてもよいし、規則的に入れてもよい。いずれにせよ、複数本並べることにより、発光がより強くなり、安全性が高まる。
【0021】
また別の実施例として、蓄光繊維を一部に入れた畳縁地を用いた畳を挙げることができる。この場合、暗闇の中で畳の両縁がぼんやりと光るため、部屋の中での壁の位置や、部屋の出口の位置がわかるようになり、住居の安全性を高める畳として用いることができる。
【0022】
なお、本発明に係る畳表は、通常の64目の畳の他、目積と呼ばれる128目の畳にも用いることができる。更には、畳床の上を覆って畳として用いられる畳表としてばかりではなく、それ自身のみでござとしても使用することができる。
【0023】
また、本発明に係る畳表又はござの形状は、通常の畳の形状(長方形又は正方形)であってもよいし、ファンシーな形状、例えば菱形、三角形、ハート形等であってもよい。
【符号の説明】
【0024】
10…畳
11…畳表
12…縁(へり)
13…蓄光物質入プラスチックイ草

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光物質を含むプラスチックイ草を含むことを特徴とする畳表。
【請求項2】
一部のイ草に蛍光物質入りの箔を巻いたことを特徴とする畳表。
【請求項3】
前記蓄光物質を含むプラスチックイ草又は蛍光物質入りの箔を巻いたイ草が、天然イ草の中に、本数にして1/10〜1/1000の割合でランダムに混在している請求項1又は2に記載の畳表。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の畳表を用いた畳。
【請求項5】
畳縁地に蓄光物質を含む繊維を用いたことを特徴とする畳。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate