説明

疑似体験方法および装置

【目的】 現実に異次元を往復したという体感を違和感なく得る。
【構成】 キャビン2の外部に配置されたテレビジョンカメラ6からの信号によって画像表示装置5に表示される搭乗前の外部の光景をキャビン2内の体験者Aに見せることで、搭乗前に見たキャビン2中にいることを確認させ、前記外部の光景の映像を動かすことで恰もキャビン2が異次元に向かって移動しているような錯覚を与え、次いで、その外部光景の映像を遮断して画像表示装置5の映像を映像再生器9からの映像に切り換えることで異次元の環境に居るような体感を与える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は外部から仕切られたキャビン内に入ることにより、違和感なしに他の異なる次元の環境に移行してその環境を疑似的に体験することができる疑似体験方法およびそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばテレビジョン受像機や映写幕などの画像表示装置に現次元と異なる次元の環境映像を表示し、恰も他の次元にいるような錯覚による疑似体験を与える手段が知られており、更に、音響を加えたり、床面や座席を動かすことでより優れた臨場感を与えている。
【0003】ところが、前記従来の疑似体験は、画像表示装置に映像を表示した時点から瞬時に異次元に移行するものであり、また、映像の終了ととともに瞬時に現次元に戻るため、映像表示中はまだしも体験の開始と終了時において違和感があり自分が現実に異次元に移行したという体感を充分に得ることができない、という問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、自分が現次元と異次元との間を往復したという体感を充分に得ることができない、という点である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明である疑似体験方法は、外部から仕切られたキャビン内に配置した画像表示装置に外部の光景をテレビジョンカメラにより映し出しておき、次に、前記テレビジョンカメラまたは前記光景の一方を移動させて前記画像表示装置に映し出された外部の光景を変化させた後、テレビジョンカメラから画像表示装置への画像信号を遮断して画像表示装置の画像を予め用意しておいた映像再生器からの映像に切り換え、更に、前記映像再生器からの映像を遮断して前記映像再生器に切り換える直前の外部の光景の映像に切り換えるとともに前記テレビジョンカメラまたは前記光景の一部を移動させて最初の外部の光景を映し出すという構成を以て前記課題を解決するための手段とし、更に、前記構成において外部の光景映像を遮断して画像表示装置の画像を予め用意しておいた映像再生器からの映像に切り換えるとき、および映像再生器からの映像を再び前記テレビジョンカメラにより映し出される空間外部の光景に切り換えるときに、キャビンまたはキャビンの内部に備え付けられた座席の少なくとも一方を移動させ、更にはキャビン内の雰囲気を変化させる構成を有している。
【0006】また、本発明である疑似体験装置は、外部から仕切られたキャビン内に配置した画像表示装置と、前記外部に配置されたテレビジョンカメラと、映像再生器と、複数の映像信号を切り換える切換開閉器とからなり、前記切換開閉器の出力端に前記画像表示装置が接続され、一方の入力端に前記テレビジョンカメラが接続されているとともにもう一方の入力端に前記映像再生器が接続されているという構成を以て前記課題を解決するための手段とし、更に、前記構成において、キャビンまたはキャビンの内部に備え付けられた座席の少なくとも一方を移動させるための移動装置を備えた構成、またはキャビン内の雰囲気を変化させるための雰囲気調整装置を備えた構成とすることで、異次元体験中は勿論のこと、現次元と異次元との移行段階を有することで自分が現実に異次元を往復したという体感を違和感なく充分に得ることができる疑似体験方法および装置を提供する、という目的を達成する。
【0007】
【作用】キャビンの外部に配置されたテレビジョンカメラからの信号によって画像表示装置に表示される搭乗前の外部の光景をキャビン内の体験者に見せることで、搭乗前に見たキャビン中にいることを確認させ、次に、前記外部の光景の映像を動かすことで恰もキャビンが異次元に向かって移動しているような錯覚を体験者に与え、次いで、その外部光景の映像を遮断して画像表示装置の映像を映像再生器からの映像に切り換えることで体験者に異次元の環境に居るような体感を与える。
【0008】また、画像表示装置に表示された映像によって異次元における体験行為を疑似的に体験させた後、映像を再び最初の移動前の映像である外部の映像に切り換えて搭乗者に異次元の環境から最初の位置に戻ってきたような体感を与える。
【0009】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0010】図面は本発明である疑似体験装置を室内1に設置した場合の一実施例を示すものであり、室内1の床面11にキャビン2が架台3を介して設置されている。
【0011】キャビン2は外部から完全に仕切られた構成を有し、架台3との間に備えた例えば油圧シリンダを有する昇降機からなる移動装置31により後壁21の下端に位置する取付軸32を中心として回動し傾斜する。
【0012】また、キャビン2内部には座席4が正面壁22へ向けて配置されている。この座席4は床面25に設置した移動装置41の上に取り付けられており、振動、揺動、回転などが与えられるようになっている。
【0013】キャビン2の正面壁22は内壁22aと外壁22bとからなる二重構造を有し、両壁22a,22bの間に適宜幅の空所23が形成されている。そして、内壁22aには座席4に対向する位置に形成された窓24部分にテレビジョン受像機のブラウン管、液晶パネルなどからなる従来公知の画像表示装置5が配置されている。
【0014】一方、正面壁22の外壁22bの外面には上下方向へ延びるレール61が設けられており、前記画像表示装置5にキャビン2の外部の光景を表示させるためのテレビジョンカメラ6が走行可能に支持されている。
【0015】また、空所23には切換開閉器7および制御器8が配置されている。この制御器8は切換開閉器7の切換え、移動装置31,41ならびにテレビジョンカメラ6の作動を電気的に制御するものである。
【0016】切換開閉器7のもう一方の入力端子72には空所23に配置された例えばビデオテープレコーダなどの映像再生器9が接続されている。
【0017】更に、キャビン2の床下にはキャビン2内の雰囲気を変化させるための圧力調整装置10が配置されている。
【0018】かかる実施例を用いて疑似体験を得るには、図1に示すように、まず、体験者Aは図示しない扉を開閉してキャビン2内に入り、座席4に座る。このとき、制御器8により切換開閉器7の入力をテレビジョンカメラ6を接続した入力端子71側へ接続した状態にしておくとともに、テレビジョンカメラ6をキャビン2のほぼ中央高さ位置に配置して室内の光景を画像表示装置5に表示しておく。従って、座席4に座った体験者Aは画像表示装置5に映し出された室内の情景を見て、自分が乗り込む前に確認した室内1と同じ場所に居るという実感をキャビン2内部で得ることができる。
【0019】そして、次に制御器8からの電気的信号によりテレビジョンカメラ6をレール61に沿って上昇させるとともに、移動装置31を作動させて図2に示すように例えば約30度の角度になるまで回動し、キャビン2の前部が上向はとなるように傾斜させる。
【0020】このとき、画像表示装置5に映し出される映像はテレビジョンカメラ6およびキャビン2の移動に合わせて変化するため体験者Aはキャビン2の物理的な移動感覚と画像表示装置5からの視覚的移動感覚とによりキャビン2が異次元に向かって移動しているように錯覚する。
【0021】そして、前記キャビン2の移動終了時にレール61の上端に移動したテレビジョンカメラ6を天井12に予め形成しておいたテレビジョンカメラ6の押し付け或いは引き抜きによって開閉する扉を有する遮光空隙13に少なくとも先端の受光部を没入させてテレビジョンカメラ6の受光を遮り画像表示装置5に映し出されていた映像を暗転させる。
【0022】同時に、制御器8からの電気的信号により画像表示装置5への入力をテレビジョンカメラ6側から映像再生器9側へ切り換え、画像表示装置5に予め撮影し或いは作成しておいた異次元の情景などを示す映像を表示する。従って、体験者Aは画像表示装置5に映し出された映像ならびに図示しないキャビン2内に配置された音響機器を用いて視覚、聴覚によって異次元の環境を優れた臨場感を以て体験することができる。更に、映像を切り換えながらキャビン2を水平に戻して映像に応じて座席4に振動などを与え或いはキャビン2を傾けることにより、またはキャビン2を傾けたまま座席4に振動などを与えること、その他移動装置31,41の操作によって体感による異次元の環境を一段と優れた臨場感を以て体験することができる。
【0023】殊に、本実施例では画像表示装置5への入力をテレビジョンカメラ6側から映像再生器9側へ切り換える際に、キャビン2の床下に備えられた圧力調整装置10によりキャビン2内の気圧を許容範囲内で急激に変化させることにより体験者Aに膨脹感や圧迫感を与えて自分自信が大きくなり、または小さくなったような感覚を与え、これらの感覚は気圧変化と一緒に前記テレビジョンカメラ6をの映像を上方または下方に移動させることにより更に強くなる。
【0024】尚、映像再生器9からの画像を暗転場面から開始することによりテレビジョンカメラ6側から映像再生器9側へ切り換えたときの映像上のずれをなくし、連続した映像として体験者が何等の疑問を抱くことなく映像再生器9側からの異次元の映像の世界へ入って行くことができる。
【0025】そして、異次元での体験を終了させる場合には、前記操作と反対の操作により映像再生器5からの映像を遮断して外部の光景の映像に切り換える。このとき、キャビン2内部の気圧が変化させられている場合は大気圧に戻す。
【0026】このように本実施例によれば実際に異次元を往復したのと同様な体験をきわめて容易に得ることができ、映像再生器9において再生する内容を変化させることにより同一の装置を用いて種々の異なる体験を味わうこともできる。
【0027】殊に、本実施例は画像表示装置5に映し出された外部の光景を変化させた後、テレビジョンカメラ6からの画像表示装置5への画像信号を遮断して画像表示装置5の画像を予め用意しておいた映像再生器9からの映像に切り換え、また、映像再生器9からの映像を遮断して画像表示装置5の画像を外部の光景の映像に切り換えるものであるため、テレビジョンカメラ6と映像再生器9との切換時に違和感がなく、自分が現次元と異次元との間を往復したという体感を充分に得ることができるものてある。
【0028】尚、本実施例はテレビジョンカメラ6と映像再生器9との切換え時にテレビジョンカメラ6だけでなくキャビン2を含めて実際に移動させるとともに、圧力調整装置10によりキャビン2内の気圧を急激に変化させることによりキャビン2内の雰囲気を変化させて体験者Aにきわめて強い臨場感を得ることができるが、テレビジョンカメラ6だけを移動させてもよい。
【0029】また、本実施例はテレビジョンカメラ6を室内1の天井12に形成した遮光空隙13内に没入させて画像表示装置5の画像を暗転させることによりテレビジョンカメラ6と映像再生器9との切換えを違和感なく行なわせる構成としたが、画像表示装置5の映し出される画像との切換えが違和感なく連続して行われればよいことから、例えば、逆にテレビジョンカメラ6の受光部に暗幕や容器などの障害物を徐々に接近させて最後に遮光する構成であってもよい。或いは、テレビジョンカメラ6と映像再生器9との切換え時にテレビジョンカメラ6を液体中に没入させたり、テレビジョンカメラ6の正面に閃光や煙を発生させたりしてもよく、更に、画像表示装置5に表示されるテレビジョンカメラ6からの外部の映像の終りの部分の映像と、次に始まる映像再生器9からの始めの部分の映像とを同一としてこれらを同調させる、など他の構成であってもよい。
【0030】更に、本実施例は圧力調整装置10によりキャビン2内の気圧を急激に変化させることによりキャビン2内の雰囲気を変化させて体験者Aにきわめて強い臨場感を与える構成としたが、例えば、気温、湿度、匂いなど他の雰囲気を各雰囲気調整装置を用いて変化させる構成であってもよい。
【0031】
【発明の効果】本発明によると、画像表示装置に映し出された外部の光景を変化させた後に、映像再生器からの映像に切り換え、また、映像再生器からの映像を遮断して前記映像再生器に切り換える直前の外部の光景の映像に切り換えることにより、違和感がなく自分が現実に異次元を往復したような体感を充分に得ることができる。
【0032】また、画像表示装置に表示される画面と音響の他に、キャビンや座席を移動させ、更には、キャビン内の雰囲気を変化させることでより一層の臨場感を持って疑似体験を味わう事ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における使用状態を示す縦断面図である。
【図2】図1の異なる状態を示す縦断面図である。
【図3】映像回路を示すブロックダイヤグラムである。
【符号の説明】
2 キャビン
4 座席
5 画像表示装置
6 テレビジョンカメラ
7 切換開閉器
31 移動装置
41 移動装置
71 入力端
72 入力端
73 出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外部から仕切られたキャビン内に配置した画像表示装置に外部の光景をテレビジョンカメラにより映し出しておき、次に、前記テレビジョンカメラまたは前記光景の一方を移動させて前記画像表示装置に映し出された外部の光景を変化させた後、テレビジョンカメラから画像表示装置への画像信号を遮断して画像表示装置の画像を予め用意しておいた映像再生器からの映像に切り換え、更に、前記映像再生器からの映像を遮断して前記映像再生器に切り換える直前の外部の光景の映像に切り換えるとともに前記テレビジョンカメラまたは前記光景の一部を移動させて最初の外部の光景を映し出すことを特徴とする疑似体験方法。
【請求項2】 外部の光景映像を遮断して画像表示装置の画像を予め用意しておいた映像再生器からの映像に切り換えるとき、および映像再生器からの映像を再び前記テレビジョンカメラにより映し出される空間外部の光景に切り換えるときに、キャビンまたはキャビンの内部に備え付けられた座席の少なくとも一方を移動させる請求項1記載の疑似体験方法。
【請求項3】 外部の光景映像を遮断して画像表示装置の画像を予め用意しておいた映像再生器からの映像に切り換えるとき、および映像再生器からの映像を再び前記テレビジョンカメラにより映し出される空間外部の光景に切り換えるときに、キャビン内の雰囲気を変化させる請求項1または2記載の疑似体験方法。
【請求項4】 外部から仕切られたキャビン内に配置した画像表示装置と、前記外部に配置されたテレビジョンカメラと、映像再生器と、複数の映像信号を切り換える切換開閉器とからなり、前記切換開閉器の出力端に前記画像表示装置が接続され、一方の入力端に前記テレビジョンカメラが接続されているとともにもう一方の入力端に前記映像再生器が接続されている疑似体験装置。
【請求項5】 キャビンまたはキャビンの内部に備え付けられた座席の少なくとも一方を移動させるための移動装置を備えた請求項4記載の疑似体験装置。
【請求項6】 キャビン内の雰囲気を変化させるための雰囲気調整装置を備えた請求項4または5記載の疑似体験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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