説明

疼痛および炎症を軽減、予防もしくは治療するための異なる放出プロフィールをもつ薬物デポー剤

疼痛および/または炎症の効果的な処置法を提供する。有効量の少なくとも鎮痛薬および/または少なくとも1種類の抗炎症薬を標的部位またはその付近に投与することにより、炎症および疼痛を軽減、予防もしくは治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛および炎症を軽減、予防もしくは治療するための異なる放出プロフィールをもつ薬物デポー剤に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は患者にさまざまな形で有害作用を及ぼす可能性がある。それは、患者を活動的であること、十分に眠ること、家族や友人との交わりを楽しむこと、および食事をとることから遠ざける可能性がある。疼痛は、患者に恐れまたは憂鬱を感じさせ、一般的なリハビリテーションプログラムへの十分な参加を妨げる可能性があり、かつ回復を遅らせる場合すらある。
【0003】
適切な疼痛管理は、多種多様な疾患または状態の処置を受けるいかなる者にとってもきわめて重要である。適切な疼痛緩和は、患者に生理上および精神上の著しい有益性をもたらす。効果的な疼痛緩和は、医療/外科/外来施設からのより早い解放を伴った、より円滑でより快適な回復(たとえば気分、睡眠、生活の質など)を意味するだけでなく、慢性疼痛症候群(たとえば線維筋痛、筋痛など)の発症も減らすことができる。
【0004】
疼痛は、体内に損傷または疾患が存在することを知らせる重要な生物学的機能を果たし、しばしば炎症(発赤、腫脹、および/または灼熱)を伴う。2つのカテゴリーの疼痛がある:急性疼痛および神経障害性疼痛。急性疼痛は、組織が損傷を受けつつあるかまたは損傷を受けた際に経験する疼痛を表わす。急性疼痛は、少なくとも2つの生理的に有利な目的を果たす。第1に、それは、危険な刺激との接触を終わらせる反射応答の引き金を引くことによって危険な環境刺激(たとえば高温または鋭利な物体)を警告する。第2に、反射応答によって危険な環境刺激を効果的に避けられない場合、またはさもなければ組織傷害もしくは感染が生じる場合、急性疼痛は回復行動を促進する。たとえば、傷害または感染に関連する急性疼痛は、傷害または感染が治癒する間に、損傷を受けた領域がさらに損なわれたり使われたりするのを防ぐように生物を仕向ける。危険な環境刺激が除かれるか、または傷害もしくは感染が消失すると、その生理的目的を果たした急性疼痛は終わる。急性疼痛と異なり、一般に神経障害性疼痛は有益な目的をもたない。神経障害性疼痛は、傷害または感染に関連する疼痛が、その傷害または感染が消失した時点で、ある領域に継続する場合に生じる。
【0005】
適切な疼痛および/または炎症管理が必要な多数の疼痛性疾患または状態があり、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:リウマチ性関節炎、骨関節炎、椎間板ヘルニア(すなわち坐骨神経痛)、手根管症候群、下背痛、下肢痛、上肢痛、癌、組織痛、ならびに下記の傷害または修復に関連する疼痛:頚椎、胸椎および/または腰椎、または椎間板、回旋腱板、関節、TMJ、腱、靭帯、筋肉、脊椎すべり症、狭窄、椎間板起因の背痛、ならびに関節痛など。
【0006】
特に痛みの強い疾患のひとつは坐骨神経痛である。坐骨神経痛はしばしばきわめて衰弱させる可能性がある慢性疾患であり、その疾患を伴う者ならびにその家族、友人および介護者に悲惨な負担を与える場合がある。坐骨神経痛は、脊髄下部(腰部)から下腿背部を下降して足に至る坐骨神経に関連する、きわめて痛みの強い疾患である。坐骨神経痛は一般に椎間板ヘルニアから始まり、これがのちに局所免疫系を活性化する。椎間板ヘルニアは神経根の締付けまたは圧迫によりそれに損傷を与え、これがさらにその領域の免疫系を活性化する可能性もある。
【0007】
特に痛みの強い他の疾患は脊椎管狭窄症であり、この場合は脊椎管の進行性狭窄が生じ、それが狭まるのに伴って内部にある神経エレメントが次第にさらに密集する。最終的に脊椎管の寸法が著しく縮小するため、神経エレメントを強く圧迫して、疼痛、衰弱、感覚変化、無器用さ、その他の神経系機能不全の徴候を生じる。この疾患は下背痛、下肢痛、下肢衰弱、運動の制限、および高齢者がしばしば罹患する高い能力障害率の原因となる。
【0008】
脊椎すべり症は痛みの強いもうひとつの疾患である。脊椎すべり症は腰椎または頚椎の偏位障害であり、この場合はひとつの椎体が他の椎体を越えて前方へ偏位する。脊椎すべり症は、脊椎の外傷性事象または変性により起きる可能性がある。時には、この偏位障害は1以上の椎骨の骨折もしくは部分的崩壊または椎間板の変性を伴うか、またはそれにより起きる。そのような状態に罹患した患者は、胸郭骨格構造の中等度ないし重篤なゆがみ、負荷を支える能力の低下、運動性の喪失、極度の衰弱性疼痛を伴う可能性があり、しばしば神経機能の神経学的欠損を生じる。
【0009】
これらの疼痛性疾患に対する効果的な処置法を開発することにかなりの関心がもたれてきたが、今日までなお、現在の処置法は部分的効果があるにすぎない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
疼痛および/または炎症を処置するために投与する鎮痛薬および/または抗炎症薬を含む組成物および方法を提供する。疼痛および/または炎症は、たとえば下記を含めた慢性状態によるものであってもよい:リウマチ性関節炎、骨関節炎、椎間板ヘルニア(たとえば坐骨神経痛)、手根管/足根管症候群、下背痛、下肢痛、上肢痛、癌、組織痛、ならびに下記の傷害または修復に関連する疼痛:頚椎、胸椎および/または腰椎、または椎間板、回旋腱板、関節、TMJ、腱、靭帯、筋肉、脊椎すべり症、狭窄、椎間板起因の背痛、ならびに関節痛など。
【0011】
本明細書に示す態様の利点のひとつは、それらがその療法薬について異なる放出プロフィールをもつ1以上の薬物デポー剤または1以上の薬物デポー領域を用いることであり、これが種々の疾患の軽減、予防または治療を補助する。
【0012】
多様な態様において、1以上の薬物デポー領域または1以上の薬物デポー剤は、初期バーストまたはボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出してこれが疾患(たとえば坐骨神経痛、脊椎すべり症、狭窄など)の処置における最初の寛解をもたらし、一方では持続放出性の領域または薬物デポー剤が療法薬をより長い期間にわたって持続放出するように設計することができる。この方法で、種々の疾患または状態について、より効果的な処置が行われる。
【0013】
1態様においては、その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な複数の埋込型薬物デポー剤が提供され、この埋込型薬物デポー剤は療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を含み、デポー剤は疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するために皮膚下の部位に埋込むことができ、その際、薬物デポー剤は下記のものを含む:(i)療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を皮膚下の部位において放出しうる少なくとも1つの領域;ならびに(ii)療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を少なくとも3日の期間にわたって放出しうる少なくとも1つの領域。
【0014】
他の態様においては、その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な複数の埋込型薬物デポー剤を含むキットが提供され、このキットは、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を皮膚下の部位において放出しうる第1セットの複数の薬物デポー剤、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出しうる第2セットの複数の薬物デポー剤を含む。多様な態様において、異なる放出プロフィールをもつ異なるセットの薬物デポー剤を埋め込むことにより、要望する即時放出および持続放出の特性をもつ1セットの薬物デポー剤を開発する必要性が避けられる。
【0015】
1つの例示態様においては、その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療する方法が提供され、この方法は、複数の埋込型薬物デポー剤を患者の標的組織部位またはその付近に投与することを含み、その際、第1セットの複数の薬物デポー剤は療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を皮膚下の部位において放出することができ、第2セットの複数の薬物デポー剤は療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出することができる。
【0016】
他の例示態様においては、その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な複数の埋込型薬物デポー剤が提供され、この複数の薬物デポー剤は、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を皮膚下の部位において放出しうる第1セットの1以上の薬物デポー剤、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出しうる第2セットの1以上の薬物デポー剤を含む。
【0017】
多様な態様の他の特徴および利点の一部は以下の記述に示され、一部はこの記述から明らかであるか、あるいは多様な態様の実施により分かるであろう。多様な態様の目的および他の利点は、本明細書および特許請求の範囲で具体的に指示する要素および組合わせによって実現および達成されるであろう。
【0018】
一部は、本発明の態様の他の観点、特徴、有益性および利点は、下記の記述、特許請求の範囲および添付の図面との関連で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる第1の領域または層、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬をより長い期間にわたって放出しうる第2領域をもつ、1つの薬物デポー組成物の態様を示す模式図である。
【図1A】図1Aは、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる複数の領域、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬をより長い期間にわたって放出しうる領域をもつ、1つの薬物デポー組成物の態様を示す模式図である。
【図2】図2は、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる複数の領域、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬をより長い期間にわたって放出しうる複数の領域をもつ、1つの薬物デポー組成物の態様を示す模式図である。
【図3】図3は、複数の薬物デポー剤、すなわち療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる第1セットの薬物デポー剤、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬をより長い期間にわたって放出しうる第2セットの薬物デポー剤を示す模式図である。
【図4】図4は、患者内において炎症および/または疼痛が起きる部位の可能性があるいくらかの一般的な位置、ならびに少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を含有する薬物デポー剤をそこに局所投与しうる位置を示す。
【図5】図5は、脊椎の背面模式図、ならびに少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を含有する薬物デポー剤をそこに局所投与しうる部位を示す。
【0020】
これらの図面は正確な縮尺率で描いたものではないことを理解すべきである。さらに図中の物体間の関係は正確な縮尺率ではない可能性があり、実際にサイズに関して逆の関係をもつ可能性がある。これらの図は、図示した各物体の構造を理解しかつ明確にするためのものであり、したがって、構造物の具体的特徴を示すために、ある特徴が誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書および特許請求の範囲の目的に関して、別途指示しない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いる成分の量、物質のパーセントまたは割合、反応条件を表わすすべての数字、および他の数値は、すべての場合、用語“約”で修飾されているものと理解すべきである。したがって、そうではないと指示しない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示す数字パラメーターは、本発明により達成しようとする目的特性に応じて変更できる概数である。いずれにしても、特許請求の範囲に対する均等物の原則の適用を制限するためのものとしてではなく、各数字パラメーターは少なくとも報告した有効数字の数を考慮しかつ通常の日常的な四捨五入法を適用することにより解釈されるべきである。
【0022】
本明細書に示す数字範囲およびパラメーターに関係なく、本発明の広い範囲はおおよそのものであり、具体例に示す数値は可能な限り厳密に報告されている。しかし、いかなる数値も本来それらの試験測定法それぞれにみられる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含む。さらに、本明細書に開示するすべての範囲は、それに包含されるあらゆる小範囲を含むと理解すべきである。たとえば範囲“1〜10”には、最小値1と最大値10の間の(およびそれらを含む)あらゆる小範囲、すなわち、1に等しいかまたはそれより大きい最小値および10に等しいかまたはそれより小さい最大値をもつあらゆる小範囲、たとえば5.5〜10が含まれる。
【0023】
本発明の特定の態様について以下に詳細に述べ、その例を添付の図面に示す。図示した態様と関連づけて本発明を記載するが、それらが本発明をそれらの態様に限定するためのものではないことは理解されるであろう。むしろ、本発明は特許請求の範囲により規定される本発明に含まれるすべての別形態、改変および均等物を包含するものとする。
【0024】
以下のタイトルは開示内容を決して限定するためのものではない;いずれかのタイトル下の態様を他のいずれかのタイトル下の態様と組み合わせて使用できる。
【0025】
定義
本明細書および特許請求の範囲で用いる単数形“a”、“an”および“the”は、明白かつ明確に1つの指示物に限定されない限り、複数表記を含むことを強調する。たとえば、“薬物デポー剤”という表記は、1、2、3またはそれ以上の薬物デポー剤を含む。
【0026】
鎮痛薬は、疼痛を軽減、寛解または排除しうる薬剤または化合物を表わす。鎮痛薬の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:アセトアミノフェン、局所麻酔薬、たとえばリドカイン(lidocaine)、ブピビカイン(bupivicaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、オピオイド系鎮痛薬、たとえばブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、デキストロモラミド(dextromoramide)、デゾシン(dezocine)、デキストロプロポキシフェン(dextropropoxyphene)、ジアモルヒネ(diamorphine)、フェンタニル(fentanyl)、アルフェンタニル(alfentanil)、スフェンタニル(sufentanil)、ヒドロコドン(hydrocodone)、ヒドロモルホン(hydromorphone)、ケトベミドン(ketobemidone)、レボメタジル(levomethadyl)、レボルファノール(levorphanol)、メペリジン(mepiridine)、メサドン(methadone)、モルヒネ、ナルブフィン(nalbuphine)、アヘン、オキシコドン(oxycodone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、ペチジン(pethidine)、フェノペリジン(phenoperidine)、ピリトラミド(piritramide)、デキストロプロポキシフェン(dextropropoxyphene)、レミフェンタニル(remifentanil)、スフェンタニル(sufentanil)、チリジン(tilidine)、トラマドール(tramadol)、コデイン、ジヒドロコデイン、メプタジノール(meptazinol)、デゾシン(dezocine)、エプタゾシン(eptazocine)、フルピルチン(flupirtine)、またはその組合わせ。
【0027】
“抗炎症薬”という句は、抗炎症作用をもつ薬剤または化合物を表わす。これらの薬剤は、炎症を軽減することにより疼痛を治療することができる。抗炎症薬の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:スタチン類、スリンダク(sulindac)、スルファサラジン(sulfasalazine)、ナロキシン(naroxyn)、ジクロフェナク(diclofenac)、インドメタシン(indomethacin)、イブプロフェン(ibuprofen)、フルルビプロフェン(flurbiprofen)、ケトプロフェン(ketoprofen)、アクロフェナク(aclofenac)、アロキシプリン(aloxiprin)、アプロキセン(aproxen)、アスピリン、ジフルニサル(diflunisal)、フェノプロフェン(fenoprofen)、メフフェナム酸(mefenamic acid)、ナプロキセン(naproxen)、フェニルブタゾン(phenylbutazone)、ピロキシカム(piroxicam)、メロキシカム(meloxicam)、サリチルアミド、サリチル酸、デスオキシスリンダク(desoxysulindac)、テノキシカム(tenoxicam)、ケトロラク(ketoralac)、クロニジン(clonidine)、フルフェニサル(flufenisal)、サルサレート(salsalate)、サリチル酸トリエタノールアミン、アミノピリン(aminopyrine)、アンチピリン(antipyrine)、オキシフェンブタゾン(oxyphenbutazone)、アパゾン(apazone)、シンタゾン(cintazone)、フルフェナム酸(flufenamic acid)、クロニキセリル(clonixeril)、クロニキシン(clonixin)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid)、フルニキシン(flunixin)、コルヒチン(colchicine)、デメコルシン(demecolcine)、アロプリノール(allopurinol)、オキシプリノール(oxypurinol)、塩酸ベンジダミン(benzydamine hydrochloride)、ジメファダン(dimefadane)、インドキソール(indoxole)、イントラゾール(intrazole)、塩酸ミムバン(mimbane hydrochloride)、塩酸パラニレン(paranylene hydrochloride)、テトリダミン(tetrydamine)、塩酸ベンゾインドピリン(benzindopyrine hydrochloride)、フルプロフェン(fluprofen)、イブフェナク(ibufenac)、ナプロキソール(naproxol)、フェンブフェン(fenbufen)、シンコフェン(cinchophen)、ジフルニドンナトリウム(diflumidone sodium)、フェナモール(fenamole)、フルチアジン(flutiazin)、メタザミド(metazamide)、塩酸レチミド(letimide hydrochloride)、塩酸ネキセリジン(nexeridine hydrochloride)、オクタザミド(octazamide)、モリナゾール(molinazole)、ネオシンコフェン(neocinchophen)、ニマゾール(nimazole)、クエン酸プロキサゾール(proxazole citrate)、テシカム(tesicam)、テシミド(tesimide)、トルメチン(tolmetin)、トリフルミデート(triflumidate)、フェナメート類(メフェナム酸(mefenamic acid)、メクロフェナム酸(meclofenamic acid))、ナブメトン(nabumetone)、セレコキシブ(celecoxib)、エトドラク(etodolac)、ニメスリド(nimesulide)、アパゾン(apazone)、金、テポキサリン(tepoxalin);ジチオカルバメート(dithiocarbamate)、またはその組合わせ。抗炎症薬には他の化合物、たとえば下記のものも含まれる:ステロイド類、たとえばフルオシノロン(fluocinolone)、コルチゾール(cortisol)、コルチゾン(cortisone)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、プレドニゾン(prednisone)、プレドニゾロン(prednisolone)、メチルプレドニゾロン(methylprednisolone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベタメタゾン(betamethasone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、フルチカゾン(fluticasone)インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、サリドマイド(thalidomide)(TNF−α放出阻害薬)、サリドマイド類似体(マクロファージによるTNF−α産生を低下させる)、骨形態形成タンパク質(BMP)2型またはBMP−4(カスパーゼ8のインヒビター、TNF−αアクチベーター)、キナプリル(quinapril)(アンギオテンシンIIの阻害薬、TNF−αをアップレギュレートする)、インターフェロン類、たとえばIL−11(TNF−α受容体発現を調節する)、およびオーリン−トリカルボン酸(aurin-tricarboxylic acid)(TNF−αを阻害する)、グアニジノエチルジスルフィド、またはその組合わせ。
【0028】
抗炎症薬の例には、たとえば下記のものが含まれる:ナプロキセン(naproxen);ジクロフェナク(diclofenac);セレコキシブ(celecoxib);スリンダク(sulindac);ジフルニサル(diflunisal);ピロキシカム(piroxicam);インドメタシン(indomethacin);エトドラク(etodolac);メロキシカム(meloxicam);イブプロフェン(ibuprofen);ケトプロフェン(ketoprofen);r−フルルビプロフェン(r-flurbiprofen);メフェナム酸(mefenamic);ナブメトン(nabumetone);トルメチン(tolmetin);および以上のそれぞれのナトリウム塩;ケトロラクブロメタミン(ketorolac bromethamine);ケトロラクトロメタミン(ketorolac tromethamine);ケトロラク酸(ketorolac acid);トリサリチル酸コリンマグネシウム(choline magnesium trisalicylate);ロフェコキシブ(rofecoxib);バルデコキシブ(valdecoxib);ルミラコキシブ(lumiracoxib);エトリコキシブ(etoricoxib);アスピリン;サリチル酸およびそのナトリウム塩;アルファ、ベータ、ガンマ−トコフェロール類およびトコトリエノール類(ならびにそれらのd、l、およびラセミ異性体)のサリチル酸エステル;アセチルサリチル酸のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルエステル;テノキシカム(tenoxicam);アセクロフェナク(aceclofenac);ニメスリド(nimesulide);ネパフェナク(nepafenac);アムフェナク(amfenac);ブロムフェナク(bromfenac);フルフェナメート(flufenamate);フェニルブタゾン(phenylbutazone)、またはその組合わせ。
【0029】
ステロイド類の例には、たとえば下記のものが含まれる:21−アセトキシプレグネノロン(21-acetoxypregnenolone)、アルクロメタゾン(alclometasone)、アルゲストン(algestone)、アムシノニド(amcinonide)、ベクロメタゾン(beclomethasone)、ベタメタゾン(betamethasone)、ブデソニド(budesonide)、クロロプレドニゾン(chloroprednisone)、クロベタゾール(clobetasol)、クロベタゾン(clobetasone)、クロコルトロン(clocortolone)、クロプレドノール(cloprednol)、コルチコステロン(corticosterone)、コルチゾン(cortisone)、コルチバゾール(cortivazol)、デフラザコルト(deflazacort)、デソニド(desonide)、デスオキシメタゾン(desoximetasone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、デキサメタゾン21−アセテート、デキサメタゾン21−ホスフェート二ナトリウム塩、ジフロラゾン(diflorasone)、ジフルコルトロン(diflucortolone)、ジフルプレドネート(difluprednate)、エノキソロン(enoxolone)、フルアザコルト(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン(flumethasone)、フルニソリド(flunisolide)、フルシノロンアセトニド(fluocinolone acetonide)、フルオシノニド(fluocinonide)、フルオコルチンブチル(fluocortin butyl)、フルオコルトロン(fluocortolone)、フルオロメトロン(fluorometholone)、酢酸フルペロロン(fluperolone acetate)、酢酸フルプレドニデン(fluprednidene acetate)、フルプレドニゾロン(fluprednisolone)、フルランドレノリド(flurandrenolide)、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone propionate)、ホルモコルタール(formocortal)、ハルシノニド(halcinonide)、プロピオン酸ハロベタゾール(halobetasol propionate)、ハロメタゾン(halometasone)、酢酸ハロプレドン(halopredone acetate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、エタボン酸ロテプレドノール(loteprednol etabonate)、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン(medrysone)、メプレドニゾン(meprednisone)、メチルプレドニゾロン(methylprednisolone)、フロ酸モメタゾン(mometasone furoate)、パラメタゾン(paramethasone)、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン(prednisolone)、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−アセテート、プレドニゾロンナトリウムホスフェート、プレドニゾン(prednisone)、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン(prednylidene)、リメキソロン(rimexolone)、チキソコルトール(tixocortol)、トリアムシノロン(triamcinolone)、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)、トリアムシノロンベネトニド(triamcinolone benetonide)、トリアムシノロンヘキサアセトニド(triamcinolone hexacetonide)、またはその組合わせ。
【0030】
疼痛および/または炎症の処置に有用なスタチン類の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:アトルバスタチン(atorvastatin)、シンバスタチン(simvastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、セリバスタチン(cerivastatin)、メバスタチン(mevastatin)(参照:U.S.Pat.No.3,883,140;開示内容全体を本明細書に援用する)、ベロスタチン(velostatin)(シンビノリン(synvinolin)とも呼ばれる;参照:U.S.Pat.No.4,448,784および4,450,171;これらの開示内容全体を本明細書に援用する)、フルバスタチン(fluvastatin)、ロバスタチン(lovastatin)、ロスバスタチン(rosuvastatin)、およびフルインドスタチン(fluindostatin)(Sandoz XU−62−320)、ダルバスタチン(dalvastain)(EP出願公開No.738510 A2;開示内容全体を本明細書に援用する)、エプタスタチン(eptastatin)、ピタバスタチン(pitavastatin)、もしくはその医薬的に許容できる塩類、またはその組合わせ。多様な態様において、スタチン類はそのスタチンの(+)Rおよび(−)−S鏡像異性体を含むことができる。多様な態様において、スタチン類はそのスタチンの1:1ラセミ混合物を含むことができる。
【0031】
抗炎症薬には、抗炎症特性をもつもの、たとえばアミトリプチリン(amitriptyline)、カルバマゼピン(carbamazepine)、ガバペンチン(gabapentin)、プレガバリン(pregabalin)、クロニジン(clonidine)、またはその組合わせも含まれる。
【0032】
別途明記しない限り、または状況から明らかでない限り、本明細書および特許請求の範囲において抗炎症薬に言及する場合、本発明者らはその抗炎症薬の医薬的に許容できる塩(立体異性体を含む)にも言及している。医薬的に許容できる塩類は、実質的にその化合物の毒性を増大させない塩を形成する酸および塩基を含む。適切である可能性のある塩類の若干例には、アルカリ金属、たとえばマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムの塩、およびアンモニウム塩、鉱酸、たとえば、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸の塩、ならびに有機酸、たとえば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、アリールスルホン酸、たとえばp−トルエンスルホン酸の塩などが含まれる。
【0033】
同様に、鎮痛薬に言及する場合、別途明記しない限り、または状況から明らかでない限り、本発明者らはその抗炎症薬の医薬的に許容できる塩類(立体異性体を含む)にも言及していると理解される。医薬的に許容できる塩類は、実質的にその化合物の毒性を増大させない塩を形成する酸および塩基を含む。適切である可能性のある塩類の若干例には、アルカリ金属、たとえばマグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムの塩、およびアンモニウム塩、鉱酸、たとえば、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸の塩、ならびに有機酸、たとえば酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、グロン酸、コハク酸、アリールスルホン酸、たとえばp−トルエンスルホン酸の塩などが含まれる。
【0034】
“薬物デポー剤”は、それに含まれる少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬、またはその一方もしくは両方の医薬的に許容できる塩類を身体に投与する組成物である。したがって、薬物デポー剤は、要望する部位(たとえば板腔、脊椎管、患者の組織など、特に外科処置、疼痛の部位もしくは炎症部位またはその付近の)における埋込みおよび保持を容易にする物理的構造を含むことができる。薬物デポー剤は、薬物自体からも構成される。本明細書中で用いる用語“薬物”は、一般に患者の生理的状態を変化させるいずれかの物質を表わすものとする。用語“薬物”は、本明細書中で用語“療法薬”、“療法有効量”、および“有効医薬成分”、または“API”と互換性をもって使用できる。別途明記しない限り、“薬物”配合物が1種類より多い療法薬を含有しうることは理解されるであろう;その場合、療法薬の組合わせの例には2種類以上の薬物の組合わせが含まれる。薬物は、その部位への送達に関して療法薬の濃度勾配をもたらす。多様な態様において、薬物デポー剤は、埋込み部位から約0.1cm〜約5cmに及ぶ距離において療法薬の最適な薬物濃度勾配をもたらし、少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の鎮痛薬または医薬的に許容できる塩を含む。
【0035】
“デポー剤”にはカプセル、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、マイクロファイバー粒子、ナノスフェア、ナノ粒子、コーティング、マトリックス、ウェハー、ピル、ペレット、エマルジョン、リポソーム、ミセル、ゲル、もしくは他の医薬送達組成物、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。デポー剤に適切な材料は、理想的には医薬的に許容できる生分解性材料および/またはいずれかの生体吸収性材料であって、好ましくはFDA承認された材料またはGRAS材料である。これらの材料はポリマーもしくは非ポリマー、および合成もしくは天然のもの、またはその組合わせであってよい。
【0036】
“療法有効量”または“有効量”は、投与した際にその薬物が生物活性を変化させるものである;たとえば炎症の抑制、疼痛の軽減または緩和、筋弛緩による状態改善など。患者に投与する量は、別途明記しない限り、または状況から明らかでない限り、投与した薬物の薬物動態特性、投与経路、患者の状態および特徴(性別、年齢、体重、健康状態、体格など)、症状の程度、併用処置、処置の頻度、および要望する効果を含めた多様な要因に応じて、1回量または多数回量としてであってよい。ある態様において、配合物は即時放出用に設計される。他の態様において、配合物は持続放出用に設計される。他の態様において、配合物は1以上の即時放出表面および1以上の持続放出表面を含む。
【0037】
“持続放出(sustained releaseまたはsustain release)”(延長放出または制御放出とも言う)という句は、本明細書中で、ヒトまたは他の哺乳動物の体内に導入され、1種類以上の療法薬の流れを、予め定めた期間にわたって、この予め定めた期間全体において要望する療法効果を達成するのに十分な療法レベルで連続的または継続的に放出する、1種類以上の療法薬について述べるために用いられる。連続的または継続的に放出される流れという表現は、薬物デポー剤またはそのマトリックスもしくは成分のインビボ生分解の結果として、あるいは療法薬(1以上)または療法薬(1以上)コンジュゲートの代謝変換または溶解の結果として起きる放出を含むものとする。当業者に自明のとおり、持続放出配合物は、たとえばフィルム、スラブ(slab)、ペレット、マイクロ粒子、マイクロスフェア、マイクロカプセル、スフェロイド、造形派生物およびペーストとして作成することができる。配合物は、等張塩類溶液、生理的緩衝液、または患者への注射用として許容できる他の溶液に懸濁するのに適切な形態であってもよい。さらに本発明の配合物は、本明細書中の態様と組み合わせて使用できると当業者が認めるいずれかの埋込み、挿入または注射が可能な系と併用することができる;これには非経口配合物、マイクロスフェア、マイクロカプセル、ゲル、ペースト、埋込み可能なロッド、ペレット、プレートまたはファイバーなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
“即時放出”という句は、本明細書中で、薬物の溶解または吸収を遅延または延長させる意図なしに、身体に導入してそれが投与された位置において溶解または吸収させる、1種類以上の療法薬について述べるために用いられる。即時放出は、投与後の短期間内での、たとえば一般に数分ないし約1〜2時間以内での薬物の放出を表わす。
【0039】
用語“哺乳動物”は、分類学の類“哺乳類”に属する生物を表わし、ヒト、他の霊長類、たとえばチンパンジー、類人猿、オランウータンおよびサル、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含むが、これらに限定されない。多様な態様において、哺乳動物はヒト患者である。
【0040】
“放出速度プロフィール”という句は、固定した単位時間にわたって放出される有効成分の割合を表わす:たとえばmcg/時、mcg/日、mg/時、mg/日、1日当たり10%を10日間など。当業者に既知のとおり、放出速度プロフィールは直線的であってもよいが、その必要はない。限定ではないが、たとえば薬物デポー剤は、少なくとも1種類の鎮痛薬をボーラス量で放出し、かつ少なくとも1種類の抗炎症薬をある期間にわたって放出する、ペレットであってもよい。
【0041】
疾患または状態の処置(treatingまたはtreatment)は、プロトコルを実施することを表わし、これには、疾患の徴候または症状を緩和する(alleviate)ために1種類以上の薬物を患者(正常もしくはそうではないヒト、または他の哺乳動物)に投与することが含まれる。緩和は疾患または状態の徴候または症状が発現する前、およびそれらが発現した後に行なうことができる。したがって、“処置(treatingまたはtreatment)”には、疾患または望ましくない状態の“予防(preventingまたはprevention)”が含まれる。さらに、“処置(treatingまたはtreatment)”には、徴候または症状の完全な緩和は要求されず、治癒は要求されず、具体的にはその患者に対して最小限の効果しかもたないプロトコルが含まれる。“疼痛軽減(reducing pain)”には、疼痛の減少が含まれ、疼痛の徴候または症状の完全な緩和を必要とせず、また治癒を必要としない。多様な態様において、疼痛軽減には最小限の疼痛減少すら含まれる。たとえば、有効量の少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の投与を用いて、疼痛および/または炎症の症状を予防、治療または寛解する(relieve)ことができる。
【0042】
“局在化”送達には、1種類以上の薬物が組織、たとえば神経系の神経根もしくは脳の領域またはその近辺(たとえば、約10cm以内、または好ましくは約5cm以内、または約1cm以内、またはそれ未満)内に沈着する送達が含まれる。“ターゲティッド送達系”は、疼痛、炎症、または他の疾患もしくは状態の処置に必要な標的部位またはその付近に沈着しうる量の療法薬を含む1以上の薬物デポー剤、ゲル剤、またはゲル中に分散したデポー剤の送達をもたらす。
【0043】
用語“生分解性(biodegradable)”には、薬物デポー剤の全部または一部が酵素の作用により、加水分解作用により、および/またはヒトの体内におけるこれに類する他の機序により、経時的に分解することが含まれる。多様な態様において、“生分解性”には、療法薬が放出された後または放出されつつある間にデポー剤(たとえばマイクロ粒子、マイクロスフェアなど)が体内で破壊または分解されて無毒性成分になりることが含まれる。“生物侵食性(bioerodible)”は、少なくとも一部は周囲組織中にみられる物質、体液との接触のため、または細胞の作用により、デポー剤が経時的に侵食または分解されることを意味する。“生体吸収性(bioabsorbable)”は、デポー剤がヒトの体内で破壊されて、たとえば細胞または組織により吸収されることを意味する。“生体適合性(biocompatible)”は、デポー剤が標的組織部位において実質的な組織刺激または壊死を引き起こさないことを意味する。
【0044】
“疼痛管理投薬”という句には、疼痛を全体的に予防、緩和または排除するために投与される1以上の療法薬が含まれる。これらには、抗炎症薬、筋弛緩薬、鎮痛薬、麻酔薬、麻薬など、およびその組合わせが含まれる。
【0045】
多様な態様において、デポー剤は、埋込み後、最初の24時間以内に1種類以上の療法薬の初期バースト量を生じるように設計することができる。“初期バースト”または“バースト効果”または“ボーラス量”または“パルス量”は、デポー剤が水性体液(たとえば滑液、脳脊髄液など)と接触した後、最初の24時間のデポー剤からの療法薬の放出を表わす。バースト効果は即時放出であってもよい。“バースト効果”はデポー剤からの療法薬の放出増加によるものであると考えられる。初期バースト効果またはボーラス量は、(i)デポー剤の埋込み後の予め定めた初期期間中にデポー剤または領域から放出されるべき療法薬の有効量(重量)を、(ii)埋め込まれた組成物から送達されるべき療法薬の全量、で割ることにより得られる商の計算によりデポー剤を配合することによって、予め決定することができる。埋込剤の形状および表面積に応じて初期バーストは異なる可能性があると理解される。
【0046】
領域またはデポー剤に関するバースト効果は、多様な態様において、要望する効果を達成するために、より多量の初期量を短期間で放出しうるように設計することができる。たとえば、48時間当たり15mgのモルヒネを放出する薬物デポー剤を設計する場合、初期バースト量またはボーラス量の領域またはデポー剤は、ある割合の量を最初の24時間以内に放出するように設計されるであろう(たとえば10mgのモルヒネ、すなわち48時間量の66%を、24時間以内に)。したがって、この薬物デポー剤または領域のバースト効果により、持続放出性の領域またはデポー剤より多量の療法薬が放出される。
【0047】
バースト効果またはボーラス量を採用する領域またはデポー剤は、持続放出性の領域またはデポー剤より多量の療法薬(たとえば鎮痛薬および/または抗炎症薬)を放出するであろう。たとえば、特に下記を含めた疼痛性の慢性状態については、薬物デポー剤または薬物デポー領域の初期バースト効果が有利であろう:リウマチ性関節炎、骨関節炎、椎間板ヘルニア(たとえば坐骨神経痛)、手根管/足根管圧迫症候群、下背痛、下肢痛、上肢痛、癌、組織痛、ならびに下記の傷害または修復に関連する疼痛:頚椎、胸椎および/または腰椎、または椎間板、回旋腱板、関節、TMJ、腱、靭帯、筋肉、脊椎すべり症、狭窄、椎間板起因の背痛、ならびに関節痛など;これによって、標的組織部位またはその付近にボーラス量の薬物が放出されるので、疼痛および/または炎症のより速やかな寛解がもたらされ、要望する疼痛および/または炎症の徴候または症状の軽減または緩和がもたらされるからである。たとえば、薬物デポー剤または薬物デポー剤の領域は、1日量の51%、52%、53%、54%、55%、%56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%を最初の1〜12時間以内に放出して、疼痛および/または炎症を軽減、予防または治療することができる。疼痛および/または炎症は外科処置によるものであってもよい。
【0048】
少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩を含む薬物デポー剤を、筋弛緩薬と共投与することができる。共投与は、別個の薬物デポー剤中で同時に投与すること、または一緒に同一の薬物デポー剤中に配合することを伴う場合がある。
【0049】
筋弛緩薬の例には、限定ではないがたとえば下記のものが含まれる:塩化アルクロニウム(alcuronium chloride)、ベシル酸アトラクリウム(atracurium bescylate)、バクロフェン(baclofen)、カルボロニウム(carbolonium)、カリソプロドール(carisoprodol)、カルバミン酸クロルフェネシン(chlorphenesin carbamate)、クロルゾキサゾン(chlorzoxazone)、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、ダントロレン(dantrolene)、臭化デカメトニウム(decamethonium bromide)、ファザジニウム(fazadinium)、ガラミントリエチオダイド(gallamine triethiodide)、ヘキサフルオレニウム(hexafluorenium)、メラドラジン(meladrazine)、メフェンシン(mephensin)、メタキサロン(metaxalone)、メトカルバモール(methocarbamol)、ヨウ化メトクリン(metocurine iodide)、パンクロニウム(pancuronium)、メシル酸プリジノール(pridinol mesylate)、スチラメート(styramate)、スキサメトニウム(suxamethonium)、スキセトニウム(suxethonium)、チオコルチコシド(thiocolchicoside)、チザニジン(tizanidine)、トルペリゾン(tolperisone)、ツボクラリン(tubocuarine)、ベクロニウム(vecuronium)、またはその組合わせ。
【0050】
本発明の薬物デポー剤は、少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩のほかに、他の療法薬または有効成分を含むこともできる。適切な追加の療法薬には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:インテグリンアンタゴニスト、アルファ−4ベータ−7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着阻害薬、インターフェロンガンマアンタゴニスト、CTLA4−Igアゴニスト/アンタゴニスト(BMS−188667)、CD40リガンドアンタゴニスト、ヒト化抗−IL−6 mAb(MRA,トシリズマブ(Tocilizumab),中外)、HMGB−1 mAb(Critical Therapeutics Inc.)、抗−IL2R抗体(ダクリズマブ(daclizumab)、バシリシマブ(basilicimab))、ABX(抗IL−8抗体)、組換えヒトIL−10、またはHuMax IL−15(抗−IL 15抗体)。
【0051】
抗炎症薬および鎮痛薬と共投与しうる他の適切な療法薬には、IL−1阻害薬、たとえばKineret(登録商標)(anakinra)、すなわち組換え、非グリコシル化形のヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)、またはAMG 108、すなわちIL−1の作用を遮断するモノクローナル抗体が含まれる。療法薬には、興奮性アミノ酸、たとえばグルタメートおよびアスパルテート、NMDA受容体、AMPA受容体、および/またはカイニン酸受容体へのグルタメート結合のアンタゴニストまたは阻害薬も含まれる。所望により、上記のもののpeg化(pegylated)形を使用しうるものとする。他の療法薬の例には、NFカッパB阻害薬、たとえばグルココルチコイド類、抗酸化薬、たとえばジルヒオカルバメート(dilhiocarbamate)が含まれる。
【0052】
使用に適した追加の療法薬の具体例には、同化増殖因子もしくは抗異化増殖因子、鎮痛薬、もしくは骨誘導増殖因子、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
適切な同化増殖因子もしくは抗異化増殖因子には、骨形態形成タンパク質、増殖分化因子、LIM鉱質強化タンパク質、CDMPもしくは前駆細胞、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
適切な鎮痛薬には、アセトアミノフェン(acetaminophen)、ブピビカイン(bupivicaine)、オピオイド系鎮痛薬、たとえばアミトリプチリン(amitriptyline)、カルバマゼピン(carbamazepine)、ガバペンチン(gabapentin)、プレガバリン(pregabalin)、クロニジン(clonidine)、オピオイド系鎮痛薬、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。オピオイド系鎮痛薬には下記のものが含まれる:アルフェンタニル(alfentanil)、アリルプロジン(allylprodine)、アルファプロジン(alphaprodine)、アニレリジン(anileridine)、ベンジルモルヒネ(benzylmorphine)、ベンジトラミド(bezitramide)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、クロニタゼン(clonitazene)、コデイン、デソモルヒネ(desomorphine)、デキストロモラミド(dextromoramide)、デゾシン(dezocine)、ジアムプロミド(diampromide)、ジアモルホン(diamorphone)、ジヒドロコデイン(dihydrocodeine)、ジヒドロモルヒネ(dihydromorphine)、ジメノキサドール(dimenoxadol)、ジメフェプタノール(dimepheptanol)、ジメチルチアムブテン(dimethylthiambutene)、酪酸ジオキサフェチル(dioxaphetyl butyrate)、ジピパノン(dipipanone)、エプタゾシン(eptazocine)、エトヘプタジン(ethoheptazine)、エチルメチルチアムブテン(ethylmethylthiambutene)、エチルモルヒネ(ethylmorphine)、エトニタゼン(etonitazene)、フェンタニル(fentanyl)、ヘロイン、ヒドロコドン(hydrocodone)、ヒドロモルホン(hydromorphone)、ヒドロキシペチジン(hydroxypethidine)、イソメタドン(isomethadone)、ケトベミドン(ketobemidone)、レボルファノール(levorphanol)、レボフェナシルモルファン(levophenacylmorphan)、ロフェンタニル(lofentanil)、メペリジン(meperidine)、メプタジノール(meptazinol)、メタゾシン(metazocine)、メタドン(methadone)、メトポン(metopon)、モルヒネ、ミロフィン(myrophine)、ナルセイン(narceine)、ニコモルヒネ(nicomorphine)、ノルレボルファノール(norlevorphanol)、ノルメタドン(normethadone)、ナロルフィン(nalorphine)、ナルブフェン(nalbuphene)、ノルモルヒネ(normorphine)、ノルピパノン(norpipanone)、アヘン、オキシコドン(oxycodone)、オキシモルホン(oxymorphone)、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン(pentazocine)、フェナドキソン(phenadoxone)、フェノモルファン(phenomorphan)、フェナゾシン(phenazocine)、フェノペリジン(phenoperidine)、ピミノジン(piminodine)、ピリトラミド(piritramide)、プロフェプタジン(propheptazine)、プロメドール(promedol)、プロペリジン(properidine)、プロポキシフェン(propoxyphene)、スフェンタニル(sufentanil)、チリジン(tilidine)、トラマドール(tramadol)、またはその組合わせ。
【0055】
それぞれの抗炎症薬および鎮痛薬について、ある態様において、各化合物の放出は少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、またはそれ以上であってもよい。
【0056】
スルファサラジン
1態様において、抗炎症薬はスルファサラジン(sulfasalazine)を含む。スルファサラジンは6−オキソ−3−((4−(ピリジン−2−イルスルファモイル)フェニル)ヒドラジニリデン]シクロヘキサ−1,4−ジエン−1−カルボン酸としても知られる。スルファサラジンまたはその医薬的に許容できる塩は、種々の製薬業者から入手できる。
【0057】
1態様において、スルファサラジンの投与量は約0.005μg/日から約3000mg/日までである。さらにスルファサラジンの投与量には下記のものが含まれる:約0.005μg/日から約2000mg/日まで;約0.005μg/日から約1000mg/日まで;約0.005μg/日から約100mg/日まで;約0.005μg/日から約1mg/日まで;約0.005μg/日から約80μg/日まで;約0.01μg/日から約70μg/日まで;約0.01μg/日から約65μg/日まで;約0.01μg/日から約60μg/日まで;約0.01μg/日から約55μg/日まで;約0.01μg/日から約50μg/日まで;約0.01μg/日から約45μg/日まで;約0.01から約40μg/日まで;約0.025μg/日から約35μg/日まで;約0.025μg/日から約30μg/日まで;約0.025μg/日から約25μg/日まで;約0.025μg/日から約20μg/日まで;および約0.025μg/日から約15μg/日まで。他の態様において、スルファサラジンの投与量は約0.05μg/日から約15μg/日までである。他の態様において、スルファサラジンの投与量は約0.05から約10μg/日までである。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0058】
スリンダク
1態様において、抗炎症薬はスリンダク(sulindac)を含む。2−[6−フルオロ−2−メチル−3−[(4−メチルスルフィニルフェニル)−メチリデン]インデン−1−イル]−酢酸としても知られるスリンダクは、式C2017FOSで表わすことができる。スリンダクまたはその医薬的に許容できる塩は、種々の製薬業者から入手できる。
【0059】
スリンダクの投与量は、約0.001μg/日から約400mg/日までであってよい。さらにスリンダクの投与量には下記のものが含まれる:約0.001μg/日から約200mg/日まで;約0.001μg/日から約100mg/日まで;約0.001μg/日から約1mg/日まで;約0.001から約500μg/日まで;約0.001から約100μg/日まで;約0.025から約75μg/日まで;約0.025から約65μg/日まで;約0.025から約60μg/日まで;約0.025から約55μg/日まで;約0.025から約50μg/日まで;約0.025から約45μg/日まで;約0.025から約40μg/日まで;約0.025から約35μg/日まで;約0.005から約30μg/日まで;約0.005から約25μg/日まで;約0.005から約20μg/日まで;および約0.005から約15μg/日まで。他の態様において、スリンダクの投与量は約0.01から約15μg/日までである。他の態様において、スリンダクの投与量は約0.01から約10μg/日までである。他の態様において、スリンダクの投与量は約0.01から約5μg/日までである。他の態様において、スリンダクの投与量は約0.01から約20μg/日までである。他の態様において、スリンダクは、9.6μg/日を放出する薬物デポー剤中において投与される。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0060】
クロニジン
1態様において、抗炎症薬はクロニジン(clonidine)であり、これは2,6−ジクロロ−N−2−イミダゾリジニルデンベンゼンアミンとも呼ばれる。クロニジンまたはその医薬的に許容できる塩は、種々の製薬業者から入手できる。多様な態様において、クロニジンは遊離酸形またはHCL塩であってもよい。
【0061】
投与量は約0.0005から約100μg/kg/日までであってよい。さらにクロニジンの投与量には下記のものが含まれる:約0.0005から約95μg/kg/日まで;約0.0005から約90μg/kg/日まで;約0.0005から約85μg/kg/日まで;約0.0005から約80μg/kg/日まで;約0.0005から約75μg/kg/日まで;約0.001から約70μg/kg/日まで;約0.001から約65μg/kg/日まで;約0.001から約60μg/kg/日まで;約0.001から約55μg/kg/日まで;約0.001から約50μg/kg/日まで;約0.001から約45μg/kg/日まで;約0.001から約40μg/kg/日まで;約0.001から約35μg/kg/日まで;約0.0025から約30μg/kg/日まで;約0.0025から約25μg/kg/日まで;約0.0025から約20μg/kg/日まで;および約0.0025から約15μg/kg/日まで。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から約15μg/kg/日までである。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から約10μg/kg/日までである。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から約5μg/kg/日までである。他の態様において、クロニジンの投与量は約0.005から2.5μg/kg/日までである。他の態様において、クロニジンの量は40〜600μg/日である。他の態様において、クロニジンの量は200〜400μg/日である。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0062】
フルオシノロン
1態様において、抗炎症薬はフルオシノロンアセトニド(fluocinolone acetonide)を含む。フルオシノロンは、種々の製薬業者から入手できる。
【0063】
フルオシノロンは、種々の製薬業者から入手できる。フルオシノロンの投与量は約0.0005から約100μg/日までであってよい。さらにフルオシノロンの投与量には下記のものが含まれる:約0.0005から約50μg/日まで;約0.0005から約25μg/日まで;約0.0005から約10μg/日まで;約0.0005から約5μg/日まで;約0.0005から約1μg/日まで;約0.005から約0.75μg/日まで;約0.0005から約0.5μg/日まで;約0.0005から約0.25μg/日まで;約0.0005から約0.1μg/日まで;約0.0005から約0.075μg/日まで;約0.0005から約0.05μg/日まで;約0.001から約0.025μg/日まで;約0.001から約0.01μg/日まで;約0.001から約0.0075μg/日まで;約0.001から約0.005μg/日まで;約0.001から約0.025μg/日まで;および約0.002から約0.025μg/日まで。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から約15μg/日までである。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から約10μg/日までである。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から約5μg/日までである。他の態様において、フルオシノロンの投与量は約0.001から2.5μg/日までである。ある態様において、フルオシノロンの量は40〜600μg/日である。ある態様において、フルオシノロンの量は200〜400μg/日である。投与配合物は、要望する量の化合物を要望する長さの期間にわたって放出しうるのに十分な量の有効成分を含有するように調製することができる。
【0064】
ある態様においては、フルオシノロンが2〜3μg/日で少なくとも3日間放出されるのに十分なフルオシノロンがある。ある態様において、この放出速度は少なくとも10日間、少なくとも15日間、少なくとも25日間、少なくとも30日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、または少なくとも180日間、持続する。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0065】
デキサメタゾン
本発明の1態様において、抗炎症薬はデキサメタゾン(dexamethasone)(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16R,17R)−9−フルオロ−11,17−ジヒドロキシ−17−(2−ヒドロキシアセチル)−10,13,16−トリメチル−6,7,8,11,12,14,15,16オクタヒドロシクロペンタ[a]−フェナントレン−3−オン)とも呼ばれる)、またはその医薬的に許容できる塩であり、これは種々の製造業者から入手できる。
【0066】
多様な態様において、デキサメタゾンはデポー剤から約10pg〜約80mg/日、約2.4ng/日〜約50mg/日、約50ng/日〜約2.5mg/日、約250ng/日〜約250ug/日、約250ng/日〜約50ug/日、約250ng/日〜約25ug/日、約250ng/日〜約1ug/日、約300ng/日〜約750ng/日、または約0.50ug/日の量で放出することができる。多様な態様において、投与量は約0.01〜約10 g/日、または約1ng〜約120 g/日である。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0067】
例示態様のひとつにおいて、デキサメタゾンはデキサメタゾンアセテートまたはナトリウムホスフェートである。
【0068】
ロバスタチン
例示態様のひとつにおいて、抗炎症薬はロバスタチン(lovastatin)を含む。ロバスタチンは、種々の製造業者から多様な形態(たとえば注射剤、散剤など)で入手できるスタチンである。たとえば、ロバスタチンはMerckからMevacor(登録商標)として得ることができる(参照:U.S.Pat.No.4,231,938;その開示内容全体を本明細書に援用する)。ロバスタチンの医薬的に許容できる適切な塩類には、たとえば下記の塩基から誘導される1種類以上の化合物が含まれる:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、1−デオキシ−2−(メチルアミノ)−D−グルシトール、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化鉄(II)もしくは水酸化鉄(III)、水酸化アンモニウム、または有機アミン、たとえばN−メチルグルカミン、コリン、アルギニンなど、またはその組合わせ。ロバスタチンの医薬的に許容できる適切な塩類には、たとえばそのリチウム、カルシウム、ヘミカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄(II)もしくは鉄(III)塩、またはその組合わせが含まれる。
【0069】
多様な態様において、療法有効量のロバスタチンは、1日当たり約0.1pgから約2000mgまで、たとえば0.1ngから1000mg、500mg、100mg、50mg、25mg、10mg、1mg、50μg、25μg、10μg、1μg、500ng、250ng、100ng、75ng、50ng、25ng、15ng、10ng、5ng、または1ngまでのロバスタチンを含む。多様な態様において、投与量はたとえば約3ng/日から0.3μg/日までであってもよい。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0070】
モルヒネ
本発明の1態様において、鎮痛薬はモルヒネ(morphine)である。モルヒネは(5α,6α)−7,8−ジデヒドロ−4,5−エポキシ−17−メチルモルフィナン−3,6−ジオールとも呼ばれ、化学式C1719NOをもつ。モルヒネおよびその医薬的に許容できる塩は、種々の製造業者から入手できる。例示態様のひとつにおいて、モルヒネは硫酸モルヒネまたは塩酸モルヒネを含む。
【0071】
モルヒネの投与量は、1日当たり0.1mgから1000mgまでであってよい。たとえば、モルヒネの投与量は、たとえば1日当たり0.1mg〜2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mgのモルヒネであってもよい。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0072】
トラマドール
1態様において、鎮痛薬はトラマドール(tramadol)である。トラマドールは(±)シス−2−[(ジメチルアミノ)メチル]−1−(3−メトキシフェニル)シクロヘキサノール塩酸塩であり、化学式C1625NOをもつ。トラマドールまたはその医薬的に許容できる塩は、種々の製造業者から入手できる。1態様において、トラマドールはトラマドールHCLを含む。
【0073】
トラマドールの投与量は、1日当たり0.01mgから500mgまでであってよい。たとえば、トラマドールの投与量は、たとえば1日当たり0.1mg〜2mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、または500mgのトラマドールであってもよい。
【0074】
1態様において、薬物デポー剤は2.5〜30mg/kg/日を放出するのに十分なトラマドールを含有する。他の態様において、薬物デポー剤は3〜27.5mg/kg/日を放出するのに十分なトラマドールを含有する。この薬物デポー剤は、1日量を基準として初期バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量を放出することができる。この薬物デポー剤は、1日量を基準として、より長い期間持続する放出量を放出することができる。
【0075】
少なくとも1種類の抗炎症薬および少なくとも1種類の鎮痛薬を非活性成分と共に投与することもできる。これらの非活性成分は、療法薬(1以上)の運搬、安定化および放出制御を含めた多機能目的をもつことができる。持続放出プロセスは、たとえば溶解−拡散機序によるものであってもよく、あるいはそれは侵食−持続プロセスにより支配されるものであってもよい。一般にデポー剤は、生分解性である可能性がある生体適合性材料を含む固体または半固体の配合物であろう。用語“固体”は剛性材料を意味するものとし、一方“半固体”は、ある程度の柔軟性をもち、これによりデポー剤が屈曲して周囲組織の要求に沿うことができる材料を意味するものとする。
【0076】
多様な態様において、非活性成分は計画した薬物送達期間と等しい期間(生分解性成分について)、またはそれより長い期間(生分解性ではない成分について)、組織部位内で耐久性をもつであろう。たとえば、デポー材料は、体温に近いかまたはそれより高いけれども療法薬が崩壊または分解する温度よりは低い融点またはガラス転移温度をもつことができる。しかし、デポー材料の予め定めた侵食を利用して、装填した療法薬(1以上)の徐放をもたらすこともできる。
【0077】
多様な態様において、薬物デポー剤は生分解性ではないか、または生分解性ではない材料を含むことができる。生分解性ではないポリマーには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:種々のセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、およびアルキルセルロース)、シリコンおよびシリコンベースのポリマー(たとえばポリジメチルシロキサン)、ポリエチレン−co−(酢酸ビニル)、ポロキサマー(poloxamer)、ポレビニルピロリドン、ポロキサミン(poloxamine)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリエチレン−クロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFEまたはテフロン“Teflon(商標)”)、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド−ポリスチレン、ポリ−α−クロロ−p−キシレン、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、非分解性エチレン−酢酸ビニル(たとえばエチレン酢酸ビニルディスクおよびポリ(エチレン−co−酢酸ビニル))、および他の関連する生体安定性(biostable)ポリマー、またはその組合わせ。
【0078】
薬物デポー剤は、非吸収性ポリマーを含むこともできる。これらの非吸収性ポリマーには下記を含めることができるが、これらに限定されない:デルリン(delrin)、ポリウレタン、シリコーンとポリウレタンのコポリマー、ポリオレフィン(たとえばポリイソブチレンおよびポリイソプレン)、アクリルアミド(たとえばポリアクリル酸およびポリ(アクリロニトリル−アクリル酸))、ネオプレン、ニトリル、アクリレート(たとえばポリアクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、メタクリル酸メチル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、およびアクリレートとN−ビニルピロリドンのコポリマー)、N−ビニルラクタム、ポリアクリロニトリル、グルコマンナンゲル、加硫ゴム、およびその組合わせ。ポリウレタンの例には、熱可塑性ポリウレタン、脂肪族ポリウレタン、セグメント化ポリウレタン、親水性ポリウレタン、ポリエーテル−ウレタン、ポリカーボネート−ウレタン、およびシリコーンポリエーテル−ウレタンが含まれる。一般に非分解性薬物デポー剤は除去を必要とする可能性がある。
【0079】
場合により、使用後に薬物デポー剤を除去する必要性を避けるのが望ましい可能性がある。それらの場合、デポー剤は生分解性材料を含むことができる。この目的のために、標的組織またはその付近に配置した場合に長期間かけて破壊または崩壊しうる特性をもつ入手可能な多数の材料が存在する。生分解性材料の化学的機能として、分解プロセスの機序は加水分解性もしくは酵素性のもの、または両方であってもよい。多様な態様において、分解は表面で(不均一または表面侵食)または均一に薬物送達系デポー剤全体で(均一またはバルク侵食)起きる可能性がある。
【0080】
多様な態様において、デポー剤は、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の即時放出または持続放出をもたらすことができる生体吸収性および/または生分解性バイオポリマーを含むことができる。適切な持続放出バイオポリマーの例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ポリ(アルファ-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGAまたはPLG)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PG)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン(polyaspirins)、ポリホスファゲン(polyphosphagenes)、コラーゲン、デンプン、α化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、たとえばアルファトコフェリルアセテート、d−アルファトコフェリルスクシネート、D,L−ラクチドもしくはL−ラクチド、ポリ(グリコリド−,−カプロラクトン),,−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ(polyactive))、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック(pluronic))、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)、またはその組合わせ。当業者に自明のとおり、mPEGをPLGAの可塑剤として使用できるが、他のポリマー/賦形剤を用いて同じ効果を達成できる。mPEGは、得られる配合物に展性を付与する。
【0081】
種々の組合わせのポリマーを用いる場合(ビ、トリ(たとえばPLGA−PEO−PLGA)またはターポリマー)、それらを種々のモル比、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1で使用できる。たとえば、130日間放出型の薬物デポー剤について、ポリマーの構成は50:50 PLGA〜100 PLAである。分子量範囲は0.45〜0.8dI/gである。
【0082】
多様な態様において、ポリマーの分子量は広範な数値であってよい。ポリマーの平均分子量は約1000から約10,000,000まで;または約1,000から約1,000,000まで;または約5,000から約500,000まで;または約10,000から約100,000まで;または約20,000から50,000までである。
【0083】
ある態様において、少なくとも1種類の生分解性ポリマーはポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLA)もしくはポリ(オルトエステル)(POE)またはその組合わせを含む。ポリ(乳酸−co−グリコール酸)は、ポリグリコリド(PGA)とポリラクチドの混合物を含むことができ、ある態様においてはこの混合物中にポリグリコリドよりポリラクチドがより多量にある。他の多様な態様において、100%のポリラクチドおよび0%のポリグリコリド;95%のポリラクチドおよび5%のポリグリコリド;90%のポリラクチドおよび10%のポリグリコリド;85%のポリラクチドおよび15%のポリグリコリド;80%のポリラクチドおよび20%のポリグリコリド;75%のポリラクチドおよび25%のポリグリコリド;70%のポリラクチドおよび30%のポリグリコリド;65%のポリラクチドおよび35%のポリグリコリド;60%のポリラクチドおよび40%のポリグリコリド;55%のポリラクチドおよび45%のポリグリコリド;50%のポリラクチドおよび50%のポリグリコリド;45%のポリラクチドおよび55%のポリグリコリド;40%のポリラクチドおよび60%のポリグリコリド;35%のポリラクチドおよび65%のポリグリコリド;30%のポリラクチドおよび70%のポリグリコリド;25%のポリラクチドおよび75%のポリグリコリド;20%のポリラクチドおよび80%のポリグリコリド;15%のポリラクチドおよび85%のポリグリコリド;10%のポリラクチドおよび90%のポリグリコリド;5%のポリラクチドおよび95%のポリグリコリド;ならびに0%のポリラクチドおよび100%のポリグリコリドがある。
【0084】
ポリラクチドとポリグリコリドの両方を含む多様な態様において、少なくとも95%のポリラクチド;少なくとも90%のポリラクチド;少なくとも85%のポリラクチド;少なくとも80%のポリラクチド;少なくとも75%のポリラクチド;少なくとも70%のポリラクチド;少なくとも65%のポリラクチド;少なくとも60%のポリラクチド;少なくとも55%;少なくとも50%のポリラクチド;少なくとも45%のポリラクチド;少なくとも40%のポリラクチド;少なくとも35%のポリラクチド;少なくとも30%のポリラクチド;少なくとも25%のポリラクチド;少なくとも20%のポリラクチド;少なくとも15%のポリラクチド;少なくとも10%のポリラクチド;または少なくとも5%のポリラクチドがある;バイオポリマーの残りはポリグリコリドである。
【0085】
ある態様において、生分解性ポリマーは配合物の少なくとも10重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%を構成する。ある態様においては、少なくとも1種類の生分解性ポリマーならびに鎮痛薬および抗炎症薬のみが医薬配合物の成分である。
【0086】
ある態様においては、少なくとも75%の粒子が約1マイクロメートルから約250マイクロメートルまでのサイズをもつ。ある態様においては、少なくとも85%の粒子が約1マイクロメートルから約100マイクロメートルまでのサイズをもつ。ある態様においては、少なくとも95%の粒子が約1マイクロメートルから約30マイクロメートルまでのサイズをもつ。ある態様においては、すべての粒子が約1マイクロメートルから約30マイクロメートルまでのサイズをもつ。
【0087】
ある態様においては、少なくとも75%の粒子が約5マイクロメートルから約20マイクロメートルまでのサイズをもつ。ある態様においては、少なくとも85%の粒子が約5マイクロメートルから約20マイクロメートルまでのサイズをもつ。ある態様においては、少なくとも95%の粒子が約5マイクロメートルから約20マイクロメートルまでのサイズをもつ。ある態様においては、すべての粒子が約5マイクロメートルから約250マイクロメートルまでのサイズをもつ。
【0088】
デポー剤は、場合によりたとえば下記の不活性物質を含有することができる:たとえば緩衝剤およびpH調整剤、たとえば炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたはリン酸ナトリウム;分解/放出調節剤;薬物放出調整剤;乳化剤;保存剤、たとえば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀(II)および硝酸フェニル水銀(II)、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、ポリビニルアルコールおよびフェニルエチルアルコール;溶解度調整剤;安定剤;および/または凝集調節剤。一般に、そのようないずれかの不活性物質は、0〜75重量%の範囲内、より一般的には0〜30重量%の範囲内で存在するであろう。デポー剤を脊髄領域に配置する場合、多様な態様において、デポー剤は保存剤を含まない無菌物質から構成されてもよい。
【0089】
デポー剤は種々のサイズ、形状および構造であってよい。デポー剤のサイズ、形状および構造を決定する際に考慮することができる幾つかの要因がある。たとえば、サイズおよび形状は共に、埋込みまたは注射の部位として選択する標的組織部位に薬物デポー剤を容易に配置しうるものであろう。さらに、その系の形状およびサイズは、薬物デポー剤が埋込みまたは注射の後に移動するのを最小限に抑えるかまたは阻止するように選択すべきである。多様な態様において、薬物デポー剤は、ペレット、球体、円筒、たとえばロッド、または繊維、平坦な表面、たとえばディスク、フィルムまたはシートなどに造形することができる。薬物デポー剤の配置を容易にするために、柔軟性は考慮事項である可能性がある。多様な態様において、薬物デポー剤は種々のサイズであってもよい;たとえば薬物デポー剤は約0.5mmから5mmまでの長さであって、約0.01から約2mmまでの直径をもつことができる。多様な態様において、薬物デポー剤は約0.005から1.0mmまで、たとえば0.05から0.75mmまでの層厚をもつことができる。
【0090】
利用者がデポー剤を正確に患者の標的部位内へ配置できるように、X線撮影マーカーを薬物デポー剤に含有させることができる。これらのX線撮影マーカーにより、利用者はその部位におけるデポー剤の移動および分解を経時的に追跡することもできるであろう。この態様において、利用者は多数の診断イメージング法のいずれかを用いてデポー剤を正確にその部位に配置できる。そのような診断イメージング法には、たとえばX線イメージングまたは蛍光透視法が含まれる。そのようなX線撮影マーカーの例には、バリウム、リン酸カルシウム、および/または金属のビーズもしくは粒子が含まれるが、これらに限定されない。多様な態様において、X線撮影マーカーはデポー剤を囲む球形または環であってもよい。
【0091】
図1は、デポー剤が体液と接触し、層または領域が分解して療法薬(1以上)を放出するのに伴って、療法有効バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出することができる、第1の領域または層12をもつ1つの薬物デポー剤10組成物の態様を示す模式図である。この方法で、患者に短期間での疼痛および/または炎症の寛解をもたらすことができる。14として示すデポー剤の第2の層または領域(コアとして示す)は、この領域または層が体液と接触するのに伴って、療法有効量の鎮痛薬および抗炎症薬をより長い期間にわたって(たとえば少なくとも3日間ないし6カ月間)放出することができる。
【0092】
初期バーストの領域または層は持続放出層と別個に示されているが、初期バーストの領域または層を持続放出層と組み合わせることができ、したがって体液がデポー剤と接触すると各層が異なる放出速度で放出することは理解されるであろう。デポー剤は2つの層または領域(12および14)を備えたものとして示されているが、デポー剤が1つまたは複数の層または領域(たとえば2、3、4、5、6、7、8、9、10など)を含みうることも理解されるであろう。たとえば、第1の即時放出層または領域を第1の持続放出層上に配置し、第2の即時放出層を第1の持続放出層上に配置することができるなど。互いに混和した持続放出配合物とバースト放出配合物の混合物からデポー剤を形成しうることも理解されるであろう。
【0093】
たとえば、デポー剤は、異なる放出プロフィールをもつ別個の異なるミセル(1以上のボーラス放出ミセル、および1以上の持続放出ミセル)を互いに組み合わせたものから形成することができる。多様な態様において、複数のデポー剤がゲル内に分散した生分解性療法薬粒子を含むことができ、ゲルが分解するのに伴って療法薬粒子が放出される。
【0094】
図1Aは、体液と接触した際にその領域が分解するのに伴って療法有効バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる複数の領域12をもつ、1つの薬物デポー組成物10の態様を示す模式図である。領域14は、体液と接触した際にその領域が分解するのに伴って、療法有効量の鎮痛薬および抗炎症薬をより長い期間にわたって放出することができる(より長い期間にわたる持続放出)。
【0095】
図2は、体液がその領域と接触した際に療法有効バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる複数の領域12をもつ、1つの薬物デポー組成物の態様を示す模式図である。複数の領域14が設けられ、体液がこれらの領域と接触した際に療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬をより長い期間にわたって放出することができる。領域12および14は薬物デポー剤ハウジング16に収容され、これもこれらの領域と同様に生分解性であってもよい。
【0096】
図3は、複数の薬物デポー剤の態様、すなわち療法有効バースト量またはボーラス量またはパルス量または即時放出量の鎮痛薬および/または抗炎症薬を放出しうる第1セットの薬物デポー剤12、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬をより長い期間にわたって放出しうる(持続放出)複数の領域14を示す模式図である。したがって、この態様においては薬物デポー剤のセットがある。一方のセットはバースト放出またはボーラス放出またはパルス放出または即時放出を行なうことができ、他方のセットはより長い期間にわたって持続放出することができる。このように、第1セットおよび第2セットは異なる放出プロフィールをもつ。この態様においては、異なる疾患/状態(たとえば坐骨神経痛、術後痛など)に対する多様な放出動態をもつ多数のペレット(あるものは迅速放出、他は徐放を伴う)を一緒に埋め込むことができ、したがって複雑な放出動態をもつ1つの薬物デポー剤の必要性が避けられる。たとえば術後痛の状態においては、一人の患者に一度に3〜5つのストリップを外科処置部位に埋め込んで、術後痛を軽減、予防または治療することができる。
【0097】
これら複数のデポー型医薬配合物を投与する際には、三角法(triangulation)が効果的である可能性がある。従って、医薬配合物を含む複数の(たとえば少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7など)薬物デポー剤を標的組織部位(疼痛発生器または疼痛発生部位としても知られる)の周りに、2つの配合物がある場合にはそれらの配合物間の領域内に、または周辺が複数の配合物のセットにより定められる領域内に、その標的組織部位が含まれるように配置することができる。
【0098】
療法薬放出の初期バーストを達成するために、多様な要因を調整することができる。第1に、初期バーストはデポー剤の特性に関連する要因、たとえば溶剤の水−非混和性、ポリマー/溶剤比、およびポリマーの特性により制御できる。デポー剤に用いる溶剤の水−非混和性の程度は、水性体液がデポー剤に浸透して療法薬を放出する速度に影響を及ぼす。一般に、水溶性が高いほど初期バーストはより高くなり、一方、水−非混和性は療法薬のより低い初期バーストまたはより遅い放出(持続放出)をもたらす。
【0099】
初期バースト放出または持続放出を制御するために使用できる適切な溶剤には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸sec−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸ベンジル、水、アルコール、低分子量PEG(1,000MW未満)、トリアセチン、ジアセチン、トリブチリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルアセチル、クエン酸トリブチルアセチル、トリエチルグリセリド類、リン酸トリエチル、リン酸ジエチル、酒石酸ジエチル、鉱油、ポリブテン、シリコーン油、グリセリン、エチレングリコール、オクタノール、乳酸エチル、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチロラクトン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、グリセロールホルマール、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、グリコフロール(glycofurol)、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、1−ドデシルアザシクロ−ヘプタン−2−オン、またはその混合物。多様な態様において、溶剤を療法薬および/またはポリマーと混合して、要望する放出プロフィールを得ることができる。
【0100】
デポー剤は細孔形成剤を含むことができ、これには、体液と接触した際に溶解、分散または分解してポリマーマトリックスに細孔またはチャネルを形成する生体適合性材料が含まれる。一般に、水溶性である有機材料または非有機材料、たとえば糖類(たとえばショ糖、デキストロース)、水溶性塩類(たとえば塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウムおよび炭酸ナトリウム)、水溶性溶剤、たとえばN−メチル−2−ピロリドンおよびポリエチレングリコール、ならびに水溶性ポリマー(たとえばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)を細孔形成剤として好都合に使用できる。そのような材料は、ポリマーの重量の約0.1%から約100%まで種々の量で存在することができが、一般にポリマーの重量の50%未満、より一般的には10〜20%未満であろう。
【0101】
さらに、デポー剤中のポリマーの分子量を変更し、またはデポー剤ビヒクル中のポリマー材料の分子量分布を調整することにより、デポー剤からの療法薬の初期バーストおよび放出速度に影響を及ぼすことができる。一般に、より高い分子量のポリマーは、療法薬のより低い初期バーストおよびより遅い放出速度を与える。ポリマーは種々の末端基、たとえば酸およびエステル末端基をもつ可能性がある。当業者に自明のとおり、種々の末端基をもつポリマーのブレンドを含む埋込型弾性デポー組成物を用いると、得られる配合物はより低いバースト指数および制御された送達持続期間をもつであろう。たとえば、酸末端基(たとえばカルボン酸)およびエステル末端基(たとえばメチルまたはエチルエステル末端基)をもつポリマーを使用できる。
【0102】
さらに、ポリマーを形成する各種モノマーのコモノマー比(たとえば、あるポリマーについてL/G(乳酸/グリコール酸)比またはG/CL(グリコール酸/ポリカプロラクトン)比)を変更することにより、調節されたバースト指数および送達持続期間をもつデポー組成物が得られるであろう。たとえば、L/G比が50:50のポリマーを含むデポー組成物は、約2日から約1カ月の短い送達持続期間をもつ可能性がある;L/G比が65:35のポリマーを含むデポー組成物は、約2カ月の送達持続期間をもつ可能性がある;L/G比が75:25またはL/CL比が75:25のポリマーを含むデポー組成物は、約3カ月〜約4カ月の送達持続期間をもつ可能性がある;L/G比が85:15のポリマー比を含むデポー組成物は、約5カ月の送達持続期間をもつ可能性がある;L/CL比が25:75のポリマーまたはPLAを含むデポー組成物は、6カ月以上の送達持続期間をもつ可能性がある;Gが50%より多くかつLが10%より多いCL/G/Lのターポリマーを含むデポー組成物は、約1カ月の送達持続期間をもつ可能性がある;Gが50%未満でありかつLが10%未満であるCL/G/Lのターポリマーを含むデポー組成物は、最高6カ月の送達持続期間をもつ可能性がある。一般に、G含量をCL含量に対比して増加させると送達持続期間が短縮し、これに対しCL含量をG含量に対比して増加させると送達持続期間が延長する。したがって特に、異なる分子量、末端基およびコモノマー比をもつポリマーのブレンドを含むデポー組成物を用いて、より低いバースト指数および調節された送達持続期間をもつデポー配合物を調製することができる。
【0103】
粒度、粒子の崩壊、粒子の形態(たとえば、埋込み前に粒子中に細孔が存在するか、あるいは体液の攻撃によって容易に細孔が形成される可能性があるか)、コーティング、療法薬による複合体形成、および複合体結合の強さなどの要因を操作して、要望する低い初期バーストおよび放出速度を達成することができる。
【0104】
多様な態様において、薬物デポー剤はポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、またはその組合わせを含む。
【0105】
ゲル
多様な態様において、ゲルは約1〜約500センチポアズ(cp)、1〜約200cp、または1〜約100cpの範囲の投与前粘度をもつ。ゲルを標的部位に投与した後、ゲルの粘度は上昇し、ゲルは約1x10〜約6x10ダイン/cm、または2x10〜約5x10ダイン/cm、または5x10〜約5x10ダイン/cmの範囲の弾性率(ヤング率)をもつであろう。
【0106】
1態様において、デポー剤は、ゲル全体に均一に分布した少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を含有する接着性ゲルを含む。ゲルは、これまでに指示されているいずれか適切なタイプのものであってよく、いったん配置されるとターゲティングした送達部位からゲルが移行するのを防ぐのに十分なほど粘稠でなければならない;ゲルは、ターゲティングした組織部位に事実上“粘着”または接着すべきである。ゲルは、たとえばターゲティングした組織と接触した際に、またはターゲティングした送達システムから配置された後に、固化してもよい。ターゲティングした送達システムは、たとえば注射器、カテーテル、針もしくはカニューレ、または他の適切なデバイスであってもよい。ターゲティングした送達システムは、ターゲティングした組織部位の内部または上にゲルを注入することができる。ターゲティングした組織部位にゲルを配置する前に、療法薬をゲルに混入することができる。多様な態様において、ゲルは2成分送達系の一部であってもよく、これら2成分が混合した際に化学的プロセスが活性化されてゲルを形成し、それを標的組織に粘着または接着させる。
【0107】
多様な態様において、送達後に硬化または剛化するゲルを供給する。一般に、硬化性のゲル配合物は約1x10〜約3x10ダイン/cm、または2x10〜約2x10ダイン/cm、または5x10〜約1x10ダイン/cmの範囲の投与前弾性率をもつことができる。投与後(送達後)に硬化するゲルは、ゴム状の稠度をもち、約1x10〜約2x10ダイン/cm、または1x10〜約7x10ダイン/cm、または2x10〜約5x10ダイン/cmの範囲の投与前弾性率をもつことができる。
【0108】
多様な態様において、ポリマーを含有するゲル配合物について、ポリマー濃度はゲルが硬化する速度に影響を及ぼす可能性がある(たとえば、より高い濃度のポリマーを含むゲルは、より低い濃度のポリマーを含むゲルより速やかに凝固する可能性がある)。多様な態様において、ゲルが硬化すると、生成するマトリックスは固体ではあるが、同様に組織の不規則な表面(たとえば骨の窪みおよび/または突起)に従うことができる。
【0109】
ゲル中に存在するポリマーのパーセントも、ポリマー組成物の粘度に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、より高い重量パーセントのポリマーを含む組成物は、一般に、より低い重量パーセントのポリマーを含む組成物より濃厚かつ粘稠である。より粘稠な組成物はより低速で流動する傾向がある。したがって、より低い粘度をもつ組成物が場合によっては好ましい可能性がある。
【0110】
多様な態様において、ゲルの分子量は当技術分野で既知の多数の方法のいずれか1つによって変更できる。分子量を変更する方法の選択は、一般にゲルの組成(たとえば、ポリマー対ポリマー以外のもの)によって決まる。たとえば、多様な態様において、ゲルが1種類以上のポリマーを含む場合、重合開始剤(たとえば過酸化ベンゾイル)、有機溶剤、もしくは活性化剤(たとえばDMPT)、架橋剤、重合剤の量、および/または反応時間を変更することにより重合度を制御することができる。
【0111】
適切なゲルポリマーは、有機溶剤に可溶性であってもよい。溶剤中におけるポリマーの溶解度は、ポリマーの結晶化度、疎水度、水素結合および分子量に応じて異なる。より低い分子量のポリマーは、普通は高分子量ポリマーより容易に有機溶剤に溶解するであろう。高分子量ポリマーを含有するポリマーゲルは、低分子量ポリマーを含有するポリマー組成物より速やかに凝固または固化する傾向がある。高分子量ポリマーを含有するポリマーゲル配合物は、低分子量ポリマーを含有するポリマーゲルより高い溶液粘度をもつ傾向もある。
【0112】
流動性ゲルであるようにゲルを設計する場合、それは、ゲル中に用いるポリマーの分子量および濃度に応じて、水のものに類似する低い粘度からペーストのものに類似する高い粘度まで変更できる。ゲルの粘度は、ポリマー組成物をいずれか好都合な手法により、たとえばブラッシング、点滴注入、注射または塗布により患者の組織に適用できるように変更できる。ゲルの粘度の相異は、組成物を適用するのに用いる手法に依存するであろう。
【0113】
多様な態様において、ゲルは固有粘度(“I.V.”と略記され、単位はデシリットル/グラムである)をもち、これはゲルの分子量および分解時間の尺度である(たとえば、高い固有粘度をもつゲルはより高い分子量およびより長い分解時間をもつ)。一般に、高い分子量をもつゲルはより強靭なマトリックスを生成し、そのマトリックスはより多くの時間を分解に要する。これに対し、低い分子量をもつゲルはより速やかに分解し、より柔軟なマトリックスを生成する。多様な態様において、ゲルは固有粘度により示して約0.10dL/gから約1.2dL/gまで、または約0.10dL/gから約0.40dL/gまでとなる分子量をもつ。
【0114】
多様な態様において、ゲルは約300〜約5,000センチポアズ(cp)の粘度をもつことができる。他の態様において、ゲルは室温で約5から約300cpまで、約10cpから約50cpまで、約15cpから約75cpまでの粘度をもつことができる。ゲルは、場合により増粘剤、たとえばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびその塩類、カルボポール(Carbopol)、ポリ−(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ゼラチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1450、PEG3350、PEG4500、PEG8000、またはその組合わせを含むことができる。
【0115】
多様な態様において、ゲル中にポリマーを用いる場合、そのポリマー組成物は約10重量%〜約90重量%、または約30重量%〜約60重量%のポリマーを含有する。
【0116】
多様な態様において、ゲルは合成または天然に由来する高分子量の生体適合性弾性ポリマーから調製されるヒドロゲルである。ヒドロゲルがもつことが望ましい特性は、ヒトの体内で機械的応力、特に剪断および負荷に対して速やかに応答する能力である。
【0117】
天然源から得られたヒドロゲルは、生分解性および生体適合性である可能性がより高いので、インビボ用途にとって特に魅力的である。適切なヒドロゲルには、天然ヒドロゲル、たとえばゼラチン、コラーゲン、絹、エラスチン、フィブリン、ならびに多糖由来のポリマー、たとえばアガロースおよびキトサン、グルコマンナンゲル、ヒアルロン酸、多糖類、たとえば架橋カルボキシ含有多糖類、またはその組合わせが含まれる。合成ヒドロゲルには、たとえば下記から形成されるものが含まれるが、これらに限定されない:ポリビニルアルコール、アクリルアミド、たとえばポリアクリル酸およびポリ(アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(たとえばPEG3350、PEG4500、PEG8000)、シリコーン、ポリオレフィン、たとえばポリイソブチレンおよびポリイソプレン、シリコーンとポリウレタンのコポリマー、ネオプレン、ニトリル、加硫ゴム、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アクリレート、たとえばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、およびアクリレートとN−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタムのコポリマー、ポリアクリロニトリル、またはその組合わせ。ヒドロゲル材料は、必要に応じてさらに強度を得るためにさらに架橋することができる。種々のタイプのポリウレタンの例には、熱可塑性または熱硬化性のポリウレタン、脂肪族または芳香族のポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネート−ウレタン、もしくはシリコーンポリエーテル−ウレタン、またはその組合わせが含まれる。
【0118】
多様な態様において、療法薬をゲルに直接混入するのではなく、マイクロスフェアをゲルに分散させることができ、それらのマイクロスフェアに少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬が装填されている。1態様において、マイクロスフェアは少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の持続放出をもたらす。さらに他の態様において、生分解性であるゲルはマイクロスフェアが少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を放出するのを阻止する;したがって、マイクロスフェアはそれらがゲルから放出されるまで、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を放出しない。たとえば、ゲルを標的組織部位(たとえば神経根)の周囲に配置することができる。このゲル内には、要望する療法薬を封入した複数のマイクロスフェアが分散されている。これらのマイクロスフェアのうちあるものはゲルから放出されると分解し、したがって少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を放出する。鎮痛薬と抗炎症薬を別個のマイクロスフェア内に装入し、次いでこれらのマイクロスフェアを組み合わせてもよく、あるいは有効成分をまず組み合わせ、次いで一緒にマイクロスフェアに装入してもよい。
【0119】
マイクロスフェアは、流体と同様に、周囲の組織タイプによっては比較的速やかに分散し、したがって少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を分散させる可能性がある。ある態様において、マイクロスフェアの直径は約10ミクロンの直径から約200ミクロンの直径までに及ぶ。ある態様において、それらは約20ミクロンから約120ミクロンの直径までに及ぶ。マイクロスフェアを調製するための方法には溶剤の蒸発、相分離および流動床コーティングが含まれるが、これらに限定されない。ある状況ではこれが望ましい場合がある;他の状況では、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を明確に定めた標的部位に強固に拘束することがより望ましい場合がある。
【0120】
本発明は、療法薬の分散をこのように抑制するために接着性ゲルを使用することをも考慮する。これらのゲルを、たとえば板腔内、脊椎管内、または周囲組織内に配置することができる。
【0121】
カニューレおよび針
“カニューレ”または“針”を用いてデポー剤を標的部位に投与しうることは当業者に自明であろう;これらは、標的とする臓器または解剖学的領域へ薬物を適用するのに適切な薬物送達デバイス、たとえば注射器、銃型薬物送達デバイス、または他のいずれかの医療用デバイスの一部であってもよい。薬物デポーデバイスのカニューレまたは針は、患者に及ぼす身体的および精神的な傷害を最小限にするように設計される。
【0122】
カニューレまたは針はチューブを含み、これらはたとえばポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性弾性オレフィン、コポリエステル、およびスチレン系熱可塑性エラストマー、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、非鉄金属含量が高く鉄の相対的割合が低い合金、炭素繊維、ガラス繊維、プラスチック、セラミック、またはその組合わせなどの材料から作成できる。カニューレまたは針は、場合により1以上のテイパー付き領域を含むことができる。多様な態様において、カニューレまたは針はベベル付きであってもよい。カニューレまたは針は、埋込み部位に応じて患者を的確に処置するために重要な先端様式をもつこともできる。先端様式の例には、たとえばTrephine、Cournand、Veress、Huber、Seldinger、Chiba、Francine、Bias、Crawford、彎曲した先端、Hustead、Lancet、またはTuoheyが含まれる。多様な態様において、カニューレまたは針は非穿孔型であって、不要な穿刺を避けるためにそれを覆う鞘を備えていてもよい。
【0123】
中空のカニューレまたは針の寸法は、特に埋込み部位に依存するであろう。たとえば、硬膜外腔の幅は、胸郭領域で約3〜5mm、腰椎領域で約5〜7mmにすぎない。したがって、針またはカニューレは、多様な態様において、これらの特定領域に合わせて設計することができる。多様な態様において、カニューレまたは針は、大孔法(transforaminal approach)を用いて、たとえば炎症した神経根に沿って椎孔腔に挿入し、この部位に薬物デポー剤をその状態の処置のために埋め込むことができる。一般に大孔法は、椎間孔を通して椎間腔に接近することを伴う。
【0124】
カニューレまたは針の長さの若干例には、約50から150mmまでの長さ、たとえば小児硬膜外用には約65mm、標準的な成人用には約85mm、肥満成人患者には約110mmが含まれるが、これらに限定されない。カニューレまたは針の厚みも埋込み部位に依存するであろう。多様な態様において、厚みには約0.05から約1.655までが含まれるが、これらに限定されない。カニューレまたは針のゲージは、ヒトもしくは動物の体内に挿入するための最大もしくは最小の直径、またはその中間の直径であってもよい。最大直径は一般に約14ゲージであり、一方、最小直径は約25ゲージである。多様な態様において、針またはカニューレのゲージは約18〜約22ゲージである。
【0125】
多様な態様において、薬物デポー剤および/またはゲルと同様に、カニューレまたは針は皮膚下の部位またはその付近の位置を指示する投与X線撮影マーカーを含み、したがって利用者は多数の診断イメージング法のいずれかを用いてデポー剤をその部位またはその付近に正確に配置することができる。そのような診断イメージング法には、たとえばX線イメージングまたは蛍光透視法が含まれる。そのようなX線撮影マーカーの例には、バリウム、リン酸カルシウム、および/または金属のビーズもしくは粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0126】
多様な態様において、針またはカニューレは、超音波、蛍光透視法、X線、または他のイメージング技術により視覚化しうる透明または半透明の部分を含むことができる。そのような態様において、透明または半透明の部分はX線不透過性材料または超音波応答性形状を含むことができ、これらはその材料または形状が無いものと比較して針またはカニューレのコントラストを高める。
【0127】
殺菌
薬物デポー剤、および/または薬物を投与するための医療用デバイスは殺菌可能である。多様な態様において、薬物デポー剤、および/または薬物を投与するための医療用デバイスの1以上の構成要素は、最終パッケージングの末端殺菌工程で照射により殺菌される。製品の末端殺菌によって、個々の製品構成要素を個別に殺菌して最終パッケージを無菌環境で組み立てる必要がある無菌法などの方法より確実な殺菌性が得られる。
【0128】
一般に、多様な態様において、ガンマ線照射を末端殺菌工程に用い、これはデバイスの深部に浸透するガンマ線からのイオン化エネルギーの利用を伴う。ガンマ線は微生物を死滅させる効果が高く、残留物を残さず、デバイスに放射能を付与するのに十分なエネルギーももたない。デバイスがパッケージ内にある場合でもガンマ線を使用でき、ガンマ線殺菌は高圧または真空の条件を必要とせず、したがって、パッケージのシールその他の構成要素が応力を受けることはない。さらに、ガンマ線照射は透過性パッケージング材料の必要性を排除する。
【0129】
多様な態様において、電子ビーム(e−ビーム)照射を用いてデバイスの1以上の構成要素を殺菌することができる。e−ビーム照射は、ある形のイオン化エネルギーを含み、これは一般に低い浸透性および高い線量率を特徴とする。e−ビーム照射は、接触した際に生殖細胞、微生物を含めた種々の化学結合および分子結合を変化させるという点で、ガンマ線処理と類似する。e−ビーム殺菌のために形成されるビームは、電気の加速および変換により発生する濃縮された高電荷の電子流である。e−ビーム殺菌は、たとえば薬物デポー剤がゲルに含有されている場合に使用できる。
【0130】
他の方法を用いてデポー剤および/または1以上のデバイス構成要素を殺菌することもでき、これには、たとえばエチレンオキシドによるガス殺菌またはスチーム殺菌が含まれるが、これらに限定されない。
【0131】
キット
多様な態様において、その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な複数の埋込型薬物デポー剤を含むキットが提供され、このキットは、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を皮膚下の部位において放出しうる第1セットの複数の薬物デポー剤、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出しうる第2セットの複数の薬物デポー剤を含む。
【0132】
このキットは、薬物デポー剤、および/または薬物デポー剤(たとえばペレット、ゲルなど)を埋め込むために一緒に組み合わせて用いる医療用デバイスと共に、追加部品を含むことができる。キットは薬物デポーデバイスを第1コンパートメントに収容することができる。第2コンパートメントは薬物デポー剤を保持するカニスターを収容することができ、あるいは異なる放出プロフィールをもつそれぞれの薬物デポー剤にラベルを付けて異なるコンパートメント(たとえば、ボーラス投与デポー剤コンパートメント、持続放出デポー剤コンパートメントなど)に入れることができ、また局在化した薬物送達に必要な他のいずれかの器具を収容することができる。第3コンパートメントは、手袋、ドレープ(drape)、創傷包帯、および埋込み操作の無菌性を維持するための他の手順用品、ならびに指示パンフレットを収容することができる。第4コンパートメントは、追加のカニューレおよび/または針を収容することができる。各ツールは、照射殺菌したプラスチックパウチ内に個別にパッケージすることができる。第5コンパートメントは、X線撮影イメージングのための薬剤を収容することができる。キットのカバーに埋込み操作の指示を含めることができ、無菌性を維持するために透明なプラスチックカバーをこれらのコンパートメント上に配置することができる。
【0133】
投与
多様な態様において、鎮痛薬および抗炎症薬を非経口投与することができる。本明細書中で用いる用語“非経口”は、胃腸管を迂回する投与様式を表わし、たとえば静脈内、筋肉内、連続的もしくは間欠的な注入、腹腔内、胸骨内、皮下、手術中、クモ膜下、板内、板周囲、硬膜外、脊椎周囲、関節内への注射、またはその組合わせを含む。
【0134】
非経口投与はさらに、たとえば医薬組成物(たとえば鎮痛薬と抗炎症薬の組合わせ)を脊椎または1以上の炎症関節付近にカテーテルを通して投与する注入ポンプ、標的部位またはその付近に挿入できる埋込型ミニポンプ、毎時一定量の組成物または間欠的なボーラス量を放出しうる埋込型の制御放出デバイスまたは持続放出送達システムを含むことができる。使用するのに適切なポンプの一例は、SynchroMed(登録商標)(Medtronic、ミネソタ州ミネアポリス)ポンプである。このポンプは3つの密閉チャンバーをもつ。1つはエレクトロニクスモジュールおよびバッテリーを収容する。第2は蠕動ポンプおよび薬物貯蔵部を収容する。第3は不活性ガスを収容し、これは医薬組成物を蠕動ポンプ内へ押し込むのに必要な圧力を供給する。ポンプに充填するために、医薬組成物を貯蔵部充填口から膨張式の貯蔵部へ注入する。不活性ガスが貯蔵部に対する圧力を形成し、この圧力により医薬組成物がフィルターを通してポンプチャンバー内へ押し込まれる。次いで医薬組成物はポンプチャンバーからデバイス外へ送出されてカテーテルに入り、これが医薬組成物を標的部位に貯留するように方向づける。医薬組成物の送達速度はマイクロプロセッサーにより制御される。これによりポンプを用いて同様な量または異なる量の医薬組成物を、連続的に、特定の時点で、または設定した送達間隔で送達することができる。
【0135】
本明細書に記載する方法に適用するのに適切な有望な薬物送達デバイスには、たとえば下記に記載のものが含まれるが、これらに限定されない:United States Patent No.6,551,290(Medtronicに譲渡;その開示内容全体を本明細書に援用する)、これは特定の薬物送達をターゲティングするための医療用カテーテルを記載する;United States Patent No.6,571,125(Medtronicに譲渡;その開示内容全体を本明細書に援用する)、これは生物活性薬剤を制御放出するための埋込型医療用デバイスを記載する;United States Patent No.6,594,880(Medtronicに譲渡;その開示内容全体を本明細書に援用する)、これは療法薬を生体内の選択した部位に送達するための実質内注入用カテーテルシステムを記載する;およびUnited States Patent No.5,752,930(Medtronicに譲渡;その開示内容全体を本明細書に援用する)、これは間隔をおいた部位に等体積の薬剤を注入するための埋込型カテーテルを記載する。多様な態様において、ポンプは、フィードバック調節式送達を備えたプレプログラミング可能な埋込型装置、化学物質を制御放出するためのマイクロレザバー浸透圧放出システム、液体医薬を送達するための小型軽量デバイス、埋込型マイクロミニチュア注入デバイス、埋込型セラミック弁ポンプアセンブリー、または折たたみ式流体チャンバーを備えた埋込型注入ポンプで適合させることができる。Alzet(登録商標)浸透圧ポンプ(Durect Corporation、カリフォルニア州クーパーチノ)も、本明細書に記載する方法に使用するのに適切な多様なサイズ、送出速度および持続時間のものを入手できる。多様な態様において、療法薬を患者の標的組織部位またはその付近に送達するための方法が提供される。この方法は、カニューレを標的組織部位またはその付近に挿入し、薬剤デポー剤を患者の皮膚下の標的部位に埋め込み、ゲルを標的部位にブラッシング、点滴注入、注射または塗布して、薬剤デポー剤を標的部位に保持または接着することを含む。この方法で、薬剤デポー剤が標的部位から不都合に移行するのが抑制または排除される。
【0136】
多様な態様において、鎮痛薬と抗炎症薬の組合わせは局所的に(locally)投与されるので、療法有効量は他の経路(経口、局所(topical)など)によって投与する量より少なくてよい。また、全身的な副作用、たとえば肝トランスアミナーゼ増加、肝炎、肝不全、筋障害、便秘などを軽減または排除することができる。
【0137】
多様な態様において、薬物デポー剤を分散含有するゲルを要望する部位に投与するために、まずカニューレまたは針を皮膚および軟組織を通って標的組織部位にまで挿入し、そしてゲルを標的部位またはその付近に投与(たとえばブラッシング、点滴注入、注射または塗布など)することができる。薬物デポー剤がゲルから分離している態様においては、まずカニューレまたは針を皮膚および軟組織を通って注入部位にまで挿入し、そしてゲルの1以上のベース層を標的部位に投与することができる。1以上のベース層を投与した後、薬物デポー剤をこれらのベース層の上または内部に埋め込み、これによりゲルはデポー剤をその場に保持し、または移行を抑制することができる。必要ならば、デポー剤を取り囲んでさらにその場に保持するために、続いて1以上のゲルの層を薬物デポー剤に付与することができる。あるいは、まず薬物デポー剤を埋め込み、次いでゲルを薬物デポー剤の周囲に配置(たとえばブラッシング、点滴注入、注射または塗布など)して、デポー剤をその場に保持することができる。ゲルの使用により、患者に対する身体的および精神的な傷害を最小限に抑えて、薬物デポー剤の精密かつ正確な埋込みを達成できる。ゲルは薬物デポー剤を標的部位に縫合する必要性をも回避して、患者に対する身体的および精神的な傷害を抑制する。
【0138】
多様な態様において、標的部位が脊椎領域を含む場合、まず体液(たとえば脊髄液など)の一部を標的部位からカニューレまたは針により取り出し、次いでデポー剤を投与(たとえば配置、点滴注入、注射または埋込みなど)することができる。標的部位は再水和(たとえば体液の再補給)され、この水性環境により薬物はデポー剤から放出されるであろう。
【0139】
図4は、患者内において炎症および/または疼痛が起きる部位の可能性がある多数の一般的な位置を示す。図4に示す位置が患者内において炎症および/または疼痛の部位である可能性がある多種多数な位置の例示にすぎないことは認識されるであろう。たとえば、炎症および/または疼痛は患者の膝21、股関節部22、指23、親指24、首25、および脊椎26に起きる可能性がある。
【0140】
炎症による疼痛の管理に際してデポー剤を用いるのに適切な態様の一例を図5に示す。図5には、脊椎の背面図、ならびにカニューレまたは針を用いて薬物デポー剤を皮膚34下の脊椎部位32に挿入しうる部位(たとえば椎間板腔、脊椎管、脊椎周囲の軟組織、神経根など)、ならびに1以上の薬物デポー剤28および32を脊椎に沿って送達する部位を模式的に示す。このように、幾つかの薬物デポー剤を埋め込む場合には、位置、的確な間隔、および薬物分布を最適化するようにそれらを埋め込む。
【0141】
脊椎部位を示したが、前記のように薬物デポー剤を皮膚下のいずれかの部位に送達することができ、これには少なくとも1つの筋肉、靭帯、腱、軟骨、椎間板、椎間孔腔、脊椎神経根付近、または脊椎管が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬をベースとする配合物を用いて、種々の医薬製剤(たとえば薬物デポー剤、注射用配合物など)を調製することができる。医薬製剤は、投与に際して適切な医薬用キャリヤー(固体でも液体でもよい)を用いて調製し、所望により非経口または他の投与に適切な形態にすることができる。当業者に自明のとおり、既知のキャリヤーには水、ゼラチン、乳糖、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、シカリルアルコール(sicaryl alcohol)、タルク、植物油、ベンジルアルコール類、ガム、ろう、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、および他の既知のキャリヤーが含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
他の態様は、炎症および/または疼痛に罹患している哺乳動物を処置する方法を提供し、この方法は療法有効量の少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を、標的部位またはその付近の皮膚下の標的部位に投与することを含む。この少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬は、たとえば標的組織部位へ局所的に薬物デポー剤として投与することができる。
【0144】
ある態様において、療法有効投与量および放出速度プロフィールは、炎症および/または疼痛を少なくとも1日間、たとえば1〜90日間、1〜10日間、1〜3日間、3〜7日間、3〜12日間、3〜14日間、7〜10日間、7〜14日間、7〜21日間、7〜30日間、7〜50日間、7〜90日間、7〜140日間、または14〜140日間、軽減するのに十分なものである。
【0145】
ある態様においては、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬、または少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の一部が、標的組織にボーラス量として投与され、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬の即時放出を提供する。
【0146】
ある態様においては、有効量の少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を含む、炎症の処置に有用な組成物が得られ、これをたとえば疼痛または炎症の部位に投与することができる。たとえば、それらを脊髄の椎間孔、硬膜外腔またはクモ膜下腔に局所的に投与することができる。投与経路の例にはカテーテル薬物ポンプ、1以上の局所注入、ポリマー放出、またはその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
ある態様においては、少なくとも1種類の鎮痛薬および少なくとも1種類の抗炎症薬を非経口的に、たとえば注射により投与する。ある態様において、注射はクモ膜下に行なわれ、これは脊椎管(脊髄を囲むクモ膜下腔)内への注射を表わす。注射は筋肉その他の組織内へ行なうこともできる。他の態様においては、鎮痛薬および抗炎症薬を外科処置中の患者の切開腔内へ配置することにより投与する。
【0148】
ある態様においては、配合物を外科処置時に標的組織部位またはその付近に埋込むことができる。次いで、疼痛および炎症に対処するために、有効成分をデポー剤からある期間、たとえば外科処置後3〜15日間、5〜10日間、または7〜10日間にわたり、拡散によって持続的に放出させることができる。
【0149】
ある態様においては、要望する放出プロフィールを少なくとも3日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも130日間、少なくとも150日間、または少なくとも180日間、維持する。
【0150】
ある態様において、薬剤デポー剤は、薬剤デポー剤に装填した少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬の全量に対して5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩を、少なくとも3日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも30日間、少なくとも40日間、少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも130日間、少なくとも150日間、または少なくとも180日間の期間にわたって放出することができる。多様な態様において、鎮痛薬は初期バースト量で放出され、次いで鎮痛薬は3日間にわたって毎日放出され、次いで停止するであろう(たとえば、これは術後痛を軽減、予防もしくは治療するのに適切であろう);一方、抗炎症薬は、バースト量なしに、薬物デポー剤を標的組織部位に投与した後3〜12日間、5〜10日間、または7〜10日間、毎日放出されるであろう。
【0151】
多様な態様において、その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な埋込型薬物デポー剤が提供され、この埋込型薬物デポー剤は、療法有効量の鎮痛薬および抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を含み、デポー剤は疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するために皮膚下の部位に埋め込むことができ、その際、薬物デポー剤は、(i)薬剤デポー剤に装填した鎮痛薬および抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類の全量に対して約5%〜約20%の鎮痛薬および抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を、48時間までの期間にわたって放出しうる、1以上の即時放出層、ならびに(ii)薬剤デポー剤に装填した鎮痛薬および抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類の全量に対して約21%〜約99%の鎮痛薬および抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を、その後の3日〜6カ月または3日〜2週の期間にわたって放出しうる、1以上の持続放出層を含む。
【0152】
限定ではないが、たとえば標的組織部位は少なくとも1つの筋肉、靭帯、腱、軟骨、椎間板、脊椎神経根付近の椎間孔腔、椎間関節突起(facet)、または脊椎管を含むことができる。標的組織は急性疾患もしくは慢性疾患または外科処置に関連する可能性がある。
【0153】
ある態様において、少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩は、ゲルに懸濁したマイクロ粒子、マイクロスフェア、マイクロカプセルおよび/またはマイクロファイバーを含む複数の薬物デポー剤に封入されている。
【0154】
ある態様においては、埋込型薬物デポー剤が提供され、この薬物デポー剤は(i)療法有効ボーラス量の少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩を皮膚下の部位において放出する1以上の即時放出層、ならびに(ii)有効量の少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩を3日〜6カ月の期間にわたって放出する1以上の持続放出層を含む。たとえば、薬物デポー剤において、1以上の即時放出層はポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)を含むことができ、1以上の持続放出層はポリラクチド(PLA)を含むことができる。
【0155】
製造方法
多様な態様において、有効成分を含む薬物デポー剤は、生体適合性ポリマーおよび療法有効量の有効成分またはその医薬的に許容できる塩を組み合わせ、この組合わせから埋込型薬物デポー剤を作成することにより製造できる。
【0156】
生体適合性ポリマー(1以上)、療法薬(1以上)および任意材料から薬物デポー剤の少なくとも一部を作成する多様な方法があり、これには溶液加工法および/または熱可塑性加工法が含まれる。溶液加工法を用いる場合、溶剤系は一般に1種類以上の溶剤を含有するように選択される。溶剤系は、一般に少なくとも1つの関連成分、たとえば生体適合性ポリマーおよび/または療法薬に対する良溶剤である。溶剤系を構成する具体的な溶剤種は、他の特性に基づいて選択することもでき、これには乾燥速度および表面張力が含まれる。
【0157】
溶液加工法には下記のものが含まれる:溶剤キャスティング法、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、溶剤吹付け法、浸漬法、機械的懸濁によるコーティングを伴う方法:これには空気懸濁法(たとえば流動コーティング)、インクジェット法および静電法が含まれる。適切な場合、要望する放出速度および要望する粘稠度を得るために、上記に挙げた方法を反復し、または組み合わせて、デポー剤を構築することができる。
【0158】
多様な態様において、溶剤および生体適合性ポリマーを含有する溶液を合わせて、要望するサイズおよび形状の型に入れる。こうして、バリヤー層、滑沢層などを含むポリマー領域を形成することができる。所望により、溶液はさらに下記のうち1種類以上を溶解または分散した形で含むことができる:他の療法薬(1以上)、および他の任意添加剤、たとえば造影剤など。これにより、溶剤を除去した後にこれらの種類を含有するポリマーマトリックス領域が得られる。他の態様において、溶液加工法および熱可塑性加工法を含めた多様な方法を用いて作成できる既存のポリマー領域に、溶解または分散した療法薬を含む溶剤を含有する溶液を付与すると、療法薬はポリマー領域に吸収される。
【0159】
デポー剤またはその一部を作成するための熱可塑性加工法には、成形法(たとえば射出成形、回転成形など)、押出し法(たとえば押出し、同時押出し、多層押出しなど)およびキャスティングが含まれる。
【0160】
多様な態様における熱可塑性加工法は、1以上の段階で生体適合性ポリマーおよび下記のうち1種類以上を混合または配合することを含む:有効成分、任意の追加療法薬(1以上)、造影剤(1以上)など。得られた混合物を次いで造形して埋込型薬物デポー剤にする。混合および造形の操作は、当技術分野でそのような目的のために知られている通常の装置のいずれかを用いて実施できる。
【0161】
熱可塑性加工に際して、たとえばそのような加工に伴う温度上昇および/または機械的剪断のため、療法薬(1以上)が分解する可能性がある。たとえば、特定の療法薬は通常の熱可塑性加工条件下で実質的な分解を受ける場合がある。したがって、療法薬(1以上)の実質的な分解を阻止する改変した条件下で加工を行なうのが好ましい。熱可塑性加工に際して若干の分解を避け得ない可能性があることは理解されるが、分解は一般に10%以下に制限される。療法薬(1以上)の実質的な分解を避けるために加工中に制御しうる加工条件には、温度、付与する剪断速度、付与する剪断応力、療法薬を含有する混合物の滞留時間、およびポリマー材料と療法薬(1以上)を混合する手法が含まれる。
【0162】
生体適合性ポリマーと療法薬(1以上)およびいずれかの追加添加剤を混合または配合してその実質的に均質な混合物を調製することは、当技術分野で既知の、ポリマー材料と添加剤を混合するために慣用されるいずれかの装置を用いて実施できる。
【0163】
熱可塑性材料を用いる場合、生体適合性ポリマーの加熱によりポリマーメルトを調製することができ、これを種々の添加物(たとえば療法薬(1以上)、不活性成分など)と混合して混合物を調製することができる。これを行なう一般的な方法は、生体適合性ポリマー(1以上)と添加物(1以上)の混合物に機械的剪断を付与することである。生体適合性ポリマー(1以上)と添加物(1以上)をこの様式で混合しうる装置には、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、高速ミキサー、ロスケトル(ross kettle)などの装置が含まれる。
【0164】
いずれかの生体適合性ポリマー(1以上)および種々の添加物を、所望により最終的な熱可塑性混合および造形のプロセスの前に予備混合することができる(たとえば、他の理由のうち特に、療法薬の実質的な分解を避けるために)。
【0165】
たとえば、多様な態様において、療法薬が存在すればその実質的な分解を生じるであろう温度および機械的剪断の条件下で、生体適合性ポリマーに造影剤(たとえば放射線不透性物質)を予備配合する。この予備配合した材料を、次いでより低い温度および機械的剪断の条件下で療法薬と混合し、得られた混合物を造形して、有効成分を含有する薬物デポー剤にする。逆に、他の態様においては、低い温度および機械的剪断の条件下で生体適合性ポリマーに療法薬を予備配合することができる。この予備配合した材料を、次いで同様に低い温度および機械的剪断の条件下でたとえば放射線不透性物質と混合し、得られた混合物を造形して薬物デポー剤にする。
【0166】
生体適合性ポリマーと療法薬および他の添加物の混合物を得るために用いる条件は、たとえば使用する個々の生体適合性ポリマー(1以上)および添加物(1以上)ならびに使用する混合装置のタイプを含めた多数の要因に依存するであろう。
【0167】
一例として、異なる生体適合性ポリマーは一般に異なる温度で軟化して混合が可能になるであろう。たとえば、PLGAまたはPLAポリマー、放射線不透性物質(たとえば次炭酸ビスマス)、ならびに熱および/または機械的剪断によって分解しやすい療法薬(たとえばクロニジン)を含有するデポー剤を作成する場合、多様な態様において、たとえば約150℃〜170℃の温度でPLGAまたはPLAを放射線不透性物質と予備混合することができる。次いで、療法薬をこの予備混合した組成物と合わせて、PLGAまたはPLA組成物に一般的なものより実質的に低い温度および機械的剪断の条件下でさらに熱可塑性加工する。たとえば押出機を用いる場合、一般にバレル温度、押出し体積を制御して剪断を制限し、したがって療法薬(1以上)の実質的な分解を阻止する。たとえば、二軸スクリュー押出機を用いて、実質的に、より低い温度(たとえば100〜105℃)で、実質的に少ない押出し体積(たとえば全容量の30%未満、これは一般に200cc/分未満の押出し体積に相当する)で、療法薬と予備混合組成物を混合/配合することができる。これらの温度以上での加工は療法薬の実質的分解を生じるであろうから、この加工温度は特定の有効成分、たとえば抗炎症薬および鎮痛薬の融点より十分に低いことに注目する。さらに、特定の態様において、加工温度は療法薬を含めて組成物中のすべての生物活性化合物の融点より低いことに注目する。配合した後、得られたデポー剤を同様に低い温度および剪断の条件下で造形して、要望する形状にする。
【0168】
他の態様において、生分解性ポリマー(1以上)および1種類以上の療法薬を熱可塑性法ではない方法により予備混合する。たとえば、生体適合性ポリマーを、1種類以上の溶剤を含有する溶剤系に溶解することができる。希望するいずれかの物質(たとえば放射線不透性物質、療法薬、または放射線不透性物質と療法薬の両方)を同様にこの溶剤系に溶解または分散させることができる。次いで、得られた溶液/分散液から溶剤を除去すると、固体物質が生成する。得られた固体物質を、次いで所望により以後の熱可塑性加工(たとえば押出し)のために造粒することができる。
【0169】
他の例として、療法薬を溶剤系に溶解または分散させることができ、次いでこれを既存の薬物デポー剤(既存の薬物デポー剤は、溶液加工法および熱可塑性加工法を含めた多様な方法を用いて作成でき、それは放射線不透性物質および/または増粘剤を含めた多様な添加剤を含むことができる)に付与すると、療法薬はその薬物デポー剤上または内部に吸収される。前記のように、得られた固体物質を次いで所望により以後の加工のために造粒することができる。
【0170】
一般に押出し法を用いて、生体適合性ポリマー(1以上)、療法薬(1以上)および放射線不透性物質(1以上)を含む薬物デポー剤を作成することができる。同時押出しも採用できる;これは、同一または異なる層または領域を含む薬物デポー剤(たとえば、流体に対する透過性をもち薬物を即時および/または持続的に放出させる1以上のポリマーマトリックス層または領域を含む、構造体)の製造に使用できる造形法である。他の加工法および造形法、たとえば同時射出または逐次射出成形法によっても、多領域デポー剤を作成することができる。
【0171】
多様な態様において、熱可塑性加工から得られるデポー剤(たとえばペレット、ストリップなど)を冷却する。冷却法の例には、空冷および/または冷却浴への浸漬が含まれる。ある態様においては、押出されたデポー剤を冷却するために水浴を用いる。しかし、水溶性の療法薬、たとえば有効成分を用いる場合、療法薬が浴中へ不必要に失われるのを避けるために、浸漬時間を最小限に維持すべきである。
【0172】
多様な態様において、浴から出た後に周囲空気ジェットまたは温風ジェットの使用により水または水分を直ちに除去すると、デポー剤表面での薬物の再結晶も阻止され、したがって埋込みまたは挿入に際して高い薬物量の“初期バースト”または“ボーラス量”が望ましくない場合にこの放出プロフィールを抑制し、または最小限にすることができる。したがって、薬物デポー剤の持続放出領域は、多様な態様において、水または水分を直ちに除去することにより形成できる。
【0173】
多様な態様において、薬物デポー剤は、薬物をポリマーと混合し、または薬物にポリマーを吹き付け、次いでデポー剤を要望する形状に成形することにより製造できる。多様な態様において、有効成分を使用し、PLGAまたはPEG550ポリマーと混合し、またはポリマーを吹き付け、得られたデポー剤を押出しにより成形し、乾燥させることができる。
【0174】
薬物デポー剤は、生体適合性ポリマーと療法有効量の少なくとも1種類の鎮痛薬またはその医薬的に許容できる塩および少なくとも1種類の抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩を組み合わせ、この組合わせから埋込型薬物デポー剤を成形することをも含む。
【0175】
本明細書中の教示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した多様な態様に対して多様な改変および変更をなしうることは当業者に自明であろう。したがって、多様な態様は、本発明の教示の範囲に含まれる多様な態様の他の改変および変更を包含するものとする。
【符号の説明】
【0176】
10 薬物デポー剤
12 第1の領域または層(第1セットの薬物デポー剤)
14 第2の領域または層(第2セットの薬物デポー剤)
16 薬物デポー剤ハウジング
21 膝
22 股関節部
23 指
24 親指
25 首
26 脊椎
28 薬物デポー剤
32 脊椎部位
34 皮膚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な複数の埋込型薬物デポー剤であって、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を皮膚下の部位において放出しうる第1セットの1以上の薬物デポー剤、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出しうる第2セットの1以上の薬物デポー剤を含む、複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項2】
第2セットの薬物デポー剤のうち少なくとも1つが鎮痛薬および/または抗炎症薬を3日〜6カ月の期間にわたって放出する、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項3】
第2セットの薬物デポー剤のうち少なくとも1つが鎮痛薬および/または抗炎症薬を3日〜2週の期間にわたって放出する、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項4】
第1セットの1以上の薬物デポー剤がボーラス量の鎮痛薬および抗炎症薬を放出する、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項5】
第1および第2セットの薬物デポー剤が、鎮痛薬および/または抗炎症薬を含有する1以上のポリマー層を含む、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項6】
鎮痛薬がアルフェンタニル、ブトルファノール、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、モルヒネ、スフェンタニル、トラマドール、またはその組合わせを含み、抗炎症薬がクロニジン、フルオシノロン、デキサメタゾン、スリンダク、スルファサラジン、またはその組合わせを含む、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項7】
第1および第2セットのそれぞれの薬物デポー剤が、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、ポリ(グリコリド−,−カプロラクトン)、またはその組合わせのうち1以上を含む少なくとも1種類の生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項8】
第1または第2セットのそれぞれの薬物デポー剤がポリマーを含み、該ポリマーが薬物デポー剤の約20重量%〜約90重量%を構成する、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項9】
少なくとも1つの薬物デポー剤が、その薬物デポー剤を標的組織部位に投与した後、3日〜6カ月の期間にわたって、その薬物デポー剤に装填された鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類の全量に対して約20%〜約99%の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を放出する、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項10】
鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類が、それぞれの薬物デポー剤中でゲルに懸濁したマイクロ粒子、マイクロスフェア、マイクロカプセルおよび/またはマイクロファイバーとして封入されている、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項11】
それぞれの薬物デポー剤が1以上のペレットの形である、請求項1に記載の複数の埋込型薬物デポー剤。
【請求項12】
その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療するのに有用な複数の埋込型薬物デポー剤を含むキットであって、療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を皮膚下の部位において放出しうる第1セットの複数の薬物デポー剤、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出しうる第2セットの複数の薬物デポー剤を含むキット。
【請求項13】
第2セットの複数の薬物デポー剤が鎮痛薬および/または抗炎症薬を3日〜6カ月の期間にわたって放出する、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
第2セットの複数の薬物デポー剤が鎮痛薬および/または抗炎症薬を3日〜2週の期間にわたって放出する、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
第1セットの複数の薬物デポー剤がボーラス量の鎮痛薬を放出する、請求項12に記載のキット。
【請求項16】
第1セットの複数の薬物デポー剤がボーラス量の抗炎症薬を放出する、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
その処置を必要とする患者において疼痛および/または炎症を軽減、予防もしくは治療する方法であって、複数の埋込型薬物デポー剤を患者の皮膚下の標的組織部位またはその付近に投与することを含み、その際、第1セットの複数の薬物デポー剤は療法有効ボーラス量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を放出することができ、第2セットの複数の薬物デポー剤は療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を少なくとも3日の期間にわたって放出することができる方法。
【請求項18】
第1および第2セットの複数の薬物デポー剤を、疼痛を発生させるものを三角法で定める複数の標的組織部位に投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第1および/または第2セットの複数の薬物デポー剤が、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン、またはその組合わせのうち1以上を含む少なくとも1種類の生分解性ポリマーを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の埋込型薬物デポー剤の製造方法であって、生体適合性ポリマー、ならびに療法有効量の鎮痛薬および/または抗炎症薬またはその医薬的に許容できる塩類を組み合わせ、この組合わせから埋込型薬物デポー剤を形成することを含む前記方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−508788(P2011−508788A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542437(P2010−542437)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040240
【国際公開番号】WO2009/129149
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】