説明

疾患のリスクを予測および評価するためのう食リスク試験

唾液分析を用いて疾患のリスクを予測、評価、および診断するための方法、試験デバイス、および診断キットが提供される。上記方法は、被験体から全(分別されていない)唾液サンプルを得る工程;上記唾液のアリコートと1つ以上のレクチンとを、上記1つ以上のレクチンが上記唾液の1つ以上のレクチン結合成分に結合可能な条件下で接触させる工程;結合レクチンの量を検出する工程;およびコントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程を含み、被験体中の疾患のリスクを予測する。また、上記疾患のリスクを減らすための方法、および規定のレベルで上記疾患のリスクを評価するための方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国仮出願番号第60/459,878号(2003年4月1日出願)の優先権を請求し、この内容は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、唾液分析を用いて疾患のリスクを予測、評価、および診断するための方法および試験デバイスを提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
広範囲の臨床状況での洞察は唾液分析から得られる場合がある(例えば、Mandel,I.D.,「Salivary Diagnosis:Promises,Promises」in Saliva as a DiagnostIc Fluid,Malamudら編、Ann. NY Acad.Sciences 694:1−10(1993)を参照)。最も初期の経口流体についての唾液腺化学研究は、痛風およびリウマチを含む種々の全身状態を診断するために特定の成分について唾液を試験した(Atkinsonら、「Guidelines for Saliva Nomenclature and Collection,」 in Saliva as a Diagnostic Fluid,Ann.NY Acad.Sciences 694:xI−xII(1993))。近年の例は、液体が胃液を空にする速度を評価するために唾液のアセトアミノフェン濃度を利用する。薬学的および化学的に監視するために、タキソール(Svojanovskyら、J.Pharm.Biomed Anal.,20:549−555(1999));カフェイン(Akinyinkaら、Eur.J.Clin.Pharmacol.,56:159−165(2000));およびプロテアーゼインヒビター、インディナビル(Indinavir)(Wintergerstら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy,44:2572−2574(2000))を含む唾液標本を用いた多くの研究が報告されている。
【0004】
概して、診断目的のための唾液分析は、全身疾患(例えば、シューグレン症候群、膵臓繊維症、HIV感染等)を評価することを直接的に指向するか、またはステロイドのような治療薬物の全身レベルを決定するための手段として行われる(Ferguson,J.Dent.Res.66(2):420−424(1987))。唾液中の他の因子を測定し、それらの因子と口腔疾患とを関係付けるするための多くの試みも存在する。例えば、唾液分析はさらに、歯周病を診断するために使用されている(米国特許出願第6,063,588号、Lamster;米国特許第5,376,532号、Singer,Jr.;米国特許第5,866,432号および同第5,736,341号、Sorsaら、;および米国特許第5,756,361号、Winterbottomら、)。しかし、研究のかなりの大多数は唾液中の因子と他の一般的な口腔疾患(例えばう食)とを関係付けることができていない。これらの研究は、pH、種々のイオン、巨大分子、および流速についての値を報告しているが、相関関係の証拠はほとんど見出されていない。低レベルの相関関係を示したいくつかの研究は、他の研究との相関関係が見出されていない。従って、口腔疾患および関連疾患のリスクを予測するための唾液に基づく単純で正確な試験の必要性が今なお存在する。
【0005】
(I.口腔疾患および関連疾患)
最も一般的な口腔疾患はう食および歯周病である。個人は生きている間にう食の被害を受けやすく、18歳以上の成人の85%が罹患している。歯周病は、壮年期に最も頻繁に見られ、成人の大多数が30代半ばまでにいくつかの兆候および症状を経験している。歯周病の特定のまれな形態は、若年齢の人々が罹患する。口腔障害としてはさらに、特定の粘膜感染、および口腔癌および咽頭癌、および前癌性病変が挙げられる。
【0006】
(A.う食)
う食は、固有の多因子による感染疾患である(Lenander−Lumikariら、Adv.Dent.Res.14:40−47(December 2000))。う食は、全てのレベルで歯に影響を与え、広範囲な歯冠の断節、歯根尖端周囲の組織の微生物による障害、または罹患した歯の要素の均等な損失を生じる場合がある。臨床的に、上記疾患は、歯髄空間に影響を与えるまでの、歯のエナメル質の消失および種々の段階の進行における象牙質の消失によって特徴付けられる。病変がエナメル質−象牙質の境界を超えて進んだ場合、歯髄組織の炎症性反応が常時観察され、いくつかの場合において反応性象牙質の形成を伴う。成人個人の約50%が、処置済および処置が必要な少なくとも4つのう食に関連する病変を持っており、成人個人の約30%が、50%を超える歯がう食に罹患している(米国特許第5,830,489号、Valentiら、)。
【0007】
細菌Streptococcus mutans、またはS.mutansは、ヒトのう食または空洞形成の開始および進行のための主な病因となる作用因子であることが知られている。S.mutansは、エナメル質のアパタイト(ミネラル)成分次いで象牙質の酸分解、またはセメント質次いで象牙質の酸分解における一次因子の1つである(Tanzer,J.M.,Inter.J. Oral Biol.22:205−214(1997))。歯垢または唾液中の他の微生物種に対するS.mutansの比率とう食の存在または将来の大発生との相関関係が示されている(Tanzer,J.M.,前出)。それ故に、歯垢または唾液中のS.mutansは、う食の活性段階およびう食のリスクまたは感受性の両方についての指標として役立つ場合がある。これらの指標は、う食の診断および処置において非常に重要な役割を果たしている(Hume,W.R.,J.Dent.Educ.57:439−443(1993))。
【0008】
S.mutansを検出し、定量するための現在の技術としては、ブロスまたは寒天プレートシステムを用いた選択的な培地を用いた微生物培養物およびポリメラーゼ連鎖反応技術が挙げられる(Ellen,R.P.,Oral Sci.Rev.8:3−23(1976);Igarashiら、Oral Microbiol. and Immunol. ll:294−298(1996);米国特許第5,374,538号、Bratthall;米国特許第4,692,407号、Jordanら、)。しかし、これらの方法はそれぞれ、顕著な時間を必要とし(日にちオーダーで)、実行するために十分に訓練された作業者と精密な装置を必要とする。結果として、既存の技術は比較的高価で時間がかかる技術である。さらに、う食のリスクの予測としての口腔中のS.mutansのタイターの使用は、年齢が最初の2年まで以内でしか有意に一致しない。
【0009】
ヒトう食はさらに、歯の半透明性、色、硬度またはX−線強度における変化によって検出してもよい。しかし、これらの技術は、特異性および再現性の両方で制限がある。さらに、それらの変化は、同一の時間点で疾患が活性であるか否かを示さない(米国特許第6,231,857号、Shiら)。
【0010】
(B.歯周病)
う食と同様に、歯周病は、口腔表面に形成するバイオフィルム(歯垢)中のバクテリアによって生じる感染である。歯周病における基本的な区分は、歯肉に影響を与える歯肉炎、および軟質組織および歯を支える骨の全てに関わり得る歯周炎である。歯肉炎および歯周炎の軽度な形態は、成人においてよくみられる。支持組織の破壊が生じ、歯がゆるくなったり抜け落ちたりし得る中程度から重篤な歯周炎をもつ個人の割合は、年齢に伴って上昇する。
【0011】
(1.歯肉炎)
歯肉炎は、正常な桃色から赤色に色が変化し、膨張し、出血し、しばしば刺激に鋭敏になり押すと痛くなったりすることによって特徴付けられる歯肉の炎症である。これらの変化は、歯肉の縁に沿ったバイオフィルムの蓄積および破壊性の微生物産物の放出に対する免疫系の炎症性応答から生じる。歯肉炎の初期の変化は、歯磨きおよびデンタルフロスによって元に戻せる。しかし、十分に口腔を清潔にしていないと、これらの初期の変化は、炎症性細胞の浸潤および慢性感染の確立を伴い、さらに重篤になる場合がある。唾液腺の開口部に対向する歯表面のバイオフィルムはしばしば鉱化し、石または歯石を形成し、これらが鉱化されていないバイオフィルムで覆われ−これらの組み合わせが局所的な炎症性応答を悪化させる場合がある(Mandel,J.Am.Dent.Assoc.,126:573−80(1995))。歯肉の感染は、数ヶ月または数年継続することができ、その場合はまだ歯周炎に進行していない。
【0012】
歯肉の炎症は、グラム陽性streptococci(酸素が存在する状態または存在しない状態で生存可能)から主に構成されるものからグラム陰性嫌気菌(酸素が存在する状態では生存できない)から主に構成されるものに変化するまで現れない。歯肉の上の(歯肉ラインを超えて)歯石中の微生物が歯肉炎の犯人であることを決めるための多くの試みがなされてきた。しばしば述べられる微生物としては、Fusobacterium nucleatum、Veillonella parvula、およびCampylobacterおよびTreponemaの種が挙げられる。
【0013】
歯肉の炎症は、ステロイドホルモンによって影響を受け、思春期性歯肉炎、妊娠性歯肉炎および出生制御薬物またはステロイド治療に関連する歯肉炎を生じる場合がある。バイオフィルムに隣接する組織中にステロイドホルモンが存在することは、特定のバクテリアの増殖を明らかに促進し、バイオフィルム蓄積に対す応答が過大になる引き金となる(Caton,「Periodontal diagnosis and diagnostic aids,」 in Proceedings of the World Workshop in Clinical Periodontics,American Academy of Periodontology,pp.I−1−22,Princeton,N.J.(1989))。特定の処方薬剤はさらに、歯肉の過剰成長および炎症をもたらす場合がある。これらの処方薬剤としては、抗てんかん薬物フェニトイン(DILANTIN.RTM.)、シクロスポリン、および心臓疾患に使用される種々のカルシウムチャンネルブロッカーが挙げられる。
【0014】
(2.成人歯周炎)
成人歯周炎の最も一般的な形態は、全体的に穏やかに進行するものとして記載される。第2の形態は、迅速に進行し重篤なものとして記載され、しばしば処置に対して耐性がある。穏やかに進行する成人歯周炎の形態は、歯肉および骨に対する歯根膜(periodontal ligament)の接続を徐々に失わせ、支持する骨を失っていくことによって特徴付けられる。これはほとんどしばしば歯肉炎を伴う(Genco,「Classification of clinical and radiographic features of periodontal diseases」,Contemporary Periodontics,Gencoら編、pp.63−81,(1990))。必ずしも歯肉炎が先行するわけではないが、歯肉炎に関連するバイオフィルムはしばしば、歯肉の下側の歯垢の種となる。根膜および骨の破壊は、歯と隣接する組織との間のポケットの形成を生じ、そこに歯肉の下側の歯垢が入り込む。隣接する組織における炎症性流体および鉱物によってポケット中に形成される石は、特にダメージを受ける(Mandel and Gaffar,J.Clin.Periodontol.,13:249−57(1986))。
【0015】
歯周病の重得度は、歯肉の炎症および出血、ポケットの抵抗点までの調査される深さ、歯の固定点から測定される歯根膜の臨床的な接続(通常は、セメント−象牙質の結合)の損失、およびx線によって測定されるような隣接する歯槽骨の損失を包含する、一連の測定を介して決定される(Genco,J.PeriodontoL,67(10 Suppl.):1041−9(1996))。重篤度は、時間経過に伴う疾患の進行速度および処置される組織の応答によって決定される。成人歯周炎はしばしば、思春期に始まるが、通常は30代半ばまでは臨床的に顕著ではない。有症率および重篤度は増加するが、年齢とともに促進はしない(Beck,Ann.Periodontol,7(1):322−57(1996))。
【0016】
(3.早発性歯周炎)
思春期および若年成人において生じる歯周炎の形態は、一般的に好中球機能における欠損にかかわる(Van Dykeら、Infect.Immun.27(1):124−31(1980))。局在化した若年性歯周炎(LIP)は主に、10代および若年成人の第1大臼歯および切歯に影響を与え、骨を迅速に破壊するが、炎症の証拠となる徴候はほとんど見られず、歯肉の下側の歯垢または石もほとんどみられない。
【0017】
Actinobacillus actinomycetemcomitansは、これらの患者の疾患部位の90〜100%で単離されるが、健康な部位または軽度の疾患部位では存在しないかまたはほんの少ない頻度で存在する(Socransky and Haffajee,J.Periodontol.,63(4 Suppl.):322−31(1992))。同じバクテリア下部が感染した家族のメンバーに現れるため、キスまたは家庭用品を一緒に使うことでバクテリアが家族のメンバーに移ることもあり得る。しかし、好中球の欠損の証拠は、遺伝的成分についての議論をもたらす。LJPにしばしば関連する別の微生物は、Capnocytophaga ochraceaである。これらのバクテリアは、いずれも疾患の一般化された成人形態も有意ではなく、Porphyromonas gingivalisは、最も重要であると思われる(Schenkein and Van Dyke,Periodontol.,6:7−25(1994)。
【0018】
思春期前の歯周炎はまれであり、全体的かまたは局在化している場合がある。全体的な形態は、乳歯の萠出で始まり、永久歯を含むように進行する。重篤な炎症、迅速な骨の損失、歯の移動、および歯の損失が存在する。疾患の局在化した形態は、それほど攻撃性ではなく、いくつかの乳歯のみが影響を受ける。感染は歯周炎に関連する多くの臓器を含むが、混合物はいくらか異なる場合があり、Actinobacillus actinomycetemcomitans、Prevotella intermedia、Eikenella corrodens、およびCapnocytophagaのいくつかの種が関与しているとされている(Caton,前出)。疾患の両方の形態において好中球機能における欠損があり、これは患者が同様に他の感染に感受性が高い理由を説明し得る(Suzuki,Dent.Clin.North Am.,32(2):195−216(1988))。
【0019】
(C.経口障害に関連する他の疾患)
慢性気管支炎または気腫に起因する気流の閉塞によって、および呼吸感染の再発性発作によって特徴付けられる慢性閉塞性肺疾患は、口腔の健康状態が悪いことと関連している(Hayesら、Ann.Periodontol.3(1):257−61(1998);Scannapiecoら、Ann.Periondontol.,3(l):251−6(1998))。歯周病とバクテリアによる肺炎との陽性の関係もさらに示されている(Scannapieco and Mylotte,J.Periodontol.,67(10 Suppl.):1114−22(1996))。
【0020】
近年の研究ではさらに、特定の医学的に重要な状態を伴う、口腔感染との関連性が強調されている。増加するデータは、心血管疾患(例えば、心臓麻痺および発作)のリスク因子としての歯周病の関与を暗示する(例えば、米国特許第6,130,042号、Diehlら、;J.Beckら、J.Periodontol.,67:1123(1996))。疫学的研究は、心臓血管の疾患の他の既知のリスク因子を説明した後でさえも、歯根膜感染による相対リスクが顕著であることを示す。第2に、最近の研究により、歯周炎を有する母体は、歯周炎を有さない母体よりも乳児が低体重であるリスクが大きいことが示された(offenbacherら、 J.Peridontol.,67:1103(1996))。
【0021】
糖尿病が歯周炎の発生の増加および進行と関連するということが広く受け入れられてきており、その結果、歯周炎は「糖尿病の6番目の合併症」と呼ばれている(Loe,Daibetes Care,16(1):329−34(1993))。
【0022】
リスクは糖尿病が1型であるかまたは2型であるかに依存しない。1型の糖尿病は、膵臓がインスリンをほとんど産生しないか全く産生しない状態である。1型の糖尿病は、通常は子供時代または思春期に始まる。2型の糖尿病では、インスリンの分泌および利用が不十分であり;発症は典型的には30歳以降である。これらの2つの型の糖尿病はともに、アメリカ合衆国で1570万人が罹患していると概算されており、死因の7番目である(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(NIDDK).Diabetes statistics.NIH Pub.No.99−3892(1999))。糖尿病のケアの目標は、推奨されるレベルまで血中グルコース濃度を下げることである。いくつかの観察は、糖尿病患者が歯周病にかかりやすくなるということを提案するだけではなく、糖尿病と歯周病との相互的な関係を報告しているが、歯周病の存在は、血糖コントロールに影響を与える。
【0023】
(D.口腔疾患および不都合な妊娠の結果)
早期出産および低体重出産は、アメリカ合衆国で主要な周産期の問題であると考えられている(Gibbsら、Am.J.Obstet.Gynecol,166(5):1515−28(1992))。乳児の死亡率は出生後には過去10年間で大幅に減少しているが、低体重出産の出現率(1995年ではほんの300,000症例)はそれほど減少していない(Institute of Medicine,Committee to Study the Prevention of Low Birth Weight,Division of Health.Promotion and Disease Progression.Preventing low birth weight.Washington:National Academy Press(1985))。構造的または染色体の胎児性欠損がない乳児の死亡率の60%を超える量が、低体重出生が原因と考えられる(Shapiroら、Am.J.Obstet.Gynecol.,136(3):363−73(1980))。
【0024】
口腔疾患は、慢性の口腔炎性微生物感染の結果として症妊娠の不利な結果に寄与する場合がある。例えば、母体中の歯根膜バクテリアによって産生される毒素または他の産物が全身循環し、胎盤を通り、胎児に害を与える。それに加えて、感染に対する母体の免疫系の応答が、炎症性メディエーター、増殖因子、および他の強力なサイトカインの連続的な放出を誘発し、これらが胎児の成長および分娩を直接的または関節的に妨害する場合がある。
【0025】
羊水感染、絨毛膜羊膜の感染、および組織学的絨毛膜羊膜炎の率が増加している事実は、早期出産、低体重出産、および妊娠中の全身感染との関連を支持する。このような感染のなかで最も大きな比率が、ほとんど未成熟出産の妊娠中に生じたことは注目に値する(Hillierら、N.Engl. J.Med.319(15):972−8(1988);Hillierら、N.Engl.J.Med.,333(26):1737−42(1995))。生物学的機構は、サイトカイン産生およびプロスタグランジンの合成および放出を生じる、細胞により媒介される免疫のバクテリアにより誘発される活性化を含み、これらが早期分娩の引き金となる場合がある(Hillier,ら、前出)。感染のない早期分娩をした患者のレベルと比較して、プロスタグランジンおよびサイトカイン(インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、および腫瘍壊死因子α(TNF−α))のレベルの上昇は、羊水感染を有する早期分娩における患者の羊水中に見られている(Romeroら、Am.J.Obstet.Gynecol.,186(6 Pt l):1654−64(1993))。
【0026】
(E.粘膜感染)
口の粘膜内層は、良性の癌腫瘍からしばしば致命的な癌までの範囲にわたる種々の感染および状態を受ける。
【0027】
(口腔カンジダ症)
慢性増殖性カンジダ症は、平坦またはわずかに盛り上がる赤色または白色の病変であり、歯科用器具を含む軟質または硬質組織表面に接着する場合がある。慢性増殖性カンジダ症は、口腔から単離される最も一般的なカビ病原体であるCandida種、特にCandida albicansによって生じる。通常は、真菌類は、健康な子供および成人の60%までにおいて比較的少量存在し、ほとんど害を与えない(McCulloughら、Int.J.Oral Maxillofac.Surg.,25:136−44(1996))。
【0028】
口腔カンジダ症の最も一般的な形態は義歯性口内炎である。組織が不適合または不十分に洗浄された歯科用器具の連続した磨耗により外傷を受けると発症し、慢性紅斑性カンジダ症と記載される。別の形態であるカンジダ症口角炎は、口角の皺で発症し、入れ歯による口の痛みに密接に関係している(Tyldesley and Field, Oral Medicine,4th ed.,Oxford University Press(1995))。カンジダ感染の他の一般的な形態は、粘膜の表面のいずれかで罹患する偽膜性カンジダ症(鵞口瘡)およびAIDS患者において一般的に見られる赤色の顕著に痛みを伴う改変である急性紅斑性カンジダ症である。
【0029】
ほとんどの場合には、カンジダ感染は、局所的または全身的に使用される抗真菌医薬で制御され得る。しかし、AIDSのような免疫不全症または他の慢性の衰弱性疾患の患者ではこれは困難である。しばしば、生物は標準的な治療に耐性となり、攻撃的なアプローチが必要である(Tyldesley and Field,前出)。食道または肺への口腔カンジダ症の広がりは、生命を脅かす場合があり、明白なAIDSを規定するために使用される診断基準の1つである(Samaranayake and Holmstrup,J.Oral. Pathol Medi.,18:554−64(1989))。
【0030】
(F.ヘルペス単純ウイルス感染)
任意の所与の年において、約1500万人のアメリカ人がヘルペス単純ウイルス1型(HSV−1)と最初に接触する経験をし、ヘルペスを生じている。最初の接触は通常は口腔領域で生じ、症状は気づかないほど穏やかである場合がある。
【0031】
しかし、幾人かの人々では、特に幼い子供達および若年成人では、感染は、有名なヘルペスの水疱を生じる前に、一次ヘルペス性口内炎を形成し、不快な症状、筋肉の痛み、のどの痛み、およびリンパ節の拡大および圧痛を伴う。これらの水疱は通常は唇に現れるが、任意の粘膜表面は影響を受けない場合がある。明赤色の潰瘍化領域および明らかな歯肉炎も見られる場合がある(Tyldesley and Field,前出)。
【0032】
ヘルペスウイルスはさらに、性的に感染する性器感染を生じる。
【0033】
HSV−1およびHSV−2は、口腔感染および性器感染において見出され、HSV−1は主に口腔領域で発生し、HSV−2は主に性器領域で発生する(Wheeler,J.Am.Acad.Dermatol.,18(1 Pt.2):163−8(1988))。ヘルペスウイルスはさらに、口腔癌の進行における共因子と考えられている。混雑した生活状態は、感染した個人とのより多くの接触を生じ、これがHSVの感染を助けてしまう(Whitley,Pathol.Biol.,40(7):729−34(1992))。
【0034】
(G.口腔ヒトパピローマウイルス感染)
口腔ヒトパピローマウイルス(HPV)は100を超える認識された株が存在し、パポバウイルスファミリーのメンバーであり、種々の口腔病変の原因であると考えられている(Regezi and Sciubba,Oral pathology.Clinical−pathologic correlations,2nd ed.,(1993))。最も一般的なのは、唇の上または周りおよび口の中で見出される乳頭腫(いぼ)である。
HPVは、これらの口腔の鱗屑状パピローマの80%で見いだされる(de Villiers,Biomed.Pharmacother.,43:31−6(1989))。このウイルスはさらに、口腔扁平上皮癌の30〜40%で同定されており(Changら、 Arch.Dermatol.Res.,282(8):493−497(1990))、同様に頚部癌の原因であると考えられている。癌または非悪性腫瘍性のいぼの成長が、ウイルスが存在すること、またはウイルス遺伝子が活性化されることに依存する場合がある。口腔のいぼは、ほとんど子供において頻繁に見られ、おそらく手の上のいぼを噛んだ結果によるものである。成人においては、肛門性器領域からの性的感染が生じる場合がある(Franchesiら、Cancer Epidemiol.Biomarkers Prev.,5:565−575(1996))。
【0035】
概して、ウイルス性のいぼは、1年または2年後に自然におさまる。HIV感染した患者および他の免疫不全を有する患者におけるHPVに関連する病変の罹患率の増加によって実証されるように、免疫系は通常はHPV感染を制御下に維持する。
【0036】
(H.再発性アフタ性潰瘍)
再発性アフタ性潰瘍(RAU)(再発性アフタ性口内炎とも称される)は、潰瘍性口内炎の技術用語であり、一般的で通常穏やかな粘膜疾患である。人口全体の5〜25%が罹患しており、選択された集団(例えば、ヘルスプロフェッショナルスチューデント)ではそれよりも多い数である(Ferguson,et al,J.Oral Med.,39(4):212−217(1984);Kleinmanら、Community Dent.Oral Epidemiol,5:140−144(1991))。
【0037】
疾患は以下の3つの臨床形態をなす:RAUマイナー、RAUメジャーおよびヘルペス状のRAU。マイナー形態は症例の70〜87%を占める。痛みは弱く、別個の、浅い潰瘍が口の前部または舌にあらわれる赤いハロによって取り囲まれる。通常は2週間続く潰瘍は、痛みを伴い、食べたり話したりするのを困難にする場合がある。RAUの患者の約半分が1〜3ヶ月ごとに再発を経験しており;30%の連続的な再発が報告されている(Baganら、J.Oral Pathol.Med.,20:395−7(1991))。
【0038】
RAUメジャーは症例の7〜20%を占め、通常は一度に1〜10個の大きな合着した潰瘍が見られ、数週間または数ヶ月続く場合がある(Baganら、前出)。ヘルペス状のRAUは、RAU症例の7〜10%で生じることが報告されている。潰瘍は10〜100個の一団が一度にあらわれ、口の裏側に集中し、7〜14日間続く(Baganら、前出)。
【0039】
RAUは、子供時代に始まる場合があるが、発症のピーク時期は10歳代である(Lehner,Proc.R,Soc.Med.,61:515−24(1968))。RAUをもつ患者の親類の約50%は同じ状態を有しており(Ship,J.Dent.Res.,44:837−44(1965))、RAUの高い相関関係は一卵性双生児において注目されるが、二卵性双生児においてはあまり相関していない。RAUと特定の遺伝子マーカーとの相関が見出されている(Scully and Porter,J.Oral PatholMed.,18:21−7(1989))。
【0040】
RAUはさらに、いくつかの食物、食物着色料、および食物保存料に対する過敏性と相関がある(Woo and Sonis,J.Am.Dent.Assoc.,127(8):1202−13(1996))。栄養不足−特に鉄、葉酸、種々のビタミンB、またはそれらの組み合わせ−はさらに報告されており、好適な食品サプリメントとともに改良法が注記されている(Nolanら、J.Oral Pathol.Med.,20:389−91(1991))。
【0041】
(I.口腔癌および咽頭癌および前癌性病変)
口腔癌は、アメリカ合衆国の男性において6番目の最も一般的な癌であり、少数民族についての被害は不均衡になっている;アフリカ系アメリカ人の男性のなかでは4番目の最も一般的な癌にランク付けされている(Kosaryら、SEER Cancer Statistics Review,NIH Pub.No.96−2789(1995))。最も一般的な口腔部位は、舌、唇、および口の内壁である。
【0042】
口腔癌の原因であると考えられているウイルスとしては、ヘルペス単純1型およびヒトパピローマウイルスが挙げられる。エプスタイン−バーウイルス、またヘルペスウイルスは、現在では、アフリカで主に発症するバーキットリンパ腫の原因となる発癌性ウイルスであると認識されており、中国で主に発症する鼻咽頭癌腫の原因であると認識されている。HPVは頚部癌における主要な病因学的薬剤であり、同様に口腔癌と相関関係にあることがわかっている(Sugerman and Shillitoe,Oral Dis.,3:130−47.(1997))。HPVのDNA配列は、口腔前癌性病変中および扁平上皮癌中に見いだされ(Syrjanenら、J.Oral,Pathol.,17(6):273−8(1988))、実験的証拠により、HPV−16が口腔発癌性における重要な共因子であり得ることが示された(Parkら、Oncogene,10(11:2145−53(1995))。ヘルペス単純1型抗体は、口腔癌をもつ患者において示され、ヘルペスは、タバコタール濃縮物の適用と組み合わせた場合、ハムスターの唇において異形成(異常な細胞変化)を誘発することがわかった。
【0043】
より最近には、ヒトヘルペス8(新しく同定されたヘルペスウイルスファミリーのメンバー)は、カポージ肉腫およびAIDSをもつ患者において生じる他のまれな癌中に見いだされた。これらの腫瘍はしばしば、口腔の空洞内に最初に現れる(Epstein and Scully,Int.J.Oral Maxillofac.Surg.,21(4):219−26(1992))。他の一般的ではない口腔悪性腫瘍、例えばホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫は、AIDS患者の口中で生じる場合がある。これらのウイルスに加えて、真菌類Candida albicansの株による感染は、既知の発癌性であるニトロソアミンの真菌の産生を通して口腔癌の進行とリンクしている。
【0044】
(J.関連する自己免疫疾患)
口腔、歯の、または脳顔面頭蓋の徴候および症状は、自己免疫疾患、例えばSjogren症候群において、および多くの慢性および障害の痛みを伴う状態において重要な役割を果たす。Sjogren症候群は、身体の自己の細胞および組織が誤って免疫系による破壊の標的にされてしまう、いくつかの自己免疫疾患の1つである。他の自己免疫状態と同様に、Sjogren症候群は女性において流行している。罹患した女性 対 男性の比率は9:1であり、この症状は通常は中年において進行する。アメリカ合衆国ではSjogren症候群をもつ個人が100〜200万人いると概算されている(Talal,Rheum.Dis.Clin.North Am.,18(3):507−15(1992))。
【0045】
疾患は2つの形態で生じる。一次性のSjogrenは、唾液および涙液(涙)腺を含む。二次Sjogrenにおいて、腺の関与は、接続組織またはコラーゲン組織の発達を伴い、ほとんど頻繁に、リウマチ様関節炎、エリテマトーデス、強皮症、または胆管の肝硬変を伴う。
【0046】
腺の関与は、液分泌の顕著な減少を生じ、その結果口内乾燥症および眼球乾燥症(ドライアイ)を生じる。定常的な口内乾燥は、話すこと、噛むこと、および飲み込むことを困難にし;ドライアイはしばしば、痛みやごみの入ったような感覚を与える。Sjogrenの治療法は存在せず、患者はしばしば目薬や水のボトルまたは唾液の置換物を持ち歩き、症状の緩和につとめる。臨床的には、唾液流の減少は、バクテリアの生態系を変化させ、唾液の産生成分の減少に加えて、う食およびカンジダ症のリスクを高める(Daniels and Fox,Rheum.Dis.Clin.North Am.,18:571−589(1992))。最近の研究は、咀嚼機能の低下が存在することを示し(Dusekら、Gerodontology 13(1):3−6(1996))、歯周病の罹患率が高まることを示した(Najeraら、Oral Surg.Oral Med.Oral Pathol Oral Radial.Endod.,83(4):453−7(1997))。より進行した状態では、唾液腺は閉塞および感染またはリンパの浸潤により膨張する場合がある。疾患の両方の形態において、他の系が最終的には感染状態になる場合がある。鼻、咽頭、および膣の乾燥とともに、内部臓器の異常を生じる場合がある(Oxholm and Asmussen,J.Intern.Med.,239:467−474(1996))。Sjogren症候群を有する患者は、非ホジキンリンパ腫のような疾患を進行させるいくらかのリスクを有しており;臨床的なデータは、このようなリンパ腫がSjogren症候群を有する患者の5%で進行していることを示す(Moutsopoulosら、Am.J.Med.,64(5):732−741(1978))。
【0047】
(K.HIVおよび骨粗しょう症)
口は、初期の警告システム、全身の感染性疾患の診断およびその進行の予測(例えば、HIV感染)として役立つ場合がある。口の細胞および組織が体の他の部分に対応している場合、口の変化は一般的な病理プロセスを示す場合がある。日常の口腔試験およびおそらく将来のスクリーニング試験の間に、口腔の骨の放射線または磁気共鳴撮影が、骨格の初期骨粗しょう症の変化の診断になる場合がある。
【0048】
(L.HIV感染)
HIVによる身体の免疫系の進行的な破壊は、多くの口腔病変、例えば、口腔カンジダ症および口腔毛様細胞性白血病をもたらし、これらは、診断のためだけではなく、HIV感染の特定の段階を決定するために使用される。口腔カンジダ症は、癌の化学治療または他の免疫抑制薬剤を用いた処置のような医学的治療を前に受けていない、以前には健康であった若年成人にまれに見られる。口腔カンジダ症は、HIV感染の最初の徴候であり、感染−急性HIV症候群−の初期段階の一部としてしばしば生じる(Tindallら、「Primary HIV Infection:Clinical,Immunologic, and Serologic Aspects」,in The Medical Management of AIDS,Sandeら、eds.,pp.105−129;W.B.Saunders,1995)。CD4リンパ球が減少していく場合、HIV感染の進行につれて罹患率が高まる傾向がある。この症状は小児のHIV感染における最も一般的な口腔の症状発現であると考えられ(Kline,Pediatrics,97(3):380−388(1996))、食道カンジダ症に進行することが示され、顕在的なAIDSの兆候である(Saahら、Am.J.Epidemiol,135:1147−1155(1992))。カンジダ症の擬似膜および紅斑形態の両方は、HIV感染の進行の重要な予測になると考えられる(Kleinら、AIDS,6(3):332−333(1992))。
【0049】
口腔カンジダ症と同様に、HIV陽性のヒトにおける口腔毛様細胞性白血病は、AIDSのさらに迅速な進行の前触れとなる。口腔毛様細胞性白血病は、AIDS流行の初期に最初に報告された口腔病変である。その発見から、口腔毛様細胞性白血病は、他の免疫抑制、例えば臓器または骨髄の移植宿主の他の形態を受けたHIV陰性のヒト、および長期間のステロイド治療を受けたヒトにおいて見られ、免疫適合性のヒトの中ではほとんど見られない。
【0050】
直線的な歯肉の紅斑および壊死性の潰瘍性歯周炎は、HIV感染の進行を予測するものとなり得る(Mealey,Ann.Periodontaol.,1:256−321(1996))。壊死性の潰瘍性歯周炎(HIV感染したヒトにおいて観察されるさらに重篤な歯根膜状態)は、200/mm未満のCD4細胞の計測数を良好に予測する。それに加えて、口腔を罹患する多くの潰瘍性状態および非潰瘍性状態は、HIVの生物学的活性に影響を受ける場合があり、その処置によって影響を受ける場合がある(Mealey,前出)。
【0051】
(M.骨粗しょう症および口腔の骨の欠損)
骨粗しょう症(骨のミネラルが失われることおよび関連する構造的な変化によって特徴付けられる変性疾患)は、口腔の骨の欠損のリスク因子として長い間疑われてきた。それに加えて、口腔の骨の欠損の測定は、骨粗しょう症の潜在的なスクリーニング試験として提案されている。骨粗しょう症は、アメリカ合衆国で2000万人を超える人が罹患しており、患者のほとんどが女性であり、1年間にほぼ200万が骨折している(National Institute of Arthritis,Musculoskeletal and Skin Diseases 2000)。この疾患は、黒人の女性よりも、白人系アメリカ人およびアジア系アメリカ人の女性において流行している。口腔の骨の欠損は、男性よりも女性においてさらに流行していることが報告されている。さらに、閉経後の女性におけるエストロゲン状態、歯槽骨密度、および歯周炎の病歴の関連が研究されている(Payneら、J.Periodontol.,6:24−31(1997))。
【0052】
より大きな断面的な研究、および長手方向および機構の研究は、骨粗しょう症、オステオペニア、および口腔の骨の欠損、歯周病、および歯の欠損の関係をさらに正しく規定するために必要である。男性および閉経後の女性における骨のミネラル密度の制御に関与する因子の役割は、口腔の骨の欠損、歯の欠損、および歯周病を参照してさらに評価される必要がある。変数、例えば、性別、人種、食事中のカルシウムおよびリン、ビタミンDの吸収、運動、肥満度指数、喫煙、遺伝、薬の使用、再生病歴および心理的因子を深く評価する必要がある。それに加えて、骨粗しょう症および口腔の骨の損失を評価するための信頼性があり有効な判断基準および撮影技術が、骨格の骨のミネラル密度、顎骨のミネラル密度、歯周病、歯槽の縁の吸収、および歯の欠損の全体的な関係をさらに明瞭にするために必要である。
【0053】
(II.唾液のムチン)
唾液ムチンとして知られている唾液タンパク質の機能的性質は、口腔の健康状態に対して、継続的な研究対象である(Ayadら、J.Dent.Res.,79:976−982(2000))。唾液および唾液分泌物中の高モル重量の糖タンパク質(ムチンと呼ばれる)の存在は、最近の30年間で認識されてきた(Offnerら、Adv.Dent.Res.,14:69−75(2000))。ムチンは、口腔の健康に必須であり、口腔中で多くの多様な機能を行う。例えば、ムチンは粘液層の主なタンパク質成分であり、胃腸の、呼吸の、および再生路における上皮表面をコーティングする。この層は、粘性のバリアを形成し、粘膜細胞による活性な吸収および分泌を可能にしつつ、その下にある上皮を乾燥、機械的損傷および微生物の強襲から保護する。
【0054】
ムチンはさらに唾液腺によって分泌され、口腔の上皮表面の保護において、および口腔中の非免疫宿主防御系において主要な役割を有すると考えられる(Offnerら、前出)。
【0055】
生化学の観点から、ムチンは、約15%〜20%のタンパク質、およびO−結合したグリカンの形態で主に存在する80%までの炭水化物で構成される(Strous and Dekker,Crit.Rev.Biochem.Mol Biol.,27:57−92(1992);Gendler and Spicer,Ann.Rev.Physiol.,57:607−634(1995))。セリンおよびスレオニンは最も豊富なアミノ酸であり、これらの炭水化物鎖への接続部位として役立つ。多くのムチンは、200万Daltonより大きなモノマー分子量を有し、10倍より大きいサイズのマルチマーを形成する(Offnerら、前出)。今までに、11個の別個のヒトムチン遺伝子が単離され、それらの開発の順序で、MUC1〜MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC6〜8、およびMUC11〜MUC12とナンバリングされている。
【0056】
これらのムチンは、いくつかの共通の性質を共有している。ポリペプチド骨格は、3つの領域に分けることができる。中央の領域は、セリン、スレオニンが豊富であり、時々プロリンが豊富であり、8〜169個のアミノ酸の長さの範囲の直線状の繰り返し配列を含有する。このドメインは、O−グリカンの接続部位として役立ち、それぞれのムチンは固有の、特別な直線状の繰り返し配列を有する。ムチンのN−末端領域およびC−末端領域は、O−結合した糖およびN−結合した糖の両方と多くの部位でまたはまばらにグリコシル化される。多くのムチンにおいて、これらのフランキング配列は、システインが豊富であり、ほぼ10%のシステインを含有する。ムチンは、3つの別個の種類に体系化される:大きなゲルを形成するムチン(すなわち、MUC2、MUC5AC、MUC5B、およびMUC6);大きな膜に関連するムチン(すなわち、MUC1、MUC3、MUC4、およびMUC12);およびMUC7で表される小さな可溶性のムチン。MUC8およびMUC11をこれらのカテゴリーに割り当てるには、利用可能な情報が不十分である(Ofnnerら、前出)。
【0057】
MUC7遺伝子は、以前に報告されている(Bobekら、Genomics,31:277−282(1998))。MUC7ムチンは、S.mutans,およびA.actinomycetemcomitansのいくつかの株を含む口腔バクテリアのいくつかの種類に結合し、凝集する能力を有すると考えられている。前者は口腔バクテリアのうち最もう食原性であると考えられ、後者は歯周病における2つの主な病原体の1つである。MUC7ムチンはさらに、C.albicansに結合し、カンジダ殺菌活性を有し得る。ムチンの脱シアリル化は明らかに、口腔バクテリアのいくつかの種類を凝集させる能力を破壊する。最近の研究はさらに、MUC7ムチンが口腔バクテリアを結合するために使用されるよりも、異なるオリゴ糖モチーフ上で口腔好中球を結合することを示す。口腔バクテリアに結合する一次部位に関して、最近の研究は、MUC7ムチンのグリコシル化されていないドメインがそのオリゴ糖よりもさらにその原因であることを示唆する。
【0058】
Bolscher et al,(J.Dent.Res.,78:1362−1369(1999))は、6人の被験体の耳下腺、顎下腺および舌下の腺由来の刺激された別個の唾液においてムチンを定量化するMUC7についてのELISAを開発した。Bolscherの研究は、3人の唾液腺それぞれについてのMUC7の平均濃度を報告した。Rayment et al.(J.Dent.Res.,(2000)79:1765−1772)は、MUC7についての捕捉ELISAを開発し、61人の被験体の刺激された全唾液における平均濃度を測定した。
【0059】
それに加えて、他の研究者は、口腔の健康状態と比較した、MUC7の機能的性質または他の唾液タンパク質の濃度のいずれかを研究した。Prakobphol, et al.は、MUC7について異なる種類のオリゴ糖鎖を研究した(Biochemistry 38:6817−6825(1999))。Prakobphol,et alは、異なる個人がそれらのMUC7について異なる種類のオリゴ糖を有するがことを報告したが、それらの報告は集団研究を含まず、ムチンまたはそのオリゴ糖の定量もしていなかった。Bobekら、は、MUC7遺伝子を最初にクローン化し、その機能的性質を研究している(Genomics 31:277−282(1998))。Ayadら、は、口腔の健康状態に対する唾液中の種々の成分の関係を全体的に試験した(J.Dent.Res.79:976−982(2000))。
【0060】
米国特許出願第20003/0040009A1、Denny et al.(これらは参考として本明細書中に援用される)は、DFTに対するムチン濃度の関係を記載する(う食した永久歯および充填された永久歯)。ムチン試験は、米国特許出願第20003/0040009A1号に記載されるように、ナトリウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)のような既知の方法によって唾液中の全ての他の唾液酸を含有する分子から最初に唾液のムチン、例えばMUC7ムチンを分離する工程を含む。次いで、ムチンに接続した唾液酸を定量し、報告した。
【0061】
唾液中の他の因子を測定し、このような因子と個人ドナーのう食の経験との関係を測定する多くの企てが行われた。しかし、大多数の研究が、pH値を報告しており、種々のイオン、巨大分子、および流速が少し相関するという証拠を見出した。いくつかの研究は、研究間のコンセンサスはないが、少量の相関関係を示した。従って、特定の因子とう食進行のリスクレベルとの強い相関関係を示す試験を開発し、既存のう食レベルを予測または予報可能にすることは価値あることである。それに加えて、この試験は単純で正確であるべきである。
【0062】
進歩にもかかわらず、う食は、アメリカ合衆国の子供たちの85%が17歳までに依然として経験する疾患である。う食は多く見られるが、全てのう食の約75%が集団の25%において集中している(U.S.Dept.of Health & Human Services.National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement.Diagnosis and Management of Dental Caries Throughout Life(2001))。現在、これらのう食を受けやすい個人は、通常は会社の環境において、蓄積したう食によって同定される。しかし、この専門的な判断は、個々の事例の経験に基づく。特定の個々の被験体における将来のう食の進行の予測についての文献は存在しない。現在のレベルの科学的な努力は、う食の予防の効力および非侵襲性の処置の24人の研究に反映されており、被験体の集合は「ハイリスク」または「う食に活性あり」に基づいて選択された。これらの研究は、「Evidence Report/Technology Assessment,Number 36:Diagnosis and Management of Dental Caries」(U.S.Dept.of Health & Human Services.National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement.Diagnosis and Management of Dental Caries Throughout Life(2001))にまとめられている。1〜13歳の範囲の平均年齢で、これらの研究は、試験あたり平均175人の個人に対して行われた。それぞれの試験は、特定の処置の効力を判断するための証拠の量について評価した。達成可能な4つのグレードは、「良(good)」、「普通(fair)」、「不良(poor)」および「不完全(incomplete)」であった。個人の試験の4人のみが、それらの結果および結論について、普通(fair)のランク付けを受けた。残りの20人は、不完全(incomplete)のランク付けを受けた。多くの因子がこのランク付けにおいて役割を果たしているが、特別に注記すべきは、「リスクがある」および「う食に活性な」参加者のための結論判断基準において一致していないことであった。
【0063】
概して、これらの研究は、ハイリスクおよび/またはう食に活性な被験体を選択するために、Streptococcus mutansのタイターまたは過去のう食病歴、例えばdmftまたはdmfs(脱落歯)、およびDMFTまたはDMFS(永久歯)のいずれかを使用した。これらの結果判断基準に関連する問題は、実際の診断に関連する主観性、およびう食にかかりやすい個人を構成する数について合意がないことである。将来的にう食が進行する高い潜在性を有するこの不確定な個人の大まかな同定は、「ハイリスク」(S.mutansタイターに基づく)、および「う食に活性な」(DMFSに基づく)被験体に分けた分割研究において実証される。同じ処置薬剤は、「ハイリスク」集団において新しいう食が33%減少し、「う食に活性な」集団において9%増加した(U.S.Dept.of Health & Human Services.National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement.Diagnosis and Management of Dental Caries Throughout Life (2001))。う食発生の速度が最も高いと予想される被験体を最もよく同定する判断基準を含むものがどれかについて混乱することに加えて、評価結果は、う食のリスク評価に対するアプローチも有効ではないことを注記する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0064】
従って、標準的な被験体同定判断基準を提供し、子供時代から初期の成人にわたって一致する診断を導くための試験が価値が高く、必要とされている。好ましい試験は、全ての年齢集団および人種に適合するような均一な設計を有する。
【課題を解決するための手段】
【0065】
(発明の要旨)
本発明は、唾液分析を用いて疾患のリスクを予測、評価、および診断するための方法および試験デバイスを提供する。本発明が特定の疾患を予測および予防するための組成物および方法に限定されることを意図するものではない。従って、本発明は、疾患のリスクを予測および減らすための方法、および全(すなわち、分別されていない)唾液サンプル中のレクチン結合成分の含量の測定に基づいて、疾患を検出するための診断キットを提供する。
【0066】
より特定的には、本発明の1つの局面は、被験体における疾患のリスクを予測する方法であって、当該方法は、以下:上記被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液のアリコートと1つ以上のレクチンとを、上記1つ以上のレクチンが上記唾液の1つ以上のレクチン結合成分に結合可能な条件下で接触させる工程;結合レクチンの量を検出する工程;およびコントロール患者(すなわち、疾患をもたない患者)由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程であって、上記結合レクチンの量が上記疾患のリスクの指標である、工程を包含する、方法を提供する。唾液サンプルは、刺激された唾液サンプルであってよく、または好ましい実施形態では、刺激されていない唾液サンプルである。レクチン結合成分は、レクチンに結合する唾液オリゴ糖のいずれかであってもよい。1つの実施形態では、レクチンはMAL Iである。別の実施形態では、レクチンは、PNA以外のレクチンから選択される。
【0067】
1つの実施形態では、上記接触させる工程および上記検出する工程がウエスタンブロット手順の一部分である。例えば、1つの実施形態では、上記接触させる工程が、唾液サンプルの液滴をマトリックス物質に適用する工程、および上記マトリックスと上記1つ以上のレクチンの溶液とを接触させる工程を含む。上記接触させる工程は、1つ以上のレクチンをマトリックス物質に適用する工程;およびマトリックス結合レクチンと唾液サンプルとを接触させる工程を含む。
【0068】
本発明のさらなる局面は、疾患のリスクを予想するために1つ以上のレクチンを用いる方法であって、当該方法が以下:被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液の1つ以上のオリゴ糖成分に結合する1つ以上のレクチンを得る工程;上記唾液サンプルと1つ以上のレクチンとを、上記1つ以上のオリゴ糖成分が上記1つ以上のレクチンに結合可能な条件下で接触させる工程;および結合レクチンの量を検出する工程を含み、上記結合レクチンの量が上記疾患のリスクと相関関係にある、方法を提供する。1つの実施形態では、上記接触させる工程および検出する工程がウエスタンブロット手順の一部分である。
【0069】
1つの実施形態では、本発明の方法はさらに、規定のレベルで上記疾患のリスク(例えば、高い、中程度、非常に低い、またはゼロ)を評価する工程をさらに含むことができる。それに加えて、本発明の方法はさらに、被験体における疾患の将来の進行のリスクを評価する工程をさらに含むことができる。
【0070】
本発明の別の局面は、疾患のリスクを防ぐかまたは減らすための方法であって、当該方法は以下:上記被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液のアリコートと1つ以上のレクチンとを、上記1つ以上のレクチンが上記唾液の1つ以上のレクチン結合成分に結合可能な条件下で接触させる工程;結合レクチンの量を検出する工程;およびコントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程であって、上記結合レクチンの量が上記疾患のリスクに比例する工程;上記唾液中の上記成分の含量が正常コントロール(すなわち、試験される疾患を有さない被験体)中に含まれるレベルよりも上または下である場合、上記被験体に治療試薬を投与する工程を包含する、方法を提供する。経口流体標準は、コントロール(すなわち、試験される疾患を患っていない被験体)由来のサンプルを含むことができる。
【0071】
本発明の別の局面は、疾患を検出するためのキットであって、当該キットは以下:(a)唾液サンプルを集めるための手段;(b)上記サンプル中のレクチン結合成分の量を測定するための手段;および(c)上記サンプル中の上記成分の量を比較するための経口流体標準を含む。本発明の1つの実施形態では、上記キットはウエスタンブロットフォーマットであり、この性質のキットにおいて、唾液サンプルの液滴はマトリックス物質(例えば、ニトロセルロースフィルター)上に移される。次いで、液滴は1つ以上のレクチンを用いてプローブ化され、レクチンは好適な方法を用いて検出される。
【0072】
本発明の方法およびデバイスは、特定の年齢集団または人種内のヒト被験体の予想される疾患に限定されることは意図されない。好ましくは、本発明の方法およびデバイスは、全ての年齢および人種の被験体に適合する普遍的なものである。
【0073】
本発明の方法に従って予測可能な疾患としては、限定されないが、口腔疾患および関連する医学的障害が挙げられる。口腔疾患および関連する医学的障害としては、限定されないが、う食;歯周病(例えば、歯肉炎、成人歯周炎、早発性歯周炎等);歯根膜障害に関連する疾患(例えば、肺疾患および呼吸疾患、および心血管疾患、例えば、心臓麻痺、発作、アテローム性動脈硬化症等);糖尿病;周産期障害(例えば、低体重出産および早期出産);粘膜感染;口腔癌および咽頭癌;前癌性病変;関連する自己免疫疾患(例えば、Sjorgren症候群);HIV;および骨粗しょう症が挙げられる。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明は、う食のリスクを予測するための方法を提供する。上記う食は、子供および成人における、早発性う食、成人う食、歯根う食、DFT、DMF、DFSまたはDMFSであることができる。子供において、う食はさらに、dft、dmf、dfs、dfs/tまたはdmfsを含むことができる。
【0075】
本発明のさらなる利点および新規な特徴は、以下に示す記載において一部分に記載され、一部分では以下の明細書の例示に基づいて当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって学習されてもよい。本発明の利点は、特に添付の特許請求の範囲に指摘される機器、組み合わせ、組成物、および方法を用いて理解され、実現されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ムチンに関連していてもしていなくてもよい、う食予測を容易にし、市販に好適なう食リスク試験を開発するために本発見を利用する、唾液中で同定され評価された因子、すなわち、唾液のレクチン結合成分を有する。これらのレクチン結合成分は、MUC7およびMUC5Bムチン単独よりも良好でさらに広範囲に適用可能なリスク指示薬である。さらに、ムチンがレクチン結合オリゴ糖を欠損している個人またはムチンを欠損する個人について、レクチン結合オリゴ糖が他の唾液糖タンパク質に対して多量に存在することを発見した。それ故に、本発明の唾液分析は、疾患のリスクを予測および減らすためのさらに普遍的な方法を提供する。従って、本発明のリスク試験を用いて、ムチンが蓄積したう食経験の予測因子となり得ない子供および若年成人の集団は、ムチンが指示薬となる個人とともに集団に入れられた場合でさえ、高い可能性で同定することができる。レクチン結合成分は、ムチン単独よりも困難なく定量することができ、それ故に、単純な信頼性の高い試験を提供することができる。
【0077】
より特定的には、本発明の1つの局面は、被験体における疾患のリスクを予測する方法であって、上記被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液のアリコートと1つ以上のレクチンとを、上記1つ以上のレクチンが上記唾液の成分に結合可能な条件下で接触させる工程;結合レクチンの量を検出する工程;およびコントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程を含む方法を提供する。1つの実施形態では、上記疾患はう食である。
【0078】
本明細書中で定義されるような「コントロール」患者または被験体は、例えば、う食の数に従って定義される既知の疾患レベルの患者または被験体である。例えば、特定の集合において、0〜2DFS(永久歯中のう食された歯および充填された歯の表面全体)は、若年成人におけるう食の進行のリスクが非常に低いことと関係があり得、一方、3〜8DFSは、リスクが低いことと関係があり得、9〜16DFSはリスクが中程度であることと関係があり得、17以上のDFSはリスクが高いことと関係があり得る(実施例4参照)。複数のレクチンが本発明の方法において使用される場合、それらは個々にまたは集団で使用されてもよい。結合レクチンの量は、その量と1つ以上の(すなわち、パネルの)コントロール量とを比較する(例えば、裸眼での直接的な視覚観察を介して)ことによって、決定されてもよい。それぞれのコントロール量は、コントロール患者または被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている結合レクチンの量である。次いで、疾患のリスクは、結合レクチンの量に基づいて決定される。例えば、結合レクチンの量は、上に定義される「非常に低いリスク集団」に匹敵する量であり、個人は、進行するリスクが0〜2DFSであると予測される。
【0079】
「成人」は、少なくとも21歳であるヒトとして、National Institute of Healthスタンダードに従って定義される。
【0080】
「子供」は、21歳未満であるヒトとして、National Institute of Healthスタンダードに従って定義される。
【0081】
1つの実施形態では、本発明のレクチンに基づくう食のリスク試験(「う食試験とも称される」)は、2つの結果を測定する:(1)う食評価、および(2)リスク評価。う食評価は、個人の蓄積されたう食性病歴として記載される。評価指標の例はDFS(永久歯中のう食された歯および充填された歯の表面全体)、dfs(脱落性(乳児の)歯中のう食された歯および充填された歯の表面全体)、およびdfs/t(のこりの脱落性の歯あたりのう食された歯および充填された歯の表面の数を指す)である。リスク評価は、個人が独立した予防的処置の非存在下で特定の年齢によって蓄積することが予想できるう食の数を投影する。本発明に従って使用される評価指標の例は、高い、中程度、低い、および非常に低いのリスクレベルスケールである。見られるように、これらのリスクレベルは、試験集合において獲得された範囲のDFTおよびdfs/tまで直接的に結合させることができる。リスクはさらに、4つのレベル以上または以下に較正されてもよく、う食試験を適用し得る異なる集合のう食病歴パターンをよりよく反映するために、異なる範囲のDFTまたはdftに較正することができる。
【0082】
本発明のリスク試験は、通常の診断手順の健康スクリーニングとして、およびハイリスクの個人における同定、処置、および予防を高めるためのさらに広範囲の口腔健康キャンペーンにおける歯科での実施に一体化することができる。これらの試験の組み合わせによって提供される診断スクリーニング情報および技術は、う食にかかりやすい子供、10歳代、および若年成人を同定する健康ヘルスケア提供者の助けとなる。このことは、外科手術単独の場合、または脱落性の歯におけるdmf(う食した表面、損失した表面、失われた表面、および充填された表面)および永久歯におけるDMFSが統計学的確定性を持って同定することができない場合、リスクのある個人の場合に、歯科的進行段階で最も役立つ。
【0083】
(I.定義)
本発明の理解を容易にするために、多くの用語を以下に定義する。
【0084】
本明細書中で使用される場合、用語「唾液」は、唾液が口腔中のどの部分で分泌されるか、またはどのように集められるかにかかわらず、口腔液を指す。唾液は、刺激されていなくても刺激されていてもよい。好ましい実施形態では、唾液のサンプルは刺激されていない。本明細書中で使用される場合、用語「刺激されていない唾液」は、被験体が唾液流を刺激することなく収集溶液に吐き出すものを意味する。例えば、被験体の唾液は、パラフィンフィルム片または酸っぱい飴を噛むことによって刺激されていなくてもよい。「分別されていない」唾液サンプルは、唾液サンプルのどの成分も、本発明の方法または試験において使用されるサンプルから分離されないことを意味する。
【0085】
本明細書中で使用される場合、用語「う食リスクの予測」または「う食の病歴の予測」は、さらなるう食の進行のリスクおよびう食および充填される現在まで蓄積されたう食の数の予測をそれぞれ指す。う食は、歯髄空間が罹患するまで、歯のエナメル質および進行の種々の段階における象牙質の脱ミネラル化によって特徴付けられる疾患である。充填とは、処置されるかまたは再生されたう食を指す。「予測」は、予後判定、予報、予告、予見、予告等と同義である。
【0086】
本明細書中で使用される場合、用語「経口流体標準」は、口腔液収集方法およびデバイスの試験、較正および標準化、口腔液のハンドリング、保存および貯蔵方法およびデバイス、および口腔液に基づくアッセイ方法およびデバイスにおいて天然に生じる口腔液の代理物として有用な溶液を指す。口腔液標準は、唾液のインビボでの治療交換物またはサプリメントとしては意図されないが、ex vivoでの試験標準として使用される。経口流体標準との用語は、口腔液代替組成物単独を指してもよいか、または1つ以上のさらなる成分(例えば、検体および/またはヒト血清)を入れた口腔液代替物を指してもよい。経口流体標準との用語の特定の意味は、使用される内容から明らかである。
【0087】
本明細書中で使用される場合、用語「口腔液」は、口腔において単独または組み合わせて見出される1つ以上の液を指す。口腔液としては、限定されないが、唾液および粘膜の漏出液が挙げられる。口腔液(例えば、唾液)が多くの供給源(例えば、耳下腺、下顎下腺、舌下腺、副腺、歯肉粘膜および頬粘膜)からの分泌物の組み合わせであることが認識されており、口腔液との用語としては、これらの供給源のそれぞれの分泌物単独またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0088】
本明細書中で使用される場合、用語「ムチン」は、タンパク質と複合体化した多糖類を指す。酸ムコ多糖類は、通常は2つの種類の代替単糖類単位を含有し、これらの少なくとも1つは酸性基(典型的にはカルボキシル基または硫酸基)を含有する、関連するヘテロ多糖類の集団である。用語「MUC7」は、特定のムチン遺伝子を指す。用語「MUC7ムチンまたは時折MUC7タンパク質」は、MUC7遺伝子によってコードされるタンパク質、およびムチンとしての性能をもつのに必要な炭水化物および可能な場合に硫黄を含有するように後翻訳的に改変されたものを指し、これらは糖たんぱく質の認識された生化学的な種類である。
【0089】
本明細書中で使用される場合、用語「レクチン」は、しばしば大きな特異性を有して、糖タンパク質および糖脂質上の規定されたオリゴ糖構造に結合するタンパク質を指す。
【0090】
本明細書中で使用される場合、用語「被験体」は、唾液が特定の疾患のために試験される被験体を指す。被験体は、ヒトまたは動物であることができる。
【0091】
本明細書中で使用される場合、用語「正常な被験体」または「正常なコントロール」は、試験される特定の疾患(例えば、う食またはう食の経験に関連する任意の疾患)を患っていない被験体を指す。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「口腔障害」および「口腔疾患」は、口腔に影響を受ける疾患および障害、および関連する医学的障害を指す。口腔障害としては、限定されないが、う食;歯周病(例えば、歯肉炎、成人歯周炎、早発性歯周炎等);粘膜感染(例えば、口腔カンジダ症、ヘルペス単純ウイルス感染、口腔ヒトパピローマウイルス感染、再発性アフタ性潰瘍等);口腔癌および咽頭癌;および前癌性病変が挙げられる。
【0093】
本明細書中で使用される場合、用語「関連する医学的障害」は、歯周病に関連する医学的状態(例えば、肺疾患および呼吸疾患、および心血管疾患、例えば、心臓麻痺、発作、アテローム性動脈硬化症等);関連する自己免疫疾患(例えば、Sjorgren症候群);HIV;および骨粗しょう症を指す。
【0094】
ウエスタンブロットは、唾液サンプルのアリコート(例えば液滴)を膜(例えば、ニトロセルロース、ナイロン(登録商標)、またはPVDF)へ移動することを含む。次いで、唾液中のレクチン結合成分の存在は、膜と1つ以上のレクチンを含有する溶液とを接触させ、順次好適な手段によって検出されることによって検出される。検出は、オートラジオグラフィー、比色分析反応または化学発光法によってでもよい。例えば、レクチンは、ビオチンに接合することができ、結合レクチン接合体と蛍光的に標識されたアビジンとを接触させることによって検出し、定量することができるか、または限定されないが微粒子、例えばマイクロラテックスビーズを含む任意のレポーターに直接的に接合することができる。
【0095】
本発明は、唾液分析を用いて疾患のリスクを評価するための組成物および方法を提供する。特に、本発明の組成物および方法は、口腔疾患および他の関連する疾患のリスクを予測し、予防するために使用することができる。
【0096】
(II.疾患を予測するための唾液分析)
本発明は、疾患のリスクを予測し、疾患を処置するための唾液に基づく新規の方法論および技術を提供する。特定的には、本発明は、唾液のレクチン結合成分の分析に基づく疾患のリスクを予測するための組成物および方法に関する。本発明によれば、唾液のレクチン結合成分は、ムチンに関連していてもしていなくてもよいが、1つ以上のレクチンを用いてプローブ化することができ、唾液のレクチン結合活性を、コントロール被験体の唾液のレクチン結合活性の量と比較することができ、結合レクチンの量は、疾患のリスクの指標である。
【0097】
唾液中のレクチン結合成分は、MUC7およびMUC5Bムチン単独よりもさらに良好でさらに広範囲に適用可能なリスク指示薬であることがわかった。さらに、本発明は、ムチン試験が適用されない個人について、それらの多くが特定のレクチン結合オリゴ糖を欠損しているか、またはムチンを欠損しており、オリゴ糖が別の唾液糖タンパク質についてかなりの量存在することを示す。従って、本発明の1つの実施形態によれば、疾患および関連する疾患のリスクは、刺激されていない唾液または刺激された唾液由来の全レクチン結合を定量することによって予測される。
【0098】
(A.レクチン)
レクチンは、種々の植物、動物、および微生物から誘導されるタンパク質のファミリーである。ファミリーとして、それらは、それらが特定の糖または炭水化物を有する分子のオリゴ糖鎖中に存在する糖結合に選択的に結合する能力によって特徴付けることができる。最も一般的なレクチンの使用の1つは、個々の血液型を確認することであり、レクチンには、同時に認識される少なくとも26の異なるファミリーが存在する。A、B、O血液型は、これらのファミリーの1つしか現しておらず、個人の炭水化物を有する分子中に現れる糖および結合の種類を通常のスレッドとして有する。通常知られているように、血液型の表現は遺伝子に基づいている。本発明のう食試験において使用されるレクチンのいくつかは、通常の血液型と関係がある。本発明のう食試験において使用される全てのレクチンは市販されている。
【0099】
本発明のう食試験において使用されるレクチンの役割は、種々の種類の糖および糖タンパク質に関連するそれらの分子間結合、糖脂質、複雑な多糖類、および唾液中に存在する他の炭水化物を含有する分子を定量することである。本発明に従う試験は、種々のレクチンからの定量結果の積算/組み合わせに基づき、これらのいくつかは、う食の病歴に陽性に相関する炭水化物の性質およびう食の病歴に陰性に関連する他の性質を測定するように思われる。う食試験の個々の結果は、唾液中の陽性に相関したレクチン親和性と陰性に相関したレクチン親和性との相対バランスを現す。この試験は、レクチンの混合物を用いて行われるか、または定量試験を統計学的に混合することができる個々のレクチンを用いて行われてもよい。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明の方法において使用されるレクチンは、DSL、ECL、PSA、WGA、UEA、MAL I、MAA、PNA、AAL、LTL、MAL II、JAC、LEL、SNA、PTLI、ACL、GSL II、VVA、BPL、WFL、SJA、MPL、GNL、HHL、CCA、NPL、STL、PHA−L、PHA−E、GSL I、DBA、HMA、EEA、LPA、およびPTL IIからなる群より選択される1つ以上のレクチンである。別の実施形態では、上記レクチンは、AAL、LTLおよびUEA 1からなる群より選択される。なお別の実施形態では、上記レクチンは、PNA以外の任意のレクチンから選択される。
【0101】
1つの非限定的な例では、DSL、ECL、PSA、MAL I、PNA、AAL、LTL、MAL II、JAC、LEL、PTL I、GSL II、VVA、BPL、SJA、MPL、およびCCAを含むレクチンのパネルは、永久歯においてう食の進行についての成人のリスクを予測するために、本発明の方法において使用することができる。
【0102】
別の非限定的な例では、ACL、PNA、LTL、PSA、MAL II、MAA、STL、PTL I、LEL、DSL、ECL、AAL、VVA、GNL I、CCA、SNA、JAC、WFL、SJA、MAL I、およびBPLを含むレクチンのパネルは、脱落歯においてう食の進行についての子供のリスクを予測するために、本発明の方法において使用することができる。
【0103】
(B.サンプリング方法)
好ましい実施形態では、本発明の方法は、疾患のリスクについて試験するために、刺激されていない唾液サンプルまたは刺激された唾液サンプルを分析する。試験のための唾液標本は、当該技術分野で公知の種々の以下の方法に従って集めることができる。刺激されていない唾液を作成するための適切な条件は、以下に記載されている(Nazaresh and Christiansen,J.Dent.Res.,61:1158−1162(1982))。唾液を集めるための方法およびデバイスはさらに以下に記載されている(米国特許第5,910,122号、D’Angelo;米国特許第5,714,341号、Thieme et al.;米国特許第5,335,673号および同第5,103,836号、Goldstein et al.;米国特許第5,268,148号、Seymour;および米国特許第4,768,238号、Kleinbergら、(これらはそれぞれ本明細書中に参考として援用される))。本発明の方法はさらに、刺激された唾液を分析することによって実施することもできると考えられる。
【0104】
唾液収集の1つの好ましい方法は、ある体積の刺激されていない唾液を集めるために口に挿入される内蔵型滅菌デバイスを利用し、含まれる滅菌バッファーのアリコートと混合される。1つの代替の実施形態では、本発明の試験片上を被験体がなめるかまたは唾液を吐き出すことによってサンプルを集める。
【0105】
さらに、本発明の方法は、サンプルを集めた直後に唾液分析を行うことに限定されない。他の実施形態では、本発明の方法に従う唾液分析は、貯蔵された唾液サンプルで行うことができる。試験のための唾液サンプルは、当該技術分野で公知の方法および装置を用いて保存することができる(例えば、米国特許第5,968,746号、Schneider(本明細書中にその全体が参考として援用される))。
【0106】
本発明の方法は、その粘度を減らすために処理された唾液サンプルについて唾液分析を行うためにも使用されると考えられる。ムコ多糖類を含有する体液、例えば唾液は、疾患(バクテリアによる疾患、ウイルスによる疾患、および代謝物起源による疾患を含む)の診断において有用な抗体および他の代謝物を含有する。しかし、ムコ多糖類の性質に起因するこのような液の粘稠性は、これらの液の試験を困難にする。任意の実験室での試験手順のために唾液を調製する目的で、唾液は十分に液体にされなければならず(すなわち、粘度を下げなければならない)、破片は存在してはならない。破片を除去するために使用される技術としては、遠心分離およびろ過が挙げられる。唾液の粘度はさらに、唾液サンプルとカチオン性四級アンモニウム試薬とを混合することによって減らすことができる(米国特許第5,112,758号、Fellmanら、(本明細書中でその全体が参考として援用される)を参照)。
【0107】
さらに、本発明の方法は、口内乾燥症を患う被験体から得られる唾液サンプル由来の因子の分析において使用されると考えられる。口内乾燥症は、唾液腺が十分な量の唾液を産生しない状態である。口内乾燥症の影響の発生は潜伏性であり、疾病を患う場合に、明らかな境界線は存在しない。世界中でこの状態を患う個人は数百万人いると概算されている。口内乾燥症を患う個人の実際の数は知られていないが、最近になるまで、この問題の罹患率または重得度に対する理解はほとんどなかった。口内乾燥症を患っている人は、50歳を超える年齢の人口の約10%であり、65歳を超える年齢の人口の約25%であると概算されている。これらの罹患者の大多数は女性である。
【0108】
口内乾燥症のいくつかの直接的な一次要因は、自己免疫疾患、例えば、Sjogren症候群、医学的照射、栄養失調、ホルモン不均衡、関節炎および加齢である。頭部および頚部の領域に1週間に1000rad医学的に照射される場合、6週間後に患者の85%が口内乾燥症にかかり、3ヶ月後に95%が口内乾燥症にかかる。照射による口内乾燥症の発症は迅速であり、1週間後には唾液流が50%より多く減少し、処置の6週間後には75%より多く減少する。口内乾燥症は、進行性であり、持続的であり、不可逆であり、照射の3年後には唾液の放出量が95%より多く減少する。主要な唾液腺の一部分のみが電離放射線の経路である患者では、暴露されていない部分は過形成を受け、損傷した腺房を部分的にまかなう。口内乾燥症の最も重篤な症例は、頭部および頚部の手術後の照射治療によって、および自己免疫疾患、例えば、狼瘡、Sjogren症候群、およびリウマチ様関接炎によって生じる(例えば、P.C.Foxら、J.Am.Dental Assoc.,110:519−525(1985)を参照)。第2に、口内乾燥症は、主に抗高血圧剤、抗うつ剤、鎮痙薬、利尿剤、筋肉弛緩剤、抗精神病薬、食欲抑制剤、およびParkinson病の治療薬を包含する、400を超える薬物の投与から生じる副作用である。
【0109】
口内乾燥症を患う被験体における疾患のリスクを予測するために、分析のための唾液サンプルを得るために使用される唾液を増やすための種々の方法が考えられる。唾液を増やすための種々の方法は、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,886,054号(本明細書中でその全体を参考として援用される)は、少なくとも1つのポリマーおよび電解質の水溶液を用いて唾液を増やすための治療方法を教示する。水溶液は、好ましくは緩衝液であり、場合により少なくとも1つのムチンを含有する。別の例では、米国特許第6,230,052号(本明細書中でその全体を参考として援用される)は、使用者の口腔内または口周囲の組織内の神経的に感受性な位置で神経刺激によって唾液産生を誘発するための移植可能なデバイスを教示する。
【0110】
上に記載される唾液をサンプリングするための例は、説明の目的のためのみであることが理解される。さらに、唾液をサンプリングするための種々の改変は、本発明の範囲内であると意図されると理解される。
【0111】
(C.統計学的試験)
1つの実施形態では、被験体における疾患のリスクを予測するための本発明の方法は、疾患のリスクを高い、中程度、低い、非常に低い、またはゼロとして評価する工程をさらに含むことができる。別の実施形態では、被験体における疾患のリスクを予測するための本発明の方法は、被験体において前記疾患の将来の進行のリスクを評価する工程をさらに含むことができる。例えば、将来のリスクを評価する方法は、結合するレクチンの量と、疾患の重篤度の範囲を現す被験体の集団から誘導した回帰分析とを比較する工程を含む。
【0112】
唾液のレクチン結合成分の性質を予測する発見にかかわる統計学的試験は、標準的であり、統計学的分析の分野において周知である。特定的には、本発明は、Pearson相関係数、単純直線回帰分析、複数直線回帰分析、およびANOVAを使用した。う食のリスクを予測するための信頼性の局面は、標準的な集団における、試験結果と歯の上で観測されたう食および充填(DFT)との関係にかかわる表現の正確度である。ほとんどの統計学的プログラムでは、この関係は、最少二乗法によって計算され、計算式が得られ、ここから直線回帰線が誘導され、予測を行うことができる。しかし、典型的な回帰線は従属変数の変数のみを考慮している。特定の実施形態では、う食の経験の変数は従属変数である。
【0113】
DFTおよびレクチン結合成分濃度における正常な変数が存在する本発明の1つの実施形態では、異なる型の統計学的試験を使用することができ、最も代表的な数学的回帰式が得られる。回帰分析に対するこのアプローチは、種々の統計学的試験、例えば、直交最少二乗法、相乗平均回帰法、Bartlett’s、3集団法(すなわち、II型回帰分析)、およびランダム変数回帰分析によって行うことができる。これらの代替的な方法はさらに、データ上の回帰線の数学的記載を計算するために使用することもできる。この実施形態では、これらの方法は、従来の単純直線回帰分析によって得られる予測結果を測定可能に変更するものではなかった。
【0114】
回帰分析のRは、好ましくは少なくとも0.3である(すなわち、0.3および1を含む0.3〜1の間の任意の数)。例えば、3レベル試験では、Rは、少なくとも0.9であり得;4レベル試験では、Rは、少なくとも0.98であり得;5レベル試験では、Rは、少なくとも0.99であり得る。
【0115】
(D.試験バージョン)
概して、本発明は、被験体における疾患のリスクを予測するための方法であって、当該方法は、以下:上記被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液のアリコートと1つ以上のレクチンとを、上記レクチンが上記唾液のレクチン結合成分に結合可能な条件下で接触させる工程;結合レクチンの量を検出する工程;およびコントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程であって、上記結合レクチンの量が前記疾患のリスクの指標である、工程を含む方法を提供する。
【0116】
1つの実施形態では、接触させる工程および検出する工程は、ウエスタンブロット手順の一部分である。1つの例では、この手順は以下:上記唾液の液滴をマトリックス物質に適用する工程;および上記マトリックスと上記1つ以上のレクチンを含有する溶液とを接触させる工程を含む。結合の量を可視化する目的で、レクチンは、以下に詳細に議論されるように、レポーターまたは着色した微粒子に結合することができる。
【0117】
あるいは、ウエスタンブロット手順は、1つ以上のレクチンをマトリックス物質に適用する工程;およびマトリックス結合レクチンと唾液サンプルとを接触させる工程を含む。
【0118】
本発明はさらに、疾患を診断するための本発明の方法に基づく試験を提供する。概して、この試験は以下を含む:(I)唾液を集めるための手段;(II)唾液中の1つ以上のレクチン結合成分の量を測定するための手段;および(III)レクチン結合成分の量を評価するための経口流体標準。本発明の組成物および方法の異なるバージョンは、種々の適用のために使用可能である。
【0119】
好ましくは、唾液からう食の経験を予測するための試験は容易であり、正確に解釈される。1つの実施形態では、本発明は、若年成人の1つの唾液サンプルからう食を予測するための実際的な試験を提供する。
【0120】
特定の実施形態では、唾液サンプル中の1つ以上のレクチン結合成分の量を測定するための手段は、ドットブロット試験に類似するストリップ試験フォーマットを含む。好ましくは、ストリップ試験は、複数のレクチン結合成分の濃度を区別することができる。ストリップ試験フォーマットは、分布、使用、および解釈の容易さにおいて他の可能な設計よりも、種々の利点を提供する。
【0121】
それ故に、アッセイデバイスの1つの実施形態は、唾液サンプルのアリコートを受けるための第1のマトリックス物質を含むサンプル受容区域を有し;場合により第2のマトリックス物質の表面に結合する既知の濃度の少なくとも1つのレクチン結合化合物を有する上記第2のマトリックス物質を含むコントロール区域を有する試験片を含む。1つの実施形態では、この設計の試験片は、パッケージド・ドライされている。
【0122】
試験片は、片の末端の一端までラミネートされたマトリックス物質を有する好ましくは半剛性支持体を含む。支持体は、任意の好適な剛性物質または半剛性物質、例えば、ポリ(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリエステル、およびポリスチレンで作成することができる。本発明の目的のために好適なマトリックス物質としては、限定されないが、ニトロセルロース、綿、ポリエステル、レーヨン、ナイロン(登録商標)、ポリエーテルスルホン、およびポリエチレンが挙げられる。
【0123】
マトリックス物質は、好適な接着手段によって、例えば両面接着テープを用いて支持体に接着されてもよい。あるいは、支持体は、感圧接着ラミネート、例えば、アクリル感圧接着剤を片面に有し、場合によりマトリックス物質に適用される前はリリースライナーで覆われているポリエステル支持体であってもよい。
【0124】
マトリックス−結合レクチン−結合成分に結合するレクチンの量を可視化する種々の様式を使用することができ、多くの方法、例えば、特定の可視化した着色の直接的な結合(例えば、アルシアンブルー、銀増強アルシアンブルー、またはStains−All);発色団で標識されたレクチン;および種々の間接的な方法、例えば、酵素触媒による増幅は当該技術分野で既知である。本試験の開発中に使用される大多数の試薬は市販されている。
【0125】
本発明の1つの実施形態によれば、レクチンは、レポーターで標識されてもよい。本明細書中で使用される場合、「レポーター」は、レクチンと唾液のレクチン結合部分との間で形成される複合体を検出する可能性を提供する部分を指す。レポーターは、色変化、発光、蛍光、または放射能活性のような特徴によって検出されてもよい。レポーターの例としては、限定されないが、染料、化学発光化合物、酵素、蛍光化合物、金属錯体、ビオチン、ハプテン、放射線発光化合物、放射線標識された生体分子、および着色した微粒子が挙げられる。当業者は、利用されるプローブバイオポリマーの種類が一旦決定されると、好適なレポーターを容易に決定することができる。
【0126】
1つの実施形態では、標識化手順は、分析前に(直接標識)行っても、複合体形成後に(間接標識)行ってもよい。多くの結合対は、間接標識のために当該技術分野で公知のものであり、例えば、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジン、ハプテン−抗ハプテン抗体、糖−レクチン等が挙げられる。関節標識の例は、レクチンをビオチニル化し、ビオチニル化レクチンと膜−結合唾液サンプルとを接触させ、レクチン/レクチン結合成分複合体とストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ接合体を反応させることである。唾液中のレクチン結合成分に結合させた後に得られるレクチンの成分を次にストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ接合体に結合させ、次いで、色素産生基質、例えば酵素標識された蛍光(ELF)試薬(Molecular Probes,Inc.)上で作用させることである。
【0127】
本発明の方法によれば、本発明の試験片に、唾液サンプルでスポットを作成し、次いで1個のレクチンを含む溶液と接触させる。別の実施形態では、スポットを作成した試験片をレクチンの混合物と接触させる。例えば、試験片の設計は、複数の濃度の唾液サンプル(それ故に複数の濃度のレクチン結合成分)のスポットを固定マトリックス上に作成し、1個の色強度を標準に対してマッチさせること、または唾液サンプルの1個のスポットを作成し、複数の色強度をある範囲の標準色強度に対してマッチさせることのいずれかに基づくことができる。特定の設計は、種々の抗体および染料/着色の組み合わせの速度論および親和性に依存する。
【0128】
例えば、本発明のアッセイデバイスは、第1のマトリックス物質およびマトリックス物質に結合した1つ以上のレクチンを含むサンプル受容区域;および場合により第2のマトリックス物質を含み、既知の濃度の少なくとも1つのコントロール唾液サンプルを有するコントロール区域を包含する、試験片サンプルを含むことができる。この実施形態では、検出は、マトリックス物質とレポーターに結合した結合パートナーとを接触させる工程を含むことができ、ここで、結合パートナーは、レクチン結合成分に特異的に結合する。
【0129】
レクチン結合の量を可視化および定量する代替的な方法は、直接的に可視化できる粒子の使用を含む。すなわち、レクチンは、粒子に結合することができ、アッセイを行う際に試験片中で可視化することができる。本実施形態の別の例では、唾液サンプルを用いてスポットを作成したマトリックスは、第1の色を有する微粒子に接合した第1のレクチンと、第2の色を有する微粒子に接合した第2のレクチンとを含む混合物と接触させることができ、ここで、上記第1の色と上記第2の色とは、互いに区別することができる。1つの実施形態では、本試験は、歯科的なう食のリスクを決定するために行われる。この実施形態では、第1のレクチンはDFSとポジティブな相関関係をもち、第2のレクチンはDFSとはネガティブな相関関係をもつ。
【0130】
代替的な実施形態では、被験体における疾患のリスクを予測する方法は、被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液の液滴をマトリックス物質に適用する工程;上記マトリックスと、第1の色を有する微粒子に接合したレクチンの第1のセットおよび第2の色を有する微粒子に接合したレクチンの第2のセットの混合物とを接触させる工程であって、上記第1の色と上記第2の色とは、互いに区別することができる、工程;結合レクチンの量を、好ましくは裸眼による可視化によって検出する工程;およびコントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程を含み、上記結合レクチンの量が前記疾患のリスクの指標である。
【0131】
例えば、それぞれのセットのレクチンは、1個のレクチンまたは2個以上の異なるレクチンを含んでもよい。好ましくは、レクチンの第1のセットは、回帰式の貢献度に反映する比率で第1の色(例えば青色)の微粒子に結合しており、異なるレクチンの第2のセットは、第1の色とは区別可能で、回帰式の貢献度に反映する比率で第2の色(例えば黄色)の微粒子に結合している。本発明のアッセイにおいて2つの異なる色のビーズの混合物の使用は、例えば、青から緑を介して最終的に黄色の範囲までの試験片上での複数の色を生じる。特定の場合には、黄色は、白色ニトロセルロースマトリックス物質に対して見ることが困難であった。従って、いくつかの赤色のビーズを黄色のビーズに1:2の比率で添加して橙色を作成し、容易に見ることができるようになったが、この比率は青色を用いて緑色の中間体を与える。赤色および黄色を1:1またはそれ以上の比率で添加することによって、緑色よりも褐色の中間色を得る。この例では、赤色および黄色のビーズは同じレクチンに結合する。
【0132】
本発明に従う目に見える粒子は、染色された粒子のような直接的に可視化可能な微粒子(すなわち、マイクロメートルサイズの粒子)である。任意の好適な不溶解性粒子は、本発明の目的のために使用されてもよく、限定されないが、ポリマー性物質の粒子が挙げられ、このポリマー性物質の粒子としては、限定されないが、熱可塑性(例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ナイロン(登録商標)、置換スチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチルアクリル酸、ポリアルデヒド等のうち1つ以上)、ラテックス、アクリル、ラテックスまたは他の支持物質、例えば、シリカ、寒天、ガラス、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、カルボキシレート改質ラテックス、Sepharose、メタクリレート、アクリロニトリル、ポリブタジエン、金属、金属酸化物およびそれらの誘導体、シリケート、常磁性粒子およびコロイド状の金、デキストラン、セルロース、およびリポソーム、および天然粒子、例えば、赤血球、花粉、およびバクテリアが挙げられる。本発明において使用される微粒子のサイズは、唾液のレクチン結合成分の結合および検出を最適化するように選択され、典型的には、直径0.01〜10.0μm、好ましくは直径0.01〜1.0μm、特に、適切に決定されるようなさらに大きな微粒子またはさらに小さな微粒子の使用は排除されない。1つの実施形態では、微粒子は、実質的に球状である。本発明において好ましい微粒子は、着色した染料を含有するラテックスで構成される。
【0133】
本発明によれば、微粒子は、レクチンと結合または複合体化する。タンパク質を結合する、例えばレクチンを粒子に結合する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、1つの実施形態では、微粒子は、官能基、例えば、ヒドロキシル、カルボキシル、アミンおよびカルボキシレート基の導入によって修飾可能な表面に硫酸基による電荷を保有する。官能基は、広範囲のレクチンを微粒子に結合するために使用され、選択されたレクチンとの結合を容易にする能力に基づいて選択される。微粒子に対するレクチンの接合は、共有結合によって達成されるか、または適切な場合には、微粒子の表面へのレクチンの吸着によって達成される。微粒子に対するタンパク質の吸着または共有結合は当該技術分野で周知であり、さらなる説明は必要ではない。
【0134】
本発明に従うストリップ試験フォーマットは、限定されないが、以下に挙げられる多くの異なる適用のために好適である:
1)単純なストリップ:この試験は、歯科的に不足している生徒のために、う食の経験の一般的な予測(例えば、高い、中程度、低い、および非常に低い)を提供し、将来のう食の進行のリスクを評価するため、教室での設定において使用される。このバージョンはさらに、未発達領域において使用するのにも適切であり、その結果、限られた口腔の健康に関する資源を、ケアの最も必要なヒトに対して標的化することができ;それ故に、コスト的に有効なコミュニティーベースの健康プログラムをサポートできる。
2)視覚的な高スループット(HTP):このさらに精密な試験バージョンは、複数の検体技術と適合するが、将来のう食の経験の予測を導くう食のリスクの定量化が可能である。この試験は、他の健康試験と組み合わせて歯科医院で管理されてもよく、警告がある場合には、適切な対策を開始する。
3)高価な定量化デバイスを用いることなく、保存された唾液を用いた高スループット(HTP)半−分析的な視覚的試験
4)HTPの特徴を有する完全な分析試験。この複数検体の試験は、抗血清またはレクチンを含む捕捉工程を必要とする。
【0135】
好ましい実施形態では、試験片は、可能な限り多くの年齢、人種および民族で同様に適合する均一な設計を有する。
【0136】
1つの実施形態では、う食を予測するレクチンの2または3の濃度の既知のリガンド(すなわち、結合パートナー)を、上のようにマトリックスに組み込み、標準またはコントロールとして使用する。本明細書中で使用される場合、用語「リガンド」または「結合パートナー」は、別の分子または組成物の特異的な構造的局面を認識可能な分子対および/または組成物のメンバーを指し、ここで、結合パートナーは、特異的な非共有相互作用または共有相互作用を用いて互いに相互作用する。
【0137】
本発明の試験バージョンの1つの例は、累積的なう食の経験の一般的な予測を与えるために、および将来のう食の進行のリスクを評価する(例えば、将来のう食の進行について、リスクが高い、中程度、低い、非常に低い、またはゼロ)ために、非臨床的な設定において使用することができる。このバージョンはさらに、未開発領域において使用するのにも適切であり、その結果、限られた口腔の健康に関する資源を、ケアの最も必要なヒトに対して標的化することができ、それ故に、コスト的に有効なコミュニティーベースの健康プログラムをサポートできる。
【0138】
本発明の別の試験バージョンは、歯科的なう食のリスクを定量化し、後の年齢での将来的なう食の経験を予測するために使用することができる。この試験は、歯科医院で管理することができ、適切な場合には、適切な対策を開始する。
【0139】
なお別の試験バージョンは診断的であり、医学的に危うい患者、例えば、糖尿病またはAIDSを患う患者に用いられる。なお別の試験バージョンは、複数のサンプルの高スループット性が特徴である。この試験バージョンの使用は、唾液サンプルの集合をスクリーニングするために使用され、例えば、疫学的観察のために使用される。
【0140】
本発明はさらに、疾患を検出するための診断キットを提供し、当該キットは、以下:(a)唾液サンプルを集めるための手段;(b)上記サンプル中のレクチン結合成分の量を測定するための手段;および(c)上記記サンプル中の前記成分の量を比較するための経口流体標準を含む。本発明の1つの実施形態では、このキットはウエスタンブロットフォーマットである。本性質のキットにおいて、唾液サンプルの液滴は、固定化するマトリックス(例えば、ニトロセルロースフィルター)上に移される。
次いで、この液滴を1つ以上のレクチンでプローブ化し、次いで、レクチンを好適な方法を用いて検出することができる。
【0141】
(III.疾患を予防するための方法)
本発明はさらに、疾患のリスクを予防または減らすための方法を提供する。特に、本発明の組成物および方法は、口腔疾患および関連する疾患を予防するために使用することができる。一旦関連する疾患(例えば、心血管疾患および呼吸疾患)の症状が検出されると、処置は困難であり、高価である。従って、症状の前にリスクがある個人を決定することができればよりよい。この様式では、予防的手段がとられ、初期の介入方法が使用される。
【0142】
1つの実施形態では、本発明は、被験体における疾患のリスクを予防または減らすための方法であって、当該方法が、以下:上記被験体から分別されていない唾液サンプルを得る工程;上記唾液のアリコートと1つ以上のレクチンとを、上記1つ以上のレクチンが上記唾液のレクチン結合成分に結合可能な条件下で接触させる工程;結合レクチンの量を検出する工程;コントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対して上記結合レクチンの量を比較する工程であって、上記結合レクチンの量が前記疾患のリスクに比例する工程;および上記唾液中の上記成分の含量が正常コントロール(すなわち、試験される疾患をもっていない被験体)中に含まれるレベルよりも上または下である場合、上記被験体に治療試薬を投与する工程を包含する、方法を提供する。いくつかの実施形態において、正常なコントロールは経口流体標準を含む。
【0143】
(A.経口流体標準)
口腔液の分析のためのデバイスおよび方法の試験、較正および標準化のための種々の経口流体標準は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,736,322号および同第5,695,929号、Goldstein(本明細書中でその全体を参考として援用される)を参照)。米国特許第5,736,322号は、ムチンおよびタンパク質インヒビターの水溶液で構成される経口流体標準を記載する。好ましい口腔液標準はさらに、アミラーゼを含む。ムチンに関連するタンパク分解活性を減らすかまたは排除する任意のプロテアーゼインヒビターが適している。好ましいプロテアーゼインヒビターは、パパイン様(システイン)プロテアーゼを阻害する。特に好ましいプロテアーゼインヒビターとしては、限定されないが、ロイペプチン、アンチパイン、ベンズアミジン、キモスタチン、ペプスタチンA、およびアプロチニンが挙げられる。特に好ましい実施形態では、ムチンは、約0.001%〜約0.4%(w/v)の濃度で存在し;アミラーゼは、約0.1g/L〜約5.0g/Lの範囲の濃度で存在し;プロテアーゼインヒビターは、経口流体標準に添加される抗体のタンパク分解性を減らすかまたは防ぐのに十分な濃度で存在する。
【0144】
経口流体標準はさらに、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、ホスフェート、クロリド、カリウム、およびビカーボネートからなる群より選択される1つ以上の成分を含むことができる。経口流体標準はさらに、保存料、最も好ましくは、チメロサール、ゲンタマイシン、クロロヘキシジンジグルコナート、およびポリヘキサメチレンジグアニドからなる群より選択される保存料を含むことができる。
【0145】
標準的な経口流体標準は、血清、さらに好ましくはヒト血清を含むことができる。血清は、限定されないが、上に定義される検体のいずれかを含む検体に陽性または陰性であることができる。特に好ましい経口流体標準は、約0.1mM〜約2mMの範囲の濃度で亜硝酸塩を含み;約0.03mM〜約0.6mMの範囲の濃度でマグネシウムを含み;約0.5mM〜約5.0mMの範囲の濃度でカルシウムを含み;約2mM〜約80mMの範囲の濃度でナトリウムを含み;約1.8mM〜約25mMの範囲の濃度でホスフェートを含み;約10mM〜約56mMの範囲の濃度でクロリドを含み;約10mM〜約40mMの範囲の濃度でカリウムを含み;約2mM〜約35mMの範囲の濃度でビカーボネートを含む。この標準はさらに、保存料を含むことができる。
【0146】
同様に、経口流体標準はさらに、1つ以上の検体を含むことができる。好適な検体としては、限定されないが、HTV−1に対する抗体、HTV−2に対する抗体、HTLV−1に対する抗体、HTLV−2に対する抗体、Helicobacter pyloriに対する抗体、A型肝炎に対する抗体、B型肝炎に対する抗体、C型肝炎に対する抗体、measlesに対する抗体、おたふくかぜに対する抗体、風疹に対する抗体、コチニン、コカイン、ベンゾイルエクゴニン、ベンゾジアザピン、テトラヒドロカンナビノール、テオフィリン、フェニトイン、β−hCG、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、グルコース、インスリン、またはコレステロールからなる群より選択される抗体が挙げられる。
【0147】
米国特許第5,696,929号、Goldsteinはさらに、唾液収集キットの効力を測定し、分析方法を比較し、標準化するための唾液標準を記載する。一般的に、本発明の置換的な唾液標準は以下の組成を有する(成分はmmol/リットルとして現される):硝酸塩0.1〜0.2;マグネシウム0.15〜0.6;カルシウム0.5〜0.47;ナトリウム2〜80;ホスフェート1.5〜25;クロリド10〜56;カリウム13〜40;ビカーボネート2〜35;チメロサール0.01〜0.1g/100ml;アミラーゼ0.025〜0.1g/100ml;ムチン(5%)0.02〜0.5g/リットル;アンチパイン0.05mg/リットル;脱イオン水 1Lになるまでの量(約998ml)。
【0148】
1つの実施形態によれば、特定のアッセイを試験する目的で、所与の量の置換的な唾液標準を所定の量の検体とともに入れ、所望の希釈物を作成し、次いでアッセイを行う。置換的な唾液標準を、例えば、HTV抗体に陽性な血清、HIV抗体に陰性な血清、またはヒトの唾液中で元々検出可能な任意の他の標識検体とともに入れた。このような検体の代表例は、米国特許第5,103,836号(本明細書中でその全体が参考として援用される)に述べられている。
【0149】
(B.抗う食試薬)
当該技術分野で周知の種々の抗う食試薬は、本発明の方法を実施するために使用することができる。例えば、米国特許第6,136,298号、Gaffarら、(本明細書中でその全体が参考として援用される)は、実質的に水不溶性の非カチオン性抗菌薬剤、例えば、S.mutansおよびう食を阻害するためのトリクロサンまたはキシリトールを含有する口腔組成物を記載する。効果を考慮して特に望ましい、安全な水不溶性の非カチオン性抗菌薬剤および配合物の典型例を以下に示す:ハロゲン化ジフェニルエーテル;安息香酸エステル;セスキテルペンアルコール、例えば、ファルネソール、ネロリドール、ビスアボロール、サンタロール等の化合物;ハロゲン化カルバニリド;およびフェノール性化合物(フェノールおよびそのホモログ;モノ−、ポリ−アルキルおよび芳香族ハロ−フェノール;レゾルシノールおよびカテコールおよびそれらの誘導体;およびビスフェノール性化合物を含む)。非カチオン性抗菌薬剤は、歯磨き剤中に、歯垢を有効に防ぐ量で存在し、典型的には約0.01〜5重量%、好ましくは約0.03〜1.0重量%、最も好ましくは約0.3〜0.5重量%存在する。抗菌薬剤は、実質的に水不溶性であり、不溶解性とは25℃で水に約1重量%未満の溶解度であることを意味し、約0.1重量%未満の溶解度でさえあり得る。
【0150】
好ましいハロゲン化ジフェニルエーテルおよび最も好ましい非カチオン性抗菌剤はトリクロサンである。好ましい他の非カチオン性抗菌剤は、ヘキシルレゾルシノールおよび2,2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール)である。キシリトールは、約0.1重量%〜約40重量%の範囲の量で存在する場合、上に記載される口腔組成物の抗菌性および抗う食性を高める。
【0151】
米国特許第5,807,541号、Abergら、(本明細書中でその全体が参考として援用される)は、非ステロイド性抗炎症薬剤(NSAIDs)およびフルオリド試薬を用いた、う食の進行を阻害するための組成物および方法を記載する。NSAIDSは、以下の5つの集団に特徴付けすることができる:(1)プロピオン酸;(2)酢酸;(3)フェナム酸;(4)ビフェニルカルボン酸;および(5)オキシカム。
【0152】
プロピオン酸NSAIDは、遊離の−CH(CH)COOH基を有する非麻薬系麻酔薬/非ステロイド系抗炎症薬剤であり、場合により、薬学的に受容可能な塩の基の形態、例えば、−CH(CH)COONaであることができる。プロピオン酸側鎖は、典型的には、直接的またはカルボニル官能基を介して環系、好ましくは芳香族環系に接続する。例示的なプロピオン酸NSAIDSとしては以下が挙げられる:イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ピルプロフェン、カルポフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミのプロフェン、チアプロフェン、フルプロフェン、およびブクロクス酸。同様の麻酔性および抗炎症性を有する構造的に関連するプロピオン酸誘導体はさらに、この集団に含まれることが意図される。
【0153】
酢酸NSAIDは、遊離の−CHCOOH基を有する非麻薬系麻酔薬/非ステロイド系抗炎症薬剤であり、場合により、薬学的に受容可能な塩の基の形態、例えば、−CHCOONaであることができ、典型的には、直接的に環系、好ましくは芳香族環系またはヘテロ芳香族環系に接続する。例示的な酢酸NSAIDSとしては、限定されないが、ケトロラク、イリドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、アルクロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、フロフェナク、チオピナク、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキシパナク、およびフェンクロズ酸が挙げられる。同様の麻酔性および抗炎症性を有する構造的に関連する酢酸酸誘導体はさらに、この集団に含まれることが意図される。
【0154】
フェナム酸NSAIDは、置換N−フェニルアントラニル酸構造を有する非麻薬系麻酔薬/非ステロイド系抗炎症薬剤である。例示的なフェナム酸誘導体としては、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸が挙げられる。ビフェニルカルボン酸NSAIDSは、ビフェニルカルボン酸の構造を組み込んだ、非麻薬系麻酔薬/非ステロイド系抗炎症薬剤である。例示的なビフェニルカルボン酸NSAIDとしては、ジフルニサルおよびフルフェニサールが挙げられる。オキシカムNSAIDは、4−ヒドロキシル−1,2−ベンゾチアジン 1,2−ジオキシド−3−カルボキサミドのN−アリール誘導体である。例示的なオキシカムNSAIDは、ピロキシカム、スドキシカムおよびイソキシカムである。
【0155】
かなりの比率のL−ヒスチジン(すなわち、約14〜40モルおよびアミノ酸残基)を有する特定のヒスチジン豊富なポリペプチド(「HRP」、ヒスタチンとも称される)は、特にS.mutansおよびCandida albicansに対して、抗菌性であり、抗真菌性である(米国特許第4,725,576号、Pollockら、)。HRPは、感染場所、特に口表面の感染場所に投与される。送達は、任意の従来の方法によって行うことができ、好ましくは局所的手段で行うことができる。経口投与の場合には、歯磨き粉;うがい薬;義歯洗浄剤または浸漬剤;義歯接着剤またはセメント;および義歯内に関連するポリマーへの組み込み、特に義歯と歯肉とのの界面での組み込みが挙げられる。抗菌性および抗真菌性を有するヒスタチンに基づくペプチドペプチドはさらに、米国特許第5,912,230号;同第5,885,965号;同第5,631,228号;同第5,646,119号;および同第5,486,503号、Oppenheim et al.(これらのそれぞれは本明細書中にその全体が援用される)に記載される。
【0156】
米国特許第5,801,226号、Cumminsら、(その全体が参考として本明細書中に援用される)は、ナトリウムおよびフッ化スズ、アミンフルオリド、モノナトリウムフルオロ−ホスフェート、カゼイン、および歯垢バッファー、例えば、尿素、乳酸カルシウム、カルシウムグリセロホスフェート、ストロンチウムポリアクリレートを抗う食性試薬として記載する。
【0157】
米国特許第5,013,542号、Hayら、(その全体が参考として本明細書中に援用される)は、歯表面に対して疾患を生じさせる微生物の付着を阻害するための、プロリンが豊富なタンパク質の非免疫抗原性のアミノ酸セグメントを含有する組成物を記載する。このような微生物としては、限定されないが、S.mutans、S.sanguis、S.sobrinus、Actinomyces viscosus、およびBacteroides Gingivalisが挙げられる。アミノ酸セグメントは、酸性のプロリン豊富なタンパク質、例えば、ヒト唾液から誘導されるものから得ることができる。これらのプロリン豊富なタンパク質は、顕著な電荷を示し、構造的に非対称であり、アパタイト表面に対して例外的な反応性を示す。インタクトな場合、これらのプロリン豊富なタンパク質はさらに、アパタイト表面に対する微生物の接着を促進する。それらはヒトプロリン豊富なタンパク質から誘導されるため、それらは、ヒトによって「自身」であると認識され、それらに対する抗体はヒトにおいて報告されていない。ミネラル結合セグメントは、歯を処置するために使用される種々の組成物において、微生物の接着および/または増殖を制限するように、活性成分単独または他の化合物(たとえば、酵素、抗菌剤等)と組み合わせて使用することができる。
【0158】
活性成分は、セグメント化した天然または合成のプロリン豊富なタンパク質から誘導することができ、非免疫抗原性の成分が得られる。非免疫抗原性のアミノ酸セグメントは、種々の技術によって、例えば、クローニングによって、または化学的手段によって天然分子またはそれらのセグメントのアナログを合成することによって、得ることができる。非免疫抗原性のアミノ酸セグメントはさらに、酵素的に、または酵素トリプシンによってヒト唾液から誘導されるプロリン豊富なタンパク質を開裂させることによって得ることができる。プロリン豊富なタンパク質の除去された部分は、微生物結合部位を含有する。種々のヒトのプロリン豊富なホスホタンパク質を使用することができる。
【0159】
米国特許第6,231,857号、Shiら、(本明細書中にその全体が参考として援用される)は、歯科的う食の処置において使用可能なS.mutansの抗体を記載する。特に、Shiら、は、3つのモノクローナルIgG抗体を記載し、それらはそれぞれ、S.mutansの表面上の抗原に特異的に結合する。1つのモノクローナル抗体は、American Type Culture CollectionにATCC No.HB12559として寄託されたハイブリドーマによって産生され、SWLA1と命名されている。第2のモノクローナル抗体は、American Type Culture CollectionにATCC No.HB12560として寄託されたハイブリドーマによって産生され、SWLA2と命名されている。第3のモノクローナル抗体は、American Type Culture CollectionにATCC No.HB12258として寄託されたハイブリドーマによって産生され、SWLA3と命名されている。
【0160】
(IV.結果)
被験体において疾患のリスクを予測するための本発明の方法は、高い、中程度、低い、非常に低い、またはゼロのようなリスクレベルに従って疾患のリスクを評価するための方法を提供する。例えば、特定の集合において、0〜2DFSは、若年成人においてう食が進行するリスクが非常に低いことと関連する場合があり、一方、3〜8DFSは低いリスクと関連する場合があり、9〜16DFSは中程度のリスクと関連する場合があり、17以上のDFSは高いリスクと関連する場合がある。従って、例えば、1つの実施形態に従って、結合レクチンの量は、「非常に低いリスク集団」に匹敵する場合、この個人は進行するリスクが0〜2DFSであると予測することができる。
【0161】
別の実施形態では、被験体において疾患のリスクを予測するための本発明の方法はさらに、被験体における疾患の将来の進行のリスクを評価する工程を含むことができる。例えば、将来のリスクを評価する方法は、ある範囲の疾患重篤度を表す被験体の集団から誘導された回帰分析に対して、結合量を比較する工程を含むことができる。
【0162】
1つの実施形態では、本発明の方法は、様々な年齢および性別の情報を持つ唾液サンプルに結合するレクチンの量と、歯科的なう食(例えば、早発性う食、成人う食、歯根う食、DFT、DMF、DMFS、dfs、dft、dmft、dmfs、およびdfs/t)の数との相関関係を提供する。回帰分析のRは、好ましくは少なくとも0.3(すなわち、0.3および1を含む0.3〜1の間の任意の数)である。例えば、3レベル試験では、Rは、少なくとも0.9であり得;4レベル試験では、Rは、少なくとも0.98であり得;5レベル試験では、Rは、少なくとも0.99であり得る。
【0163】
概して、本発明の1つの方法によれば、唾液の1つの液滴をマトリックス膜に適用する。次いで、この液滴および標準ドット(すなわち、コントロール被験体由来の唾液サンプル)を単一のレクチンまたは混合物としてともに作用して単一の視覚試験報告を得るレクチンの特定のパネルでプローブ化する。標準は、できるだけ多くの固有の集団が見出されるのに適切なように較正される。1つの実施形態では、上記試験は、均一の設計の試験を用いて全ての集団に適合するように普遍化される。
【0164】
結合レクチンの量は、例えば、結合した酵素、例えば、アルカリホスファターゼまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼを用いて、結合した蛍光色素、例えば、FITCまたはAMCAによって、または着色した微粒子に結合するレクチンを使用することによって、可視化される。1つの例において、様々な年齢および性別を持つレクチンの結果は、7〜9歳の中国人の少女およびヒスパニック系の少年、および20〜25歳のアジア人およびカフカス人の男女を含む個人の集団について、0.90のRを有してDFTとの相関関係を与えた。
【0165】
7〜25歳の範囲でのレクチン試験は、DFTの正しい数を予測するけれども、年齢にかかわらずDFTの数を単純に予測するため、個人のリスクレベルを予測するのには有用ではない。例えば、この特定の回帰式は、5DFTを有する25歳は4DFTを有する7〜9歳よりも上となるが、前者はその年齢の集団では低い〜中程度のDFTであり、後者はその年齢では高い集団である。しかし、年齢が回帰式から除去され、ヒスパニック系および中国人の7〜9歳がともに1つの集団とみなされ、20〜25歳の中国人およびカフカス人が1つの集団とみなされる場合、3つのレクチンのパネルおよび性別を用いて以下のように達成された。子供についての回帰式は、高い、中程度、低い、および非常に低いの4レベルのリスク評価系に対して、0.972のRを与え、2.96×10−5のP値を与えた。若年成人についての回帰式は、同じ4レベルのリスク評価系に対して、0.983のRを与え、6.18×10−4のP値を与えた。
【0166】
いくつかの異なる試験フォーマットを特定の適用のために使用することができる。例えば、1つの試験バージョンは、歯科的に不足している生徒のために、および将来のう食進行のリスクを評価するために、う食の経験の一般的な予測(例えば、高い、中程度、低い、および非常に低い)を提供するための教室での設定において使用される。このバージョンはさらに、未発達領域において使用するのにも適切であり、その結果、限られた口腔の健康に関する資源を、ケアの最も必要なヒトに対して標的化することができ;それ故に、コスト的に有効なコミュニティーベースの健康プログラムをサポートできる。別のさらに精密な試験バージョンは、複数の検体技術と適合するが、将来のう食の経験の予測を導くう食のリスクの定量化が可能である。この試験は、他の健康試験と組み合わせて歯科医院で管理されてもよく、警告がある場合には、適切な対策を開始する。第3のバージョンは、高価な定量化デバイスを用いることなく、保存された唾液を用いた高スループット(HTP)半−分析的な視覚的試験である。4番目のバージョンは、HTPの特徴を有する完全な分析試験である。元々の試験のこの改変の使用は、唾液サンプルの集合をスクリーニングするために標的化され、例えば、疫学的観察のため、および開発のために想定されてもよい。
【0167】
それに加えて、この試験の使用は、う食の経験が相関関係にあるか、またはう食の経験がそれらのリスクの指標であるか、またはそれらのリスクと関連する、さらなる疾患のリスク評価に適用することができる。
【0168】
10歳未満、10歳代、および若年成人において、う食の数を単純に数えることによって、個人のリスク予測を支持するのに十分高い相関関係を達成するのには、歯は十分ではなく、および/または歯についての暴露時間も十分ではない。本発明の方法は、う食リスクの有意な個人の診断を提供することによって、これらの年齢の不確実性を克服し、より初期の介入および予防を導く。
【0169】
(V.本発明の利点)
本発明の方法、試験デバイス、および診断キットは、従来の方法および試験デバイスと比べて、以下の利点を有する。第1に、科学的証拠は、MUC7ムチン濃度が、唾液中のS.mutansのタイターの鍵となる決定因子の1つであり得ることを示唆する。従って、本発明は、S.mutansタイター単独よりも初期の段階でう食発生プロセスの予測および診断を可能にし、予防のさらなる道を提供する。
【0170】
第2に、本発明の実験結果は、DENTOCULT(R)Strip Mutans(「SM」)試験片(Orion Diagnostica,Finlandによって製造)のようなS.mutansを検出するための現在利用可能な技術と比較して、う食経験に対して明確な数量関係を示す。せいぜい、DENTOCULT(R)SM試験片は、唾液中のS.mutansタイターを、高い、中程度、低いおよびゼロに分けることができるのみである。本発明はさらに、単純性および使用の容易性のため、DENTOCULT(R)片よりも利点を有する。好ましい実施形態では、本発明の方法は、技術者ではない人による非臨床的な設定において評価することができる。対照的に、DENTOCULT(R)SM片は、滅菌状態で培養し、訓練され経験をつんだ人によって評価されなければならない。
【0171】
本発明はさらに、被験体における疾患のリスクを予測し、診断するための非侵襲的な組成物および方法を提供する。多くの分析方法が、微生物の組織および流体における種々の検体の存在または非存在を決定するための、および/または量を定量するために開発されている。現在、ほとんどの診断試験は、血液、尿、糞便物質、または組織生検を用いてなされる。しかし、これらの物質に基づく試験は、プライバシーのかなりの侵害となり、顕著な安全上の問題を有する(特に血液の試験で)。対照的に、試験のために、唾液および/または粘膜の漏出液を含む口腔液を集めることは、比較的プライバシーの侵害とはならず、比較的安全であり、相対的な容易さで迅速に目的を果たすことができる。
【0172】
さらに、本発明の方法およびデバイスは、初期の疾患を検出し、個々の患者の薬物に対する不利な応答のリスクを定義し、治療の進行を監視し、処置の結果を決定するための新規な診断試験を提供する。本発明の唾液による診断方法およびキットは、選択性、感受性、適切な応答時間、ダイナミックレンジ(目的の値)、全体的なサンプリング、信頼性または安定性、および複数の基質を同時に評価する可能性を提供する。
【0173】
ムチン試験は、米国特許出願第20003/0040009Alに記載されるように、全ての人種または民族には適用されない。本発明は、種々の人種および年齢の集団の中で、累積的なう食病歴、すなわち、DFT(う食した永久歯および充填した永久歯)を十分に等しく予測することができる普遍的な試験を提供することによって、この課題に対処する。 例えば、本発明の1つの実施形態において、この試験は、ヒスパニック系および中国人の7〜9歳の子供およびアジア人およびカフカス人の20〜25歳の成人において累積的なう食病歴を十分に等しく予測した。
【0174】
歯科医師は、う食の数を単純に数えることによっては、将来のう食の進行について、リスクが高いまたは低い患者を確実に同定することはできない。このことは、DFTの範囲が狭すぎて、う食の経験の異なるレベルを区別するための統計学的な有意性を達成することができないため、特に10歳未満の後半、10歳代、および若年成人において正しい。本発明は、この診断情報で得られない部分を提供する。このことにより、より初期の、より良好な、さらに個人的な処置計画が導かれる。試験の結果はさらに、予防的な測定値の頻度および病原力を個別化するための理論を提供する。本明細書中に記載されるこの試験の助けを得て、歯科医師は、最もリスクのある患者でさえも、それらの個別化された介入が新しいう食の進行をなくす程度まで口腔の健康ケア管理を引き受けることができる。
【0175】
本発明の別の適用は、いわゆる第3世界の環境下においてであり、本発明の試験は、医師でない人による非臨床的な設定における最も高いリスクの個人を同定するために使用することができる。高いリスクをもつ子供および若年成人の同定により、標的化された処置を可能にし、限りのある資源の有効性を最大限高めることができる。
【0176】
以下の実施例は、本発明を説明し、例示するために付される。これらの実施例は、本発明をいかなる様式でも限定するものとみなされない。種々の改変は、本発明の範囲内で可能である。
【実施例】
【0177】
(実施例1)
本研究の第1の目的は、USC School of Dentistryで80〜100人の学生を雇い、1991人の成人データセットから同様の組成の同世代の集団まで、発明者独自の発見を確認し、概念を広げることであった。
【0178】
本研究の第2の目的は、7〜8歳の子供において同様の研究を行い、DFTと若年成人において見られるムチン濃度との相関が適用されるか否かを学ぶことであった。このデータの分析は、実施例2に反映される新しい洞察を与えた。
【0179】
第3の目的は、最初に、DFTの予測と最もよく関連すると思われるMUC7およびMUC5Bムチンの成分をよりよく理解することであった。この目的の第2の局面は、これらの要素を商業的な潜在性を有するプロトタイプ試験に組み込むことであった。
【0180】
(A.MUC7およびMUC5Bムチン濃度に関連する最も予測される要素の同定を導く炭水化物研究)
1.ドットブロット:第1の目的は、Stains−allによって測定されるようなDFTおよびムチン成分が若年成人のカフカス人において注記される相関関係と一致する個人のパネルに対して、さらに広範囲の属性、例えば、唾液中のムチンの全シアル酸、全炭水化物、および全アポムチンを評価することであった。第2の目的は、種々の量におけるMUC7ムチン上に存在することが知られているLewisおよびT抗原の含量の関係を決定するために、レクチンのライブラリーを使用し、この試験によってう食にかかりやすい個人およびう食に耐性のある個人を同定することであった。レクチンのこのライブラリーはさらに、α−2,6およびα−2,3結合したシアル酸を区別する可能性を含んでいた。
【0181】
全唾液0.2μLを用いたパイロット実験によって、レクチン研究が有望であり、う食の耐性と関連する主要な因子を定量するための単純なアプローチであることがすぐにわかった。本実験の結果は、図1に示される。レクチンパネル(Vector Laboratories)は、異なる構造のシアリル化T抗原についてJacalin(Jackfruit種のレクチン)およびACL(Amaranthus Caudatusレクチン)、異なるLewis抗原についてAAL(Aleuria Aurantiaレクチン)およびUEA I(Ulex Europaeus Agglutinin I)、α−2,3活性をいくらか有する-主にα−2,6結合したシアル酸についてSNA(Sanbucus Nigraレクチン)、およびα−2,3結合したシアル酸についてMAL I(Maackia Amurensisレクチン I)を含んでいた。2人の少年の唾液はさらに、実質的に異なるレベルのムチン(MUC7が3078U/mL[被験体番号15] 対 407U/mL[被験体番号27]、およびMUC5Bが3725U/mL[被験体番号15] 対 696U/mL[被験体番号27])を含んでいた。このパイロット研究は、全唾液中のα−2,3結合したシアル酸の定量が、2つのムチンに対するStains−all結合と同様に、結合DFTを予測する能力を持ち得ることを示唆していた。実際に、被験体番号15および27についてのスポット間の強度の違いは6.9倍であり、それらの併せたStains−allから誘導されたムチン濃度間の違いは6.2倍であり、それらは非常に類似している。他のレクチンにおける違いも見ることができる。
【0182】
同じ2つの唾液を用いて、0.2、0.1、0.05、および0.02μLの当量を5.0μLの等価なスポット体積まで希釈してレクチンのパネルを繰り返した。これにより、それぞれのレクチンおよび被験体について濃度シリーズを得た。被験体番号15の唾液を用いて全てのレクチンについて得られた直線回帰は、>0.93のRを有していた。報告される相対的な違いは、ドットブロットシステムの制限内で繰り返される。この実験の結果は表1にまとめられている。この実験および後の実験において、Griffin番号15の唾液を用いたそれぞれのレクチンの回帰からの0.2μLの強度値は、簡便のために値100が割り当てられ、全ての他のサンプルは、唾液の値および体積に比較して正規化される。
【0183】
(表1)
(Griffin被験体番号15および27を用いたレクチンパネルの評価)
【0184】
【表1】

この実験は、α−2,3結合したシアル酸の量が2つの唾液の間の最も明瞭に区別される違いであるという以前の実験からの論争を確認する。SNA結果はさらに、シアル酸の突出を支持する。AALおよびUEA Iは、Lewis抗原の量、特にα−1,2結合フコースを用いた種類が、ムチンとDFTとの関係においていくらか混ざり合っていてもよいことを示唆する。一方、Jacalinによって認識されるT抗原の形態の定量はネガティブ因子であってもよい。この実験に部分的に基づいて、ACLはレクチンパネルから低下し、MAA(Maackia amenurensis,EY Laboratories)は唾液のさらに広いパネルの評価のために追加された。さらに、MAAは、MAL Iと同様に、α−2,6結合したシアル酸よりもα−2,3結合したシアル酸について優位であることを示すが、本出願において有用であり得る他の違いも有する。
【0185】
唾液のパネルは、5つの異なる集団から本願発明者らの最初の研究(1990)から現在までの時間間隔で集められた。パネルメンバーの半分は、MUC7ムチン濃度とDFTとの逆数関係を示し、残りは、直線的な関係、例えば、高いムチンおよび高いう食、または低いムチンおよび低いう食を示した。それぞれの被験体の特性および6つのレクチンに対するそれぞれの相対的な応答を表2に示す。
【0186】
唾液標準は、凍結保存されている限り1990年からムチン濃度が安定したままであることを示す。レクチンアッセイシステムは単純であり、確立された分析系の正確度を持っていなかったが、相対スケールでの繰り返し可能なデータを得た。
【0187】
Griffin被験体番号15は、以下の量の唾液を用いて全てのレクチンについて相対的な標準曲線を得た:0.2、0.1、0.05、および0.02μL。全てのスポット体積は5.0μLであった。サンプルをニトロセルロース上で乾燥させ、レクチン−ビオチン複合体と反応させた。洗浄後、ニトロセルロースをアビジン−アルカリホスファターゼ中に入れた。ある範囲の色強度が存在するまで続けることが可能なNBT/BCIPを用いて色現像を行った。ドットブロットの直径の横断面で平均色強度を測定することによって定量を達成した。
【0188】
(表2)
【0189】
【表2】

反応性のパターンは、それぞれのレクチンで異なっている。高いまたは低いDFTの評価は、それぞれの被験体の仲間集団内のDFTの相対数に基づいていた。高いタイターのS.mutansとは>10cfuを指し、低いタイターとは<10cfuまでを指す。S.mutans研究からの唾液は、被験体の年齢およびそれらのDFTを知ることができなかったため、以下の計算において含まれていない。DFT(HまたはL)との相関関係の程度はそれぞれのレクチンについて異なり、残りの唾液について表3に示す。
【0190】
(表3)
(表2において報告される全唾液に対するレクチン親和性の回帰分析および相関分析)
【0191】
【表3】

唾液パネルの多様な性質は、MUC7またはMUC5Bムチンもそれらの2つの組み合わせも、DFTと弱い、有意でない相関関係を有していないという事実によって証明された(表3、行A)。MAL Iは、高いDFTと低いDFTとの間の比較的狭い範囲のレクチン反応性を除き、DFTと最も高い個別の相関関係を示し、これらは重複していない(表3、行B)。SNAは、DFTと次に良好な個別の相関関係を示す(表3、行C)が、MAL Iと組み合わせると、DFTに対する関係の強度は高まらない(表3、行D)。MAA、UEA I、およびAALはすべて、測定可能な相関関係を示すが、有意性は得られていない(表3、行E〜G)。Jacalin(JAC)はDFTと相関関係をもたない(表3、行H)が、MAL Iを含む場合にはその相関関係に実質的に貢献しているように思われる(表3、行I)。複数の回帰においてAALを含むと、レクチン単独で最も高いRが観察された(表3、行J)。
【0192】
興味深いことに、MAL I、SNA、MAA、UEA I、およびAALは全て、互いに有意に相関関係にある。JACは、他のレクチンのいずれとも有意に相関関係をもたない。これらの結果は、シアル酸に特異的なレクチンが主にLewis抗原と関連し、T抗原とは関連しないことを示唆する。しかし、他のレクチンはいずれも、MAL Iと組み合わせた場合に相関関係が増加しなかった。例外は、MAL IおよびJACを混合した後、AALを入れると、さらにかなりの向上に寄与する(表3、行IおよびJ)。
【0193】
ムチン濃度と比較した場合に、SNA、MAA、AAL、およびMAL IはそれぞれMUC5Bムチン濃度と有意に相関関係にある。MAA、AAL、およびMAL Iだけは、MUC7ムチン濃度との相関関係を示した。MAL I反応性およびMUC5Bの通常でない組み合わせにおいて、DFTに対する最終的な関係はRが0.59になり向上した。
【0194】
ムチンの1つが回帰式を高める可能性は、年齢および性別を含み、2つのムチンを含むサーチを広げる。この結果により、独立変数の組み合わせにより0.932のRが得られることがわかった。回帰式の有意性は、正規化、一定の分散、および出力試験を満足するp=0.015であった。独立変数の回帰式に対するそれらの相対貢献度は括弧内に示され、MAL(49%)、JAC(6%)、MAA(3%)、MUC7ムチン(14%)、MUC5Bムチン(6%)、性別(10%)、および年齢(12%)である。回帰式を用いてそれぞれの独立変数の貢献度を標準化することによって、次いで、それぞれの個人についてこれらの値の合計を出すことによって、関係の複雑な結果が、図2に示されるような単純な直線回帰グラフによって可視化可能である。このグラフは、少なくとも3つの異なる民族、中国人、ヒスパニック系、およびカフカス人で、子供および若年成人の男女について、高いう食経験および低いう食経験との間に重複が存在しないことを示す。集合の信頼度の感覚は98%でプログラムされた。従って、上述の情報が与えられ、高いう食経験および低いう食経験の予測は、高い正確度を有してなすことができる。図2はさらに、より多くのデータが入手可能になるにつれて、う食経験の中程度の範囲が非常に有意性を有して挿入される能力を示す。図3に示されるデータは、MUC7ムチン濃度に関してほぼ反対の値を示す個人であっても、う食経験を高い確度で予測するのに必要な情報がデータ中に含まれることを示す。
【0195】
複数の独立データ入力を使用する高スループット適用のための分析試験の開発は、自動化フォーマットで複数の検体の試験を必要とする。α−2,3結合したシアル酸のサブセットについてのMAL I親和性は、DFTの予測に対して強くリンクする。ストリップ試験のための代替的なアプローチは、上に使用されるようなドットブロットアプローチであり、これは、分別されていない全唾液を用いて行う。このことは、開発手順、製造手順、パッケージ化手順、および貯蔵手順を非常に単純化する。好ましい試験片は、Rが0.90以上のもである。
【0196】
この実施例から得られる情報は、2つのムチンが、カフカス人においてMAL I反応性の一次キャリアであるのに対して、アジア人においては異なる分子が関与していてもよい可能性を示唆する。実施例2において記載されるウエスタンブロット分析は、この観点において確定的な情報を与えた。
【0197】
(B.上述の試験に適用可能なムチンの予測因子についての単純で、信頼性の高い開示内容。)ドットブロットを定量する本願発明者の経験は、このことが、当時広く使用されていたPAGEアプローチよりもさらなる試験を開発するためのさらに大きな可能性を現すことを示した。図4および5は、マウスの舌下ムチンを使用するモデル系において、直線的な潜在能力および異染的な色オプションを示す。カフカス人の若年成人においてMUC7ムチンとDFTとの関係がある限り、濃度におけるたった3倍の違いが、3つの有意な種類のう食経験を区別するのに必要であった。ドットブロットは、3つのリスクレベルを評価するために必要な2つの閾値濃度を容易に較正することができる。
【0198】
図6は、ドットブロットフォーマットの例を示す。図1および表1に特徴付けられる2つのヒスパニック系の少年由来の唾液を用いて、それらの全唾液の乾燥した液滴をMAL I−ビオチンでプローブ化した後、アビジン−AMCAによってプローブ化した。その結果は、長波長のUV照射によって得られる蛍光の直接的なデジタル画像である。その違いは著しく、約6倍の違いを示す。順次4倍に希釈した同種唾液サンプルはさらに、その違いを視覚的に区別することが容易であることがわかる。
【0199】
(実施例2)
本研究の目的は、個人の累積したう食経験を予測するだけでなく、さらに重要なことには、将来のう食の進行のリスクレベルを評価するための、単純で非侵襲性の唾液試験のいくつかの反復の開発を「普遍化し」、完成させることであった。この試験は、通常の診断手順の健康スクリーニングとして、およびハイリスクの個人において同定、処置、および予防を高めるためのさらに広い口腔健康キャンペーンにおいて、歯科での実施に組み込むことができる。これらの試験および技術の組み合わせによって提供される診断スクリーニング情報は、う食にかかりやすい子供、10歳代、および若年成人の同定において健康ケア提供者を助ける。このことは、歯科的な開発段階で、外科医の検査単独または脱落歯におけるdmfs(う食、欠損、および充填した表面)および永久歯におけるDMFSが、リスクのある個人を統計的な確度をもって同定できない場合、最も有用である。
【0200】
ムチンに関連してもしなくてもよい唾液中のさらなる因子が同定され、適切なう食の予測についてレクチン親和性によって評価され、次いで、商業化に好適なう食のリスク試験が開発された。このアッセイは、MUC7およびMUC5Bムチン単独よりもさらに良好でさらに広くて起用可能なリスク指示薬である因子を提供した。これらの因子を用いて、ムチンが累積のう食経験の予測因子になり得ない子供および若年成人の集団は、ムチンが指示薬である個人とともに集団化されている場合でさえ、高い確度をもって同定可能である。これらのさらなる因子は、ムチンよりも困難性が低い状態で定量化可能であり、単純で信頼性の高い試験を開発するためのさらに大きな機会が存在する。
【0201】
(A.背景)
1.う食のリスク予測をもたらす疫学的研究:う食のリスク評価のために多くのモデルが作成され、それらはまれに設計において同一である。1989年のう食のリスク評価の総説の文献は、以下のことを結論付けた:(1)臨床的な変数はよりよい予測因子であり、(2)最も有意な指示薬は過去のう食経験であり、(3)回帰分析は好ましい統計学的アプローチであった(Newbrun,E.and Leverett,D.,Risk Assessment in Dentistry,Bader,J.D.,ed.Chapel Hill:University of North Carolina Dental Ecology,1990,p.304;Powell,L.V. Community Dent.Oral Epidemiol.26:361−371(1998))。1989年〜1997年の間に出版された文献は、う食のリスク予測における過去のう食経験の顕著な役割を確認した(Powell,前出)。リスク評価のためのもっとも正確なモデルはさらに、バクテリアレベルを含んでいた。長期的な視野からこの情報を評価することによって、Powell(前出)にまとめられているように、本願発明者は、過去のう食経験は、それぞれの年齢集団において同定される有意性をもつ単なる予測因子であることを注記した。従って、過去のう食経験またはDFTがう食のリスクレベルを予測可能な程度まで、過去のう食の経験またはDFTの予想がさらに予測される。
【0202】
Powellによる総説はさらに、若年成人(18〜33歳)のう食のリスク研究を行っていないことを注記する。別の関連する観察は、標題が「Oral Health of United States Adults」のNIHがスポンサーとなる疫学的研究でなされた(A.J.Millerら、Oral Health of U.S.Adults,NIDR.87−2868(1987))。ここで、冠状表面上のう食表面および充填した表面の測定値(DPS)が正確な、約40歳までのう食形成の初期事象の直線的な記録であることが示された。この年齢より上では、この臨床的な指示薬は、長期間のう食形成の指示薬としてはそれほど信頼性がない。本願発明者によって行われた研究において含まれる被験体は、う食のリスクを予測するための文献において存在する年齢集団のギャップを埋める年齢である18〜33歳の範囲で、唾液ムチン濃度とDFTとの間に強い相関関係があることを発見した。それに加えて、この年齢の集団は、最初のう食経験の正確な記録が最大の範囲の表現に近づく時期を具体化すると考えられる。
【0203】
2.う食のリスクの予測の科学およびう食発生の複数の因子の性質:この分野における近年の総説は、う食発生が複数の因子によるものであるという長期間維持されてきた見解を維持している(M.Lenander−Lumikari and V.Loimaranta,Adv.Dent.Res.14:40−47(2000))。しかし、同様に重要なことは、相関関係が決定されないか、または任意の明らかな既知の因果関係を必要としないという原理である。多くのう食のリスク研究において試験された変数は、しばしば、う食発生に対する任意の明らかまたは既知の直接的な関係からずいぶんかけ離れている(Powell,前出)。従って、提案されたプロジェクトの実際的な予測テーマのために、う食の複数の因子の性質およびDFTと唾液成分の濃度との決定の高い係数(R)を合理的に説明する仮説を開発することは成功するために重要なことではない。DFTにおいて約90%の偏差を説明するモデル、例えば、24〜33歳についての本願発明者の報告中に含まれるモデルは、う食発生が複数の因子によるものであることを示唆する既存のデータと反しない。Lenander−LumikariおよびLoimaranta(前出)による総説は、う食形成を支持する初期の臨床的な徴候以外、例えば、歯垢の蓄積およびエナメル質の腐食を、個人におけるう食形成の開始時に、広範囲な、統一された効果としてまとめることができることを結論付けた。今までは、低い効果因子が同定されていたのみで、う食発生に対する種々の因子の相対効果の定量的な評価は完全に取り残されていた。任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、本願発明者らは、この取り残された空間を埋め、有意に予測する能力を有する回帰分析を可能にする、唾液中のムチンおよび他の成分が重要な因子であると考えている。
【0204】
3.口腔の健康ケアを高めるためのう食のリスクについての唾液試験のための能力:将来のう食の進行のリスクレベルを予測する能力は、「精密に調整される」予防の機会を作る。科学的に基づく、個別に適切な療法および予防処置の間隔、例えば、1年に4回 対 1年に2回または1年に1回の訪問は、それぞれの患者の長期的な処置/予防計画に組み込むことができる。このことは、成長するにつれてかなりの数の新しいう食が進行すると予測される子供および若年成人にとって特に適切である。
【0205】
試験が利益を与える口腔の第2の健康ケア分野は、第3世界環境におけるハイリスクの子供および若年成人の標的化された処置および予防である。ここで、標的化された適用により、限りのある資源の有効性を最大限にすることができる。
【0206】
(B.ムチン濃度に基づくモデル3レベルリスク試験)
累積するう食経験を予測するためのモデルを、本願発明者らの初期の若年成人集団から開発した。このモデルは、24〜33歳の集団におけるMUC7ムチン濃度に対して標的化しており、その範囲に限定されている。しかし、この目的を達成するためのデータを用いた一連の作業において、予測するための将来のモデルを構築することに対して一般的に適用可能ないくつかのストラテジーが明らかになった。これらの1つめは、有意な予測の3つの重複しない区域の目的地点が個人の同じ集団においていくつかの様式で達成され得ることである。それに加えて、独立変数の異なる組み合わせは、個人の異なる集団において3レベルの目的地点を達成するために使用されてもよい。この特定の回帰分析において、高いう食集団と低いう食集団との間でムチン濃度においてたった3倍の違いしかなかった。従って、分析データが加工され、これらの閾値が同定されると、将来の試験は、3レベル試験を完全にするために2つの閾値濃度で較正される必要がある。最後に、ムチン濃度およびDFTが集合中で連続している場合、そのモデルによって説明されなければならない個人のボーダーラインを正当化する。
【0207】
24〜33歳について開発されたモデルは、以下のとおりである:(1)<400MUC7ムチン単位/mL=高いリスク/う食にかかりやすい(25%);(2)400〜1200MUC7ムチン単位/mL=中程度のリスク(58%);および(3)>1200MUC7ムチン単位/mL=低いリスク(17%)。この例において、高いDFTと中程度のDFTとの間の閾値の濃度、および中程度のDFTと低いDFTとの間の閾値の濃度は、回帰直線の上を横切る平行の信頼間隔線上の点と一致する。ボーダーライン濃度のムチンを有する個人は、重篤な健康結果を有する個人を低く予測しすぎる誤りを防ぐために、次に高いリスクカテゴリーに置かれるのが最良である。リスクレベルの次に、上に列挙される割合は、リスクレベル内に存在するモデル集団の比率である。分布は、一般的な集団において見いだされる分布と同じである(U.S.Dept. of Health & Human Services.National Institutes of Health Consensus Development Conference Statement.Diagnosis and Management of Dental Caries Throughout Life(2001))。このモデルにおいてカバーされる主要な要素は、う食のリスク試験のために利用される任意の他の予測関係において再現することができる。
【0208】
12年前の若年成人集団において気づいた別の現象は、検出可能でないMUC7ムチンを有する個人において、21〜33歳の範囲の年齢でDFTは完全に相関関係にあるということであった(R=1.00)。このことにより、この集団におけるう食の進行速度を1年あたり0.83の新しいDFTであると計算することができた。このことが完全に予期しない出来事ではなかった場合、本願発明者らは、本願発明者らの現在の被験体において、比較的迅速な予測可能な速度で新しいう食が進行するサブ集団を見出す。このような集団は、時間、協力者の数、および潜在的な統計学的確実性の両方において、潜在的なう食の予防の臨床的な研究を非常に容易にする。
【0209】
商業化に進むための任意の試験のために、試験および予測モデルを確認しなければならない。このことは、データ収集および分析の「見えない」2分の1についての受け入れられたプロトコルだけではなく、種類、頻度、および大きさを明らかにする分析だけではなく、感受性および特異性の通常の試験のための分析によって達成される。
【0210】
(C.レクチンに基づく3レベルう食リスク試験を達成する試験組成物)
唾液の1個の液滴を用いるう食リスク試験の開発は、ストリップ試験の設計および使用を単純かすることに加えて、唾液の予測因子を「グローバル化し」、ムチンが予測因子のキャリアだけではあり得ない可能性を適合させるため、特に魅力的である。点における症例は、Griffin被験体番号3、4、5、10、および13である。これらの子供たちは、ムチン濃度と若年成人のカフカス人の元々の研究において同定されるDFTとの逆数関係に対して完全に反する。被験体3、4、および5は、ムチンの濃度が比較的高く、それらの年齢の割にはDFTも高く、被験体10および13はムチンの濃度が比較的低く、う食はゼロである。しかし、唾液パネルがレクチンでスクリーニングされる場合、因子の組み合わせをそれぞれの個人のう食の負荷を正しく予測するようにアセンブリすることができる。このことから、本願発明者は、ムチン以外の因子がさらに予測因子を有する場合があり、これらの要素と関連する分子中の個々の違いが存在し得ることを結論付けた。この可能性は、図3および表2において示されるように、予測回帰式に対して寄与することが示されているレクチンを用いて、パネル唾液のウエスタンブロット分析によって開拓された。
【0211】
図2に示される回帰式は、3つのレクチン、両方のムチン、および2つの「固定した」変数、年齢および性別からの入力を使用した。分析試験(対ストリップ試験)に関して、ドットブロット高スループットフォーマットが使用される場合、要求されるレクチン情報は、上述のような複数のアッセイによって獲得することができる。ムチン濃度は図4および5に示されるように、抗体結合によって獲得することができる。これらの全てのアッセイは、同じアビジン接合したレポーターを使用し、全てドットブロットフォーマット内で作用することが示された。固定した変数は解釈が容易であり、個々の予測をもたらす分析へと因数分解することは容易である。
【0212】
ストリップ試験の設計は、好ましくは、有意性のある3つの区域を達成しつつ、単純性および使用の容易性を提供する。好ましくは、ストリップ試験は、2つの標準的なスポットと比較可能な1個の全唾液の液滴を用いて達成され、この2つの標準的なスポットは高いう食性リスクと中程度のリスクとの間、および中程度のリスクと低いリスクとの間の2つの閾値を現す。1工程の報告および視覚的な読みはさらに望ましく、以下に議論される。若年成人のデータを用いた分析のために注記されるように、異なるストラテジーまたは独立変数の組み合わせによって、目的は等しく達成可能である。唾液パネルの場合において、Rは、民族を含ませることによって、実質的に0.932から0.983に向上させることができる(図2)。このことは、Rの低下が比較的小さいままで(0.961)式からMUC5B濃度を取り除く機会を提供する。0.90以上のRは、予測の有意な3つのレベルを達成するためのベンチマークである。MUC7ムチン濃度が式から取り除かれる場合、結果のたった17.2%に対して影響を受けるにもかかわらず、Rは0.421に低下する。
【0213】
本研究の1つの目的は、さらなるレクチンを用いてスクリーニングして、MUC7ムチンの置換物を見つけることを含んでいた。レクチンおよび試験のための固定された変数のみを使用しての成功は、重要なレクチンの混合物で構成されるストリップを反応させるために、回帰式に対するそれらの寄与に等しい比率で較正して、単一のレポーター溶液の使用を可能にした。全てのレクチンが同じレポーター分子に接合する場合、ドットの強度はそれらの合計に等しくなるべきである。さらなる較正は、試験範囲内の適切な応答を達成する。
【0214】
ストリップ試験の可能な設計のために利用可能な多くの他のオプションが存在する。例えば、本願発明者らは、若年成人のカフカス人について、MUC7ムチン濃度を単独で使用することができ、3つの有意な重複しない予測区域の目的を満足することができることを示した。この実施形態は、レポーターで挟まれたMUC7ムチンに対する抗体を使用することによって、全唾液/ドットブロットフォーマットのために設計された。異なる試験を特定的に設計することができ、性別、年齢および民族または人種について較正することができる。例えば、MAL Iは、カフカス人およびヒスパニック系の両方において、う食のリスクを予測するために使用することができる。好ましくは、この試験は、多くの個人が民族または人種のブレンドであるという問題を避けるために可能な限り普遍化される。
【0215】
全唾液/ストリップ試験フォーマットを用いて3つの重複しない有意な予測区域の目的を達成するために使用可能な別のストラテジーは、回帰分析の設計である。う食を有しないものは変動を有しないため、この試験は、全てのう食を有さない個人が入る値より上または下のレポーターの閾値を含む。この集団は、自動的にう食性リスクが低い集団に配置される。次いで、残りの個人を統計的に中程度および高いリスクプロフィールに分ける。このアプローチの値は、この年齢集団の現実的な近似であり、残りの2つの重複しない有意性のある区域を達成するための統計学的要求が非常に緩和され、非常に達成しやすくなる。
【0216】
a.捕捉ストラテジー。う食性についてのストリップ試験を開発するための1つのアプローチは、捕捉ストラテジーを使用する。これは、ストリップに対して抗体またはレクチンを共有結合的に接続し、唾液サンプルとともにインキュベートし、すすぎ、ついでストリップをレポーターに結合した第2の抗体またはレクチンと反応させることを含む。このアプローチの利点は、特異性を有する2つのレベルのオプションを用いて試験を開発することができることである。例えば、1つの実施形態では、MUC7のグリコシル化されていない3’末端に指向する抗体を捕捉のために使用することができ、予測の能力を有し得る任意のレクチン−レポーター複合体を用いてムチンをプローブ化することができる。別の実施形態では、捕捉ムチンのアポムチン部分は、ムチンのグリコシル化されていない5’末端に指向する第2の抗体を用いて定量化される。なお別の実施形態では、特定のオリゴ糖構造を有する全ての唾液成分は、レクチンを用いて捕捉され、レポーターと結合した第2のレクチンを用いてプローブ化される。例えば、3つの固定された変数(年齢、性別および民族)に沿ったMAL IおよびMUC7ムチンは、唾液パネルのメンバーについて0.891のRを与えた。
【0217】
b.試験の開示内容。プロセスのこの部分についての目的は、唾液の乾燥したスポットをレクチン−レポーター複合体を用いて1回インキュベートし、水またはバッファーを用いて2回すすぎ、1対の較正された標準を用いた唾液スポットの視覚的な比較を包含する、1工程の手順を開発することであった。図6に示される蛍光スポットは、このプロトコルの成功を示す。ビオチンおよびアビジン複合体が組み合わされ、唾液ブロットを用いたインキュベーションの前に得られたビオチン−アビジン複合体を精製した。蛍光レポーターはAMCAであり、これは長波長のUVによって活性化され、目に見える青色の光を発した。これは、長波長のUVランプが一般的であり、安価である(ブラックライト)ため、有用なレポーターである。
【0218】
あるいは、ストリップ試験は、酵素(例えば、アルカリホスファターゼまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼ)反応によって評価される。1つの例において、図1および表2および3に示されるように、アルカリホスファターゼに接合したアビジンをレクチンを用いた唾液パネルの評価のために使用した。
【0219】
本発明の試験片は、ストリップ試験および他の視覚的に判断される診断試験の分野において広い適用を有する。1つの実施形態では、レポーターは、局所的なpHをかえるために使用することができ、pH指示薬を用いてレポーターの相対量を評価することができる。例えば、タンパク質を誘導する薬剤は、カルボキシル基をタンパク質に付加して同定される。これらの誘導薬剤は、レクチン−ビオチン複合体と反応するアビジンにカルボキシル基を付加するために使用することができる。1滴のpH指示薬が添加される場合、色変化に注目することができ、この色変化は結合アビジンの量に比較的比例する。
【0220】
c.試験デバイス。1つの実施形態では、高スループット(HIP)試験系はPAGEベースであり、分析的能力および視覚的能力の両方を有する。別の実施形態では、高スループット分析への適用は、多くの異なる唾液サンプルがニトロセルロース表面にパターンとしてスポット作成され、レクチン−レポーターの組み合わせと共同で反応し、共同で洗浄し、色作成シグナルまたは蛍光作成シグナルと反応する以外は、ストリップ試験と同様である。実際の定量は、例えばアレイを解釈するために使用されるようなプレートリーダーを用いて達成される。例えば、レクチン−AMCA複合体は、定量が、長波長のUVによって現れる一対の標準(高い閾値および低い閾値)の青色強度に対して判断可能であるため、この適用に好適である。
【0221】
d.試験キット。試験キットは、集団における試験を確認し、民族、人種、または年齢等に依存し得る潜在的な課題を解決する可能性を提供する。試験キットのための好適なフォーマットは、ドットブロットフォーマットおよびPAGEシステムを含む。このキットは、サンプリングデバイス、あらかじめプログラムされた計算機、非X線に依存するDFT診断のための標準装置、試験検出デバイス、および必要な数の試験を行うための供給装置を含むことができる。
【0222】
(実施例3)
(レクチンに基づく4レベルのう食性リスク試験)
この研究は、レクチンの特定の組み合わせ、例えばMAL I、JACおよびSNAが、性別情報と併せて、回帰による統計学的分析においてDFTと良好な相関関係を与えることを示した。このモデルは、4つの統計学的に異なる集団を提供する:試験される個人を配置可能である、DFTが高い、中程度、低い、およびゼロ。
【0223】
1.唾液パネル−ドットブロットアッセイ:
a)この研究は、本発明の高スループットアッセイシステム(HTP)の代替バージョンを用いて、表3に列挙される同じ被験体を用いた連続的なものである。この研究からの顕著な利点は、全てのレクチンシステム、すなわち、MAL I、JAC、およびSNAを達成することであった。年齢および民族を組み合わせた場合、このシステムは、7〜26歳において、0.926のRでDFT(う食した永久歯および充填した永久歯)を予測する(図7)。この達成は興味深いが、年齢に適切なカテゴリーよりも多くの数のDFTを出す傾向があるため、リスク評価のための潜在能力を有さない。例えば、5つのDFTを用いた26歳での被験体番号8の経年変化(表3)は、7歳および8歳で、それぞれ4つのDFTを用いたGriffin被験体番号3および4(表3)よりも大きいオーダーにおいて正いが、被験体番号8の経年変化(表3)は、成人としては低い〜中程度のDFT範囲にあり、子供はそれらの年齢について最も高い集団にある。これらおよび以下の分析では、MAL Iは回帰式の50%より多い量を占める。
【0224】
b)より初期の若年成人の研究と匹敵するシステムのためのモデリングにおいて、高い、中程度、および低い有意的な範囲を用いて、本願発明者らは、これらのレクチン(MAL I、JAC、およびSNA)および性別の同じパネルを対にすることによって、0.957のRが達成できることを発見した(図8)。興味深いことに、このモデルは、4つの統計学的に異なる集団が存在することを示唆する:DFTが高い、中程度、低い、および非常に低い、またはゼロ。有意なゼロカテゴリーの可能性は、3レベルのリスクモデルの低い範囲が3〜8のDFTを包含し、ゼロ〜2のDFTカテゴリーが存在しないことがムチンデータにおいてより初期に示唆された。被験体集団においてゼロのDFTを持つ被験体は存在しなかった。この実施例を与える現在のレクチンベースの分析において、USC被験体番号42は、う食がゼロの23歳である。年齢とは独立した回帰式を使用して誘導される被験体の数値は、う食を有していない3人の子供たち、Griffin被験体番号10、13、および15(表3)より有意に低い。回帰分析によって、ゼロ集団よりも低いリスク範囲においてこれらの子供たちが数値的に配置され、このことは、これらの子供たちが、約25歳で2〜4のDFTを獲得していることを示す。別の興味深い予測は、Griffin被験体番号5(1DFTを有する7歳)は、本願発明者らの初期の研究に基づいて中程度のリスク集団に実際に属し(低い集団ではない)、25歳で5〜8のDFTを獲得することが予測され得る。高いリスク集団における子供たちは、25歳で9個以上のう食を累積していると予測される。この研究からの1つの結論は、適切な年齢から独立した回帰式を用いると、個人的な予防措置が適用されない場合、子供たちにおいて、子供たちが若年成人になった時に獲得するう食の数を予測することができるということである。
【0225】
c)レクチンMAL I、JAC、およびSNAを用いたウエスタンブロットが、図9、10、および11に示される。ウエスタンブロットのために選択される唾液は、唾液パネル由来のムチン、MAL I、およびDFTの特別な組み合わせをあらわす。MAL Iと反応したブロットは、いくつかの非常に重要な発見を示す。第1に、両方のムチンだけではなく、高いレベルのムチンを有し、DFTを有さない(Griffin被験体番号15およびUSC被験体42;表3)唾液においてさえ、他の唾液タンパク質がオリゴ糖の決定因子を保有すると考えられる。Griffin被験体番号13は、視覚的にMUC7ムチンを有しておらず、う食をもたないが、比較的高いMAL I反応性を有していた。ウエスタンブロットは、この唾液中のMAL I反応性のオリゴ糖が、2つのムチンの大きさの間の唾液の糖タンパク質中間体(おそらく凝集体)に主に局在化することを示す。Griffin被験体番号3由来の唾液は、高いDFTを有し、比較的高いムチンレベルを有する(表3)が、MAL I反応性のオリゴ糖をほとんど有していなかった。Griffin被験体番号10は、DFTを有さず、比較的低いMAL I反応性を有していたが、通常ではない高いレベルのJAC反応性オリゴ糖によってこの欠点が補われているようであった。JACおよびSNAの両方のウエスタンブロットは、唾液タンパク質の中のオリゴ糖決定因子の広い分布、および視覚的な顕著な違いをさらに示す。
【0226】
d)発見のために唾液のこのパネルを使用し続け、アッセイを以下のレクチンを用いて完成させた:MAL I、MAL II、SNA、JAC、AAL、AAA、LTL、LPA、MAA、PNA、UEA I、WGA、およびPSA。この一連の実験から生じる改良の一例は、上に議論される図7に対して相対的であり、AAL、UEA Iおよび性別が追加され、SNAは分析からはずされ、Rは0.926から0.990へと向上する。この研究はさらに、>0.90のRを得る目的を達成するための1つより多い道であり得る本願発明者らの初期の観察を再確認する。この実施例では、0.957のRを有する上に議論される図8に関して、レクチンの異なる組み合わせ(MAL I、AAL、JAC、LTL、およびPSA)とともに性別により、Rが0.966とわずかによくなる。
【0227】
e)ストリップ試験についての潜在的な標準として、フェチュインおよびグリコフォリンを全てのレクチンに対して試験した。グリコフォリンは、全てのレクチンと着色反応を与え、異なる個人間のレクチン親和性の比較についての標準となった。一方、フェチュインは散発的な結果を与えただけであった。
【0228】
(2.MAL I、JAC、SNA、およびUEA IについてのHTPアッセイシステムを用いた、7〜10歳由来の唾液を用いたGriffin研究の再現)
図12は、標準曲線を包含する、データセットにおける全ての唾液を用いたSNAについてのHTPアッセイブロットを示す。グレースケールのネガティブ画像が示され(図13)、ここからSigma Scan Pro(SPSS,Inc.)を用いて各スポットの平均強度が得られる。次いで、これらの強度を、同じブロットの標準のサブセットから作成した標準曲線に基づいて標準化された単位に変換した。データ分析の初期に、後に続くデータ分析の質に大きく影響を与えるいくつかの因子が明らかになった。第1に、未萠出の永久臼歯を有する子供たちは、分析に対する指向性がなく、後で排除された。第2に個人あたりの多くの脱落歯における変動のために、正規化されたdfs/tが計算され、全ての後の分析に大きく寄与することがわかった。より情報の多い分析のいくつかは、DFTまたはDFSとの相関関係に対して、dfs/t、年齢および種々のレクチンの寄与を含んでいた。これらの分析は、7歳および8〜10歳の間の有用な区別が存在し得ることを示唆していた。DFTおよびDFSとの相関関係に対するdfs/tの寄与は、7歳では43%であるのに対し、8〜10歳では31%まで減少する。
【0229】
(3.HTPアッセイシステムを用いる、MAL I、JAC、SNA、およびUEA Iについての7〜10歳の唾液を用いたさらなる研究)
MAL IまたはUEA Iのいずれかのレクチンに関して、性別およびdfs/tを用いて集団分けされる場合、DFTとの有望な相関関係が得られ、それぞれ0.46および0.33のRを達成した。UEA I分析における2つの年齢集団の分離は、相関関係を、8〜10歳についてRを0.86まで、7歳について0.43まで高めた。2つの民族、ヒスパニック系および中国人(マンダリン語を話す)についての分離分析は、年齢が異なることを考慮することによって改良されることをさらに示す。全ての年齢のヒスパニック系は、DFT 対 UEA I、性別およびdfs/tについて0.49のRを与え、一方、7歳のヒスパニック系単独では0.88のRを有し、8〜10歳では0.94を与えた。全ての中国人の子供についてのRは0.45であり、一方、7歳単独では0.80であった。8〜10歳の中国人の被験体は、この比較を完全にするには十分でなかった。明らかに異なる回帰式が、2つの年齢集団に適用される。任意の特定の理論によって束縛されることを望まないが、本願発明者らは、このことは、年齢および永久歯の露出長さにおける違いとともに、dfs/tによる寄与率の低下が比較的迅速に反映すると考えている。
【0230】
(4.結論)
a)う食試験は、レクチンを用いて完全に行うことができる。
【0231】
b)この試験は、種々の人種および年齢の小さな集合をあらわす唾液パネルを用いた今までの作業によって証明されるようなレクチンをもちいることによって、「普遍化」することができる。
【0232】
c)年齢から独立した回帰式の使用が唾液パネルについても示された。現在のDFS、DFS/T、またはDFTがリスクレベルの評価を支持するには低すぎるにもかかわらず、唾液パネル中に含まれる子供たちを、この回帰式から誘導される数値に基づいてリスク集団に割り当てることができ、この割り当ては分析における成人の存在によって大きく影響を受けた。それに加えて、これらのリスク集団の評価は、予防処置が開始されない場合に、大人になったときのDFSまたはDFTの完全な標的を提供する。
【0233】
d)若年成人を使用する関連研究は、唾液ムチンおよびう食の病歴の相関関係に関する1991人のカフカス人の研究の要素を全て確認した。
【0234】
e)関連研究はさらに、最初に7〜10歳のGriffin研究において観察されたように異なる人種はムチンとDFSとの異なる関係を有する場合があるが、う食試験におけるレクチンの使用はこれらの違いをなくした。
【0235】
f)子供たち由来の唾液サンプルを用いた結果に基づいて、若年成人を用いたレクチン研究が、リスクレベルを予測するために子供たちに適用可能な年齢から独立した回帰式の起源であることを結論付けることができる。
【0236】
(実施例4)
(若年成人における永久歯のう食評価およびリスク評価)
この研究におけるドットブロットは、実施例3において記載されるように行われた。この研究は、18〜34歳の範囲の年齢の70人より多い若年成人を含んでいた。この結果は、この集団の中で、24歳以上は、年齢が唾液中のレクチンアフィニティとう食の病歴との関係の分析における因子ではない被験体プールを提供することを示す。従って、24〜34歳の集団は、永久歯における若年成人のう食獲得に対する子供たちの終点をあらわすために選択された。この年齢の集団はさらに、より若い年齢でなされた予測および各リスクレベルでのDFSの範囲の終点を与える。図14および15について、得られた唾液サンプルを異なる人種および性別の21人の被験体から集めた。彼らの年齢は24〜34歳の範囲であった。彼らのDFSは0〜36の範囲であった。30より多いレクチン親和性がサンプリングされた。
【0237】
意義深い観察は、この研究における中間地点で存在し、これらのレクチン(AAL、LTL、およびUEA I)を併せて、高い有意性(p=0.006)を持ち、Rが0.51のDFSとの相関関係を得た。この観察の有意性は、各レクチンが種々の程度まで、個人の分泌状態に関連することである。しかし、さらなるオリゴ糖モチーフが分析中に含まれる場合、分析状態の役割はそれほど重要ではなくなっており、最終的には比較的小さいように思われる(約10%)が、有意であり(p=<0.001)、ポジティブ/ネガティブ相関関係の複雑な状態に寄与する。AAL、LTL、およびUEA Iはさらに、本願発明者らの以前の研究において顕著にかかわっていた。
【0238】
分泌状態を含む糖親和性の全ては、レクチンの上述の混合物が種々の口腔微生物の結合または凝集に関与していることをあらわす(Sharon,N.,Adv.Exp.Med Biol.408:1−8(1996))。
【0239】
図14は、う食試験の結果関係と各個人の累積したう食病歴との関係を示す。図14において、実線は、従属変数としてDFSを用いた回帰式のプロットである。19の異なるレクチンの定量化された親和性を回帰式に使用した。R(決定係数)は1.00である。有意性はp=<0.001である。点線は集合の98%での信頼度間隔を取り囲み、これは、予測の信頼度間隔としても知られている。
【0240】
図15は、異なる範囲のDFSに対するリスクレベルの評価、およびレクチンに基づく試験が、従属変数としてリスクレベルを用いて強固な回帰式を得る能力を示す。図15について、有意性(p)および予測の信頼度間隔は図14と同じであるが、Rは0.998とわずかに小さい。レクチン親和性の改変された組み合わせはさらに、図15について「最良の」結果を得るために必要であった。選択されたDFSの範囲は、非常に低いリスクについて0〜2DFSであり、低いリスクについて3〜8DFSであり、中程度のリスクについて9〜16DFSであり、高いリスクについて17以上であった。12の異なるリスクレベルを用いて、統計学的に有効な結果が得られた。
【0241】
(実施例5)
(子供における脱落歯のう食評価およびリスク評価)
本研究において7〜10歳について焦点を当てることは3つの理由から非常に重要である。第1に、この時期は、永久臼歯にシーラントが適用される通常の時期であり、う食リスク試験の結果は、個人に基づくこの予防的処置の適用について合理的な説明を与えることができる。第2に、この時期は、永久歯におけるう食の病歴(DFS/T)またはリスクレベルとう食評価試験との統計学的相関が最初に歴然としてくる時期であり、若年成人における特定の予測可能な結果とリンクさせることができる。最後に、この年齢の集団は、脱落歯についてのう食病歴の終点をあらわす。
【0242】
本研究におけるドットブロットは、実施例3に記載されるように行った。本集団における子供の数は27であり、男性および女性の分布、およびヒスパニック系および中国人の分布はほぼ同じであり、7〜10歳の範囲である。残りの脱落歯の数は個人間でさまざまであるが、脱落歯の累積したう食病歴は、脱落歯におけるう食の進行の終点としてこの年齢集団においてあらわされる。図16および17は、う食試験が残りのう食を正確に評価可能であり、統計学的に有意なリスクレベルに翻訳可能であることを示す。
【0243】
図16は、う食試験の結果と各個人の累積したう食病歴との関係を示す。図16は、残りの脱落歯の数の個々の違いを適合させるために、従属変数としてdfs/tを使用する。残りのう食の範囲は歯あたり0〜3であった。試験自体は、21の異なるレクチン親和性の入力を必要とした。Rは0.996であり、有意性はp=0.001である。予測の信頼度間隔は98%に維持されていた。図17は、異なる範囲のdfs/tに対するリスクレベルの評価、およびレクチンに基づく試験が従属変数としてリスクレベルを用いた強固な回帰式を得る能力を示す。
【0244】
図17は、dfs/tの範囲に基づく、う食試験が4リスクレベル内のう食評価情報を翻訳する能力を示す。予測の信頼度間隔は98%で図16よりも広いが、全ての被験体を適切なリスクレベルに割り当てる4つの有意性を有する重複しない区域が存在する。図17において示される回帰式は0.980のRを有し、有意性はp=<0.001であった。選択されたdfs/tの範囲は、非常に低いリスクについて0〜0.35dfs/t、低いリスクについて0.36〜1.35dfs/t、中程度のリスクについて1.36〜2.00dfs/t、および高いリスクについて2.01dfs/t以上であった。
【0245】
(実施例6)
(子供および若年成人の混合集団における永久歯のう食評価およびリスク評価)
本研究は、子供における将来のう食の進行の予測モデルを提供する。本研究におけるドットブロットは、実施例3に記載されるように行った。試験集団は12被験体で構成され、それらの半分は若年成人のアジア人およびカフカス人であり、他の半分は7〜9歳の中国人およびヒスパニック系の子供である。男性と女性の数はほぼ同じであった。この集団の年齢範囲は7〜26歳であった。図18は、個人の年齢、および独立変数としてレクチンに基づく試験の結果を含む回帰式から誘導された。図18と図7との比較は、子供および成人の混合集団における、時間経過にともなうう食のリスク試験に包含される改良を示す。
【0246】
図18は、年齢が独立変数としての因子である場合、レクチンに基づくう食性試験は、広い年齢範囲でDFSを正確に評価することができることを示す。将来のう食の進行の予測についての合理的な理由は、リスクレベルが、図14に示されるように、う食の進行の終点をあらわす被験体の若年成人から誘導されるというアイディアに基づく。
【0247】
図19は、年齢が因子ではなく、回帰式が、若年成人についてのレクチンに基づく試験によってリスクレベルについて作成されることを示す。子供たちについてのレクチンに基づくデータは、成人から誘導される式によって分析され、観察されたリスクレベルを得た。図19は、子供たちからのう食試験データが成人から誘導される回帰式によって加工される場合、子供たちは特定のリスクレベルに割り当てられることを示す。図18および19における異なるリスクレベルについての範囲は上に記載されるものと同じである。すなわち、非常に低いリスクについて0〜2DFSであり、低いリスクについて3〜8DFSであり、中程度のリスクについて9〜16DFSであり、高いリスクについて17以上。う食試験のこの適用からの解釈は、この集団における子供たちの幾人かが永久歯にう食を有していない場合であっても、この試験では、彼らが25歳になるときに3〜8のう食を獲得する事を示唆する。この試験はさらに、1つのDFSを有する子供が、25歳までに8〜15以上のう食を獲得することを示唆する。高いリスクの子供たちは、25歳までに17以上のDFSを累積すると標的化される。図19と図8との比較は、う食のリスク試験の潜在的な予測における改良を示す。
【0248】
(実施例7)
(着色したマイクロビーズアッセイ)
図20は、色スケールの終点を保存しつつ、2つのレクチンの中間的な比率を緑色としてあらわすための青色−黄色ビーズモデルの使用を示す。LTLおよびLELは、それぞれ青色および黄色のマイクロラテックスビーズに対して直接的に誘導体化された。試験自体を確立するために、誘導体化されたビーズの濃度を、ドットブロットアッセイについて観察される親和性の集合範囲をあらわす唾液サンプルについて最初に別個に較正した。これは、図20の上の2つの試験に示される。このビーズを次いで較正した濃度になるように混合し、懸濁物を、乾燥した唾液の5mLスポットを含有する膜上に置いた。結合は迅速であり、ビーズ沈降時間によって制限されるように思われた。
【0249】
図20の下の部分は、全範囲の着色を示す。これらの唾液サンプルを用いて示される回帰式において、LTLはDFSと陽性に相関し、LELはDFSと陰性に相関する。図20において、その数は異なる学生由来の唾液サンプルをあらわす。色は、以下の集団についてのDFSと一致する:2番−34DFS、69番−20DFS、70番−17DFS、および107番−5DFS。学生番号2は、非常に高いLTL 対 LELアフィニティ比を有するが、それぞれの低い濃度でさえ、試験片の色は青色である。学生番号69および70はさらに、>10:1の比較的高い比率を有するが、これが中間的な比率をわかるように較正されたため、試験片の色は緑色である。学生番号107はLTL:LEL比0.46:1を有し、すなわち、LTL 対 LELが非常に低い比率を有し、試験片の色は黄色である。色試験は、唾液サンプル間の最終的な濃度差にかかわらず、陽性 対 陰性の親和性の比率を保存しているようである。
【0250】
代替の、赤色−黄色の組み合わせを、同じレクチンおよび唾液サンプルを用いてさらに試験した。上の試験と同様に、2つの最終的な色は中間色(橙色)を形成し、最大限でも、2つのレクチンの比率を決定した(図21)。両方の色の組み合わせの弱点は、白いバックグラウンドに対して、純粋な黄色の可視化が困難であることである。代替として、LELを赤色および黄色ビードの混合物に接合して、容易に見える橙色を作成した。ほとんど最近の色終点は、青色および橙色であり、中間色はまだ優先的に緑色である。上に注記されるように、それぞれの試験は、試験片に共有結合したある範囲の標準を有し、各リスクレベルと関連する異なる色を作成した。
【0251】
(実施例8)
(レクチンアフィニティ研究によって示唆される許容され、予防的なオリゴ糖モチーフ)
本研究は、本試験についてサンプリングされた最も重要なオリゴ糖モチーフを決定するためであった。このストラテジーは、直近の集団の学生の唾液サンプルを用いて、個々の有意に陽性または陰性の内容におけるレクチン親和性とDFSとの相関関係を研究することであった。
【0252】
表面に現れる2つの主なコアモチーフは、Fucα−l,2Gal−GlcNAc(H抗原として知られ、通常は分泌の陽性特性と関連する)および±Galαまたはβ−l,3GalNAcαまたはβである。簡単にいうと、これらのオリゴ糖モチーフは、シアリル化されていない場合は許容的であり、すなわち、DFSと陽性に相関するが、α−2,3またはα−2,6シアル酸のいずれかでシアリル化されている場合には、予防的であり、すなわち、DFSと陰性に相関する。1つの例外は、±Galα−l,3GalNAcβはさらに、シアリル化されているかいないかにかかわらず、予防的であると考えられることである。本試験において重要であると考えられる第3のモチーフはキトビオースまたはキトトリオース(GlcNAc(2または3))である。これはさらに、シアリル化によって許容的から予防的にシフトした。それに加えて、キトビオースセグメントがα−フコシル化されている場合、Lewis抗原を含むようであり、シアリル化にかかわらず予防的であると考えられる。
【0253】
24〜34歳の集団における21人の学生のうち6人が、非常に低いレベルのUEA親和性によって判断されるような非分泌性であり、H抗原が、非分泌性においてさえ絶対濃度に関わらず、これらの試験に対して等しく重要であり、彼らの全てがUEA親和性結合の測定可能な量を有していることも注目すべきである。この分析は、レクチン親和性の比率が、絶対的な親和性に基づく濃度よりも本試験に対してさらに有用であることを確認する。
【0254】
上述の記載は、本発明の原理のみを例示するものとみなされる。さらに、多くの改変および変化が当業者に対して容易に行われるため、上述のような実際の構造およびプロセスに本発明を限定することは望まない。それ故に、全ての好適な改変および等価物は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内にあると主張してもよい。用語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(including)」、および「含む(include)」は、本明細書中および添付の特許請求の範囲で使用される場合、述べられた特徴、整数、成分、または工程の存在を特定することが意図されるが、1つ以上の他の特徴、整数、成分、工程、またはそれらの集団の存在または追加を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0255】
本特許は、カラーの少なくとも1つの図面を含有する。色つきの図面を含む本特許のコピーは、オフィスに要求し、必要な費用を支払うことによって与えられる。
【図1】図1は、Jacalin、SNA、ACL、AAL、UEA、およびMAL Iを含むレクチンパネルを用いた本発明に従う2人の個人由来の唾液サンプルのドットブロット試験の画像である。
【図2】図2は、全体的な信頼度98%でDFTを予測するための、DFT 対 個人の変数(MAL I、JAC、MAA、MUC7ムチン、MUC5Bムチン、性別、および年齢)の合計の直線回帰分析を記載する。
【図3】図3は、図2で分析された同じ被験体のMUC7ムチン単独および全体的な信頼度98%でのDFTとの関係についての直線回帰分析を記載する。
【図4】図4は、特異的な抗体−二次抗体HRP−を用いてプローブ化されたマウス舌下ムチンのドットブロットである。
【図5】図5は、特異的な抗体−二次抗体−AP−を用いてプローブ化されマウス舌下ムチンのドットブロットである。
【図6】図6は、MAL IおよびAMCAインキュベーションおよび長波長のUV照射後のLowおよびHigh DFTを有する子供由来の全唾液のドットブロットである。
【図7】図7は、全体的な信頼度98%でDFTを予測するための、DFT 対 個人の変数(MAL I、JAC、SNA、民族性、および年齢)の合計の直線回帰分析を記載する。
【図8】図8は、全体的な信頼度96%でDFTを予測するための、高、中、低、およびゼロリスク 対 独立変数(MAL I、JAC、SNA、および性別)の合計の直線回帰分析を記載する。
【図9】図9は、レクチンMAL Iをもつ8人の被験体由来の唾液のウエスタンブロットアッセイである。
【図10】図10は、レクチンJACをもつ8人の被験体由来の唾液のウエスタンブロットアッセイである。
【図11】図11は、レクチンSNAをもつ8人の被験体由来の唾液のウエスタンブロットアッセイである。
【図12】図12は、Griffin Study被験体由来の全唾液0.2μLおよび0.1μLにおけるSNA反応性についての高スループットウエスタンブロットアッセイである。
【図13】図13は、図12に示されるウエスタンブロットのネガティブ画像である。
【図14】図14は、本発明のう食性試験の結果とそれぞれの個々の蓄積されたう食病歴との関係を示すグラフである。DPSはこのプロットにおいて従属変数である。
【図15】図15は、若年成人におけるリスクレベル 対 定量化されたレクチン親和性の合計の関係を示すグラフである。
【図16】図16は、dfs/t(残っている脱落歯あたりの脱落性のう食の数)および定量化されたレクチン親和性の合計の関係を示すグラフである。
【図17】図17は、子供における脱落性う食についてのリスクレベルと定量化されたレクチン親和性の合計との関係を示すグラフである。
【図18】図18は、全体的な信頼度96%で、子供および成人の混合集団におけるDFT 対 定量化されたレクチン親和性の合計の直線回帰分析を記載する。
【図19】図19は、全体的な信頼度96%で、子供および若年成人についてのリスクレベル 対 定量化されたレクチン親和性の合計の直線回帰分析を記載する。
【図20】図20は、青色および黄色に着色したマイクロラテックスビーズに接合したレクチンLTLおよびLELをそれぞれ用いた唾液のウエスタンブロットアッセイである。
【図21】図21は、赤色および黄色に着色したマイクロラテックスビーズに接合したレクチンLTLおよびLELをそれぞれ用いた唾液のウエスタンブロットアッセイである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における疾患のリスクを予測するための方法であって、該方法は、以下:
該被験体から分別されていない唾液サンプルを提供する工程;
1つ以上のレクチンが該唾液の1つ以上のレクチン結合成分に結合することを可能にする条件下で、該唾液のアリコートを、該1つ以上のレクチンと接触させる工程;
結合レクチンの量を検出する工程;および
コントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量に対し該結合レクチンの量を比較する包含工程であって、前記結合レクチンの量が該疾患のリスクの指標である、工程
を包含する、方法。
【請求項2】
前記唾液サンプルは、刺激されていない唾液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レクチン結合成分は、オリゴ糖である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レクチンが、DSL、ECL、PSA、WGA、UEA、MAL I、MAA、PNA、AAL、LTL、MAL II、JAC、LEL、SNA、PTL I、ACL、GSL II、VVA、BPL、WFL、SJA、MPL、GNL、HHL、CCA、NPL、STL、PHA−L、PHA−E、GSL I、DBA、HMA、EEA、LPA、およびPTL IIからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記レクチンはPNAではない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記レクチンはMAL Iである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上のレクチンは、AAL、LTLおよびUEA 1からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のレクチンは、DSL、ECL、PSA、MAL I、PNA、AAL、LTL、MAL II、JAC、LEL、PTL I、GSL II、VVA、BPL、SJA、MPL、およびCCAからなる群より選択され、前記被験体が成人である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のレクチンは、ACL、PNA、LTL、PSA、MAsL II、MAA、STL、PTL I、LEL、DSL、ECL、AAL、VVA、GNL I、CCA、SNA、JAC、WFL、SJA、MAL I、およびBPLからなる群より選択され、前記被験体が子供である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
規定されたレベルで前記疾患のリスクを評価する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記疾患のリスクを高、中、低または極低として評価する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体における前記疾患の将来の進行のリスクを評価する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記評価する工程は、結合量を、一定範囲の疾患重篤度を表す被験体の集団から導かれる回帰分析と比較する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接触させる工程および前記検出する工程は、ウエスタンブロット手順の一部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記手順は、以下:
前記唾液の液滴をマトリックス物質に適用する工程;および
前記マトリックスと前記1つ以上のレクチンを含有する溶液とを接触させる工程
を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上のレクチンは、染料、化学発光化合物、酵素、蛍光化合物、ビオチン、ハプテン、放射線発光化合物および放射線標識された生体分子からなる群より選択されるレポーターに結合される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記検出する工程は、マトリックスと可視化染色剤とを接触させる工程を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記接触させる工程は、前記マトリックスを、第1の色を有する微粒子に接合したレクチンの第1のセットと第2の色を有する微粒子に接合したレクチンの第2のセットとの混合物に接触させる工程を包含し、前記第1の色と前記第2の色とは、互いに区別可能である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患はう食であり、前記レクチンの第1のセットは、DFSとポジティブに相関する1つ以上のレクチンを含み、前記レクチンの第2のセットは、DFSとはネガティブに相関する1つ以上のレクチンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
コントロール被験体由来の唾液の液滴を前記マトリックスに適用する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記手順は、以下:
マトリックス物質の表面に結合した前記1つ以上のレクチンを適用する工程;
前記レクチン結合成分が該1つ以上のレクチンに結合することを可能にする条件下で、前記マトリックス物質と前記唾液サンプルとを接触させる工程
を包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上のレクチンは、レクチンの第1のセットおよびレクチンの第2のセットを含み、該第1のセットと前記第2のセットとは、互いに区別可能である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記検出する工程は、前記マトリックス物質とレポーターに結合した結合パートナーとを接触させる工程を包含し、該結合パートナーは前記レクチン結合成分に特異的に結合する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記結合パートナーは、抗体またはレクチンである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記レポーターは、染料、化学発光化合物、酵素、蛍光化合物、ビオチン、ハプテン、放射線発光化合物および放射線標識された生体分子からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患は、う食、歯周病、肺疾患、呼吸疾患、心血管疾患、糖尿病、周産期障害、粘膜感染、口腔癌、咽頭癌、前癌性病変、関連する自己免疫疾患、HIVおよび骨粗しょう症、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患はう食である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記う食は、早発性う食、成人う食、歯根う食、DFT、DMF、DMFS、dfs、dft、dmft、dmfs、およびdfs/tからなる群より選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記歯周病は、歯肉炎、成人歯周炎および早発性歯周炎、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
疾患のリスクを予測するために1つ以上のレクチンを用いる方法であって、該方法は、以下:
被験体から分別されていない唾液サンプルを提供する工程;
該唾液の1つ以上のオリゴ糖成分に結合する1つ以上のレクチンを提供する工程;
該1つ以上のオリゴ糖成分が該1つ以上のレクチンに結合することを可能にする条件下で、前記唾液サンプルと1つ以上のレクチンとを接触させる工程;および
結合レクチンの量を検出する工程
を包含し、該結合レクチンの量が前記疾患のリスクと相関する、方法。
【請求項32】
前記接触させる工程は、以下:
前記唾液サンプルをマトリックス物質に適用する工程;および
該マトリックス物質と前記1つ以上のレクチンの溶液とを接触させる工程
を包含する、請求31に記載の方法。
【請求項33】
前記マトリックス物質は、ニトロセルロース、綿、ポリエステル、レーヨン、ナイロン(登録商標)、ポリエーテルスルホン、およびポリエチレンからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記1つ以上のレクチンは、染料、化学発光化合物、酵素、蛍光化合物、ビオチン、ハプテン、放射線発光化合物および放射線標識された生体分子からなる群より選択されるレポーターに結合される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記検出する工程は、マトリックスと可視化染色剤とを接触させる工程を包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記接触させる工程は、前記マトリックスを、第1の色を有する微粒子に接合したレクチンの第1のセットと第2の色を有する微粒子に接合したレクチンの第2のセットとの混合物に接触させる工程を包含し、前記第1の色と前記第2の色とは、互いに区別可能である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患はう食であり、前記レクチンの第1のセットは、DFSとポジティブに相関する1つ以上のレクチンを含み、前記レクチンの第2のセットは、DFSとはネガティブに相関する1つ以上のレクチンを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
コントロール被験体由来の唾液の液滴を前記マトリックスに適用する工程をさらに包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記接触させる工程は、以下:
前記1つ以上のレクチンを前記マトリックス物質に適用する工程;および
前記マトリックス−結合レクチンと前記唾液サンプルとを接触させる工程
を包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記検出する工程は、前記マトリックス物質とレポーターに結合した結合パートナーとを接触させる工程を包含し、該結合パートナーが前記オリゴ糖に特異的に結合する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結合パートナーは、抗体またはレクチンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記レポーターは、染料、化学発光化合物、酵素、蛍光化合物、ビオチン、ハプテン、放射線発光化合物、および放射線標識された生体分子からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患は、う食、歯周病、肺疾患、呼吸疾患、心血管疾患、糖尿病、周産期障害、粘膜感染、口腔癌、咽頭癌、前癌性病変、関連する自己免疫疾患、HIVおよび骨粗しょう症、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患はう食である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記う食は、早発性う食、成人う食、歯根う食、DFT、DMF、DMFS、dfs、dft、dmft、dmfsおよびdfs/tからなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記被験体における前記疾患の将来の進行のリスクを評価する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
前記評価する工程は、結合量を、一定範囲の疾患重篤度を表す被験体の集団から導かれる回帰分析と比較する工程を包含する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
疾患のリスクを回避するかまたは軽減するための方法であって、該方法は、以下:
被験体から分別されていない唾液サンプルを提供する工程;
1つ以上のレクチンが該唾液の1つ以上のレクチン結合成分に結合するのを可能にする条件下で、該唾液のアリコートと該1つ以上のレクチンとを、接触させる工程;
結合レクチンの量を検出する工程;
結合レクチンの量を、コントロール被験体由来の唾液サンプルに結合することが知られている量と比較する工程であって、該量が該被験体における該疾患のリスクに比例する、工程;および
該唾液中の該成分の含量が正常なコントロールに含まれるレベルよりも上または下である場合、該被験体に治療試薬を投与する工程
を包含する、方法。
【請求項49】
疾患を検出するためのキットであって、該キットは、以下:
唾液サンプルを集めるための手段;
該サンプル中のレクチン結合成分の量を測定するための手段;および
該サンプル中の該成分の量を比較するための経口流体標準物質
を備える、キット。
【請求項50】
前記経口流体標準物質が、コントロール被験体の唾液中の前記成分の含量を含む、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記疾患は、う食、歯周病、肺疾患、呼吸疾患、心血管疾患、糖尿病、周産期障害、粘膜感染、口腔癌、咽頭癌、前癌性病変、関連する自己免疫疾患、HIVおよび骨粗しょう症、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項49に記載のキット。
【請求項52】
前記歯周病は、歯肉炎、成人歯周炎および早発性歯周炎、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項51に記載のキット。
【請求項53】
前記疾患はう食である、請求項51に記載のキット。
【請求項54】
前記う食は、早発性う食、成人う食、歯根う食、DFT、DMF、DMFS、dfs、dft、dmft、dmfsおよびdfs/tからなる群より選択される、請求項51に記載のキット。
【請求項55】
ウエスタンブロット形式である、請求項49に記載のキット。
【請求項56】
唾液サンプル中のレクチン結合成分の存在を検出するためのアッセイデバイスであって、該デバイスは、以下:
該サンプルのアリコートを受容するための第1のマトリックス物質を含むサンプル受容区域;および
第2のマトリックス物質の表面に結合する、既知の濃度の少なくとも1つのコントロールレクチン結合化合物を有する前記第2のマトリックス物質を含む、コントロール区域
を含む、デバイス。
【請求項57】
前記サンプル受容区域のマトリックス物質は、ニトロセルロース、綿、ポリエステル、レーヨン、ナイロン(登録商標)、ポリエーテルスルホンおよびポリエチレンからなる群より選択される、請求項56に記載のデバイス。
【請求項58】
前記サンプル受容区域およびコントロール区域は、半剛性支持体の上側に付加される、請求項56に記載のデバイス。
【請求項59】
前記半剛性支持体は、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、プロピレンまたはポリスチレンを含む、請求項58に記載のデバイス。
【請求項60】
唾液サンプル中のレクチン結合成分の存在を検出するためのアッセイデバイスであって、該デバイスは、以下:
第1のマトリックス物質および前記マトリックス物質に結合した1つ以上のレクチンを含むサンプル受容区域;および
第2のマトリックス物質を含み、既知の濃度の少なくとも1つのコントロール唾液サンプルを有するコントロール区域
を含む、デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2006−522342(P2006−522342A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509624(P2006−509624)
【出願日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/010169
【国際公開番号】WO2004/089187
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504043048)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (3)
【Fターム(参考)】