説明

病原体伝播の治療/予防のためのワクチンの使用

本発明は、第一の種の動物の病原体が第二の種の動物へ伝播することを予防する方法に関する。前記は、第一の種の動物の病原体の抗原が、第一の種の動物の病原体に対して第二の種の動物を免疫するために用いられることを特徴とし、この方法では、前記抗原の投与は、第二の種の動物における第一の種の動物の病原体の増殖低下又は増殖欠如をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、好ましくは感染症分野に関する。特に、本発明は、病原体の種の中での伝播(“水平伝播”)の予防と同様に、種の間での伝播(“垂直伝播”)を防ぐことを目的とする、第一の動物種のワクチン接種に関する。より具体的には、本発明は、インフルエンザワクチン並びにインフルエンザ感染の治療及び予防を目的とするそれらの使用に関し、さらにインフルエンザの種の中及び種の間における伝播の予防のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザ感染は、動物及び人間でなお重要な感染である。インフルエンザは、持続的な抗原変化/改変を受け、保菌動物を有するウイルスによって引き起こされる。したがって、新規流行病及び世界的流行病が将来発生する可能性があり、この疾患の撲滅は達成が困難である。インフルエンザウイルスは当分野では周知であり、例えば以下の文献(P. Palese, Nature Medicine (Dec. 2004) 10(12):S82-S86)及びさらに別の参考文献により詳細に記載されている。略記すれば、インフルエンザAウイルスのゲノムは8つの一本鎖セグメントから成り、ウイルス粒子は2つの主要な糖タンパク質、ヘマグルチニン(H)及びノイラミニダーゼ(N)をその表面に有する。少なくとも15の異なるヘマグルチニン(H1からH15)及び9つの異なるノイラミニダーゼ(N1からN9)サブタイプとともに、顕著な抗原の変型がインフルエンザウイルス間で存在する。
インフルエンザウイルスのH5N1ファウル・プラーグウイルスは、ブタ及びヒトの両方に感染することが示された。前記ウイルスはまた、鳥類の種からヒトに直接伝播されえる(Claas et al Lancet (1998) 351:472;Suarez et al. J Virol (1998) 72:6678;Subbarao et al. Science (1998) 279:393;Shortridge, Vaccine (1999) 17(Suppl. 1):S26-S29)。既知のヒト臨床症例の死亡率は約50%に達する。
【0003】
前世紀ではブタはインフルエンザ流行病の重要な病原媒介動物であった。ブタ、ラクダ及びアザラシ、好ましくはブタが、トリインフルエンザウイルスの“混合場”として機能し、したがって、家禽類(インフルエンザウイルスの天然の保菌動物)からヒトへの種のハードルを越える潜在的なリスクファクターとなっている。前記は、確立された哺乳動物(ブタ)インフルエンザウイルス及びトリインフルエンザウイルスの両ウイルスによる感受性動物(例えばブタ)の二重感染によって通常的に発生する。この二重感染は、ヒト又はブタの流行病の原因となりえる新規な組合せウイルスを作り上げる可能性がある。しかしながら、最近の証拠は、従来のトリH5株の哺乳動物インフルエンザウイルスによる組換えは強毒組換え体を生じないであろうということを示している。他方、トリインフルエンザウイルスはブタに感染することができ、偶発的な変異によってブタに順応されえる。ウイルスがブタ(又は他の哺乳動物)の集団内で水平感染を引き起こすことが可能になれば、ただちに重要な障壁が失われるであろう。
しかも、東南アジアのブタの大半が、近隣の養鶏業から発生したトリ(H5)インフルエンザウイルス株に感染している。このような感染はこれまでのところ臨床症状を呈していないので、前記の感染は実験室的な方法によって診断されえるだけで、したがってしばしば見落とされる。このような前臨床的感染ブタは、ウイルスを哺乳動物系に順応させ、ブタの集団内で蔓延させ、さらにまた人間への感染の機会として機能するという危険性が存在する。
【0004】
ブタとヒトの間の種のハードルは低いと予想されるので、“ブタ”インフルエンザウイルス変種のヒトでの水平感染リスクは劇的に増加する。インフルエンザA感染に対して現在利用可能なワクチンは死滅ウイルスワクチン調製物であり、H1、H2及びH3インフルエンザサブタイプ変種を含んでいる。これらのワクチンの使用は、ヒトからヒトへの伝播を防ぐためにヒトのワクチン接種に限定されている。したがって、これらワクチン(ヒトからヒトへの伝播を予防する従来のワクチン接種戦略を含む)は、非哺乳動物インフルエンザウイルスの哺乳動物への伝播及び順応に関して予防的ではない。これらワクチン(ヒトからヒトへの伝播を予防する従来のワクチン接種戦略を含む)は、非哺乳動物インフルエンザウイルス(例えばトリインフルエンザウイルス)が、非ヒト哺乳動物(例えばブタ、ラクダ、アザラシなど)に感染して、これら非ヒト哺乳動物で哺乳動物インフルエンザウイルスと組換えを起こすことができるという事実を十分に考慮していない。
インフルエンザ感染を制御し、疾患感染に対して有効な影響を与えるためによりよい方法を提供する新規な優れたワクチン及び新規なワクチン接種方法の利用可能性が増すことが希求されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、ブタは、トリインフルエンザウイルスに対するワクチン接種に対して有効であることが見出された(実施例2、結果の項を参照されたい)。トリインフルエンザウイルスの抗原、好ましくはH1、H3、H5、H7及び/又はH9、より好ましくはH5及び/又はH7を含む適切なワクチンでブタにワクチン接種することによって、ブタに順応した変種インフルエンザ株を生じるリスクを軽減するか、又は完全に排除することができる。結果として、インフルエンザウイルスの天然の病原媒介動物内でのウイルスの排除により、トリインフルエンザウイルスのヒトに対する順応を減少させるか、又は完全に排除することができる。したがって、本発明のある特徴はワクチン、好ましくは組換えワクチンの創出に関し、前記ワクチンは、ブタのワクチン接種のためにトリインフルエンザのヘマグルチニンサブタイプ1、3、5、7及び/又は9(すなわちH1、H3、H5、H7及び/又はH9)をベースにし、前記と同じ抗原又はワクチン接種に用いられた抗原と交差反応性を示す抗原を含むトリインフルエンザウイルスを感染させたとき、ブタにおけるトリインフルエンザウイルスの増殖を防ぎ又は低下させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書で用いられる“増殖”という用語は、ウイルスゲノムの複製及び/又は粒子のアッセンブリーを含むが、ただしこれに限定されない。本明細書で用いられる“低下”又は“増殖の低下”は、ワクチンを接種された動物での複製の速度が、非ワクチン接種動物での速度よりも統計的に有意に低いことを意味する。言い換えれば、感染性インフルエンザウイルスでチャレンジされたブタにおけるトリインフルエンザウイルスの力価が、チャレンジ前にワクチン接種されなかったブタにおける力価よりも相加平均が低いことを意味する。“相加平均が低い”という用語は、20%を超える、好ましくは40%を超える、さらに好ましくは50%を超える、さらに好ましくは80%を超える、さらに好ましくは100%を超える低下を意味する。この関係では、“排除される”という用語は、感染性インフルエンザウイルスでチャレンジされたワクチン接種ブタで、チャレンジ後10日、好ましくは9日後、より好ましくは8日後、より好ましくは7日後、より好ましくは6日後、より好ましくは5日後、より好ましくは4日後、より好ましくは6日後、より好ましくは3日後、より好ましくは2日後、もっとも好ましくは1日後にウイルスの複製が検出できないことを意味する。
【0007】
より一般的な特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原を含む抗原性組成物を、第二の種の動物の免疫用医薬組成物の製造のために使用することに関する。この場合、前記医薬組成物は、第二の種の動物に投与したとき、前記第二の種の動物が第一の種の前記感染性病原体に感染した場合に、第二の種の動物において、第一の種の動物に感染性を有する病原体の増殖の低下又は欠如をもたらす(ただし好ましくは前記医薬組成物の抗原性組成物の抗原が前記感染性病原体に存在するか、又は前記病原体上に存在することを前提とする)。
前記第一の種及び第二の種は同じ種でも異なる種でもよい。好ましくは、第一の種及び第二の種は異なり、より好ましくは、第一の種は家禽(例えば鳥、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウなど)であり、第二の種は哺乳動物、好ましくはブタ、ウシ、ウマ、アザラシ、ラクダ、イヌ、ネコ、ハムスター、マウス、ヒト、もっとも好ましくはブタである。
したがって、別の特徴にしたがえば、本発明は、哺乳動物の免疫用医薬組成物の製造のために家禽の病原体の抗原を含む抗原性組成物を使用することに関する。この場合、前記医薬組成物は、哺乳動物に投与したとき、前記哺乳動物が家禽の前記感染性病原体に感染した場合に、哺乳動物において、家禽に感染性を有する病原体の増殖の低下又は欠如をもたらす(ただし前記医薬組成物の抗原性組成物の抗原が前記感染性病原体に存在するか、又は前記病原体上に存在することを前提とする)。
【0008】
本明細書で用いられる、“医薬組成物”という用語には、感染を低下させ又は防止するワクチン又は感染を治療及び軽減させる物質の組成物が含まれるが、ただし前記に限定されない。
本明細書で用いられる、“病原体”という用語には、通常、疾患又は病的状態をその宿主にもたらすか、又は少なくともその宿主の正常な生理を破壊する、微生物又はその任意の病原性部分が含まれるが、ただし前記に限定されない。例えば、家禽の病原体はトリインフルエンザウイルスである。
本発明の更なる特徴にしたがえば、家禽に感染性を有する本発明の病原体はインフルエンザウイルス、好ましくはトリインフルエンザウイルスである。本発明の更なる特徴にしたがえば、家禽に感染性を有する病原体はトリインフルエンザウイルスのサブタイプH1、H3、H5、H7又はH9であり、より好ましくはトリインフルエンザウイルスのサブタイプH5又はH7、もっとも好ましくはトリインフルエンザウイルスのサブタイプH5N1である。
本明細書で用いられる“抗原性組成物”という用語は、1つ以上の抗原を含む物質の組成物である。
【0009】
本明細書で用いられる“抗原”という用語は、前記抗原が投与された宿主で、前記抗原に対する免疫応答を誘引、活性化又は刺激するために、免疫系の抗原認識分子、例えば免疫グロブリン(抗体)又はT細胞の抗原レセプターと特異的に相互作用することができるペプチド、ポリペプチド、糖ペプチド、又は多糖類を指すが、ただしこれらに限定されない。“抗原”という用語はまた、核酸分子、好ましくはDNA-又はRNA-分子を指し、前記分子の各々は、免疫系の抗原認識分子、例えば免疫グロブリン(抗体)又はT細胞の抗原レセプターと特異的に相互作用することができるペプチド、ポリペプチド又は糖ペプチドをコードし、さらにこれらを発現して、前記核酸によってコードされる抗原に対する免疫応答を誘引、活性化又は刺激する。本発明にしたがって用いられる医薬組成物の製造に使用される抗原は、微生物又は前記微生物の抗原性部分及び/又は調製物である。この関係では、本明細書で用いられる、“免疫性付与”という用語は、免疫応答の任意の原因又は強化を指すが、ただし前記に限定されない。
【0010】
本明細書で用いられる“免疫応答”という用語は、問題の組成物又はワクチンに対する細胞性及び/又は抗体仲介免疫応答を意味するが、ただしこれらに限定されない。通常、“免疫応答”には1つ以上の以下の効果が含まれる(ただし前記に限定されない):抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞傷害性T細胞及び/又はyd T細胞(前記は問題の組成物又はワクチンに含まれる抗原に特異的に誘導される)の産生又は活性化。好ましくは、宿主は、新規な感染に対する抵抗が強化されるか、及び/又は疾患の重症度が軽減されるように、治療的又は防御的な免疫学的応答を示すであろう。そのような防御は、上記に記載したように宿主の感染に付随する症状の軽減又は欠如によって示されるであろう。
本明細書で用いられる“抗原性部分及び/又はその調製物”という用語は、前記部分及び/又は調製物の少なくとも1つの分子が抗原性であるか、又は抗原性特性を有すること意味する。微生物の抗原性部分及び/又は調製物には、ペプチド、ポリペプチド、糖ペプチド及び/又は多糖類(抗原性特性を有する前記の任意のフラグメントを含む)が含まれるが、ただし前記に限定されない。
ある分子が、免疫系の抗原認識分子、例えば免疫グロブリン(抗体)又はT細胞の抗原レセプターと特異的に相互作用することができるとき、前記分子は“抗原性である”か、又は“抗原性特性”を有する。例えば抗原性ポリペプチドは、少なくとも約5アミノ酸、好ましくは少なくとも10アミノ酸のエピトープを含む。ポリペプチドの抗原性部分(本明細書ではまた“エピトープ”とも称される)は、抗体又はT細胞レセプター認識のためにイムノドミナントであるポリペプチドの部分であるか、又は前記は、免疫性付与のために、担体ポリペプチドと前記抗原性部分をコンジュゲートさせることによって、前記分子に対する抗体を生成させるために用いられるポリペプチドの一部分でありえる。抗原性分子はそれ自体免疫原性である必要はない(すなわち担体なしに免疫応答を誘引する能力を有する必要はない)。換言すれば、抗原性部分にはまた、免疫原性を有するために担体とコンジュゲートされる必要があるハプテンも含まれる(ただし前記に限定されない)。
【0011】
上記で述べたように、抗原は微生物又はその抗原性部分及び/又は調製物でありえる。好ましくは、前記微生物はウイルス又はその抗原性部分及び/又は調製物であり、もっとも好ましくは、インフルエンザウイルス又はその抗原性部分及び/又は調製物である。本発明の更なる特徴にしたがえば、医薬組成物の製造に用いられる抗原はトリインフルエンザウイルス又はその抗原性部分及び/又は調製物である。
本発明の更なる特徴にしたがえば、医薬組成物の製造に用いられる抗原は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(H)及び/又はノイラミニダーゼ(N)である。好ましくは、前記抗原はトリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9である。この関係では、“及び/又は”という用語は、上記に記載した単一の抗原又は複数の抗原の任意の組合せが医薬組成物の製造に用いられえることを意味する。ブタの集団に従来存在するH1又はH3株とは対照的に、H5及びおそらくH7はよりいっそう保存的であるようである。したがって、相互防御の確率はより高いように思われる。結果として、トリインフルエンザウイルスのH5及び/又はH7、もっとも好ましくはH5が、医薬組成物の製造のための抗原として用いられる。
本明細書で用いられる“ヘマグルチニン5(H5)”又は“トリインフルエンザウイルスのH5”という用語は、天然に存在する任意のH5及びH5の改変型(H5の欠失、置換及び/又は挿入変異体を含む)を意味するが、ただしこれらに限定されない。前記用語はさらに、H5の任意の抗原性部分(標準的なヘマグルチニン阻害アッセイで抗原性特性を示す任意のペプチドフラグメントを意味する)を指す。通常は、前記抗原性部分は、H5(改変又は非改変)をコードするアミノ酸配列の35、30、25、20、18、15、13、10、9連続アミノ酸、又はより好ましくは8連続アミノ酸を含み、前記は、標準的なヘマグルチニン阻害アッセイで抗原性特性を示す。例えば標準的なヘマグルチニン阻害アッセイは、以下の文献(Stephenson et al. Virus Research (2004) 103:91-95)及びさらに別の文献に記載され、又は実施例に記載されている。結果が疑問を生じる事例では、実施例2に記載のHIアッセイが、本明細書に記載する本発明の全ての特徴との関係で相対的な参照アッセイであると理解されよう。
【0012】
本発明にしたがって用いることができる好ましいH5抗原には、非改変H5と比較したときより高い抗原性特性を示す任意の改変H5抗原が含まれ、この場合、抗原性特性は、例えば実施例2に記載した標準的なヘマグルチニン阻害アッセイで測定される。略記すれば、HIアッセイはHA特異的抗体の存在を検出するために実施された。HIアッセイでは、異種H5N1ウイルス、A/ニワトリ/メキシコ/232/94が、4血球凝集単位(4HA単位)の濃度で用いられた。引き続いて、U底のマイクロタイタープレートでPBS中の2倍連続血清稀釈物が4単位のウイルスを含む等体積(25μL)と混合され、37℃で1時間インキュベートされた。ニワトリの赤血球(PBSで0.5%の濃度)が血清-ウイルス含有ウェルに添加され、室温で40分インキュベートされた。HI力価は、血球凝集阻害が観察された最高血清稀釈の逆数として決定された。
重要なことには、Haesebrouck and Pensaert(1986)は、「チャレンジに対するHI力価とチャレンジに対する防御との間には相関性が存在する可能性がある」ということを発見し、Haesebrouck and Pensaert(1986)はまた、40以上のHI力価を有するブタは「チャレンジに対して完全に耐性を有し、チャレンジ時にウイルスの複製は気道で発生しない」と決定した。したがって、ワクチン接種豚で40以上のHI力価の発生は防御と相関するであろう(F. Haesebrouck and M.B. Pensaert “Effect of intratracheal challenge of fattening pigs previously immunized with an inactivated influenza H1N1 vaccine”(Veterinary Microbiology, (1986) 11:239-249 239)。等価又は少なくともほぼ等価のH5 HI力価もまた、トリインフルエンザウイルスに対してブタの完全な免疫防御をもたらすか否かが確認されねばならない。少なくともワクチン接種動物の血清変換をもたらし、これら動物の部分的免疫防御をもたらす低い力価もまた流行病のリスクを劇的に軽減することができる。
【0013】
より好ましくは、本発明にしたがって用いられるH5抗原には改変H5抗原が含まれ、前記は、配列番号:2によってコードされるH5抗原と比較したとき抗原特性の増強を示す(抗原特性は標準的なヘマグルチニン阻害アッセイ、例えばLuschowら(Vaccine (2001) 19:4249-4259)の文献及びさらに別の文献に記載されたアッセイで測定される)。本明細書で用いられる“より高い又は増強された抗原特性”という用語は、参照H5抗原(すなわち、非改変H5抗原又は配列番号:2の配列を有するH5抗原)のヘマグルチニン阻害よりも少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも100%高いヘマグルチニン阻害を指す。
本発明にしたがって用いることができるさらに好ましいH5抗原には以下を含むペプチドを含む抗原が含まれる:
i)配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5又は配列番号:6のアミノ酸配列;又は
ii)上記に記載した標準的なヘマグルチニン阻害アッセイでヘマグルチニン阻害を含む、i)のポリペプチドと少なくとも85%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約90%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約95%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約97%の配列相同性、なお好ましくは少なくとも約98%の配列相同性、さらに好ましくは少なくとも約99%の配列相同性を有する任意のペプチド;又は
iii)i)又はii)のペプチドのいずれかの少なくとも35、30、25、20、18、15、13、10、9又はもっとも好ましくは8つの連続するアミノ酸を含むi)又はii)のポリペプチドの任意の抗原性部分;
iv)アミノ酸223N、36T/223N、36K/223N、83A/223N、83T/223N、83D/223N、86A/223N、86V/223N、120N/223N、120S/223N、155N/223N、155S/223N、156A/223N、156T/223N、189R/223N、189K/223N、212K/223N、212R/223N、212E/223N、223N/263A、223N/263T、又は120N/155N/223N;
v)アミノ酸223N及び以下から成る群から選択されるアミノ酸クラスターの1つ以上を有するi)、ii)、iii)又はiv)の任意のペプチド:
a.アミノ酸93−95:GNF
b.アミノ酸123−125:SDH
c.アミノ酸128−130:SSG
d.アミノ酸138−140:GSS
e.アミノ酸226−228:MDF
f.アミノ酸270−272:EVE
g.アミノ酸309−311:NKL;又は
vi)アミノ酸223N及び以下から成る群から選択されるアミノ酸クラスターの1つ以上を有するi)、ii)、iii)又はiv)の任意のペプチド:
a.アミノ酸93−95:GNF
b.アミノ酸128−130:SSG
c.アミノ酸138−140:GSS。
【0014】
本発明にしたがって用いることができるさらに好ましいH5抗原には、表1に提供されるペプチド又はその任意の抗原部分を含むH5抗原が含まれる。
【0015】
表1:H5抗原




# 表1で与えられるアミノ酸の位置は、配列番号:1で例示的に規定した位置を示す。換言すれば、表1のアミノ酸223は、配列番号:1の配列のアミノ酸223を示す。
-は、この位置のアミノ酸は参照配列と比較したとき変動しえることを意味する。
【0016】
本発明にしたがって用いることができるさらに好ましいH5抗原には、以下を含むH5抗原が含まれる:
i)以下のNCBIアクセッション番号の配列を有するペプチド:AAT65209、CAJ32556、ABC47656、CAF21874、CAF21870、AAC58998、AAC58997、AAC58996、AAC58994、AAC58993、AAC58992、AAC58991、AAC58990、AAC58995、AAS45134、AAN17270、AAN17269、AAN17268、AAN17267、AAN17266、AAN17265、AAN17264、AAN17263、AAN17262、AAN17261、AAN17260、AAN17259、AAN17257、AAN17265、AAN17255、AAN17254、AAA43083、AAA43082、AAB19079、BAE48696、BAE48693、BAE48696、BAE48695、BAE48694、BAE48692、BAE48691、BAE48690、BAE48689、BAE48688、BAE48687、BAE48687、BAE48685、BAE48684、BAE48683、AAC58999、ABC72082、AAV91149、AAP71993、AAP71992、AAP71991、AAP71990、AAP71989、AAP72011、AAP72010、AAP72009、AAP72008、AAP72007、AAP72006、AAP72005、AAP72004、AAP72003、AAP72002、AAP72001、AAP72000、AAP71999、AAP71998、AAP71997、AAP71996、AAP71995、AAP71994、AAF99718、ABF58847、AAG38534、AAC32102、AAC32099、AAL75847、AAC32101、AAC32098、AAC32088、AAC32078、AAR99628、AAR99628、AAC32100、AAM49555、AAL75843、AAL75839、AAD13573、AAD13568、AAF04720、AAF04719、AAC34263、AAR16155、AAD13574、AAD13570、AAD13575、AAD13572、AAD13569、AAD13567、AAD13566、AAK57506、AAG01225、AAG01215、AAG01205、AAG01195、若しくはABD83813、又は
ii)上記に記載した標準的なヘマグルチニン阻害アッセイでヘマグルチニン阻害を示す、i)のポリペプチドと少なくとも85%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約90%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約95%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約97%の配列相同性、なお好ましくは少なくとも約98%の配列相同性、さらに好ましくは少なくとも約99%の配列相同性を有する任意のペプチド;
iii)アミノ酸223N、36T/223N、36K/223N、83A/223N、83T/223N、83D/223N、86A/223N、86V/223N、120N/223N、120S/223N、155N/223N、155S/223N、156A/223N、156T/223N、189R/223N、189K/223N、212K/223N、212R/223N、212E/223N、223N/263A、223N/263T、若しくは120N/155N/223Nを有するi)若しくはii)の任意のペプチド;又は
iv)i)、ii)又はiii)のそのようなペプチドのいずれかの少なくとも35、30、25、20、18、15、13、10、9又はもっとも好ましくは8つの連続するアミノ酸を含むi)、ii)のペプチドの任意の抗原性部分;又は
v)iv)のそのような抗原性部分のいずれかであって、そのような抗原性部分がH5のアミノ酸223を含むもの;又は
vi)v)のそのような抗原性部分のいずれかであって、前記抗原性部分がアミノ酸223Nを含むもの;又は
vii)アミノ酸223N及び以下から成る群から選択される1つ以上のアミノ酸クラスターを有するi)、ii)、iii)、iv)、v)又はvi)の任意のペプチド:
h.アミノ酸93−95:GNF
i.アミノ酸123−125:SDH
j.アミノ酸128−130:SSG
k.アミノ酸138−140:GSS
l.アミノ酸226−228:MDF
m.アミノ酸270−272:EVE
n.アミノ酸309−311:NKL;又は
viii)アミノ酸223N及び以下から成る群から選択されるアミノ酸クラスターの1つ以上を有するi)、ii)、iii)又はiv)の任意のペプチド:
d.アミノ酸93−95:GNF
e.アミノ酸128−130:SSG
f.アミノ酸138−140:GSS。
【0017】
本明細書で用いられる“配列相同性”は、2つの配列の関連性を決定する方法に関する。配列相同性を決定するためには、2つ以上の配列で最適なアラインメントが実施され、必要な場合にはギャップが導入される。配列同一性とは対照的に、保存的アミノ酸置換は、配列相同性を決定するときにはマッチと数えられる。換言すれば、参照配列と95%の配列相同性を有するポリペプチド又はポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のアミノ酸残基又はヌクレオチドの85%、好ましくは90%、より好ましくは95%がもう一方のアミノ酸又はヌクレオチドとマッチするか、又は保存的置換を含まねばならないか、又は参照配列中の全アミノ酸残基又はヌクレオチド数の15%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%までのアミノ酸又はヌクレオチド(保存的置換を含まない)が参照配列に挿入されえる。好ましくは、相同配列は、少なくとも50、より好ましくは100、より好ましくは250、さらに好ましくは500の一続きのヌクレオチドを含む。そのようなアラインメントに際して、配列相同性は各位置毎に確認される。例えば、特定の位置でヌクレオチド又はアミノ酸残基が同一ならば、前記配列は前記の位置で“相同”である。そのような位置同一性の総数を参照配列中のヌクレオチド又はアミノ酸残基の総数で割って、%配列相同性が与えられる。配列相同性は公知の方法によって容易に計算することができる。前記方法は以下の文献に記載された方法が含まれるが、ただしこれらに限定されない:Computational Molecular Biology, A.N. Lask ed., Oxford University Press, New York (1988);Biocomputing: Infomatics and Genome Projects, D.W. Smith ed., Academic Press, New York (1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I, A.M. Griffin and H.G. Griffin eds., Humana Press, New Jersey (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, G. von Heinge, Academic Press (1987);Sequence Analysis Primer, M. Gribskov and J. Devereux, M. Stockton Press, New York (1991);及びH. Carillo and D. Lipman, SIAM J Applied Math., (1988) 48:1073(前記文献の教示は参照により本明細書に含まれる)。配列相同性を決定する好ましい方法は、検査される配列間で最大のマッチが与えられるように設計される。配列相同性を決定する方法は、一般に利用可能なコンピュータプログラム(前記プログラムは与えられた配列間の配列同一性を決定する)に集大成されている。そのようなプログラムの例には、GCGプログラムパッケージ(J Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Research 12(1):387)、BLASTP、BLASTN及びFASTA(S.F. Altschul et al. J Molec Biol (1990) 215:403-410)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。BLASTXプログラムはNCBI及び他の供給元から一般に利用できる(BLAST Manual, S. Altschul et al. NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894;S.F. Altschul et al. (1990) J Molec Biol 215:403-410(前記文献の教示は参照により本明細書に含まれる))。これらのプログラムは、与えられた配列と参照配列との間の配列相同性の最高レベルを得るために、規定値ギャップ荷重を用いて配列の最適なアラインメントを実施する。
【0018】
本発明にしたがって用いることができるさらに好ましいH5抗原は以下のとおりである:
i)アミノ酸223N及び328K+改変を有する上記に記載されたもののいずれか;
ii)アミノ酸94N/223N及び328K+改変を有する上記に記載されたもののいずれか;
iii)アミノ酸223N及び328K+改変を有するニワトリ起源の任意のH5抗原であって、ここでニワトリ起源が、H5配列は、トリインフルエンザウイルス5型に感染した家禽から最初に単離されたウイルス単離株に由来することを意味する、前記任意のH5抗原;又は
iv)アミノ酸94N/223N及び328K+改変を有するニワトリ起源の任意のH5抗原であって、ここでニワトリ起源が、H5配列は、トリインフルエンザウイルス5型に感染した家禽から最初に単離されたウイルス単離株に由来することを意味する、前記任意のH5抗原;又は
v)アミノ酸155N/223N及び328K+改変を有するニワトリ起源の任意のH5抗原であって、ここでニワトリ起源が、H5配列は、トリインフルエンザウイルス5型に感染した家禽から最初に単離されたウイルス単離株に由来することを意味する、前記任意のH5抗原;又は
vi)アミノ酸120N/155N/223N及び328K+改変を有するニワトリ起源の任意のH5抗原であって、ここでニワトリ起源が、H5配列は、トリインフルエンザウイルス5型に感染した家禽から最初に単離されたウイルス単離株に由来することを意味する、前記任意のH5抗原;又は
vii)94N/223N改変及び328K+改変を有する任意のH5抗原;又は
viii)94N/155N/223N改変及び328K+改変を有する任意のH5抗原;又は
ix)94N/120N/155N/223N改変及び328K+改変を有する任意のH5抗原;又は
x)223N改変及び328K+改変、並びに以下から成る群から選択される1つ以上のアミノ酸クラスターを有する任意のH5抗原
a.アミノ酸93−95:GNF
b.アミノ酸123−125:SDH
c.アミノ酸128−130:SSG
d.アミノ酸138−140:GSS
e.アミノ酸226−228:MDF
f.アミノ酸270−272:EVE
g.アミノ酸309−311:NKL;又は
xi)アミノ酸223N及び328K+改変、並びに以下から成る群から選択される1つ以上のアミノ酸クラスターを有する任意のH5抗原
a.アミノ酸93−95:GNF
b.アミノ酸128−130:SSG
c.アミノ酸138−140:GSS;又は
xii)配列番号:4の配列を有する任意のH5抗原。
【0019】
本発明にしたがって用いることができるさらにまた好ましいH5抗原には、Hoffmannら(PNAS, (2005, Sep) 106(3):12915-12920)が記載したH5抗原が含まれる(本文献の内容は参照により完全に本明細書に含まれる)。
本明細書で用いられるH5タンパク質のアミノ酸の位置の番号は、配列番号:1で例示的に与えられているアミノ酸配置を指す。配列番号:1は、アヒル/中国/E319-2/03株のヘマグルチニンのアミノ酸配列を表すが、シグナルペプチドを欠いている。換言すれば、223位のアミノ酸(アミノ酸223)という場合、配列番号:1のアミノ酸223に対応するアミノ酸残基を指す。従来の事例では、アミノ酸223はセリン(S)であろう。“232N”又は“155N”という用語は典型的には、アミノ酸223位及び155位(配列番号:1のアミノ酸配置にしたがって番号が付与される)は、それぞれアミノ酸のアスパラギン(N)をコードすることを意味する。換言すれば、“アミノ酸223Nを有するH5抗原”という場合(H5アミノ酸はアミノ酸223位(配列番号:1のアミノ酸配置にしたがって番号が付与される)で通常はセリンをコードする)、前記アミノ酸はアスパラギン(N)によって置換されるであろう。“328K+”又は“328K+改変”という用語は、H5抗原のアミノ酸328位に(配列番号:1のアミノ酸配置にしたがって番号が付与される)、第二のリジン(K+)が挿入されることを意味する。328位及び329位のアミノ酸配列がリジン-リジンをコードする事例では、更なるリジン(K)は挿入されないであろう。しかしながら、既知のH5配列の大半がアミノ酸328位及び329でリジン-アルギニンをコードする。そのような事例ではいずれも、328+K改変という用語は、第二のリジン(K)が328位のリジンと329位のアルギニンの間に挿入されることを意味する。したがって改変配列はリジン-リジン-アルギニン(KKR)と理解される。
【0020】
本発明の意図ではまた、任意の他の抗原(特に任意のH及びN抗原)を改変又は非改変型で用いることができる。H5抗原に関して述べたように、標準的なヘマグルチニン阻害アッセイで、非改変抗原と比較したとき高い抗原性特性を示す改変抗原がもっとも好ましい。
インフルエンザウイルスのヌクレオチド配列内に任意の上記改変を導入する方法はよく知られている。完全なインフルエンザウイルスのゲノム配列を本発明にしたがって、例えば米国特許6,951,754号及び他の文献に記載された方法にしたがって改変することができる。
さらにまた、本明細書に記載の抗原をコードする核酸配列を改変するために、当業者の技量の範囲内にある通常の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術を利用することができる。そのような技術は文献で完全に説明されている。例えば以下を参照されたい:Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Harmes & S.J. Higgins eds. (1985));Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984));Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986));Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press (1986));B. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);F.M. Ausubel et al. (eds), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)。
【0021】
ワクチン接種動物におけるヘマグルチニン抗原(例えばH5)に対する免疫応答は、例えば実施例2で述べるような、当分野で周知の標準的な方法によって測定することができる。略記すれば、血清抗体力価(主としてヘマグルチニン阻害(HI)及び/又はウイルス中和アッセイによって決定されるもの)が、免疫防御についての認容された代用測定方法である。標準的なHI及びウイルス中和アッセイは、Madin Darbyイヌ腎細胞で以下の文献の記載にしたがって実施することができる:Palmer et al. (1975) Advanced Laboratory Techniques for Influenza Diagnosis, US Department of Health, Education and Welfare, Washington, DC;及び/又はKida et al. (1982) Virology 122:38-47。本発明に関して用いられる参照検査は、Luschowら(Vaccine (2001) 19:4249-4259)及びさらに別の文献に記載されている。上記で既に述べたように、疑わしい結果を示す事例では、実施例2に記載するHIアッセイが、本明細書に記載する本発明の全ての特徴との関係で相対的参照アッセイであると考えられる。
更なる一般的な特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原を含む抗原組成物を第二の種の動物の免疫用医薬組成物の製造に使用することに関し、前記は、第一の種の動物の病原体の抗原を含む医薬組成物の第二の種の動物への投与によって、第一の種の動物に感染性である病原体の第二の種の動物における複製の低下又は欠如が、第二の種の動物が第一の種の動物の前記感染性病原体に感染したときにもたらされることを特徴とする(ただし前記医薬組成物の抗原性組成物の抗原が前記感染性病原体中または病原体上に存在することを条件とする)。本明細書で用いられる“複製”という用語は、とりわけ病原体のゲノムの倍増/増加を意味する。複製の低下という用語の意味は上記に記載されている。
【0022】
さらに別の一般的な特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原を含む抗原組成物を第二の種の動物の免疫用医薬組成物の製造に使用することに関し、前記は、第一の種の動物の病原体の抗原を含む医薬組成物を第二の種の動物に投与することによって、第二の種の動物が第一の種の動物の前記感染性病原体に感染したときに、第一の動物の感染性病原体が第二の動物に順応するのを防ぐことを特徴とする。本明細書で用いられる“順応”という用語はとりわけ、病原体が新しい種での複製に適応することを意味し、前記は病原体が種の障壁を越えたことを意味する。病原体が、垂直に拡散する(種間伝播又は垂直伝播とも称される)ならば(前記は同じ種の動物から動物への拡散を意味する)、種の障壁を越えたとみなされる。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、ブタへの投与を目的とする医薬組成物の製造にトリインフルエンザウイルスのヘマグルチニンH1、H3、H5、H7及び/又はH9を使用することに関し、この場合、前記医薬組成物は、ブタに投与されたとき、サブタイプH1、H3、H5、H7又はH9の感染性トリインフルエンザウイルスの感染時に前記サブタイプH1、H3、H5、H7又はH9の感染性トリインフルエンザウイルスのブタにおける増殖の低下又は欠如をもたらす。
【0023】
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、トリインフルエンザウイルスのヘマグルチニンH1、H3、H5、H7及び/又はH9を医薬組成物の製造に使用することに関する。前記組成物は、ブタに投与されたとき、サブタイプH1、H3、H5、H7又はH9の感染性トリインフルエンザウイルスによる感染時に、サブタイプ5の感染性トリインフルエンザウイルスがトリからブタへ順応するのを防ぐ。抗原H5及び/又はH7の使用がもっとも好ましい。さらに別の特徴にしたがえば、前記医薬組成物の製造にトリインフルエンザウイルスのヘマグルチニンH5及び/又はH7を使用するのがさらに好ましい。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、トリインフルエンザに対して動物を治療及び/又は予防するためのワクチンの製造に、サブタイプH1、H3、H5、H7及び/又はH9の感染性トリインフルエンザウイルスの抗原を含む医薬組成物を使用することに関する。好ましくは、使用される抗原は、トリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9である。より好ましくは、使用される抗原はトリインフルエンザウイルスのH5及び/又はH7である。この実施態様のさらに別の特徴にしたがえば、治療されるべき動物は家禽、例えば鳥、アヒル又はガチョウである。本発明のさらに別の特徴にしたがえば、治療されるべき動物は、哺乳動物、好ましくはブタ、ウシ、ウマ、アザラシ、ラクダ、イヌ、ネコ、ハムスター、マウス、又はヒトである。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原が、前記第一の種の動物の抗原に対して第二の種の動物を免疫するために用いられることを特徴とする、第一の種の動物の病原体が第二の種の動物に伝播されるのを防ぐ方法に関する。この場合、前記抗原の投与によって、第二の種の動物における前記第一の種の動物の病原体の増殖の低下又は欠如がもたらされる。
【0024】
上記に記載した方法のさらに別の実施態様にしたがえば、前記第一の種は家禽である。前記方法のさらに別の特徴にしたがえば、前記第二の種の動物は、哺乳動物、好ましくはブタ、ウシ、ウマ、アザラシ、ラクダ、イヌ、ネコ、ハムスター、マウス、又はヒト、もっとも好ましくはブタである。本方法の抗原は上記に記載した抗原である。好ましくは、前記抗原は、微生物又は前記微生物の抗原性部分及び/又は調製物である。より好ましくは、前記微生物はウイルス起源であり、より好ましくは、前記微生物はトリインフルエンザウイルスである。
好ましくは、第一の種の動物の病原体は上記に記載したものである。略記すれば、そのような病原体はトリインフルエンザウイルスである。さらに別の特徴にしたがえば、前記病原体は、トリインフルエンザウイルスのサブタイプH1、H3、H5、H7又はH9である。より好ましくは、前記病原体はトリインフルエンザウイルスのサブタイプH5N1である。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原が、前記第一の種の動物の抗原に対して第二の種の動物を免疫するために用いられることを特徴とする、第一の種の動物の病原体が第二の種の動物に伝播されるのを防ぐ方法に関する。前記方法では、前記抗原の投与によって、第二の種の動物における前記第一の種の動物の病原体の増殖の低下又は欠如がもたらされ、前記抗原はインフルエンザウイルス(好ましくはトリ起源)のヘマグルチニン(H)及び/又はノイラミニダーゼ(N)である。前記方法のさらに別の特徴にしたがえば、前記抗原は、トリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9であるが、H5及び/又はH7がより好ましい。これらの抗原に関するより詳細な記載は上記で見出される。
【0025】
さらに別の重要な特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原が、第二の種のヒト以外の動物を免疫するために用いられ、前記免疫は第一の種の動物の病原体に対するものではないことを特徴とする、第一の種の動物の病原体がヒトに伝播されるのを防ぐ方法に関する。ここで、前記抗原の投与によって、前記第二の種の動物における第一の種の動物の病原体の増殖の低下又は欠如がもたらされる。好ましくは、前記第一の種は、家禽、例えば鳥、ニワトリ、アヒルなどであり、第二の種の動物はヒト以外の哺乳動物、好ましくはブタ、ウシ、ウマ、アザラシ、ラクダ、イヌ、ネコ、ハムスター、マウス、もっとも好ましくはブタである。
第一の種の動物の病原体は上記に記載したものである。略記すれば、そのような病原体はトリインフルエンザウイルスである。さらに別の特徴にしたがえば、前記病原体は、トリインフルエンザウイルスのサブタイプH1、H3、H5、H7又はH9である。より好ましくは、前記病原体はトリインフルエンザウイルスのサブタイプH5N1である。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体の抗原が、第二の種の動物を前記第一の種の動物の病原体に対して免疫するために用いられることを特徴とする、第一の種の動物の病原体がヒトに伝播されるのを防ぐ方法に関する。前記方法では、前記抗原の投与によって、前記第二の種の動物における第一の種の動物の病原体の増殖の低下又は欠如がもたらされ、前記抗原はインフルエンザウイルス(好ましくはトリ起源)のヘマグルチニン(H)及び/又はノイラミニダーゼ(N)である。前記方法のさらに別の特徴にしたがえば、前記抗原は、トリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9であるが、H5及び/又はH7がより好ましい。これらの抗原に関するより詳細な記載は上記で見出される。
【0026】
本発明のさらに別の特徴は、第一の種の動物の病原体と第二の種の病原体との間で動物において生じる組換えを防ぐか又は低下させる方法に関し、前記方法では、第一の種の動物の病原体の抗原を含む医薬組成物が、第一の種の動物の病原体に対して第二の種の動物を免疫するために用いられる。組換え事象は、しばしば種の障壁を越える原因となる。これらの組換え事象の減少又は防止によって、種の障壁を越えるリスクが減少するであろう。病原体が垂直に拡散するならば(前記は同じ種の動物から動物への拡散を意味する)(種間伝播又は垂直伝播とも称される)、病原体は種の障壁を越えたとみなされる。
好ましくは、病原体は規定の科又は属に属する。より好ましくは、これら病原体はウイルス、好ましくはインフルエンザウイルスである。本方法のさらに別の実施態様にしたがえば、第一の病原体はトリインフルエンザウイルスであり、第二の病原体は哺乳動物のインフルエンザウイルスである。さらにまた、第一の病原体がトリインフルエンザウイルスであり、第二の病原体が哺乳動物のインフルエンザウイルスである場合には、好ましい医薬組成物は、トリインフルエンザウイルスH1、H3、H5、H7及び/又はH9、より好ましくはH5及び/又はH7の抗原を含む。
さらに別の特徴にしたがえば、本発明は、第一の種の動物の病原体と第二の種の病原体との間で動物において生じる組換えを低下又は防止する方法に関し、前記方法では、第一の種の動物の病原体の抗原を含む医薬組成物が、第一の種の動物の病原体に対して第二の種の動物を免疫するために用いられ、さらに前記抗原の投与によって、第二の種の動物における前記第一の種の動物の病原体の増殖の低下又は欠如がもたらされる。好ましくは、これらの病原体は規定の科又は属に属する。より好ましくは、これら病原体はウイルス、好ましくはインフルエンザウイルスである。さらにまた、第一の病原体がトリインフルエンザウイルスであり、第二の病原体が哺乳動物のインフルエンザウイルスである場合には、好ましい医薬組成物は、トリインフルエンザウイルスH1、H3、H5、H7及び/又はH9、より好ましくはH5及び/又はH7の抗原を含む。
【0027】
本発明にしたがって用いられる抗原、抗原性組成物は、組換え事象、例えば昆虫細胞でバキュロウイルス発現系を使用することによって生成することができる。十分に確立された組換え発現系のさらに別の例は、細菌の発現系(例えば大腸菌若しくは枯草菌発現系)、酵母系発現系(例えばS.セレビシエ(cerevisiae)又はS.ポンベ(ponbe)発現系)、又は哺乳動物細胞発現系(例えばBHK-、CHO-及びNS0-系発現系)である。そのような系は当分野で周知であり、一般的に入手可能で、例えばクロンテック・ラボラトリーズ社(Clontech Laboratories, Inc., 4030 Fabian Way, Palo Alto, California 94303-4607, USA)から市場で入手できる。さらに別の発現方法は、例えば以下に記載されている:Luschow et al. Vaccine (2001) 19:4249-4259;又はVeit et al. (2006) PNAS 103:8197-8202。さらにまた、アデノ関連ウイルス組換え系も十分に確立され、例えばUS5,436,146又はWO200203872に更なる論及とともに記載されている。さらにまた、ワクシニア(ポックス)ウイルス系発現系もまた十分に確立されてあり、本発明にしたがって用いられる組換え抗原、抗原性組成物の調製に適している(前記は例えばUS6,265,183に更なる論及とともに記載されている)。さらに適切な発現系は、組換えパポーバウイルス(例えばSV40)、鶏痘ウイルス、偽性狂犬病ウイルス及びレトロウイルスを利用する。
本発明のさらに別の好ましい特徴にしたがえば、複数の抗原又は少なくとも1つの抗原は、バキュロウイルス発現系を用いることによって昆虫細胞で製造される。より好ましくは、組換えバキュロウイルスは前記抗原をコードし前記抗原を産生する。したがって、本発明のさらに別の特徴にしたがえば、トリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9抗原は組換えバキュロウイルスによってコードされ産生される。
【0028】
しかしながら、関連抗原、抗原性組成物はまた、抗原を含む不活化ウイルス;ウイルスの抗原、調製物及び/又はフラグメント(前記調製物及び/又はフラグメントは抗原を含む)を含む生ウイルスの非病原性型であってもよい。
本発明のまた別の重要な特徴は、医薬組成物(例えばワクチン)の製造である。前記組成物は、上記に記載した病原体の少なくとも1つの抗原を含む。当業者は、抗原とともに前記組成物/ワクチンに含まれえるまた別の成分を理解していよう(例えば以下を参照されたい:Remington's Pharmaceutical Sciences. (1990) 18th ed. Mack Publ., Easton)。専門家は公知の注射可能な、生理学的に許容できる無菌適用液を用いることができる。即席溶液を調製するためには、等張な水溶液(例えば食塩水又は対応する血漿タンパク質溶液)を容易に利用することができる。医薬組成物/ワクチンは、公知の注射可能な溶液により使用前に無菌的条件下で直接再構成できる、凍結乾燥又は乾燥調製物として(例えばパーツで構成されたキットとして)存在することができる。
さらにまた、本発明の医薬/ワクチン組成物は、獣医が許容することができる1つ以上の担体を含むことができる。本明細書で用いられる、“獣医が許容することができる担体”とは、任意の全ての溶媒、分散媒体、コーティング、アジュバント、安定化剤、稀釈剤、保存料、抗菌及び抗カビ剤、等張剤、吸着遅延剤などを含むが、ただしこれらに限定されない。
稀釈剤には水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれえる。等張剤には、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール及びラクトースが含まれえる。安定化剤には、とりわけアルブミン及びエチレンジアミンテトラ酢酸のアルカリ塩が含まれる。
【0029】
本明細書で用いられる“アジュバント”には、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A, QS-21(Cambridge Biotech Inc., Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals, Inc., Birmingham, AL)、油中水エマルジョン、水中油エマルジョン、水中油中水エマルジョンが含まれえる。
エマルジョンは特に以下を基剤とすることができる:軽流動パラフィン(European Pharmacopea型);イソプレノイド油、例えばスクワラン又はスクワレン;アルケン(特にイソブチレン又はデセン)のオリゴマー化から生じる油;直鎖アルキル基を含む酸又はアルコールのエステル、より具体的には植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ-(カプリレート/カプレート)、又はプロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステル。エマルジョンを生成するために、油をエマルジョンと組み合わせて用いる。エマルジョンは、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタン、マンニド(例えば無水マンニトールオレエート)、グリコール、ポリグリセロール、プロピレングリコールのエステル、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸のエステル(これらは場合によってエトキシル化されている)、及びポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニック(Pluronic)の製品、特にL121である(以下を参照されたい:Hunter et al. The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed. D.E.S. Stewart-Tull) JohnWiley and Sons, NY, 51-94 (1995);及びTodd et al. Vaccine (1997) 15:564-570)。適切な水中油エマルジョンの例は、エマルシゲン(Emulsigen)系アジュバント、例えばEMULSIGEN(商標)、EMULSIGEN-D(商標)、EMULSIGEN-P(商標)、EMULSIGEN-75(商標)(MVP Laboratories, Inc. Omaha, NE, USA)である。驚くべきことに、H5抗原、好ましくは組換えH5抗原を含む医薬/ワクチン組成物は、水中油、好ましくはエマルシゲン系アジュバント、より好ましくはEMULSIGEN(商標)及びEMULSIGEN-P(商標)で効果的にアジュバント処理されることが見出された。
さらにまた、”Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach”(M. Powell and M. Newman ed., Plenum Press, 1995)の147ページに記載されたSPTエマルジョン、及び同書物の183ページに記載されたMF59エマルジョンを使用することもできる。
【0030】
アジュバントのさらに別の例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、並びにマレイン酸無水物及びアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に、糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルで架橋されたアクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カーボマーという名称で知られている(Phameuropa 8(2), 1996, June)。当業者はまた米国特許2,909,462号を参照することができる。前記には、ポリヒドロキシル化された化合物(少なくとも3つの(好ましくは8つを超えない)ヒドロキシル基を有し、少なくとも3つのヒドロキシルの水素原子は少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルで置換されている)で架橋されたそのようなアクリル酸ポリマーが記載されている。前記好ましいラジカルは、2から4個の炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリル及び他のエチレンが不飽和の基である。前記不飽和ラジカルは、それ自体他の置換基、例えばメチルを含むことができる。カルボポル(Carbopol)という名称で販売されている製品(BF Goodrich, Ohio, USA)が特に適切である。それらはアリルシュクロース又はアリルペンタエリトリトールで架橋される。さらにまたカルボポル974P、934P及び971Pも記載することができる。もっとも好ましいものはカルボポル971Pである。マレイン酸無水物とアルケニル誘導体のコポリマーの中では、マレイン酸無水物とエチレンとのコポリマーであるコポリマーEMA(Monsanto)が、これらポリマーの水への溶解は酸性溶液を生じ、前記溶液は、免疫原性、免疫学的又はワクチン組成物自体がその中に取り込まれる、アジュバント溶液を提供するために、好ましくは生理学的pHに中和されるであろう。
さらに適切なアジュバントには、多くのものの中でとりわけ、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx, Atlanta GA)、SAF-M(Chiron, Emeryville CA)、モノホスホリル脂質A、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌の易熱性エンテロトキシン(組換え又は他の方法による)、コレラ毒素、又はムラミルジペプチドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0031】
好ましくは、アジュバントは約100μgから約10mg/ドースの量で添加される。より好ましくは、アジュバントは約100μgから約10mg/ドースの量で添加される。より好ましくは、アジュバントは約500μgから約5mg/ドースの量で添加される。さらに好ましくは、アジュバントは約750μgから約2.5mg/ドースの量で添加される。もっとも好ましくは、アジュバントは約1mg/ドースの量で添加される。
医薬/ワクチン組成物は、さらに1つ以上の他の免疫調節剤、例えばインターロイキン、インターフェロン又は他のサイトカインを含むことができる。医薬/ワクチン組成物はまたゲンタマイシン及びマーチオレートを含むことができる。本発明の関係で有用なアジュバント及び添加物の量及び濃度は当業者には容易に決定することができるが、本発明は、ワクチン組成物の1mLドース当たり約50μgから約2000μg、好ましくは約250μgのアジュバントを含む組成物を意図する。別の好ましい実施態様では、本発明は、約1μg/mLから約60μg/mLの抗生物質、より好ましくは約30μg/mL未満の抗生物質を含むワクチン組成物を意図する。
インフルエンザワクチンの投与方法は当分野では周知である。不活化及び弱毒ウイルスワクチンのための粘膜ワクチン接種が意図される。粘膜はワクチンの局所デリバリーの標的でありえるが、種々の方法を用いて免疫原性タンパク質を粘膜にデリバーすることができる。
特別な実施態様では、ワクチンは、コレラ毒素(例えばコレラ毒素B又はコレラ毒素A/Bキメラ)との混合物として、又は前記とのコンジュゲート若しくはキメラ融合タンパク質として投与してもよい(Hajishengallis, J Immunol (1995) 154:4322-32;Jobling and Holmes, Infect Immun (1992) 60:4915-24)。コレラ毒素Bサブユニットの使用による粘膜ワクチン接種は以下の文献に記載されている:Lebens and Holmgren, Dev Biol Stand (1994) 82:215-27。別の実施態様では、易熱性エンテロトキシン(LT)との混合物を粘膜ワクチン接種のために調製することができる。
他の粘膜免疫付与方法には、マイクロカプセルへのウイルスの被包化(US5,075,109、US5,820,883及びUS5,853,763)、及び免疫強化膜性担体の使用(WO98/0558)が含まれる。経口投与された免疫原の免疫原性は、赤血球細胞(rbc)又はrbcゴーストを使用することによって(US5,643,577)、又はブルータング抗原を使用することによって(US5,690,938)強化することができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例では、本発明の好ましい材料及び方法を説明する。しかしながら、これらの実施例は説明のために提供され、その中のいずれも本発明の全体の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
実施例1:HA H5抗原をコードしこれを発現する組換えバキュロウイルスの構築
H5 HA抗原を含む組換えバキュロウイルスは以下のように作出した:H5 HAのコード配列(配列番号:2)を化学的に合成し、トランスファーベクターpVL1392(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)でサブクローニングした。H5 HA MutK+(配列番号:4)をオリゴヌクレオチドプライマー及びQuikChange(商標)位置特異的突然変異導入キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて作出し、トランスファーベクターpVL1392(BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)でサブクローニングした。続いて、H5 HA抗原及びH5 HA MutK+(配列番号:4)をコードする遺伝子を含むpVL1392プラスミドを、DiamondBac(商標)(Sigma)バキュロウイルスDNAとともにSf9昆虫細胞(BD Biosciences Pharmingen)に同時トランスフェクトして、配列番号:2をコードする遺伝子H5 HA及び配列番号:4をコードする遺伝子H5 HA MutK+を含む組換えバキュロウイルスを作出した。H5 HAをコードする遺伝子(配列番号:2)及びH5 HA MutK+をコードする遺伝子(配列番号:4)を含む組換えバキュロウイルスをプラーク精製し、マスターシードウイルス(MSV)をSF9細胞株で増殖させ、部分採取し、-70℃で保存した。MSV又は作業用シードウイルスを作成するために、上記に記載したようにH5 HAバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞は、ポリクローナル血清又はモノクローナル抗体によって間接蛍光抗体アッセイ又はウェスタンブロットで検出したとき、H5 HA抗原(配列番号:2)及びH5 HA MutK+(配列番号:4)抗原を発現する。
適切な量の組換えバキュロウイルス(それぞれH5 HA及びH5 HA MutK+)を播種した後、引き続いてSF+細胞(Protein Sciences, Inc., Meriden, CT)を含むスピンナーフラスコを7日間27±2℃で、その間100rpmで回転させながらインキュベートした。前記フラスコでは通気キャップを用い、空気を通した。各培養のバキュロウイルス感染SF+細胞及び細胞培養上清を含む全細胞粗培養を採集した。
【0033】
実施例2:HA H5抗原を含む医薬組成物(ワクチン)の調製
バキュロウイルスベースの発現系によって昆虫細胞で発現された完全細胞の粗H5 HAタンパク質及びH5 HA MutK+タンパク質を採集した。5mM(最終濃度)の環化二元エチレンイミン(BEI)の存在下で約32から39℃で72から96時間バキュロウイルスを不活化した。不活化が完了した後、0.3Mのチオ硫酸ナトリウム溶液を最終濃度5mMで添加し、一切の残留BEIを中和した。中和後に種々のアジュバントを添加し、以下のワクチン/医薬組成物を作出した。
【0034】
ワクチン



























【0035】
実施例3:トリインフルエンザに対するブタのワクチン接種
1.序文
本実験の目的は、組換えH5ヘマグルチニン(HA)抗原の粗抽出物を含む実験的ワクチンがヘマグルチニン阻害(HI)力価をブタで誘発する能力を決定することであった。種々のアジュバントをH5 HA抗原に関して評価した。
本実験で評価したHA H5の原型、通常のH5 HA又はH5 HA MutK+のどちらかに由来する抗原を含んでいた。通常のH5 HAはA/アヒル/中国/E319-2/03に由来し、一方、H5 HA MutK+は、S120N、D150N、S223Nに3つの特定のアミノ酸変化、並びに328mutK+を含むように操作した通常のH5 HAから成っている。前記はまたアミノ酸94Nを含む。H5 HA MutK+における特定のアミノ酸変化は、A/HK/213/03により厳密に類似するH5 HAをもたらす。A/HK/213/03のH5 HAのアミノ酸組成は、H5 HAの抗体認識を促進するとこれまで考えられている。
2.実験設計
表1:実験の大要

【0036】
子豚は実験の開始時に3週±5日齢であった。前記子豚は実験の開始時に臨床的に健康であった。血液サンプルは実験0日目、21日目、及び35日目に採取した。
全実験動物は、実験1日目から35日目まで一般的な健康状態について毎日観察した。各ワクチン接種後の7日間、注射部位を毎日観察し、目に見える反応を記録した。実験35日目の本実験の動物に関する局面の終わりに、前記動物を人道的に安楽死させた。
3.ワクチン
実施例2に記載したワクチン501から514をこのブタワクチン接種実験に用いた。
4.ヘマグルチニン阻害アッセイ
ブタをH5 HAを含むプロトタイプで0日目及び21日目にワクチン接種した。ヘマグルチニン阻害(HI)アッセイによって判定するために0、21,35日目にブタの血清を採集した。HA特異的抗体を検出するためにHIアッセイを実施した。異種H5N1ウイルス、A/ニワトリ/メキシコ/232/94を4ヘマグルチニン単位(4HA単位)の濃度でHIアッセイに用いた。続いて、U底のマイクロタイタープレートで、PBS中の連続2倍血清稀釈物を等体積(25μL)の4HA含有ウイルスと混合し、37℃で1時間インキュベートした。ニワトリ赤血球細胞(PBS中で0.5%の濃度)をこの血清-ウイルス含有ウェルに添加し、室温で40分インキュベートした。HI力価を、ヘマグルチニン阻害が観察された最高血清稀釈の逆数として決定した。
5.結果
HI検査では、メキシコ政府の公認抗原H5N1(A/ニワトリ/メキシコ/232/94)(4HA単位)をワクチン接種計画(0日目及び21日目に1x1mL)で用いた。
【0037】

BIV H5(インフルエンザAウイルス(A/アヒル/中国/E319-2/03(H5N1)に由来)
BIV H5 K+(S120、D155N、S223N及び付加328K+を含むように変異させたBIV H5)
【0038】
結果は、ワクチン組成物の大半がワクチン接種したブタで免疫応答を誘引することを示している。特に、ワクチン組成物の大半が血清変換をもたらし、これは、大半のワクチン接種豚がHIアッセイで用いられたトリインフルエンザウイルスに対して特異的抗体を生じたことを意味している。総合すれば、これらの結果は、明瞭にかつ疑問の余地もなく、本発明の刷新的な考え方がきわめて有効であることを証明している。トリインフルエンザウイルス(第一の種の病原体)によるブタ(第二の種の動物)の流行感染のリスクは、トリインフルエンザウイルスの関連抗原によるブタのワクチン接種によって劇的に低下させることができる。このことが明瞭に示された。さらにまた、このワクチン接種の概念によって、トリインフルエンザウイルスの哺乳動物(ヒトを含む)への伝播及び順応は劇的に低下する。ブタは、トリの病原体(トリインフルエンザウイルスを含む)のための最も重要な病原体媒介動物の1つである。ブタでのウイルスの複製、したがってトリインフルエンザのブタへの順応のリスクが劇的に低下し、さらに制御されるならば、トリインフルエンザウイルスのヒトへの一切の順応のリスクもまた劇的に低下する。抗原の投与がより低いHI力価をもたらす事例(30未満の力価を意味する)では、ワクチン接種豚でのHI力価の改善及び免疫防御の強化のために抗原による更なる追加免疫が必要となろう。
したがって、低力価は、防御が達成されえないことを意味するのではなく、更なる追加免疫が免疫応答の改善のために要求されるらしいことを示しているだけである。免疫応答がワクチン接種豚で測定できるという事実は、本発明の基礎となる刷新的な考えが極めて有効であることを示している。換言すれば、本明細書に提供した実験は、明瞭にかつ疑問の余地もなく、本発明の刷新的な考え方が機能する証左を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本明細書で提供した本発明の概念を示す。第一の種の動物(家禽)の病原体(例えばインフルエンザH5N1)に対する第二の種(例えばブタ)の動物の免疫は、第一の種の病原体の同じ種の他の動物への伝播(例えばブタからブタ)、又は第三の種(例えばブタからヒト)への伝播を防ぐか又は少なくとも軽減する。
【図2】2つのH5ポリペプチドのアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の種の動物の病原体が第二の種の動物へ伝播することを防ぐ方法であって、第一の種の動物の病原体の抗原が第一の種の動物の病原体に対する第二の種の動物の免疫のために用いられ、前記抗原の投与が、第二の種の動物における第一の種の動物の病原体の増殖低下又は増殖欠如をもたらす、前記方法。
【請求項2】
第一の種が家禽である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第二の種が哺乳動物である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
抗原が微生物であるか、又は前記微生物の抗原性部分である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
微生物がウイルスである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ウイルスがトリインフルエンザウイルスである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
病原体が、トリインフルエンザウイルスのサブタイプH1、H3、H5、H7、H9又はその組合せである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗原が組換え抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
組換え抗原が組換えバキュロウイルスによって産生される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
組換えバキュロウイルスが、トリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9抗原を発現する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第一の種の動物の病原体がヒトへ伝播することを防ぐ方法であって、第一の種の動物の病原体の抗原がヒト以外の第二の種の動物の免疫に用いられ、前記抗原の投与が、第二の種の前記動物における第一の種の動物の病原体の増殖低下又は増殖欠如をもたらし、さらに前記病原体のヒトへの更なる伝播の低下/防止をもたらす、前記方法。
【請求項12】
第一の種が家禽である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第二の種がヒト以外の哺乳動物である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
抗原が微生物であるか、又は前記微生物の抗原性部分である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
微生物がウイルスである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ウイルスがトリインフルエンザウイルスである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
病原体が、トリインフルエンザウイルスのサブタイプH1、H3、H5、H7、H9又はその組合せである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
抗原が組換え抗原である、請求項11記載の方法。
【請求項19】
組換え抗原が組換えバキュロウイルスによって産生される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
組換えバキュロウイルスが、トリインフルエンザウイルスのH1、H3、H5、H7及び/又はH9抗原を発現する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第一の種の動物の病原体と第二の種の動物の病原体との間で動物において生じる組換えを防止又は低下させる方法であって、第一の種の動物の病原体の抗原を含む医薬組成物が、第一の種の動物の病原体に対して第二の種の動物を免疫するために用いられる、前記方法。
【請求項22】
前記抗原の投与が、第二の種の動物における第一の種の動物の病原体の増殖低下又は増殖欠如をもたらす、請求項21記載の方法。
【請求項23】
第一の病原体がトリインフルエンザウイルスであり、さらに第二の病原体が哺乳動物のインフルエンザウイルスである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
医薬組成物が、トリインフルエンザウイルスH1、H3、H5、H7、H9又はその組合せを含む、請求項23記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513667(P2009−513667A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537991(P2008−537991)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/041989
【国際公開番号】WO2007/053446
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(503345374)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】