説明

瘢痕化阻害の方法

本発明はヒトにおける瘢痕化阻害のためのTGF−β3を用いた新しい治療法、及びヒトにおける瘢痕化阻害における新しい使用のためのTGF−β3を提供する。第1の治療時に、TGF−β3は、創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量において供与され;次の治療時に、TGF−β3は、創縁のセンチメートル毎に、より大きな治療的な有効量のTGF−β3において供与される。治療は互いに8から48時間離れてなされる。TGF−β3は皮内注射によって与えられ得る。ヒトの創傷治癒に付随する瘢痕阻害の適切な治療計画を選択するキット及び方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの創傷治癒において形成する瘢痕阻害の新しい方法の提供に関する。本発明はまたTGF−β3の新規の使用、創傷治癒に伴う瘢痕阻害のための適切な治療計画の選択の新しい方法、及び創傷治癒に関する瘢痕阻害における使用のためのキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
トランスフォーミング成長因子−ベータ(TGF−β)は多様な生物学的活性を有するサイトカインのファミリーである。TGF−βファミリーは、5つのアイソフォーム、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5を含む。
TGF−βファミリーのメンバーは、2つのペプチド鎖を含むダイマーの形で、自然に存在する。活性化TGF−ダイマーは、約25.4kDaの分子量を有する。
【0003】
TGF−β3は体の至る場所の瘢痕化の予防、軽減又は阻害に有用であることが示されている。この効果は特にTGF−β3の創傷治癒に関連する瘢痕阻害の能力に関して有利である。ヒトTGF−β3のアミノ酸配列は配列番号1に示され、TGF−β3をコードする核酸配列は、配列番号2に示される。
【0004】
全ての成体のほ乳類を通じて創傷の治癒への瘢痕化の応答は共通である。組織の種類の多数で瘢痕化応答は保存され、それぞれの場合に同じ結果に至り、「瘢痕」と呼ばれる繊維組織を形成する。瘢痕は「体の任意の組織におけるけが又は病気の場所において形成する繊維質の結合組織」と定義されてもよい。
【0005】
創傷治癒の結果の瘢痕の場合、瘢痕は回復応答の結果として生じる構造を構成する。この回復過程は傷を負った動物の死を予防するための生物学的な要請への進化的な解法として起こった。感染又は血液損失による死の危険を克服するために、傷を負った組織を再生するより、むしろ体は傷を負った領域を治療するために素早く反応する。傷を負った組織は創傷化の前に存在した同じ組織の構造になるように再生することはないため、瘢痕は創傷化していない組織と比較した際の異常な形態の点から同定され得る。
【0006】
巨視的に見ると、瘢痕は周囲の組織の表面の下に落ち込むか、又は傷を負っていない周囲の表面の上に隆起し得る。瘢痕は正常組織より比較的暗い色であり得るか(高色素沈着)、又は周囲と比較してより白い色を有し得る(低色素沈着)。皮膚の瘢痕の場合、高色素沈着又は低色素沈着は、すぐに明らかな化粧品の欠陥を構成する。皮膚の瘢痕は創傷化していない皮膚に比較してより赤くなり、気づかれ、美容的に受け入れられなくなり得ることもまた知られている。瘢痕の美容上の外見は、患者における瘢痕の心理学的な衝撃に寄与する大きな因子の一つであり、これらの影響が、瘢痕を引き起こした創傷が治癒した後も長く残り得ることが知られている。
【0007】
それらの心理的な影響に加え、瘢痕はまた患者に肉体的な有害な影響を有し得る。これらの影響は典型的には、瘢痕と正常組織間の機械的な際の結果として生じる。瘢痕の異常な構造と組成は、それらが典型的には対応する正常組織よりも柔軟でないことを意味する。その結果、瘢痕は(動きの可能な範囲を制限し得る瘢痕の関節被覆の場合のような)正常機能の障害の原因となり得、若年から存在する場合、正常な発育を遅延し得る。
【0008】
上記に照らせば、TGF−β3は、創傷治癒において起き得る、瘢痕の臨床管理における大きな有用性があるが、創傷治癒に付随する瘢痕を阻害するために使用され得る治療の新しい改善された方法の必要性が残ることも理解されるだろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の幾つかの態様の目的は、創傷治癒において形成する瘢痕阻害の改善された方法を提供することである。本発明の他の態様の目的は、TGF−β3の新しい使用を提供することである。これらの新しいTGF−β3の使用は、従来技術から知られた使用の代替の使用を構成し得るが、既に知られている使用に比較して、それらが改善された使用を構成することが好適であり得る。
【0010】
本発明の第1の態様では、ヒトの創傷治癒において形成する瘢痕阻害の方法を提供し、該方法は瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含む:
第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎、又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量のTGF−β3を与え;
創傷が形成し、第1の治療の8から48時間後に起きる、第2の治療時に、前記の創傷に、第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きい治療的な有効量のTGF−β3が与えられる。
【0011】
第2の態様では、本発明はヒトの創傷治癒において形成する瘢痕化阻害の方法を提供し、該方法は、瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含み:
第1の治療時に、創傷が形成される部位のセンチメートル毎に第1の治療的な有効量のTGF−β3を与え;
瘢痕が形成し、第1の治療の8から48時間後に起きる、第2の治療時に、前記創傷に、第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きい治療的な有効量のTGF−β3が与えられる。
【0012】
第3の態様では、本発明はヒトの創傷治癒において形成する瘢痕化阻害の方法を提供し、該方法は、瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含み;
第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎、又は将来の創縁のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量のTGF−β3が与えられ;
創傷が形成され、第1の治療の8から48時間後に起きる、第2の治療時に、前記創傷に、第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きい治療的な有効量のTGF−β3が与えられる。
【0013】
本発明は、さもなければ創傷治癒において期待される瘢痕化が、瘢痕化が低減される部位を、第2(及び任意の続く)治療時に、第1より大きな治療的な有効量のTGF−β3によって処理する、少なくとも2回の治療を含む治療計画の使用によって驚くほど効果的に阻害され得るという、発明者の発見に基づく。第1の治療時に、創傷化又は創傷閉鎖の周辺の時間帯で起きてもよく、次いでそれぞれの更なる治療は、先立つ治療の8から48時間後に起きてもよい。本開示において初めて記述されるこれらの治療計画は、既知の治療方法を使用して得られる瘢痕と比較して大幅に低減した瘢痕を引き起こす。
【0014】
任意の仮説に拘束されることを望まず、発明者は創傷又は創傷が形成される部位における細胞が、第1の治療時に与えられる治療的な有効量のTGF−β3に曝されることによって、創傷治癒の比較的初期における瘢痕化応答を低減することができると考える。第2の(及び更なる)治療時に与えられるTGF−β3は、さもなければ創傷部位で生じる生物学的過程の瘢痕化前の「カスケード」に拮抗するために役立ち得る。このようなカスケードは典型的には自己増殖であり、自身の誘導又は瘢痕化を誘導する更なる因子の誘導を引き起こすことができる種々の向繊維因子を伴う。第2の治療時にTGF−β3のより大きな投与量の使用はこの増殖に拮抗するようであり、従って、先行の技術を使用して達成することができるものより効果的に瘢痕化を阻害する。
【0015】
恐らくは、下記の先行技術の教示の結果として、治療のこのモードは以前に示唆されていないことに注意することは重要である。しかし、発明者はこの新しいアプローチが瘢痕化阻害において、今日までに知られる他のTGF−β3治療計画を使用することによって達成され得る効果より顕著に大きな、驚くべき有益な効果を有することを見出した。
【0016】
抗瘢痕化の結果が特に効果的に達成されるだけでなく、当業者は、TGF−β3の2回の比較的高投与量を使用する治療計画は、より少量の投与を使用する既知の計画ほど有益ではないと、先行技術から考えるであろうから、本発明の発見は非常に驚くべきことである。
【0017】
以前は、TGF−β3への抗瘢痕化応答は、図1及び2に示す種類の「ベル型」の投与応答曲線の形態を取ることが、当業者によって理解されていた。この曲線の高又は低終点における投与は、投与応答の中央の位置における投与よりも効果的でなかった。これらの発見に基づき、瘢痕化が阻害される部位のセンチメートル毎の患者に投与されるTGF−β3の好ましい治療的有効量は、約200ngと定義された。より低い投与量(約100ng)又はより高い投与量(500ngのような)200ngのような瘢痕化の効果的な低減は起こらなかった。瘢痕化の動物モデルにおいて行った更なる研究は、瘢痕化を増加するように期待され得る方法において、TGF−β3のレベルを向上することで、コラーゲンが増加することを示唆した。発明者及びこの分野の他者による調査では、創傷化の前、又は創傷の形成後の創縁に投与される場合、TGF−β3の200ngの投与量が患者の瘢痕化阻害に効果的であることが決定された。
【0018】
TGF−β3の抗瘢痕化効果の研究により、ヒトの瘢痕化阻害に使用される最適な投与量が200ngであると確認されると、更なる調査は、瘢痕化が低減される部位へのこの投与量の繰り返しの投与によって何らかの利益が予想されるかどうか考慮した。これらの結果から、創傷への200ngのTGF−β3の繰り返しの投与は、観察される抗瘢痕化効果の点で、何ら利益をもたらさないことが示された。
【0019】
投与応答曲線が、(単一投与の治療計画において)創傷に投与されるTGF−β3の投与量を増加することにより、治療効果を低減し得ることを認定した場合、治療計画の一部としてTGF−β3の漸増的な投与を使用する如何なる示唆も非生産的であると考えられる。(発明者及びその他の集団によって)行われた実験に基づけば、治療の複数の使用は、単一の治療計画と同様に効果的ではなく、より複雑で効果であるに過ぎないことが予想される。更に、投与量の増加で抗瘢痕化効果が実際に低減するベル曲線の上部に入る投与量の増加を引き起こすので、創傷に投与するTGF−β3の量を時間と共に増加させる計画は、好ましい先行技術の計画よりも効果的でない治療に実際になるであろうことが予想される。
【0020】
上記に照らせば、当業者が、繰り返しの治療を使用し、第1と第2の治療の間で供与するTGF−β3の量が増加する、ここに記載の種類の治療を考慮する契機を有することはあり得ない。従って、本開示に記載の発見が、創傷の瘢痕化を臨床的に阻害するために使用され得る治療の範囲に、驚くべき、付加価値を供給することは望ましい。
【0021】
ここに開示される治療の方法は、お互いが少なくとも8から48時間離れて起きる、少なくとも2回の治療を必要とするので、2回、又はそれ以上の治療を完了することができないであろう患者において使用することは適切ではない。この所見は、ヒトの創傷治癒に付随する瘢痕化阻害のための適切な治療計画の選択方法において、
このような瘢痕化阻害を必要とする患者が、第1の治療の8から48時間後に起きる第2の治療を完了することができるかどうか決定し;
患者が第1の治療の8から48時間後に起きる第2の治療を完了することができる場合、本発明の最初の3つの態様の何れかに一致する治療方法を含む治療計画を選択するか;又は
患者が第1の治療の8から48時間後に起きる第2の治療を完了することができない場合は、
単一の治療時に、瘢痕化が阻害される、創縁のセンチメートル毎、又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、約150ngから349ngのTGF−β3が与えられること、
を含む治療計画を選択することを含む方法を提供する、本発明の更なる態様を与える。この単一の治療のセンチメートル毎に与えられるTGF−β3の量は、好ましくは約200ngであってもよい。
【0022】
本発明の様々な態様及び実施態様において、本開示は、体の部位に与えられるTGF−β3の量は、このような部位のセンチメートル毎に与えられる量を参照して定義する(例えば、創傷化する部位のセンチメートル毎、又は創縁又は将来の創縁のセンチメートル毎)。これらの文章はこのような部位に与えられるTGF−β3の量を決定するが、この量が与えられる様式を制限するものでは無いことが望ましい。特に、これらの文章は治療される部位のセンチメートル毎にTGF−β3の投与が必要であると理解されるべきではない(これは、好ましい実施態様であり得るが)。TGF−β3の特定の量が、瘢痕化が阻害される部位に与えられることを許可する、任意の部位に起きる任意の回数の投与によって、必要なTGF−β3が与えられ得る。
【0023】
本発明の更なる態様では、瘢痕化を阻害するための、創傷又は創傷が形成される部位の処理において、医薬として使用するためのTGF−β3の使用を提供し、ここで第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に第1の治療的な有効量のTGF−β3が与えられるように、医薬を与え、次の治療時に、より大きい治療的な有効量のTGF−β3が創縁のセンチメートル毎に与えられるように、前の治療の8から48時間の間に、医薬が与えられる。
【0024】
本発明の態様に一致する医薬は、凍結乾燥した注射可能な組成物のような、再構成することができる医薬であってもよい。
【0025】
本発明の別の態様では、瘢痕化を阻害するための、創傷又は創傷が形成される部位の処理において、医薬として使用するためのTGF−β3の使用を提供し、ここで第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に第1の治療的な有効量のTGF−β3が与えられるように、医薬が与えられ、次の治療時に、より大きい治療的な有効量のTGF−β3が創縁のセンチメートル毎に与えられるように、前の治療の8から48時間の間に、医薬が与えられる。
【0026】
本発明の更なる態様では、創傷の治癒において形成する瘢痕化を阻害するためのTGF−β3の使用を提供し、ここで創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に第1の治療的な有効量のTGF−β3を与えるを含む、第1の治療の例において、及び創傷が形成され、第1の治療の8から48時間後に起きる、前記創傷に第1の治療的な有効量より大きい第2の治療的な有効量のTGF−β3を与えることを含む第2の治療時に、投与するためのTGF−β3が調製される。
【0027】
更に、本発明に従って製造された医薬を含む、本発明の方法に影響を及ぼす手段は、通常、創傷治癒に付随する瘢痕化阻害において使用されるキットの形態で提供され得、該キットは、互いに8から48時間離れた時間において、創傷又は創傷が形成される場所に投与するためのTGF−β3を含む、少なくとも第1及び第2のバイアルを含むことを見出した。
【0028】
本発明の更なる態様では、ヒトの創傷治癒に付随する瘢痕化阻害における使用のためのキットであって、
TGF−β3を含む組成物の第1の量、この第1の量は、第1の治療時に、創傷又は創傷が形成される部位へ投与するためのものであり;
TGF−β3を含む組成物の第2の量、この第2の量は、第2の治療時に、創傷に投与するためのものであり;
互いに8から48時間離れた時間における、第1の治療時に投与される投与量より大きな治療的な有効量のTGF−β3の投与量が、第2の治療時に創傷に投与されるような様式における、組成物の第1及び第2の量の投与に関する説明書を含むキットが提供される。
【0029】
このようなキットにおいて与えられる組成物は、再構成する前に(凍結乾燥した注射可能な組成物のような)適切な形態で提供され得る。
【0030】
第1及び第2の組成物の量がそれぞれ異なる第1及び第2の組成物を含むことは好適であり得、ここで第2の組成物は第1の組成物より大きな濃度のTGF−β3を含む。この場合、説明書は、第1及び第2の治療時に部位に投与すべき第1及び第2の組成物と実質的に類似の容量を示し得る。単なる例として、第2の組成物は、約100ng/100μl第1の組成物の濃度より大きいか;又は更に200ng/100μl、500ng/100μl又は1000ng/100μl第1の組成物の濃度より大きくてもよい。
【0031】
その代わりに、第1及び第2の組成物は実質的に同じ濃度のTGF−β3を含み得、説明書は、第2の治療時に投与される第2の組成物の用量は、第1の治療時に投与される第1の組成物の容量よりも大きいべきであることを示し得る。
【0032】
本発明の更なる実施態様では、TGF−β3は、瘢痕化を阻害するために創傷又は創傷が形成される部位にTGF−β3を脈動的に送達するために、皮下移植又は貯蔵医薬システムによって与えられ、ここで第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に第1の治療的な有効量のTGF−β3が与えられるように、医薬が与えられ、次の治療時に、より大きい治療的な有効量のTGF−β3が創縁のセンチメートル毎に与えられるように、前の治療の8から48時間の間に、医薬が与えられる。
【0033】
本発明のこの態様に記載の医薬は、例えば、TGF−β3を含むミクロスフィア又はマイクロカプセルシステムに基づくポリ乳酸及びグリコール酸(PLGA)コポリマーのようなバルク侵食システムに製剤化され得るか又はPLGA:エチルセルロースの混合システムもまた使用され得る。本発明のこの態様に記載の更なる医薬は、ポリマーの加水分解が迅速なポリ(オルト)エステル及びポリ無水マトリックスのような侵食性のマトリックスにTGF−β3が組み込まれた表面侵食システムにおいて製剤化され得る。本発明のこの態様に記載の医薬は、また上記のような脈動的な送達システムと上記の凍結乾燥した注射可能な組成物のような即時放出システムを組み合わせることにより製剤化し得る。TGF−β3は、それぞれの治療時に、同じ経路で、同じ形態により投与され得る一方で、異なる治療は、異なる医薬及び/又は異なる投与経路によってTGF−β3を供給し得ることが望ましい。本発明の好ましい実施態様では、第1の治療は、皮内注射のような注射によってTGF−β3を与えてもよく、一方で治療の第2(及び任意の続き)は、局所製剤のような代替の経路によって、TGF−β3を供給することを含み得る。
【0034】
発明者は本発明から導出され得る利点が体の至る部位における創傷に適応可能であり得ると考える。しかし、阻害される瘢痕を付随する創傷は、皮膚創傷であることが好適であり得る。例示的な目的のため、他の組織及び臓器に適用可能であり続けるが、本発明の実施態様は、皮膚創傷を引用して一般的には記載される。単なる例として、別の好ましい実施態様では、創傷は循環系の創傷、特に血管(この場合治療は再狭窄を阻害し得る)であり得る。瘢痕化が本発明に従って阻害され得る他の創傷は明細書の他の場所で考慮される。創傷は(待期的手術のような)外科手術の結果であり得、これは本発明の好ましい実施態様を構成する。
【0035】
発明者は本明細書に開示の方法、使用、及びキットは、国内の動物、(ウマのような)競技動物又は農業動物のような、ヒト又は非ヒト動物を含む、全ての動物における瘢痕化阻害に使用し得ると考える。瘢痕化が阻害される創傷は好ましくはヒト検体のものである。
【0036】
本発明の方法は、第3又は更なる治療を含んでいてもよい。このような更なる治療は、患者の看護責任のある臨床医が、瘢痕化の所望の阻害が達成されたと決定するまで、必要であり継続され得る。それぞれの治療は、先立つ治療の8から48時間後に起きるべきである。第3又は更なる治療の時期の更なるガイダンスは、第1及び第2の相対的な時期に関連するここの開示から理解され得る。
【0037】
第3の治療(及び任意の更なる治療)において体の部位に与えられるTGF−β3の量は、第2の治療時に与えられる量と実質的に同じであってもよい(このように投与量は第2の治療の後に効果的に「プラトー」を与える)。その代わりに、第3(又は続く)治療時に体の部位に与えられるTGF−β3の量は、(それぞれの治療に合わせて与えられるTGF−β3の量が漸増するように)前の治療時に与えられるTGF−β3の量に比べて大きくてもよい。
【0038】
本発明の方法を実施し得る幾つかの様式があり、これらは当業者にとって明確である。特定の好ましい実施態様は次に限定されない例によって下に記載される。これらの例が本発明の最初の3つの態様のそれぞれに適用可能であることが望ましい。
【0039】
一の実施態様では、第1及び第2の治療(及び適切な他の治療)は、両者ともに実質的に同じ濃度でTGF−β3を含む組成物を使用し得る。この実施態様では、第2の治療時に体の部位に投与される組成物の量は、第1の治療時に投与される量よりも大きく、この差異は異なる治療の間の投与量を増加する。
【0040】
第1及び第2の治療(及び、適切な任意の更なる治療)は異なる組成物を使用してもよく、ここで第2の治療時に使用する組成物は、第1の治療時に使用される組成物よりも大きな濃度のTGF−β3を含むことが好適であり得る。この場合、治療間の投与量の増加が、組成物中のTGF−β3の濃度の増加の結果として起きるので、TGF−β3を含む組成物と実質的に類似の容量が第1及び第2の治療(又は第2の治療において更に小さな容量)において部位に投与され得る。単なる例として、第2の(及び更なる)治療は、先立つ治療時に使用する組成物における濃度よりも約100ng/100μl大きい濃度のTGF−β3を含む組成物を使用し得る。その代わりに、組成物の濃度は、200ng/100μl、500ng/100μl又は1000ng/100μlより大きく異なっていてもよい。
【0041】
体の部位(創傷が形成される、創縁、又は将来の創縁)のセンチメートル毎に与えられる治療的な有効投与量は、約100ngのTGF−β3までか、約200ngのTGF−β3までか、約300ngのTGF−β3までか、約400ngのTGF−β3までか、約500ngのTGF−β3までか、約600ngのTGF−β3までか、約700ngのTGF−β3までか、約800ngのTGF−β3までか、約900ngのTGF−β3までか、約1000ngのTGF−β3までか、又はそれより多く含んでいてもよい。これらの値は患者における瘢痕化阻害に関する実施態様において特に適し得る。
【0042】
第2の治療時に体の部位のセンチメートル毎に与えられる治療的な有効投与量は、第1の治療時における投与量よりも、約100ngのTGF−β3か、200ngのTGF−β3か、300ngのTGF−β3か、400ngのTGF−β3か、500ngのTGF−β3か、600ngのTGF−β3か、700ngのTGF−β3か、800ngのTGF−β3か、900ngのTGF−β3か、更に1000ngのTGF−β3大きくてもよい。次の治療は、前の治療時に与えられる投与量から約100ngのTGF−β3か、200ngのTGF−β3か、300ngのTGF−β3か、400ngのTGF−β3か、500ngのTGF−β3か、600ngのTGF−β3か、700ngのTGF−β3か、800ngのTGF−β3か、900ngのTGF−β3か、1000ngのTGF−β3だけ変化するTGF−β3の投与量を使用してもよい。
【0043】
それぞれの治療時に与えられるTGF−β3の量は、センチメートル毎に与えられる量に基づく本開示を参照するが、本開示はこれに限定されることなく、任意の適切な単位によって測定される創傷に適用され得る適切な投与量を決定するために使用され得ることが望ましい。
【0044】
第1の治療は創傷化の前に起きることが好適であり得、この場合、創傷が形成される部位にTGF−β3が供給され得る。TGF−β3が、(皮内注射のような)皮膚への局所投与によって投与される場合、これはTGF−β3を含む溶液の皮膚への導入の結果として生じるブレブを引き起こし得る。好ましい一態様では、ブレブは創傷が形成される部位で起き得、実際創傷はブレブを切開することにより形成され得る。この場合、第1の治療時に与えられるTGF−β3の量は、創傷が形成される部位の長さを参照して決定され得る。
【0045】
その代わりに、創傷が形成される祖部位のそれぞれの末端に、2個のブレブが生じ得る。これらのブレブは、好ましくは、創縁が形成される0.5センチメートル以内に位置し得る。この場合、第1の治療時に与えられるTGF−β3の量は、形成される創傷の長さを参照して決定され、将来の創縁のセンチメートルで測定され得る(下記)。
【0046】
好ましくは、創傷化する前の部位にTGF−β3を供給するために使用されるブレブは、創傷が形成される部位の全長を実質被覆し得る。より好ましくは、創傷が形成される部位の長さを超えて延び得る。適切には、このようなブレブは、形成される創傷のそれぞれの末端を超えて約0.5センチメートル(又はそれ以上)延びてもよい。
【0047】
本発明のこれらの実施態様に記載の皮内注射は、創傷が形成される中線に実質的に平行、又は形成される創縁に平行に挿入される皮下注射針によって投与され得る。注射部位は、TGF−β3が与えられる領域の長さに沿って、お互いに約1センチメートル離して間隔をあけてもよい。
【0048】
その代わりに、第1の治療時に存在する創傷へのTGF−β3の供給を含むことは好適であり得る。発明者は、抗瘢痕化活性に関連する生物学的な機構は、細胞が創傷化の前又は後にTGF−β3に曝されても同じであると考える。それぞれの場合において、必要な生物学的活性は、瘢痕化が阻害される部位の細胞が、治療的な有効量である約350から1000ngのTGF−β3に、創傷化の前又は後に曝されている限り、達成し得る。
【0049】
TGF−β3が存在する創傷に与えられる本発明の実施態様では、必要量は創傷の長さを参照して決定され得、(下で考察するように)創縁のセンチメートルで測定され得る。TGF−β3は、それぞれの創縁の全体の長さに沿って好ましくは与えられるべきであり、創傷化した領域を超えてさえ供給されてもよい。好ましい実施態様では、TGF−β3は、創縁の末端を超えて約0.5センチメートル(又はそれ以上)延長した長さに沿って供給されてもよい。
【0050】
皮内注射はまたTGF−β3が存在する創傷に投与され得る好ましい経路を表す。この実施態様に従って投与される皮内注射はそれぞれの創縁に投与されるべきである。注射の部位は、創傷の末端から0.5センチメートル以内であることが好適であり得る。注射は、創傷の末端に実質的に平行に挿入される皮下注射によって投与され得る。注射部位は、処理される領域の長さに沿ってお互いに約1センチメートル離れて間隔を置かれてもよい。
【0051】
第1の治療時における創傷へのTGF−β3の供与に関連して先立つ段落で示された判断は、また第2(又は更なる)の治療における供給に適用されることができるだろう。創傷化が起きた後に第2の治療が起きるので、これは存在する創傷へのTGF−β3の供給をいつも含むであろう。創傷は与えられる創傷の運用戦略に依存して、開くか又閉じていてもよい。
【0052】
第1の治療が、創傷が形成される場所へのTGF−β3の供給を含む場合、創傷化が開始する1時間以前に、好ましくは創傷化が開始する30分以前に、最も好ましくは創傷化が開始する10分以前に、供給が起きることが好適であり得る。
【0053】
第1の治療は存在する創傷へのTGF−β3の供給を含み、この治療がなされる時間は、創傷が形成された後に経過した時間を参照して選択されてもよい。この場合、本発明に従って、第1の治療は、創傷化の2時間以内に、好ましくは、創傷化の1時間30分以内に、より好ましくは創傷化の1時間以内に、更により好ましくは、創傷化の30分以内に、最も好ましくは創傷化の15分以内に、開始されることが好適であり得る。
【0054】
その代わりに又はそれに加えて、第1の治療の時期は、治療される創傷の閉鎖後に経過した時間を参照して選択され得る。この場合、本発明に従って、第1の治療は創傷閉鎖が完了して2時間以内に、好ましくは、創傷閉鎖が完了して1時間30分以内に、より好ましくは、創傷閉鎖が完了して1時間以内に、更により好ましくは創傷閉鎖が完了して30分以内に、最も好ましくは創傷閉鎖が完了して15分以内に、開始されることが好適であり得る。臨床上の理由によって創傷が完全に閉鎖しない場合(例えば、創傷の範囲内への接近を維持することが必要な場合)、一度創傷が着手した手続きの一部として閉鎖する完全な程度に閉鎖すれば、創傷閉鎖は完了したと考えてもよい。
【0055】
創傷閉鎖後の経過時間を参照する第1の治療の選択は、長期化した外科手術の手続きの場合に特に関連し得ることが望ましいが、ここで創傷は外科手術が実施される部位に接近することを可能にするために、長期間開き続けなければならない。
【0056】
治療の間の経過時間は8から48時間であってもよい。より好ましくは、経過時間は、少なくとも10時間、更により好ましくは少なくとも12時間、更により好ましくは少なくとも14時間、更により好ましくは少なくとも16時間、更により好ましくは少なくとも18時間、さらにより好ましくは少なくとも20時間、更により好ましくは少なくとも22時間、最も好ましくは、約24時間にすべきである。
【0057】
治療の間の経過時間は、48時間までにしてもよいが、好ましくは約44時間まで、より好ましくは約40時間まで、更により好ましくは約36時間まで、更により好ましくは約32時間まで、更により好ましくは約28時間まで、最も好ましくは約24時間までにしてよい。
【0058】
本発明の方法を実施する場合、瘢痕化が阻害される領域の細胞は、治療的な有効量のTGF−β3を含む薬学的に許容可能な溶液に「浸される」べきである。これは瘢痕化を阻害するために十分なTGF−β3に細胞を曝す局所環境を作るであろう。さもなければ創傷化形成に含まれる細胞は、創縁における注射によるか(又は将来の創傷の縁に沿って−図13のパネルBに示す技術)、又は創傷が形成される部位への直接注射によって(例えば、創傷化される部位を被覆するブレブを生じさせることによって−図13のパネルAに示す技術)TGF−β3が投与されるかに関わらず、TGF−β3の治療的有効量を受ける。これらの投与のいずれかは、細胞周辺の領域におけるTGF−β3の抗瘢痕化濃度を確立することができる。
【0059】
第1の治療が、創傷化する部位への直接注射を使用する場合、TGF−β3の必要量は、創傷化する部位を被覆する細胞の周辺で、将来の創傷のラインに沿って投与される、単一の注射の投与(又は連続の「単一」投与)によって確立され得る(図13のパネルAに示す技術)。第1の治療がそれぞれの創縁に「対の」注射を使用する場合(又はそれぞれの将来の創縁の下方への「対」注射−図13のパネルBに示す技術)、それぞれの縁への注射が同じ領域を処理するために必要となるため、投与されるTGF−β3の全量は、単一の注射経路(上記)によって与えられるよりも大きいことが望ましいであろう。
【0060】
本発明の方法において、適切な薬学的組成物の投与による手段によって、TGF−β3が必要とする体の部位に与えられることが望ましい。概して、任意の薬学的に許容可能な溶液を使用してもよいが、発明者は本発明に従って使用するための組成物が、マルトースやトリハロースのような糖を有利に含み得ることを見出した。このような糖は、組成物の安定化に役立ち得、また配合されたTGF−β3の生物学的活性を増加し得る。好ましい組成物は、注射、特に皮内注射に適切なものであってもよい。皮内注射によってTGF−β3を投与するために使用され得る組成物の多くの製剤は、当業者に知られているであろう。適切な製剤の例は、国際公開第2007/007095号として刊行された、同時係属中の出願、において記載され、この出願において記載される種類の製剤は、本明細書の
実施例において報告される実験に使用された。
【0061】
本開示において使用される種々の用語は、次に更に疑念を回避するために記述される。簡潔のため、これらの用語の幾つかは、本発明の特定の態様だけ参照して記述され得ることが望ましい。しかし、他に文脈上必要がある箇所を除いて、次のこれらの用語の記述は、本発明の全ての態様に適用されるであろう。
【0062】
投与されたTGF−β3の内容物、効能及び量の計算
TGF−β3(及び特に本発明で使用されるTGF−β3の好適な形態である組み換えヒトTGF−β3)を含む溶液のタンパク質内容物は好ましくは英国の国立生物学標準研究所(NIBSC)のトランスフォーミング成長因子ベータ(ヒトrDNA由来)の標準試薬コード98/608で標準化された定量的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって決定されうる。このようなタンパク質内容物の決定から溶液の濃度を得、従って、一定量の溶液として体の部位の1センチメートルに与えられるTGF−β3の量は、当業者によって計算し得る。このプロトコルは実施例において溶液のタンパク質内容物を決定する際に使用される。
【0063】
当業者がNIBSCの標準試薬コード98/608の標準サンプルを手に入れることができない場合、発明者は自身のTGF−β3産物(Lonza Bulk Drug Substance Lot 205-0505-005)を標準として使用することにより、ELISAがNIBSC標準試薬コード98/608で得られ値に52%近似した値を与えることを見出した。NIBSC標準試薬コード98/608の代わりに、この代替の標準を使用することが望ましい場合、必要なTGF−β3の量が従って決定されるべきである。
【0064】
本発明に従って使用されるTGF−β3の生物活性(即ち、効能)は、ミンク肺上皮細胞株(MLEC);アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)カタログ番号CCL−64の増殖阻害によって決定され得る。好ましい実施態様では、生物活性は上で述べた英国の国立生物学標準研究所の標準試薬コード98/608を使用し標準化された評価によって定量され得る。標準試薬コード98/608は、TGF−β3タンパク質のマイクログラム毎10000任意単位(AU)の特異的な生物活性を有すると考えられ、関心のあるサンプルのMLEC阻害活性を標準試薬コード98/608のMLEC阻害活性と比較することにより、任意単位の関心のあるサンプルの生物活性をすぐに決定することができる。
【0065】
このように、TGF−β3の500ngの投与は、TGF−β3活性の5000AUを供給し、TGF−β3の1000ngの投与は、TGF−β3活性の10000AUを供給する。発明者は類似の治療効果は、500ngの投与量の場合は、約3500から6500AUのTGF−β3活性の量によって、1000ngの投与量の場合は、約8500から11500AUのTGF−β3活性の量によって、得ることができると考える。本開示においてTGF−β3の500ng又は1000ng等の使用の参照は従って構築し得る。
【0066】
創傷が形成される部位のセンチメートル
簡単な参照のため、創傷が形成される場所の長さは、本発明に従って瘢痕化を減少するために与えられるTGF−β3の量を決定するために、センチメートルで測定され得る。TGF−β3の治療的有効量が創傷の末端に与えられることを保証するために、創傷が形成される意図した長さを超えて延びるように、長さが計算され処理されることは好適であり得る。従って、創傷が形成される(及び、従って該部位の長さが処理される)部位の計算された長さが、約0.5センチメートル(又はそれ以上)の距離だけ、意図した創傷のそれぞれの末端を超えて延びることは好適であり得る。
【0067】
将来の創縁のセンチメートル
本開示の目的のため、創傷が形成される部位の長さは、将来の創縁をセンチメートルの番号で測定するように、創傷が形成されるそれぞれの縁の長さの合計として(センチメートルで)計算されるべきである。長さが形成する創縁の末端を超えるよう計算され処理されることは好適であり得、このことは、創傷の末端に治療的有効量のTGF−β3が与えられることを保証する助けとなり得る。従って、計算された将来の創縁の長さ(及び従って処理される場所の長さ)が形成される創傷のそれぞれの末端を超えて約0.5センチメートル(もしくはそれ以上)の距離だけ延びることは好適であり得る。
【0068】
創縁のセンチメートル
本開示の目的のため、創傷の長さは、創縁をセンチメートルの番号で測定するように、それぞれの創縁の長さの合計として(センチメートルで)計算されるべきである。部位の長さが形成する創縁の末端を超えるよう計算され処理されることは好適であり得る。このことは、創傷の末端に治療的有効量のTGF−β3が与えられることを保証する助けとなり得る。従って、本発明に従って処理され計算された創縁の長さが、それぞれの末端を超えて約0.5センチメートル(もしくはそれ以上)の距離だけ延びることは好適であり得る。
【0069】
TGF−β3
本開示の目的のために、TGF−β3は配列番号1に示したアミノ酸配列を含むペプチドを含むようにされてもよい。TGF−β3は好ましくは二量体のTGF−β3であり得るが、発明者はここに記載の瘢痕化の阻害はTGF−β3の単量体を使用して達成し得ると考える。実施例に記載の研究において使用されたのは、(それぞれが配列番号1に示すアミノ酸残基の配列を有する2つのポリペプチド鎖を含む)野生型ヒトTGF−β3のホモ二量化活性断片である。
【0070】
発明者は本開示に記載の瘢痕化の阻害が、TGF−β3誘導体の治療的に有効な断片を使用してもまた達成し得ると考える。TGF−β3の断片は配列番号1に提供される配列情報を参照して即時決定し得、誘導体は当業者によく知られた手段を使用してこの配列情報に基づき調製し得る。適切な誘導体の例は国際特許第2007/104845号として発行された発明者の同時係属中の出願に開示される。
【0071】
(配列番号1に一致する2つのペプチド鎖を含む)野生型の二量体活性断片以外のTGF−β3の形態を使用することが望ましい場合、このような薬剤は自然発生の形態と同じではない分子量を有し得ることが望ましい。従って、本発明の医薬又は方法において使用されるこのような薬剤の治療的有効量は、分子量の差異を反映するために、変化しても良い。従って、野生型の二量体活性断片の半分の分子量を有するTGF−β3の形態が使用される場合、明細書の他の場所に設定される適切な治療有効量は半分になる。
【0072】
このようなTGF−β3の断片又は誘導体の治療効果はいくつかの適切な実験モデルの何れかを参照することによりすぐに評価し得る。このようなモデルは、生物学的効果を示すインビトロモデル(治療効果に関連すると期待され得る)又はヒト又は非ヒトの検体を使用するインビトロ調査を含み得る。単なる例として、明細書の他の場所に設定された実施例に記載の技術は、TGF−β3の断片又は誘導体の治療効果を調べるために使用又は適用され得る。
「治療的な有効量」
本開示の目的のための治療的な有効量のTGF−β3は、本発明に従って使用する場合、創傷の治癒に付随する瘢痕化を予防、低減、阻害することができる。例えば、TGF−β3の単一投与を使用する投与応答実験において考慮した際に治療的に有効でないTGF−β3の量は、本明細書に記載の通り、2回の治療を使用する瘢痕化モデルにおいて未だ治療的に有効であり得ることが望ましい。
【0073】
瘢痕化の予防/阻害/低減/縮小
本発明の文脈において瘢痕の阻害は、コントロール処理又は処理しない創傷の治癒において発生する瘢痕のレベルに比較した際に、本発明の方法に従って処理された創傷の治癒において発生する瘢痕化の如何なる程度の予防、低減、縮小又は阻害も含むと理解されるべきである。簡潔のために、本明細書は主にTGF−β3を使用した瘢痕化の「阻害」を言及するが、このような言及はまた、文脈上他に必要がある場合を除いて、TGF−β3を使用する瘢痕化の予防、低減又は縮小を含むと理解されるべきである。
【0074】
薬学的に許容可能
ここで使用する場合、「薬学的に許容可能な」なる用語は、「一般的に安全と見なされている」分子成分及び組成物を指し、それらは生理学的に許容され、ヒトに投与された際に、異常亢進、めまい等のような、アレルギー又は類似の有害反応を典型的には起さない。好ましくは、ここで使用される場合、「薬学的に許容可能」なる用語は、連邦又は州政府の監督庁によって承認されているか又は動物における、及びより詳細にはヒトにおける使用のためのアメリカ薬局方又は他の一般的に認可された薬局方にリストされていることを意味する。
【0075】
薬学的組成物及び投与
本発明が提供する治療のための組成物はそれ自体として使用することができるが、例えば、意図された投与経路及び標準の薬務に関して選択された、適切な薬学的賦形剤、希釈剤又は担体を含む混合剤として、薬学的な製剤として投与することが好適であり得る。従って、一態様では、本発明は、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤及び/又は担体を付随する、少なくとも一の活性成分、又はその薬学的に許容可能な誘導体を含む、薬学的な組成物又は製剤を提供する。
【0076】
本発明の組成物はヒト又は獣医学において使用されるための任意の便利な方法によって投与されるために製剤化され得る。本発明は従ってその範囲内にヒト又は獣医学において使用されるために適用される本発明の生成物を含む薬学的組成物を含む。
【0077】
治療的な使用のための、許容可能な賦形剤、希釈剤及び担体は薬学分野においてよく知られており、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy。Lippincott Williams & Wilkins (A.R. Gennaro edit. 2005)に記載されている。薬学的な賦形剤、希釈剤、及び担体の選択は、意図された投与経路及び標準の薬務に関して選択し得る。
【0078】
創傷
発明者は、本発明に記載のTGF−β3を使用する治療の方法が、全ての種類の創傷における瘢痕化を効果的に阻害するために使用され得ると考える。
【0079】
瘢痕化が本発明の医薬及び方法を使用して阻害され得る特定の創傷の例は、限定されるものではないが、皮膚の創傷からなる群から独立して選択されるもの;角膜瘢を引き起こすような(LASIK手術、LASEK手術、PRK手術、眼房水濾過手術、白内障手術又は水晶体嚢が瘢痕化しやすくなり得る外科手術のような、眼の外科手術の結果生じる瘢痕化の阻害を含む)眼の創傷;(豊胸に共通の)被膜拘縮になりやすい創傷;血管の創傷;(瘢痕化の予防、低減又は阻害が神経の再結合及び/又は神経機能を高め得る)中枢及び末端神経系の創傷;腱、靱帯又は筋肉の創傷;口唇及び口蓋(例えば、口唇又は口蓋の治療の結果生じる瘢痕化の阻害のため)を含む、口腔の創傷; 肝臓、心臓、脳、消化器官及び再生器官のような内部器官の創傷;(瘢痕化の阻害が接着の形成及び/又は形成される接着の大きさを低減し得る)腹腔、骨盤腔及び胸腔のような体腔の創傷;及び外科手術の創傷(特に、瘢痕再生のような、美容整形に付随する創傷)。本発明の医薬及び方法は、皮膚創傷に付随する瘢痕化の予防、低減又は阻害のために使用されることが特に好ましい。
【0080】
瘢痕化の評価
瘢痕化の程度、及び従って達成された何らかの瘢痕化阻害は、瘢痕の巨視的な臨床評価によって評価し得る。これは、検体における瘢痕の直接的な評価によって達成され得るか;又は瘢痕の写真の像;又は瘢痕から得られたシリコンの鋳型、又はこのような鋳型によって作製された陽性石膏;の評価による。本開示の目的のために、「処理された瘢痕」は、本発明の記載に従って処理された創傷の治癒において形成した瘢痕を含むようにされるべきである。
【0081】
瘢痕を評価する際に考慮され得る瘢痕の巨視的な性質は
i)瘢痕の色。上記指摘したように、瘢痕は、周辺の皮膚に対して典型的に低色素沈着または高色素沈着である場合がある。瘢痕化の阻害は、治療された瘢痕の色素沈着の方が、治療されていない瘢痕の色素沈着より、瘢痕がない皮膚に酷似する場合、認められる場合がある。頻繁に瘢痕は周辺の皮膚より赤い場合もある。この場合には、治療されていない瘢痕に比較して、治療された瘢痕の発赤がより早く、またはより完全に、または周辺の皮膚の外観に、より酷似するように薄くなる場合、瘢痕化の阻害を認める場合がある。色は例えば分光光度計を用いてすぐに測定することができる。
ii)瘢痕の高さ。瘢痕は、周辺の皮膚に比較して典型的に盛り上がる、または窪む場合がある。治療された瘢痕の高さが治療されていない瘢痕より瘢痕のない皮膚の高さに酷似する(つまり、盛り上がらず、窪んでもいない)場合、瘢痕化の阻害を認める場合がある。瘢痕の高さは患者において(例えば、測定によって)直接、又は(瘢痕から得た鋳型の測定によって)間接的に測定することができる。
iii)瘢痕の表面質感。瘢痕は、周辺皮膚より比較的に滑らかな表面(「光っている」外観の瘢痕を生じて)、または周辺皮膚より粗い表面を有する場合がある。治療された瘢痕の表面質感が治療されていない瘢痕の表面質感より瘢痕のない皮膚に酷似する場合、瘢痕化の阻害を認める場合がある。表面質感もまた患者において(例えば、測定によって)直接、又は(瘢痕から得た鋳型の測定によって)間接的に測定することができる。
iv)瘢痕の硬さ。瘢痕の構成および構造が異常なので、瘢痕を囲む無傷の皮膚より硬いのが通常である。この場合は、治療された瘢痕の硬さが治療されていない瘢痕の硬さより瘢痕のない皮膚に酷似する場合、瘢痕化の阻害を認める場合がある。
を含む。
【0082】
好ましくは、治療された瘢痕は、本明細書に設定された巨視的評価のパラメータの少なくとも1つに対して評価する際に、瘢痕化の阻害が認められる。また治療された瘢痕は、より好ましくは、該パラメータの少なくとも2つに対して瘢痕化の阻害を認め、さらに好ましくは少なくとも3つとし、最も好ましくはこれらのパラメータの少なくとも4つとする(例えば、上記で設定された4つの全てのパラメータ)。
【0083】
高さ、長さ、幅、表面面積、増加及び減少体積、瘢痕の粗さ/滑らかさは、例えば、光学3次元測定装置を使用することにより、検体において直接測定し得る。瘢痕測定は、検体において直接、又は(瘢痕のシリコン鋳型の複製印象を作製することにより形成され得る)瘢痕の代わりの鋳型又は石膏においてなされ得る。これらの方法の全てが、光学3次元測定装置を使用するか、又は瘢痕の写真の画像解析によって解析され得る。3次元光学測定は、全ての肌及び瘢痕パラメータの正確な決定を保証する全ての軸に、マイクロメーター範囲の解像度を有する。当業者は、適切なパラメーターを調べるために、手動測定のための測定器、超音波、3次元写真撮影(例えばCanfield Scientific, Inc.から利用可能なハードウェア及び/又はソフトウェアを使用する)及び高解像度磁気共鳴画像法を含む、更なる非侵襲性の方法及び装置を使用することが可能であることに気づくであろう。
【0084】
瘢痕化の阻害は、治療しない瘢痕と比較した場合の、治療した瘢痕の高さ、長さ、幅、表面面積、減少又は増加体積、粗さ又は滑らかさ又はそれらの任意の組み合わせの低減によって表されてもよい。
【0085】
顕微鏡評価のための一の好ましい方法は、全体評価である。これは、専門家パネル又は市民パネルによる巨視的な写真像の評価手段によるか、又は臨床医又は患者自身による巨視的な評価手段によって臨床的に達成され得る。評価はVAS(可視アナログ基準)又は明確な基準によって得てもよい。瘢痕化の評価(及び従って達成された何らかの瘢痕化低減)のための適切なパラメータの例は下に記載される。更なる適切なパラメータの例及びそのようなパラメータが補足され得る手段は、Duncan等(2006)、Beausang等(1998)及びvan Zuijlen等(2002)によって記述される。
【0086】
可視アナログ基準(VAS)瘢痕スコアを使用する評価
瘢痕の評価は、瘢痕ベースのVASを使用して得てもよい。瘢痕の評価における使用のための適切なVASは、Duncan等(2006)又はBeausang 等(1998)によって記述される方法に基づいてもよい。これは典型的には0cmが認知できない瘢痕と見なされ、10cmが非常に弱い肥厚性瘢痕と見なされる、10cmラインである。この方法におけるVASの使用によって、瘢痕の評価の簡単な補足と定量化が可能となる。VAS点数付けは瘢痕の巨視的及び/又は微視的評価のために使用され得る。
【0087】
単なる例として、適切な瘢痕化の巨視的な評価は、左から右に、0(正常皮膚に一致する)から10(悪性の瘢痕を示す)の基準を表す、0から10cmラインからなるVASを使用して実行されてもよい。印は瘢痕の全体の評価に基づく10cmラインにおいて評価者によって付けられてもよい。これは、瘢痕の高さ、幅、輪郭、色のようなパラメータを考慮し得る。最も良い瘢痕は(典型的には小さい幅であり、正常の肌のような色、高さ及び輪郭を有し)、基準の「正常の肌」末端(VASラインの左手の側面)に対する点数であり得、悪性の瘢痕は(典型的には大きな幅であり、増加した性質及び均等でない輪郭及びより白い色を有し)基準の「悪性瘢痕」末端(VASラインの右手の側面)に対する点数であり得る。印は次いで左手の側面から測定され瘢痕評価の最終値をセンチメートル(小数点第1位まで)で提供し得る。
【0088】
(巨視的評価又は微視的評価のいずれかの)瘢痕の代替の評価は、どれが好ましい外見を有するかを決定するために、(処理した区域及び別の処理しないか、又はコントロールで処理した区域のような)2個の瘢痕又は2個の瘢痕の区域の比較を含み、垂直線によって交差する2個の100mmVASラインを含むVASを使用して行われてもよい。この種のVASにおいて、2個のVASラインは比較する2個の瘢痕に一致し、一方で垂直線はゼロ(比較する瘢痕の間に認知可能な差異が無いことを示す)を表す。最大の100%(それぞれのVASラインの末端にある100mm)は、瘢痕の一つが周囲の肌と比較して認知できなくなったことを示す。
【0089】
この方法における瘢痕の顕微鏡像を評価する特に好ましい方法は、世界瘢痕比較基準(GSCS)と呼ばれる。この基準は欧州医薬品庁(EMEA)によって好意的に認知され、瘢痕が評価され、瘢痕阻害に付随する臨床的に関連する終点を決定し得る好適な基準として承認される。特に、臨床パネル評価に基づくGSCSのバージョン、これはEMEAによって特に関連すると考えられる、を使用することは、好適であり得る。
【0090】
GSCSのような、この種のVASを使用する瘢痕ペアの比較の際、評価者は、どの瘢痕が好ましい外見を有するか、又は両者の認知できる差異がないかどうかを最初に決定する。認知可能な差異がない場合、このことは、ゼロの垂直線にマークすることによって記録される。認知可能な差異がある場合、評価者は好適な瘢痕において見出される改善のレベルを決定するためのアンカーとして2個の瘢痕のうちより悪い方を使用し、次いで基準の相対的な箇所における点数を記録する(即ち、瘢痕の外見の比較に従う基準を設定する)。記録された点はアンカーの瘢痕に対する改善のパーセンテージを表す。
【0091】
発明者は、瘢痕の巨視的又は微視的な出現を評価する際のこの種のVAS測定の使用は、幾つかの利点を提供することを見出した。これらのVASは本質的に直感的なので、それらは、1)異なる肌の種類における異なる瘢痕の感受性を反映する像の使用する多大な訓練の必要性を減少し、このツールを、大きな3つの局面において展開するように比較的単純にし;2)データの変動制を減らし、即ち、それぞれの瘢痕ペアの一の評価が医薬及びプラシーボ瘢痕の2個の独立した評価に反するように行われ;3)よく確立されたVAS(即ち、データの継続配布)の原理及び同じ基準における格付けの利点を含み;4)臨床医及び患者への医薬の効果(パーセント改善)をより簡便に知ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0092】
本発明は次に付随の実施例及び図面を参照して更に説明する。
【図1】図1は1回の治療時に、ヒトの創傷に与えられる異なるTGF−β3の投与量の抗瘢痕化活性を比較する。
【図2】図2は2回の治療時に、ヒトの創傷に約1時間以内に投与される、異なるTGF−β3の投与量の抗瘢痕化活性を比較する。
【図3】図3は2回の治療時に、ヒトの創傷に約24時間離れて投与される、異なるTGF−β3の投与量の瘢痕化活性を比較する。
【図4】図4はTGF−β3コントロールで処理した瘢痕又はプラシーボで処した瘢痕の顕微鏡像を比較する。3個のTGF−β3で処理した瘢痕に、約24時間離れた治療時に、異なる量のTGF−β3が供給された。
【図5】図5はTGF−β3又はプラシーボで処理した創傷治癒において形成した瘢痕から得られた3次元シミュレーション及び瘢痕の測定を示す。
【図6】図6はTGF−β3又はプラシーボで処理した創傷治癒において形成した瘢痕から得られた3次元シミュレーション及び瘢痕の測定を示す。
【図7】図7はTGF−β3又はプラシーボで処理した創傷治癒において形成した瘢痕から得られた3次元シミュレーション及び瘢痕の測定を示す。
【図8】図8は(約1時間離れた2回の治療時に、センチメートル毎に5ng、50ng、200ng又は500ng投与される)TGF−β3を使用する4回の実験計画で処理した創傷治癒において形成したコントロール処理した瘢痕において、時系列で得られた瘢痕化阻害の強度を比較する。
【図9】図9は(約24時間離れた2回の治療時に、センチメートル毎に5ng、50ng、200ng又は500ng投与される)TGF−β3を使用する4回の実験計画で処理した創傷治癒において形成したコントロール処理した瘢痕において、時系列で得られた瘢痕化阻害の強度を比較する。
【図10】図10は、TGF−β3の異なる投与量に応答する瘢痕形成のラットモデルにおける「ベル型」の投与応答曲線を示す。TGF−β3は約24時間離れたTGF−β3の2回の注射を介して創傷に供給された。それぞれの注射において与えられるTGF−β3の量はそれぞれの治療における量と等しいものであった。
【図11】図11は、コントロール処理した創傷の治癒において(それぞれは、投与されるTGF−β3の量が治療の間で一定に保たれる2回の治療に従う)、及び本発明に従って治療した創傷治癒において達成される瘢痕化阻害の強度を比較する。
【図12】図12は、(2回の治療において希釈コントロールを与える)プラシーボ処理した創傷、及びコントロール処理した治癒において(それぞれは、投与されるTGF−β3の量が治療の間で一定に保たれる2回の治療に従う)生成する瘢痕及び本発明に従って処理する創傷治療において生成する瘢痕の代表的な像を示す。
【図13】図13は、本発明に従って瘢痕化を阻害することが望まれる体の部位にTGF−β3を供給するために使用され得る好ましい投与経路を示す写真を示す。パネルAは創傷ができる部位にTGF−β3を含む組成物を一回注射する投与を示す。この注射は創傷が形成する部位(2個の内部点の間)を被覆し、意図する創傷部位(外部点によって境界される領域)の上に広がる領域を被覆するブレブを引き起こす。パネルBは将来の創縁に沿ったTGF−β3を含む組成物の投与を示す。実線は創傷が形成される部位を示し、TGF−β3が投与され得る部位は、将来の創傷を囲む点によって示される。パネルC及びDは存在する(縫合によって閉じられる)創傷の縁へのTGF−β3を含む組成物の投与を示す。
【図14】図14は、本発明に従ってTGF−β3を投与するために使用され得る皮内注射による好ましい方法を示す。 TGF−β3を投与するための皮下注射針を部位Bの皮内に挿入し、(1cmの距離で部位Bと離れている)部位Aに進める。次いで100μlの組成物を、針を抜くように、部位AとBの間に均等に投与する。次いで針を部位Cの皮内に挿入し、部位Bの方向に進め、投与工程を繰り返す。1個の創縁への投与が完了したら、他の縁への投与を繰り返してもよい。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0093】
図1
図1は、1回の治療時に投与された種々の異なる投与量のTGF−β3を用いて得られる抗瘢痕化効果を示す用量反応曲線を得るために発明者が行った臨床試験から得られたデータを示す。TGF−β3又はプラシーボが1回の皮内注射として、1センチメートルの実験創傷に投与去れた。図は、部位を因子とした、最小二乗及び妥当性分析(ANOVA)から95%の信頼区間のTGF−β3の治療効果を示す。治療効果を試験するために、TGF−β3の瘢痕であるToScarがそれぞれの検体の別の腕のプラシーボToScarと自動的に合わせて差し引かれた。ToScarは6周及び3、4、5、6及び7ヶ月のVAS点数(mm)の合計として計算された。瘢痕は100mmVASラインを使用して投与後(6周、3、4、5、6及び7ヶ月)の6個の時間点において、独立した市民パネルによって計算された。
【0094】
図1は、創縁のセンチメートル毎に一回の50ng、200ng及び500ng/100μlのTGF−β3を適用することにより、瘢痕化が効果的に阻害されることを示す。改善レベルは、200ng/100μlの投与量において観察された、最大の改善(TGFβ3で処理した瘢痕において、平均>50mmの瘢痕改善)、最大の投与量の範囲、即ち、創縁のセンチメートル毎に500ng/100μlに対し、医薬の効果の減少を伴う、典型的な用量反応曲線を示す。
【0095】
図2
図2は発明者によって行われた臨床試験から得られたデータを示す。この試験においては、TGF−β3及びプラシーボは、(2回の皮内注射によって)2回の離れた治療時にそれぞれ投与された。しかし、本発明の方法とは異なり、第1の治療は創傷化の直前に起きるが、第2の治療は創傷閉鎖の直後に起きた、即ち、両者の投与は、お互いの約1時間以内に投与され(第1は創傷の10から30分前、及び第2は創傷後の10から30分)、与えられるTGF−β3の量は、それぞれの治療において同じであった。図は、部位を因子とした、最小二乗及び妥当性分析(ANOVA)から95%の信頼区間のTGF−β3の治療効果を示す。治療効果を試験するために、TGF−β3の瘢痕であるToScarがそれぞれの検体の別の腕のプラシーボToScarと自動的に合わせて差し引かれた。ToScarは6周及び3、4、5、6及び7ヶ月のVAS点数(mm)の合計として計算された。瘢痕は100mmVASラインを使用して投与後(6周、3から7ヶ月)の6個の時間点において、独立した市民パネルによって計算された。
【0096】
図2は、創傷閉鎖の前及び直後(即ち、両者の投与が約1時間以内)に、創縁のセンチメートル毎に二回の5ng、50ng、200ng及び500ng/100μlのTGF−β3を適用することにより、瘢痕化が効果的に阻害されることを示す。改善レベルは、200ng/100μlの投与量において観察された、最大の改善(TGFβ3で処理した瘢痕において、平均>40mmの瘢痕改善)、最大の投与量の範囲、即ち、創縁のセンチメートル毎に500ng/100μlに対し、医薬の効果の減少を伴う、典型的な用量反応曲線を示す。瘢痕化が阻害された全体の程度は一回投与計画よりわずかに低いが、改善の程度及びTGF−β3治療を(約1時間以内に)2回行った用量応答曲線は、TGF−β3を一回与えた場合と同等である(図1参照)。このことは、TGF−β3を繰り返し投与することは、瘢痕化阻害のより大きな阻害に必ずしもつながらず、何かがこの化合物の抗瘢痕化効果を幾らか減少し得ることを示す。
【0097】
図3
図3はヒトの調査における発明者によって得られた比較のデータを示す。この調査では、TGF−β3及びプラシーボを使用する治療が、第1は創傷化の前及び第2は創傷化の約24時間後である、2回の治療時に(それぞれ、皮内注射によって)なされた。図は、部位を因子とした、最小二乗及び妥当性分析(ANOVA)から95%の信頼区間のTGF−β3の治療効果を示す。TGF−β3を用いたコントロール処理の治療効果を試験するために、TGF−β3の瘢痕であるToScarがそれぞれの検体の別の腕のプラシーボToScarと自動的に合わせて差し引かれた。ToScarは6周及び3、4、5、6及び7ヶ月のVAS点数(mm)の合計として計算された。瘢痕は100mmVASラインを使用して投与後(6周、3、4、5、6及び7ヶ月)の6個の時間点において、独立した市民パネルによって計算された。
【0098】
図3は、創傷化の前及び約24時間後に、創縁のセンチメートル毎に二回の5ng、50ng、200ng及び500ng/100μlのTGF−β3を適用することにより、瘢痕化が効果的に阻害されることを示す。これらの治療の実験方法のうち、500ngのTGF−β3が、24時間離れた治療において投与される、本発明に記載の方法は他より注目に値するほど効果的である。
【0099】
図4
図4は、異なるTGF−β3コントロール治療計画を使用して、阻害し得る瘢痕化の程度が異なる3個の検体の顕微鏡像を表す。顕微鏡像は、発明者によって行われる臨床試験において、プラシーボ処理及びTGF−β3コントロール処理した創傷の治癒において生成した検体の瘢痕から得られる(創傷のセンチメートル毎の50ng、200ng及び500ng/100μlのTGFβ3の約24時間離れた2回の治療時に2回の投与)。それぞれの治療時に同量のTGF−β3が投与され、使用量が表題に示される(創縁のセンチメートル毎の50ng/100μlのTGF−β3は上段左、同じ検体のプラシーボは上段右に示され、創縁のセンチメートル毎の200ng/100μlのTGF−β3は中段左、同じ検体のプラシーボは中段右に示され、創縁のセンチメートル毎の500ng/100μlのTGF−β3は下段左、同じ検体のプラシーボは下段右に示される。)
【0100】
本発明の方法で処理される創傷(下段左)は、最大の瘢痕化阻害が得られた効果を観察することができる。
【0101】
図5
図5は、発明者によって行われた臨床試験において、プラシーボ処理及びTGF−β3処理した(100μlの50ng/100μlのTGF−β3又は100μlのプラシーボを、創縁のセンチメートル毎に、約24時間離れて2回投与した)創傷の治癒において生成した瘢痕のシリコン鋳型の測定分析から得られた、3次元シミュレーション及び瘢痕測定を示す。これは、本発明に記載の治療方法ではなく、(図6に沿って)本発明に記載の治療方法の驚くべき効果(結果は図7に設定される)を示す比較のデータを提供するために役立つことに注意されたい。
【0102】
上段のパネルは元の3次元シミュレーションであり、明確化のため、下段のパネルは白い矢頭によって瘢痕の境界が区切られ、像の残りの領域は瘢痕に囲まれた正常の皮膚であることを示す。それぞれの瘢痕の定量パラメータの範囲は測定によって分析され、プラシーボと比較してTGFβ3で処理した瘢痕の表面領域においては、30.21%の減少が示された(TGFβ3で処理した創傷の表面領域=12.823mm、プラシーボで処理した創傷瘢痕の表面領域=18.375mm)。
【0103】
図6
図6は、発明者によって行われた臨床試験において、プラシーボ処理及びTGF−β3処理した(100μlの200ng/100μlのTGF−β3又は100μlのプラシーボを、創縁のセンチメートル毎に、約24時間離れて2回投与した)創傷の治癒において生成した瘢痕のシリコン鋳型の測定分析から得られた、3次元シミュレーション及び瘢痕測定を示す。図6で示した結果と同様に、これは、本発明に記載の治療方法ではなく、その代わりに、本発明に記載の治療方法の驚くべき効果を示す比較のデータを提供するために役立つことに注意されたい。
【0104】
上段のパネルは元の3次元シミュレーションであり、明確化のため、下段のパネルは白い矢頭によって瘢痕の境界が区切られ、像の残りの領域は瘢痕に囲まれた正常の皮膚であることを示す。それぞれの瘢痕の定量パラメータの範囲は測定によって分析され、プラシーボと比較してTGFβ3で処理した瘢痕の表面領域においては、75.19%の減少が示された(TGFβ3で処理した創傷の表面領域=3.532mm、プラシーボで処理した創傷瘢痕の表面領域=14.239mm)。測定分析の結果はまたプラシーボ処理と比較してTGFβ3処理によって、瘢痕における体積の増加が73.33%減少することを示した。(TGFβ3で処理した創傷の増加体積=0.0008mm、プラシーボで処理した創傷の増加体積=0.003mm)。
【0105】
図7
図7は、プラシーボ処理及びTGF−β3コントロール処理した(100μlの500ng/100μlのTGF−β3又は100μlのプラシーボを、創縁のセンチメートル毎に、等しい量のTGF−β3を供与する2回の治療時に、約24時間離れて2回投与した)創傷の治癒において生成した瘢痕のシリコン鋳型の測定分析から得られた、3次元シミュレーション及び瘢痕測定を示す。
【0106】
上段のパネルは元の3次元シミュレーションであり、明確化のため、下段のパネルは白い矢頭によって瘢痕の境界が区切られ、像の残りの領域は瘢痕に囲まれた正常の皮膚であることを示す。この調査において得られた最大の瘢痕化阻害は、2回の比較的高投与量のTGF−β3を用いた処理に応答して観察される。このアプローチは瘢痕化を阻害するために有効であるが、このような治療計画に付随するコストは(より小さな全量のTGF−β3を使用する一方で、効率的な瘢痕化阻害が達成され得る)本発明に記載の治療方法よりも高い。
【0107】
図8
図8は、発明者によって行われた、(それぞれが皮内注射によって試験物質を投与することを含む)2回の治療時に、TGF−β3又はプラシーボが投与される臨床試験から得られた結果を示し、第1の治療は創傷化の前に起き、第2の治療は創傷閉鎖の直後に起きる、即ち、両者のTGF−β3の投与量はお互いに同じであり、約1時間以内(創傷化の10から30分前及び創傷後の10から30分)に投与される。 治療の実験的な方法は、図8に結果が示され、本発明に記載の治療方法を表していないが、その代わりに、本発明の方法の驚くべき効果を示す、別の(治療に有効な)治療方法であることが理解されるであろう。
【0108】
図8は、平均可視アナログ基準(VAS)点数(mm)として、TGFβ3(再度「Juvisata」と標識化)とプラシーボの治療効果を示す。瘢痕は100mmVASラインを使用して投与後(6週間、3から7ヶ月)の6時間点において独立した市民パネルによって記録された。
【0109】
図8は創傷閉鎖の前及び直後(即ち、両者の投与は約1時間以内)に創縁のセンチメートル毎に5ng、50ng、200ng及び500ng/100μlのTGF−β3の100μlの投与を2回適用することにより、瘢痕化が阻害されることを示す。改善のレベルは、用量応答的であり、典型的には初期の時間点(6週間以降)において初めて明らかになり、評価期間を通じて(即ち、調査の7ヶ月まで)維持される。
*はTGF−β3コントロール処理した創傷とプラシーボ処理した創傷治癒の結果生じた瘢痕化の顕著な差異(p<0.05)を示す。
【0110】
図9
図9は発明者によって行われた、TGF−β3を使用する治療的に有効な抗瘢痕化治療を比較する更なる臨床試験から得られたデータを示す。
【0111】
TGFβ3及びプラシーボは2回の治療の治療において皮内注射によって投与され、第1は創傷化の前であり、第2は約24時間後である。与えられるTGF−β3の量は、治療の間で変わらず、この調査は本発明に記載の治療を構成しない。図は、平均可視アナログ基準(VAS)点数(mm)として、TGFβ3(再度「Juvisata」と標識化)とプラシーボの治療効果を示す。瘢痕は100mmVASラインを使用して投与後(6週間、3から7ヶ月)の6時間点において独立した市民パネルによって記録された。
【0112】
図9は創傷化の前及び創傷閉鎖の約24時間後に創縁のセンチメートル毎に5ng、50ng、200ng及び500ng/100μlのTGF−β3の100μlの投与を2回適用することにより、瘢痕化が阻害されることを示す。改善のレベルは、用量応答的であり、典型的には初期の時間点(6週間以降)において初めて明らかになり、評価期間を通じて(即ち、調査の7ヶ月まで)維持される。驚くべきことに、効果の強度は以前のデータから期待されるものより、はるかに大きい。本発明の方法(それぞれの治療において治療される体の部位のセンチメートル毎に500ngのTGF−β3が与えられる)は、他の治療方法(それら自身がいまだ治療効果がある)より驚くほど効果的である。
*はTGF−β3コントロール処理した創傷とプラシーボ処理した創傷治癒の結果生じた瘢痕化の顕著な差異(p<0.05)を示す。
【0113】
図10
図10は、ヒト検体において観察されるTGF−β3の「ベル型」投与応答曲線が、また動物実験においても観察されることを示す。ここで、TGF−β3は、24時間離れた2回の治療(第1の治療は、創傷化時又は周辺において起きる)において、実験用ラットの創傷に供給された。それぞれの治療時に創傷のセンチメートル毎に与えられるTGF−β3の量はX軸に示される(5ng/cm、50ng/cm、200ng/cm又は500ng/cm)。
【0114】
明らかなように、低投与量のTGF−β3又は高投与量のTGF−β3を用いた繰り返しの治療は、ほとんど瘢痕化阻害を引き起こさなかった。
【0115】
図11
創傷治癒及び瘢痕化のラット実験モデルが、未処理のコントロール、又は第1と第2の治療の間でTGF−β3の投与量が増加しないTGF−β3を用いたコントロール治療と比較して、本発明の医薬及び方法を使用して達成し得る瘢痕化阻害を示すために使用された。
【0116】
図11は希釈したコントロール(「プラシーボ処理創傷」)で処理した1cmの切開したラットの創傷の治療において生成した瘢痕と、以下の計画:
i)センチメートル毎に20ngのTGF−β3を使用したTGF−β3のコントロール治療;
ii)センチメートル毎に100ngのTGF−β3を使用したTGF−β3のコントロール治療;又は
iii)本発明に記載のTGF−β3治療
の1つを与えた創傷の治癒において形成した瘢痕の間の巨視的なVAS値の平均的な差異を比較したグラフである。
【0117】
それぞれの場合において、創傷は、創傷化の前の第1及び約24時間後の第2の、2回の治療を受けた。
【0118】
プラシーボ処理したコントロール創傷は、それぞれが希釈剤の投与を構成する、2回の治療がなされた。これらのプラシーボ処理した創傷は、瘢痕化のためのベースライン値を与え、これを参照して、TGF−β3処理によって生成する瘢痕化阻害を決定し得る。「コントロール処理した創傷」は、それぞれが20ng/100μl又は100ng/μlのTGF−β3の注射を含む(それぞれの治療時に同じ濃度のTGF−β3が注射される)、2回の治療がなされた。「処理される創傷」は、第1の治療時に20ng/100μlのTGF−β3の注射を含み、一方で第2の治療時に100ng/100μlのTGF−β3の注射を含む、本発明に記載の漸増する投与量計画がなされた。
【0119】
それぞれの動物は2個の創傷を受け、それらは、それぞれの動物の創傷が、処理した創傷(本発明に記載のTGF−β3で処理した例)、又は(それぞれの治療時に同じ投与量のTGF−β3を用いたコントロール処理を受ける)コントロール処理した創傷だけでなく、プラシーボ処理した創傷を含むように準備された。
【0120】
創傷化の70日後に、瘢痕は評価され、VAS値は算出された。
【0121】
上の図10において報告した結果と一致して、コントロール処理した(20ng/100μl又は100ng/100μlのTGF−β3を用いて2回投与した)創傷は、プラシーボを受けたコントロールの未処理の創傷と比較して瘢痕化の低減を示した。TGF−β3の量は、このモデルにおける「ベル型」分布において最も効果的であることが示される領域にあるので、このことは驚くべきことではない。しかし、(第1の治療時に与えられる治療的に有効な量よりも大きな量のTGF−β3が、第2の治療時に与えられる)本発明の方法に従って投与される創傷が、創傷治癒において形成する瘢痕化阻害の点において顕著に大きな効果をしめしたことは驚くべき発見である。20ng/100μlのTGF−β3に続いて100ng/100μlのTGF−β3を用いる投与の抗瘢痕化効果は、20ng/100μl又は100ng/100μlのTGF−β3を2回投与する結果に一致して得られる付加的な抗瘢痕化効果から期待されるものより、顕著に大きな相乗効果がある。
【0122】
結果は、本発明の方法によって処理する、創傷治癒において観察された瘢痕化の阻害は、同量の投与量のTGF−β3を供給する、2回の治療時にTGF−β3を投与することを含む、代替の治療計画を使用して処理する、創傷治癒において観察されたものより、はるかに大きいものであることを示す。
【0123】
図12
図12は上の図11に関連して記載する研究において得られた瘢痕化の巨視的な外見の代表的な画像である。これらの瘢痕の画像は、創傷化の70日後に得られ、示された矢頭は瘢痕の末端を示す。
【0124】
示した瘢痕は、(プラシーボ処理したコントロール創傷を与える)プラシーボ又は(本発明に記載の漸増的な投与計画を受ける、処理した創傷、又はコントロール処理した創傷の何れかを生産するための)TGF−β3の何れかを用いた、24時間離れた2回の治療がなされる1cmの切開したラット創傷の治癒において形成する瘢痕である。
【0125】
コントロールのプラシーボ処理した創傷の治癒において生成する瘢痕の代表的な画像をパネルAに示す。パネルBは、それぞれが20ng/100μlのTGF−β3の注射を含む、2回の治療がなされるTGF−β3のコントロール処理した創傷の治癒において生成する瘢痕を示す。パネルCは、それぞれが100ng/100μlのTGF−β3の注射を含む、2回の治療がなされるTGF−β3のコントロール処理した創傷の治癒において生成する瘢痕を示す。パネルDに示す瘢痕は、本発明に従って処理した創傷治癒において生成した。第1の治療時に、それらは20ng/100μlのTGF−β3が注射され、第2の治療時に、100ng/100μlのTGF−β3が注射された。
【0126】
画像は、TGF−β3で処理した結果得られた瘢痕は、プラシーボ処理した創傷と比較して、幅が小さくなり、より白くなくなり(低色素沈着の低減)及び周囲の皮膚とよく調和するという点において、低減されることを示す。コントロールのTGF−β3で処理した創傷が、瘢痕化の阻害を示す事実は、上で示した投与応答曲線の発生において観察される効果に一致する。図11に関連して報告されるように、約24時間後の100ng/100μlのTGF−β3の注射に続く、創傷化の前の20ng/100μlのTGF−β3の漸増的な投与計画を用いて処理した創傷は、他の治療計画で処理した創傷治癒において形成する瘢痕に比べ、周囲の創傷化していない皮膚により近い瘢痕を得る、最も大きな瘢痕化阻害を示す。
【0127】
配列情報
TGF−β3(配列番号1)
ALDTNYCFRNLEENCCVRPLYIDFRQDLGWKWVHEPKGYYANFCSGPCPYLRSADT
THSTVLGLYNTLNPEASASPCCVPQDLEPLTILYYVGRTPKVEQLSNMVVKSCKCS
配列番号2−野生型ヒトTGF−β3をコードするDNA
GCT TTG GAC ACC AAT TAC TGC TTC CGC AAC TTG GAG GAG AAC TGC TGT GTG CGC CCC CTC TAC ATT GAC TTC CGA CAG GAT CTG GGC TGG AAG TGG GTC CAT GAA CCT AAG GGC TAC TAT GCC AAC TTC TGC TCA GGC CCT TGC CCA TAC CTC CGC AGT GCA GAC ACA ACC CAC AGC ACG GTG CTG GGA CTG TAC AAC ACT CTG AAC CCT GAA GCA TCT GCC TCG CCT TGC TGC GTG CCC CAG GAC CTG GAG CCC CTG ACC ATC CTG TAC TAT GTT GGG AGG ACC CCC AAA GTG GAG CAG CTC TCC AAC ATG GTG GTG AAG TCT TGT AAA TGT AGC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの創傷治癒の際に形成される瘢痕化を阻害する方法において、
第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎、又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量のTGF−β3を与え;
創傷が形成された後で、第1の治療の8から48時間後になされる、第2の治療時に、前記創傷に、第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きな治療的に有効量のTGF−β3を与える、
瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含む方法。
【請求項2】
TGF−β3が局所注射によって与えられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
創傷が形成される部位において第一の治療がなされ、局所注射が形成される創傷の正中線に実質的に沿った投与である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の治療が創傷が形成される部位になされ、局所注射が創傷が形成されるそれぞれの創縁への投与である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第1又は第2の治療が創縁になされ、局所注射が創縁の0.5センチメートル以内の部位に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
第1及び/又は第2の治療が、創傷の各末端の上の少なくとも0.5センチメートルに広がった領域へのTGF−βを与えることを含む、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒトの創傷治癒において形成する瘢痕化を阻害する方法において、
第1の治療時に、創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量のTGF−β3が与えられ;
創傷が形成し、第1の治療の8から48時間後になされる、第2の治療時に、前記創傷に、第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きな治療的な有効量のTGF−β3が与えられる、
瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含む方法。
【請求項8】
ヒトの創傷治癒において形成する瘢痕化を阻害する方法において、
第1の治療時に、創縁のセンチメートル毎、又は将来の創縁のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量のTGF−β3を与え;
創傷が形成し、第1の治療の8から48時間後になされる、第2の治療時に、前記創傷に、第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きな治療的な有効量のTGF−β3が与えられる、
瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含む方法。
【請求項9】
第3又は第4の治療を更に含む請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
第3又更なる治療時に与えられるTGF−β3の量が、実質的に第2の治療時に与えらられる量に等しい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第3又は更なる治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量が先立つ治療時に与えられるTGF−β3の量よりも大きい、請求項1から9の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
第2、又は更なる、治療時に創傷のセンチメートル毎に与えられるTGF−β3の量が、先立つ治療時に与えられる量より少なくとも100ng大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2、又は更なる、治療時に創傷のセンチメートル毎に与えられるTGF−β3の量が、先立つ治療時に与えられる量より少なくとも500ng大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1の治療時に、創縁、又は潜在的な創縁のセンチメートル毎に与えられるTGF−β3の量が約100ngである、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1の治療時に、創縁、又は潜在的な創縁のセンチメートル毎に与えられるTGF−β3の量が約200ngである、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
治療が約24時間離れている請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
創傷が皮膚創傷である、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
創傷が循環系の創傷である、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
創傷が外科手術の結果である、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
TGF−β3が局所注射により体の部位に投与される、請求項7から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
TGF−β3が製薬的に許容可能な溶液中で投与され、そのうち約100μlが治療される体の部位にセンチメートル毎に投与される、請求項1から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
第1の治療が創傷の前になされる、請求項7から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
第1の治療が創傷の1時間前までになされる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1の治療が創傷後になされる、請求項7から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
第1の治療が創傷の2時間後までになされる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1の治療が創傷閉鎖後になされる、請求項7から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
第1の治療が創傷閉鎖の2時間後までになされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ヒトの創傷治癒に付随する瘢痕化阻害のための適切な治療計画の選択方法において、このような瘢痕化阻害を必要とする患者が、第1の治療の8から48時間後になされる第2の治療を完了することができるかどうか決定し;
患者が第1の治療の8から48時間後になされる第2の治療を完了することができる場合、
第1の治療時に、瘢痕化が阻害される、創縁のセンチメートル毎、又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、第1の治療的な有効量のTGF−β3が与えられ;
創傷が形成し、第1の治療の8から48時間後になされる、第2の治療時に、前記創傷に第1の治療時に与えられるTGF−β3の治療的な有効量よりも大きな治療的な有効量のTGF−β3が与えられるような、
瘢痕化が阻害される体の部位の治療を含む治療計画を選択するか;又は
患者が第1の治療の8から48時間後になされる第2の治療を完了することができない場合、
単一の治療時に、瘢痕化が阻害される、創縁のセンチメートル毎、又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に、約150ngから349ngのTGF−β3が与えられること、
を含む治療計画を選択することを含む方法。
【請求項29】
第1の治療時に、第1の治療的な有効量のTGF−β3が、創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に与えられるように、医薬が与えられ;次の治療時に、前の治療の8から48時間後に、創縁のセンチメートル毎に、より大きな治療的な有効量のTGF−β3が与えられるように、医薬が与えられる、ヒトの創傷又はヒトの創傷が形成される部位の治療における、瘢痕化を阻害するための、医薬としてのTGF−β3の使用。
【請求項30】
医薬が注入可能な医薬である、請求項29で使用されるTGF−β3。
【請求項31】
医薬が皮内注射のためである、請求項30で使用されるTGF−β3。
【請求項32】
TGF−β3の必要量が、医薬の100μl中に与えられるように、医薬が製剤化される、請求項29から31の何れか一項に記載のTGF−β3。
【請求項33】
第1の治療時に、第1の治療的な有効量のTGF−β3が、創縁のセンチメートル毎又は創傷が形成される部位のセンチメートル毎に与えられるように、医薬が与えられ;次の治療時に、前の治療の8から48時間後に、創縁のセンチメートル毎に、より大きな治療的な有効量のTGF−β3が与えられるように、医薬が与えられる、ヒトの創傷又はヒトの創傷が形成される部位の治療における、瘢痕化を阻害するための、医薬として使用するためのTGF−β3。
【請求項34】
医薬が注入可能な医薬である、請求項33で使用されるTGF−β3。
【請求項35】
医薬が皮内注射のためである、請求項34で使用されるTGF−β3。
【請求項36】
TGF−β3の必要量が、医薬の100μl中に与えられるように、医薬が製剤化される、請求項33から35の何れか一項に記載のTGF−β3。
【請求項37】
創傷治癒に付随する瘢痕化阻害における使用のためのキットにおいて、互いに8から48時間離れた時間に、創傷又は創傷が形成される部位に投与するためのTGF−β3を含む、第1及び第2のバイアルを含むキット。
【請求項38】
ヒトの創傷治癒に付随する瘢痕化阻害における使用のためのキットにおいて、
TGF−β3を含む組成物の第1の量、この第1の量は、第1の治療時に、創傷又は創傷が形成される部位へ投与するためのものであり;
TGF−β3を含む組成物の第2の量、この第2の量は、第2の治療時に、創傷に投与するためのものであり;
互いに8から48時間離れた時間における、第1の治療時に投与される投与量より大きな治療的な有効量のTGF−β3の投与量が、第2の治療時に創傷に投与されるような様式における、組成物の第1及び第2の量の投与に関する説明書を含むキット。
【請求項39】
第1及び第2の組成物の量がそれぞれ異なる第1及び第2の組成物を含み、ここで第2の組成物が第1の組成物よりも大きな濃度のTGF−β3を含む、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
第1及び第2の組成物が実質的に等しい濃度のTGF−β3を含み、説明書が、第2の治療時に投与される第2の組成物の容量が、第1の治療時に投与される第1の組成物の容量よりも大きいべきであることを示す、請求項38に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−506413(P2011−506413A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537509(P2010−537509)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/GB2008/004078
【国際公開番号】WO2009/074796
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508275021)レノヴォ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】