説明

療法に対する腫瘍細胞の感受性の増大

【課題】癌の療法の効果を増大させる方法。
【解決手段】突然変異した療法感作遺伝子活性を有する腫瘍細胞に野生型の療法感作遺伝子活性を付与し、そして腫瘍細胞に癌の療法、たとえば化学療法、放射線療法、生物学的療法(免疫療法を含む)、寒冷療法および高熱療法を施すことによる、癌の療法の効果を増大させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌の療法に関するものである。本発明は特に癌の治療効果を高める方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌の治療の主力は手術、放射線療法、化学療法および生物学的療法である(全般的に以下を参照されたい:Comprehensive Textbook of Oncology,編者ムーサー(A.R.Moossor)ら(ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス,1991);Cancer:principles and practice of oncology,編者デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Vincent T.DeVita,Jr.,Samuel Hellman,Steven A.Rosenberg),第4版(フィラデルフィア:J.B.リッピンコット・カンパニー,1993))。放射線療法(radiation therapy、radiotherapyとも言われる)は、正常組織に対する許容線量を越えない高エネルギーのX線、電子線、放射性同位体、および当業者に既知の他の形の放射線を用いて癌細胞を殺すものである。
【0003】
化学療法とは薬物を用いて癌細胞を殺すことを意味する。異なる作用様式をもつ幾つかの群の化学療法薬がある。たとえば多くの代謝拮抗薬は正常な細胞成分と構造的に類似し、正常な細胞プロセスを阻害することによりそれらの効果を及ぼす。多くのアルキル化剤は増殖性および非増殖性の癌細胞集団に対して有効である。一般にこれらの薬物は種々の様式で細胞のDNAと結合して、的確な複製および/または転写を阻害する。多くの抗腫瘍性抗生物質はそれ自身をDNAに挿入し、そこでDNAの破壊を誘発するか、または転写を阻害する。一般にアルカロイドは細胞分裂に必要な染色体紡錘体の機能を阻害する。ホルモン薬、たとえばタモキシフェンおよびフルタミドは、ある癌の増殖を阻害する。ただしそれらの作用メカニズムは完全には分かっていない。
【0004】
一般に生物学的療法は宿主の生物学的プロセスに由来するか、またはそれを有益な形で模倣した物質を利用する。インターフェロン−αおよびインターロイキン−2は癌の治療に現在用いられている生物学的療法薬の2例である。
【0005】
ある癌の療法には標準的治療法の効果を高めるために変更剤を用いる(全般的に以下を参照されたい:コールマン、グローバー、タリシ(Coleman CN,Glover DJ,Turrisi AT),“放射線および化学療法の感作薬および保護薬”,Chemotherapy:Principles and practice,フィラデルフィア:WB ソーンダース,225−252,1989)。変更剤は通常はそれ自身は細胞毒性でなく、標準的療法、たとえば放射線療法に対する腫瘍組織の応答性を変更または増大させる。感作剤の有効性は一般に感作増大比(sensitizer enhancement ratio,SER)として表される。SERは、増感剤なしで一定水準の細胞死を生じるのに必要な治療用量を、増感剤を併用して同水準の細胞死を得るのに必要な治療用量で割ったものである。
【0006】
放射線療法および化学療法の改良のための臨床的方法の2例は、低酸素性−細胞感作(hypoxic−cell sensitization)およびチオール枯渇である。放射線およびアルキル化剤により生じる損傷は一部はDNAおよび他の重要な細胞性高分子における遊離基形成に関係する。チオール化合物はDNA遊離基を阻止し、またはそれらを修復する。DNA遊離基が酸素または酸素に類する低酸素性−細胞感作剤、たとえばニトロイミダゾールに暴露されると、DNAに対する損傷が固定され、すなわち酸化によって不可逆的となる。ブトニンスルホキシミン(BSO)などの薬物によるチオール枯渇も、放射線および放射線様作用性化学療法薬、たとえばアルキル化剤による毒性を増大させる。
【発明の開示】
【0007】
[発明の概要]
本発明は、野生型の療法感作遺伝子(therapy−sensitizing gene)活性の喪失を特色とする、癌の治療方法である。本方法は、腫瘍細胞に野生型の療法感作遺伝子活性の供給源を導入し、そして細胞に癌の療法を施すことを含む。本発明によってその効果が高められる癌の療法には放射線療法、化学療法、生物学的療法−免疫療法、寒冷療法および高熱療法を含む−が含まれるが、これらに限定されない。本発明により治療しうる癌には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:癌腫、肉腫、中枢神経系腫、黒色腫、白血病、リンパ腫、造血系癌、卵巣癌、骨原性肉腫、肺癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、神経膠芽腫、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、腎癌、膵癌、胃癌、食道癌、肛門癌、胆道癌、尿生殖器癌、および頭頚部癌。
【0008】
したがって本発明は、野生型の療法感作遺伝子活性を喪失していることを特色とする腫瘍細胞に野生型の療法感作遺伝子活性の供給源を付与し、そして腫瘍細胞に癌の療法を施すことにより癌の療法の効果を高める方法である。
【0009】
“付与(delivering)”とは、薬物を哺乳動物に投与するための、当業者に既知の方法を採用することを意味する。これらの方法には、遺伝子または遺伝子のcDNAをベクターに挿入して腫瘍細胞に付与すること、遺伝子または遺伝子のcDNAをウイルスキャプシドと結合させることにより腫瘍細胞に付与すること、遺伝子または遺伝子のcDNAをリガンドと結合させることにより、またはリポソームに封入することにより腫瘍細胞に付与すること、腫瘍細胞遺伝子の点突然変異または挿入突然変異または欠失突然変異を組換え法により補正すること、あるいは蛋白質を直接に、またはハイブリッド分子中において、または封入法により細胞に付与することが含まれるが、これらに限定されない。腫瘍細胞内に野生型の療法感作遺伝子活性を存在させる結果をもたらす他の物質および方法、たとえば以下に記載されるものも採用しうる:サムブルック、フリッチュおよびマニアチス(J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989、ならびにオースベル(Ausubel)ら,Current Protocols in Molecular Biology,1994。これらが本明細書に参考として含まれるものとする。
【0010】
“療法感作遺伝子”とは、それの正常な機能または調節の喪失により癌細胞が療法に対してより耐性となる遺伝子または遺伝子生成物を意味する。療法感作遺伝子機能を修復すると、療法に対する癌細胞の感受性が高まる。特にそれはアポトーシスを促進するか、またはその機能もしくは調節の変化が腫瘍化および療法耐性に寄与する遺伝子を意味し、これには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:腫瘍サプレッサー遺伝子、たとえばp53;細胞周期調節遺伝子、たとえばサイクリン、サイクリン依存性キナーゼ(スチール(Steel,M.),Lancet 343:931−932,1994)、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(ブレニス(Blenis,J.),Pro.Natl.Acad.Sci.90:5889−5892,1993:マーシャル(Marshall,C.J.),Nature,367:686,1994)、細胞周期遺伝子の阻害物質、たとえばp16(多重腫瘍サプレッサー1(multiple tumor suppressor 1))(カム(Kamb)ら,Science 264:436−490,1994);およびアポトーシス遺伝子、たとえばfas。
【0011】
有望な療法感作遺伝子は、療法感作遺伝子p53につき本発明の詳細な記述に示した方法で、p53をその有望な遺伝子で置き換えることにより同定しうる。たとえば腫瘍細胞をまず、ルーティンな配列分析または当業者に既知である他の診断アッセイ法により、試験すべき候補となる療法感作遺伝子をコードする遺伝子が突然変異したものまたはメッセンジャーRNAが突然変異したものを含むことを解明する。次いでその遺伝子に対する正常な野生型コード配列を当業者に既知の標準法で、選択マーカー遺伝子、たとえばネオマイシン耐性遺伝子を含む適切な真核細胞発現ベクター中へサブクローニングする。たとえば正常なコード配列を正常な線維芽細胞のメッセンジャーRNA集団のcDNAから、コード配列の3′および5′末端に適切なプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅することができる。適切な真核細胞性発現ベクター中へのサブクローニング後に、問題となっている正常な候補となる療法感作遺伝子を含むこのベクターを、突然変異した形の遺伝子を発現している腫瘍細胞中へトランスフェクションすることができる。トランスフェクションは当業者に既知の多数の方法で行うことができ、これにはリン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション(カチオン性リポソームを用いる)、エレクトロポレーションおよびDEAE−デキストラン促進トランスフェクションが含まれるが、これらに限定されない。トランスフェクションした細胞を適切な選択試薬、たとえばネオマイシンの存在下で拡張する。クローンが拡張および選択された時点で、それらを1)候補となる療法感作遺伝子の発現を証明するために当業者に既知のルーティンな方法で解明し、そして2)化学療法薬および/または放射線療法に対する感受性につき、p53に関する本発明の詳細な記述に記載した標準的増殖アッセイ法またはクローン原性アッセイ法により試験する。候補となる療法感作遺伝子を発現する多数のクローンにおいて母腫瘍細胞と比較して感受性が増大している場合、そのトランスフェクションした遺伝子は療法感作遺伝子であることが示される。
【0012】
“野生型の療法感作遺伝子活性”とは、正常な非新生細胞における療法感作遺伝子の活性を意味する。詳細には、それは療法感作遺伝子によりコードされる蛋白質または蛋白質の一部が腫瘍細胞を癌の療法に対して感作する能力を意味する。それの療法感作能に影響を及ぼさない“突然変異”を1または2以上含む療法感作蛋白質も、本発明の目的にとって“野生型”とみなされる。その活性は、野生型の療法感作遺伝子のコード配列またはその一部から発現する蛋白質に具体化される。
【0013】
“野生型の療法感作遺伝子活性の喪失”とは、正常な療法感作遺伝子活性の不在または変化、たとえば細胞内に突然変異型の療法感作蛋白質が存在すること、野生型の療法感作蛋白質が存在しないこと、または野生型の療法感作蛋白質が阻害されていることを意味する。正常なものとの療法感作活性の相異は、1または2以上の遺伝子座における遺伝子の相異により起こる可能性がある。遺伝子の相異には幾つかの異なるタイプがあり、これには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:1塩基対が他の塩基対に変化した点突然変異、1もしくは2以上の塩基対の挿入、1もしくは2以上の塩基対から療法感作遺伝子の全長にまで及ぶ欠失、1遺伝子と他の遺伝子の融合、既存の療法感作遺伝子の付加的コピーの導入、以前は存在しなかった非−療法感作遺伝子のコピー1もしくは2以上の導入、当業者に既知の他の遺伝子転写、翻訳および蛋白質機能の変化、または上記のいずれかの組み合わせ。
【0014】
“腫瘍細胞”とは、インビボで動物に生じる、組織の望ましくない増殖、または異常な存続もしくは異常な浸潤を起こしうる細胞を意味する。
【0015】
本発明は好ましい態様においては、野生型の療法感作蛋白質の療法感作部分を腫瘍細胞に導入し、そしてその腫瘍細胞に癌の療法を施す。
【0016】
“野生型の療法感作蛋白質の療法感作部分”とは、野生型の療法感作蛋白質において、突然変異した療法感作活性を発現する腫瘍細胞を癌の療法に対して感作する能力をもつ部分を意味する。野生型の療法感作蛋白質の療法感作部分は当業者に既知のルーティンな配列分析により確認することができる。これには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:欠失突然変異、点突然変異、ならびにウンガー(Unger)ら,“転写調節、トランスドミナント(transdominant)阻害、およびトランスフォーメーション抑制に関与する野生型および突然変異型の療法感作蛋白質の機能性ドメイン”,Mol.Cell.Biol.13:5186−94,1994、ならびにサムブルック、フリッチュおよびマニアチス(J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis),Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989、ならびにオースベル(Ausubel)ら,Current Protocols inMolecular Biology,1994。これらが本明細書に参考として含まれるものとする。
【0017】
本発明は他の好ましい態様においては、野生型の療法感作遺伝子、そのcDNA、またはその療法感作遺伝子活性をコードする部分を腫瘍細胞に導入し、療法感作遺伝子を発現させ、そしてその腫瘍細胞に癌の療法を施す。
【0018】
さらに他の好ましい態様においては、療法感作遺伝子、そのcDNA、またはその一部を、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびパピローマウイルスベクターよりなる群から選ばれるウイルスベクター(これらに限定されない)により腫瘍細胞に導入する。療法感作遺伝子、そのcDNA、またはその一部は、ポリリシンを介してウイルスのキャプシドもしくは粒子に結合させるか、またはアシアログリコプロテインなどのリガンドに結合させ、またはリポソームに封入することにより、腫瘍細胞に導入することもできる。動物への導入手段には直接注射、またはエーロゾル化製剤、動脈内注入、腔内注入および静脈内注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
場合により、突然変異した、または異常な療法感作活性が異常に増大した遺伝子発現または遺伝子生成物活性を反映する可能性があり、これらはトランスドミナント陰性突然変異または当業者に既知の他のダウンレギュレーション法によりダウンレギュレーションすることができる。
【0020】
本発明の他の特色および利点は以下の本発明の詳細な記述および請求の範囲から明らかであろう。
【0021】
[発明の詳細な記述]
本発明は、腫瘍細胞から失われている療法感作活性の供給源を腫瘍細胞に導入することにより(遺伝子、cDNAまたは蛋白質の導入により)癌の療法の効果を高める新規な方法である。それらの活性の例にはfas遺伝子、網膜芽腫遺伝子、p53腫瘍サプレッサー遺伝子および他の腫瘍サプレッサー遺伝子、細胞周期調節遺伝子およびアポトーシス遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
ヒトの癌に対する腫瘍感作遺伝子p53の関連
突然変異、欠失または不活性化による正常なp53機能の喪失は、ヒトの癌において極めて頻繁に遭遇する変化の1つであり、ヒトの癌のほぼ50%に起こる(ニグロ(Nigro)ら,“p53遺伝子における突然変異は種々のヒト腫瘍タイプに起こる”,Nature,342:705−708(1989);タカハシ(Takahashi)ら,“p53:肺癌における遺伝子異常の頻繁な標的”,Science,246:491−194(1989))。さらに、p53の遺伝性突然変異を伴う個体は種々の癌を生じやすいことを幾つかの研究が示唆している(マーキン(Malkin)ら,“乳癌、肉腫その他の新生物の家族性症候群における生殖細胞系p53突然変異”,Science,250:1233−1238(1990);スリバスタバ(Srivastava)ら,“リー−フラウメニ症候群を伴う癌傾向家族における突然変異p53遺伝子の生殖細胞系伝達”,Nature,348:747−749(1990):リー(Li)ら,“24人の血族における癌家族症候群”,Cancer Res.,48:5358−5362(1988))。これらの個体の腫瘍は野生型p53対立遺伝子を喪失していることが示され、これは網膜芽腫その他の腫瘍における網膜芽腫サプレッサー遺伝子のヘテロ接合性の喪失を連想させる(ヌッソン(Knudson,A.G.)“突然変異と癌:網膜芽腫の統計学的研究”,Pro.Natl.Acad.Sci.,USA,68:820−823(1971);カミングズ(Comings,D.E.)“発癌の一般論”,Pro.Natl.Acad.Sci.,USA,7U:3324−3328(1973))。
【0023】
多様な腫瘍細胞系に野生型p53遺伝子をインビトロ導入すると培養において細胞増殖がダウンレギュレーションされ、またはインビボでの細胞の再移植に際して腫瘍形成性表現型が抑制されることを幾つかの研究が示している。これらの研究には以下のものが含まれる:神経膠芽腫由来の腫瘍細胞(マーセル(Mercer)ら,“ヒト野生型p53を条件付き発現する神経膠芽腫腫瘍細胞系における負の増殖調節”,Pro.Natl.Acad.Sci.,USA,87:6166−6170(1990))、結腸癌(ベーカー(Baker)ら,“野生型p53によるヒト結腸直腸癌細胞増殖の抑制”,Science,249:912−915(1990)、骨肉腫(ディラー(Diller)ら,“骨肉腫における細胞周期制御蛋白質としてのp53の機能”,Mol.Cell.Biol.,10:5772−5781(1990);チェン(Chen)ら,“ヒトp53遺伝子による腫瘍抑制の遺伝的メカニズム”,Science,250:1756−1580(1990))、白血病(チェン(Cheng)ら,“ヒト野生型p53遺伝子による急性リンパ芽球性白血病の抑制”,Cancer Res.,53:222−226(1992))、および肺癌(タカハシ(Takahashi)ら,“野生型p53は多重遺伝子病変を伴うヒト肺癌細胞の増殖を抑制するが、突然変異p53は抑制しない”,Cancer Res.,52:2340−2343(1992))。しかし野生型p53遺伝子を非悪性細胞にインビトロ導入しても、腫瘍細胞系に見られるような細胞増殖低下は生じない(ベーカー(Baker)ら,前掲)。
【0024】
p53突然変異を伴う腫瘍細胞すべてが野生型p53の発現によって著しい増殖ダウンレギュレーションを示すわけではない。ヒンズ(Hinds)ら,Cell Growth and Differntiation 1:571−80(1990)は、必ずしもすべてのp53突然変異体が同等な表現型を生じるわけではないことを示している。ミカロビッツ(Michalovitz)ら,Cell62:671−680(1990)は、ある突然変異体は増殖調節に関して野生型p53に対し優性である可能性があることを示している。野生型p53の発現は、ある腫瘍細胞系の増殖性には影響を及ぼさない。これにはヒトパピローマウイルス発現細胞系、およびA673横紋筋肉腫細胞(チェン(Chen)ら,Oncogene :1799−1805,1991)が含まれる。p53が細胞増殖を抑制したと報告された例では、効果は時に小さいことがあった(チェン(Chen)ら,1992,前掲)。
【0025】
さらに、腫瘍細胞をダウンレギュレーションするために野生型p53を単独で用いる方法は、腫瘍細胞において安定な野生型p53の発現を必要とする。p53の温度感受性突然変異体の研究に際して、野生型p53がトランスフォームした細胞の増殖に及ぼす抑制効果は野生型p53の発現が停止した時点で失われるのが観察された(ミカロビッツ(Michalovitz)ら,1990,前掲)。現在用いられている大部分の有効な遺伝子伝達方法は一時的なp53発現をもたらすにすぎないので、これはp53単独による療法の効果を制限する。
【0026】
p53の機能は著しく複雑であり、以下を含めた多様な細胞プロセスに関与している:増殖(ベーカー(Baker)ら,Science,249:912−915,1990;ミカロビッツ(Michalovitz)ら,Cell 62:671−680,1990)、分化(シャウルスキー(Shaulsky)ら,Pro.Natl.Acad.Sci.,88:8982−8986(1991)、プログラミングされた細胞死(すなわちアポトーシス)(ヨニシュ−ルーチ(Yonish−Rouach)ら,Nature,352:345−347,1991)、細胞老化(シェイ(Shay)ら,Exp.Cell Research,196:33−39,1991)、DNAの結合(ケルン(Kern)ら,Science,252:1708−1711,1991;バルゴネッチ(Bargonetti)ら,Cell 65:1083−1091,1991)、およびDNA損傷により誘導されるG1期停止(カスタン(Kastan)ら,Cancer Research,51:6304−6311,1991;クルビッツ(Kuerbitz)ら,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,89:7491−7495,1992)。癌の療法に関して、DNA損傷により誘導されるG1期停止におけるp53の改善が、療法の最も興味ある役割の1つである。
【0027】
野生型および突然変異型のp53遺伝子を、内因性p53を欠如する腫瘍細胞に導入した。これらの細胞をガンマ線で照射すると、野生型p53の発現はG1/S期境界での一時的な細胞周期停止状態になる(カスタン(Kastan)ら,“DNA損傷に対する細胞応答へのp53蛋白質の関与”,Cancer Res.,51:6304−6311(1991);クルビッツ(Kuerbitz)ら,“野生型p53は照射後の細胞周期チェックポイント決定基である”,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,89:7491−7495(1992);ヨニシュ−ルーチ(Yonish−Rouach)ら,“野生型p53がインターロイキン−6により阻害された骨髄性白血病細胞のアポトーシスを誘導する”,Nature,352:345−347(1991))。p53を欠如するか、または突然変異p53を発現する細胞は、停止しなかった(カスタン(Kastan)ら,前掲;クルビッツ(Kuerbitz)ら,前掲)。
【0028】
p53はDNA損傷が修復されるまでS期に入るのを阻止する重要なチェックポイント機能を果たすということが提唱された(フォーゲルスタイン(Vogelstein)ら,Cell 70:523−526,1992)。したがってDNA損傷を与える放射線または化学療法が癌細胞にもたらす結果は、突然変異p53または野生型p53の発現により影響される可能性がある。
【0029】
これに関して、野生型p53機能を喪失した癌細胞はDNA損傷を与える薬物および放射線に対して、より感受性が高いことを幾つかの系統の証拠が示唆している。酵母における類似のチェックポイントとの相似性によれば、p53誘導G1期停止の欠損は、細胞分裂前に行われる致死的DNA損傷の修復を阻害することにより細胞破壊を促進する可能性がある(フォーゲルスタイン(Vogelstein)ら,前掲)。
【0030】
フォーゲルスタイン(Vogelstein)ら,前掲,は以下のように述べている: 腫瘍細胞はDNA損傷を与えるもの、たとえば放射線療法および化学療法に用いられるものに対して、より感受性であることが多い;この感受性はp53機能の喪失がもたらす有益な副作用であり、これがなければ細胞の死が制限されるであろう。したがってp53突然変異は抗腫瘍薬に対する細胞の感受性を低下させるのではなく増大させる幾つかの変化の1つをなす。
【0031】
この見解は、突然変異p53遺伝子伝達に伴って放射線および化学療法に対する腫瘍細胞の感受性が増大することを証明する研究により支持される(ペティ(Petty)ら,“p53腫瘍サプレッサー遺伝子生成物の発現は化学的感受性の決定因子である”,Biochem.Biophys.Res.Comm.,199:264−270,1994,先行技術とは認められない)。
【0032】
しかしp53ヌルトランスジェニックマウス由来の正常な造血細胞、線維芽細胞および胃腸細胞につき実施した他の研究は、アポトーシスにp53が必要であることを示した(ローウェ(Lowe)ら,Nature,362:847−849,1993;クラーク(Clarke)ら,Nature,362:849−852,1993;ローテムおよびザクス(Lotem J,Sachs L),Blood,82:1092−1096,1993;ローウェ(Lowe)ら,Cell 74:957−967,1993;およびメリット(Merritt)ら,Cancer Research,54:614−617,1994,先行技術とは認められない)。これらの研究においては、p53を欠如する正常細胞は放射線またはDNA損傷を与える薬物に暴露されたのちのアポトーシスに対して、より耐性であった。同様にバーキットリンパ腫細胞系の研究により、野生型p53遺伝子配置をもつ若干の細胞(すべてではない)が放射線に対して、より感受性であることを明らかにした(オコンナー(O’Connor)ら,Cancer Research,53:4776−4780,1993,先行技術とは認められない)。しかし頭頚部癌細胞系の評価は、放射線感受性と内因性野生型p53または突然変異p53との関連を示さなかった(ブラッハマン(Brachman)ら,Cancer Research,53:3667−3669,1993,先行技術とは認められない)。
【0033】
ローウェ(Lowe)ら,“p53依存性アポトーシスは抗癌薬の細胞毒性に類似する”Cell,74:957−967,1993(先行技術とは認められない)は以下のように述べている: p53欠失マウス胚線維芽細胞を用いて、広範な群の抗癌薬に対する細胞感受性および耐性におけるp53の必要性を系統的に調べた。それらの結果は、腫瘍遺伝子、特にアデノウイルスEIA遺伝子は電離性放射線、5−フルオロウラシル、エトポシドおよびアドリアマイシンにより誘導されるアポトーシスに対して線維芽細胞を感作しうることを証明する。さらに、死のプログラムを効果的に執行するためにはp53腫瘍サプレッサーが必要である。
【0034】
ローテムおよびザクス(Lotem,Sachs),“野生型p53を欠失するマウスに由来する造血細胞はいくつかの薬剤によるアポトーシス誘導に対して、より耐性である”Blood,82:1092−1096(1993)(先行技術とは認められない)は以下のように述べている: 正常な線維芽細胞において、照射およびDNA損傷を与える他の薬剤は野生型p53の発現を誘導し、この野生型p53発現の誘導が細胞をG1期の制御時点に停止させる。DNA損傷の伝播を阻止するためにDNA複製の開始前にDNAを修復するのに、このG1期停止が必要であることが示唆された。p53欠失マウス由来の線維芽細胞はこのG1期制御を喪失し、照射後に細胞周期を継続し、したがってDNA損傷が伝播された。我々の得た結果は、生存力因子が高濃度である条件下では野生型p53の有無によってマウスの骨髄性コロニー形成細胞数に差がなかった。しかし骨髄前駆細胞が低濃度の生存力因子、たとえばGM−CSF、IL−1α、IL−3、IL−6もしくはSCFを含むにすぎない場合、またはこれらの細胞において照射もしくは熱ショックによりアポトーシスを誘導した場合、p53欠失マウス由来の細胞の方が高い生存力を備えていた。p53欠失につきホモ接合性のマウスとヘテロ接合性のマウスとを比較すると、アポトーシス誘導に対する耐性の増大には野生型p53の1対立遺伝子の喪失で十分であることが示された。p53欠失マウスの方がアポトーシスの誘導に対する耐性が高いことは照射された胸腺細胞においても認められたが、グルココルチコイドであるデキサメタゾンで処理した胸腺細胞、または成熟した腹腔顆粒球においては認められなかった。照射した骨髄前駆細胞および胸腺細胞における耐性の程度は野生型p53の投与量に関係していた。
【0035】
このように、突然変異および野生型p53が化学療法および放射線感受性に及ぼす影響はこれら従来の研究からははっきりせず、またこれらの従来の研究はいずれも内因性突然変異p53を発現している腫瘍細胞の治療感受性に野生型p53遺伝子伝達が及ぼす影響に向けたものではない。
【0036】
癌の療法の効果の増大
本発明は、腫瘍細胞に療法を施す前に野生型の療法感作遺伝子活性の供給源を腫瘍細胞に導入することにより癌の療法の効果を増大させるための新規方法である。療法感作遺伝子の例としてp53を用いると、本発明は以下に従って実施することができる:
まず患者の腫瘍がp53突然変異を含むことを標準的診断法により判定する。次いで野生型p53活性、たとえばp53蛋白質の療法感作活性を示す部分、またはp53蛋白質のその部分をコードする遺伝子発現ベクターを腫瘍細胞に導入する。これによって、p53突然変異を含む腫瘍細胞は野生型p53活性期間中に施された癌療法に対して、より感受性となる。この方法で効果を高めることができる癌療法には、放射線療法、化学療法、生物学的療法、たとえば免疫療法、寒冷療法および高熱療法が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
突然変異した療法感作遺伝子活性、たとえば突然変異p53蛋白質を含む細胞においては、修復されないDNA損傷がS期への進行を遮断せず、またはアポトーシスを始動させない可能性がある。本発明者らは、いかなる理論にも拘束されないが、内因性の突然変異した療法感作遺伝子活性をもち、かつ野生型p53の遺伝子または蛋白質を再生された腫瘍細胞は、ゲノム損傷および修復プロセスの過負荷または障害があるとすれば、療法様式によるアポトーシスの誘導に対して特に感受性であると考える。腫瘍細胞中に野生型の療法感作遺伝子活性が存在すると、それらの細胞はこれらのDNA損傷を与える薬剤に対して、また恐らくアポトーシスを誘導しうる他の多様な療法様式に対しても感作されるであろう。
【0038】
p53感作療法と他の療法を組み合わせる方法は、いずれか単独の療法より効果的である。外因性の野生型p53活性を腫瘍細胞に導入すると、細胞を死滅させるのに必要な薬物または放射線の量が少なくなり、薬物または放射線を投与しても毒性を生じない療法ウインドウ濃度を高めることができる。腫瘍抑制のためには持続的なp53遺伝子発現が必要であるp53遺伝子療法単独と対比して、p53感作療法と他の療法との組み合わせ効果によれば、腫瘍細胞を死滅させる処置期間中、一時的に腫瘍細胞中に野生型p53蛋白質の療法感作部分が存在する必要があるにすぎない。この方法は生物学的療法の効率も改善する。これには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:免疫療法、たとえば受動免疫療法(たとえば抗体);活性化された免疫系のエフェクター細胞を投与する養子免疫療法;抗腫瘍免疫を誘導するための免疫化を伴う能動免疫療法;種々のサイトカイン(インターロイキン、たとえばIL−2、IL−6、IL−7、IL−12、腫瘍壊死因子、腫瘍増殖因子、インターフェロン、増殖因子、たとえばGM−CSF、G−CSFが含まれるが、これらに限定されない)により仲介される療法であって、これらのサイトカインに対する、またはこれらのサイトカインにより活性化される免疫系のエフェクターメカニズムに対する腫瘍細胞の感受性を高めることによる療法。さらに、本発明のp53仲介による感作療法は、細胞毒性免疫細胞(細胞毒性T細胞、リンホカイン活性化キラー細胞、天然キラー細胞、マクロファージ、単球および顆粒球が含まれるが、これらに限定されない)による死滅に必要なアポトーシス経路の再生により、腫瘍細胞を免疫系に対するより良い標的となす。
【0039】
療法感作活性は野生型p53遺伝子/蛋白質の部分に例示される。療法感作部分は当業者に既知のルーティンな突然変異分析、たとえば点突然変異および欠失突然変異により確認することができる。
【0040】
癌の療法を増強するために野生型の療法感作遺伝子生成物活性を模倣した小型の分子を用いることもでき、これにはペプチド、修飾したペプチド、または有機化合物が含まれるが、これらに限定されない。他の有用な物質には、突然変異した療法感作遺伝子の生成物に結合してその遺伝子生成物の野生型療法感作活性を確立する立体配置の変化を誘導するアロステリック調節剤として作用する小型の分子が含まれる。
【0041】
p53または他の療法感作遺伝子の突然変異は、検査した癌の実質的にすべてに見られたので、本発明は著しく広範な用途をもつ。好ましい態様においては、野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を、現在利用しうる遺伝子付与用ベヒクルによって直接付与することにより、局在化した腫瘍を治療することができる。これにはp53アデノウイルスベクターの感染、p53レトロウイルスベヒクルパッケージング系列の移植、または結合コンプレックス中のアデノウイルスキャプシドにより促進させたp53 cDNAのトランスフェクションが含まれるが、これらに限定されない。遺伝子伝達ベクターを腫瘍部位に蓄積しうるターゲティング法の開発に伴って、この方法は散在性癌にも拡大することができる。他の遺伝子発現ベクター系を利用することもでき、これにはリポフェクション(lipofection)または直接DNA注射が含まれるが、これらに限定されない。当業者に既知の他の遺伝子伝達および発現方法も利用しうる。療法感作遺伝子p53につき以下に示す例を、当業者は癌の治療のために他の療法感作遺伝子にも適用することができる。
【0042】
実施例1.腫瘍細胞へのp53遺伝子の伝達
野生型p53遺伝子またはその遺伝子の一部をベクター中において、その遺伝子が染色体外に残留するように導入することができる。染色体外にある野生型p53遺伝子またはその遺伝子の一部から野生型p53蛋白質が発現される。
【0043】
あるいは野生型p53遺伝子を、細胞中に存在する内因性突然変異p53遺伝子を置換するように腫瘍細胞中へ導入することができる。この方法によればp53遺伝子突然変異が補正されるであろう(レベット(Revet)ら,“RecA蛋白質コーティングした短いDNAプローブによる同種DNAターゲティング、および線状二重らせん分子上における電子顕微鏡マッピング”,Journal of Molecular Biology,232(3):779−91,1993;トーマス(Thomas)ら,“胚幹細胞における配列置換ベクターを用いた高精度遺伝子ターゲティング”,Molecular and Cellular Biology,12(7):2919−23,1992;マンスール(Mansour)ら,“同種組換えによるマウスint−2遺伝子座中へのlacZリポーター遺伝子の導入”,Pro.Natl.Acad.Sci.,87(19):7688−92,1990;キャペチ(Capecchi),“同種組換えによるゲノムの変更”,Science,244(4910):1288−92,1989;セディビイおよびジョイナー(Sedivy,Joyner),“Gene Targetting”,W.H.フリーマン発行,1992;本明細書に参考として引用する)。
【0044】
p53遺伝子伝達のための好ましいベクターは、標的細胞集団内のすべてまたは大部分の細胞に遺伝子を伝達し、かつ目的とする効果を促進するのに十分なほど長い発現期間および十分なほど高い発現水準で達成する能力をもつ。可能なベクター設計および遺伝子伝達方法には以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
1)アデノウイルスベクター。アデノウイルスベクターはレトロウイルスベクターより高い力価のものが得られ、より高い遺伝子付与効率が得られる可能性がある。それらは分裂している細胞および分裂していない細胞の両方の広範な細胞タイプに感染しうるという点で、特に関心がもたれる(グラハム、プレベック(Graham FL,Prevec L),アデノウイルスベクターの取り扱い,ムレイ(Murray EJ)編,“Methods in Molecular Biology”vol.7,Gene Transfer andExpression Protocols”,クリフトン,ニュージャージー;ザ・ヒューマナ・プレス・インコーポレーテッド(1991),pp.109−128;本明細書に参考として引用する)。これらのベクターはウイルスの複製に必要な初期領域遺伝子の一部が、目的とするトランスジーン(すなわち細胞に伝達すべき外因性遺伝子)で置換される。失われた複製機能を供給する適切なパッケージング細胞系内へ、このDNAをトランスフェクションすることにより、ウイルス粒子が得られる。そのようなベクターの例は文献に記載されている(ベルナー(Berner KL),“異種遺伝子の発現のためのアデノウイルスベクターの開発”,Biotechniques(1988)6:6616−629;本明細書に参考として引用する)。肝癌および頭頚部癌には動脈内注入が適切であろうが、これらに限定されない。
【0045】
2)レトロウイルスベクター。これらのベクターはヒト遺伝子の伝達に極めて良好な特性をもち、遺伝子療法プロトコールに用いられている(ウー(Wu)ら,J.of Biochemistry,266:14338−14342,1991;本明細書に参考として引用する)。レトロウイルスベクターは伝達すべき目的遺伝子(すなわちトランスジーン)を含む変更レトロウイルスゲノム、およびしばしば選択マーカー遺伝子からなる。ベクター自体は遺伝子の安定な組込みに必要なウイルスLTR(Long Terminal Repeat)配列を提供するが、複製に関しては欠失性であり、トランス作用性複製因子を提供するパッケージング細胞系を必要とする。レトロウイルスベクターおよびパッケージング細胞系の例は文献に記載されている(クリーグラー(Kriegler,M)(1990),“Gene Transfer and Expression−−A Laboratory Manual”,ストックトン・プレス,ニューヨーク、およびジョリー(Jolly,D),Cancer Gene Therapy,1:51−64,1994;本明細書に参考として引用する)。p53レトロウイルスベクターは文献に記載されている(チェン(Chen)ら(1992)“ヒト野生型p53遺伝子による急性リンパ芽球性白血病の抑制”,Cancer Res.,52:222−226;本明細書に参考として引用する)。
【0046】
レトロウイルスベクターは細胞タイプに関して広範な感染性をもつ。トランスジーン発現は通常は、広範な組織特異性をもつ強力なウイルスプロモーターにより駆動される。その例はウイルスLTR(Long Terminal Repeat)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーターである(ミラーおよびロスマン(Miller AD,Rosman GJ),“遺伝子の伝達および発現のための改良されたレトロウイルスベクター”,(1989)Biotechniques :980−990;本明細書に参考として引用する)。
【0047】
p53レトロウイルスベクターを分泌するパッキング細胞系を腫瘍部位に移植して、レトロウイルス遺伝子伝達の効率を高めることができる。この細胞系は連続的なベクター供給源を提供し、遺伝子伝達の効率を改良する(クルバー、ラム、ウォールブリッジ、イシイ、オールドフィールド、ブレーゼ(Culver KW,Ram Z,Wallbridge S,Ishii H,Oldfield EH,Blaese RM),実験的脳腫瘍の治療のためのレトロウイルスベクター産生細胞を用いたインビボ遺伝子伝達,(1992)Science256:1550−2)。
【0048】
3)アデノ随伴ウイルス。アデノ随伴ウイルスに基づくベクターはアデノウイルスがもつ範囲の感染性をもつ。さらに、これらのベクターは宿主ゲノムの好みの部位に外因性DNAを安定に組み込む可能性をもたらす。そのようなベクターについての考察は“Current Topics in Microbiology and Immunology”vol.158,(ムジツカ(Muzyczka N)編),スプリンガー・フェルラーク,pp.97−129(1992)に見られ、これを本明細書に参考として引用する。
【0049】
4)他のウイルスベクター。ヘルペス、ワクシニア、パピローマウイルスに基づくベクターも遺伝子を腫瘍細胞に伝達するために使用しうる。これらのベクターについての考察はクリーグラー(Kriegler,M),“Gene Transfer and Expression.A Laboratory Manual”,ストックトン・プレス,ニューヨーク(1990)、およびジョリー(Jolly,D),“遺伝子療法のためのウイルスベクター”Cancer Gene Therapy,vol.1:51−64(1994)に見られ、これを本明細書に参考として引用する。
【0050】
5)結合したアデノウイルスキャプシド。外因性DNAをアデノウイルスキャプシドにより腫瘍細胞に伝達することができる。この方法では伝達すべきDNAをウイルスキャプシドの外側にポリリシン橋により結合させる(キュリー(Curiel)ら,“DNA−ポリリシンコンプレックスに結合したアデノウイルスにより仲介される高効率遺伝子伝達”(1992)Human Gene Therapy,:147−154;本明細書に参考として引用する)。細胞内へのDNAの進入は天然のウイルスインターナリゼーション経路により達成されるが、遺伝子の伝達および発現はウイルスゲノムとは無関係である。たとえばp53遺伝子をアデノウイルスのキャプシドに結合させ、次いでこれを受容体介在性エンドサイトーシスにより肺癌細胞内へ付与することができる。したがってこの方法ではウイルス粒子は感染のためのベヒクルとしてではなく、DNAトランスフェクションのためのキャリヤーとして利用される。この方法で、特にウイルスとDNAのコンプレックスが付加的リガンド、たとえばトランスフェリン(これに限定されない)を含む場合、遺伝子伝達の高効率を達成しうる(ワーグナー(Wagner)ら,“トランスフェリン−ポリリシン/DNAコンプレックスへのアデノウイルスの結合は、トランスフェクションした遺伝子の受容体介在性遺伝子付与および発現を大幅に高める”,(1992)Pro.Natl.Acad.Sci.USA,89:6099−6103;本明細書に参考として引用する)。標的組織へのコンプレックスの蓄積を促進するために、組織および細胞タイプに特異性のリガンドを含んでもよい。
【0051】
6)他の方法。リポソーム仲介による遺伝子伝達はインビボ遺伝子伝達に有効である(チュー(Zhu)ら,“マウス成体に静脈内DNA付与したのちの全身的な遺伝子発現”,(1993)Science 261:209−11;ヨシムラ(Yoshimura)ら,(1992)Nucleic Acids Research,20:3233−3240;本明細書に参考として引用する)。DNA−リポソームコンプレックスを局所的または全身的に投与することができる。この方法の利点は、低毒性であること、およびウイルスゲノムが存在しないことである。適切なプロモーター(たとえばCMVプロモーター)を選ぶと、長期間の発現を達成しうる(チュー(Zhu)ら,“マウス成体に静脈内DNA付与したのちの全身的な遺伝子発現”,(1993)Science 261:209−11;本明細書に参考として引用する)。
【0052】
さらに、トランスジーン発現を特定の細胞タイプにターゲティングするためにリガンド−DNAコンジュゲートが用いられている。たとえばアシアログリコプロテイン−DNAコンジュゲートが、アシアログリコプロテイン受容体を介して外因性遺伝子を肝細胞に特異的にターゲティングするために用いられている。ある組織、たとえば筋肉(これに限定されない)には裸のDNAの直接遺伝子伝達も有効であろう。当業者がこれらの遺伝子伝達方法を単独で、または組み合わせて用いて、野生型p53遺伝子または他の療法感作遺伝子の、療法感作活性をコードする部分を腫瘍内で発現させることができる。
【0053】
実施例2.腫瘍細胞へのp53蛋白質の導入
野生型p53蛋白質、または野生型p53蛋白質の療法感作活性をもつ部分を、突然変異p53対立遺伝子を保有する細胞に供給することができる。これはインビボでいくつかの方法により達成され、これらには静脈内、腫瘍内、動脈内、腔内またはくも膜内注入が含まれるが、これらに限定されない。エーロゾル化製剤は呼吸管への付与に用いることができ、また局所製剤も使用しうる。有効分子をマイクロインジェクション、リポソームまたはエレクトロポレーションなどの方法で細胞に導入することもできる。p53蛋白質を受容体介在性エンドサイトーシスにより腫瘍細胞に導入することもできる。あるいはp53蛋白質を細胞が能動的に取り込み、または拡散により取り込み、細胞にp53活性を再生することができる。
【0054】
p53とターゲティング配列を含むキメラ蛋白質を用いて、ターゲティング配列の受容体を保有する細胞に野生型p53活性を導入することができる。たとえばインスリン様増殖因子(IGF−I)またはインターロイキン−2(IL−2)のターゲティング特異性を利用して、p53蛋白質をIGF−I受容体またはIL−2受容体保有細胞に付与することができる。キメラ蛋白質は組換え法によりキメラcDNAを構築し、それらを原核細胞系または真核細胞系において発現させることにより得られる。
したがってp53を、肺癌細胞の特異的細胞表面受容体に結合する増殖因子IGF−Iにキメラ化した場合、このキメラ蛋白質を受容体介在性エンドサイトーシスにより肺癌細胞にターゲティングすることができる。
【0055】
実施例3.薬剤の投与
本発明方法を実施するに際しては、組成物、たとえば前記の実施例1および2に述べたものを単独で、または互いに組み合わせて、または他の治療薬もしくは診断薬と組み合わせて使用しうる。これらの組成物をインビボでヒト患者に、またはインビトロで使用しうる。インビボで使用する際には、組成物を患者に多様な様式で投与することができ、これらには非経口、静脈内、皮下、筋肉内、結腸、直腸、膣、鼻、経口、経皮、局所、眼、腹腔内、腔内、くも膜下に、または適切に配合された外科用移植体として多様な投与形態を用いる様式が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の組成物の投与量は目的とする効果および適応症に応じて広範に及びうる。当業者に自明のとおり、有用なインビボ投与量および個々の投与方式は患者の状態、治療すべき癌、および用いる個々の組成物に応じて異なるであろう。有効な投与水準、すなわち目的とする結果を達成するために必要な投与水準は当業者が容易に判定しうるであろう。一般に投与は低い方の投与水準から開始し、目的とする効果が達成されるまで投与水準を高める。
【0057】
有効な付与のためには薬剤が腫瘍細胞に侵入する必要がある。化学的修飾は透過に必要なすべてであってよい。ただしそのような修飾が不十分であったとしても、修飾された薬剤を透過促進剤、たとえばアゾン(Azone)またはオレイン酸(これらに限定されない)と共に、リポソーム中に配合することができる。リポソームは徐放性をもたらすベヒクルであって、修飾された薬剤および透過促進剤がリポソームからトランスフェクションされた細胞内へ伝達されるものでもよい。あるいはリポソームのリン脂質が修飾された薬剤および透過促進剤と共に直接に細胞への付与に関与してもよい。
【0058】
薬物付与ベヒクルを全身または局所投与に使用しうる。薬剤の局所投与が有利である。これによって全身吸収を最少にして投与部位に局所濃縮することができるからである。これによって疾患部位への薬剤の付与方式が簡略化され、中毒性の程度が低くなる。さらに、物質の投与量は他の投与経路に必要なものよりはるかに少ない。
【0059】
薬剤を全身投与することもできる。全身吸収とは、薬物が血流中に蓄積され、次いで全身に分散することを意味する。全身吸収をもたらす投与経路には経口、静脈内、動脈内、リンパ管内、皮下、腹腔内、鼻内、筋肉内、くも膜下および眼内が含まれるが、これらに限定されない。これらの投与経路はいずれも到達可能な組織を薬剤に暴露する。皮下投与は局所リンパ節に流入し、これによってリンパ網を通して循環系に進入する。循環系への進入速度は分子量または大きさの関数であることが示されている。腹腔内投与も循環系に進入し、薬剤付与ベヒクルコンプレックスの分子量または大きさが進入速度を制御する。
【0060】
薬物付与ベヒクルは徐放性のレザバーとして作用するように、またはそれらの内容物を直接に標的細胞に付与するように設計することができる。直接付与型の薬物ベヒクルを用いる利点は、1回のベヒクル取込み事象当たり多数の分子が付与されることである。それらのベヒクルは、他の場合には血流から急速に消失する薬物の循環半減期を高めることも示されている。このカテゴリーに属するこのような特殊な薬物付与ベヒクルの若干の例にはリポソーム、ヒドロゲル、シクロデキストリン、生物分解性ポリマー(外科用移植片またはナノカプセル)、および生体接着性マイクロスフィアが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
リポソームは幾つかの利点をもたらす:それらは一般に無毒性かつ生物分解性の組成をもち;それらは長い循環半減期を示すことができ;また組織のターゲティングのための認識分子を容易にその表面に付着させることができる。最後に、脂質懸濁液または凍結製品の形のリポソーム系薬剤を安価に製造しうることは、この技術が許容しうる薬剤付与システムとして存続しうることを証明する。
【0062】
経口投与配合物は幾つかの形態で製造することができ、これにはカプセル剤、そしゃく錠、腸溶コーチング錠、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、または投与前に液体に溶解もしくは懸濁するのに適した固体の形のものが含まれるが、これらに限定されない。適切な賦形剤は、たとえば水、食塩水、デキストロース、マンニトール、乳糖、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。さらに所望により、薬剤組成物は少量の無毒性補助物質、たとえば湿潤剤、pH緩衝剤などを含有しうる。所望により吸収促進製剤(たとえばリポソーム)を使用しうる。
【0063】
実施例4.化学療法に対する腫瘍細胞の感受性の増大
1)細胞。T98G神経膠芽腫細胞(マーセル(Marcer)ら“ヒト野生型p53を条件付き発現する神経膠芽腫腫瘍細胞系における負の増殖調節”,(1990)Pro.Natl.Acad.Sci.,USA,87:6166−6170)をATCCから入手し、37℃で10%CO2中において、10%の熱不活性化したウシ胎児血清、ゲンタマイシン、非必須アミノ酸およびピルビン酸ナトリウムを補充したダルベッコの変更イーグル培地中で培養した。これらの細胞は多形性神経膠芽腫を伴う患者の生検により得られたものであり、コドン237(metからileまで、ATGからATAまで)にホモ接合性突然変異を含むことが示された(ウルリッヒ(Ullrich)ら,“ヒト野生型p53はインビボで神経膠芽腫細胞の増殖停止期間中、特異なコンホメーションおよびリン酸化の状態を とる”(1992)Oncogene,7(8):1635−43)。
【0064】
2)プラスミド。野生型p53遺伝子およびネオマイシン(G418)耐性遺伝子を含むプラスミド(pLp53RNL)を用いた。プラスミドpLp53RNLはDr.マーチン・ハース(カリフォルニア大学、サンディエゴ)により好意的に提供され、これは先に文献に記載されている(チェン(Cheng)ら,“ヒト野生型p53遺伝子による急性リンパ芽球性白血病の抑制”(1992)Cancer Res.,53:222−226)。このプラスミドはレトロウイルス配列Lp53RNLを保有し、これにおいて野生型p53発現はモロネー(Moloney)ネズミ白血病ウイルス(MoMLV)LTRにより駆動される。ネオマイシン耐性遺伝子はラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターにより駆動される。
【0065】
3)トランスフェション。プラスミドをカチオン性リポソームによりT98G細胞に導入した。T98G細胞を10cmの培養皿内に平板当たり5×105個接種した。翌日、細胞に15μgのDNAをリポフェクタミン(BRL)により、製造業者の指示に従ってトランスフェションした。トランスフェションの5日後に、培養物を100μg/mlのG418中で選択した。クローンを約3週間後に採取し、拡張させた。増殖動態および平板効率を測定する前に、培養物をG418の不在下で7−10日間、増殖適応させた。1コロニーが外因性の野生型p53遺伝子を含むので、これをT98Gp53と表示する。
【0066】
3)平板効率。細胞を6cmの平板当たり100−500個の低密度で3重に接種し、2週間増殖させた。平板をメタノール中の0.5%メチレンブルーで染色し、コロニーを計数した。トランスフェションした細胞の平板効率は20%であった。母細胞は平板効率50%であった。
【0067】
4)抗生物質G418の不在下で2週間適応させた対照の母体T98G細胞およびT98Gp53細胞を、24ウェルのプレートに2×104個/ウェルで接種した。翌日、それらを1時間、10μMから40μMまで10μMずつ増大する種々の濃度のシスプラチン(化学療法薬)に暴露した。1時間後にシスプラチンを除去し、完全培地(DMEM+10%ウシ胎児血清)と交換し、細胞を7日間増殖させた。7日後に細胞を計数し、またはクリスタルバイオレットで染色した。後者の場合、540nmにおける吸収は細胞生存力に比例する。クローン原性アッセイのために、細胞を処理後に6ウェルプレートに500−1000個/ウェルで再接種した。7−10日後に0.5%メチレンブルー、70%ETOH中で染色することによりクローンを計数した。p53トランスフェション体と母体T98G神経膠芽腫細胞とから得たコロニー数を比較した。図1に示すように、T98Gp53細胞の方が母体T98G細胞よりシスプラチンの作用に対してかなり感受性であった。後続アッセイによりこの感受性の増大を確認した。コロニー数の50%減少を達成するのに必要なシスプラチンの濃度は、T98G母細胞および空のベクター形質導入細胞の場合の約30μMから、野生型p53遺伝子形質導入細胞の場合の約15−20μMに低下した。
【0068】
実施例5.放射線療法に対する腫瘍細胞の感受性の増大
対照の母体T98G細胞およびT98Gp53細胞をG418の不在下で2週間増殖させ、次いでT25フラスコ当たり約5,000個で接種した。翌日、細胞をコバルト60源からのγ線により、100ラドから1500ラドまで100ラドずつ増大する線量で照射した。次いで細胞をさらに5−12日間インキュベートし、コロニーを0.5%メチレンブルー−メタノール中で染色し、計数し、対照の非処理細胞と比較した。図2に示すように、野生型p53を形質導入したT98Gp53細胞は放射線に対して増大した感受性を示し、コロニー数の50%減少は母細胞の400ラドと比較して約200ラドで起こった。
【0069】
実施例6.p53遺伝子感作療法
以下に記載する処理を突然変異p53活性をもつ腫瘍に適用する。
【0070】
1.p53異常を含む腫瘍の同定
p53異常を含む腫瘍を同定するために、ルーティンな分子生物学的診断法を用いることができ、これには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:一本鎖コンホメーション多形(SSCP)、PCR、配列決定法、および遺伝子異常を検出するための、当業者に既知の関連する分子生物学的方法(“General Molecular Biology Methods Current Protocols in Molecular Biology”,ジョン・ワイリー・アンド・サンズ,1994;およびサムブルック、フリッチュ、マニアチス(J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis),Molecular Cloning:A LaboratoryManual,第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989;参考として本明細書に引用する)。
【0071】
2.直接注射またはエーロゾル化製剤によるp53ベクターを用いた腫瘍感作
この適用に際しては、適切な野生型p53ベクターおよび/または産生細胞系を腫瘍に、または外科的切除もしくは剥離後の過去の腫瘍部位に(残留腫瘍細胞を処理するために)注射し、腫瘍細胞に野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を発現させる。エーロゾル化したベクター製剤も切除部分または呼吸管内の腫瘍に野生型p53遺伝子を付与するために使用しうる。次いで患者を、腫瘍の治療に適した当業者に既知の化学療法、放射線療法、生物学的療法、寒冷療法または高熱療法で、下記に従って治療する:“Cancer:Principles and Practice of Oncology”,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット、1993;“Manual of OncologicTherapeutics”,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット、1993;および“Biologic Therapy of Cancer”,デビタ(Devita)ら編、リッペンコット、1991;参考として本明細書に引用する)。
【0072】
この方法は局所原発腫瘍の治療に用いることができ、これには以下のものが含まれるが、これらに限定されない:中枢神経系腫瘍、肉腫、および初期癌腫(肺癌、前立腺癌、乳癌、膀胱癌、腎癌、肝細胞癌、膵癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肛門癌、頭頚部癌、胆道癌および尿生殖器癌)。
【0073】
この方法はこれらおよび他の腫瘍の転移性病変の治療にも用いることができる。これらの適用に際しては、適切な野生型p53ベクターおよび/または産生細胞系を転移性腫瘍に、または外科的切除もしくは剥離後の過去の転移性腫瘍部位に注射し、腫瘍細胞に野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を発現させる。エーロゾル化したベクター製剤も切除部分または呼吸管内の腫瘍に野生型p53遺伝子を付与するために使用しうる。次いで患者を、腫瘍の治療に適した当業者に既知の化学療法、放射線療法、生物学的療法、寒冷療法または高熱療法で、下記に従って治療する:Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット,1993;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Biologic Therapy of Cancer”,デビタ(Devita)ら編、リッペンコット、1991;参考として本明細書に引用する)。
【0074】
3.動脈内注入によるp53ベクターを用いた腫瘍感作
動脈内注入用の化学療法薬および他の薬物を、多様な原発癌および転移性癌の治療に用いることができる(Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット)。このp53療法感作法の適用に際しては、これらの動脈内注入法を用いて適切な野生型p53ベクターおよび/または産生細胞系を付与し、腫瘍細胞に野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を発現させる。次いで患者を、原発または転移性腫瘍の治療に適した当業者に既知の化学療法、放射線療法、生物学的療法、寒冷療法または高熱療法で、下記に従って治療する:Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Biologic Therapy of Cancer”,デビタ(Devita)ら編、リッペンコット、1991;参考として本明細書に引用する)。この方法は原発性肝細胞癌腫、転移性肝癌および頭頚部腫瘍などの腫瘍の治療に適用することができるが、これらに限定されない。この方法は動脈注入の分野の専門家が、注入可能な動脈管につきいかなる腫瘍の治療にも適用することができる。
【0075】
4.腔内注入によるp53ベクターを用いた腫瘍感作
これらの適用に際しては、腫瘍細胞を含む体腔に、適切な野生型p53ベクターおよび/または産生細胞系をまず付与し、腫瘍細胞に野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を発現させる。次いで患者を、原発または転移性腔内腫瘍の治療に適した当業者に既知の化学療法、放射線療法、生物学的療法、寒冷療法または高熱療法で、下記に従って治療する:Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Biologic Therapy of Cancer”,デビタ(Devita)ら編、リッペンコット、1991;参考として本明細書に引用する)。
【0076】
この方法は悪性の胸膜浸出液腫瘍(胸膜腔)、腹水腫瘍(腹腔)、軟髄膜腫瘍(脳脊髄/脳室系)、心膜浸出液癌(心膜腔)および膀胱癌(膀胱注入)の治療に適用することができるが、これらに限定されない。
【0077】
5.p53感作による造血幹/前駆細胞の腫瘍のパージ
この適用に際しては、患者を骨髄抑止/切除式癌療法の影響から救済するために、自己造血幹/前駆細胞から使用前に残留腫瘍細胞をp53感作によりパージする。造血幹/前駆細胞試料を標準法により患者から採取し(Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Bone Marrow Transplantation”,フォルマン(Forman)ら編,1993;参考として本明細書に引用する)、ex vivoで適切な野生型p53ベクターおよび/または産生細胞系形質導入し、野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を発現させる。次いで形質導入した細胞調製物を当業者に既知の細胞毒性パージ法で処理する(Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Bone Marrow Transplantation”,フォルマン(Forman)ら編,1993;参考として本明細書に引用する)。
【0078】
次いで患者を骨髄抑止/切除式癌療法で治療し、次いで残留腫瘍細胞をp53感作によりパージじた造血幹/前駆細胞を患者に注入して、極めて攻撃的な癌療法の骨髄抑止の影響から患者を救済する。
【0079】
骨髄抑止/切除式治療の実施および造血幹/前駆細胞注入による救済は先行技術に十分に述べられており、多様な充実性および造血系の悪性疾患の治療に用いられている(Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウイッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Bone Marrow Transplantation”,フォルマン(Forman)ら編,1993;参考として本明細書に引用する)。残留腫瘍細胞を細胞毒性パージ剤により破壊するためにp53感作すると、患者の救済に用いられる造血幹前駆細胞注入液中の腫瘍細胞の数が減少するであろう。これにより、残留腫瘍細胞を含有する造血幹/前駆細胞調製物の注入により起こる可能性のある腫瘍再発の可能性が低下するであろう。
【0080】
6.p53感作による散在性転移性腫瘍の治療
これらの適用に際しては、適切な野生型p53ベクターおよび/または産生細胞系を全身的または非経口的に注射し、腫瘍細胞に野生型p53遺伝子の療法感作活性をコードする部分を発現させる。次いで患者を、転移性腫瘍の治療に適した当業者に既知の化学療法、放射線療法、生物学的療法、寒冷療法または高熱療法で、下記に従って治療する:Cancer:Principles andPractice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“BiologicTherapy of Cancer”,デビタ(Devita)ら編、リッペンコット、1991;参考として本明細書に引用する)。
【0081】
上記に概説したp53仲介による感作療法の個々の適用を組み合わせて用いることができ、これは多重様式の癌療法の技術分野における専門家が下記に従って適用することができる:Cancer:Principles and Practice of Oncology,デビタ、ヘルマン、ローゼンバーグ(Devita,Hellman,Rosenberg)編、リッペンコット;およびManual of Oncologic Therapeutics,ウィッテス(Wittes)編、リッペンコット;および“Biologic The rapy of Cancer”,デビタ(Devita)ら編、リッペンコット、1991;参考として本明細書に引用する)。
【0082】
7.p53仲介感作療法による多形神経膠芽腫の治療
多形神経膠芽腫は最も頻繁に遭遇する頭蓋内脳腫瘍であり、米国では毎年ほぼ20,000の新たな症例が診断されている。それは中枢神経系の外へはめったに転移しないが、それにもかかわらず最も悪性の神経膠星状細胞腫であり、現行の一般的方法を用いる医師の療法を撃退する。これらの方法には外科処置、放射線療法および化学療法が含まれ、あらゆる分野で進歩が得られてはいるが、診断からの平均生存時間はなおわずか1年である。神経膠芽腫は放射線療法に対してかなり耐性であり、大部分の化学療法薬に対してわずかしか応答しない。最初はある程度の有効性をもつことが示されたこれらの化学療法薬−−シスプラチン、BCNU(カルムスチン)およびPVC(プロカルバジンCCNU、ビンクリスチン)を含む−−のうちに持続的有効性を示すものはない。
【0083】
それらが脳内に位置するため、神経膠芽腫患者においては中程度の腫瘍進行であっても病的状態が高い。腫瘍体積のわずかな減少が患者にとって有益な効果があると期待される。さらに、神経膠芽腫は中枢神経系の外へ転移することはまれであり、このためこの疾患は、腫瘍部位におけるp53保有アデノウイルスの局所感染、またはアデノウイルスキャプシドで促進されたp53 cDNAの局所トランスフェクション、またはp53保有ウイルスベクターパッケージング系列の移植を含めた局所遺伝子伝達にとって理想的な標的となる。またこの方法は、腫瘍体積のわずかな減少ですら病的状態の減少が生じる他の癌の脳内転移にとっても有益であろう。
【0084】
8.p53仲介感作療法による肝細胞癌および頭頚部癌の治療
肝細胞癌および頭頚部癌はp53突然変異の頻度が高い(最高30%)ことを特色とし、アデノウイルス系p53仲介感作療法および関連のp53仲介感作療法にとって卓越した標的である。p53ベクターを動脈内付与すると、高い効率で腫瘍内へ野生型p53療法感作活性を付与することができる。しかし多くの場合は、臨床効果を得るためにp53遺伝子を全身付与する必要はない。肝細胞癌および頭頚部癌は神経膠芽腫と同様に局所的に病的状態を生じる場合が多いからである。p53突然変異を伴う結腸直腸癌および他の腫瘍の肝臓転移も、p53ベクターの動脈内注入により治療し、次いで癌治療の分野の専門家に既知である適切な腫瘍療法により治療することができる。
【0085】
9.p53仲介感作療法による肺癌の治療
肺上皮もアデノウイルス系p53仲介感作療法にとって卓越した標的である。最初は化学療法に著しく感受性である小細胞性肺癌が疾患の進行に伴って耐性を獲得する。野生型p53の導入は、腫瘍細胞を療法に対して感作することにより、この腫瘍の治療に利用しうる。同様にほぼ50%の症例においてp53突然変異を特色とする非−小細胞性肺癌はしばしば化学療法に対して抵抗性である。したがってp53仲介感作療法をこれらの腫瘍の治療に用いることができる。
【0086】
実施例7.療法感作活性をもつ小型分子のスクリーニング
療法感作性をもつ小型分子は、候補となる小型分子を含有しない対照溶液に対比してそれらが癌治療効率を高めうることにより同定される。それぞれの候補分子を、細胞系、動物モデルおよび制御された臨床研究において癌療法を感作する効率につき、当業者に既知の、かつ食品医薬品局が承認した方法、たとえば連邦官報47(no.56):12558−12564,1982年3月23日、に公布された方法(これに限定されない)で試験する。療法感作活性または増強活性をもつ小型分子を、野生型の療法感作活性をもつ蛋白質につき先に記載した方法を採用した癌療法に用いることができる。小型分子は投与後に容易に組織内へ拡散するので、この方法を他の療法と併用して、局在化した腫瘍および転移性腫瘍の両方を治療することができる。
【0087】
野生型の療法感作活性を模倣した、またはそれを与える小型分子は、適切な標的を用いる結合アッセイによりスクリーニングすることができる(ホーテン(Houghten,R.A.),“ペプチドライブラリー、基準および動向”,Trends in Genetics 9:235−239,1993参照)。ペプチド、修飾ペプチドまたは有機化合物の組合わせライブラリーは当業者に既知の方法で形成することができる(ジャヤリクレーム(Jayatickreme)ら,“多用途ペプチドライブラリーの形成および機能スクリーニング”,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,91:1614−1618;ホーテン(Houghten,R.A.),“ペプチドライブラリー、基準および動向”,Trends in Genetics 9:235−239,1993;フィリップス(Phillips)ら,“移行状態の解明;阻害薬類似体および酵素構造の変更を組み合わせた新規方法”,Biochemistry,1992,31(4):959−63;アイヒラーおよびホーテン(Eichler,Houghten),“合成ペプチド組み合わせライブラリーのスクリーニングによる基質類似トリプシン阻害薬の同定”,Biochemistry,32:11035−11041,1993;ハストン(Huston)ら,“単鎖抗体の医療応用”,International Review of Immunology,1993,10(2−3):195−217;ファン・デ・ウォータービームド(Van de Waterbeemd H.),“QSAR技術における最近の進歩”,Drug Design and Discovery,1993,9(3−4):277−85)。
【0088】
推定小型分子は同様に機能に関する生物学的アッセイ法で分析することができる。具体例においては、ペプチドをコードおよび発現するレトロウイルスベクターライブラリーを療法感作活性につき、前記実施例に記載した方法およびグッドコブ(Gudkov)ら,1993,“ヒトトポイソメラーゼII CDNAからの、トポイソメラーゼII作用性細胞毒性薬物に対する耐性を誘導する遺伝子サプレッサー要素の単離”,Pro.Natl.Acad.Sci.USA,90:3231−3235(参考として本明細書に引用する)により、直接にスクリーニングすることができる。
【0089】
実施例8.推定される療法感作分子の毒性試験
前記のいずれかの方法において活性である薬剤が健康な細胞に対してほとんど、または全く作用しないか否かを判定する方法を提供する。次いでそれらの薬剤を薬剤学的に許容しうる緩衝剤または標準的な動物試験に用いられる緩衝剤中に配合する。
【0090】
“薬剤学的に許容しうる緩衝剤”とは、貯蔵および後続の投与のために調製される、薬剤学的に許容しうるキャリヤーまたは希釈剤中における薬剤学的に有効な量の本明細書に記載する薬剤を含む薬剤組成物に使用しうる任意の緩衝剤を意味する。療法用として許容しうるキャリヤーまたは希釈剤は当技術分野で周知であり、たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences、マック・パブリシング・コーポレーション(ジェナロ(A.R.Gennaro)編,1985)に記載されている。防腐薬、安定剤、色素、さらには矯味矯臭薬を薬剤組成物に含有させることができる。たとえば安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸エステルを防腐薬として添加することができる。同上、1449に。さらに、酸化防止剤および懸濁化剤を使用しうる。同上。
【0091】
A.毒性に関する追加のスクリーニング:方法1
療法感作活性をもつと同定された薬剤を培養ヒト細胞に対する毒性に関して評価する。この評価は生細胞が2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホニルフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウムヒドロキシド](以下、XTTと呼ぶ)を還元する能力に基づく(パウル(Paull)ら,J.Heterocyl.Chem.25:763−767(1987);ウイスロウ(Wislow)ら,(1989)J.Natl.Canc.Inst.81:577)。生存力のある哺乳動物細胞はXTTのテトラゾール環のN−N結合を還元開裂してXTTホルマザンを形成しうる。死細胞またはエネルギー代謝が損傷を受けた細胞はこの開裂反応を行うことができない。開裂の程度は被験生細胞数に正比例する。
【0092】
ヒト細胞系由来の細胞、たとえばHeLa細胞を、96ウェルのミクロタイタープレートのウェルにウェル当たり103個で0.1mlの細胞培地(10%ウシ胎児血清を補充した変更ダルベッコ最小必須培地)中に接種する。37℃で95%空気、5%CO2の雰囲気中における培養によりプレートに付着させる。一夜培養したのち、被験物質の溶液を8回の半10進(half−decade)対数希釈である濃度で2重にウェルに添加する。平行して、被験物質の溶解に用いた溶剤を他のウェルに2重に添加する。細胞培養を一般に24時間続ける。その期間が終了した時点でXTTおよびカップラー(硫酸メチルフェナゾニウム)を被験ウェルそれぞれに添加し、さらに4時間インキュベーションを続けたのち、各ウェルの光学濃度を450nmで自動プレート読取り装置により測定する。哺乳動物細胞を死滅させ、またはそれらのエネルギー代謝に損傷を与え、またはそれらの増殖を遅延させる物質を、被験物質を添加しなかったウェルと比較した450nmにおけるウェルの光学濃度の低下により判定する。
【0093】
B.毒性に関する追加のスクリーニング:方法2
療法感作分子を培養ヒト細胞系に対する細胞毒作用に関して、細胞生存力の指示体としての蛋白質中への35Sメチオニンの取り込みにより試験する。HeLa細胞を96ウェルのプレート内で、10%ウシ胎児血清ならびに50μg/mlのペニシリンおよびストレプトマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地中において増殖させる。細胞をまず103個/ウェル、0.1ml/ウェルで接種する。細胞を療法感作分子に暴露せずに48時間増殖させ、次いで培地を除去し、完全培地中に調製した療法感作分子の種々の希釈液を各ウェルに添加し、対照ウェルにはサイトカインモジュレーターを添加しない。細胞をさらに48−72時間インキュベートする。培地を24時間毎に交換し、同濃度の療法感作分子を含有する新鮮な培地と入れ替える。次いで培地を除去し、抗真菌薬を含有しない完全培地と入れ替える。細胞を療法感作分子の不在下で24時間インキュベートし、次いで蛋白質中への35Sの取込みにより生存力を推定する。培地を除去し、メチオニンを含有しない完全培地と入れ替え、30分間インキュベートする。培地を再度除去し、メチオニンを含有しないが、0.1μCi/mlの35Sメチオニンを含有する完全培地と入れ替える。細胞を3時間インキュベートする。ウェルをPBSで3回洗浄し、次いで細胞を100%メタノールの添加により10分間、透過性処理する。氷冷10%トリクロロ酢酸(TCA)を添加してウェルを満たす;プレートを氷上で5分間インキュベートする。このTCA洗浄をさらに2回反復する。ウェルを再度メタノール中で洗浄し、風乾する。50μlのシンチレーションカクテルを各ウェルに添加し、遠心分離によりウェル上で乾燥させる。プレートを用いてX線フィルムを露光する。抗真菌薬を含有しないウェルも含めたオートラジオグラムの濃度計走査を用いて、50%の細胞が生存しえない用量(ID50)を測定する(Culture of Animal Cells.A manual of basic technique.(1987).フレッシュニー(R.Ian Freshney)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレーテッド、ニューヨーク)。
【0094】
実施例9.療法感作分子の投与
本発明は、前記方法で見出した新規な療法感作分子である。本発明は、薬剤学的に許容しうる配合物中に配合した、前記方法で見出した新規な療法感作分子を含有する新規な薬剤組成物をも包含する。
【0095】
“薬剤学的に有効な量”とは、患者の疾患または状態の1または2以上の症状を軽減する(ある程度は)量を意味する。さらに、“療法上有効な量”とは、真菌性の疾患または状態に付随するか、またはその原因である生理学的または生化学的パラメーターを部分的または完全に正常に戻す量を意味する。一般にそれはそのEC50、ならびに患者の年齢、体格および付随する疾患に応じて、約1nmol−1μmolの量である。
【0096】
引用する刊行物はすべて、各刊行物に挙げられたアミノ酸配列をも含めて、本明細書に参考として含まれるものとする。
【0097】
他の態様は請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】T98G神経膠芽腫細胞(黒丸)、および野生型p53を発現した同細胞T98Gp53細胞(白丸)のシスプラチン感受性を示す。
【図2】T98G神経膠芽腫細胞(上側の曲線)、およびT98Gp53細胞(下側の曲線)の放射線感受性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の療法の効果を増大させる方法であって:
野生型の療法感作遺伝子活性を、その野生型の療法感作遺伝子活性の喪失を特徴とする腫瘍細胞に付与し、そして
腫瘍細胞に癌の療法を施す
工程を含む方法。
【請求項2】
療法感作蛋白質の療法感作遺伝子活性を有する部分を腫瘍細胞に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分を、腫瘍細胞に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
癌の療法が放射線療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
癌の療法が化学療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
癌の療法が生物学的療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
癌の療法が寒冷療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
癌の療法が高熱療法である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
腫瘍細胞が癌腫細胞、肉腫細胞、中枢神経系腫瘍細胞、黒色腫細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、造血系腫瘍細胞、卵巣癌細胞、骨肉腫細胞、肺癌細胞、結腸直腸癌細胞、肝細胞癌細胞、神経膠芽腫細胞、前立腺癌細胞、乳癌細胞、膀胱癌細胞、腎癌細胞、膵癌細胞、胃癌細胞、食道癌細胞、肛門癌細胞、胆道癌細胞、尿生殖器癌細胞および頭頚部癌細胞よりなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分が、ベクター内にある、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
ベクターがアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターおよびパピローマウイルスベクターよりなる群から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分が、ウイルスキャプシドまたはウイルス粒子に結合している、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分が、ウイルスキャプシドまたはウイルス粒子にポリリシン橋により結合している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分が、リポソームに封入されている、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分が、リガンドに結合している、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
リガンドがアシアログリコプロテインである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分を、腫瘍細胞に直接注射またはエーロゾル化製剤により導入する、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分を、腫瘍細胞に動脈内注入により導入する、請求項3に記載の方法。
【請求項19】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分を、腫瘍細胞に腔内注入により導入する、請求項3に記載の方法。
【請求項20】
療法感作遺伝子の療法感作遺伝子活性をコードする部分、またはcDNAの療法感作遺伝子活性をコードする部分を、腫瘍細胞に静脈内注入により導入する、請求項3に記載の方法。
【請求項21】
療法感作遺伝子活性がfas療法感作活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
療法感作遺伝子活性がp53療法感作活性である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−99780(P2007−99780A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7784(P2007−7784)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【分割の表示】特願平7−528398の分割
【原出願日】平成7年4月28日(1995.4.28)
【出願人】(506418600)シドニー・キンメル・カンサー・センター (1)
【Fターム(参考)】