癌マーカーとしてのフラップエンドヌクレアーゼ−1
本発明は、癌の評価を助ける方法に関する。それは、異なった癌種の普遍的なマーカーとしてのフラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質 (= FEN1) の使用を開示する。更に、それは、特に、サンプル中のFEN1を測定することによって、個体から得られた液体サンプル由来の癌を評価するための方法に関する。FEN1の測定は、例えば、癌の早期検出において又は手術を経験する患者の観察において使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
癌の評価を補助する方法に関する。本発明は、異なった癌種の一般的マーカーとしてのフラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(= FEN1)の使用を開示する。更に、本発明は、特に、個体由来の液体サンプル中のFEN1を測定することによって、前記サンプル由来の癌を評価する方法に関する。FEN1の評価は、例えば、癌の早期検出又は外科手術を経験する患者の監視において使用される。
【背景技術】
【0002】
癌は、検出及び治療法の進歩にもかかわらず、主な公衆衛生上の難問を残している。癌細胞は、癌関連マーカータンパク質の産生によって特徴付けられる。癌関連タンパク質は、癌細胞を有する個体の組織及び体液中で見出される。そのレベルは、通常、癌性進行の初期ステージにおいては低く、疾患の進行中に増加し、極稀には、タンパク質は、疾患の進行過程で減少したレベルを示すことが観察されている。これらのタンパク質の感受性検出は、特に癌の初期ステージ診断では、癌の診断のための有利かつ有望な方法である。最も一般的な癌種は、乳癌(BC)、肺癌(LC)及び直腸癌(CRC)である。
【0003】
固形癌の最も重要な治療的方法は、以下である:
a) 腫瘍の外科的切除、
b) 化学療法、
c) 放射線療法、
d) 抗腫瘍抗体又は抗血管由来抗体のような生物学的製剤による治療、及び
e) 上記方法の組合せ。
【0004】
腫瘍の外科的切除は、初期ステージの固形癌のための第1線治療として広く受け入れられている。しかしながら、ほとんどの癌は、症状が出る時、すなわち、患者が既に疾患の進行のかなり遅いステージである時にのみに検出される。癌のステージ分類は、程度、進行及び重度の点からの疾患の分類である。それは、予後及び治療法の選択について一般化されるように癌患者をグループ化する。
【0005】
DukeのステージA〜Dに従って分類されるために使用されたCRCの異なったステージ。今日、TNM系は、最も広く使用されている癌の解剖学的程度の分類である。それは、国際的に受け入れられている、一貫したなステージ分類系を示す。3つの基本的変数がある:T (原発腫瘍の程度)、N (局部的リンパ節の状態) 及びM (遠隔転移の存在又は非存在)。TNM基準は、UICC (International Union Against Cancer)、Sobin, L.H., Wittekind, Ch. (著)、TNM Classification of Malignant Tumours, 第6版 (2002)) によって発行されている。TNM状態が一旦決定されると、患者は、型I〜IVの範囲のローマ数字によって表される疾患ステージにグループ分けされ、IVは最も進行した疾患ステージである。TNMステージ分類及びUICC疾患ステージは、Sobin及びWittekind (著)、前掲からの以下の表に示されるように互いに一致する。
【0006】
【表1】
【0007】
特に重要なことは、癌例えばCRCの早期診断がより良好な予後に移ることである。CRCでは、結腸の悪性腫瘍は、良性腫瘍、すなわち腺腫から起こる。従って、最良の予後は、腺腫ステージで診断された患者を有する。ステージTis、N0、M0又はT1-3;N0;M0で初期であると診断された患者は、適正に治療されれば、遠隔転移が既に存在する時に診断された患者について5年生存率がわずか10%であるのに比べて、診断後に90%超の5年生存の機会を有する。
【0008】
X-線又は核共鳴画像のような画像化法を含む現在の検出方法は、理論上は、一般的なスクリーニングツールとしての使用のためには少なくとも部分的には好適であるかもしれない。しかしながら、それらは、多数の対象、特に任意の腫瘍症状を有さない対象のマススクリーニングでの一般的及び広範な使用のためのヘルスケア装置には、非常に高価であり、手頃な価格ではない。
【0009】
従って、腫瘍評価の簡便かつコスト効率のよい手段を提供すること、例えば、癌を有する疑いのある個体を特定することは、本発明の目的である。この目的のため、体液中で検出できる一般的な腫瘍マーカー、例えば血液又は血清又は血漿又はかかるマーカーのパネルが望ましい。
【0010】
多数の血清腫瘍マーカーは、既に臨床的使用にある。例えば、サイトケラチン19 (CYFRA 21-1) の溶解性30 kDa断片、神経特異的エノラーゼ (NSE)、及び扁平上皮癌抗原 (SCC) は、最も重要なLCマーカーである。しかしながら、それらのいずれも、スクリーニングツールのために必要とされる感度及び特異性の基準を満たさない (Thomas, L., Labor und Diagnose, TH Books Verlagsgesellschaft, Frankfurt/Main, Germany (2000))。
【0011】
臨床的有用性であるために、単一のマーカーとしての新規診断マーカーは、当該分野で知られている他のマーカーに匹敵するかあるいはそれよりも優れていなければならない。あるいは、新規マーカーは、それが単独で使用されるか又は1以上の他のマーカーと組み合わせて使用されるかのいずれかの場合に、診断的感度及び/又は特異性における進歩をもたらさなければならない。試験の診断的感度及び/又は感受性は、その受信者操作特性によって最もよく評価され、これは以下に詳述する。
【0012】
全血、血清又は血漿は、臨床的日常業務において最も幅広く使用されるサンプル源である。信頼できる癌検出を助けるかあるいは早期診断情報を提供するだろう早期癌マーカーの特定は、この疾患の診断及び管理においておおいに助けるだろう方法をもたらした。そのため、癌のインビトロ評価を改善するために緊急臨床的要求が存在する。生存の機会について早期に診断された患者については、疾患の進行したステージにあると診断された患者と比べて、非常に高いので、癌の早期診断を改善することは特に重要である。
【0013】
肺癌の生化学的マーカーの臨床的有用性は、近年、再検討されている (Duffy, M.J., Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38 (2001) 225-262)。
【0014】
マーカープロファイル及び肺癌の改善された診断を目的とすることに関して、CYFRA 21-1、NSE、及び一般的な炎症性マーカーであるC-反応性タンパク質 (CRP) の血清レベルを組み合わせるファジー理論型分類アルゴリズムを用いる方法が公表された (Schneider, J. et al., Int. J. Clin. Oncol. 7 (2002) 145-151)。著者は、95%の特異性で92%の感度を報告している。しかしながら、この試験において、例えば単一腫瘍マーカーとしてのCYFRA 21-1の感度は、95%の特異性で72%であると報告されている、これは多くの他の報告された研究に比べて顕著に高い。Duffy, M.J., in Grit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38 (2001) 225-262は、46%〜61%の感度を報告している。Schneider他によって達成されたこの異例の高い能力は、ある疑問をもたらし、いくつかの事実に起因していることがある。先ず、対照患者の集合体は、患者集合体よりも若いようである、すなわち、当該群は年齢がうまく合致しておらず、患者集合体は多くの遅いステージを含む。第二に及びより重要なことには、アルゴリズムの能力は、ファジー理論修飾子の決定のために使用されたトレーニングセットのサンプルでチェックされる。従って、これらの修飾子は、厳密に言えば、このセットのために「テーラーメイド」され、独立した検証セットに適用されない。通常の環境下では、よりおきな、独立したかつよくバランスのとれた検証に適用された同一のアルゴリズムが、顕著に減少した全体的能力をもたらすことになることが予想されるべきである。
【0015】
癌疾患を評価する点で使用することができる生化学的マーカーが特定することができるか否かを研究することが本発明の目的であった。特に、本発明の発明者らは、一般的な生化学的マーカーが体液中の癌の評価のために特定することができるか否かを研究した。本発明において、特に、子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌又は非小細胞肺癌の評価のための生化学的マーカーの特定が研究された。
【0016】
驚くべきことに、フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質 (= FENl) が、当該分野の技術において現在知られているマーカーの問題のいくつかを少なくとも部分的に解消することができる、ことが見出されている。
【0017】
驚くべきことに、試験サンプル中のFEN1の増加した濃度が癌の発生と関連することが見出されている。FEN1は単一種の癌に特異的であるマーカーであるが、異なった種類の癌のマーカー、すなわち一般的な腫瘍マーカーではないことが明らかになっている。FEN1が腫瘍形成プロセスにむしろ特定的であるように見えるため、新規腫瘍マーカーFEN1は、様々な種類の腫瘍種について臨床的有用性を有する大きな潜在力を有する。
【0018】
驚くべきことに、サンプル及び/又は体液中のFEN1の濃度の決定は、癌、例えば、子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌又は非小細胞肺癌の評価を可能にする、ことが本発明において見出された。更に驚くべきことに、サンプル及び/又は体液中のFEN1又はその断片の、正常対照に比べて増加した濃度は、癌のリスク又は発生の指標である、ことが見出された。
【0019】
本発明は、免疫学的検出方法によってFEN1の濃度をサンプル中で測定することを含む、インビトロで癌を評価し、及び、癌の評価において、測定された結果、特に決定された濃度を用いることを含む、癌を評価するための方法に関する。
【発明の概要】
【0020】
発明の概要
1つの実施態様において、本発明は、インビトロで癌を評価するための方法であって、体液サンプル中の(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(= FEN1)及び/又はその断片、(b)場合により1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、及び(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、を含む、方法に関する。
【0021】
更に、本発明は、癌の評価におけるFEN1の使用に関する。
【0022】
更に、本発明は、癌の評価におけるFEN1に対する抗体の組合せの使用であって、FEN1の増加した濃度は癌の指標である、使用に関する。
【0023】
更に、本発明は、癌の評価におけるFEN1及び場合により癌の1以上の他のマーカーを含むマーカーパネルの使用であって、FEN1の増加した濃度は癌の指標である、使用を開示する。
【0024】
更に、本発明は、体液サンプル中の(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(FEN1)及び/又はその断片、(b)場合により1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、及び(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、を含む、インビトロで癌を評価するための方法を実施するためのキットであって、FEN1を特異的に測定するために必要とされる試薬、及び場合により1以上の他の癌マーカーを特異的に測定するために必要とされる試薬を含む、キットに関する。
【0025】
驚くべきことに、試験サンプル中のFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の発生に関連することが見出された。FEN1が単一の種類の癌に特異的でないマーカーであるが、異なった種類の癌のマーカー、すなわち一般的な腫瘍マーカーでないことが明らかにされた。FEN1が腫瘍形成プロセスにむしろ特異的であるように見えるので、新規腫瘍マーカーFEN1は、様々な種類の腫瘍種について臨床的有用性を有する大きな潜在力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、20の肺癌組織溶解物のウェスタンブロット分析を示す。15 μgの総タンパク質癌 (CA) 組織溶解物、及び適合した対照組織溶解物は、実施例3に記載のように分析した。M = 分子量マーカー; T = 腫瘍組織溶解物; N = 適合した対照組織溶解物; rec ag = 組換え的に産生されたフラップエンドヌクレアーゼ-1 (= FEN1); 矢印はFEN1の位置を示す。
【図2】図2は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト肺癌(LC)を有する患者から得られた365サンプルの評価のための0.87のAUCを有するLCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図3】図3は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト頭頸部癌(H/NC)を有する患者から得られた30サンプルの評価のための0.92のAUCを有するH/NCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図4】図4は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト子宮内膜癌(EC)を有する患者から得られた23サンプルの評価のための0.92のAUCを有するECにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図5】図5は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト卵巣癌(OC)を有する患者から得られた41サンプルの評価のための0.79のAUCを有するOCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図6】図6は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト悪性黒色腫(MM)を有する患者から得られた16サンプルの評価のための0.95のAUCを有するMMにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図7】図7は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト乳癌(BC)を有する患者から得られた47サンプルの評価のための0.79のAUCを有するBCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図8】図8は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト子宮癌(CC)を有する患者から得られた20サンプルの評価のための0.88のAUCを有するCCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図9】図9は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト膵臓癌(PAC9)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.84のAUCを有するPACにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図10】図10は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト結腸癌(CRC)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.79のAUCを有するCRCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図11】図11は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト膀胱癌(BLC)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.76のAUCを有するBLCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図12】図12は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト腎臓癌(KC)を有する患者から得られた25サンプルの評価のための0.65のAUCを有するKCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図13】図13は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト前立腺癌(PC)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.73のAUCを有するPCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図14】図14は、ヒトFEN1タンパク質; SwissProtデータベース受託番号: P39748(配列番号1)のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
好ましい実施態様において、本発明は、サンプル中のFEN1及び/又はその断片を測定し、及び癌の測定において測定された結果、特に決定された濃度を用いることを含む、インビトロで癌を評価するための方法に関する。
【0028】
別の好ましい実施態様では、本発明は、インビトロで癌を評価するための方法であって、体液サンプル中の(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(FEN1)及び/又はその断片、(b)場合により1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、及び(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、を含む、方法に関する。
【0029】
本発明の方法は、多くの異なった種類の癌の評価に好適である。サンプル中のFEN1タンパク質及び/又は断片の、正常対照と比較して増加した濃度は、例えば、それぞれ、子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌又は非小細胞肺癌のような特定の癌種において見出されている。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、インビトロで癌を評価するために、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度はサンプル中で測定される。
【0031】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/その断片の濃度は、特定の癌種、例えば子宮内膜癌(EC)、悪性黒色腫(MM)、子宮癌(CC)、頭頸部癌(H/NC)、卵巣癌(OC)、結腸癌(CRC)、膀胱癌(BLC)、膵臓癌(PAC)、乳癌(BC)、小細胞肺癌(SCLC)、前立腺癌(PC)、腎臓癌(KC)又は非小細胞肺癌(NSCLC)をインビトロで評価するために、サンプル中で測定される。
【0032】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば子宮内膜癌(EC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0033】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば悪性黒色腫(MM)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0034】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば子宮癌(CC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0035】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば頭頸部癌(H/NC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0036】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば卵巣癌(OC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0037】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば結腸癌(CRC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0038】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば膀胱癌(BLC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0039】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば膵臓癌(PAC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0040】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば乳癌(BC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0041】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば小細胞肺癌(SCLC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0042】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば前立腺癌(PC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0043】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば腎臓癌(KC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0045】
本発明の1つの実施態様は、本発明は、おそらく癌のない個体と「疑わしい」ケースと分類され得る個体とを識別するための、集団のマススクリーニングを言う。個体の後者のグループは、次いで、例えば画像化法又は他の好適な手段によって更なる診断手段に供される。
【0046】
本発明の更なる実施態様は、一般的に癌の診断に好適である腫瘍マーカーパネル又は特定の腫瘍種の診断に好適である腫瘍マーカーパネルの改善を言う。
【0047】
CYFRA 21-1は、現在、今日知られている肺癌の腫瘍マーカーのベストであると理解されている。臓器特異的でないとしても、それは肺組織に優先的に見出される。肺癌のためのCYFRA 21-1の感度は、他の良性の肺疾患に関して95%の特異性で46〜61%であると記載されている。
【0048】
CYFRA 21-1の増加した血清レベルは、目立った良性肝臓疾患、腎臓不全及び侵襲膀胱癌とも関連している。CYFRA 21-1試験は、手術後の治療観察のために推奨される。
【0049】
CEAは、通常、胚形成中に産生される発癌性抗原の群に属する。CEAは、臓器特異的でなく、結腸癌の監視のために優先的に使用される。悪性腫瘍に加えて、いくつかの良性疾患、例えば肝硬変、気管支炎、膵臓炎及び自己免疫疾患は、増加したCEA血清レベルに関連している。良性肺疾患に関する95%の特異性で、肺癌に対するその感度は、29〜44%であると報告されている。CEAの主な使用は、結腸癌を、特にその疾患が転移した時に、監視することにある。しかしながら、様々な癌は、乳癌を含み、CEAの高いレベルを生成ことがある。CEAの好ましい使用は、肺癌の治療観察である。
【0050】
NSEは、SCLCの腫瘍マーカーである。一般的に、増加したNSE血清レベルは、神経管外胚葉及び神経内分泌の腫瘍と関連することが分かっている。増加した血清レベルは、良性肺疾患及び脳疾患、例えば髄膜炎又は他の脳の炎症性疾患、及び頭部に対する外傷を有する患者にも見出されている。95%の特異性でのSCLCに対する感度は60〜87%であるが、NSCLCを試験するNSEの能力は低い(7〜25%)。NSEは、SCLCの治療観察のために推奨されている。
【0051】
糖脂質上のCA 19-9 (糖鎖抗原19-9)、シアリル化ルイス(複数)抗原は、胃腸癌の腫瘍マーカーである。それは、胎児の胃、腸及び膵臓上皮で起こる。低濃度は、肝臓、肺及び膵臓の成人組織でも見出される。腫瘍量とCA 19-9アッセイ値との間には関連はない。そのため、CA 19-9の決定は、膵臓癌の早期検出のために使用することができない。ムチンは肝臓によって専ら排出されるので、場合によっては僅かな胆汁鬱滞でさえも明らかに高いCA 19-9血清レベルを導くことができる。マーカーは、膵臓癌であると確認された患者において疾患状態の監視を助けるものとして主に使用される(感度70〜87%)。その集団の3〜7%は、ルイスa-陰性/b-陰性血液型構造を有し、反応決定因子CA 19-9を有するムチンを発現することができない。このことは、その発見を解釈する時に考慮されなければならない。
【0052】
CA 125は、上皮起源の高い割合のムチン性卵巣腫瘍で見られ、血清中で検出することができる。卵巣腫瘍は、婦人科腫瘍の約20%の原因である。最も高いCA 125値は、卵巣腫瘍に罹患した患者において起こるが、明らかに高い値はまた、子宮内膜、乳房、胃腸管の悪性腫瘍、及び様々な他の悪性腫瘍において観察される。高い値は、時には、様々な良性の婦人科疾患、例えば卵巣嚢腫、卵巣化生、子宮内膜症、筋腫性子宮又は子宮頸管炎において見られる。このマーカーの僅かな上昇は、妊娠初期及び様々な良性疾患(例えば、急性及び慢性膵炎、良性胃腸疾患、腎不全、自己免疫疾患及びその他)においも起こることがある(例えば、急性及び慢性膵炎、良性胃腸疾患、腎不全、自己免疫疾患及びその他)。顕著に高いレベルは、良性の肝臓疾患、例えば肝硬変及び肝炎において見出されている。極度の上昇は、悪性及び良性疾患に起因する任意の種類の腹水症において起こり得る。CA 125は比較的非特異的マーカーであるが、今日、それは、重大な卵巣腫瘍を有する患者の治療及び進行を監視するための最も重要な腫瘍マーカーである。69〜79%の感度は、82〜93%の特異性について報告されている。
【0053】
PSA(「前立腺関連抗原」)は、血液検査において使用される一般的に試験される腫瘍マーカーである。PSAは、高い組織特異性を有しているように見える;糖タンパク質は、正常な前立腺上皮組織及び分泌物において見出されるが、他の組織において見出されない。PSAは、前立腺癌の存在に高度に感受性である。当該上昇は、ステージ及び腫瘍体積と相関した。それは、再発及び治療への反応の指標である。最後に、抗原は患者において予後数値を有し、外科手術の前の非常に高値は再発の可能性がある。
【0054】
NNMT(ニコチンアミド N-メチルトランスフェラーゼ; Swiss-PROT: P40261)は、29.6 kDaの見掛け分子量、及び5.56の等電点を有する。NNMTは、ニコチンアミド及び他のピリジンのN-メチル化を触媒する。この活性は、多くの薬物及び生物異体化合物の生体内変換のために重要である。このタンパク質は、肝臓に主に発現されると報告されており、細胞質に局在する。NNMTは、ヒト肝臓由来のcDNAからクローニングし、そして、29.6 kDaの計算された分子量を有する264個のアミノタンパク質をコードする、792つのヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含んだ(Aksoy, S. et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 14835-14840)。ヒト癌における当該酵素の潜在的役割についての文献はほとんど知られていない。1つの論文では、増加した肝臓NNMT酵素活性は、マウスにおける癌悪液質のマーカーとして報告された(Okamura, A. et al., Jpn. J. Cancer Res. 89 (1998) 649-656)。近年の報告では、放射線感受性細胞株における放射線に反応したNNMT遺伝子のダウンレジュレーションが証明された(Kassem, H. et al., Int. J. Cancer 101 (2002) 454-460)。NNMTがCRCの評価において興味深いことは最近見出された(WO 2004/057336)。ProGRPは、SCLCの検出及び監視において有用な腫瘍マーカーである。増加した血清レベルはまた、非悪性肺/胸膜疾患、例えば特発性肺線維症又はサルコイドーシスを有する患者において見出されている。SCLC(95%の特異性で)の分野でproGRPに対する感受性は、47〜86%であると報告されているが、NSCLCの分野でのproGRP試験の能力は、感受性が10%未満であると報告されているので低い。
【0055】
SCCは、子宮頚管の扁平上皮細胞CAにおいて最初に同定された。一般的にLCのためのSCCの感度は低い(18〜27%)。そのため、SCC試験は、スクリーングのために好適ではないと理解されている。しかしながら、扁平上皮細胞CAについてのより高い感度に起因して、CYFRA 21-1が一般的により優れているとしても、SCCのための好ましい使用は、治療観察である。
【0056】
p53(TP53, 細胞腫瘍抗原p53, 腫瘍抑制因子p53、又はリンタンパク質p53)は、細胞成長捕獲又はアポートーシスを誘導する転写因子である(Appella, E. et al., Pathol. Biol. 48 (2000) 227-245)。p53は、多くの腫瘍種において腫瘍抑制因子として働き、その遺伝子において変異を不活性化することは、ヒトでの癌の進行を促進する最も一般的な遺伝的事象である(Olivier, M. and Petitjean, A., Cancer Gene Ther. 1 (2009) 1-12; Petitjean, A. et al., Oncogene 26 (2007) 2157-2165を参照)。p53変異は、結腸癌の40〜50%で観察され、腫瘍攻撃性と関連する(Soussi T., Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。p53遺伝子の変異は、タンパク質機能の妨害をもたらすだけでなく、腫瘍関連抗原(TAA)の発現、自己免疫反応の開始、及び癌患者の血清中の特異的抗-p53自己抗体の産生をもたらす(Zhang, J.Y. et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 12 (2003) 136-143; Soussi T., Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。
【0057】
ヒト血清における抗-p53自己抗体の検出は、癌の診断及び管理のための新生ツールである。癌種によって、血清中の抗-p53自己抗体の頻度は、17.8%(CRC)〜16.1%(LC)及び7.8%(乳癌)である(Tan, E.M. and Zhang, J., Immunological Reviews 222 (2008) 328-340; Zhang, J.Y. et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 12 (2003) 136-143)。
【0058】
セプラーゼは、繊維芽細胞活性化タンパク質(= FAP)としても知られ、2つの同一の単量体のセプラーゼ単位から成る、ゲラチナーゼ及びジペプチジルペプチダーゼ活性を有する170 kDaの糖タンパク質である(Pineiro-Sanchez, M. L. et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 7595-7601; Park, J.E. et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 36505-36512)。ヒト膜結合セプラーゼタンパク質の単量体は、760個のアミノ酸を含む。ヒトセプラーゼは、繊維芽細胞の細胞質内に第1の4N末端残基を有し、21残基の膜貫通型ドメイン及び734残基の細胞外C-末端触媒ドメインを有すると推測されている(Goldstein, L.A. et al., Biochim Biophys Acta. 1361 (1997) 11-19; Scanlan, MJ. et al., Proc Natl Acad Sci USA 91 (1994) 5657-5661)。ヒトセプラーゼタンパク質のより短い形態は、Swissprotデータベースの受託番号Q12884から、アミノ酸位置26〜760を含む、可溶性セプラーゼ又は循環抗プラスミン開裂酵素(= APCE)として当業者に知られている(Lee, K.N. et al., Blood 103 (2004) 3783-3788; Lee, K.N. et al., Blood 107 (2006) 1397-1404)。可溶性セプラーゼの二量体は、2つの同一の単量体の可溶性セプラーゼタンパク質単位から成る160 kDa糖タンパク質である。Pineiro-Sanchez他(前掲)は、セプラーゼの増加した発現がヒト黒色腫及び腫瘍細胞の侵襲的表現型と相関することを見出した。 Henry, L.R.他, Clin. Cancer Res. 13 (2007) 1736-1741は、高レベルの間質セプラーゼを有するヒト直腸癌患者が攻撃的な疾患進行、及び転移又は再発の潜在的な進行を有する可能性が高いことを記載している。
【0059】
ヒトジペプチジルペプチダーゼIV(= DPPIV)は、CD26としても知られ、110 kDaの細胞表面分子である。ヒトDPPIVタンパク質のアミノ酸配列は、766個のアミノ酸を含む。それは、プロリン又はアラニンを有するペプチドから3番目のアミノ酸位置でN-末端時ペプチドを選択的に除く本質的なジペプチジルペプチダーゼを含む。それは、様々な細胞外分子と相互作用し、細胞内シグナル情報伝達カスケードにも関連する。ヒトDPPIVの多機能活性は、細胞種、及びタンパク質分解酵素、細胞表面受容体、同時刺激相互作用タンパク質及びシグナル情報伝達明細書メディエータとしてのその役割に影響を与える細胞内又は細胞外条件に依拠する。ヒトDPPIVは、アミノ酸位置1〜6由来の短い細胞ドメイン、アミノ酸位置7〜28由来の膜貫通型領域、及び本質的なジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)活性を有するアミノ酸位置29〜766由来の細胞外ドメインを有する。ヒト可溶性ジペプチジルペプチダーゼIV(= 可溶性DPPIV)は、Swissprotデータベースの受託番号P27487由来の、アミノ酸位置29〜766を含む。
【0060】
可溶性DPPIVの二量体は、2つの同一の単量体可溶性DPPIV単位から成る170 kDa糖タンパク質である。可溶性DPPIV/セプラーゼ複合体(= DPPIV/セプラーゼ)は、330 kDaの分子量を有する、可溶性DPPIVホモダイマー(170 kDa)及び可溶性セプラーゼホモダイマー(160 kDa)から形成される可溶性複合体を言う。ある条件下で、この複合体は、660 kDaの分子量を有する二重複合体を形成し得る。
【0061】
本発明はまた、FEN1タンパク質及び/又はその断片及び癌に特異的な1以上の他のマーカーの濃度をサンプル中で測定し、及び測定結果、特に癌の評価で決定された濃度を用いること、を含む、生化学的マーカーによるインビトロで癌を評価するための方法に関する。FEN1と組み合わせた使用のための好ましいマーカーは、一方では、一般的な腫瘍マーカーであるマーカー(すなわち、単一の腫瘍種に特異的でないマーカー)であり、あるいは、一方では、特異的腫瘍マーカー(単一の腫瘍種に特異的なマーカー)である。
【0062】
例えば癌の評価のための好ましいマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ、及び可溶性DPPIV/セプラーゼ複合体(= DPPIV/セプラーゼ)である。これらのマーカーは、単独でそれぞれ、又はFEN1と任意に組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明はまた、サンプル中のFEN1及び1以上の他の癌マーカーを測定し、測定結果、特に癌の評価において測定された濃度を用いること、を含む、生化学的マーカーによってインビトロで癌を評価するための方法に関する。Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカーが選択されることが好ましい。
【0064】
本発明はまた、癌の評価における、少なくともマーカーFEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1つの他の腫瘍マーカー(複数)を含むマーカーパネルの使用に関する。
【0065】
好ましくは、本発明は、サンプル中のFEN1及び/又はその断片及び1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、測定結果、特に癌の評価において測定された濃度を用いること、を含む、生化学的マーカーによってインビトロで癌を評価するための方法に関する。1以上の他のマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれることが好ましい。
【0066】
本発明はまた、癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片の使用であって、FEN1タンパク質及び/又はその断片の高い濃度が癌の指標である、使用に関する。
【0067】
本発明はまた、インビトロでの癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片の使用であって、サンプルが血清又は血漿、使用に関する。
【0068】
本発明はまた、いくつかの特定の種類の癌、特にEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCの評価におけるFEN1の使用に関する。
【0069】
本発明はまた、いくつかの特定の種類の癌、特にEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC又はBCの評価におけるFEN1の使用に関する。
【0070】
本発明はまた、いくつかの特定の種類の癌、特にEC、MM、CC、H/NC、OC又はCRCの評価におけるFEN1の使用に関する。
【0071】
本発明はまた、癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片に対する抗体の使用であって、FEN1及びその断片の増加した濃度が癌の指標である、使用に関する。好ましくは、FEN1は、サンドイッチ型免疫アッセイ方式(サンドイッチ免疫アッセイ)で検出される。
【0072】
本発明はまた、FEN1タンパク質及び/又はその断片を特異的に測定するために必要とされる少なくとも1つの試薬、及び/又は1以上の癌マーカーを含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明はまた、FEN1タンパク質及び/又はその断片を特異的に測定するために必要とされる少なくとも1つの試薬、及び場合により1以上の癌マーカー、例えば上記のEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCのマーカーを含み、当該他のマーカーはそれぞれ単独でもそれらの任意の組合せで使用してもよい、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
【0073】
本発明はまた、FEN1を特異的に測定するために必要とされる少なくとも試薬、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー(複数)、並びに場合により当該測定を実施するための補助試薬を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
【0074】
本発明はまた、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー、並びに場合により当該測定を実施するための補助試薬を特異的に測定するための本発明の方法を実施するためのバイオチップアレイを提供する。
【0075】
本発明はまた、癌の評価における、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカーを特異的に測定するための本発明の方法を実施するためのバイオチップアレイを提供する。
【0076】
本発明はまた、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー、並びに場合により癌の評価における該測定を実施するための補助試薬を特異的に測定するための本発明の方法を実施するためのバイオチップアレイを提供する。
【0077】
用語「測定」は、好ましくは、サンプル中のFEN1タンパク質及び/又はその断片の定性量的半定量的又は定量的測定を含む。好ましい実施態様では、当該測定は、半定量的測定、すなわち、FEN1の濃度がカットオフ値よりも高いか又は低いかを測定することである。当業者が理解するように、イエス(存在)又はノー(非存在)アッセイにおいて、アッセイ感度は、通常、カットオフ値に合致するように設定される。カットオフ値は、例えば、健常個体の群の試験から決定することができる。好ましくは、カットオフは、90%の特異性をもたらすように設定され、またカットオフは、95%の特異性をもたらすように設定されることが好ましく、あるいは98%の特異性をもたらすように設定されることが好ましい。カットオフ値を超える値は、例えば、癌の存在のための指標でよい。特に、カットオフ値を超える値は、例えば、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC及び/又はNSCLCの存在のための指標でよい。更に好ましい実施態様では、FEN1の測定は、定量的測定である。更に好ましい実施態様では、FEN1の濃度は、例えば疾患のステージ、疾患の進行又は治療への反応のような根底にある診断的疑問に相関している。
【0078】
別の好ましい実施態様では、カットオフは、90%の感度をもたらすように設定され、95%の特異性をもたらすように設定されることが好ましく、あるいは98%の特異性をもたらすように設定されることが好ましい。
【0079】
カットオフ値より低い値は、例えば、癌の非存在の指標である。EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC及び/又はNSCLCの存在のための指標でよい。特に、カットオフ値より低い値は、例えば、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC及び/又はNSCLCの非存在のための指標でよい。
【0080】
更に好ましい実施態様では、FEN1の測定は定量的測定である。更に好ましい実施態様では、FEN1の濃度は、例えば疾患のステージ、疾患の進行又は治療への反応のような根底にある診断的疑問に相関している。
【0081】
フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(= FEN1)、Swiss-PROT ID: P39748は、配列番号(図14)に記載される配列によって特徴付けられる、42.6 kDaの分子量の380アミノ酸の核タンパク質である。ヒトFEN1のコーディング配列は、新しくクローン化された配列から1994年にMurrayによって予測された(Murray J. M. et al., Mol. Cell. Biol. 14 (1994) 4878-4888)。酵母ホモログrad2の機能に基づいて、高い忠実性の染色体分離及びUV-誘発DNA損傷における機能が示唆された。これらは染色体の完全な状態での基本的なプロセスであるので、著者はまた、癌回避における当該タンパク質の関連を提案した。ヒト染色体11上の遺伝子座は、後に、Hiraoka他(Hiraoka L.R. et al., Genomics 25 (1995) 220-225)及びTaylor他(Taylor T.D. et al., Nature 440 (2006) 497-500)によって同定された。FEN1の機能及びDNAとのその相互作用は、多数の研究の焦点となっている(Robins P. et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 28535-28538), Shen B. et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 9173-9176, Hasan S. et al., Mol. Cell 7 (2001) 1221-1231, Qiu J. et al., J. Biol. Chem. 277 (2002) 24659-24666 and Sakurai S. et al, EMBO J. 24 (2005) 683-693)。DNA代謝における、DNAポリメラーゼが下流の岡崎フラグメントの5'-末端に出合う時に置換合成によって作製された5'-張り出しフラップ構造を開裂するエンドヌクレアーゼ活性を含むいくつかの酵素的機能が証明されてきた。更に、FEN1はまた、ネイキッド(niked)又はギャップ二重鎖DNA上の5'から3'エキソヌクレアーゼ活性を有し、RNase H活性を示す。これらは、Shen他(Shen B. et al. BioAssays 27 (2005) 717-729)又はLiu他(Liu Y. et al., Annu. Rev. Biochem. 73 (2004) 589-615)によって再考された。
【0082】
ごく最近の変異、FEN1の調節解除された発現及び機能的欠陥は、疾患の発症に関連することが明らかになっている。Kucherlapati他(Kucherlapati M. et al., PNAS 99 (2002) 9924-9929)は、腫瘍進行にFEN1発現を関連付けた。Sato他(Sato M. et al., Oncogene 22 (2003) 7243-7246)は、肺癌におけるFEN1の増加した発現を証明しているが、一方、Lam他(Lam J.S. et al., BJU International 98 (2006) 445-451)は、前立腺癌における過剰発現を見出した。Singh他(Singh P. et al., Mol. Cancer Res. 6 (2008) 1710-1717)は、乳癌及び低メチル化によって調節された他の癌におけるFEN1の過剰発現を見出した。疾患プロセスへの非常に広いリンクは、Zheng他(Zheng L. et al., Nature medicine 13 (2007) 812-819)によって公表された、そこでは、著者は、FEN1変異が自己免疫、慢性炎症及び癌をもたらし得ることを示すことができた。
【0083】
FEN1の疾患との関連が現在では明らかに確立されているが、これらの疾患のバイオマーカーとしてのFEN1タンパク質に関する研究は公表されていない。これまでの利用可能な研究は、DNA又はRNA-型法に焦点を合わせるものである。このことは、FEN1に関する特許と合致している(WO 2008/089577: 乳癌遺伝子アレイ, WO 2008/151110: 肺癌変異体の分子診断及びタイピング, WO2008/077165: 腫瘍マーカーのセット, WO 2007/073220: 結腸癌の予後予測, 米国特許第5,874,283号明細書: 哺乳動物フラップ特異的エンドヌクレアーゼ-1)。
【0084】
本明細書で使用する、以下の用語の各々は、この項でそれと関連した意味を有する。
【0085】
本明細書で用いる冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的目的物の1から2以上(すなわち少なくとも1)を意味する。例として、「マーカー」は、1つのマーカー又は1超のマーカーを意味する。用語「少なくとも」は、場合により1以上の更なる目的物が存在することを示すために使用される。例として、少なくとも(マーカー)FEN1及びCYFRA 21-1を含むマーカーパネルは、場合により、1以上の他のマーカーを含んでよい。
【0086】
表現「1以上の」は、1〜50を示し、好ましくは1〜20であり、更に好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は15である。
【0087】
用語「チップ」、「バイオチップ」、「ポリマーチップ」又は「タンパク質チップ」は、交換的に使用され、シリコンウエハ、ナイロンストリップ、プラスチックストリップ又はガラススライドの一部でもよい、共有された基板上に並べられた、大多数のプローブ、マーカー又は生化学的マーカーの集団を言う。
【0088】
「アレイ」、「マクロアレイ」又は「マイクロアレイ」は、ガラス、プラスチック、シリコンチップ又は他のアレイ形成材料のような基板又は固体表面上に結合されるか又は組み立てられた、分子、マーカー、開口部、マイクロコイル、検出器及び/又はセンサのような、意図的に作製された物質の集団である。アレイは、反応又は組合せの、例えば、数10個、数千個又は数百万個のような大多数のレベルを同時に測定するために使用できる。アレイは、少数の物質、例えば1個、数個又は12個を含んでもよい。アレイ中の物質は、互いに同一であるか又は異なってよい。アレイは、様々な形式、例えば可溶性分子のライブラリ、固定分子のライブラリ、固体された抗体のライブラリ、樹脂ビーズ、シリカチップ又は他の固体支持体に繋がれた化合物のライブラリを想定することができる。アレイは、アレイのパッドのサイズによって、マクロアレイかマイクロアレイのいずれかでよい。マクロアレイは、一般的に、約300ミクロン以上のパッドサイズを含み、ゲル及びブロットスキャナによって容易に画像化することができる。マイクロアレイは、一般的に、300ミクロン未満のパッドサイズを含む。
【0089】
「固体支持体」は、ライブラリメンバー又は試薬がそこに結合するか又は(一般的に固定されることになるリンカーによって)共有結合しているか、あるいは、過剰な試薬、可溶性反応副生成物又は溶媒から(濾過、遠心分離、洗浄等によって)それらを容易に分離させる、不溶性の、機能化された、ポリマー性材料である。
【0090】
本明細書で使用される用語「マーカー」又は「バイオマーカー」は、患者の試験サンプルを分析するための標的として使用されるべき分子を言う。かかる分子標的の例は、タンパク質又はポリペプチドである。本発明でマーカーとして使用されるタンパク質又はポリペプチドは、前記タンパク質の天然変異体、並びに前記タンパク質又は前記変異体の断片、特に免疫学的に検出可能な断片を含むと考慮される。免疫学的に検出可能な断片は、好ましくは、前記マーカーポリペプチドの少なくとも6、7、8、10、12、15又は20の連続したアミノ酸を含む。当業者は、細胞によって放出される又は細胞外マトリックスに存在するタンパク質が炎症中に損傷を受け得、かかる断片に分解又は開裂され得る、ことを認識するだろう。あるマーカーは、次にタンパク質分解によって活性化され得る不活性な形態で合成される。当業者は、タンパク質又はその断片が複合体の一部として存在してもよいことを理解するだろう。かかる複合体は、本発明の意味においてマーカーとして使用することができる。マーカーポリペプチドの変異体は、同一の遺伝子によってコードされるが、その等電点(=PI)又は分子量(=MW)、あるいは例えば別のmRNA又はプレ-mRNAプロセシングの結果としてその両方において、異なることがある。変異体のアミノ酸配列は、対応するマーカー配列と95%以上、同一である。加えて、あるいはマーカーポリペプチドもしくはその変異体は、翻訳後修飾を有することがある。翻訳後修飾の非限定的な例は、グリコシル化、アシル化及び/又はリン酸化である。
【0091】
FEN1タンパク質、特にFEN1タンパク質及び/又はその断片の可溶性形態は、好適なサンプルで検出される。好ましいサンプルは、組織サンプル、組織溶解物又は体液、例えば血液、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄(= BAL; 好ましくは、疑いのある肺癌(LC)の場合)又は管支肺胞分泌液(= ELF; 好ましくは、疑いのあるLCの場合)である。好ましくは、サンプルは、ヒト対象、例えば腫瘍患者、腫瘍のリスクのある人又は腫瘍を有すると疑われる人から得られる。また、好ましいFEN1は血清又は血漿サンプルで検出される。
【0092】
本発明に従う好ましい実施態様では、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度が決定される。1つの実施態様では、マーカーFEN1は、特異的結合剤の使用によってサンプルから具体的に測定される。
【0093】
特異的結合剤は、例えばFEN1に対する受容体、FEN1に結合するレクチン、又はFEN1と反応する抗体である。特異的結合剤は、その対応する標的分子について少なくとも107 l/molの親和性を有する。特異的結合剤は、その対応する標的分子について、好ましくは108 l/molの親和性を有するか、あるいは109 l/mol親和性を有することが好ましい。
【0094】
当業者は、用語「特異的」がサンプル中に存在する他の生体分子がFEN1に特定的な結合剤にほとんど結合しないことを示すために使用される、ことを理解するだろう。好ましくは、標的分子以外の生体分子に結合する結合レベルは、それぞれ最大で10%以下のみ、5%以下のみ、2%以下のみ、又は1%以下の標的分子に対する親和性である結合親和性をもたらす。
【0095】
好ましい特異的結合剤は、親和性及び特異性の上記の最小の基準を満たすことになる。特異的結合剤は、好ましくは、FEN1と反応する抗体である。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の抗原結合断片、単一鎖抗体、及び抗体の結合部位を含む遺伝子的構築物を言う。
【0096】
特異的結合剤の上記基準を維持する任意の抗体断片が使用できる。抗体は、技術手段の状況によって作製され、例えばTijssen(Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays, 11, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam, the whole book, 特にpages 43-78)に記載されている。加えて、当業者は、抗体の具体的な単離のために使用できる免疫吸着剤に基づく方法をよく知っている。これらの手段によってポリクローナル抗体の品質、及び従って免疫アッセイにおけるその能力が亢進される(Tijssen, P., 前掲, pages 108-115)。
【0097】
本発明に開示されている成果のために、ウサギから産生されたポリクローナル抗体が使用できる。しかしながら、異なった種由来のポリクローナル抗体、例えば、ヒツジ又はヤギ、及びモノクローナル抗体も使用できる。モノクローナル抗体は安定性をもって任意の量で産生することができるので、それらは、臨床的ルーチンのためのアッセイの開発において理想的なツールを示す。本発明に従う方法においてFEN1に対するモノクローナル抗体の作製及び使用は、それぞれ、更に他の好ましい態様を示す。
【0098】
免疫アッセイは当業者には周知である。かかるアッセイを行う方法、並びに実際の応用及び手段は、関連するテキストに纏められている。関連するテキストの例は、Tijssen, P., 酵素抗体又は他の酵素高分子複合体の調製, In: 酵素免疫アッセイの実験及び理論, 第221-278頁, Burdon, R.H.及びv. Knippenberg, P.H. (著), Elsevier, Amsterdam (1990)、及び酵素学における方法, Colowick, S. P., and Caplan, N.O. (著), Academic Press) の様々な巻であり、免疫学的検出法、特に70、73、74、84、92及び121巻を扱っている。
【0099】
当業者が、FEN1が癌、好ましくは肺癌の評価において有用であるマーカーとして同定されていることを理解するように、様々な免疫診断手段は、本発明の達成に匹敵する結果に到達するために使用できる。例えば、抗体を作製するための別の方法も使用できる。かかる方法は、それらの中の、免疫化のためのFEN1のエピトープを示す合成ペプチドの利用を含む。あるいは、DNAワクチン化としも知られている免疫化を使用してもよい。
【0100】
測定のためには、個体から得られたサンプルは、結合剤FEN1複合体の形成のために好適な条件下で、FEN1のために特異的結合剤でインキュベートされる。当業者は創意的努力をせずにかかる好適なインキュベーション条件を容易に同定することができるので、かかる条件は特定する必要がない。結合剤FEN1複合体の量は、癌、特に肺癌の評価において測定され、使用される。当業者が承知のように、特異的結合剤FEN1複合体の量を測定するための多数の方法が関連するテキストに詳細に記載されている(例えば、Tijssen P., supra, or Diamandis, E.P. and Christopoulos, T.K. (eds.), Immunoassay, Academic Press, Boston (1996)参照)。
【0101】
好ましくは、FEN1はサンドイッチアッセイ形式(=サンドイッチ免疫アッセイ)で検出される。かかるサンドイッチアッセイでは、固体支持体に結合された第1の特異的結合剤は、一方の側上のFEN1を捕獲するために使用され、直接的又は間接的に検出可能であるように標識される第2の特異的結合剤は、他方の側上で使用される。サンドイッチアッセイ形式で使用される特異的結合剤は、FEN1に対して特異的な抗体の組合せでよい。
【0102】
本発明の意味において「癌のマーカー」は、マーカーFEN1と組み合わせる場合には、一般的に癌の評価における又はある癌種の評価、例えば、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCの評価と組み合わせた癌疾患の評価において、関連する情報を加える任意のマーカーである。癌の評価のための、所定の特異性での感度、又は所定の感度での特異性が、それぞれ、マーカーFEN1をすでに含むマーカーの組合せに前記マーカーを含めることによって改善される場合には、当該情報は、関連するか又は付加的価値があると考えられる。癌評価の好ましい態様では、感度又は特異性各々の改善は、p = .05、.02、.01又はそれ以下の有意性のレベルで統計的に有意である。好ましくは、1以上の他の腫瘍マーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ、及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる。
【0103】
本明細書で使用される用語「サンプル」は、インビトロでの評価の目的のために得られた生物学的サンプルを言う。本発明の方法では、サンプル又は患者サンプルは、好ましくは、任意の体液を含んでよい。好ましいサンプルは、組織サンプル、組織溶解物又は体液、例えば血液、血清、血漿、尿、気管支肺胞洗浄(= BAL; 好ましくは、疑いのある肺癌(LC)の場合)又は管支肺胞分泌液(= ELF; 好ましくは、疑いのあるLCの場合)であり、血清又は血漿が最も好ましい。
【0104】
本明細書で使用される用語「組織サンプル」及び/又は「組織断片」は、外科手術、治療的切除、又はインビトロでの評価の目的のための細胞又は組織の除去を含む生検(例えば、切開生検、切除生検、コア生検、又は針吸引生検)の間に患者から採取された生物学的サンプルを言う。本発明に従う分析を行う時に、直接低に又は「組織溶解物」のいずれかとして組織サンプル材料が使用される。本明細書で使用される「組織サンプル」は、マイクロトームの使用によって通常行われる薄組織スライスをも意味する。生物学的サンプルを含む任意の開示された方法の態様では、かかる生物学的サンプルは、顕微鏡スライド上に置くことができ(必ずしもそうではないが)、組織断片(例えば、ホルマリン固定及びパラフィン埋没組織断片)であり、及び/又は新生物組織(例えば、肺癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌又はグリア芽腫)である。
【0105】
本明細書で用いる「組織溶解物」「細胞溶解物」、「溶解物」「溶解されたサンプル」「組織抽出物」又は「細胞抽出物」は、溶解された組織又は細胞を含むサンプル及び/又は生物学的サンプル材料を言う、すなわち、そこでは、組織又は細胞の構造的完全状態が崩壊されている。細胞又は組織サンプルの内容を放出するために、当該材料は、通常、酵素及び/又は化学物質で処理されて、細胞壁及びかかる組織又は細胞の細胞膜を溶解、分解又は崩壊する。当業者は、溶解物を得るための好適な方法を熟知している。この方法は、用語「溶解」に包含される。
【0106】
用語「癌を評価すること」及び特に「子宮内膜癌(EC)、悪性黒色腫(MM)、子宮癌(CC)、頭頸部癌(H/NC)、卵巣癌(OC)、結腸癌(CRC)、膀胱癌(BLC)、膵臓癌(PAC)、乳癌(BC)、小細胞肺癌(SCLC)、前立腺癌(PC)、腎臓癌(KC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)を評価すること」は、本発明の方法が、(単独で又は他のマーカー又は変数、例えばUICC(上記参照)によって示される基準と一緒に)例えば、医師が癌の非存在もしくは存在を確立又は確認することを助け、あるいは予後診断、再発の検出(手術後の患者のフォローアップ)及び/又は処置、特に化学療法のモニタリングにおいて医師を助ける、ことを示すために使用される。
【0107】
当業者が承知しているように、任意のかかる評価はインビトロでなされる。患者サンプルはその後廃棄される。患者サンプルは本発明のインビトロでの診断的方法のために単に使用され、患者サンプルの材料は患者の体に戻されない。典型的には、サンプルは液体サンプル、例えば全血、血清又は血漿である。
【0108】
他に特定しない限り、技術用語は慣用的使用に従って使用される。細胞及び分子生物学における通常の用語の定義は、Oxford University Press (1994), ISBN 0-19-854287 9; Kendrew, J.他(著)によって公表されたLewin, B., Genes V、Blackwell Science Ltd. (1994), ISBN 0-632-02182-9によって公表されたThe Encyclopedia of Molecular Biology;及びVCH Publishers, Inc. (1995), ISBN 1-56081-5698によって公表されたComprehensive Desk Referenceに見出される。
【0109】
好ましい態様では、本発明は、FEN1の濃度をサンプル中で測定し、及び癌の評価で決定された濃度を使用することを含む、生化学的マーカーによるインビトロで癌を評価するための方法に関する。
【0110】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、癌、特に、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCを有する患者から得られたサンプルの有意な割合でマーカーFEN1の増加した濃度を検出することができるようになった。更に驚くべきことに、発明者らは、個体から得られたこのようなサンプル中のFEN1の増加した濃度が癌、特に上記の癌疾患の評価において使用できることを証明することができた。
【0111】
診断の理想的シナリオは、単一の事象又はプロセスが各々の疾患、例えば感染性疾患を引き起こす状況であろう。すべての他の場合において、多くの癌種について当てはまるように、特に疾患の原因が十分に理解されない時には正確な診断は非常に困難である。当業者は承知しているように、100%の特異性を有し、同時に所定の多因子疾患のために100%の感度を有する診断用である、生化学的マーカーは存在しない。むしろ、生化学的マーカー、例えば、Cyfra 21-1、CEA、NSE、又は本明細書で示されるように、FEN1は、ある可能性又は予測値、例えば疾患の存在、非存在又は重度で評価するために使用することができる。そのため、ルーチンの臨床的診断では、一般的に様々な臨床的症状及び生物的マーカーは、根底にある疾患の診断、治療及び管理において一緒に考慮される。
【0112】
生化学的マーカーは、個々に又は本発明の好ましい態様のいずれかで測定することができ、それらは、チップ又はビーズ型アレイ技術を用いて同時に測定することができる。バイオマーカーの濃度は、例えば各々のマーカーについて個々のカットオフを用いて、独立して解釈されるか、又は解釈のために組み合わされる。
【0113】
更なる好ましい態様において、本発明に従う癌の評価は、サンプル中の、a) FEN1タンパク質及び/又はその断片、b) 1以上の他の癌マーカー、の濃度を測定し、及びc) 癌の評価における測定結果、例えばステップ(a)及びステップ(b)それぞれにおいて測定された濃度を利用すること、を含む、方法において達成される。
【0114】
癌の評価において、マーカーFEN1は、以下の局面の1以上において有利であろう:スクリーニング;診断的補助;予後診断;化学療法、放射線療法及び免疫療法のような治療法のモニタリング。
【0115】
スクリーニング:
スクリーングは、個体、例えば疾患、例えば癌の存在、のインジケータに対してリスクのある個体を同定するための試験の系統的な適用として定義される。好ましくは、スクリーニング集団は、癌の平均的なリスクよりも高いことが知られている個体からなる。例えば、肺癌のスクリーニング集団は、喫煙者、元喫煙者、及びウラン-、石英-又はアスベスト-に曝露された労働者のような肺癌の平均的リスクよりも高いことが知られている個体からなる。
【0116】
好ましい態様では、組織サンプル、組織溶解物又は任意の体液、例えば全血、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄(= BAL; 好ましくは、疑いのある肺癌(LC)の場合)又は管支肺胞分泌液(= ELF; 好ましくは、疑いのあるLCの場合)は、癌のスクリーニングにおいてサンプルとして使用される。
【0117】
多くの疾患について、スクリーニングプロセスに求められる感度及び特異性の基準を満たす、循環する単一の生化学的マーカーはない。このことは、癌、特に肺癌に当てはまるようである。多数のマーカーを含むマーカーパネルが癌のスクリーニングに使用されなければならないと期待されるべきである。本発明で確立されたデータは、FEN1がスクリーニング目的のために好適なマーカーパネルの完全な部分を形成することを意味する。そのため、本発明は、癌マーカーパネル、FEN1及び癌スクリーニング目的のための1以上の更なるマーカーを含むマーカーパネル、の1つのマーカーとしてのFEN1の使用に関する。特に、本発明は、一般的な癌マーカーパネルの1つのとしてのFEN1の使用に関する。かかるマーカーパネルは、マーカーFEN1、及び1以上の更なるマーカー、例えば一般的な癌マーカー及び/又は癌の上記の種のためのマーカーを含む。
【0118】
マーカーの組合せは、分子アッセイの値を顕著に改善する。第1に、当該アッセイの感度は、マーカーパネルを用いて顕著に改善される。第2に、洗練された統計的モデルは、マルチマーカーのROC曲線分析を可能にし、その結果は、診断制度が最良の個々のマーカーと比べて顕著に増加することを確認する。
【0119】
FEN1はまた、癌のある特定の種類、例えばEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCのためのマーカーパネルに寄与するらしい。
【0120】
更に、FEN1を含むマーカーパネルで評価されるべき癌の好ましい種は、EC、MM、CC、H/N、OC、CRC、BLC、PAC又はBCである。更に、FEN1を含むマーカーパネルで評価されるべき癌の好ましい種は、EC、MM、CC、H/N、OC又はCRCである。
【0121】
本データは、マーカーのある組合せが癌のスクリーニングにおいて有利であることを更に示す。
【0122】
例えば、癌のスクリーニングの好ましい態様に関連して、本発明はまた、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1以上のマーカー(複数)を含むマーカーパネルの使用に関する。
【0123】
診断的補助:
マーカーは、特定の臓器における良性-対-悪性疾患の識別的診断を助け、腫瘍の異なった組織学的種類を識別するために役立つか、あるいは手術前のベースラインマーカー値を確立するために役立つことがある。
【0124】
今日、肺癌の検出において使用される重要なほう方法は、放射線使用及び/又は線断層撮影法(CT)である。小結節、すなわち疑わしい組織の小さな部位は、これらの方法によって視覚化することができる。しかしながら、これらの小結節の多く−CTで90%超は良性組織変化を示し、小数の小結節のみが癌性組織を示す。マーカーFEN1の使用は、良性-対-悪性疾患の識別に役立つことがある。
【0125】
好ましい態様では、マーカーFEN1は、癌の異なった組織学的種類を確立又は確認するために、免疫組織学的方法で使用される。
【0126】
単一のマーカーとしてのFEN1は他のマーカー、例えばCEA又はNSEのような他のマーカーよりも優れているので、FEN1が、特に手術前のベースライン値を確立することによって、診断的補助として使用されることが予測されるべきである。したがって、本発明はまた、癌の手術前のベースライン値を確立するためのFEN1の使用に関する。
【0127】
予後診断:
予後診断インジケータは、疾患の結果をある可能性をもって予測する、癌患者及びその腫瘍の臨床的、病因的又は生化学的特徴として定義される。その主な使用は、合理的に患者管理を計画するために、すなわち、攻撃的な疾患の過少治療及び無痛疾患の過剰治療をそれぞれ避けるために役立つことである。Molina, R.他, Tumor Biol. 24 (2003) 209-218は、NSCLC中のCEA、CA 125、CYFRA 21-1、SSC及びNSEの予後診断的値を評価した。その試験では、マーカーNSE、CEA及びLDH(乳酸脱水素酵素)の異常な血清レベルは、より短い生存を示すように見えた。
【0128】
FEN1は単独で、癌患者と健常対照との識別に顕著に貢献するので、癌に罹患した患者の予後診断を評価する点で補助するだろうと予測されるはずである。術前のFEN1のレベルは、1以上の他の癌マーカー及び/又はTNM段階分類系と組み合わされる可能性が大きい。好ましい態様では、FEN1は、EC、MM、CC、H/N、OC、CRC、BLC、PAC又はBCの患者の予後診断に使用される。
【0129】
化学療法のモニタリング:
Merle, P.他, Int. J. of Biological Markers 19 (2004) 310-315 は、誘発化学療法で処置された局部的に進行したNSCLCを有する患者のCYFRA 21-1血清レベル変化を評価した。彼らは、CYFRA 21-1血清レベルの早期モニタリングが、腫瘍応答及びステージIIIのNSCLC患者の生存ための有用な予後診断ツールになりうると結論している。加えて、報告は、LCを有する患者の処置をモニタリングする時のCEAの使用を記載している(Fukasawa, T. et al., Gan to Kagaku Ryoho 13 (1986) 1862-1867)。これらのほとんどは、回顧的で、非-ランダムであり、少数の患者を含んだ。CYFRA 21-1を用いる試験の場合のように、CEA試験は次のように示唆した:(a) CEAレベルが減少し、同時に化学療法を受けている患者は、一般的に、CEAレベルが減少し損なった患者よりも良好な結果を有した、及び (b) ほとんどすべての患者について、CEAレベルの増加は、疾患進行に関連していた。
【0130】
FEN1は、各々CYFRA 21-1又はCEAとして化学療法をモニタリングするための、少なくともとも良好なマーカーでとして期待される。そのため、本発明はまた、治療中の癌患者のモニタリングにおけるFEN1の使用に関する。
【0131】
好ましい態様では、治療法のモニタリングにおいて、FEN1、及びCEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1つのマーカーについての測定は、組み合わされ、そして癌の評価において使用されることになる。
【0132】
フォローアップ:
外科的切除を経験したLC患者の大部分は、癌性組織の完全な除去、再発又は転移性疾患の後の発症を目的とした(Wagner, H. Jr., Chest 117 (2000) S110-S118; Buccheri, G. et al., Ann. Thorac. Surg. 75 (2003) 973-980)。これらの再発のほとんどは、手術後の最初の2〜3年以内に起こる。再発/転移性疾患は、あまりに遅く検出されれば必ず死に至るので、相当の研究が、早期の癌の再発、よって潜在的に治療可能なステージに注がれてきた。
【0133】
結局、多くの癌患者は、CEAによる規定のモニタリングを頻繁に含む、手術後の観察プログラムを経験する。手術的切除後の1年のCEAによる段階的モニタリングは、疑わしい症状又は兆候の非存在下でさえ、約97%の特異性で約29%の感度を有する、早期の手術後の再発/転移性疾患を検出することが明らかになっている(Buccheri, G. et al., Ann. Thorac. Surg. 75 (2003) 973-980)。したがって、手術後の癌患者のフォローアップは、好適な生化学的マーカーのための使用の最も重要な分野の1つである。調査された癌患者におけるFEN1の高感度に起因して、FEN1単独又は1以上の他のマーカーとの組み合わせは、手術後の癌患者のフォローアップにおいて相当な補助となるであろう。癌患者のフォローアップにおけるFEN1及び1以上の他の癌マーカーを含むマーカーパネルの使用は、本発明の更なる好ましい態様を示す。
【0134】
なお更なる好ましい態様では、本発明は、癌の診断分野において、FEN1の使用に関する。好ましくは、FEN1は、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCそれぞれの評価に使用される。
【0135】
なお更なる好ましい態様では、本発明は、1以上の更なる癌のためのマーカー分子と組み合わせた、癌、例えば一般的に癌又は癌の特定の種類、例えばEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCのためのマーカー分子としてのFEN1の使用に関する。更なるマーカー分子は、癌種に非特異的な一般のマーカー分子及び/又は癌種特異的マーカー分子でよい。FEN1及び少なくとも1つの更なるマーカーは、個体から得られた液体サンプル中の癌の評価に使用される。FEN1の測定が組み合わされる好ましい選択された他の癌マーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼである。特に、FEN1の測定が組み合わされる好ましい選択された他の癌マーカーは、CYFRA 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125, proGRP及び/又はNSEである。なお更に好ましくは、癌の評価に使用されるマーカーパネルは、FEN1、及びCYFRA 21-1及びCEAからなる群より選ばれる少なくとも1つの他のマーカー分子を含む。
【0136】
当業者は承知しているように、調査中の診断的問題を改善するために2以上のマーカーの測定を用いるための多くの方法がある。簡単に言えば、しかしそれにもかかわらず一般的に効果的な方法であるが、サンプルが試験されたマーカーの少なくとも1つに関して陽性であるならば、陽性の結果が想定される。このことは、例えば、AIDSのような感染性疾患を診断する場合である。
【0137】
しかしながら、通常、マーカーの組合せが評価される。好ましくは、マーカーパネルのマーカー、例えばFEN1及びCYFRA 21-1について測定された値は、数学的に組み合わされ、組み合わされた値は根底にある診断的疑問と相関される。マーカー値は、数学的方法の技術の任意の好適な状況によって組み合わせることができる。マーカーの組合せを疾患と関連づけるための周知の数学的方法は、判別分析 (DA) (すなわち、一次-、二次-、正則化-DA)、カーネル法 (すなわち、SVM)、ノンパラメトリックな手法 (すなわち、k近傍法)、PLS (部分的最小二乗法)、ツリーベース法 (すなわち、ロジスティック回帰、CART、ランダムフォーレスト法、ブースティング/バギング法)、一般化線形モデル (すなわち、ロジスティック回帰)、主成分ベース法 (すなわち、SEMCA)、一般化加法モデル、ファジィ論理ベース法、ニューラルネットワーク、及び遺伝的アルゴリズムベース法のような方法を採用する。当業者は、本発明のマーカー組合せを評価するための好適な方法を選択するには何の問題もないだろう。好ましくは、本発明のマーカー組合せを、例えばLCの非存在又は存在と関連づけ点で用いられる方法は、DA (すなわち、一次-、二次-、正則化-判別分析)、カーネル法 (すなわち、SVM)、ノンパラメトリックな手法 (すなわち、k近傍法)、PLS (部分的最小二乗法)、ツリーベース法 (すなわち、ロジスティック回帰、CART、ランダムフォーレスト法、ブースティング/バギング法)、又は一般化線形モデル (すなわち、ロジスティック回帰)、から選択される。これらの方法に関する詳細は、以下の文献に見られる:Ruczinski, I.他, J. of Computational and Graphical Statistics, 12 (2003) 475-511; Friedman, J. H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175; Hastie, T.他, 統計的学習の要素, Springer Series in Statistics (2001); Breiman, L.他, Classification and regression trees, California: Wadsworth (1984); Breiman, L., Random Forests, Machine Learning, 45 (2001) 5-32; Pepe, M.S., 分類及び予測のための医学テストの統計的評価, Oxford Statistical Science Series, 28 (2003); 及びDuda, R.O.他, パターン分類, Wiley Interscience, 第2版 (2001)。
【0138】
生物的マーカーの根底にある組合せのための最適化された多変量カットオフを使用し、及び状態Aと状態B、例えば疾患と健常を識別することであることは、本発明の好ましい態様である。この種の分析では、マーカーは、もはや独立ではなく、マーカーパネルを形成する。
【0139】
診断的方法の精度は、その受信者動作特性(ROC)によって最もよく記載されている(特に、Zweig, M.H., and Campbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577参照)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲に渡って決定閾値を連続的に変えることから得られる、感度/特異性のペアのすべてのプロットである。
【0140】
実験室試験の臨床的能力は、その診断精度、又は対象を臨床的に関連するサブグループに正確に分類する能力に依拠する。診断精度は、調査されて対象の2つの異なった条件を正確に識別する試験能力を測定する。かかる条件は、例えば、健康及び疾患、又は良性-対-悪性疾患である。
【0141】
各々の場合には、ROCプロットは、識別閾値の完全な範囲のための感度-対-1-特異性をプロットすることによって2つの分布間の重複を描く。y-軸は感度、又は[(真の陽性試験結果の数)/(真の陽性試験結果の数 + 偽陰性試験結果の数)として定義される真の陽性分画]である。このことは、疾患又は症状の存在において陽性としても言及されている。罹患したサブグループから単に計算される。x-軸は、偽陽性分画、又は[(偽陽性結果の数)/(真の陰性結果の数 + 偽陽性結果の数)として定義される1-特異性である。それは、特異性の指標であり、非罹患サブグループから完全に計算される。真の-及び偽の-陽性分画が2つの異なったサブグループからの試験結果を用いて、完全に別個に計算されるので、ROCプロットは、サンプル中の疾患の有病数とは関係ない。ROCプロットにおける各ポイントは、特定の識別閾値に対応する感度/1-特異性を示す。完全な識別(結果の2つの分布において重複がない)は、真の陽性分画が100又は100%(完全な感度)であり、偽陽性分画が0(完全な特異性)である、左上コーナーを通過するROCプロットを有する。識別なしの試験のための理論的プロット(2つの群についての結果の同一の分布)は、左下コーナーから右上コーナーまでの45°斜めラインである。ほとんどのプロットはこれらの2つの極端の間にある。(ROCプロットが45°斜めより下に完全に入る場合には、このことは、「より大きい」から「より小さい」までの「陽性」の基準を逆転させることによって、又は逆も同様、容易に修正される。)定量的には、プロットが左上コーナーに近づけば近づく程、試験の全体的な精度は高くなる。
【0142】
実験室試験の診断精度を定量化する1つの好ましい方法は、1つの番号によってその能力を表現することである。かかる全パラメタは、例えば、いわゆる「全誤差」又は曲線下の面積=AUC」である。最も一般的な世界的指標は、ROCプロット下面積である。慣例により、これは、必ず>0.5である(そうでない場合には、識別規則をそのように変換することができる。値は、1.0(2つの群の試験値の完全な分離)と0.5(試験値の2つの群の試験値の完全な分離))との間の範囲である。当該領域は、斜めに最も近い点又は90%の特異性での感度のようなプロットの特定の部分にのみ依拠せず、プロット全体に依拠する。このことあは、ROCプロットが完全なもの(領域 = 1.0)にどのくらい近づくかの、定量的な記載である。
【0143】
FEN1の測定と、CYFRA 21-1又はCEAのような他のマーカーとの組合せ、又は未だ発見されていない癌マーカーとの組合せは、それぞれ、癌の評価における更なる改善をもたらし、もたらすことになる。
【0144】
好ましい実施態様では、本発明は、少なくともFEN1、及びCEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他の腫瘍マーカーの濃度をそれぞれサンプル中で測定し、並びに測定された濃度を癌の存在又は非存在と相関付けることによって、癌-対-健常対照のための診断精度を改善するための方法であって、単独で検査された任意の単一のマーカーに基づく分類に比べて、癌に罹患していると正確に分類される多数の患者-対-健常対照をもたらす、方法に関する。
【0145】
更なる好ましい態様では、本発明は、少なくともFEN1及びCyfra 21-1、場合によりCEA及び/又はNSEのそれぞれの濃度をサンプル中で測定し、並びに測定された濃度を癌の存在又は非存在と相関付けることによって、癌-対-健常対照のための診断精度を改善するための方法であって、単独で検査された任意の単一のマーカーに基づく分類に比べて、癌に罹患していると正確に分類される多数の患者-対-健常対照をもたらす、方法に関する。
【0146】
以下の実施例、図面及び配列表は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は、添付のクレームに記載されている。変更は、本発明の趣旨を逸脱することなく記載された手段でなされることを理解されたい。
【実施例】
【0147】
実施例 1
肺癌の潜在的マーカーとしてのFEN1の同定
組織源:
肺癌のための潜在的な診断マーカーとしての腫瘍特異的タンパク質を同定するために、プロテオミクス法を用いて2つの異なった種類の組織の分析を行った。
【0148】
合計で、肺癌(LC)に罹患した20人の患者由来の組織標本を分析した。各患者から、治療上の切除:腫瘍組織((>80%腫瘍)及び隣接する健常組織(N)から2つの異なった組織の種類を回収した。後者は合致した健常対照サンプルとして働いた。組織は、切除後直ぐに冷凍し、処理前に-80℃で保存した。腫瘍は組織病理学的基準によって診断した。
【0149】
組織調製:
0.8〜1.2 gの冷凍組織を小片に切断し、ミキサボールミルの冷えた研磨ジャーに移し、液体窒素で完全に冷凍した。組織をボールミル中で粉砕し、溶解バッファ (4O mM Na-クエン酸, 5 mM MgCl2, 1% Genapol X-080, 0.02% Na-アジド, Complete(登録商標)EDTA-無し [Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, Cat. No. 1 873 580]) の10倍体積(w/v)に溶解し、次いで、Wheaton(登録商標)ガラスホモジナイザ(20 x ルーズフィッティング, 20 x タイトフィッティング)でホモジナイズした。ホモジネートを遠心(5,000 x gで10')に供し、上清を別のバイアルに移し、再度、遠心に供した(20,000 x gで15')。得られた上清は可溶性タンパク質を含み、更なる分析に使用した。
【0150】
等電点分画法(IEF)及びSDS-PAGE:
IEFについては、3 mlの懸濁液を12 mlのサンプルバッファ (7 M尿素, 2 Mチオ尿素, 2% CHAPS, 0.4% IPGバッファ pH 4〜7, 0.5% DTT) と混合し、1時間インキュベートした。当該サンプルをAmicon(登録商標)Ultra-15装置 (Millipore GmbH, Schwalbach, Germany) で濃縮し、供給者のマニュアルの教示に従って、Bio-Rad(登録商標)タンパク質アッセイ (Cat.No. 500-0006; Bio-Rad Laboratories GmbH, Munchen, Germany) を用いて、タンパク質濃度を決定した。1.5 mgのタンパク質に相当する体積に、サンプルバッファを350 μlの終体積になるように加えた。この溶液を用いて、IPGストリップpH 4〜7 (Amersham Biosciences, Freiburg, Germany) を終夜、再水和した。IEは、を以下:1.) 500 Vまで1分; 2.) 3500 Vまで2時間; 3.) 82 kVhを提供する一定の3500 Vまで22時間、のプロトコールを用いて行った。IEF後に、ストリップを-80℃で保存するか、又はSDS-PAGE用に直接使用した。
【0151】
Tris/HCl, pH 8.8, 30%グリセロール, 2 % SDS)でインキュベートし、還元のためにDDT (15分 + 50 mg DTT/10 ml)、及びアルキル化のためにIAA (15分 + 235 mg ヨードアセトアミド/10 ml) を加えた。ストリップを12.5%のポリアクリルアミドゲルに置き、1 W/ゲルで1時間、その後17 W/ゲルで、電気泳動に供した。次いで、ゲルを固定し (50%メタノール, 10%酢酸塩)、Novex " Colloidal Blue Staining Kit (Invitrogen, Karlsruhe, Germany, Cat No. LC6025, 45-7101) で終夜、染色した。
【0152】
ヒト肺癌のための潜在的マーカーとしてのFEN1の検出:
ProteomeWeaver(登録商標)ソフトウェア (Definiens AG, Germany, Munchen) による画像分析によって各患者を分析した。加えて、ピッキングロボットによってゲルのすべてのスポットを切り出し、スポット中に存在するタンパク質をMALDI-TOF質量分光分析(Ultraflex(商標)Tof/Tof, Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany)によって同定した。各患者について、腫瘍サンプル由来の3つのゲルを隣接する健常組織由来の3つのゲルの各々と比較し、識別的に発現されたタンパク質に対応する異なったスポットについて分析した。FEN1は、10患者の腫瘍サンプル、及び1つの対照サンプルにおいて同定された。この方法によって。タンパク質FEN1は、腫瘍組織において、それぞれ、特異的に発現するか又は強く過剰発現することが分かった。そのため、肺癌の診断において使用するための候補マーカーとしてみなした。以下のFEN1由来のトリプティックペプチドを同定した。
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
実施例 2
癌マーカータンパク質FEN1に対する抗体の作製
肺癌マーカータンパク質FEN1に対するポリクローナル抗体は、免疫検出アッセイ、例えばウエスタンブロッティング又はELISAによってFEN1の他の体液中の、血清及び血漿レベル又は濃度の測定において当該抗体の更なる使用のために作製した。
【0156】
E.コリにおける組換えタンパク質発現:
FEN1に対する抗体を作製するために、組換え抗原をE.コリ中で産生した:したがって、FEN1-コーディング領域は、German Resource Center for Genome Research (RZPD, Berlin, Germany) から得られた完全長cDNAクローンから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。
フォワードプライマー (配列番号3)
5'-cacacacaattgattaaagaggagaaattaactATGAGAGGATCGCATCACCAT
CACCATCACATTGAAGGCCGTGGAATTCAAGGCCTGGCC-S'
(大文字のヌクレオチドをコーディングするMunI-部位に下線を引いた)。
リバースプライマー (配列番号4):
5'-acgtacgtaagcttTCATT ATTTTCCCCTTTT AAACTTC-3' (大文字のヌクレオチドをコーディングするHmdIII-部位に下線を引いた)。
【0157】
フォワードプライマー(MunIクローング及びリボゾーム結合部位に加えて)は、FEN1遺伝子に5'-末端でイン・フレームで融合された、N-末端MRGSHHHHHHIEGRペプチド伸長をコードしている(配列番号2で示される)。MunI/HindIII消化PCR断片をpQE80Lベクター(Qiagen, Hilden, Germany)にライゲートした。次いで、E.コリXL1-ブルーコンピテント細胞を作製されたプラスミドで形質転換した。配列分析後に、E.コリC600コンピテント細胞を、製造者の教示に従ってpQEベクターシリーズのT5-プロモーターの制御下で、IPTG-誘導発現のための作製されたプラスミドで形質転換した。
【0158】
MRGSHHHHHHIEGR-FEN1融合タンパク質の精製のために、1 Lの誘導された一晩細菌培養物は、遠心分離によってペレット化し、細胞ペレットを溶解バッファ(20 mM リン酸ナトリウムバッファ, pH 7.4, 500 mM 塩化カリウム (NaCl))に再懸濁した。細胞を1500バールの圧力を用いてフランス製プレスでつぶした(disupted)。不溶性物質を遠心分離で再ペレット化し(25000 g, 15分, 4℃)、上清をNi-ニトリロ三酢酸 (Ni-NTA) 金属アフィニティクロマトグラフィー適用した:洗浄バッファ(20 mM リン酸ナトリウムバッファ, pH 7.4, 500 mM NaCl, 20 mMイミダゾール)の数回のベッド体積でカラムを洗浄した。最終的に、20 mM〜500 mMイミダゾールの直線グラジエントで洗浄バッファを用いて、結合された抗原を溶出し、抗原含有分画(各々7 mL each)を、UV-検出器でO.D.280で同定した。抗原含有分画をプールし、保存バッファ(75 mM HEPES, pH 7.5, 100 mM NaCl, 1 mM EDTA, 6.5 % (w/v) サッカロース)で透析し、4℃又は-80℃でそれぞれ保存した。
【0159】
免疫化のためのペプチド免疫原の作製:
FEN1に特異的なポリクローナル抗体を作製するために、他の公知のヒトタンパク質に優位なホモロジーを示さないペプチド配列を同定した。FEN1のアミノ酸配列は、ソフトウェアBlastを用いてSwiss Institute of Bioinformaticsにアクセス可能なヒトタンパク質のデータバンクに対して行った。アミノ酸配列260〜273は、他のヒトタンパク質に優位なホモロジーを示さない、そのため、FEN1特異的抗体を作製するように選択した。各々の配列は合成し、KLH (=キーホールリンペットヘモシニアン) に化学的に複合化して、免疫化のための免疫原を得た。
【0160】
ポリクローナル抗体の作製:
a) 免疫化
免疫化のために、タンパク質溶液の新鮮エマルジョン(100 μg/mlタンパク質FEN1、又は500 μg/mlのFEN1アミノ酸260〜273由来のペプチドと結合したKLH)及び1:1の割合の完全フロイントアジュバントが、好ましい。ウサギをそれぞれ、1、7、14、30、60及び90日目に1 mlのエマルジョンで免疫化した。血液を採取し、実施例3及び4に記載の更なる実験のために得られた抗-FEN1血清を使用した。
【0161】
b) カプリル酸及び硫酸アンモニウムによる結果として起こる沈殿によるウサギ血清からのIgG (免疫グロブリンG) の精製
ウサギ血清の1体積を酢酸塩バッファの4体積 (60 mM, pH 4.0) で希釈した。2 M Tris-塩基で4.5にpHを調整した。激しく攪拌しながら、カプリル酸 (希釈サンプルの25 μl/ml) を滴下した。30分後、サンプルを遠心分離し (13 000 x g, 30分, 4℃)、ペレットを廃棄し、上清を回収した。上清のpHを2 M Tris-塩基の添加によって7.5に調整し、濾過した (0.2 μm)。
【0162】
激しく攪拌しながら、4 M硫酸ナトリウム水溶液を2 Mの終濃度になるように滴下することによって、上清中の免疫グロブリンを沈殿させた。沈殿した免疫グロブリンは塩shン分離によって回収した (8000 x g, 15分, 4℃)。
【0163】
上清を廃棄した。ペレットを10 mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 3O mM NaClに溶解し、徹底的に透析した。透析物を遠心分離した(13 000 x g, 15分, 4℃)、濾過した(0.2 μm)。
【0164】
ポリクローナルウサギIgGのビオチン化:
ポリクローナルウサギIgGを10 mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 30 mM NaClに10 mg/mlで加えた。IgG溶液1 mlにつき、50 μlのビオチン-N-ヒドロキシコハク酸イミド (DMSO中3.6 mg/ml) を加えた。室温で30分後、サンプルをSuperdex 200 (1O mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 3O mM NaCl) のクロマトグラフィーに付した。ビオチン化IgGを含む分画を集めた。モノクローナル抗体を同一の手段に従ってビオチン化した。
【0165】
ポリクローナルウサギIgGのジゴキシゲニン化:
ポリクローナルウサギIgGを10 mM NaH2PO4/NaOH, 30 mM NaCl, pH 7.5に10 mg/mlで加えた。IgG溶液1 mlにつき、50 μlのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル (Roche Diagnostics, Mannheim, Germany, Cat. No. 1 333 054) (DMSO中3.8 mg/ml) を加えた。室温で30分後、サンプルをSuperdex 200 (1O mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 3O mM NaCl) のクロマトグラフィーに付した。ジゴキシゲニル化IgGを含む分画を集めた。モノクローナル抗体を同一の手段に従ってジゴキシゲニンで標識した。
【0166】
実施例 3
実施例2で作製したポリクローナル抗体を用いてヒト肺癌(LC)組織におけるFEN1の検出のためのウエスタンブロッティング
実施例1の「組織調製」に記載のようにして、腫瘍サンプル及び健常対照由来の組織溶解物を調製した。
【0167】
Invitrogen, Karlsruhe, ドイツの試薬及び器具を用いて、SDS-PAGE及びウェスタン-ブロッティングを行った。試験した各々の組織サンプルについて、15 μgの組織溶解物を還元性NuP AGE(登録商標)(Invitrogen) SDSサンプルバッファで希釈し、95℃で10分間加熱した。サンプルは、MESランニングバッファ系で、4-12% NuP AGE(登録商標)ゲル (Tris-グリシン) 上で動かした。ゲル分離タンパク質混合物は、Invitrogen XCeIl II(商標)Blot Module (Invitrogen) 及びNuP AGE(登録商標)転移バッファ系を用いて、ニトロセルロース膜上にブロットした。膜をPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄し、Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファ (A151.1; Carl Roth GmbH, Karlsruhe, Germany) で2時間ブロックした。第1抗体、ポリクローナルウサギ抗-FEN1血清(実施例2に記載された作製)は、Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファで1: 10,000に希釈し、当該膜で1時間インキュベートした。当該膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄した。特異的に結合した第1ウサギ抗体は、POD-コンジュゲートポリクローナルヒツジ抗-ウサギIgG抗体で標識し、0.5 x Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファで10 mU/mlに希釈した。1時間インキュベーション後に、当該膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄した。結合したPOD-コンジュゲート抗-ウサギ抗体の検出のために、当該膜をLumi-LightPLUS ウェスタンブロッティング基質 (注文番号2015196, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany) でインキュベートし、オートラジオグラフフィルムに曝露した。
【0168】
20人の異なったLC患者から得られた20つの腫瘍組織の内、19個において、FEN1のシグナル強度は増加した(図1)。したがって、実施例1のMALDIによって検出した腫瘍組織中のFEN1の増加量は、ウエスタンブロッティング分析によって明確に確認した。
【0169】
実施例 4
ヒト血清及び血漿サンプル又は他の体液中のFEN1の測定のためのELISA
ヒト血清又は血漿中のFEN1の検出のために、実施例2の抗体を用いてサンドイッチELISAを開発した。抗原の捕獲のために、ペプチド398〜413に対する抗体をビオチンで複合化し、一方、FEN1完全長配列に対する抗体はジゴキシゲンで複合化した。
【0170】
アッセイHT-29細胞の校正のために、米国国立癌研究所のNCI60腫瘍細胞株に含まれるヒト結腸癌細胞株を増殖させ、その細胞の溶解物を校正に使用した。10.0 mg/mlの溶解物を40 μg/mlに希釈し、100 U/mlに任意に設定した。
【0171】
患者由来の標準的な抗原又は血清/血漿/ELFサンプルとしての50 μlのHT-29溶解物の段階希釈物は、1,25 μg/mlビオチン化抗-FEN1、aa 260〜273及び2.5 μg/mlジゴキシニル化抗FEN-1抗体をそれぞれ含む10 mMリン酸塩, pH 7.4, 1% BSA, 0,9% NaCl及び0.1% Tween 20中で、200 μlの抗体混合物で終夜インキュベートした。次いで、100 μlアリコートをストレプトアビジン-コート96-ウェルマイクロタイタープレートに移し、周囲温度で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、プレートを0.9% NaCl, 0.1% Tween 20で、3回洗浄した。次のステップで、ウェルを100 mU/ml抗-ジゴキシゲニン-PODコン油ゲート (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号1633716) で、10 mMリン酸塩, pH 7.4, 1% BSA, 0,9% NaCl及び0.1% Tween 20中で、60分間インキュベートした。次いで、プレートを同一のバッファで3回洗浄した。抗原-抗体複合体の検出のために、ウェルを100 μl TMB溶液 (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号11484281001) でインキュベートし、60分後にODをELISAリーダーで450 nmで測定した。
【0172】
実施例 5
ヒト肺癌(LC)のための血清マーカーとしてのFEN1
表3で示されるUICC分類で365のよく特徴付けられた肺癌患者からのサンプル(146個の腺癌, 87個の扁平上皮細胞CA, 44個の小細胞CA, 88個の他の肺のCA)使用した。
【0173】
【表4】
【0174】
表3のLCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.87であった(図2)。
【0175】
実施例 6
ヒト頭頸部癌(H/NC)のための血清マーカーとしてのFEN1
表4で示されるUICC分類で30のよく特徴付けられた頭頸部癌患者からのサンプルを使用した。
【0176】
【表5】
【0177】
表6のH/NLサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.92であった(図3)。
【0178】
実施例 7
ヒト子宮内膜癌(EC)のための血清マーカーとしてFEN1
表5で示されるUICC分類で23個のよく特徴付けられた子宮内膜癌患者からのサンプルを使用した。
【0179】
【表6】
【0180】
表6のECサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.92であった(図4)。
【0181】
実施例 8
ヒト卵巣癌(OC)のために血清マーカーとしてのFEN1
表6で示されるUICC分類で42個のよく特徴付けられた卵巣癌(OC)患者からのサンプルを使用した。
【0182】
【表7】
【0183】
表6のOCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.79であった(図5)。
【0184】
実施例 9
ヒト悪性黒色腫(MM)のための血清マーカーとしてFEN1
表7で示されるUICC分類で16個のよく特徴付けられた悪性黒色腫患者からのサンプルを使用した。
【0185】
【表8】
【0186】
表6のMMサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.95であった(図6)。
【0187】
実施例 10
ヒト乳癌(BC)のための血清マーカーとしてFEN1
表8で示されるUICC分類で47個のよく特徴付けられた乳癌患者からのサンプルを使用した。
【0188】
【表9】
【0189】
表5のBCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.79であった(図7)。
【0190】
実施例 11
ヒト子宮癌(CC)のための血清マーカーとしてFEN1
表9で示されるUICC分類で20個のよく特徴付けられた子宮癌患者からのサンプルを使用した。
【0191】
【表10】
【0192】
表6のOCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.88であった(図8)。
【0193】
実施例 12
ヒト膵臓癌(PAC)のための血清マーカーとしてFEN1
表10で示されるUICC分類で49個のよく特徴付けられた膵臓癌患者からのサンプルを使用した。
【0194】
【表11】
【0195】
表6のPACサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.84であった(図9)。
【0196】
実施例 13
ヒト結腸癌(CRC)のための血清マーカーとしてFEN1
表11で示されるUICC分類で50個のよく特徴付けられた結腸癌患者からのサンプルを使用した。
【0197】
【表12】
【0198】
表4のCRCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.79であった(図10)。
【0199】
実施例 14
ヒト膀胱癌(BLC)のための血清マーカーとしてFEN1
表12で示されるUICC分類で50個のよく特徴付けられた膀胱癌患者からのサンプルを使用した。
【0200】
【表13】
【0201】
表6のPCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.76であった(図11)。
【0202】
実施例 15
ヒト腎臓癌(KC)のための血清マーカーとしてFEN1
表13で示されるUICC分類で25個のよく特徴付けられた腎臓癌患者からのサンプルを使用した。
【0203】
【表14】
【0204】
表6のKCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.65であった(図12)。
【0205】
実施例 16
ヒト前立腺癌(PC)のための血清マーカーとしてFEN1
表14で示されるUICC分類で50個のよく特徴付けられた前立腺癌患者からのサンプルを使用した。
【0206】
【表15】
【0207】
表6のPCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.73であった(図13)。
【0208】
実施例 17
気管支肺胞分泌液(ELF)中のFEN1−気管支鏡検査マイクロサンプリング
気管支鏡検査マイクロサンプリング(BMS)は、主として非侵襲的方法で小肺結節の近くの気管支肺胞分泌液(ELF)を回収する可能性を与える。次いで、悪性小結節を同定するためにELF中の腫瘍マーカーの濃度を測定することができる。各々の腫瘍マーカーの患者特異的ベースライン濃度は、対側性の肺においてELFをサンプリングすることによって得た。
【0209】
BMSプローブ (Olympus Medical Systems Corp. Tokyo, Japan, Cat.-No.: BC-402C) は気管支鏡検査法によって肺に挿入し、それは、外側のポリエチレン包皮及びステンレス鋼指針に結合した内側の綿プローブとから成る。内側のプローブは、小結節の近傍に進み、BMSは数秒間行った。その後、内側プローブを外側包皮に引き下げ、2つの装置を同時に引き下げた。綿の先端を切断し、-80℃で直接冷凍した。測定のために、ELFは綿の先端から溶出し、次いで分析することができた。FEN1の濃度は、実施例4に記載されたELISAを用いてELF中で測定した。
【配列表フリーテキスト】
【0210】
配列の説明
配列番号1は、図14に従うヒトFEN1タンパク質のアミノ酸を示す;SwissProtデータべースアクセッション番号:P39748。
配列番号2は、合成されたペプチド伸長を示す。
配列番号3は、合成されたフォワードプライマーを示す。
配列番号4は、合成されたリバースプライマーを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、
癌の評価を補助する方法に関する。本発明は、異なった癌種の一般的マーカーとしてのフラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(= FEN1)の使用を開示する。更に、本発明は、特に、個体由来の液体サンプル中のFEN1を測定することによって、前記サンプル由来の癌を評価する方法に関する。FEN1の評価は、例えば、癌の早期検出又は外科手術を経験する患者の監視において使用される。
【背景技術】
【0002】
癌は、検出及び治療法の進歩にもかかわらず、主な公衆衛生上の難問を残している。癌細胞は、癌関連マーカータンパク質の産生によって特徴付けられる。癌関連タンパク質は、癌細胞を有する個体の組織及び体液中で見出される。そのレベルは、通常、癌性進行の初期ステージにおいては低く、疾患の進行中に増加し、極稀には、タンパク質は、疾患の進行過程で減少したレベルを示すことが観察されている。これらのタンパク質の感受性検出は、特に癌の初期ステージ診断では、癌の診断のための有利かつ有望な方法である。最も一般的な癌種は、乳癌(BC)、肺癌(LC)及び直腸癌(CRC)である。
【0003】
固形癌の最も重要な治療的方法は、以下である:
a) 腫瘍の外科的切除、
b) 化学療法、
c) 放射線療法、
d) 抗腫瘍抗体又は抗血管由来抗体のような生物学的製剤による治療、及び
e) 上記方法の組合せ。
【0004】
腫瘍の外科的切除は、初期ステージの固形癌のための第1線治療として広く受け入れられている。しかしながら、ほとんどの癌は、症状が出る時、すなわち、患者が既に疾患の進行のかなり遅いステージである時にのみに検出される。癌のステージ分類は、程度、進行及び重度の点からの疾患の分類である。それは、予後及び治療法の選択について一般化されるように癌患者をグループ化する。
【0005】
DukeのステージA〜Dに従って分類されるために使用されたCRCの異なったステージ。今日、TNM系は、最も広く使用されている癌の解剖学的程度の分類である。それは、国際的に受け入れられている、一貫したなステージ分類系を示す。3つの基本的変数がある:T (原発腫瘍の程度)、N (局部的リンパ節の状態) 及びM (遠隔転移の存在又は非存在)。TNM基準は、UICC (International Union Against Cancer)、Sobin, L.H., Wittekind, Ch. (著)、TNM Classification of Malignant Tumours, 第6版 (2002)) によって発行されている。TNM状態が一旦決定されると、患者は、型I〜IVの範囲のローマ数字によって表される疾患ステージにグループ分けされ、IVは最も進行した疾患ステージである。TNMステージ分類及びUICC疾患ステージは、Sobin及びWittekind (著)、前掲からの以下の表に示されるように互いに一致する。
【0006】
【表1】
【0007】
特に重要なことは、癌例えばCRCの早期診断がより良好な予後に移ることである。CRCでは、結腸の悪性腫瘍は、良性腫瘍、すなわち腺腫から起こる。従って、最良の予後は、腺腫ステージで診断された患者を有する。ステージTis、N0、M0又はT1-3;N0;M0で初期であると診断された患者は、適正に治療されれば、遠隔転移が既に存在する時に診断された患者について5年生存率がわずか10%であるのに比べて、診断後に90%超の5年生存の機会を有する。
【0008】
X-線又は核共鳴画像のような画像化法を含む現在の検出方法は、理論上は、一般的なスクリーニングツールとしての使用のためには少なくとも部分的には好適であるかもしれない。しかしながら、それらは、多数の対象、特に任意の腫瘍症状を有さない対象のマススクリーニングでの一般的及び広範な使用のためのヘルスケア装置には、非常に高価であり、手頃な価格ではない。
【0009】
従って、腫瘍評価の簡便かつコスト効率のよい手段を提供すること、例えば、癌を有する疑いのある個体を特定することは、本発明の目的である。この目的のため、体液中で検出できる一般的な腫瘍マーカー、例えば血液又は血清又は血漿又はかかるマーカーのパネルが望ましい。
【0010】
多数の血清腫瘍マーカーは、既に臨床的使用にある。例えば、サイトケラチン19 (CYFRA 21-1) の溶解性30 kDa断片、神経特異的エノラーゼ (NSE)、及び扁平上皮癌抗原 (SCC) は、最も重要なLCマーカーである。しかしながら、それらのいずれも、スクリーニングツールのために必要とされる感度及び特異性の基準を満たさない (Thomas, L., Labor und Diagnose, TH Books Verlagsgesellschaft, Frankfurt/Main, Germany (2000))。
【0011】
臨床的有用性であるために、単一のマーカーとしての新規診断マーカーは、当該分野で知られている他のマーカーに匹敵するかあるいはそれよりも優れていなければならない。あるいは、新規マーカーは、それが単独で使用されるか又は1以上の他のマーカーと組み合わせて使用されるかのいずれかの場合に、診断的感度及び/又は特異性における進歩をもたらさなければならない。試験の診断的感度及び/又は感受性は、その受信者操作特性によって最もよく評価され、これは以下に詳述する。
【0012】
全血、血清又は血漿は、臨床的日常業務において最も幅広く使用されるサンプル源である。信頼できる癌検出を助けるかあるいは早期診断情報を提供するだろう早期癌マーカーの特定は、この疾患の診断及び管理においておおいに助けるだろう方法をもたらした。そのため、癌のインビトロ評価を改善するために緊急臨床的要求が存在する。生存の機会について早期に診断された患者については、疾患の進行したステージにあると診断された患者と比べて、非常に高いので、癌の早期診断を改善することは特に重要である。
【0013】
肺癌の生化学的マーカーの臨床的有用性は、近年、再検討されている (Duffy, M.J., Crit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38 (2001) 225-262)。
【0014】
マーカープロファイル及び肺癌の改善された診断を目的とすることに関して、CYFRA 21-1、NSE、及び一般的な炎症性マーカーであるC-反応性タンパク質 (CRP) の血清レベルを組み合わせるファジー理論型分類アルゴリズムを用いる方法が公表された (Schneider, J. et al., Int. J. Clin. Oncol. 7 (2002) 145-151)。著者は、95%の特異性で92%の感度を報告している。しかしながら、この試験において、例えば単一腫瘍マーカーとしてのCYFRA 21-1の感度は、95%の特異性で72%であると報告されている、これは多くの他の報告された研究に比べて顕著に高い。Duffy, M.J., in Grit. Rev. Clin. Lab. Sci. 38 (2001) 225-262は、46%〜61%の感度を報告している。Schneider他によって達成されたこの異例の高い能力は、ある疑問をもたらし、いくつかの事実に起因していることがある。先ず、対照患者の集合体は、患者集合体よりも若いようである、すなわち、当該群は年齢がうまく合致しておらず、患者集合体は多くの遅いステージを含む。第二に及びより重要なことには、アルゴリズムの能力は、ファジー理論修飾子の決定のために使用されたトレーニングセットのサンプルでチェックされる。従って、これらの修飾子は、厳密に言えば、このセットのために「テーラーメイド」され、独立した検証セットに適用されない。通常の環境下では、よりおきな、独立したかつよくバランスのとれた検証に適用された同一のアルゴリズムが、顕著に減少した全体的能力をもたらすことになることが予想されるべきである。
【0015】
癌疾患を評価する点で使用することができる生化学的マーカーが特定することができるか否かを研究することが本発明の目的であった。特に、本発明の発明者らは、一般的な生化学的マーカーが体液中の癌の評価のために特定することができるか否かを研究した。本発明において、特に、子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌又は非小細胞肺癌の評価のための生化学的マーカーの特定が研究された。
【0016】
驚くべきことに、フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質 (= FENl) が、当該分野の技術において現在知られているマーカーの問題のいくつかを少なくとも部分的に解消することができる、ことが見出されている。
【0017】
驚くべきことに、試験サンプル中のFEN1の増加した濃度が癌の発生と関連することが見出されている。FEN1は単一種の癌に特異的であるマーカーであるが、異なった種類の癌のマーカー、すなわち一般的な腫瘍マーカーではないことが明らかになっている。FEN1が腫瘍形成プロセスにむしろ特定的であるように見えるため、新規腫瘍マーカーFEN1は、様々な種類の腫瘍種について臨床的有用性を有する大きな潜在力を有する。
【0018】
驚くべきことに、サンプル及び/又は体液中のFEN1の濃度の決定は、癌、例えば、子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌又は非小細胞肺癌の評価を可能にする、ことが本発明において見出された。更に驚くべきことに、サンプル及び/又は体液中のFEN1又はその断片の、正常対照に比べて増加した濃度は、癌のリスク又は発生の指標である、ことが見出された。
【0019】
本発明は、免疫学的検出方法によってFEN1の濃度をサンプル中で測定することを含む、インビトロで癌を評価し、及び、癌の評価において、測定された結果、特に決定された濃度を用いることを含む、癌を評価するための方法に関する。
【発明の概要】
【0020】
発明の概要
1つの実施態様において、本発明は、インビトロで癌を評価するための方法であって、体液サンプル中の(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(= FEN1)及び/又はその断片、(b)場合により1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、及び(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、を含む、方法に関する。
【0021】
更に、本発明は、癌の評価におけるFEN1の使用に関する。
【0022】
更に、本発明は、癌の評価におけるFEN1に対する抗体の組合せの使用であって、FEN1の増加した濃度は癌の指標である、使用に関する。
【0023】
更に、本発明は、癌の評価におけるFEN1及び場合により癌の1以上の他のマーカーを含むマーカーパネルの使用であって、FEN1の増加した濃度は癌の指標である、使用を開示する。
【0024】
更に、本発明は、体液サンプル中の(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(FEN1)及び/又はその断片、(b)場合により1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、及び(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、を含む、インビトロで癌を評価するための方法を実施するためのキットであって、FEN1を特異的に測定するために必要とされる試薬、及び場合により1以上の他の癌マーカーを特異的に測定するために必要とされる試薬を含む、キットに関する。
【0025】
驚くべきことに、試験サンプル中のFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の発生に関連することが見出された。FEN1が単一の種類の癌に特異的でないマーカーであるが、異なった種類の癌のマーカー、すなわち一般的な腫瘍マーカーでないことが明らかにされた。FEN1が腫瘍形成プロセスにむしろ特異的であるように見えるので、新規腫瘍マーカーFEN1は、様々な種類の腫瘍種について臨床的有用性を有する大きな潜在力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、20の肺癌組織溶解物のウェスタンブロット分析を示す。15 μgの総タンパク質癌 (CA) 組織溶解物、及び適合した対照組織溶解物は、実施例3に記載のように分析した。M = 分子量マーカー; T = 腫瘍組織溶解物; N = 適合した対照組織溶解物; rec ag = 組換え的に産生されたフラップエンドヌクレアーゼ-1 (= FEN1); 矢印はFEN1の位置を示す。
【図2】図2は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト肺癌(LC)を有する患者から得られた365サンプルの評価のための0.87のAUCを有するLCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図3】図3は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト頭頸部癌(H/NC)を有する患者から得られた30サンプルの評価のための0.92のAUCを有するH/NCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図4】図4は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト子宮内膜癌(EC)を有する患者から得られた23サンプルの評価のための0.92のAUCを有するECにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図5】図5は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト卵巣癌(OC)を有する患者から得られた41サンプルの評価のための0.79のAUCを有するOCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図6】図6は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト悪性黒色腫(MM)を有する患者から得られた16サンプルの評価のための0.95のAUCを有するMMにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図7】図7は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト乳癌(BC)を有する患者から得られた47サンプルの評価のための0.79のAUCを有するBCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図8】図8は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト子宮癌(CC)を有する患者から得られた20サンプルの評価のための0.88のAUCを有するCCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図9】図9は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト膵臓癌(PAC9)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.84のAUCを有するPACにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図10】図10は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト結腸癌(CRC)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.79のAUCを有するCRCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図11】図11は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト膀胱癌(BLC)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.76のAUCを有するBLCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図12】図12は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト腎臓癌(KC)を有する患者から得られた25サンプルの評価のための0.65のAUCを有するKCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図13】図13は、明らかに健常の個体から得られた50の対照サンプルと比べた、ヒト前立腺癌(PC)を有する患者から得られた50サンプルの評価のための0.73のAUCを有するPCにおけるFEN1の受信者動作特性のプロット(ROC-プロット)を示す。
【図14】図14は、ヒトFEN1タンパク質; SwissProtデータベース受託番号: P39748(配列番号1)のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
好ましい実施態様において、本発明は、サンプル中のFEN1及び/又はその断片を測定し、及び癌の測定において測定された結果、特に決定された濃度を用いることを含む、インビトロで癌を評価するための方法に関する。
【0028】
別の好ましい実施態様では、本発明は、インビトロで癌を評価するための方法であって、体液サンプル中の(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(FEN1)及び/又はその断片、(b)場合により1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、及び(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、を含む、方法に関する。
【0029】
本発明の方法は、多くの異なった種類の癌の評価に好適である。サンプル中のFEN1タンパク質及び/又は断片の、正常対照と比較して増加した濃度は、例えば、それぞれ、子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌又は非小細胞肺癌のような特定の癌種において見出されている。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、インビトロで癌を評価するために、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度はサンプル中で測定される。
【0031】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/その断片の濃度は、特定の癌種、例えば子宮内膜癌(EC)、悪性黒色腫(MM)、子宮癌(CC)、頭頸部癌(H/NC)、卵巣癌(OC)、結腸癌(CRC)、膀胱癌(BLC)、膵臓癌(PAC)、乳癌(BC)、小細胞肺癌(SCLC)、前立腺癌(PC)、腎臓癌(KC)又は非小細胞肺癌(NSCLC)をインビトロで評価するために、サンプル中で測定される。
【0032】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば子宮内膜癌(EC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0033】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば悪性黒色腫(MM)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0034】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば子宮癌(CC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0035】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば頭頸部癌(H/NC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0036】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば卵巣癌(OC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0037】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば結腸癌(CRC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0038】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば膀胱癌(BLC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0039】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば膵臓癌(PAC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0040】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば乳癌(BC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0041】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば小細胞肺癌(SCLC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0042】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば前立腺癌(PC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0043】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば腎臓癌(KC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度は、癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)をインビトロで評価するためにサンプル中で測定される。
【0045】
本発明の1つの実施態様は、本発明は、おそらく癌のない個体と「疑わしい」ケースと分類され得る個体とを識別するための、集団のマススクリーニングを言う。個体の後者のグループは、次いで、例えば画像化法又は他の好適な手段によって更なる診断手段に供される。
【0046】
本発明の更なる実施態様は、一般的に癌の診断に好適である腫瘍マーカーパネル又は特定の腫瘍種の診断に好適である腫瘍マーカーパネルの改善を言う。
【0047】
CYFRA 21-1は、現在、今日知られている肺癌の腫瘍マーカーのベストであると理解されている。臓器特異的でないとしても、それは肺組織に優先的に見出される。肺癌のためのCYFRA 21-1の感度は、他の良性の肺疾患に関して95%の特異性で46〜61%であると記載されている。
【0048】
CYFRA 21-1の増加した血清レベルは、目立った良性肝臓疾患、腎臓不全及び侵襲膀胱癌とも関連している。CYFRA 21-1試験は、手術後の治療観察のために推奨される。
【0049】
CEAは、通常、胚形成中に産生される発癌性抗原の群に属する。CEAは、臓器特異的でなく、結腸癌の監視のために優先的に使用される。悪性腫瘍に加えて、いくつかの良性疾患、例えば肝硬変、気管支炎、膵臓炎及び自己免疫疾患は、増加したCEA血清レベルに関連している。良性肺疾患に関する95%の特異性で、肺癌に対するその感度は、29〜44%であると報告されている。CEAの主な使用は、結腸癌を、特にその疾患が転移した時に、監視することにある。しかしながら、様々な癌は、乳癌を含み、CEAの高いレベルを生成ことがある。CEAの好ましい使用は、肺癌の治療観察である。
【0050】
NSEは、SCLCの腫瘍マーカーである。一般的に、増加したNSE血清レベルは、神経管外胚葉及び神経内分泌の腫瘍と関連することが分かっている。増加した血清レベルは、良性肺疾患及び脳疾患、例えば髄膜炎又は他の脳の炎症性疾患、及び頭部に対する外傷を有する患者にも見出されている。95%の特異性でのSCLCに対する感度は60〜87%であるが、NSCLCを試験するNSEの能力は低い(7〜25%)。NSEは、SCLCの治療観察のために推奨されている。
【0051】
糖脂質上のCA 19-9 (糖鎖抗原19-9)、シアリル化ルイス(複数)抗原は、胃腸癌の腫瘍マーカーである。それは、胎児の胃、腸及び膵臓上皮で起こる。低濃度は、肝臓、肺及び膵臓の成人組織でも見出される。腫瘍量とCA 19-9アッセイ値との間には関連はない。そのため、CA 19-9の決定は、膵臓癌の早期検出のために使用することができない。ムチンは肝臓によって専ら排出されるので、場合によっては僅かな胆汁鬱滞でさえも明らかに高いCA 19-9血清レベルを導くことができる。マーカーは、膵臓癌であると確認された患者において疾患状態の監視を助けるものとして主に使用される(感度70〜87%)。その集団の3〜7%は、ルイスa-陰性/b-陰性血液型構造を有し、反応決定因子CA 19-9を有するムチンを発現することができない。このことは、その発見を解釈する時に考慮されなければならない。
【0052】
CA 125は、上皮起源の高い割合のムチン性卵巣腫瘍で見られ、血清中で検出することができる。卵巣腫瘍は、婦人科腫瘍の約20%の原因である。最も高いCA 125値は、卵巣腫瘍に罹患した患者において起こるが、明らかに高い値はまた、子宮内膜、乳房、胃腸管の悪性腫瘍、及び様々な他の悪性腫瘍において観察される。高い値は、時には、様々な良性の婦人科疾患、例えば卵巣嚢腫、卵巣化生、子宮内膜症、筋腫性子宮又は子宮頸管炎において見られる。このマーカーの僅かな上昇は、妊娠初期及び様々な良性疾患(例えば、急性及び慢性膵炎、良性胃腸疾患、腎不全、自己免疫疾患及びその他)においも起こることがある(例えば、急性及び慢性膵炎、良性胃腸疾患、腎不全、自己免疫疾患及びその他)。顕著に高いレベルは、良性の肝臓疾患、例えば肝硬変及び肝炎において見出されている。極度の上昇は、悪性及び良性疾患に起因する任意の種類の腹水症において起こり得る。CA 125は比較的非特異的マーカーであるが、今日、それは、重大な卵巣腫瘍を有する患者の治療及び進行を監視するための最も重要な腫瘍マーカーである。69〜79%の感度は、82〜93%の特異性について報告されている。
【0053】
PSA(「前立腺関連抗原」)は、血液検査において使用される一般的に試験される腫瘍マーカーである。PSAは、高い組織特異性を有しているように見える;糖タンパク質は、正常な前立腺上皮組織及び分泌物において見出されるが、他の組織において見出されない。PSAは、前立腺癌の存在に高度に感受性である。当該上昇は、ステージ及び腫瘍体積と相関した。それは、再発及び治療への反応の指標である。最後に、抗原は患者において予後数値を有し、外科手術の前の非常に高値は再発の可能性がある。
【0054】
NNMT(ニコチンアミド N-メチルトランスフェラーゼ; Swiss-PROT: P40261)は、29.6 kDaの見掛け分子量、及び5.56の等電点を有する。NNMTは、ニコチンアミド及び他のピリジンのN-メチル化を触媒する。この活性は、多くの薬物及び生物異体化合物の生体内変換のために重要である。このタンパク質は、肝臓に主に発現されると報告されており、細胞質に局在する。NNMTは、ヒト肝臓由来のcDNAからクローニングし、そして、29.6 kDaの計算された分子量を有する264個のアミノタンパク質をコードする、792つのヌクレオチドのオープンリーディングフレームを含んだ(Aksoy, S. et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 14835-14840)。ヒト癌における当該酵素の潜在的役割についての文献はほとんど知られていない。1つの論文では、増加した肝臓NNMT酵素活性は、マウスにおける癌悪液質のマーカーとして報告された(Okamura, A. et al., Jpn. J. Cancer Res. 89 (1998) 649-656)。近年の報告では、放射線感受性細胞株における放射線に反応したNNMT遺伝子のダウンレジュレーションが証明された(Kassem, H. et al., Int. J. Cancer 101 (2002) 454-460)。NNMTがCRCの評価において興味深いことは最近見出された(WO 2004/057336)。ProGRPは、SCLCの検出及び監視において有用な腫瘍マーカーである。増加した血清レベルはまた、非悪性肺/胸膜疾患、例えば特発性肺線維症又はサルコイドーシスを有する患者において見出されている。SCLC(95%の特異性で)の分野でproGRPに対する感受性は、47〜86%であると報告されているが、NSCLCの分野でのproGRP試験の能力は、感受性が10%未満であると報告されているので低い。
【0055】
SCCは、子宮頚管の扁平上皮細胞CAにおいて最初に同定された。一般的にLCのためのSCCの感度は低い(18〜27%)。そのため、SCC試験は、スクリーングのために好適ではないと理解されている。しかしながら、扁平上皮細胞CAについてのより高い感度に起因して、CYFRA 21-1が一般的により優れているとしても、SCCのための好ましい使用は、治療観察である。
【0056】
p53(TP53, 細胞腫瘍抗原p53, 腫瘍抑制因子p53、又はリンタンパク質p53)は、細胞成長捕獲又はアポートーシスを誘導する転写因子である(Appella, E. et al., Pathol. Biol. 48 (2000) 227-245)。p53は、多くの腫瘍種において腫瘍抑制因子として働き、その遺伝子において変異を不活性化することは、ヒトでの癌の進行を促進する最も一般的な遺伝的事象である(Olivier, M. and Petitjean, A., Cancer Gene Ther. 1 (2009) 1-12; Petitjean, A. et al., Oncogene 26 (2007) 2157-2165を参照)。p53変異は、結腸癌の40〜50%で観察され、腫瘍攻撃性と関連する(Soussi T., Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。p53遺伝子の変異は、タンパク質機能の妨害をもたらすだけでなく、腫瘍関連抗原(TAA)の発現、自己免疫反応の開始、及び癌患者の血清中の特異的抗-p53自己抗体の産生をもたらす(Zhang, J.Y. et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 12 (2003) 136-143; Soussi T., Cancer Res. 60 (2000) 1777-1788)。
【0057】
ヒト血清における抗-p53自己抗体の検出は、癌の診断及び管理のための新生ツールである。癌種によって、血清中の抗-p53自己抗体の頻度は、17.8%(CRC)〜16.1%(LC)及び7.8%(乳癌)である(Tan, E.M. and Zhang, J., Immunological Reviews 222 (2008) 328-340; Zhang, J.Y. et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 12 (2003) 136-143)。
【0058】
セプラーゼは、繊維芽細胞活性化タンパク質(= FAP)としても知られ、2つの同一の単量体のセプラーゼ単位から成る、ゲラチナーゼ及びジペプチジルペプチダーゼ活性を有する170 kDaの糖タンパク質である(Pineiro-Sanchez, M. L. et al., J. Biol. Chem. 272 (1997) 7595-7601; Park, J.E. et al., J. Biol. Chem. 274 (1999) 36505-36512)。ヒト膜結合セプラーゼタンパク質の単量体は、760個のアミノ酸を含む。ヒトセプラーゼは、繊維芽細胞の細胞質内に第1の4N末端残基を有し、21残基の膜貫通型ドメイン及び734残基の細胞外C-末端触媒ドメインを有すると推測されている(Goldstein, L.A. et al., Biochim Biophys Acta. 1361 (1997) 11-19; Scanlan, MJ. et al., Proc Natl Acad Sci USA 91 (1994) 5657-5661)。ヒトセプラーゼタンパク質のより短い形態は、Swissprotデータベースの受託番号Q12884から、アミノ酸位置26〜760を含む、可溶性セプラーゼ又は循環抗プラスミン開裂酵素(= APCE)として当業者に知られている(Lee, K.N. et al., Blood 103 (2004) 3783-3788; Lee, K.N. et al., Blood 107 (2006) 1397-1404)。可溶性セプラーゼの二量体は、2つの同一の単量体の可溶性セプラーゼタンパク質単位から成る160 kDa糖タンパク質である。Pineiro-Sanchez他(前掲)は、セプラーゼの増加した発現がヒト黒色腫及び腫瘍細胞の侵襲的表現型と相関することを見出した。 Henry, L.R.他, Clin. Cancer Res. 13 (2007) 1736-1741は、高レベルの間質セプラーゼを有するヒト直腸癌患者が攻撃的な疾患進行、及び転移又は再発の潜在的な進行を有する可能性が高いことを記載している。
【0059】
ヒトジペプチジルペプチダーゼIV(= DPPIV)は、CD26としても知られ、110 kDaの細胞表面分子である。ヒトDPPIVタンパク質のアミノ酸配列は、766個のアミノ酸を含む。それは、プロリン又はアラニンを有するペプチドから3番目のアミノ酸位置でN-末端時ペプチドを選択的に除く本質的なジペプチジルペプチダーゼを含む。それは、様々な細胞外分子と相互作用し、細胞内シグナル情報伝達カスケードにも関連する。ヒトDPPIVの多機能活性は、細胞種、及びタンパク質分解酵素、細胞表面受容体、同時刺激相互作用タンパク質及びシグナル情報伝達明細書メディエータとしてのその役割に影響を与える細胞内又は細胞外条件に依拠する。ヒトDPPIVは、アミノ酸位置1〜6由来の短い細胞ドメイン、アミノ酸位置7〜28由来の膜貫通型領域、及び本質的なジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)活性を有するアミノ酸位置29〜766由来の細胞外ドメインを有する。ヒト可溶性ジペプチジルペプチダーゼIV(= 可溶性DPPIV)は、Swissprotデータベースの受託番号P27487由来の、アミノ酸位置29〜766を含む。
【0060】
可溶性DPPIVの二量体は、2つの同一の単量体可溶性DPPIV単位から成る170 kDa糖タンパク質である。可溶性DPPIV/セプラーゼ複合体(= DPPIV/セプラーゼ)は、330 kDaの分子量を有する、可溶性DPPIVホモダイマー(170 kDa)及び可溶性セプラーゼホモダイマー(160 kDa)から形成される可溶性複合体を言う。ある条件下で、この複合体は、660 kDaの分子量を有する二重複合体を形成し得る。
【0061】
本発明はまた、FEN1タンパク質及び/又はその断片及び癌に特異的な1以上の他のマーカーの濃度をサンプル中で測定し、及び測定結果、特に癌の評価で決定された濃度を用いること、を含む、生化学的マーカーによるインビトロで癌を評価するための方法に関する。FEN1と組み合わせた使用のための好ましいマーカーは、一方では、一般的な腫瘍マーカーであるマーカー(すなわち、単一の腫瘍種に特異的でないマーカー)であり、あるいは、一方では、特異的腫瘍マーカー(単一の腫瘍種に特異的なマーカー)である。
【0062】
例えば癌の評価のための好ましいマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ、及び可溶性DPPIV/セプラーゼ複合体(= DPPIV/セプラーゼ)である。これらのマーカーは、単独でそれぞれ、又はFEN1と任意に組み合わせて使用することができる。
【0063】
本発明はまた、サンプル中のFEN1及び1以上の他の癌マーカーを測定し、測定結果、特に癌の評価において測定された濃度を用いること、を含む、生化学的マーカーによってインビトロで癌を評価するための方法に関する。Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカーが選択されることが好ましい。
【0064】
本発明はまた、癌の評価における、少なくともマーカーFEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1つの他の腫瘍マーカー(複数)を含むマーカーパネルの使用に関する。
【0065】
好ましくは、本発明は、サンプル中のFEN1及び/又はその断片及び1以上の他の癌マーカーの濃度を測定し、測定結果、特に癌の評価において測定された濃度を用いること、を含む、生化学的マーカーによってインビトロで癌を評価するための方法に関する。1以上の他のマーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれることが好ましい。
【0066】
本発明はまた、癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片の使用であって、FEN1タンパク質及び/又はその断片の高い濃度が癌の指標である、使用に関する。
【0067】
本発明はまた、インビトロでの癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片の使用であって、サンプルが血清又は血漿、使用に関する。
【0068】
本発明はまた、いくつかの特定の種類の癌、特にEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCの評価におけるFEN1の使用に関する。
【0069】
本発明はまた、いくつかの特定の種類の癌、特にEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC又はBCの評価におけるFEN1の使用に関する。
【0070】
本発明はまた、いくつかの特定の種類の癌、特にEC、MM、CC、H/NC、OC又はCRCの評価におけるFEN1の使用に関する。
【0071】
本発明はまた、癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片に対する抗体の使用であって、FEN1及びその断片の増加した濃度が癌の指標である、使用に関する。好ましくは、FEN1は、サンドイッチ型免疫アッセイ方式(サンドイッチ免疫アッセイ)で検出される。
【0072】
本発明はまた、FEN1タンパク質及び/又はその断片を特異的に測定するために必要とされる少なくとも1つの試薬、及び/又は1以上の癌マーカーを含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。本発明はまた、FEN1タンパク質及び/又はその断片を特異的に測定するために必要とされる少なくとも1つの試薬、及び場合により1以上の癌マーカー、例えば上記のEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCのマーカーを含み、当該他のマーカーはそれぞれ単独でもそれらの任意の組合せで使用してもよい、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
【0073】
本発明はまた、FEN1を特異的に測定するために必要とされる少なくとも試薬、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー(複数)、並びに場合により当該測定を実施するための補助試薬を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。
【0074】
本発明はまた、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー、並びに場合により当該測定を実施するための補助試薬を特異的に測定するための本発明の方法を実施するためのバイオチップアレイを提供する。
【0075】
本発明はまた、癌の評価における、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカーを特異的に測定するための本発明の方法を実施するためのバイオチップアレイを提供する。
【0076】
本発明はまた、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー、並びに場合により癌の評価における該測定を実施するための補助試薬を特異的に測定するための本発明の方法を実施するためのバイオチップアレイを提供する。
【0077】
用語「測定」は、好ましくは、サンプル中のFEN1タンパク質及び/又はその断片の定性量的半定量的又は定量的測定を含む。好ましい実施態様では、当該測定は、半定量的測定、すなわち、FEN1の濃度がカットオフ値よりも高いか又は低いかを測定することである。当業者が理解するように、イエス(存在)又はノー(非存在)アッセイにおいて、アッセイ感度は、通常、カットオフ値に合致するように設定される。カットオフ値は、例えば、健常個体の群の試験から決定することができる。好ましくは、カットオフは、90%の特異性をもたらすように設定され、またカットオフは、95%の特異性をもたらすように設定されることが好ましく、あるいは98%の特異性をもたらすように設定されることが好ましい。カットオフ値を超える値は、例えば、癌の存在のための指標でよい。特に、カットオフ値を超える値は、例えば、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC及び/又はNSCLCの存在のための指標でよい。更に好ましい実施態様では、FEN1の測定は、定量的測定である。更に好ましい実施態様では、FEN1の濃度は、例えば疾患のステージ、疾患の進行又は治療への反応のような根底にある診断的疑問に相関している。
【0078】
別の好ましい実施態様では、カットオフは、90%の感度をもたらすように設定され、95%の特異性をもたらすように設定されることが好ましく、あるいは98%の特異性をもたらすように設定されることが好ましい。
【0079】
カットオフ値より低い値は、例えば、癌の非存在の指標である。EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC及び/又はNSCLCの存在のための指標でよい。特に、カットオフ値より低い値は、例えば、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC及び/又はNSCLCの非存在のための指標でよい。
【0080】
更に好ましい実施態様では、FEN1の測定は定量的測定である。更に好ましい実施態様では、FEN1の濃度は、例えば疾患のステージ、疾患の進行又は治療への反応のような根底にある診断的疑問に相関している。
【0081】
フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(= FEN1)、Swiss-PROT ID: P39748は、配列番号(図14)に記載される配列によって特徴付けられる、42.6 kDaの分子量の380アミノ酸の核タンパク質である。ヒトFEN1のコーディング配列は、新しくクローン化された配列から1994年にMurrayによって予測された(Murray J. M. et al., Mol. Cell. Biol. 14 (1994) 4878-4888)。酵母ホモログrad2の機能に基づいて、高い忠実性の染色体分離及びUV-誘発DNA損傷における機能が示唆された。これらは染色体の完全な状態での基本的なプロセスであるので、著者はまた、癌回避における当該タンパク質の関連を提案した。ヒト染色体11上の遺伝子座は、後に、Hiraoka他(Hiraoka L.R. et al., Genomics 25 (1995) 220-225)及びTaylor他(Taylor T.D. et al., Nature 440 (2006) 497-500)によって同定された。FEN1の機能及びDNAとのその相互作用は、多数の研究の焦点となっている(Robins P. et al., J. Biol. Chem. 269 (1994) 28535-28538), Shen B. et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 9173-9176, Hasan S. et al., Mol. Cell 7 (2001) 1221-1231, Qiu J. et al., J. Biol. Chem. 277 (2002) 24659-24666 and Sakurai S. et al, EMBO J. 24 (2005) 683-693)。DNA代謝における、DNAポリメラーゼが下流の岡崎フラグメントの5'-末端に出合う時に置換合成によって作製された5'-張り出しフラップ構造を開裂するエンドヌクレアーゼ活性を含むいくつかの酵素的機能が証明されてきた。更に、FEN1はまた、ネイキッド(niked)又はギャップ二重鎖DNA上の5'から3'エキソヌクレアーゼ活性を有し、RNase H活性を示す。これらは、Shen他(Shen B. et al. BioAssays 27 (2005) 717-729)又はLiu他(Liu Y. et al., Annu. Rev. Biochem. 73 (2004) 589-615)によって再考された。
【0082】
ごく最近の変異、FEN1の調節解除された発現及び機能的欠陥は、疾患の発症に関連することが明らかになっている。Kucherlapati他(Kucherlapati M. et al., PNAS 99 (2002) 9924-9929)は、腫瘍進行にFEN1発現を関連付けた。Sato他(Sato M. et al., Oncogene 22 (2003) 7243-7246)は、肺癌におけるFEN1の増加した発現を証明しているが、一方、Lam他(Lam J.S. et al., BJU International 98 (2006) 445-451)は、前立腺癌における過剰発現を見出した。Singh他(Singh P. et al., Mol. Cancer Res. 6 (2008) 1710-1717)は、乳癌及び低メチル化によって調節された他の癌におけるFEN1の過剰発現を見出した。疾患プロセスへの非常に広いリンクは、Zheng他(Zheng L. et al., Nature medicine 13 (2007) 812-819)によって公表された、そこでは、著者は、FEN1変異が自己免疫、慢性炎症及び癌をもたらし得ることを示すことができた。
【0083】
FEN1の疾患との関連が現在では明らかに確立されているが、これらの疾患のバイオマーカーとしてのFEN1タンパク質に関する研究は公表されていない。これまでの利用可能な研究は、DNA又はRNA-型法に焦点を合わせるものである。このことは、FEN1に関する特許と合致している(WO 2008/089577: 乳癌遺伝子アレイ, WO 2008/151110: 肺癌変異体の分子診断及びタイピング, WO2008/077165: 腫瘍マーカーのセット, WO 2007/073220: 結腸癌の予後予測, 米国特許第5,874,283号明細書: 哺乳動物フラップ特異的エンドヌクレアーゼ-1)。
【0084】
本明細書で使用する、以下の用語の各々は、この項でそれと関連した意味を有する。
【0085】
本明細書で用いる冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法的目的物の1から2以上(すなわち少なくとも1)を意味する。例として、「マーカー」は、1つのマーカー又は1超のマーカーを意味する。用語「少なくとも」は、場合により1以上の更なる目的物が存在することを示すために使用される。例として、少なくとも(マーカー)FEN1及びCYFRA 21-1を含むマーカーパネルは、場合により、1以上の他のマーカーを含んでよい。
【0086】
表現「1以上の」は、1〜50を示し、好ましくは1〜20であり、更に好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、12又は15である。
【0087】
用語「チップ」、「バイオチップ」、「ポリマーチップ」又は「タンパク質チップ」は、交換的に使用され、シリコンウエハ、ナイロンストリップ、プラスチックストリップ又はガラススライドの一部でもよい、共有された基板上に並べられた、大多数のプローブ、マーカー又は生化学的マーカーの集団を言う。
【0088】
「アレイ」、「マクロアレイ」又は「マイクロアレイ」は、ガラス、プラスチック、シリコンチップ又は他のアレイ形成材料のような基板又は固体表面上に結合されるか又は組み立てられた、分子、マーカー、開口部、マイクロコイル、検出器及び/又はセンサのような、意図的に作製された物質の集団である。アレイは、反応又は組合せの、例えば、数10個、数千個又は数百万個のような大多数のレベルを同時に測定するために使用できる。アレイは、少数の物質、例えば1個、数個又は12個を含んでもよい。アレイ中の物質は、互いに同一であるか又は異なってよい。アレイは、様々な形式、例えば可溶性分子のライブラリ、固定分子のライブラリ、固体された抗体のライブラリ、樹脂ビーズ、シリカチップ又は他の固体支持体に繋がれた化合物のライブラリを想定することができる。アレイは、アレイのパッドのサイズによって、マクロアレイかマイクロアレイのいずれかでよい。マクロアレイは、一般的に、約300ミクロン以上のパッドサイズを含み、ゲル及びブロットスキャナによって容易に画像化することができる。マイクロアレイは、一般的に、300ミクロン未満のパッドサイズを含む。
【0089】
「固体支持体」は、ライブラリメンバー又は試薬がそこに結合するか又は(一般的に固定されることになるリンカーによって)共有結合しているか、あるいは、過剰な試薬、可溶性反応副生成物又は溶媒から(濾過、遠心分離、洗浄等によって)それらを容易に分離させる、不溶性の、機能化された、ポリマー性材料である。
【0090】
本明細書で使用される用語「マーカー」又は「バイオマーカー」は、患者の試験サンプルを分析するための標的として使用されるべき分子を言う。かかる分子標的の例は、タンパク質又はポリペプチドである。本発明でマーカーとして使用されるタンパク質又はポリペプチドは、前記タンパク質の天然変異体、並びに前記タンパク質又は前記変異体の断片、特に免疫学的に検出可能な断片を含むと考慮される。免疫学的に検出可能な断片は、好ましくは、前記マーカーポリペプチドの少なくとも6、7、8、10、12、15又は20の連続したアミノ酸を含む。当業者は、細胞によって放出される又は細胞外マトリックスに存在するタンパク質が炎症中に損傷を受け得、かかる断片に分解又は開裂され得る、ことを認識するだろう。あるマーカーは、次にタンパク質分解によって活性化され得る不活性な形態で合成される。当業者は、タンパク質又はその断片が複合体の一部として存在してもよいことを理解するだろう。かかる複合体は、本発明の意味においてマーカーとして使用することができる。マーカーポリペプチドの変異体は、同一の遺伝子によってコードされるが、その等電点(=PI)又は分子量(=MW)、あるいは例えば別のmRNA又はプレ-mRNAプロセシングの結果としてその両方において、異なることがある。変異体のアミノ酸配列は、対応するマーカー配列と95%以上、同一である。加えて、あるいはマーカーポリペプチドもしくはその変異体は、翻訳後修飾を有することがある。翻訳後修飾の非限定的な例は、グリコシル化、アシル化及び/又はリン酸化である。
【0091】
FEN1タンパク質、特にFEN1タンパク質及び/又はその断片の可溶性形態は、好適なサンプルで検出される。好ましいサンプルは、組織サンプル、組織溶解物又は体液、例えば血液、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄(= BAL; 好ましくは、疑いのある肺癌(LC)の場合)又は管支肺胞分泌液(= ELF; 好ましくは、疑いのあるLCの場合)である。好ましくは、サンプルは、ヒト対象、例えば腫瘍患者、腫瘍のリスクのある人又は腫瘍を有すると疑われる人から得られる。また、好ましいFEN1は血清又は血漿サンプルで検出される。
【0092】
本発明に従う好ましい実施態様では、FEN1タンパク質及び/又はその断片の濃度が決定される。1つの実施態様では、マーカーFEN1は、特異的結合剤の使用によってサンプルから具体的に測定される。
【0093】
特異的結合剤は、例えばFEN1に対する受容体、FEN1に結合するレクチン、又はFEN1と反応する抗体である。特異的結合剤は、その対応する標的分子について少なくとも107 l/molの親和性を有する。特異的結合剤は、その対応する標的分子について、好ましくは108 l/molの親和性を有するか、あるいは109 l/mol親和性を有することが好ましい。
【0094】
当業者は、用語「特異的」がサンプル中に存在する他の生体分子がFEN1に特定的な結合剤にほとんど結合しないことを示すために使用される、ことを理解するだろう。好ましくは、標的分子以外の生体分子に結合する結合レベルは、それぞれ最大で10%以下のみ、5%以下のみ、2%以下のみ、又は1%以下の標的分子に対する親和性である結合親和性をもたらす。
【0095】
好ましい特異的結合剤は、親和性及び特異性の上記の最小の基準を満たすことになる。特異的結合剤は、好ましくは、FEN1と反応する抗体である。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、かかる抗体の抗原結合断片、単一鎖抗体、及び抗体の結合部位を含む遺伝子的構築物を言う。
【0096】
特異的結合剤の上記基準を維持する任意の抗体断片が使用できる。抗体は、技術手段の状況によって作製され、例えばTijssen(Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays, 11, Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam, the whole book, 特にpages 43-78)に記載されている。加えて、当業者は、抗体の具体的な単離のために使用できる免疫吸着剤に基づく方法をよく知っている。これらの手段によってポリクローナル抗体の品質、及び従って免疫アッセイにおけるその能力が亢進される(Tijssen, P., 前掲, pages 108-115)。
【0097】
本発明に開示されている成果のために、ウサギから産生されたポリクローナル抗体が使用できる。しかしながら、異なった種由来のポリクローナル抗体、例えば、ヒツジ又はヤギ、及びモノクローナル抗体も使用できる。モノクローナル抗体は安定性をもって任意の量で産生することができるので、それらは、臨床的ルーチンのためのアッセイの開発において理想的なツールを示す。本発明に従う方法においてFEN1に対するモノクローナル抗体の作製及び使用は、それぞれ、更に他の好ましい態様を示す。
【0098】
免疫アッセイは当業者には周知である。かかるアッセイを行う方法、並びに実際の応用及び手段は、関連するテキストに纏められている。関連するテキストの例は、Tijssen, P., 酵素抗体又は他の酵素高分子複合体の調製, In: 酵素免疫アッセイの実験及び理論, 第221-278頁, Burdon, R.H.及びv. Knippenberg, P.H. (著), Elsevier, Amsterdam (1990)、及び酵素学における方法, Colowick, S. P., and Caplan, N.O. (著), Academic Press) の様々な巻であり、免疫学的検出法、特に70、73、74、84、92及び121巻を扱っている。
【0099】
当業者が、FEN1が癌、好ましくは肺癌の評価において有用であるマーカーとして同定されていることを理解するように、様々な免疫診断手段は、本発明の達成に匹敵する結果に到達するために使用できる。例えば、抗体を作製するための別の方法も使用できる。かかる方法は、それらの中の、免疫化のためのFEN1のエピトープを示す合成ペプチドの利用を含む。あるいは、DNAワクチン化としも知られている免疫化を使用してもよい。
【0100】
測定のためには、個体から得られたサンプルは、結合剤FEN1複合体の形成のために好適な条件下で、FEN1のために特異的結合剤でインキュベートされる。当業者は創意的努力をせずにかかる好適なインキュベーション条件を容易に同定することができるので、かかる条件は特定する必要がない。結合剤FEN1複合体の量は、癌、特に肺癌の評価において測定され、使用される。当業者が承知のように、特異的結合剤FEN1複合体の量を測定するための多数の方法が関連するテキストに詳細に記載されている(例えば、Tijssen P., supra, or Diamandis, E.P. and Christopoulos, T.K. (eds.), Immunoassay, Academic Press, Boston (1996)参照)。
【0101】
好ましくは、FEN1はサンドイッチアッセイ形式(=サンドイッチ免疫アッセイ)で検出される。かかるサンドイッチアッセイでは、固体支持体に結合された第1の特異的結合剤は、一方の側上のFEN1を捕獲するために使用され、直接的又は間接的に検出可能であるように標識される第2の特異的結合剤は、他方の側上で使用される。サンドイッチアッセイ形式で使用される特異的結合剤は、FEN1に対して特異的な抗体の組合せでよい。
【0102】
本発明の意味において「癌のマーカー」は、マーカーFEN1と組み合わせる場合には、一般的に癌の評価における又はある癌種の評価、例えば、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCの評価と組み合わせた癌疾患の評価において、関連する情報を加える任意のマーカーである。癌の評価のための、所定の特異性での感度、又は所定の感度での特異性が、それぞれ、マーカーFEN1をすでに含むマーカーの組合せに前記マーカーを含めることによって改善される場合には、当該情報は、関連するか又は付加的価値があると考えられる。癌評価の好ましい態様では、感度又は特異性各々の改善は、p = .05、.02、.01又はそれ以下の有意性のレベルで統計的に有意である。好ましくは、1以上の他の腫瘍マーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ、及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる。
【0103】
本明細書で使用される用語「サンプル」は、インビトロでの評価の目的のために得られた生物学的サンプルを言う。本発明の方法では、サンプル又は患者サンプルは、好ましくは、任意の体液を含んでよい。好ましいサンプルは、組織サンプル、組織溶解物又は体液、例えば血液、血清、血漿、尿、気管支肺胞洗浄(= BAL; 好ましくは、疑いのある肺癌(LC)の場合)又は管支肺胞分泌液(= ELF; 好ましくは、疑いのあるLCの場合)であり、血清又は血漿が最も好ましい。
【0104】
本明細書で使用される用語「組織サンプル」及び/又は「組織断片」は、外科手術、治療的切除、又はインビトロでの評価の目的のための細胞又は組織の除去を含む生検(例えば、切開生検、切除生検、コア生検、又は針吸引生検)の間に患者から採取された生物学的サンプルを言う。本発明に従う分析を行う時に、直接低に又は「組織溶解物」のいずれかとして組織サンプル材料が使用される。本明細書で使用される「組織サンプル」は、マイクロトームの使用によって通常行われる薄組織スライスをも意味する。生物学的サンプルを含む任意の開示された方法の態様では、かかる生物学的サンプルは、顕微鏡スライド上に置くことができ(必ずしもそうではないが)、組織断片(例えば、ホルマリン固定及びパラフィン埋没組織断片)であり、及び/又は新生物組織(例えば、肺癌、結腸癌、頭頸部癌、胃癌又はグリア芽腫)である。
【0105】
本明細書で用いる「組織溶解物」「細胞溶解物」、「溶解物」「溶解されたサンプル」「組織抽出物」又は「細胞抽出物」は、溶解された組織又は細胞を含むサンプル及び/又は生物学的サンプル材料を言う、すなわち、そこでは、組織又は細胞の構造的完全状態が崩壊されている。細胞又は組織サンプルの内容を放出するために、当該材料は、通常、酵素及び/又は化学物質で処理されて、細胞壁及びかかる組織又は細胞の細胞膜を溶解、分解又は崩壊する。当業者は、溶解物を得るための好適な方法を熟知している。この方法は、用語「溶解」に包含される。
【0106】
用語「癌を評価すること」及び特に「子宮内膜癌(EC)、悪性黒色腫(MM)、子宮癌(CC)、頭頸部癌(H/NC)、卵巣癌(OC)、結腸癌(CRC)、膀胱癌(BLC)、膵臓癌(PAC)、乳癌(BC)、小細胞肺癌(SCLC)、前立腺癌(PC)、腎臓癌(KC)及び非小細胞肺癌(NSCLC)を評価すること」は、本発明の方法が、(単独で又は他のマーカー又は変数、例えばUICC(上記参照)によって示される基準と一緒に)例えば、医師が癌の非存在もしくは存在を確立又は確認することを助け、あるいは予後診断、再発の検出(手術後の患者のフォローアップ)及び/又は処置、特に化学療法のモニタリングにおいて医師を助ける、ことを示すために使用される。
【0107】
当業者が承知しているように、任意のかかる評価はインビトロでなされる。患者サンプルはその後廃棄される。患者サンプルは本発明のインビトロでの診断的方法のために単に使用され、患者サンプルの材料は患者の体に戻されない。典型的には、サンプルは液体サンプル、例えば全血、血清又は血漿である。
【0108】
他に特定しない限り、技術用語は慣用的使用に従って使用される。細胞及び分子生物学における通常の用語の定義は、Oxford University Press (1994), ISBN 0-19-854287 9; Kendrew, J.他(著)によって公表されたLewin, B., Genes V、Blackwell Science Ltd. (1994), ISBN 0-632-02182-9によって公表されたThe Encyclopedia of Molecular Biology;及びVCH Publishers, Inc. (1995), ISBN 1-56081-5698によって公表されたComprehensive Desk Referenceに見出される。
【0109】
好ましい態様では、本発明は、FEN1の濃度をサンプル中で測定し、及び癌の評価で決定された濃度を使用することを含む、生化学的マーカーによるインビトロで癌を評価するための方法に関する。
【0110】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、癌、特に、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCを有する患者から得られたサンプルの有意な割合でマーカーFEN1の増加した濃度を検出することができるようになった。更に驚くべきことに、発明者らは、個体から得られたこのようなサンプル中のFEN1の増加した濃度が癌、特に上記の癌疾患の評価において使用できることを証明することができた。
【0111】
診断の理想的シナリオは、単一の事象又はプロセスが各々の疾患、例えば感染性疾患を引き起こす状況であろう。すべての他の場合において、多くの癌種について当てはまるように、特に疾患の原因が十分に理解されない時には正確な診断は非常に困難である。当業者は承知しているように、100%の特異性を有し、同時に所定の多因子疾患のために100%の感度を有する診断用である、生化学的マーカーは存在しない。むしろ、生化学的マーカー、例えば、Cyfra 21-1、CEA、NSE、又は本明細書で示されるように、FEN1は、ある可能性又は予測値、例えば疾患の存在、非存在又は重度で評価するために使用することができる。そのため、ルーチンの臨床的診断では、一般的に様々な臨床的症状及び生物的マーカーは、根底にある疾患の診断、治療及び管理において一緒に考慮される。
【0112】
生化学的マーカーは、個々に又は本発明の好ましい態様のいずれかで測定することができ、それらは、チップ又はビーズ型アレイ技術を用いて同時に測定することができる。バイオマーカーの濃度は、例えば各々のマーカーについて個々のカットオフを用いて、独立して解釈されるか、又は解釈のために組み合わされる。
【0113】
更なる好ましい態様において、本発明に従う癌の評価は、サンプル中の、a) FEN1タンパク質及び/又はその断片、b) 1以上の他の癌マーカー、の濃度を測定し、及びc) 癌の評価における測定結果、例えばステップ(a)及びステップ(b)それぞれにおいて測定された濃度を利用すること、を含む、方法において達成される。
【0114】
癌の評価において、マーカーFEN1は、以下の局面の1以上において有利であろう:スクリーニング;診断的補助;予後診断;化学療法、放射線療法及び免疫療法のような治療法のモニタリング。
【0115】
スクリーニング:
スクリーングは、個体、例えば疾患、例えば癌の存在、のインジケータに対してリスクのある個体を同定するための試験の系統的な適用として定義される。好ましくは、スクリーニング集団は、癌の平均的なリスクよりも高いことが知られている個体からなる。例えば、肺癌のスクリーニング集団は、喫煙者、元喫煙者、及びウラン-、石英-又はアスベスト-に曝露された労働者のような肺癌の平均的リスクよりも高いことが知られている個体からなる。
【0116】
好ましい態様では、組織サンプル、組織溶解物又は任意の体液、例えば全血、血漿、血清、尿、気管支肺胞洗浄(= BAL; 好ましくは、疑いのある肺癌(LC)の場合)又は管支肺胞分泌液(= ELF; 好ましくは、疑いのあるLCの場合)は、癌のスクリーニングにおいてサンプルとして使用される。
【0117】
多くの疾患について、スクリーニングプロセスに求められる感度及び特異性の基準を満たす、循環する単一の生化学的マーカーはない。このことは、癌、特に肺癌に当てはまるようである。多数のマーカーを含むマーカーパネルが癌のスクリーニングに使用されなければならないと期待されるべきである。本発明で確立されたデータは、FEN1がスクリーニング目的のために好適なマーカーパネルの完全な部分を形成することを意味する。そのため、本発明は、癌マーカーパネル、FEN1及び癌スクリーニング目的のための1以上の更なるマーカーを含むマーカーパネル、の1つのマーカーとしてのFEN1の使用に関する。特に、本発明は、一般的な癌マーカーパネルの1つのとしてのFEN1の使用に関する。かかるマーカーパネルは、マーカーFEN1、及び1以上の更なるマーカー、例えば一般的な癌マーカー及び/又は癌の上記の種のためのマーカーを含む。
【0118】
マーカーの組合せは、分子アッセイの値を顕著に改善する。第1に、当該アッセイの感度は、マーカーパネルを用いて顕著に改善される。第2に、洗練された統計的モデルは、マルチマーカーのROC曲線分析を可能にし、その結果は、診断制度が最良の個々のマーカーと比べて顕著に増加することを確認する。
【0119】
FEN1はまた、癌のある特定の種類、例えばEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCのためのマーカーパネルに寄与するらしい。
【0120】
更に、FEN1を含むマーカーパネルで評価されるべき癌の好ましい種は、EC、MM、CC、H/N、OC、CRC、BLC、PAC又はBCである。更に、FEN1を含むマーカーパネルで評価されるべき癌の好ましい種は、EC、MM、CC、H/N、OC又はCRCである。
【0121】
本データは、マーカーのある組合せが癌のスクリーニングにおいて有利であることを更に示す。
【0122】
例えば、癌のスクリーニングの好ましい態様に関連して、本発明はまた、FEN1、及びCyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる少なくとも1以上のマーカー(複数)を含むマーカーパネルの使用に関する。
【0123】
診断的補助:
マーカーは、特定の臓器における良性-対-悪性疾患の識別的診断を助け、腫瘍の異なった組織学的種類を識別するために役立つか、あるいは手術前のベースラインマーカー値を確立するために役立つことがある。
【0124】
今日、肺癌の検出において使用される重要なほう方法は、放射線使用及び/又は線断層撮影法(CT)である。小結節、すなわち疑わしい組織の小さな部位は、これらの方法によって視覚化することができる。しかしながら、これらの小結節の多く−CTで90%超は良性組織変化を示し、小数の小結節のみが癌性組織を示す。マーカーFEN1の使用は、良性-対-悪性疾患の識別に役立つことがある。
【0125】
好ましい態様では、マーカーFEN1は、癌の異なった組織学的種類を確立又は確認するために、免疫組織学的方法で使用される。
【0126】
単一のマーカーとしてのFEN1は他のマーカー、例えばCEA又はNSEのような他のマーカーよりも優れているので、FEN1が、特に手術前のベースライン値を確立することによって、診断的補助として使用されることが予測されるべきである。したがって、本発明はまた、癌の手術前のベースライン値を確立するためのFEN1の使用に関する。
【0127】
予後診断:
予後診断インジケータは、疾患の結果をある可能性をもって予測する、癌患者及びその腫瘍の臨床的、病因的又は生化学的特徴として定義される。その主な使用は、合理的に患者管理を計画するために、すなわち、攻撃的な疾患の過少治療及び無痛疾患の過剰治療をそれぞれ避けるために役立つことである。Molina, R.他, Tumor Biol. 24 (2003) 209-218は、NSCLC中のCEA、CA 125、CYFRA 21-1、SSC及びNSEの予後診断的値を評価した。その試験では、マーカーNSE、CEA及びLDH(乳酸脱水素酵素)の異常な血清レベルは、より短い生存を示すように見えた。
【0128】
FEN1は単独で、癌患者と健常対照との識別に顕著に貢献するので、癌に罹患した患者の予後診断を評価する点で補助するだろうと予測されるはずである。術前のFEN1のレベルは、1以上の他の癌マーカー及び/又はTNM段階分類系と組み合わされる可能性が大きい。好ましい態様では、FEN1は、EC、MM、CC、H/N、OC、CRC、BLC、PAC又はBCの患者の予後診断に使用される。
【0129】
化学療法のモニタリング:
Merle, P.他, Int. J. of Biological Markers 19 (2004) 310-315 は、誘発化学療法で処置された局部的に進行したNSCLCを有する患者のCYFRA 21-1血清レベル変化を評価した。彼らは、CYFRA 21-1血清レベルの早期モニタリングが、腫瘍応答及びステージIIIのNSCLC患者の生存ための有用な予後診断ツールになりうると結論している。加えて、報告は、LCを有する患者の処置をモニタリングする時のCEAの使用を記載している(Fukasawa, T. et al., Gan to Kagaku Ryoho 13 (1986) 1862-1867)。これらのほとんどは、回顧的で、非-ランダムであり、少数の患者を含んだ。CYFRA 21-1を用いる試験の場合のように、CEA試験は次のように示唆した:(a) CEAレベルが減少し、同時に化学療法を受けている患者は、一般的に、CEAレベルが減少し損なった患者よりも良好な結果を有した、及び (b) ほとんどすべての患者について、CEAレベルの増加は、疾患進行に関連していた。
【0130】
FEN1は、各々CYFRA 21-1又はCEAとして化学療法をモニタリングするための、少なくともとも良好なマーカーでとして期待される。そのため、本発明はまた、治療中の癌患者のモニタリングにおけるFEN1の使用に関する。
【0131】
好ましい態様では、治療法のモニタリングにおいて、FEN1、及びCEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1つのマーカーについての測定は、組み合わされ、そして癌の評価において使用されることになる。
【0132】
フォローアップ:
外科的切除を経験したLC患者の大部分は、癌性組織の完全な除去、再発又は転移性疾患の後の発症を目的とした(Wagner, H. Jr., Chest 117 (2000) S110-S118; Buccheri, G. et al., Ann. Thorac. Surg. 75 (2003) 973-980)。これらの再発のほとんどは、手術後の最初の2〜3年以内に起こる。再発/転移性疾患は、あまりに遅く検出されれば必ず死に至るので、相当の研究が、早期の癌の再発、よって潜在的に治療可能なステージに注がれてきた。
【0133】
結局、多くの癌患者は、CEAによる規定のモニタリングを頻繁に含む、手術後の観察プログラムを経験する。手術的切除後の1年のCEAによる段階的モニタリングは、疑わしい症状又は兆候の非存在下でさえ、約97%の特異性で約29%の感度を有する、早期の手術後の再発/転移性疾患を検出することが明らかになっている(Buccheri, G. et al., Ann. Thorac. Surg. 75 (2003) 973-980)。したがって、手術後の癌患者のフォローアップは、好適な生化学的マーカーのための使用の最も重要な分野の1つである。調査された癌患者におけるFEN1の高感度に起因して、FEN1単独又は1以上の他のマーカーとの組み合わせは、手術後の癌患者のフォローアップにおいて相当な補助となるであろう。癌患者のフォローアップにおけるFEN1及び1以上の他の癌マーカーを含むマーカーパネルの使用は、本発明の更なる好ましい態様を示す。
【0134】
なお更なる好ましい態様では、本発明は、癌の診断分野において、FEN1の使用に関する。好ましくは、FEN1は、EC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCそれぞれの評価に使用される。
【0135】
なお更なる好ましい態様では、本発明は、1以上の更なる癌のためのマーカー分子と組み合わせた、癌、例えば一般的に癌又は癌の特定の種類、例えばEC、MM、CC、H/NC、OC、CRC、BLC、PAC、BC、SCLC、PC、KC又はNSCLCのためのマーカー分子としてのFEN1の使用に関する。更なるマーカー分子は、癌種に非特異的な一般のマーカー分子及び/又は癌種特異的マーカー分子でよい。FEN1及び少なくとも1つの更なるマーカーは、個体から得られた液体サンプル中の癌の評価に使用される。FEN1の測定が組み合わされる好ましい選択された他の癌マーカーは、Cyfra 21-1、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼである。特に、FEN1の測定が組み合わされる好ましい選択された他の癌マーカーは、CYFRA 21-1、CEA、CA 19-9、SCC、CA 125, proGRP及び/又はNSEである。なお更に好ましくは、癌の評価に使用されるマーカーパネルは、FEN1、及びCYFRA 21-1及びCEAからなる群より選ばれる少なくとも1つの他のマーカー分子を含む。
【0136】
当業者は承知しているように、調査中の診断的問題を改善するために2以上のマーカーの測定を用いるための多くの方法がある。簡単に言えば、しかしそれにもかかわらず一般的に効果的な方法であるが、サンプルが試験されたマーカーの少なくとも1つに関して陽性であるならば、陽性の結果が想定される。このことは、例えば、AIDSのような感染性疾患を診断する場合である。
【0137】
しかしながら、通常、マーカーの組合せが評価される。好ましくは、マーカーパネルのマーカー、例えばFEN1及びCYFRA 21-1について測定された値は、数学的に組み合わされ、組み合わされた値は根底にある診断的疑問と相関される。マーカー値は、数学的方法の技術の任意の好適な状況によって組み合わせることができる。マーカーの組合せを疾患と関連づけるための周知の数学的方法は、判別分析 (DA) (すなわち、一次-、二次-、正則化-DA)、カーネル法 (すなわち、SVM)、ノンパラメトリックな手法 (すなわち、k近傍法)、PLS (部分的最小二乗法)、ツリーベース法 (すなわち、ロジスティック回帰、CART、ランダムフォーレスト法、ブースティング/バギング法)、一般化線形モデル (すなわち、ロジスティック回帰)、主成分ベース法 (すなわち、SEMCA)、一般化加法モデル、ファジィ論理ベース法、ニューラルネットワーク、及び遺伝的アルゴリズムベース法のような方法を採用する。当業者は、本発明のマーカー組合せを評価するための好適な方法を選択するには何の問題もないだろう。好ましくは、本発明のマーカー組合せを、例えばLCの非存在又は存在と関連づけ点で用いられる方法は、DA (すなわち、一次-、二次-、正則化-判別分析)、カーネル法 (すなわち、SVM)、ノンパラメトリックな手法 (すなわち、k近傍法)、PLS (部分的最小二乗法)、ツリーベース法 (すなわち、ロジスティック回帰、CART、ランダムフォーレスト法、ブースティング/バギング法)、又は一般化線形モデル (すなわち、ロジスティック回帰)、から選択される。これらの方法に関する詳細は、以下の文献に見られる:Ruczinski, I.他, J. of Computational and Graphical Statistics, 12 (2003) 475-511; Friedman, J. H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175; Hastie, T.他, 統計的学習の要素, Springer Series in Statistics (2001); Breiman, L.他, Classification and regression trees, California: Wadsworth (1984); Breiman, L., Random Forests, Machine Learning, 45 (2001) 5-32; Pepe, M.S., 分類及び予測のための医学テストの統計的評価, Oxford Statistical Science Series, 28 (2003); 及びDuda, R.O.他, パターン分類, Wiley Interscience, 第2版 (2001)。
【0138】
生物的マーカーの根底にある組合せのための最適化された多変量カットオフを使用し、及び状態Aと状態B、例えば疾患と健常を識別することであることは、本発明の好ましい態様である。この種の分析では、マーカーは、もはや独立ではなく、マーカーパネルを形成する。
【0139】
診断的方法の精度は、その受信者動作特性(ROC)によって最もよく記載されている(特に、Zweig, M.H., and Campbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577参照)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲に渡って決定閾値を連続的に変えることから得られる、感度/特異性のペアのすべてのプロットである。
【0140】
実験室試験の臨床的能力は、その診断精度、又は対象を臨床的に関連するサブグループに正確に分類する能力に依拠する。診断精度は、調査されて対象の2つの異なった条件を正確に識別する試験能力を測定する。かかる条件は、例えば、健康及び疾患、又は良性-対-悪性疾患である。
【0141】
各々の場合には、ROCプロットは、識別閾値の完全な範囲のための感度-対-1-特異性をプロットすることによって2つの分布間の重複を描く。y-軸は感度、又は[(真の陽性試験結果の数)/(真の陽性試験結果の数 + 偽陰性試験結果の数)として定義される真の陽性分画]である。このことは、疾患又は症状の存在において陽性としても言及されている。罹患したサブグループから単に計算される。x-軸は、偽陽性分画、又は[(偽陽性結果の数)/(真の陰性結果の数 + 偽陽性結果の数)として定義される1-特異性である。それは、特異性の指標であり、非罹患サブグループから完全に計算される。真の-及び偽の-陽性分画が2つの異なったサブグループからの試験結果を用いて、完全に別個に計算されるので、ROCプロットは、サンプル中の疾患の有病数とは関係ない。ROCプロットにおける各ポイントは、特定の識別閾値に対応する感度/1-特異性を示す。完全な識別(結果の2つの分布において重複がない)は、真の陽性分画が100又は100%(完全な感度)であり、偽陽性分画が0(完全な特異性)である、左上コーナーを通過するROCプロットを有する。識別なしの試験のための理論的プロット(2つの群についての結果の同一の分布)は、左下コーナーから右上コーナーまでの45°斜めラインである。ほとんどのプロットはこれらの2つの極端の間にある。(ROCプロットが45°斜めより下に完全に入る場合には、このことは、「より大きい」から「より小さい」までの「陽性」の基準を逆転させることによって、又は逆も同様、容易に修正される。)定量的には、プロットが左上コーナーに近づけば近づく程、試験の全体的な精度は高くなる。
【0142】
実験室試験の診断精度を定量化する1つの好ましい方法は、1つの番号によってその能力を表現することである。かかる全パラメタは、例えば、いわゆる「全誤差」又は曲線下の面積=AUC」である。最も一般的な世界的指標は、ROCプロット下面積である。慣例により、これは、必ず>0.5である(そうでない場合には、識別規則をそのように変換することができる。値は、1.0(2つの群の試験値の完全な分離)と0.5(試験値の2つの群の試験値の完全な分離))との間の範囲である。当該領域は、斜めに最も近い点又は90%の特異性での感度のようなプロットの特定の部分にのみ依拠せず、プロット全体に依拠する。このことあは、ROCプロットが完全なもの(領域 = 1.0)にどのくらい近づくかの、定量的な記載である。
【0143】
FEN1の測定と、CYFRA 21-1又はCEAのような他のマーカーとの組合せ、又は未だ発見されていない癌マーカーとの組合せは、それぞれ、癌の評価における更なる改善をもたらし、もたらすことになる。
【0144】
好ましい実施態様では、本発明は、少なくともFEN1、及びCEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他の腫瘍マーカーの濃度をそれぞれサンプル中で測定し、並びに測定された濃度を癌の存在又は非存在と相関付けることによって、癌-対-健常対照のための診断精度を改善するための方法であって、単独で検査された任意の単一のマーカーに基づく分類に比べて、癌に罹患していると正確に分類される多数の患者-対-健常対照をもたらす、方法に関する。
【0145】
更なる好ましい態様では、本発明は、少なくともFEN1及びCyfra 21-1、場合によりCEA及び/又はNSEのそれぞれの濃度をサンプル中で測定し、並びに測定された濃度を癌の存在又は非存在と相関付けることによって、癌-対-健常対照のための診断精度を改善するための方法であって、単独で検査された任意の単一のマーカーに基づく分類に比べて、癌に罹患していると正確に分類される多数の患者-対-健常対照をもたらす、方法に関する。
【0146】
以下の実施例、図面及び配列表は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は、添付のクレームに記載されている。変更は、本発明の趣旨を逸脱することなく記載された手段でなされることを理解されたい。
【実施例】
【0147】
実施例 1
肺癌の潜在的マーカーとしてのFEN1の同定
組織源:
肺癌のための潜在的な診断マーカーとしての腫瘍特異的タンパク質を同定するために、プロテオミクス法を用いて2つの異なった種類の組織の分析を行った。
【0148】
合計で、肺癌(LC)に罹患した20人の患者由来の組織標本を分析した。各患者から、治療上の切除:腫瘍組織((>80%腫瘍)及び隣接する健常組織(N)から2つの異なった組織の種類を回収した。後者は合致した健常対照サンプルとして働いた。組織は、切除後直ぐに冷凍し、処理前に-80℃で保存した。腫瘍は組織病理学的基準によって診断した。
【0149】
組織調製:
0.8〜1.2 gの冷凍組織を小片に切断し、ミキサボールミルの冷えた研磨ジャーに移し、液体窒素で完全に冷凍した。組織をボールミル中で粉砕し、溶解バッファ (4O mM Na-クエン酸, 5 mM MgCl2, 1% Genapol X-080, 0.02% Na-アジド, Complete(登録商標)EDTA-無し [Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, Cat. No. 1 873 580]) の10倍体積(w/v)に溶解し、次いで、Wheaton(登録商標)ガラスホモジナイザ(20 x ルーズフィッティング, 20 x タイトフィッティング)でホモジナイズした。ホモジネートを遠心(5,000 x gで10')に供し、上清を別のバイアルに移し、再度、遠心に供した(20,000 x gで15')。得られた上清は可溶性タンパク質を含み、更なる分析に使用した。
【0150】
等電点分画法(IEF)及びSDS-PAGE:
IEFについては、3 mlの懸濁液を12 mlのサンプルバッファ (7 M尿素, 2 Mチオ尿素, 2% CHAPS, 0.4% IPGバッファ pH 4〜7, 0.5% DTT) と混合し、1時間インキュベートした。当該サンプルをAmicon(登録商標)Ultra-15装置 (Millipore GmbH, Schwalbach, Germany) で濃縮し、供給者のマニュアルの教示に従って、Bio-Rad(登録商標)タンパク質アッセイ (Cat.No. 500-0006; Bio-Rad Laboratories GmbH, Munchen, Germany) を用いて、タンパク質濃度を決定した。1.5 mgのタンパク質に相当する体積に、サンプルバッファを350 μlの終体積になるように加えた。この溶液を用いて、IPGストリップpH 4〜7 (Amersham Biosciences, Freiburg, Germany) を終夜、再水和した。IEは、を以下:1.) 500 Vまで1分; 2.) 3500 Vまで2時間; 3.) 82 kVhを提供する一定の3500 Vまで22時間、のプロトコールを用いて行った。IEF後に、ストリップを-80℃で保存するか、又はSDS-PAGE用に直接使用した。
【0151】
Tris/HCl, pH 8.8, 30%グリセロール, 2 % SDS)でインキュベートし、還元のためにDDT (15分 + 50 mg DTT/10 ml)、及びアルキル化のためにIAA (15分 + 235 mg ヨードアセトアミド/10 ml) を加えた。ストリップを12.5%のポリアクリルアミドゲルに置き、1 W/ゲルで1時間、その後17 W/ゲルで、電気泳動に供した。次いで、ゲルを固定し (50%メタノール, 10%酢酸塩)、Novex " Colloidal Blue Staining Kit (Invitrogen, Karlsruhe, Germany, Cat No. LC6025, 45-7101) で終夜、染色した。
【0152】
ヒト肺癌のための潜在的マーカーとしてのFEN1の検出:
ProteomeWeaver(登録商標)ソフトウェア (Definiens AG, Germany, Munchen) による画像分析によって各患者を分析した。加えて、ピッキングロボットによってゲルのすべてのスポットを切り出し、スポット中に存在するタンパク質をMALDI-TOF質量分光分析(Ultraflex(商標)Tof/Tof, Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany)によって同定した。各患者について、腫瘍サンプル由来の3つのゲルを隣接する健常組織由来の3つのゲルの各々と比較し、識別的に発現されたタンパク質に対応する異なったスポットについて分析した。FEN1は、10患者の腫瘍サンプル、及び1つの対照サンプルにおいて同定された。この方法によって。タンパク質FEN1は、腫瘍組織において、それぞれ、特異的に発現するか又は強く過剰発現することが分かった。そのため、肺癌の診断において使用するための候補マーカーとしてみなした。以下のFEN1由来のトリプティックペプチドを同定した。
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
実施例 2
癌マーカータンパク質FEN1に対する抗体の作製
肺癌マーカータンパク質FEN1に対するポリクローナル抗体は、免疫検出アッセイ、例えばウエスタンブロッティング又はELISAによってFEN1の他の体液中の、血清及び血漿レベル又は濃度の測定において当該抗体の更なる使用のために作製した。
【0156】
E.コリにおける組換えタンパク質発現:
FEN1に対する抗体を作製するために、組換え抗原をE.コリ中で産生した:したがって、FEN1-コーディング領域は、German Resource Center for Genome Research (RZPD, Berlin, Germany) から得られた完全長cDNAクローンから、以下のプライマーを用いてPCR増幅した。
フォワードプライマー (配列番号3)
5'-cacacacaattgattaaagaggagaaattaactATGAGAGGATCGCATCACCAT
CACCATCACATTGAAGGCCGTGGAATTCAAGGCCTGGCC-S'
(大文字のヌクレオチドをコーディングするMunI-部位に下線を引いた)。
リバースプライマー (配列番号4):
5'-acgtacgtaagcttTCATT ATTTTCCCCTTTT AAACTTC-3' (大文字のヌクレオチドをコーディングするHmdIII-部位に下線を引いた)。
【0157】
フォワードプライマー(MunIクローング及びリボゾーム結合部位に加えて)は、FEN1遺伝子に5'-末端でイン・フレームで融合された、N-末端MRGSHHHHHHIEGRペプチド伸長をコードしている(配列番号2で示される)。MunI/HindIII消化PCR断片をpQE80Lベクター(Qiagen, Hilden, Germany)にライゲートした。次いで、E.コリXL1-ブルーコンピテント細胞を作製されたプラスミドで形質転換した。配列分析後に、E.コリC600コンピテント細胞を、製造者の教示に従ってpQEベクターシリーズのT5-プロモーターの制御下で、IPTG-誘導発現のための作製されたプラスミドで形質転換した。
【0158】
MRGSHHHHHHIEGR-FEN1融合タンパク質の精製のために、1 Lの誘導された一晩細菌培養物は、遠心分離によってペレット化し、細胞ペレットを溶解バッファ(20 mM リン酸ナトリウムバッファ, pH 7.4, 500 mM 塩化カリウム (NaCl))に再懸濁した。細胞を1500バールの圧力を用いてフランス製プレスでつぶした(disupted)。不溶性物質を遠心分離で再ペレット化し(25000 g, 15分, 4℃)、上清をNi-ニトリロ三酢酸 (Ni-NTA) 金属アフィニティクロマトグラフィー適用した:洗浄バッファ(20 mM リン酸ナトリウムバッファ, pH 7.4, 500 mM NaCl, 20 mMイミダゾール)の数回のベッド体積でカラムを洗浄した。最終的に、20 mM〜500 mMイミダゾールの直線グラジエントで洗浄バッファを用いて、結合された抗原を溶出し、抗原含有分画(各々7 mL each)を、UV-検出器でO.D.280で同定した。抗原含有分画をプールし、保存バッファ(75 mM HEPES, pH 7.5, 100 mM NaCl, 1 mM EDTA, 6.5 % (w/v) サッカロース)で透析し、4℃又は-80℃でそれぞれ保存した。
【0159】
免疫化のためのペプチド免疫原の作製:
FEN1に特異的なポリクローナル抗体を作製するために、他の公知のヒトタンパク質に優位なホモロジーを示さないペプチド配列を同定した。FEN1のアミノ酸配列は、ソフトウェアBlastを用いてSwiss Institute of Bioinformaticsにアクセス可能なヒトタンパク質のデータバンクに対して行った。アミノ酸配列260〜273は、他のヒトタンパク質に優位なホモロジーを示さない、そのため、FEN1特異的抗体を作製するように選択した。各々の配列は合成し、KLH (=キーホールリンペットヘモシニアン) に化学的に複合化して、免疫化のための免疫原を得た。
【0160】
ポリクローナル抗体の作製:
a) 免疫化
免疫化のために、タンパク質溶液の新鮮エマルジョン(100 μg/mlタンパク質FEN1、又は500 μg/mlのFEN1アミノ酸260〜273由来のペプチドと結合したKLH)及び1:1の割合の完全フロイントアジュバントが、好ましい。ウサギをそれぞれ、1、7、14、30、60及び90日目に1 mlのエマルジョンで免疫化した。血液を採取し、実施例3及び4に記載の更なる実験のために得られた抗-FEN1血清を使用した。
【0161】
b) カプリル酸及び硫酸アンモニウムによる結果として起こる沈殿によるウサギ血清からのIgG (免疫グロブリンG) の精製
ウサギ血清の1体積を酢酸塩バッファの4体積 (60 mM, pH 4.0) で希釈した。2 M Tris-塩基で4.5にpHを調整した。激しく攪拌しながら、カプリル酸 (希釈サンプルの25 μl/ml) を滴下した。30分後、サンプルを遠心分離し (13 000 x g, 30分, 4℃)、ペレットを廃棄し、上清を回収した。上清のpHを2 M Tris-塩基の添加によって7.5に調整し、濾過した (0.2 μm)。
【0162】
激しく攪拌しながら、4 M硫酸ナトリウム水溶液を2 Mの終濃度になるように滴下することによって、上清中の免疫グロブリンを沈殿させた。沈殿した免疫グロブリンは塩shン分離によって回収した (8000 x g, 15分, 4℃)。
【0163】
上清を廃棄した。ペレットを10 mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 3O mM NaClに溶解し、徹底的に透析した。透析物を遠心分離した(13 000 x g, 15分, 4℃)、濾過した(0.2 μm)。
【0164】
ポリクローナルウサギIgGのビオチン化:
ポリクローナルウサギIgGを10 mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 30 mM NaClに10 mg/mlで加えた。IgG溶液1 mlにつき、50 μlのビオチン-N-ヒドロキシコハク酸イミド (DMSO中3.6 mg/ml) を加えた。室温で30分後、サンプルをSuperdex 200 (1O mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 3O mM NaCl) のクロマトグラフィーに付した。ビオチン化IgGを含む分画を集めた。モノクローナル抗体を同一の手段に従ってビオチン化した。
【0165】
ポリクローナルウサギIgGのジゴキシゲニン化:
ポリクローナルウサギIgGを10 mM NaH2PO4/NaOH, 30 mM NaCl, pH 7.5に10 mg/mlで加えた。IgG溶液1 mlにつき、50 μlのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-ε-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル (Roche Diagnostics, Mannheim, Germany, Cat. No. 1 333 054) (DMSO中3.8 mg/ml) を加えた。室温で30分後、サンプルをSuperdex 200 (1O mM NaH2PO4/NaOH, pH 7.5, 3O mM NaCl) のクロマトグラフィーに付した。ジゴキシゲニル化IgGを含む分画を集めた。モノクローナル抗体を同一の手段に従ってジゴキシゲニンで標識した。
【0166】
実施例 3
実施例2で作製したポリクローナル抗体を用いてヒト肺癌(LC)組織におけるFEN1の検出のためのウエスタンブロッティング
実施例1の「組織調製」に記載のようにして、腫瘍サンプル及び健常対照由来の組織溶解物を調製した。
【0167】
Invitrogen, Karlsruhe, ドイツの試薬及び器具を用いて、SDS-PAGE及びウェスタン-ブロッティングを行った。試験した各々の組織サンプルについて、15 μgの組織溶解物を還元性NuP AGE(登録商標)(Invitrogen) SDSサンプルバッファで希釈し、95℃で10分間加熱した。サンプルは、MESランニングバッファ系で、4-12% NuP AGE(登録商標)ゲル (Tris-グリシン) 上で動かした。ゲル分離タンパク質混合物は、Invitrogen XCeIl II(商標)Blot Module (Invitrogen) 及びNuP AGE(登録商標)転移バッファ系を用いて、ニトロセルロース膜上にブロットした。膜をPBS/0.05% Tween-20で3回洗浄し、Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファ (A151.1; Carl Roth GmbH, Karlsruhe, Germany) で2時間ブロックした。第1抗体、ポリクローナルウサギ抗-FEN1血清(実施例2に記載された作製)は、Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファで1: 10,000に希釈し、当該膜で1時間インキュベートした。当該膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄した。特異的に結合した第1ウサギ抗体は、POD-コンジュゲートポリクローナルヒツジ抗-ウサギIgG抗体で標識し、0.5 x Roti(登録商標)-Blockブロッキングバッファで10 mU/mlに希釈した。1時間インキュベーション後に、当該膜をPBS/0.05% Tween-20で6回洗浄した。結合したPOD-コンジュゲート抗-ウサギ抗体の検出のために、当該膜をLumi-LightPLUS ウェスタンブロッティング基質 (注文番号2015196, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany) でインキュベートし、オートラジオグラフフィルムに曝露した。
【0168】
20人の異なったLC患者から得られた20つの腫瘍組織の内、19個において、FEN1のシグナル強度は増加した(図1)。したがって、実施例1のMALDIによって検出した腫瘍組織中のFEN1の増加量は、ウエスタンブロッティング分析によって明確に確認した。
【0169】
実施例 4
ヒト血清及び血漿サンプル又は他の体液中のFEN1の測定のためのELISA
ヒト血清又は血漿中のFEN1の検出のために、実施例2の抗体を用いてサンドイッチELISAを開発した。抗原の捕獲のために、ペプチド398〜413に対する抗体をビオチンで複合化し、一方、FEN1完全長配列に対する抗体はジゴキシゲンで複合化した。
【0170】
アッセイHT-29細胞の校正のために、米国国立癌研究所のNCI60腫瘍細胞株に含まれるヒト結腸癌細胞株を増殖させ、その細胞の溶解物を校正に使用した。10.0 mg/mlの溶解物を40 μg/mlに希釈し、100 U/mlに任意に設定した。
【0171】
患者由来の標準的な抗原又は血清/血漿/ELFサンプルとしての50 μlのHT-29溶解物の段階希釈物は、1,25 μg/mlビオチン化抗-FEN1、aa 260〜273及び2.5 μg/mlジゴキシニル化抗FEN-1抗体をそれぞれ含む10 mMリン酸塩, pH 7.4, 1% BSA, 0,9% NaCl及び0.1% Tween 20中で、200 μlの抗体混合物で終夜インキュベートした。次いで、100 μlアリコートをストレプトアビジン-コート96-ウェルマイクロタイタープレートに移し、周囲温度で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、プレートを0.9% NaCl, 0.1% Tween 20で、3回洗浄した。次のステップで、ウェルを100 mU/ml抗-ジゴキシゲニン-PODコン油ゲート (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号1633716) で、10 mMリン酸塩, pH 7.4, 1% BSA, 0,9% NaCl及び0.1% Tween 20中で、60分間インキュベートした。次いで、プレートを同一のバッファで3回洗浄した。抗原-抗体複合体の検出のために、ウェルを100 μl TMB溶液 (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, カタログ番号11484281001) でインキュベートし、60分後にODをELISAリーダーで450 nmで測定した。
【0172】
実施例 5
ヒト肺癌(LC)のための血清マーカーとしてのFEN1
表3で示されるUICC分類で365のよく特徴付けられた肺癌患者からのサンプル(146個の腺癌, 87個の扁平上皮細胞CA, 44個の小細胞CA, 88個の他の肺のCA)使用した。
【0173】
【表4】
【0174】
表3のLCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.87であった(図2)。
【0175】
実施例 6
ヒト頭頸部癌(H/NC)のための血清マーカーとしてのFEN1
表4で示されるUICC分類で30のよく特徴付けられた頭頸部癌患者からのサンプルを使用した。
【0176】
【表5】
【0177】
表6のH/NLサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.92であった(図3)。
【0178】
実施例 7
ヒト子宮内膜癌(EC)のための血清マーカーとしてFEN1
表5で示されるUICC分類で23個のよく特徴付けられた子宮内膜癌患者からのサンプルを使用した。
【0179】
【表6】
【0180】
表6のECサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.92であった(図4)。
【0181】
実施例 8
ヒト卵巣癌(OC)のために血清マーカーとしてのFEN1
表6で示されるUICC分類で42個のよく特徴付けられた卵巣癌(OC)患者からのサンプルを使用した。
【0182】
【表7】
【0183】
表6のOCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.79であった(図5)。
【0184】
実施例 9
ヒト悪性黒色腫(MM)のための血清マーカーとしてFEN1
表7で示されるUICC分類で16個のよく特徴付けられた悪性黒色腫患者からのサンプルを使用した。
【0185】
【表8】
【0186】
表6のMMサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.95であった(図6)。
【0187】
実施例 10
ヒト乳癌(BC)のための血清マーカーとしてFEN1
表8で示されるUICC分類で47個のよく特徴付けられた乳癌患者からのサンプルを使用した。
【0188】
【表9】
【0189】
表5のBCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.79であった(図7)。
【0190】
実施例 11
ヒト子宮癌(CC)のための血清マーカーとしてFEN1
表9で示されるUICC分類で20個のよく特徴付けられた子宮癌患者からのサンプルを使用した。
【0191】
【表10】
【0192】
表6のOCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.88であった(図8)。
【0193】
実施例 12
ヒト膵臓癌(PAC)のための血清マーカーとしてFEN1
表10で示されるUICC分類で49個のよく特徴付けられた膵臓癌患者からのサンプルを使用した。
【0194】
【表11】
【0195】
表6のPACサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.84であった(図9)。
【0196】
実施例 13
ヒト結腸癌(CRC)のための血清マーカーとしてFEN1
表11で示されるUICC分類で50個のよく特徴付けられた結腸癌患者からのサンプルを使用した。
【0197】
【表12】
【0198】
表4のCRCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.79であった(図10)。
【0199】
実施例 14
ヒト膀胱癌(BLC)のための血清マーカーとしてFEN1
表12で示されるUICC分類で50個のよく特徴付けられた膀胱癌患者からのサンプルを使用した。
【0200】
【表13】
【0201】
表6のPCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.76であった(図11)。
【0202】
実施例 15
ヒト腎臓癌(KC)のための血清マーカーとしてFEN1
表13で示されるUICC分類で25個のよく特徴付けられた腎臓癌患者からのサンプルを使用した。
【0203】
【表14】
【0204】
表6のKCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.65であった(図12)。
【0205】
実施例 16
ヒト前立腺癌(PC)のための血清マーカーとしてFEN1
表14で示されるUICC分類で50個のよく特徴付けられた前立腺癌患者からのサンプルを使用した。
【0206】
【表15】
【0207】
表6のPCサンプル中のFEN1のレベルは、明らかに健常な個体から得られた50の対照サンプル(= 対照コホート)と比較して評価し、AUCは0.73であった(図13)。
【0208】
実施例 17
気管支肺胞分泌液(ELF)中のFEN1−気管支鏡検査マイクロサンプリング
気管支鏡検査マイクロサンプリング(BMS)は、主として非侵襲的方法で小肺結節の近くの気管支肺胞分泌液(ELF)を回収する可能性を与える。次いで、悪性小結節を同定するためにELF中の腫瘍マーカーの濃度を測定することができる。各々の腫瘍マーカーの患者特異的ベースライン濃度は、対側性の肺においてELFをサンプリングすることによって得た。
【0209】
BMSプローブ (Olympus Medical Systems Corp. Tokyo, Japan, Cat.-No.: BC-402C) は気管支鏡検査法によって肺に挿入し、それは、外側のポリエチレン包皮及びステンレス鋼指針に結合した内側の綿プローブとから成る。内側のプローブは、小結節の近傍に進み、BMSは数秒間行った。その後、内側プローブを外側包皮に引き下げ、2つの装置を同時に引き下げた。綿の先端を切断し、-80℃で直接冷凍した。測定のために、ELFは綿の先端から溶出し、次いで分析することができた。FEN1の濃度は、実施例4に記載されたELISAを用いてELF中で測定した。
【配列表フリーテキスト】
【0210】
配列の説明
配列番号1は、図14に従うヒトFEN1タンパク質のアミノ酸を示す;SwissProtデータべースアクセッション番号:P39748。
配列番号2は、合成されたペプチド伸長を示す。
配列番号3は、合成されたフォワードプライマーを示す。
配列番号4は、合成されたリバースプライマーを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで癌を評価するための方法であって、
体液サンプル中の
(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(FEN1)及び/又はその断片、
(b)場合により1以上の他の癌マーカー
の濃度を測定し、及び
(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、
を含む、方法。
【請求項2】
サンドイッチ免疫アッセイである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌及び非小細胞肺癌のような癌を評価するためのものであることを更に特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の1以上の他のマーカーが、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれることを更に特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記濃度が免疫学的方法によって測定されることを更に特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片の使用。
【請求項7】
子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌及び非小細胞肺癌からなる群より選ばれる癌の評価における、請求項6記載の使用。
【請求項8】
癌の評価における、FEN1タンパク質及び/又はその断片に対する抗体の使用であって、FEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、使用。
【請求項9】
癌の評価における、FEN1タンパク質及び/又はその断片を含むマーカーパネル、及び場合により癌の1以上の他のマーカー、の使用であって、FEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、使用。
【請求項10】
前記の任意の1以上の他のマーカーが、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれることを更に特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項11】
子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌及び非小細胞肺癌の評価における、請求項9又は10に記載のマーカーパネルの使用。
【請求項12】
FEN1タンパク質及び/又はその断片を特異的に測定するために必要とされる試薬、及び場合により癌の1以上の他のマーカーを特異的に測定するために必要とされる試薬を含む、請求項1記載の方法を実施するためのキット。
【請求項13】
FEN1、及びCEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー、及び場合により該測定を実施するための補助試薬を特異的に測定するための、請求項1記載の方法を実施するためのバイオチップアレイ。
【請求項1】
インビトロで癌を評価するための方法であって、
体液サンプル中の
(a)フラップエンドヌクレアーゼ-1タンパク質(FEN1)及び/又はその断片、
(b)場合により1以上の他の癌マーカー
の濃度を測定し、及び
(c)癌の評価においてステップ(a)及び場合によりステップ(b)の測定結果を用いること、ここでFEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、
を含む、方法。
【請求項2】
サンドイッチ免疫アッセイである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌及び非小細胞肺癌のような癌を評価するためのものであることを更に特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)の1以上の他のマーカーが、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれることを更に特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記濃度が免疫学的方法によって測定されることを更に特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
癌の評価におけるFEN1タンパク質及び/又はその断片の使用。
【請求項7】
子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌及び非小細胞肺癌からなる群より選ばれる癌の評価における、請求項6記載の使用。
【請求項8】
癌の評価における、FEN1タンパク質及び/又はその断片に対する抗体の使用であって、FEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、使用。
【請求項9】
癌の評価における、FEN1タンパク質及び/又はその断片を含むマーカーパネル、及び場合により癌の1以上の他のマーカー、の使用であって、FEN1タンパク質及び/又はその断片の増加した濃度が癌の指標である、使用。
【請求項10】
前記の任意の1以上の他のマーカーが、CEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれることを更に特徴とする、請求項9記載の使用。
【請求項11】
子宮内膜癌、悪性黒色腫、子宮癌、頭頸部癌、卵巣癌、結腸癌、膀胱癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、前立腺癌、腎臓癌及び非小細胞肺癌の評価における、請求項9又は10に記載のマーカーパネルの使用。
【請求項12】
FEN1タンパク質及び/又はその断片を特異的に測定するために必要とされる試薬、及び場合により癌の1以上の他のマーカーを特異的に測定するために必要とされる試薬を含む、請求項1記載の方法を実施するためのキット。
【請求項13】
FEN1、及びCEA、NSE、CA 19-9、CA 125、PSA、proGRP、SCC、NNMT、抗-p53自己抗体、セプラーゼ及びDPPIV/セプラーゼからなる群より選ばれる1以上の他のマーカー、及び場合により該測定を実施するための補助試薬を特異的に測定するための、請求項1記載の方法を実施するためのバイオチップアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−533071(P2012−533071A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519924(P2012−519924)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004277
【国際公開番号】WO2011/006642
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004277
【国際公開番号】WO2011/006642
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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