説明

癌及び過増殖性疾患を治療するための組成物及び方法

【課題】本発明は癌細胞及び組織内の成長因子を減少させるか又は阻害する方法を包含する。
【解決手段】免疫原性成長因子含有組成物を、癌又は腫瘍を有するヒト又は動物に投与する。免疫原性組成物は、循環成長因子レベルを低下させる成長因子に特異的な抗体の産生を誘発し、その結果癌の増殖を低下させるか又は消失させる。本発明は、表面外部に提示された成長因子の一部分を有する成長因子含有リポソーム及び小胞を包含する。本発明にはまた成長因子に特異的な抗体も含まれる。それ故、本発明によれば、成長因子レベルは、免疫原性成長因子含有組成物を使用することによる個体の能動免疫化か又は成長因子に特異的な1つの抗体若しくは抗体群を個体に投与することによる受動免疫化のどちらかによって低下させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト又は動物における癌を予防し又は縮小させるためのワクチンに関するものである。更に詳細には、本発明は成長因子を含む免疫原性組成物、成長因子に特異的な抗体及びそれらの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
化学療法剤によって治療できる癌は多いが、かなりの数の癌は本来的に薬剤耐性であり、そして化学療法剤での治療中又はその後に耐性を獲得する癌もある。癌はしばしば複数のタイプの薬剤に耐性である。この現象は多剤耐性又はMDRと呼ばれている。従って、癌の治療においては化学療法に加えて又はその代りに使用できる組成物及び方法に対する多大の需要がある。
【0003】
癌の臨床上の主要な問題は転移である。原発性腫瘍が確認されそして位置が特定されるときまでに、種細胞はしばしば逸脱して身体の他の器官に移動すなわち転移し、そしてそこで続発性腫瘍を確立する。原発性腫瘍が除去された後であっても多数の続発性腫瘍が生き残りそして増殖するので、癌を治癒するためには外科的方法で十分なことは希にしかない。従って、既に存在している続発性腫瘍を根絶する技術に対する即時且つ緊急の需要が存在する。
【0004】
原発性腫瘍から逸脱した癌細胞は、通常、静脈及びリンパ循環で運ばれ、そしてついには下流の毛細血管床又はリンパ節に入る。しかし乍ら、原発性腫瘍から逸脱した10,000個のうち1個の癌細胞だけが生存して続発性腫瘍を確立するに過ぎない。この癌細胞は、生存しそして増殖するのに好ましい環境を見つけた細胞である。好ましい環境はホルモン及び増殖促進因子を含んでいる。刺激因子には局所成長因子、宿主によって産生されるホルモン及び腫瘍細胞自体によって産生される自己刺激性成長因子が含まれる。従って、癌の転移及び続発性腫瘍の形成を予防し又は阻害し得る技術に対する即時且つ緊急の需要がある。
【0005】
加えて、多数の他の過増殖性疾患(hyperproliferative disorders)が存在する。過増殖性疾患は、特別の成長因子に応答して過剰に産生する非癌性(即ち、非新生物性)細胞によって引き起こされる。このような過増殖性疾患の例には、糖尿病性網膜症、乾癬、子宮内膜症、黄斑変性疾患及び良性増殖性疾患、例えば前立腺肥大及び脂肪腫が含まれる。
【0006】
癌細胞自体か又は癌細胞の生存を促進する癌周囲の正常組織のどちらかに影響を与える成長因子(即ち、血管形成因子)によって、多数の新しい癌がイニシエーションされそして存在している癌や過増殖性疾患が刺激されることが知られている。或る成長因子の循環レベルと癌増殖の間には直接的な関係がある。1つの潜在的な治療方法は、患者の循環成長因子レベルを制御して癌のイニシエーション又は再発を予防しそして存在する癌を縮小させるか又は消失させることであろう。それ故、求められているものは適当な成長因子を循環から除去するか又は成長因子の増殖促進活性を阻害する組成物である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明は、一般的に、癌を予防し又は治療するための方法及び組成物に係わるものである。更に詳細には、本発明は、ヒト又は動物に投与したとき成長因子に特異的な抗体の産
生を誘発する免疫原性成長因子含有組成物に係わるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定の癌タイプ及び過増殖性疾患に関係のある成長因子に対してヒト又は動物にワクチン接種する方法を提供する。或る種の癌は1つの成長因子のみに関係があり、そして他の癌は複数の成長因子によって制御される。例えば、或る種のT細胞リンパ腫は成長因子IL−2を産生し、そしてこれが自己分泌作用によって増殖を刺激する。他の腫瘍は血管形成を促進しそして転移部位の組織の血管新生を誘発することによって転移癌病変の増殖を刺激する因子を産生する。
【0009】
成長因子含有組成物の例には、成長因子の一部分、成長因子フラグメント、成長因子の或る種のエピトープの合成ペプチド、又は外部表面に提示された成長因子の修飾フラグメントを有するリポソーム又は小胞が含まれる。上記した組成物は、免疫系によって「自己」として認識されそして天然では抗原性でない成長因子に対して自己免疫を誘発するワクチンとして有用である。生じた循環抗体は成長因子と結合し、そしてそれによって癌増殖のイニシエーションを予防するか、存在する癌を縮小させるか、又は癌の拡大を阻止する。
【0010】
本発明には成長因子に特異的な抗体も含まれる。これらの抗体は強力な免疫系を有するヒト又は動物によって産生されそして精製され、そしてこのような循環抗体を必要としている弱いか又は非機能的な免疫系を有するヒト又は動物に注射される。それ故、本発明によれば、癌は、抗原性成長因子含有組成物を使用することによる個体の能動免疫化か又は成長因子エピトープに特異的な1つの抗体若しくは抗体群を投与することによる受動免疫化のどちらかによって縮小させるか又は阻止される。更に、患者は癌治療後の癌のイニシエーション又は再発前に成長因子組成物で免疫化される。
【0011】
従って、本発明の1つの目的は、癌を有するヒト又は動物における癌を縮小させる方法及び組成物を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、癌の発生又は拡大を予防するための方法及び組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更にもう1つの目的は、成長因子に対してヒト又は動物を免疫化するための方法又は組成物を提供することである。
【0014】
本発明の更にもう1つの目的は、成長因子に対してヒト又は動物を受動免疫化するための方法及び組成物を提供することである。
【0015】
本発明のもう1つの目的は、ヒト又は動物において抗原性でありそして成長因子に対して免疫応答を誘発する成長因子含有組成物を提供することである。
【0016】
本発明の更にもう1つの目的は、成長因子に対する個体の応答を高めるように抗原性部分で修飾された成長因子ペプチドフラグメント及びその使用方法を提供することである。
【0017】
本発明の更にもう1つの目的は、リポソーム中の成長因子ペプチドフラグメント及び修飾成長因子ペプチドフラグメントを提供することである。
【0018】
本発明のなおもう1つの目的は、免疫応答を刺激するためにアジュバントと組み合わせた成長因子ペプチドフラグメント含有組成物を提供することである。
【0019】
本発明のもう1つの目的は、成長因子に対してヒト又は動物を受動免疫化するのに有用な抗成長因子抗体を提供することである。
【0020】
本発明のこれらの目的及び他の目的、特徴並びに利点は開示した実施態様に関する以下の詳細な説明及び下記請求の範囲を検討すれば明白であろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の詳細な説明
本発明は、ヒト又は動物の癌及び過増殖性疾患を予防するか又は縮小させるための方法及び組成物を含む。本発明の抗原性成長因子含有組成物には、成長因子を含有する、例えばリポソーム及び小胞などの担体、抗原性成長因子ペプチドフラグメント、アジュバントと組み合わせた抗原性成長因子ペプチドフラグメント、修飾成長因子ペプチドフラグメント、アジュバントと組み合わせた修飾成長因子ペプチドフラグメント、成長因子ペプチドフラグメントを含有する担体及び修飾成長因子ペプチドフラグメントを含有する担体が含まれるがこれらに限定されない。更になお、本発明には成長因子に対する、そしてこれに特異的な抗体が含まれる。
【0022】
本明細書で使用する用語「成長因子」はポリペプチド成長因子及びポリペプチド血管形成因子、並びにそれらの修飾誘導体及びペプチドフラグメントを意味する。成長因子には次のものが含まれる。
【0023】
線維芽細胞成長因子(FGF)
インターロイキン1〜12(IL-1α、β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12)
ケラチノサイト成長因子
コロニー刺激因子、
例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF又はCSF-1)及びGM−CSF
上皮細胞成長因子(EGF)
血管内皮細胞成長因子(VEGF、或いは血管透過性因子として知られている)
トランスフォーミング成長因子α(TGF−α)
トランスフォーミング成長因子β1〜β5(TGF−β)
シュワン細胞由来成長因子
神経成長因子(NGF)
血小板由来成長因子(PDGF)
インスリン様成長因子1及び2(IGF-1及びIGF-2)
グリア成長因子
腫瘍壊死因子α及びβ(TNF−α、TNF−β);
プロラクチン
成長ホルモン
【0024】
また、本明細書で使用する用語「免疫原性」は、内因性成長因子に対する抗体、T細胞及び他の反応性免疫細胞の産生を誘発するか又は高めそしてヒト又は動物における免疫応答に寄与する物質を指す。
【0025】
個体は内因性成長因子に対する循環抗体を有することがあるが、この個体は成長因子に対する免疫応答を示さない。それ故、本明細書で使用される用語「非免疫原性」は、通常は、循環抗体、T細胞又は反応性免疫細胞を全く又は最小限のレベルしか誘発せず、そして、通常、個体ではこれらに対する免疫応答を誘発しない天然状態の内因性増殖因子を指す。免疫応答は、投与された本発明の成長因子組成物に対して個体が十分な抗体、T細胞
及び他の反応性免疫細胞を産生したときに生起し、治療すべき癌又は過増殖性疾患を和らげるか又は軽減する。
【0026】
本明細書で使用される用語「担体」は、成長因子が導入され、それによって成長因子又は成長因子の一部分を担体の外部表面に提示するか又は露出させ、そして成長因子−担体組成物を成長因子に関して抗原性にすることができる膜構造体を意味する。
【0027】
更に、用語「有効量」は、ヒト又は動物に投与したとき免疫応答を誘発するか、癌を予防するか、癌の縮小を生起させるか又は癌の拡大及び増殖を阻止する、成長因子の量を指す。この有効量は定型的な方法に従って当業者によって容易に決定される。
【0028】
例えば、免疫原性成長因子組成物は患者当たり約1.0μgから1.0mgの範囲で非経口的に又は経口的に投与することができるが、この範囲は限定することを意図するものではない。免疫応答を誘発するために必要な成長因子組成物の実際の量は、投与された成長因子組成物の免疫原性及び個体の免疫応答に依存して各患者個体で変動する。従って、個体に投与される特定の量は定型的な実験によってそして当業者の練度及び経験に基づいて決定されるであろう。
【0029】
本発明の成長因子含有組成物は、担体中に提示することによって免疫原性にされた成長因子の一部分に対する抗体を産生するために使用する。抗成長因子抗体は個体に投与されて、個体を成長因子に対して受動免疫化し、そしてそれによって癌増殖のイニシエーションを予防するか、存在する癌を縮小させるか又は癌の増殖を阻害する。
【0030】
更に詳細には、本発明は、成長因子の一部分を担体表面に提示するように膜担体中に挿入された成長因子を包含する。成長因子は免疫系によって「自己」として認識されるので、通常、免疫原性ではない。しかし乍ら、成長因子の一部分をリポソーム表面に挿入すると成長因子の免疫系への提示が変わり、成長因子は免疫原性となる。
【0031】
免疫原性成長因子含有リポソームは、精製されたか又は部分的に精製された成長因子の存在下でリポソームを再構成することによって製造することができる。更に、成長因子ペプチドフラグメントをリポソーム中へ再構成することができる。本発明には、抗原性を高めるように修飾された成長因子及び成長因子ペプチドフラグメントも含まれる。例えば、抗原部分及びアジュバントを成長因子に結合させるか又は成長因子と混合することができる。抗原部分及びアジュバントの例には、脂肪親和性ムラミルジペプチド誘導体、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムアジュバント及びそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0032】
本発明は更に、担体の疎水性脂質二重層中への挿入を促進する疎水性部分、例えばパルミチン酸で修飾された成長因子フラグメントを包含する。本発明の疎水性部分は脂肪酸、トリグリセリド及びリン脂質であることができ、その際脂肪酸の炭素主鎖は少なくとも10個の炭素原子を有している。最も好ましくは、脂肪親和性部分は、約14個以上且つ約24個までの炭素原子の炭素主鎖を持つ脂肪酸を有している。最も好ましい疎水性部分は少なくとも14個の炭素原子の炭素主鎖を有している。疎水性部分の例には、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸が含まれるがこれらに限定されない。最も好ましい疎水性部分はパルミチン酸である。
【0033】
成長因子、修飾された成長因子及びそれらのペプチドフラグメントを含有する免疫原性組成物をヒト又は動物に投与して成長因子に対する免疫を誘導する。免疫化されたヒト又は動物は、成長因子に結合する成長因子に対する循環抗体を発現し、それによって癌細胞の増殖を刺激する能力を低下させるか又は不活性化する。
【0034】
膜に挿入された成長因子を有するリポソーム及び成長因子を含有する他の免疫原性組成物はまた、成長因子に特異的なモノクローナル又はポリクローナル抗体のパネルを製造するためにも使用される。抗体は当業者に周知の方法によって製造することができる。抗成長因子抗体は個体に投与されたとき成長因子と結合し、成長因子の有効な循環濃度を低下させる。その結果、癌の成長因子依存性の増殖は予防されるか、減少させられるか又は阻止される。
【0035】
成長因子含有組成物及び抗成長因子抗体は任意の適当な手段、好ましくは注射によってヒト又は動物に投与される。例えば、リポソーム内で再構成された成長因子は皮下注射によって投与される。内部で産生されようと外部供給源から提供されようと、循環する抗成長因子抗体は成長因子に結合しそして癌細胞増殖を刺激する成長因子の能力を低下させるか又は不活性化する。
【0036】
本発明の組成物中で使用することができるリポソームには当業者に既知のものが含まれる。リポソームを製造するのに有用な標準的な脂質は全て使用することができる。標準的な二重層及び多重層リポソームを使用して本発明の組成物を製造することができる。当業者に既知のリポソームを製造する任意の方法を使用できるが、最も好ましいリポソームはアルビング(Alving)等、Infect.Immun.60:2438〜2444、1992年(引用により本明細書に含める)の方法に従って製造される。リポソームはアジュバントを任意に含有することができる。好ましいアジュバントは解毒されたリピドA、例えばモノホスホリル又はジホスホリルリピドAである。
【0037】
小胞がリポソームであるとき、成長因子は一般に、形成されるときに、リポソーム膜内に挿入される疎水性テールを有している。更に、成長因子がリポソーム内に挿入され得るように、成長因子を修飾して疎水性テールを含有させることができる。例えば、成長因子遺伝子は疎水性テールをコードするオリゴヌクレオチド配列と融合させる。修飾された遺伝子は、当該技術分野で既知の方法を使用して挿入させそして発現系で発現させ、疎水性テールを有する成長因子融合タンパク質を産生させる。或いは、成長因子は前以て形成されたリポソームの表面に化学的結合又は電気的挿入によって露出させる。
【0038】
小胞がバクロウイルス由来小胞であるとき、組換え体成長因子は、感染昆虫宿主細胞による過程の自然の結果として昆虫細胞の膜上に発現される。上記したリポソームの実施態様と同様に、成長因子は、組換え体として発現されたタンパク質が疎水性部分を含有するように改変し、小胞膜中への挿入を促進することができる。
【0039】
本発明は以下の実施例によって更に説明されるが、本発明の範囲に限定するものと解釈すべきでない。反対に、本明細書の説明を読んだ後に当業者に示唆されると思われる種々の実施態様、改変及び均等物が本発明の精神内でありそして下記請求の範囲に包含されるよう意図されていることを明白に理解すべきである。
【実施例1】
【0040】
実施例I
成長因子含有組換えバキュロウイルスの構築
バキュロウイルス発現ベクターはウエブ(Webb)N.R.等(1989年)、Proc. Natl.Acad.Sci.USA86、7731〜7735(引用により本明細書に含める)に記載されているようにして構築した。ポリヘドロンプロモーターの転写制御下で全長の成長因子をコードするcDNAを含有する組換えバキュロウイルスは、組換えpAc成長因子DNAを野生型のオートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcMNPV)DNAとリン酸カルシウム沈殿によって同時トランスフェクションさせることによ
って得られる。
【実施例2】
【0041】
実施例II
成長因子の発現及び精製
実施例Iのオクルショーン(occlutlon)陰性ウイルスをプラーク精製しそしてスポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)9(Sf−9)細胞中で増殖させる。感染したSf−9細胞は、ウエブN.R.等(1989年)のProc.Natl.Acad.Sci.USA 86、7731〜7735に記載されているようにして単層又は懸濁液中で増殖させる。簡単に述べると、Sf9細胞は、サマーズ(Summers)M.D及びスミス(Smith)、(1987年)バキュロウイルス発現ベクター及び昆虫細胞培養法のマニュアル(A Manual of Methods for Baculovirus Expression Vectors and Insect Cell Culture Procedures)(Texas Agricultural Experiment Station、テキサス州カレッジステーション)Bull.1555に記載された通り、加熱不活性化した10%(v/v)の胎児ウシ血清を補充したTNMFH培地中27℃で培養する。組換え体として発現された成長因子の抽出及び精製は標準的な方法で行われる。
【実施例3】
【0042】
実施例III
成長因子含有リポソームの調製
精製した成長因子は電気挿入(electroinsert)する(Mouneime,Y.等、1990年、Biochem.、引用により本明細書に含める)か又は当該技術分野で既知の標準的な方法によってリポソーム中に再構成させる。成長因子又は成長因子のフラクションのリポソーム中への導入には以下のものがある。
(a) リポソームのルーメンに含まれるか又は多重ラメラ小胞の脂質膜間の水性層中に捕捉された成長因子を有する単又は多重ラメラリポソームを製造するための、成長因子(又は成長因子フラグメント)の水溶液の存在下での、既知の脂質成分の凍結乾燥リポソームの再水和
(b) 再構成したリポソーム中への成長因子又は成長因子フラクションの電気挿入(成長因子はルーメン又は脂質膜間に存在するであろう)
(c) 成長因子の凍結乾燥フラグメントと、調製された既知の組成物のリポソームの再構成(各フラグメントは、ペプチドフラグメントがリポソームの外部表面に露出されるようにリポソームの脂質二重層中に直接挿入される疎水性テールを有する)
(d) 成長因子、成長因子フラクション又は成長因子の組成及び活性に疑似する合成ペプチドに対する免疫応答(体液性又は細胞性)の産生をもたらす活性試薬を再構成するか又は組み合わせる任意の他の方法
【実施例4】
【0043】
実施例IV
成長因子含有バキュロウイルス小胞の調製
成長因子含有小胞は以下のようにして産生させる。膜に組換え体成長因子を含有する昆虫由来小胞はバキュロウイルス感染昆虫細胞を使用して得る。更に詳細には、スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera fruglperda)IPLB−Sf21−AEクローナル単離物9(Sf9と称する)昆虫細胞を、ウエブ等、Proc.Natl.Acad.SCi.、86:7731〜7735(1989年)並びにスミス等に共に付与された米国特許第4,745,051及び4,879,236号(これらは引用により本明細書に含める)に更に詳しく記載されているようにして全長成長因子をコードするcDNAを含有する組換えバキュロウイルスと共に培養しそして感染させる。約0.8×106個のSf9細胞を、エクセル(Excell)培地(JRH Scientific、95695 カリフォルニア州ウッドランド)を含有する1リットルのスピナーフラスコ中に接種する。細胞は50%O2雰囲気中27℃でインキュベートする。細胞が3.5から4.0百万個の細胞/mlの密度
を達したとき、組換え成長因子を含有するバキュロウイルスを400〜600個のウイルス/細胞の多重度で培地に加える。
【0044】
小胞産生はバキュロウイルス感染して約24時間後に始まる。小胞形成のピークは初期バキュロウイルス感染の約72時間後に達成される。フラスコ内容物を集めそして約1200rpmで遠心して細胞及び組織片を除去する。小胞を含有する上清を集めそして固定アングルローターを使用して0.1Mの重炭酸ナトリウム(pH8.3)を含有する50%パーコール上で20,000RPMで30分間遠心に付す。パーコールと細胞培養培地間の間層下の二重バンドを集め、そして懸濁液をスイングバケットローターにより20,000RPMで30分間遠心する。グラジエントの頂部と底部に2つのバンドを観察することができ、1.05g/mlの密度は小胞に対するものでありそして1.06g/mlの密度はバキュロウイルス粒子に対するものである。小胞は外部表面に提示された成長因子を有しておりそして免疫化に使用することができる。小胞は、20,000RPM、20分間の遠心を使用して0.1Mの重炭酸ナトリウム(pH8.3)で3回洗浄しそして同じ緩衝液中に再懸濁する。
【実施例5】
【0045】
実施例V
成長因子含有組成物による免疫化
免疫原性成長因子含有組成物、すなわち、リポソームか又はバキュロウイルス由来小胞のどちらかを体重1kg当たり1〜1000μgの用量でヒト又は動物に注射する。成長因子に対する抗体力価は、組換えタンパク質及びホースラディッシュパーオキシダーゼ複合ヤギ抗ヒト又は動物免疫グロブリンを使用してエリザ法、又は他の血清学的技術(サンドイッチエリザ法)、又は現在存在するか又は個々の成長因子に対して特異的に開発される生物学的活性アッセイ(例えば天然若しくは合成サイトカインの中和又は成長因子アッセイ若しくは競合アッセイ)によって測定される。ブースター注射は、インビボでの成長因子の活性を低下させるか又は中和するのに十分なレベルの保護抗体を達成するために必要である。中和力価及び適当な抗体のイソタイプは適当な癌細胞を抗原投与した実験動物で決定される。
【実施例6】
【0046】
実施例VI
抗成長因子抗体の調製及び単離
強力な免疫系を有する個体を実施例Vに記載したようにして免疫化する。抗成長因子抗体の高力価が達成された後に、IgGフラクションを血液から単離しそして下記実施例VIIに記載されるようにして個体を受動免疫化するために使用する。
【実施例7】
【0047】
実施例VII
受動免疫化
受動免疫化すべき種から単離した抗成長因子抗体を、体重1kg当たり約0.5〜50mgの用量で静脈内に注射して投与する。用量及び投与回数は、種々の腫瘍タイプを抗原投与した実験動物で決定しそして治療されている腫瘍の特定のタイプ及び特定の個体に対して調整する。重要な考慮事項は、腫瘍の侵襲性、転移性拡大の傾向、転移の標的器官、標的器官の血管新生/抗体に対する組織アクセスの利用可能性、及び腫瘍発達段階である。普遍的に保護的となる標準的なレジメを決定できることは真実であると思われるが、効果的な治療法は腫瘍タイプに基づいて個々の要求に合わせた規準でしか達成されないということも真実であると思われる。
【0048】
本発明を、開示した実施態様を参照して特に詳細に記載したが、多数の変更や修正が下記の請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲内で行われ得ると理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン組成物であって、
(a)前記組成物で免疫化すべきヒト又は動物において非免疫原性である成長因子、及び
(b)前記組成物がヒト又は物に投与されたとき成長因子に関して免疫原性であるように前記成長因子がその表面に提示されている担体を含む前記組成物。
【請求項2】
前記担体がリポソームである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記担体がバキュロウイルス由来小胞である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記成長因子が、インターロイキン、ケラチノサイト成長因子、コロニー刺激因子、上皮細胞成長因子(EGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、トランスフォーミング成長因子、シュワン細胞由来成長因子、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子1及び2(IGF−1及びIGF−2)、グリア成長因子、腫瘍壊死因子、プロラクチン並びに成長ホルモンからなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
アジュバントを更に含んでいる請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが脂肪親和性ムラミルジペプチド誘導体、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリピドAからなる群から選択される請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アジュバントがリピドAである請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記成長因子に結合した免疫原性部分を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記成長因子に結合した疎水性部分を更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記疎水性部分が、脂質主鎖に少なくとも10個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸を少なくとも1つ含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記疎水性部分が、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸からなる群から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性部分がパルミチン酸である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
有効量の免疫原性成長因子ワクチン組成物をヒト又は動物に投与することを含む癌の予防又は縮小化方法であって、前記組成物が
(a)該組成物で免疫化すべきヒト又は動物において非免疫原性である成長因子、及び
(b)前記組成物がヒト又は動物に投与されたとき成長因子に関して免疫原性であるように成長因子がその膜に挿入されている担体を含む前記方法。
【請求項14】
前記担体がリポソームである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記担体がバキュロウイルス由来小胞である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記成長因子が、インターロイキン、ケラチノサイト成長因子、コロニー刺激因子、上皮
細胞成長因子(EGF)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、トランスフォーミング成長因子、シュワン細胞由来成長因子、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、インスリン様成長因子1及び2(IGF−1及びIGF−2)、グリア成長因子、腫瘍壊死因子、プロラクチン並びに成長ホルモンからなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
アジュバントを更に含んでいる請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記アジュバントが脂肪親和性ムラミルジペプチド誘導体、非イオン性ブロックポリマー、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリピドAからなる群から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アジュバントがリピドAである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記成長因子に結合した免疫原性部分を更に含んでいる請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記成長因子に結合した疎水性部分を更に含んでいる請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記疎水性部分が、脂質主鎖に少なくとも10個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸を少なくとも1つ含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記疎水性部分が、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸からなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疎水性部分がパルミチン酸である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記投与が注射によるものである請求項13に記載の方法。

【公開番号】特開2007−262102(P2007−262102A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191910(P2007−191910)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【分割の表示】特願平7−500957の分割
【原出願日】平成6年5月26日(1994.5.26)
【出願人】(500523928)エントレメッド インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】