説明

癌治療のための装置および方法

【課題】肝臓癌、腎臓癌、前立腺癌、脳腫瘍、および乳癌のような癌の治療のための装置および方法、特に、肝臓癌治療のための装置および方法を提供すること。
【解決手段】(i)放射性ヌクレオチド、細胞毒性薬物の1つまたは双方から選ばれた抗癌成分;および(ii) 吸収性シリコン、生体適合性シリコン、バイオ活性シリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、非晶質シリコン、および体積結晶質シリコンの1種以上から選ばれたシリコン成分を含む内部治療用製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓癌、腎臓癌、前立腺癌、脳腫瘍、および乳癌のような癌の治療のための装置および方法に関する。さらに詳細には、本発明は、肝臓癌治療のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓癌は、肝臓の葉部内での1個以上の腫瘍の増殖に特徴を有する。肝臓癌の僅かに5%は、外科処置によって治療し得る。これらの腫瘍は、肝臓組織から直接或いは身体の他の部位の腫瘍からの転移によって生じ得る。癌の肝臓への転移は、癌患者における一般的な死亡原因である。
原発性肝臓癌は、世界的に最も一般的な癌の1つである。この疾病の最大の発生率は、肝炎が蔓延しているアジア諸国においてである。原発性肝臓癌の2つの主要原因は、B型肝炎とアルコール過剰摂取である。
放射線治療用のガラス類は、ベータまたはガンマ放射線による肝臓癌の治療において使用されてきている。使用されているガラス類は、生体適合性であり、患者の体内において実質的に不溶性である。不溶性は、ターゲット部位からの望ましくない放射性同位元素の放出を阻止するので、重要な因子であるとみなされている。
【0003】
肝臓癌の治療において使用されている放射線治療用ガラスの1つの例は、イットリウムアルミノシリケートである。このガラスは、ターゲット腫瘍への1次血液供給流である肝動脈内にこのガラスを含む微粒子を注入することによって、肝臓に投与される。微粒子の粒度は、血液が微粒子を肝臓の毛細床中に運び込むが、微粒子が肝臓を完全に通過して循環系に入るには大き過ぎるような大きさである。これらの微粒子は腫瘍まで血液流に従い、その血液流は通常よりも多い血液供給を有する。患者は、肝臓の動脈循環中への細胞毒性薬物の灌注と併用したこれら微粒子による併用肝臓治療の利益を有し得る。
残念なことに、放射性ガラスが不溶性でなければならない要件は、癌の治療を損ない得る。同位元素が減衰した後の癌の引き続く存在は、ガラス微粒子を使用するさらなる治療が望ましいことを意味し得る。しかしながら、癌周辺での今や非放射性である粒子の存在は、放射性粒子によるさらなる治療の有効性を低減させる。
埋込みの使用を含む他の形の癌治療に当てはまるさらなる問題は、インプラント(埋込片)の腫瘍モニタリングへの干渉である。
微粒子を肝臓の動脈血液供給流中に投与する場合、それらの微粒子が肝臓内で比較的均質な分布を生ずる粒度、形状および密度を有することが有利である。均一な分布が生じない場合、それらの微粒子は、最大濃度領域において過剰の放射線を生じ得る。
【0004】
従って、放射性微粒子を使用する治療の有効性に影響する多くの要因が存在している。
これらの要因としては、粒度、溶解性、生体適合性、放射線に対する安定性、密度および形状がある。
肝臓癌の治療用微粒子の使用は、インプラント類を使用して放射線と化学療法剤を伝達させる広い分野のがん治療の1部を構成している。この方法で治療可能な癌も、やはり、乳癌、腎臓癌、前立腺癌、および脳腫瘍である。例えば、放射性シードおよびペレット類は、腫瘍の近接照射療法、即ち、腫瘍の局部治療を行うための放射線源の埋込みを含む治療形態において現在使用されている。近接照射療法は、患者身体に対して外部にある放射線源による部位の治療を含む他の治療方法とは対照的である。
【0005】
【特許文献1】国際公開第97/006101号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO99/037409号パンフレット
【非特許文献1】Coffer, Jeffery L., "MATERIALS RESEARCH SOCIETY SYMPOSIUM PROCEEDINGS" (2000), 61-65頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の諸問題の少なくとも幾つかに対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の局面によれば、本発明は、下記を含むことを特徴とする内部治療用製品を提供する:
(i) 少なくとも1種の放射性ヌクレオチドおよび/または少なくとも1種の細胞毒性薬物を含む抗癌成分;および
(ii) 吸収性シリコン、生体適合性シリコン、バイオ活性シリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、非晶質シリコン、および体積(bulk)結晶質シリコンの1種以上から選ばれたシリコン成分。
本明細書の目的においては、バイオ活性シリコンは患者の組織との結合を形成し得るシリコンであり、吸収性シリコンは患者の体液中で吸収分解し得るシリコンであり、生体適合性シリコンは抗癌治療の目的において生体適合性であるシリコンである。ある種の形態の多孔質および多結晶質シリコンは、PCT/GB96/01863に開示されているように、バイオ活性および/または吸収性であることが判明している。
本明細書の目的においては、放射性ヌクレオチドは、放射性核種として理解すべきである。放射性ヌクレオチド類は、放射性核種とも一般に称せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記治療用製品は、少なくとも1個のインプラントを含み得る。上記シリコン成分は、少なくとも1個のインプラントを構成し得る。これらインプラントの1個または少なくとも1個は、微粒子を含み得る。上記治療用製品は、上記微粒子の1個または少なくとも1個を含む患者への注入に適する懸濁液を含み得る。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は、次の1種以上を含み得る:シード、ペレット、ビーズ。上記治療用製品は、次の1種以上を含み得る:ステープル、縫合糸、ピン、プレート、スクリュー、とげ状物(barb)、コイル、スレッド、および爪状物。
上記抗癌成分は、放射性ヌクレオチド、細胞毒性薬物の1つまたは双方から選択し得る。
好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個は、シリコンを含み、これらインプラントの1個または少なくとも1個が近接照射療法に適するような形状と組成を有する。
癌治療のための治療用製品の製造に当ってのシリコンの使用は、シリコンが標準のミクロ製造法によって容易に加工でき、ステープル、縫合糸、ピン、プレート、スクリュー、とげ状物および爪状物のような物品を製造し得るので、有利である。多孔質シリコンの形のシリコンも放射性組成物に核変換し得、核変換の性質は治療すべき癌に依存する。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は、上記シリコン成分の少なくとも1部と上記抗癌成分の少なくとも1部を含み得る。上記微粒子の1個または少なくとも1個は、上記シリコン成分の少なくとも1部と上記抗癌成分の少なくとも1部を含み得る。上記治療用製品は、複数のシリコンインプラントを含み得る。
例えば、上記内部治療用製品は、複数の微粒子を含み、各微粒子が多孔質シリコンを含み得る。
【0009】
好ましくは、上記微粒子の1個または少なくとも1個の最大寸法は、0.1〜100μmの範囲である。より好ましくは、上記微粒子の1個または少なくとも1個の最大寸法は、20〜50μmの範囲である。
上記内部治療用製品を肝臓癌の治療に使用し且つ微粒子の懸濁液を肝臓動脈中へ注入することによって伝達しなければならない場合、微粒子の少なくとも幾つかの寸法は、微粒子が肝臓中に入るが肝臓からは出ないようでなければならない。
好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個の最大寸法は、0.01 mm〜30 mmの範囲である。より好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個の最大寸法は、0.5 mm〜30 mmの範囲である。さらにもっと好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個の最大寸法は、1 mm〜30 mmの範囲である。
上記インプラントの少なくとも1個の最大寸法は、0.1 mm〜5 mmの範囲であり得る。
上記インプラントは、悪性腫瘍が位置する患者身体の任意の部位に導入し得る。例えば、インプラント導入形態は、皮下、筋肉内、腹膜内または経皮であり得る。上記インプラントは、肝臓、肺臓または腎臓のような器官中に埋込み得る。また、上記インプラントは、脈管または管路からなる組織中に導入してもよい。
有利には、上記インプラントの1個または少なくとも1個の比重は0.75〜2.5 gcm-3であり、より有利には、上記インプラントの1個または少なくとも1個の比重は1.8〜2.2 gcm-3である。
【0010】
多孔質シリコンの使用は、肝臓癌の治療に対して有利である。何故ならば、多孔質シリコンの密度を、その多孔度を変えることによって制御し得るからである。粒子密度は、微粒子を肝臓動脈に投与することによる肝臓癌の治療の成功を決定する重要な因子である。
好ましくは、上記シリコン成分は吸収性シリコンを含む。より好ましくは、上記シリコン成分は吸収性シリコンを含み、上記抗癌成分は放射性ヌクレオチドを含み、その放射性ヌクレオチドを上記吸収性シリコンの少なくとも1部に分布させる。さらにもっと好ましくは、上記吸収性シリコンの構造は、上記放射性ヌクレオチドの半減期の方が、吸収性シリコンが患者中に導入したときに実質的に減衰するのに要する時間よりも短いような構造である。さらにもっと好ましくは、上記吸収性シリコンの構造は、上記放射性ヌクレオチドの半減期の方が、吸収性シリコンが患者中に導入したときに実質的に減衰するのに要する時間の1/10よりも短いような構造である。
有利には、上記インプラントの1個または少なくとも1個は、吸収性シリコンを含む。より好ましくは、上記インプラントの1つまたは少なくとも1つは、吸収性多孔質シリコンを含む。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み、その吸収性シリコンは、実質的にすべての該放射性ヌクレオチドが、埋込み時から測定して上記放射性ヌクレオチドの半減期よりも長い期間、上記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部中および/または上に残存するような構造と組成を有する。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み、その吸収性シリコンは、実質的にすべての上記放射性ヌクレオチドが、埋込み時から測定して上記放射性ヌクレオチドの半減期の2倍よりも長い期間、上記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部中および/または上に残存するような構造と組成を有する。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み、その吸収性シリコンは、実質的にすべての上記放射性ヌクレオチドが、埋込み時から測定して上記放射性ヌクレオチドの半減期の10倍よりも長い期間、上記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部中および/または上に残存するような構造と組成を有する。
【0011】
上記放射性ヌクレオチドの半減期の方が、上記吸収性シリコンが、例えば、上記吸収性シリコンを患者の肝臓に導入したときに、かなり有意な程度に減衰するのに要する時間よりも短いこと担保することによって、上記放射性ヌクレオチドが患者の他の部位に散逸する危険性を低減させる。この方法において、上記インプラントは、放射活性が安全なレベルに減衰するまで、上記放射性ヌクレオチドを腫瘍領域に局在化させ得る。吸収性シリコンの使用は、上記治療用製品の繰り返しの投与が有効であることを担保する。上記放射性ヌクレオチドが減衰するか或いは細胞毒性薬物が伝達されると直ぐに、上記治療用製品は消滅して、さらなる投与量のインプラント(例えば、微粒子)の腫瘍領域への伝達を可能にする。
吸収性シリコン使用の結果としての1個以上のインプラントの消滅(dissolution)は、消滅が起こると同時に腫瘍がマスクされていないので、患者の診断画像作成も支援し得る。
シリコンは、肝臓癌を治療するのに使用するベータおよびガンマ放射線に対して高度に安定である点で、ポリマー類のような他の吸収性材料と対照的である。
上記シリコン成分はミクロ機械加工して、所定の大きさと形状を有する1個以上のインプラントを製造することができ、その大きさおよび/または形状はインプラントの損傷および/または膨張および/または移動を最小にするように選定する。
有利には、上記シリコン成分は多孔質シリコンを含む。より有利には、上記シリコン成分は多孔質シリコンを含み、上記抗癌成分は細胞毒性薬物を含み、この細胞毒性薬物は上記多孔質シリコンの孔の少なくとも1つに配置される。
【0012】
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと細胞毒性薬物を含み、この吸収性シリコンは、上記インプラントが上記インプラントの部位に上記薬物の放出を実質的に局在化させるのに十分にインタクトなままであるような構造と組成を有する。
上記インプラントは、上記細胞毒性薬物が実質的に完全に放出されると、その後、上記インプラントが吸収され、それによってさらなる埋込みおよび/または患者の診断画像形成を可能とするように設計し得る。
好ましくは、上記シリコン成分は吸収性シリコンと多孔質シリコンを含み、細胞毒性薬物を上記多孔質シリコンの少なくとも1つの孔中に配置し、放射性ヌクレオチドを上記吸収性シリコンの少なくとも1部を介して分布させる。
例えば、上記内部治療用製品は、放射性ヌクレオチドを導入した数個の吸収性シリコン粒子と、細胞毒性薬物を導入した数個の多孔質シリコン粒子とを含み得る。上記内部治療用製品は、患者への投与直前に上記2つタイプの粒子を混合することによって調製し得る。例えば、上記2つのタイプの粒子は、患者への投与前2時間未満で混合し得る。
上記吸収性シリコンは、誘導体化吸収性シリコンを含み得る。上記多孔質シリコンは、PCT/US99/01428号に開示されているタイプの誘導体化多孔質シリコンのような誘導体化多孔質シリコンを含み得る。上記特許の内容は、参考として本明細書に引用する。
本明細書の目的においては、誘導体化多孔質シリコンは、多孔質シリコンの表面(孔表面のような)の少なくとも1部に化学的に結合させた単分子または単原子層を有する多孔質シリコンとして定義する。上記層とシリコン間の化学結合は、Si-Cおよび/またはSi-O-C結合を含み得る。
【0013】
上記抗癌成分は、上記シリコン成分の表面に共有結合させ得る。上記シリコン成分は多孔質シリコンであり得、上記抗癌成分は放射性ヌクレオチドであり得、この放射性ヌクレオチドを上記多孔質シリコンの表面に共有結合させ得る。
多孔質および/または誘導体化シリコンの使用は、その吸収分解速度をシリコンの多孔度および/または誘導化度の適切な選択によって制御し得るので、有利である。
上記抗癌成分は細胞毒性薬物を含み得、その細胞毒性薬物は、シクロホスファミドのようなアルキル化剤、ドクソルビチンのような細胞毒性抗体、フルオロウラシルのような抗代謝剤、ビンブラスチンのようなビンカアルカロイド、GNRHのようなホルモン調節剤、およびシスプラチンのような白金化合物の1種以上から選択し得る。
上記抗癌成分は放射性ヌクレオチドを含み得、その放射性ヌクレオチドは、90Y、32P、124Sb、114In、59Fe、76As、140La、47Ca、103Pd、89Sr、131I、125I、60Co、192Ir、12B、71Ge、64Cu、203Pbおよび198Auの1種以上から選択し得る。
32Pのような放射性ヌクレオチドは、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する同位元素であり得る。32Pのような放射性ヌクレオチドは、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する同位元素であり得、30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。32Pのような放射性ヌクレオチドは、30Siのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有する同位元素であり得、30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。
【0014】
好ましくは、上記内部治療用製品は多孔質構造体を含み、その多孔質構造体は、上記シリコン成分の少なくとも1部を含み、放射性ヌクレオチドを含む。より好ましくは、上記多孔質構造体は放射性ヌクレオチドを含み、その放射性ヌクレオチドの構造と組成は、30Si原子の核変換によって得ることができる。さらにもっと好ましくは、上記内部治療用製品は多孔質構造体を含み、この多孔質構造体は上記シリコン成分の少なくとも1部を含み且つ放射性ヌクレオチドを含み、その放射性ヌクレオチドは、30Si原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する32Pである。
上記抗癌成分は、70Geの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。上記抗癌成分は、70Geのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。
上記抗癌成分は、シリコンゲルマニウム合金中に存在する70Ge原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。上記抗癌成分は、多孔質シリコンゲルマニウム合金中に存在する70Ge原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。
上記放射性ヌクレオチドを調製するための核変換の使用(上記抗癌成分が少なくとも部分的に形成される)は、幾つかの利点を有し得る。多孔質シリコンを含むインプラント内での核変換によって形成された放射性ヌクレオチドの分布は、実質的に均一であり得る。
そのような均一な分布は、比較的高濃度の放射性ヌクレオチドを多孔質シリコン中に導入するのを可能とするであろう。さらに、核変換は、上記シリコンの多孔質構造および付随する生物学的特性の保持も可能にする。
上記抗癌成分は放射性ヌクレオチドを含み得、上記シリコン成分は多孔質シリコンを含み得る。上記放射性ヌクレオチドの少なくとも1部は、0.1μm(0.1ミクロン)以上の各辺を有する多孔質シリコンの立方体領域中に実質的に均一に分布させ得る。上記放射性ヌクレオチドの少なくとも1部は、1ミクロン以上の各辺を有する多孔質シリコンの立方体領域中に実質的に均一に分布させ得る。上記放射性ヌクレオチドの少なくとも1部は、100μm(100ミクロン)以上の各辺を有する多孔質シリコンの立方体領域中に実質的に均一に分布させ得る。上記放射性ヌクレオチドの少なくとも1部は、1000μm(1000ミクロン)以上の各辺を有する多孔質シリコンの立方体領域中に実質的に均一に分布させ得る。
【0015】
第2の局面によれば、本発明は、癌の治療方法を提供し、その方法は、内部治療用製品を患者に導入する処置を含み、この内部治療用製品が下記を含むことを特徴とする:
(i) 吸収性シリコン、生体適合性シリコン、バイオ活性シリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、非晶質シリコン、および体積結晶質シリコンの1種以上から選ばれたシリコン成分;および、
(ii) 少なくとも1種の放射性ヌクレオチドおよび/または少なくとも1種の細胞毒薬物を含む抗癌成分。
好ましくは、上記内部治療用製品は、放射性ヌクレオチド、細胞毒性薬物の1つまたは双方から選ばれた抗癌成分を含む。
有利には、上記内部治療用製品は少なくとも1個のインプラントを含み、上記内部治療用製品を導入する処置は、上記インプラントの1個または少なくとも1個を患者の体内に埋込む処置を含む。より有利には、上記インプラントの1個または少なくとも1個を埋込む処置は、癌が位置する器官(1つ以上)中に上記インプラントの1個または少なくとも1個を微粒子銃的に(biolistically)埋込む処置を含む。
上記インプラントの1個または少なくとも1個を埋込む処置は、上記インプラントの1個または少なくとも1個を患者の1つ以上の器官に埋込む処置を含む。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は、上記シリコン成分の少なくとも1部と上記抗癌成分の少なくとも1部を含み得る。
【0016】
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと細胞毒性薬物を含み得、癌の上記治療方法は、上記細胞毒性薬物の放出が埋込み点に実質的に局在化したままであるような方法で上記細胞毒性薬物の少なくとも1部を放出させるさらなる処置を含む。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み得、癌の上記治療方法は、放射線治療を埋込み点に局在化させるような方法で上記放射性ヌクレオチドからの放射線で患者身体の1部を治療する処置を含み、さらに、上記放射性ヌクレオチドの半減期を過ぎると直ぐに上記シリコンを実質的に完全に吸収可能にするさらなる処置を含む。
癌の上記治療方法は、近接照射療法であり得る。
好ましくは、上記内部治療用製品は等張溶液中に懸濁させた複数の微粒子を含み、上記内部治療用製品を導入する処置は、癌が位置する器官(1つ以上)に連結したおよび/またはその器官内にある動脈または静脈中に上記懸濁液を注入する処置を含む。
上記微粒子の少なくとも1個は、上記シリコン成分の少なくとも1部と上記抗癌成分の少なくとも1部を含み得る。
好ましくは、癌の上記治療方法は肝臓癌の治療方法であり、内部治療用製品を導入する上記処置は、上記治療用製品を患者の肝臓中に導入する処置を含む。
【0017】
有利には、上記内部治療用製品は放射性ヌクレオチドと細胞毒性薬物を含み、癌の上記治療方法は、患者に上記治療用製品を導入する前の10時間未満で上記放射性ヌクレオチドと上記細胞毒性薬物を混合するさらなる処置を含む。より有利には、上記放射性ヌクレオチドと上記細胞毒性薬物を混合する処置は、患者に上記治療用製品を導入する前の5時間未満で実施する。さらにもっと有利には、記放射性ヌクレオチドと上記細胞毒性薬物を混合する処置は、患者に上記治療用製品を導入する前の1時間未満で実施する。
上記細胞毒性薬物は、シクロホスファミドのようなアルキル化剤、ドクソルビチンのような細胞毒性抗体、フルオロウラシルのような抗代謝剤、ビンブラスチンのようなビンカアルカロイド、GNRHのようなホルモン調節剤、およびシスプラチンのような白金化合物の1種以上から選択し得る。
上記放射性ヌクレオチドは、90Y、32P、124Sb、114In、59Fe、76As、140La、47Ca、103Pd、89Sr、131I、125I、60Co、192Ir、12B、71Ge、64Cu、203Pbおよび198Auの1種以上から選択し得る。
32Pのような放射性ヌクレオチドは、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する同位元素であり得る。32Pのような放射性ヌクレオチドは、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する同位元素であり得、30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。32Pのような放射性ヌクレオチドは、30Siのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有する同位元素であり得、30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。
【0018】
好ましくは、上記内部治療用製品は多孔質構造体を含み、その多孔質構造体は、上記シリコン成分の少なくとも1部を含み且つ放射性ヌクレオチドを含む。より好ましくは、上記多孔質構造体は放射性ヌクレオチドを含み、その放射性ヌクレオチドの構造と組成は、30Si原子の核変換によって得ることができる。さらにもっと好ましくは、上記内部治療用製品は多孔質構造体を含み、この多孔質構造体は、上記シリコン成分の少なくとも1部を含み且つ放射性ヌクレオチドを含み、その放射性ヌクレオチドは、30Si原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する32Pである。
上記抗癌成分は、70Geの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。上記抗癌成分は、70Geのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。
上記抗癌成分は、シリコンゲルマニウム合金中に存在する70Ge原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。上記抗癌成分は、多孔質シリコンゲルマニウム合金中に存在する70Ge原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する71Geのような放射性ヌクレオチドを含み得る。
【0019】
第3の局面によれば、本発明は、癌治療用の薬物を製造するための下記を含む内部治療用製品の使用を提供する:
(i) 少なくとも1種の放射性ヌクレオチドおよび/または少なくとも1種の細胞毒性薬物を含む抗癌成分;および
(ii) 吸収性シリコン、生体適合性シリコン、バイオ活性シリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、体積結晶質シリコン、および非晶質シリコンの1種以上から選ばれたシリコン成分。
有利には、上記内部治療用製品は、放射性ヌクレオチド、細胞毒性薬物の1つまたは双方から選ばれた抗癌成分を含む。
好ましくは、内部治療用製品の上記使用は、肝臓癌治療用の薬物の製造においてである。
有利には、上記内部治療用製品の使用は、近接照射療法による癌治療用の薬物の製造においてである。
上記治療用製品は、少なくとも1個のインプラントを含む。これらインプラントの1個または少なくとも1個は、微粒子を含み得る。上記治療用製品は、上記微粒子の1個または少なくとも1個を含む、患者への注入に適する懸濁液を含み得る。その懸濁液は、等張性溶液を含み得る。
【0020】
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと細胞毒性薬物を含み得、その吸収性シリコンは、上記インプラントが上記薬物の放出を上記インプラントの部位に局在化させるのに十分にインタクトのままであるような構造と組成を有する。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み得、その吸収性シリコンは、実質的にすべての該放射性ヌクレオチドが、埋込み時から測定して上記放射性ヌクレオチドの半減期よりも長い期間、上記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部中および/または上に残存するような構造と組成を有する。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み、その吸収性シリコンは、実質的にすべての上記放射性ヌクレオチドが、埋込み時から測定して上記放射性ヌクレオチドの半減期の2倍よりも長い期間、上記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部中および/または上に残存するような構造と組成を有する。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み、その吸収性シリコンは、実質的にすべての上記放射性ヌクレオチドが、埋込み時から測定して上記放射性ヌクレオチドの半減期の10倍よりも長い期間、上記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部中および/または上に残存するような構造と組成を有する。
好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個の最大寸法は、0.01 mm〜30 mmの範囲である。より好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個の最大寸法は、0.5 mm〜30 mmの範囲である。さらにもっと好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個の最大寸法は、1 mm〜30 mmの範囲である。
上記インプラントの少なくとも1個の最大寸法は、0.1 mm〜5 mmの範囲であり得る。
【0021】
上記インプラントの1個または少なくとも1個は、次の1種以上を含み得る:シード、ペレット、ビーズ。上記治療用製品は、次の1種以上を含み得る:ステープル、縫合糸、ピン、プレート、スクリュー、とげ状物、および爪状物。
好ましくは、上記インプラントの1個または少なくとも1個は、シリコンを含み、上記インプラントの1個または少なくとも1個が近接照射療法に適するような形状と組成を有する。
癌治療用の治療用製品の製造におけるシリコンの使用は、シリコンが標準のミクロ製造法によって容易に加工でき、ステープル、縫合糸、ピン、プレート、スクリュー、とげ状物および爪状物のような物品を製造し得るので、有利である。
上記インプラントの1個または少なくとも1個は、上記シリコン成分の少なくとも1部と上記抗癌成分の少なくとも1部を含み得る。上記微粒子の1個または少なくとも1個は、上記シリコン成分の少なくとも1部と上記抗癌成分の少なくとも1部を含み得る。
好ましくは、上記微粒子の1個または少なくとも1個の最大寸法は、0.1〜100μmの範囲である。より好ましくは、上記微粒子の1個または少なくとも1個の最大寸法は、20〜50μmの範囲である。
上記インプラントは、悪性腫瘍が位置する患者身体の任意の部分に導入し得る。例えば、インプラント導入形態は、皮下、筋肉内、腹膜内または経皮であり得る。
有利には、上記インプラントの1個または少なくとも1個の比重は0.75〜2.5 gcm-3であり、より有利には、上記インプラントの1個または少なくとも1個の比重は1.8〜2.2 gcm-3である。
【0022】
好ましくは、上記シリコン成分は吸収性シリコンを含む。より好ましくは、上記シリコン成分は吸収性シリコンを含み、上記抗癌成分は放射性ヌクレオチドを含み、その放射性ヌクレオチドを上記吸収性シリコンの少なくとも1部に分布させる。さらにもっと好ましくは、上記吸収性シリコンの構造は、上記放射性ヌクレオチドの半減期の方が、吸収性シリコンが患者の肝臓中に導入したときに実質的に減衰するのに要する時間よりも短いような構造である。さらにもっと好ましくは、上記吸収性シリコンの構造は、上記放射性ヌクレオチドの半減期の方が、吸収性シリコンが患者の肝臓中に導入したときに実質的に減衰するのに要する時間の1/10よりも短いような構造である。
好ましくは、上記シリコン成分は吸収性シリコンと多孔質シリコンを含み、細胞毒性薬物を上記多孔質シリコンの孔の少なくとも1つ中に配置し、放射性ヌクレオチドを上記吸収性シリコンの少なくとも1部を介して分布させる。
上記吸収性シリコンは、誘導体化吸収性シリコンを含み得る。上記多孔質シリコンは、誘導体化多孔質シリコンを含み得る。
上記細胞毒性薬物は、シクロホスファミドのようなアルキル化剤、ドクソルビチンのような細胞毒性抗体、フルオロウラシルのような抗代謝剤、ビンブラスチンのようなビンカアルカロイド、GNRHのようなホルモン調節剤、シスプラチンのような白金化合物、および放射性薬剤の1種以上から選択し得る。
上記放射性ヌクレオチドは、90Y、32P、124Sb、114In、59Fe、76As、140La、47Ca、103Pd、89Sr、131I、125I、60Co、192Ir、12B、71Ge、64Cu、203Pbおよび198Auの1種以上から選択し得る。
【0023】
本明細書の目的においては、用語“患者”は、動物患者またはヒト患者のいずれかである。
第4の局面によれば、本発明は、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有し、上記30Siが多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する放射性ヌクレオチドを提供する。
好ましくは、上記放射性ヌクレオチドは、30Siのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有し、上記30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。
第5の局面によれば、本発明は、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する、癌治療用の放射性ヌクレオチドを提供する。
好ましくは、上記放射性ヌクレオチドは、30Siのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有する。
有利には、上記放射性ヌクレオチドは、30Siの核変換によって得ることのできる構造と組成を有し、上記30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。有利には、上記放射性ヌクレオチドは、30Siのニュートロン核変換によって得ることのできる構造と組成を有し、上記30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成する。
上記放射性ヌクレオチドの使用は、肝臓癌の治療においてであり得る。上記放射性ヌクレオチドの使用は、近接照射療法による癌の治療においてであり得る。
【0024】
第6の局面によれば、本発明は、30Siをニュートロン核変換する工程を含み、上記30Siは多孔質シリコンサンプルの少なくとも1部を構成することを特徴とする放射性ヌクレオチドの製造方法を提供する。
好ましくは、放射性ヌクレオチドは32Pである。
第7の局面によれば、本発明は、シリコンを核変換して放射性ヌクレオチドを調製する工程(a)を含む内部治療剤の製造方法を提供する。
好ましくは、放射性ヌクレオチドは32Pである。
有利には、上記シリコンは30Siを含む。
好ましくは、上記シリコンは多孔質シリコンである。
有利には、上記方法は、上記シリコンを多孔化するさらなる工程(b)を含む。
工程(b)は、工程(a)の後に実施し得る。工程(b)は、シリコンを陽極処理する工程を含み得る。工程(b)は、シリコンを斑点(stain)エッチングする工程を含み得る。
第8の局面によれば、本発明は、多孔質シリコンゲルマニウム合金をニュートロン核変換する工程を含む放射性ヌクレオチドの製造方法を提供する。
好ましくは、放射性ヌクレオチドは71Geである。
有利には、上記シリコンゲルマニウム合金は、70Geを含む。
【0025】
第9の局面によれば、本発明は、シリコンゲルマニウム合金を核変換して放射性ヌクレオチドを調製する工程(a)を含む内部治療剤の製造方法を提供する。
好ましくは、放射性ヌクレオチドは71Geである。
有利には、上記シリコンゲルマニウム合金を核変換する工程は、70Geを核変換する工程を含み、70Geは上記シリコンゲルマニウム合金の少なくとも1部を構成する。
有利には、内部治療用製品の上記製造方法は、上記シリコンゲルマニウム合金を多孔化するさらなる工程(b)を含む。
工程(b)は、工程(a)の後に実施し得る。工程(b)は、シリコンを陽極処理する工程を含み得る。工程(b)は、シリコンを斑点エッチングする工程を含み得る。
さらなる局面によれば、本発明は、薬物としての使用のための、上述の各局面のいずれかにおいて説明したような内部治療用製品を提供する。さらに別の局面によれば、本発明は、肝臓癌の治療用薬物の製造のための、上述の各局面のいずれかにおいて説明したような内部治療用製品の使用を提供する。さらに別の局面によれば、本発明は、近接照射療法による癌治療用の薬物の製造のための、上述の各局面のいずれかにおいて説明したような内部治療用製品の使用を提供する。
以下、本発明を実施例のみによって説明する。
【実施例】
【0026】
患者への本発明に従う治療用製品の投与
本発明に従う治療用製品は、皮下、筋肉内、腹腔内または経皮法による投与に適し得る種々の形態を有し得る。
本発明に従う治療用製品は、球形、菱形、ロッド形状、ストリップ形状、または円筒状であり得るシリコン成分を含む。
上記シリコン成分は、粉末、懸濁液、コロイド、凝結体、および/または凝集体の1部または少なくとも1部を構成し得る。上記治療用製品は、1個のインプラントまたは複数のインプラントを含み得、その1個または各々のインプラントはシリコンと抗癌成分を含む。
そのような1個または複数のインプラントは、腫瘍が位置する器官中に、上記抗癌成分の治療効果を最適にするような方法で埋め込み得る。
本発明の1つの局面においては、治療方法は近接照射療法を含み得、近接照射療法を受ける器官は外科的に減量処置し(debulked)、残留空間に上記治療用製品を充填する。もう1つの局面においては、治療すべき器官をニードルアレーで芯抜きを行い、そのコアに本発明の治療用製品を埋め込み得、そのような処方は前立腺の近接照射療法に適する。
上記治療用製品を肝臓癌の治療において使用すべき場合、組成物は、シリコン微粒子を肝臓または腹腔動脈に注入することによって、肝臓に投与し得る;上記微粒子は、ホスフェート緩衝塩水溶液または血清/たんぱく質系溶液のような等張性溶液中の懸濁液の形で伝達させる。上記微粒子の大きさは、血液がそれら微粒子を肝臓中に運び込むが肝臓からは運び出さないような大きさである。これら微粒子は、腫瘍まで血液流に追従し、通常よりも多い血液供給を有する。
【0027】
さらに別の局面においては、上記治療用製品は複数の多孔質シリコン粒子を含み得、これら複数の多孔質シリコン粒子は、2つのタイプの多孔質シリコン粒子に分割する;1つのタイプは細胞毒性薬物を有するが放射性ヌクレオチドを含まず、第2のタイプは放射性ヌクレオチドを含むが細胞毒性薬物を含まない。両タイプの粒子は、患者に同時に投与できるが、投与前は別々に保存し得る。この方法において、細胞毒性薬物と放射性ヌクレオチドの割合を、患者の状態に応じて選択できる。患者への投与前での上記2つのタイプの微粒子の別々の保存は、細胞毒性薬物が放射性ヌクレオチドからの放射線への暴露によって劣化する場合に要求され得る。
ターゲッティングをさらに改良するためには、アンギオテンシンIIのような血管収縮薬を、シリコン微粒子の投与前に注入し得る。この薬物は、十分に発達した非腫瘍関連脈管構造を収縮させ、それによって、上記微粒子を正常な肝臓柔組織から離れるように向ける。
【0028】
放射性ヌクレオチドの産生および/または混入
本発明に従う治療用製品は、シリコン成分と放射性ヌクレオチドを含み得る。放射性ヌクレオチドは、シリコン成分と混合し得、および/またはシリコンの核変換によって調製し得る。放射性ヌクレオチドをシリコン成分と混合し、またはシリコンの核変換によって産生させて本発明に従う治療用製品の1部または少なくとも1部を調製する幾つかの方法が存在する。これらの方法のうちの4つを下記の(A)〜(D)項に示す。
(A) 32Pドープ化多孔質シリコン粉末の調製
(Ai)
リン (2×1020 cm-3) で縮退的にドーピングした標準セットのCZ Siウェーハを、ボールミリングし、ふるい掛けし、湿式エッチングすることによって粉末とする。ミリングとふるい掛けは、25〜50μm範囲の最大寸法を有するシリコン微粒子が得られるような方法で実施する。その後、上記粉末を、Appl Phys Lett 64 (13);1693-1695 (1994)に記載されているようなHF系溶液中で斑点エッチングすることによって多孔質にして、多孔質シリコン微粒子を得る。
また、リン (2×1020 cm-3) ウェーハで縮退的にドーピングしたCZ SiウェーハをHF溶液、例えば、50%水性またはエタノール系溶液中で陽極処理して多孔質シリコンの層を形成させてもよい。陽極処理は、米国特許第5,348,618号に記載されているような標準方法による電気化学電池内で実施し得る。例えば、ウェーハは、5〜500 mAcm-2の陽極処理電流密度に1〜50分間暴露させ得る。この方法において、1%〜90%範囲の多孔度を有する多孔質シリコンの層を製造し得る。
【0029】
その後、上記多孔質シリコン層は、比較的希釈な電解質中で十分に高い電流密度、例えば、50 mAcm-2よりも高い電流密度を10秒間加えることによって、下地のバルク基体から分離し得る。次いで、分離した多孔質シリコン層は、粉砕して多孔質シリコン粒子を得ることができる。
また、陽極処理したウェーハは、超音波処理して多孔質シリコンの層を分離し且つこの層を多孔質シリコンの粒子として破壊することもできる。この方法での長音波への暴露は、溶媒中で実施し得、溶媒は得られる粒子の凝集を最少にするように選択する。この方法での超音波処理によって、多孔質シリコン粒子の形成が生ずる。超音波処理により得られる多孔質シリコン粒子の粒度についてのある種の制御は、得られる懸濁液を遠心処理して種々の粒度を分離することによって達成し得る。また、多孔質シリコン粒子は、上記懸濁液をPhys. Solid State 36 (8) 1294-1297 (1994)に記載されているような漸次的沈降に供することによってもサイズ分けし得る。
多孔質化が斑点エッチングによるか或いは陽極処理によるかのいずれにしろ上記多孔質シリコンの多孔度は、患者に投与するための微粒子の全体的密度が1.5〜2.5 g cm-3であるように選定し得る。上記多孔質シリコンの密度は、混合すべき放射性ヌクレオチドおよび/または細胞毒性薬物の密度を勘案して調整し得る。
ミクロン粒度のシリコン粉末は商業的に入手可能であり、ナノメートルサイズの粒子は、バルクシリコンのボールミリング、スパッタリング、およびレーザー削磨のような方法によって製造できる。
【0030】
(Aii)
工程(Ai)に従って製造した多孔質シリコン粒子のサンプルを、核反応器内で熱ニュートロンボンバートに供して、シリコンのニュートロン核変換ドーピングを生じさせる。照射条件は、多孔質中での32P産生を最大にするように選定する。この方法において、1〜3 cmの肝臓癌腫瘍の治療に適する10〜20 mCiレベルを得ることができる。
シリコンのニュートロン透過ドーピングによるシリコンのリンドーピングは、およそ1015 cm-3でリンドープ化シリコンを生成させる良好に確立された手段である:
30Si + n0 = 31P
さらなるニュートロン獲得も可能である:
31P + n0 = 32P
存在する32P(放射性ヌクレオチド)の量は、主として、産生した31Pの量および最初から存在するPの量、並びにニュートロンフラックスに依存する。
必要ならば、この項で説明したニュートロン照射の前に、多孔質化粒子中のリン濃度は、500〜700 Cのホスフィンガスまたは正リン酸で多孔質シリコン微粒子または粒子をドーピングし、次いで、600〜1000 Cでのアニーリングによって上昇させ得るであろう。また、多孔質シリコンの微粒子または粒子のドーピングは、IEEE Electron Device Lett. 21 (9), p388-390 (2000)に記載されているようにして、800〜900 Cでのオキシ塩化リン蒸気への暴露によっても達成し得る。この方法において、1021〜5×1022 cm-3のリン濃度を達成し得る。
【0031】
(B) 同位元素交換
トリチウムガスを水素化物不動態化多孔質シリコンと一緒にインキュベートする。その水素化物不動態化多孔質シリコンを、ケイ素-水素結合を漸進的に破壊して水素のトリチウムによる置換を可能にするような方法で、電子ビームにより照射する。電子ビームは、1〜10 MeVビームであり得る。この方法により、トリチウム化多孔質シリコンの形成が生ずる。同様な同位元素交換方法も、孔の内部表面に結合するようになり得る131Iのような他の放射性ガス状種の導入に使用し得る。同位元素交換は、熱および/または光および/または粒子版バンボートの適用によって加速させ得る。
(C) イオン埋込み
多孔質シリコンのサンプルを、標準的方法により、放射性ヌクレオチドの埋込み前に低温酸化法によって酸化して孔の内部表面上に酸化物の単分子層を調製することができる。
多孔質シリコンの低温酸化は、イオン埋込みによる多孔質シリコンミクロ構造体の焼結を防止するような方法で実施する。低温酸化は、多孔質シリコンのサンプルを実質的に純粋な酸素ガス中で300Cで1時間加熱することによって実施し得る。イオン埋込みは、放射性ヌクレオチドのイオンを多孔質シリコンの表面の1〜5μm(1〜5ミクロン)下に埋込むような方法で実施し得る。イオン埋込みにおける加速電圧は5 KeV〜500 KeVの範囲であり得、イオン照射量は1013〜1017イオンcm-2の範囲であり得る。多孔質シリコンの温度は、イオン埋込みの間、実質的に固定温度に維持し得る。多孔質シリコンの温度は、−200 C〜+ 1000 Cの範囲であり得る。この方法でイオン埋込みし得るイオンの例は、90Y、140La、125I、131I、32P、および103Pdである。
(D) 液体浸潤
多孔質シリコンのサンプルを、導入すべき放射性同位元素の塩の水溶液中に浸漬する。
上記の塩は1回目の加熱処理により熱分解し、放射性同位元素は2回目の加熱処理により多孔質シリコンの骨格内に移動せしめる。
また、放射性同位元素の塩が比較的低融点を有する場合には、その塩を多孔質シリコンの表面上に溶融させ、溶融塩を毛管作用により多孔質シリコン中に引き込ませ得る。その後、塩を熱分解させ、WO99/53898号に記載されているような2段階加熱法により、多孔質シリコンの骨格中に移動せしめ得る。
【0032】
(E) シリコンゲルマニウム合金の核変換による放射性ヌクレオチドの調製
(Ei)
ホウ素ドープ化多結晶質シリコンゲルマニウムバルク合金は、ポリックス(Polix)法のような標準方法を使用するルツボ内での配向型結晶化により生長させ得る。上記合金は、上記合金が1〜15原子%のGeを含み1〜0.01オームcmの抵抗値を有するような方法で製造し得る。得られる合金インゴットは、厚さ200〜500μm(200〜500ミクロン)を有するシートに機械的にのこぎり切断し得、その後、湿式研磨エッチングに供してのこぎり損傷を除去し得る。次いで、陽極処理を、HF系電解質中で、5〜500 mAcm-2の電流密度で5分〜5時間実施し得る。
その後、得られた多孔質シリコンゲルマニウム層は、Ai項において記載した方法と同様な方法によって、多孔質シリコンゲルマニウム粒子の粉末に転換し得る。
その後、上記多孔質シリコンゲルマニウム粉末は、粒子バンボート、例えば、ニュートロンバンボートに供して、70Geを放射性ヌクレオチド71Geに核変換させ得る。
(Eii)
また、標準のSiまたはSOIウェーハを、結晶質SixGe(1-x)層または結晶質シリコンとゲルマニウムの別の超薄層でコーティングすることもできる。上記SiおよびGeは、標準のCVD法により、シランおよびゲルマンから調製する。CVD蒸着温度は、300K〜1000Kの範囲であり得る。シリコン基体を使用する場合、シリコンゲルマニウム合金の多孔質化は、陽極処理により或いは斑点エッチングにより得る。SOI基体を使用する場合は、斑点エッチングを使用して、多孔質化と基体からの上記シリコン合金の分離の双方を行い得る。
その後、多孔質シリコン合金粉末の調製および核変換を、上記(Ei)において述べた方法と同様な方法で実施する。
【0033】
良好に形成された形状と良好に形成された寸法を有する多孔質シリコンインプラントの製造
1表面に塗布した犠牲有機フィルムを有する第1のSiウェーハを、標準のMEMS処理法を使用してエッチングし、写真平板様に形成された目的物の第1のアレーを形成させる。Siウェーハ厚全体をエッチング通しする場合、上記第1のアレーは、上記犠牲有機フィルムによりその場に保持される。その後、この第1アレーを、その後の陽極処理に備えて、第2の導電性ウェーハに結合させる。第2ウェーハは、同じ導電度タイプと異なる抵抗値を有するシリコン、または第1シリコンウェーハと同じ導電度タイプと同じ抵抗値を有する金属コーティングシリコンウェーハであり得る。その後、第1アレーを溶媒で処理して有機フィルムを除去する。次いで、HF系電解質中での陽極処理を、第1アレーが完全に多孔質化されるまで実施する。その後、放射性同位元素の混入を、粉末形の第1アレーの処理により、或いは第2ウェーハに結合させながらの第1アレーの処理により実施し得る。
多孔質シリコン写真平板様目的物の第2アレーの製造のための同様な処理も、SOIウェーハを標準のMEMS処理法によりエッチングすることによって実施し得る。
【0034】
シリコン微粒子と細胞毒性薬剤との混合
その後、工程(Ai)単独により、或いは工程(Ai)と工程(Aii)の組合せにより製造した多孔質シリコン微粒子を、5-フルオロウラシルのような肝臓癌治療用に使用する細胞毒性薬物で含浸させる。
細胞毒性薬物を上記微粒子と結合させ得る多くの方法が存在する。細胞毒性薬物は適切な溶媒中に溶解または懸濁させ得、その後上記微粒子を得られる溶液中で所定時間インキュベートさせ得る。その後、細胞毒性薬物を上記微粒子表面上に付着させ得る。上記微粒子が多孔質シリコンを含む場合には、細胞毒性薬物の溶液を毛管作用により多孔質シリコンの孔内に導入し得る。同様に、上記微粒子が空洞を有する場合には、上記溶液は、やはり毛管作用によって空洞内に導入させ得る。細胞毒性薬物が固形物であるが20 Cで十分に高い蒸気圧を有する場合には、その細胞毒性薬物は、上記微粒子表面上に昇華させ得る。
細胞毒性薬物の溶液または懸濁液を調製し得る場合には、その物質は、溶液/懸濁液中に連続浸漬し次いで凍結乾燥させることによって上記微粒子に塗布し得る。
細胞毒性薬物を多孔質シリコンと結合させ得るさらなる方法は、誘導体化多孔質シリコンの使用による。細胞毒性薬物は、Si-CまたはSi-O-C結合により、誘導体化シリコンに直接共有結合させ得る。細胞毒性薬剤の放出は、多孔質シリコンの生分解によって達成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 少なくとも1種の放射性ヌクレオチドおよび/または少なくとも1種の細胞毒性薬物を含む抗癌成分;および、
(ii) 吸収性シリコン、生体適合性シリコン、バイオ活性シリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、非晶質シリコン、および体積結晶質シリコンの1種以上から選ばれたシリコン成分;
を含む内部治療用製品。
【請求項2】
治療用製品が少なくとも1個のインプラントを含むことを特徴とする請求項1記載の内部治療用製品。
【請求項3】
前記インプラントの1個または少なくとも1個が、前記シリコン成分の少なくとも1部と前記抗癌成分の少なくとも1部とを含む請求項2記載の内部治療用製品。
【請求項4】
前記シリコン成分が吸収性シリコンを含むことを特徴とする請求項1記載の内部治療用製品。
【請求項5】
前記シリコン成分が吸収性シリコンを含み、前記抗癌成分が放射性ヌクレオチドを含み、前記放射性ヌクレオチドが前記吸収性シリコンの少なくとも1部を介して分布されていることを特徴とする請求項1記載の内部治療用製品。
【請求項6】
前記インプラントの1個または少なくとも1個が吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドとを含み、前記吸収性シリコンが、実質的にすべての前記放射性ヌクレオチドが埋込み時から測定して前記放射性ヌクレオチドの半減期よりも長い期間前記インプラントの1個または少なくとも1個の少なくとも1部の中および/または上に残存するような構造と組成を有することを特徴とする請求項3記載の内部治療用製品。
【請求項7】
前記インプラントの1個または少なくとも1個が吸収性シリコンと細胞毒性薬物を含み得、前記吸収性シリコンが、前記インプラントが前記インプラントの部位に前記薬物の放出を実質的に局在化させるのに十分にインタクトなままであるような構造と組成を有することを特徴とする請求項3記載の内部治療用製品。
【請求項8】
抗癌薬が放射性ヌクレオチドを含み、前記放射性ヌクレオチドが90Y、32P、124Sb、114In、59Fe、76As、140La、47Ca、103Pd、89Sr、131I、125I、60Co、192Ir、および198Auの1種以上から選ばれることを特徴とする請求項1記載の内部治療用製品。
【請求項9】
内部治療用製品を患者に導入する処置を含み、前記内部治療用製品が下記を含むことを特徴とする癌の治療方法:
(i) 吸収性シリコン、生体適合性シリコン、バイオ活性シリコン、多孔質シリコン、多結晶質シリコン、非晶質シリコン、および体積結晶質シリコンの1種以上から選ばれたシリコン成分;および、
(ii) 少なくとも1種の放射性ヌクレオチドおよび/または少なくとも1種の細胞毒薬物を含む抗癌成分。
【請求項10】
前記内部治療用製品が少なくとも1個のインプラントを含み、前記内部治療用製品を導入する処理がこれらインプラントの1個または少なくとも1個を患者の体内に埋込む処置を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記インプラントの1個または少なくとも1個が前記シリコン成分の少なくとも1部と前記抗癌成分の少なくとも1部を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記インプラントの1個または少なくとも1個が吸収性シリコンと細胞毒性薬物を含み、前記癌の治療方法が、前記細胞毒性薬物の放出が埋込み点に実質的に局在化されるような方法で前記細胞毒性薬物の少なくとも1部を放出させるさらなる処置を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記インプラントの1個または少なくとも1個が吸収性シリコンと放射性ヌクレオチドを含み、前記癌の治療方法が、患者の身体の1部を、前記放射性ヌクレオチドからの放射線によって、放射線治療を埋込み点に局在化させるような方法で治療する処置を含み、前記放射性ヌクレオチドの半減期が過ぎると直ぐに前記シリコンが実質的に完全に吸収分解するのを可能にするさらなる処置を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記内部治療用製品が放射性ヌクレオチドと細胞毒性薬物を含み、前記癌の治療方法が、患者に前記治療用製品を導入する前の10時間未満で、前記放射性ヌクレオチドと前記細胞毒性剤を混合するさらなる処理を含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記抗癌成分が、多孔質シリコンの核変換によって得ることのできる構造と組成を有する放射性ヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1記載の内部治療用製品。
【請求項16】
前記抗癌成分が、多孔質シリコンゲルマニウム合金の1部を構成するゲルマニウム原子の核変換によって得ることのできる構造と組成を有する放射性ヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1記載の内部治療用製品。

【公開番号】特開2009−102365(P2009−102365A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327809(P2008−327809)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2002−567362(P2002−567362)の分割
【原出願日】平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願人】(503304348)サイメディカ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】