説明

癌疾患修飾抗体

本発明は、新規スクリーニング規範を用いて患者の癌疾患修飾抗体を生産する方法に関する。癌細胞の細胞傷害性を用いて抗癌抗体を分離することで、このプロセスは治療および診断目的のための抗癌抗体の産生を可能にする。抗体は、癌の病気分類および診断の補助に用いることができ、また原発腫瘍および腫瘍転移の処置に用いることができる。抗癌抗体を毒素、酵素、放射性化合物、および血液原細胞とコンジュゲートさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌疾患修飾抗体(CDMAB)の単離および生産と、治療および診断プロセスでの該CDMAB(必要に応じて1種類以上の化学療法薬と組み合わせて)の使用とに関する。本発明はさらに、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
癌を呈する各々の患者を他の患者と比べ得るものではなく、その患者の個性と同様に他の癌とは異なる癌を有する。これにもかかわらず、現行の治療は癌の種類が同じ全ての患者に対して、同一病期で同一の方法による処置をおこなう。これらの患者の少なくとも30%は一次治療に失敗して、その上の病期の治療に至り、治療の失敗、転移、および究極的には死亡する確率が高くなる。優れた処置対策として、特定個人に対応した治療にカスタマイズさせることであると考えられる。カスタマイズ化に向く唯一の現行の治療法は、手術である。化学療法および放射線療法は患者に合わせて調整することはできず、さらに手術そのものも、ほとんどの場合、治癒をもたらすには不十分である。
【0003】
モノクローナル抗体の出現で、各々の抗体が単一のエピトープを対象とすることから、カスタマイズされた治療のための方法を開発する可能性はより現実的になった。さらに、特定のヒトの腫瘍を独特に特徴づける一連のエピトープを対象とする抗体の組み合わせを生産することが可能である。
【0004】
悪性変換細胞に特異的である抗原を癌細胞が含むということが癌細胞と正常細胞との著しい違いであると認められたことで、科学界では、これらの抗原に対して特異的に結合することによって悪性変換細胞を特異的に標的とするようにモノクローナル抗体を設計することができると長い間考えられていた。このことから、モノクローナル抗体が癌細胞を除去するための「魔法の弾丸」として働き得るという考えが生じた。
【0005】
即時開示された発明の技術に基づいて単離されるモノクローナル抗体は、患者にとって有益であるかたちで、例えば全身腫瘍組織量を減少させることで、癌疾患を修飾することが示されており、本明細書では癌疾患修飾抗体(CDMAB)または「抗癌」抗体として様々にいわれる。
【0006】
現時点では、癌患者は一般に処置の選択肢をほとんど持たない。癌治療に対する規格化された取り込みによって、全体的な生存率および罹患率の改善がもたらされた。しかし、特定の個人にとっては、これらの改善された統計値は、個人的状況の改善と必ずしも相関しているわけではない。
【0007】
したがって、もし開業医が同一コホートで他の患者とは独立して各々の腫瘍を処置することを可能とする方法論が出されるならば、これによって、まさにその一人に合うように治療を調整する独特なアプローチが可能となるだろう。そのような治療の経過は、理想的には、治癒率を高め、より良好な結果を生み出し、それによって以前から感ぜられた必要性が満たされる。
【0008】
歴史的にみて、ポリクローナル抗体の使用は、ヒト癌の処置に用いても大した成功をもたらすこともなくおこなわれてきた。リンパ腫および白血病に対しては、ヒト血漿による処置が施されていたが、長期寛解または反応がほとんどなかった。さらにまた、再現性が乏しく、化学療法と比較して付加的な利点は得られなかった。乳癌、黒色腫、および腎細胞癌等の固形腫瘍に対しても、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿、およびウマ血清による処置が施されていたが、結果は予測不可能であり、効果があるものではなかった。
【0009】
固形腫瘍に対するモノクローナル抗体の臨床試験が数多くなされている。1980年代では、少なくとも4種類のヒト乳癌臨床試験がおこなわれたが、特定の抗原に対する抗体または組織選択性に基づく抗体を用いて少なくとも47人の患者からたった一人の応答者が得られたのみである。シスプラチンと併用したヒト化抗Her2抗体による臨床試験は、1998年まで成功していなかった。この治験では、37人の患者に対して応答が調べられ、そのうちの約4分の1が部分的緩解率を示し、ほかの半分で軽度または安定した疾患進行が見られた。
【0010】
結直腸癌を調べる臨床試験は、糖タンパク質および糖脂質の両方を標的とする抗体を必要とする。腺癌に対してある程度特異性がある17−1A等の抗体に対して第二相臨床試験を実施したところ、60人以上の患者うち患者一人だけが部分寛解を呈した。他の治験では、17−1Aを用いた場合、シクロホスファミドをさらに用いるプロトコルで52人の患者のうち、完全寛解が1人、軽度の寛解が2人だけであった。類似の結果が17A−1Aが関与する他の治験で得られた。最初に可視化が承認されたヒト化マウス・モノクローナル抗体を使用しても腫瘍退縮を生じなかった。現在までのところ、結腸直腸癌に有効である抗体は存在していない。同様に、肺癌、脳癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、および胃癌に対しても一様に好ましくない結果であった。黒色腫に対する抗GD3モノクローナル抗体の使用では、ある程度の成功が得られた。このように、ヒト臨床試験の必要条件である小動物研究での成功にもかからず、試験された抗体のほとんどで効果が得られなかったことが分かる。
【0011】
先行特許:
特許文献1は、患者の腫瘍から得た細胞が該患者から得た細胞または組織からクローニングされたMHC遺伝子によってトランスフェクトされるプロセスを開示している。その後、これらのトランスフェクション細胞は、患者へのワクチン投与に用いられる。
【0012】
特許文献2は、哺乳類の腫瘍細胞および正常細胞の細胞内構成要素(細胞外構成要素ではない)に対して特異的であるモノクローナル抗体を得るステップと、そのモノクローナル抗体を標識するステップと、標識抗体と腫瘍細胞を殺す治療を受けた哺乳類の組織とを接触させるステップと、変質している腫瘍細胞の細胞内構成要素に対する上記標識抗体の結合を測定することで治療の効果を決定するステップとを有するプロセスを開示している。ヒト細胞内抗原に対する抗体の調製で、特許権者は悪性細胞がそのような抗原の好都合な供給源であることを認識している。
【0013】
特許文献3は、新規抗体とその生産方法とを提供する。具体的には、その特許はヒト腫瘍(例えば、大腸および肺の腫瘍)に結合したタンパク質抗原に対して強く結合し、その一方で正常細胞に対してはかなり少ない程度に結合する特性を持つモノクローナル抗体の形成を教示している。
【0014】
特許文献4は、外科的にヒト癌患者から腫瘍組織を除くステップと、腫瘍細胞を得るために腫瘍組織を処置するステップと、腫瘍細胞に放射線を照射し、生存可能ではあるが非腫瘍形成性にするステップと、該細胞を用いて、原発腫瘍の再発を抑制することが可能であり、その一方で同時に転移を阻害するワクチンを調製するステップとを有する癌治療方法を提供する。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原と反応するモノクローナル抗体の開発を教示する。以下参照する4段目45行に記載されているように、この特許権者はヒト新形成で活発な特異的免疫療法を発現しているモノクローナル抗体の発現で、自所性腫瘍細胞を利用する。
【0015】
特許文献5は、ヒト癌腫に特有であり、起源の上皮組織に依存していない糖タンパク質抗原を教示している。
【0016】
特許文献6は、Her2発現細胞でアポトーシスを誘発する抗Her2抗体と、該抗体を産生するハイブリドーマ細胞株と、そのような抗体を用いた癌の処置方法と、そのような抗体を含む医薬組成物とを開示している。
【0017】
特許文献7は、腫瘍および非腫瘍組織供給源から精製されたムチン抗原に対するモノクローナル抗体産生のための新規ハイブリドーマ細胞株を記載している。
【0018】
特許文献8は、所望の抗原に対して特異的な抗体を産生するヒト・リンパ球を生成するための方法と、モノクローナル抗体を産生するための方法と、同様に該方法によって産生されたモノクローナル抗体とを開示している。この特許は、特に癌の診断および治療に有用な抗HDヒト・モノクローナル抗体の産生に関する。
【0019】
特許文献9は、ヒト・抗体、抗体フラグメント、抗体コンジュゲート、および単鎖免疫毒素に関する。これらの抗体機能が2倍となるメカニズムは、分子がヒト・カルシノーマの表面に上に存在する細胞膜抗原に対して反応する点で、さらに、上記抗体がカルシノーマ細胞内に内在化する能力を有し、結合後、特に抗体−薬物コンジュゲートおよび抗体−毒素コンジュゲートに対して特に有用であるという点である。それらの修飾形態では、上記抗体は特定の濃度で細胞傷害性を表す。
【0020】
特許文献10は、腫瘍の治療および予防のための自己抗体の使用を開示する。しかし、この抗体は、老いた哺乳類に由来する抗核自己抗体である。この場合、自己抗体は免疫系で見つかる、ある種の自然抗体であると言われる。自己抗体が「老いた哺乳類」に由来することから、処置されている患者から実際に由来する自己抗体であることを必要としない。また、この特許は老いた哺乳類から天然およびモノクローナル抗核自己抗体とモノクローナル抗核自己抗体を産生するハイブリドーマ細胞株とを開示する。
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,750,102号
【特許文献2】米国特許第4,861,581号
【特許文献3】米国特許第5,171,665号
【特許文献4】米国特許第5,484,596号
【特許文献5】米国特許第5,693,763号
【特許文献6】米国特許第5,783,186号
【特許文献7】米国特許第5,849,876号
【特許文献8】米国特許第5,869,268号
【特許文献9】米国特許第5,869,045号
【特許文献10】米国特許第5,780,033号
【発明の開示】
【0022】
本発明者らは、以前に「個々の患者に対して特異的な抗癌抗体」と題された米国特許6,180,357号の付与を受けており、この特許は癌疾患の処置に有用である個々にカスタマイズされた抗癌抗体を選択するためのプロセスに関する。
【0023】
この出願は、癌疾患修飾モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞株を単離するためのするための‘357特許に教示されたとおりの患者特異的抗癌抗体を産生するための方法を利用する。これらの抗体を、一つの腫瘍に対して特異的に作ることができるので、癌治療をカスタマイズすることが可能となる。この出願のコンテクストの範囲内で、細胞殺害(細胞傷害性)特性または細胞増殖阻害(細胞分裂停止)特性のいずれかを持つ抗癌抗体を以下、細胞傷害性と呼ぶ。これらの抗体を、癌の病期分類および診断の補助に使用することができ、また腫瘍転位の処置に用いることができる。
【0024】
個別的抗癌処置が期待されることで、患者を管理する方法に変化がもたらされる。可能性がある臨床シナリオは、提示時に腫瘍試料を採取して保存しておくことである。この試料によって、腫瘍の類型を既存の癌疾患修飾抗体パネルから調べる。患者は従来通りに病期分類されるが、利用可能な抗体を用いることでさらに患者を病期分類することができる。患者は既存の抗体を用いて即時治療を受けることができ、腫瘍に特有の抗体のパネルを、本明細書中に概説される方法を用いて、または本明細書中に開示されるスクリーニング法と併用してファージ提示ライブラリーを用いることにより、作ることができる。他の腫瘍が処置されているものと同じエピトープの一部を有する可能性があることから、産生される全ての抗体は抗癌性抗体のライブラリーに加えられる。この方法によって産生される抗体は、これらの抗体と結合する癌が、かなりの数の患者において、癌疾患の処置に有用である。
【0025】
抗癌抗体に加えて、患者は、多様な処置療法の一部として現在推奨された治療を受けることを選択することができる。本方法論を介して単離された抗体が相対的に非癌細胞に対して非毒性であるという事実から、高濃度で抗体の組み合わせを、単独または従来の治療と併用して用いることが可能である。治療指数が高いことは、処置耐性菌の出現可能性を減少させなければならない短い時間的尺度上で、再処置も可能にする。
【0026】
さらに、本発明の範囲内である標準的な化学療法の様式(例えば、放射性核種)を本発明のCDMABとコンジュゲートさせることで、上記化学療法の使用に焦点が当てられる。
【0027】
もし患者が治療の初期経過に対して不応性であるか、または転移が生じる場合、腫瘍に対する特異的抗体を生ずるプロセスを、再処置するために繰り返すことができる。さらにまた、その患者から得た赤血球に抗癌抗体をコンジュゲートさせ、転移処置を目的として再注入することができる。転移癌に対する効果的処置はほとんどなく、転移は一般に死に至る転帰不良の前兆となる。しかし、転移癌は通常、十分に血管化しており、赤血球による抗癌抗体の送達によって、腫瘍部位に抗体を集中させる効果が得られる。転移に先立っても、ほとんどの癌細胞はそれらの生存のために宿主の血液供給に依存しており、また赤血球に結合した抗癌抗体も同様に原位置(in situ)腫瘍に対して効果がある。あるいは、このような抗体を、リンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞等の他の血液原細胞に結合させてもよい。
【0028】
抗体には5つの種類があり、各々がその重鎖によって与えられる機能と関連している。裸の抗体によって癌細胞を殺すことは、抗体依存型細胞傷害性(ADCC)または補体依存型細胞傷害性(CDC)のいずれかを介して調節されると一般に考えられる。例えば、マウスIgMおよびIgG2a抗体は補体系のC−1成分が結合することでヒト補体型を活性化させることができ、それによって腫瘍細胞溶解を導くことができる補体活性化の古典経路が活性化される。ヒト抗体に関して、最も効果的な補体活性化抗体は、一般にIgMおよびIgG1である。IgG2aおよびIgG3イソタイプのマウス抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球、および特定のリンパ球によって細胞殺害に導くFcレセプターを持つ細胞傷害性細胞を動員することで効果的である。IgG1およびIgG3イソタイプのヒト抗体は、ADCCを仲介する。
【0029】
抗体媒介癌殺害をおこなうための可能性のある他の機構として、細胞膜およびその関連糖タンパク質もしくは糖脂質での種々の化学結合の加水分解を触媒するために働く抗体(いわゆる触媒抗体)の使用を介するものが考えられる。
【0030】
制癌剤の臨床有用性は、患者に対する許容リスク・プロフィールのもとでの薬物の効能に基づく。癌治療において、生存は通常、効能の次に最も求められている。しかし、延命に加えて、よく認識された効能がほかにもいくつかある。処置が生存に対して悪影響を及ぼさないこれらの他の効能として、症状寛解、有害事象に対する防御、再発または疾患のない生存の時間延長および進行の時間延長が挙げられる。これらの判定基準は一般に認められており、それらの効能を生ずる薬物が米国食品医薬品局(F.D.A)等の規制団体によって承認されている。
(Hirschfeld et al. Critical Reviews
inOncology/Hematolgy 42: 137-143 2002)
これらの基準に加えて、これらの種類の効能を予測することが可能な他の評価項目(エンド・ポイント)があることが十分認識されている。1つには、米国F.D.Aが許可した促進的承認プロセスでは患者の利点を予測すると思われる代用物があることが認める。年末(2003)より、このプロセス中で承認される薬剤が16種類あり、これらのうちの4種類が完全承認に移行した。すなわち、追跡調査によって、代わりの評価項目(エンド・ポイント)によって予測されたとおりの患者に対する直接的な効能が示された。固形腫瘍で薬物効果を決定するための1つの重要な評価項目(エンド・ポイント)は、処置に対する反応の測定による全身腫瘍組織量の評価である。
(Therasse., Journal
of the National Cancer Institute 92 (3): 205-216 2000)
そのような評価のための臨床判定基準(RECIST判定基準)は、固体腫瘍反応評価基準研究グループ(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Working Group)(国際的癌専門家集団)によって広められた。全身腫瘍組織量に対する示された効果を持つ薬物は、RECIST判定基準に従う客観的な反応で示されるように、最終的に、適当な対照と比較して、患者に対して直接的な効能を生ずる傾向にある。前臨床設定では、一般に、全身腫瘍組織量がより直接的に評価および記録される。前臨床試験を上記臨床設定として解釈し得るという点で、前臨床モデルで生存を延ばす薬物は最も予想された臨床的有用性を持つ。臨床処置に対して肯定応答を生ずることに類似して、前臨床設定で全身腫瘍組織量を減少させる薬物もまた疾患に対して有意に直接的な影響を及ぼすことも可能である。生存の延長が制癌剤処置による臨床転帰後に最も求められるものではあるが、臨床有用性を持つ他の効能があり、全身腫瘍組織量もまた、直接的な効能につながることもでき、また臨床的影響もあることは明らかである。
(Eckhardt et
al., Developmental Therapeutics: Successes and Failures of Clinical Trial
Designs of Targeted Compounds; ASCO Educational Book, 39th Annual
Meeting, 203, pages 209-219)
【0031】
したがって、本発明の目的は、ハイブリドーマ細胞株と、該ハイブリドーマ細胞株がコードされた対応する単離モノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントとを単離するために、癌細胞に関して細胞傷害性であり、同時に非癌細胞に対しては相対的に非毒性である特定の個人に由来する細胞からCDMABを生産する方法を利用することである。
【0032】
本発明の別の目的は、CDMABとその抗原結合フラグメントとを教示することである。
【0033】
本発明のさらなる目的は、細胞傷害性が抗体依存型細胞傷害性を介して仲介されるCDMABを生産することである。
【0034】
本発明のさらに別の目的は、細胞傷害性が補体依存型細胞傷害性を介して仲介されるCDMABを産生することである。
【0035】
本発明のさらなる目的は、細胞傷害性が細胞の化学結合の加水分解を触媒する能力の機能である癌疾患修飾抗体を産生することである。
【0036】
本発明のさらなる目的は、癌の診断、予後、およびモニタリングのための結合アッセイに有用であるCDMABを生産することである。
【0037】
この明細書の他の目的および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。ここで、例証および例示を目的として、本発明のいくつかの実施形態を説明する。
【0038】
図1は、いくつかの癌および非癌細胞株に対するAR36A36.11.1および抗EGFR抗体の典型的なFACSヒストグラムである。
図2は、細胞株PC−3、LnCap、およびCCD−27skに対するハイブリドーマ上清の細胞傷害性率と結合レベルとの比較である。
図3は、AR36A36.11.1の細胞傷害性と陽性および陰性対照との比較である。
図4は、抗EGFR対照と対比させたAR36A36.11.1の結合を示し、アイソタイプ対照を上回る平均蛍光強度増加倍率を表にしたものである。結果は、イソタイプ対照を上回る蛍光強度増加倍率の平均値を定量的に示すもので、1.5ないし5(+)、5ないし25(++)、25ないし50(+++)、および50を超える(++++)として結果を表す。
図5は、MB−231乳癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図6は、MB−231乳癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図7は、株化MB−231乳癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図8は、株化MB−231乳癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図9は、SW1116大腸癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図10は、SW1116大腸癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図11は、PC−3大腸癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
図12は、PC−3前立腺癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
実施例1
ハイブリドーマ生産−ハイブリドーマ細胞株AR36A36.11.1
【0040】
ブタベスト条約に従って、ハイブリドーマ細胞株AR36A36.11.1を寄託番号280104−02として2004年1月28日、カナダ国際寄託機関(IDAC)(カナダ保健省微生物局(Bureau of Microbiology, Health
Canada, 1015 Arlington Street, Winnipeg, Manitoba, Canada, R3E3R2)に寄託した。
37CFR1.808にもとづいて、寄託者は、寄託材料の公開に対する有効性にかかるすべての制限が特許の付与によって即座に取り除かれることを確信する。
【0041】
抗癌抗体AR36A36.11.1を産生するハイブリドーマを作るために、SCIDマウスの固形腫瘍として増殖したPC−3前立腺癌の新鮮な単一細胞懸濁液をPBSで調製した。IMMUNEASY(商標)(Qiagen, Venlo, Netherlands)アジュバントを、穏やかに混合することで、使用のために調製した。5ないし7週齢BALB/cマウスの免疫化は、200万細胞を含む抗原アジュバント50マイクロリットルを皮下注射することによっておこなった。新たに調製した抗原アジュバントを用いて、初回免疫から2および5週間後、200万細胞を含む50マイクロリットルで免疫化マウスの追加免疫に用いた。最終免疫の3日後、融合に脾臓を用いた。単離した脾細胞をNSO−1骨髄腫パートナーと融合してハイブリドーマを調製した。融合から得た上清をハイブリドーマのサブクローニングについて試験した。
【0042】
ハイブリドーマ細胞によって分泌された抗体がIgGまたはIgMアイソタイプであるかどうかを決定するために、ELISAアッセイを用いた。ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)を2.4マイクログラム/mLの濃度で含むコーティング緩衝液(0.1M炭酸塩/重炭酸塩緩衝液、pH9.2〜9.6)を4℃、100マイクロリットル/ウエルで、ELISAプレートに一晩加えた。このプレートを洗浄緩衝液(PBS+0.05%Tween)で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのブロッキング緩衝液(5%ミルク含有洗浄緩衝液)を上記プレートに、室温で1時間添加し、次に洗浄緩衝液で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのハイブリドーマ懸濁液を添加し、プレートを1時間、室温でインキュベートした。このプレートを洗浄液で3回洗浄し、ヤギ抗マウスIgGまたはIgM西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ複合体(コンジュゲート)の1/100,000希釈物(5%ミルク含有PBSで希釈)100マイクロリットル/ウエルを添加した。このプレートを室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄液で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのTMP溶液を室温で1〜3分間インキュベートした。2MのHSOを100マイクロリットル/ウエル添加することで呈色反応を停止させ、プレートを450nmでパーキン・エルマー(Perkin-Elmer)HTS7000プレート読み取り装置で読み取った。図2に示すように、AR36A36.11.1ハイブリドーマは、主にIgGイソタイプの抗体を分泌した。
【0043】
限界希釈を1回繰り返した後、細胞ELISAアッセイで標的細胞に結合した抗体についてハイブリドーマ上清を試験した。2種類のヒト前立腺癌細胞株(PC−3およびLnCap)と1種類のヒト正常皮膚細胞株(CCD−27sk)とをそれぞれ試験した。使用に先立って、平板培養された細胞を、使用前に固定した。室温で、プレートをMgClおよびCaClを含有するPBSで3回洗浄した。PBSで希釈した2%パラホルムアルデヒド100マイクロリットルを各ウエルに室温で10分間添加し、その後捨てた。プレートを再びMgClおよびCaClを含有するPBSで再び洗浄した。ブロッキングを、5%ミルク含有洗浄液(PBS+0.05%Tween)を100マイクロリットル/ウエルを用いて、室温で1時間実施した。プレートを洗浄液で3回洗浄し、ハイブリドーマ上清を100マイクロリットル/ウエル、室温で1時間添加した。このプレートを洗浄液で3回洗浄し、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼとコンジュゲートさせたヤギ抗マウスIgGまたはIgMの1/25,000希釈物(5%ミルク含有PBSで希釈)を100マイクロリットル/ウエル添加した。室温で1時間インキュベートした後、室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄液で3回洗浄し、100マイクロリットル/ウエルのTMB基質を室温で1〜3分インキュベートした。反応を100マイクロリットル/ウエルの2MHSOで停止させ、このプレートを、パーキン・エルマー(Perkin-Elmer)HTS7000プレート読み取り装置を用いて450nmで読み取った。図2に集計したように、試験した細胞株に結合しないことが既に示されている抗IgGイソタイプ対照と比較しその際のバックグラウンドを上回る倍数で、結果を表した。AR36A36.11.1ハイブリドーマ由来の抗体は、前立腺癌細胞株LnCapに対してかなりの結合を示し、続いて別の前立腺癌細胞株PC−3に対しては弱い結合を示した。AR36A36.11.1は、正常ヒト細胞株CCD−27skに対しても検出可能な結合を示した。
【0044】
抗体結合に関する試験と同時に、ハイブリドーマ上清の細胞傷害効果について、同じ乳癌細胞株(PC−3、LnCap、およびCCD−27sk)を用いて試験した。生/死細胞傷害性アッセイをモレキュラー・プローブ(Molecuclar Probes)(Eu、OR)から得た。このアッセイを、以下に示す変更を加えて製造元の指示にしたがって実施した。細胞を、予め定められた適当な密度で上記アッセイ前に、平板培養した。2日後、ハイブリドーマ・マイクロタイター・プレートから100μlの上清を細胞プレートに移し、5日間にわたって5%COインキュベーターでインキュベートした。陽性対照としてあるウエルを、空になるまで吸引し、100マイクロリットルのアジ化ナトリウム(NaN)またはシクロヘキシミドを添加した。処置5日後、上記プレートを逆さまにして空にし、拭き取り乾燥させた。MgClおよびCaClを含む室温DPBS(ダルベッコ・リン酸緩衝生理食塩水)をマルチチャンネル・スクイーズ・ボトルから各ウエルに分配し、軽く3回叩き、反転させて空にし、さらに拭き取り乾燥させた。MgClおよびCaCl含有DPBSで希釈した蛍光カルセイン染料50マイクロリットルを各ウエルに添加し、37℃、30分間、5%COインキュベーターでインキュベートした。プレートをパーキン・エルマー(Perkin-Elmer)HTS7000プレート読み取り装置で読み取り、そのデータをマイクロソフト・エクセル(Microsoft Excel)で分析した。結果を図2に集計した。AR36A36.11.1ハイブリドーマは、PC−3細胞で17パーセントの特異的細胞毒性を生じ、このことは陽性対照アジ化ナトリウムおよびシクロヘキシミドのそれぞれで得られた細胞毒性の46および25パーセントであった。AR36A36.11.1ハイブリドーマはまた、LnCap細胞では25パーセントの特異的細胞毒性を生じ、このことは陽性対照アジ化ナトリウム及びシクロヘキシミドで得られた細胞毒性の36および69パーセントであった。図2に一覧されているように、CCD−27skに対する結合にもかかわらず、AR36A36.11.1は、この正常細胞株では顕著な細胞毒性を生じなかった。既知の非特異的細胞毒性剤であるシクロヘキシミドおよびNaNは、一般に予測通りの細胞傷害性を生じた。
【0045】
実施例2
抗体生産
【0046】
ハイブリドーマを週2回収集および再播種しながらCL−1000フラスコ(BD Biosciences,Oakville,ON)で培養することで、AR36A36.11.1モノクローナル抗体を生産した。
その後、プロテインGセファローズ4ファースト・フロー(Amersham Biosciences,Baie d’Urfe,QC)による標準的な抗体精製手順をおこなった。
ヒト化、キメラ化、またはマウス抗体であるモノクローナル抗体を利用することは、本発明の範囲内である。
【0047】
AR36A36.11.1を、細胞傷害性アッセイで、いくつかの陽性(抗EGFR(C225、IgG1、カッパ、5μg/mL、Cedarlane,Hornby,ON)、シクロヘキシミド(CHX、0.5μM、Sigma,
Oakville, ON)、およびNaN(0.1%、Sigma,Oakville,
ON))対照ならびに陰性(G155−178(抗TNP)、IgG2a、カッパ、20μg/mL、BD
Bioscience,Oakville,ON)、およびIgG緩衝液(3%))対照のいくつかと比較した(図3)。
乳癌(MDA−MB−231(MB−231)、NCI−MCF−7(MCF−7))、大腸癌(DLD−1、Lovo、SW1116)、卵巣癌(OVCAR−3)、膵臓(BxPC−3)、および前立腺(PC−3、LnCap、DU−145)癌、ならびに非癌皮膚細胞株(CCD−27sk)および肺細胞株(Hs888.Lu)を試験した(すべてATCC(Manassas, VA)から入手)。生/死細胞傷害性アッセイは、モレキュラー・プローブ(Molecular Probes, Eugene, OR)から入手した。アッセイは以下に概説する変更を加えて製造元の指示に従っておこなった。細胞を、予め定められた適当な密度で上記アッセイ前に、平板培養した。2日後、100μlの精製抗体または対照を培地に希釈して細胞プレートに移し、5日間にわたって8%COインキュベーターでインキュベートした。上記プレートを逆さまにして空にし、拭き取り乾燥した。MgClおよびCaClを含む室温DPBSをマルチチャンネル・スクイーズ・ボトルから各ウエルに分配し、軽く3回叩き、反転して空にし、さらに拭いて乾燥させた。MgClおよびCaCl含有DPBSで希釈した蛍光カルセイン染料を各ウエルに50μl添加し、37℃、30分間、5%COインキュベーターでインキュベートした。プレートをパーキン・エルマー(Perkin-Elmer)HTS7000プレート読み取り装置で読み取り、そのデータをマイクロソフト・エクセル(Microsoft Excel)で分析した。結果を図3に集計した。データは、3重反復試験した4回の実験の平均を表し、以下の様式で定量的に示した。すなわち、3/4ないし4/4の実験がバックグラウンドを15%上回る細胞傷害性を持つ場合(++++)、2/4の実験がバックグラウンドを15%上回る細胞傷害性を持つ場合(+++)、少なくとも2/4の実験がバックグランドを10〜15%上回る細胞傷害性を持つ場合(++)、少なくとも2/4実験が8〜10%上回る細胞傷害性を持つ場合(+)、バックグラウンドよりも7%高い細胞傷害性を持つ場合(+/−)とした。図3中の無印の細胞は、不定または閾値細胞傷害性よりも低い効果を示した。図3の非標識細胞は、閾値細胞毒性よりも少ない一貫性または効果を現した。AR36A36.11.1抗体は、アイソタイプおよび緩衝液陰性対照の両方に対してLnCap前立腺癌細胞で細胞傷害性を生じた。LnCap細胞での細胞毒性性は、十分に特徴づけられた抗EGFR抗体で観察されるものよりも高かった。重要なことは、AR36A36.11.1がCCD−27skまたはHs888.Lu等の非癌細胞株に対して細胞毒性を生じなかったことであり、このことはその抗体が癌細胞に対して特異的であったことを示している。留意すべきことは、抗EGFR抗体がCCD−27sk細胞で細胞毒性を生じたことであり、このことはこの表皮細胞株が表皮増殖因子受容体を発現することが予想されるからである。化学的細胞傷害剤は、この予想された非特異的細胞傷害性を誘導した。
【0048】
癌および正常細胞株の上記パネルに対するAR36A36.11.1の結合をフロー・サイトメトリー(FACS)によって評価した。最初に細胞単層をDPBS(Ca++およびMg++を含まず)で洗浄して、FACS用に細胞を調製した。次に、細胞解離緩衝液(INVITROGEN, Burlington, ON)を用いて、37℃で細胞培養プレートから細胞を取り除いた。遠心および回収後、細胞をMagCl、CaCl、および2パーセント牛胎児血清を含むDPBS(4℃、染色培地)に再懸濁し、計数し、適当な細胞密度に等分し、遠心して細胞をペレットにし、さらに試験抗体(AR36A36.11.1)または対照抗体(イソタイプ対照、抗EGFR)を20マイクログラム/ml含む染色培地(4℃)に、氷上、30分間、再懸濁した。アレクサ・フルーア(Alexa Fluor)488結合二次抗体を細胞に添加することに先立って、細胞を染色培地で1回洗浄した。染色培地に含まれるアレクサ・フルーラ488接合抗体を次に30分間添加した。続いて細胞を最終時間に対して洗浄し、固定培地(1.5%パラホルムアルデヒドを含む染色培地)に再懸濁した。
フローサイトメトリーによる細胞の獲得を、セルクエスト(CellQuest)ソフトウエア(BD
Biosciences,Oakville,ON)を用いてFACスキャン(FACScan)上に試料を流すことで、評価した。
細胞の前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)の設定を、FSCCおよびSSC検出器の電圧および振幅利得を調製することでおこなった。蛍光(FITC)チャンネル用検出器の調整を、細胞が約1〜5単位の中央値蛍光強度で均一のピークを持つようにして、アレクサ・フルーア(Alexa Fluor)488結合二次抗体のみで染色した細胞を流すことで、おこなった。各試料について、分析用に約10,000個の染色固定細胞を取得し、その結果を図4に示した。
【0049】
図4は、イソタイプ対照を上回る蛍光強度増加倍率の平均値を示し、定量的に、1.5ないし5(+)、5ないし25(++)、25ないし50(+++)、および50を超える(++++)として表した。AR36A36.11.1抗体の典型的なヒストグラムを図1用に編集した。AR36A36.11.1は、試験した細胞株の全てに対する結合を示した。これらのデータは、AR36A36.11.1が、いくつかの癌のタイプに対して明らかな結合がみられたにもかかわらず、LnCap前立腺癌細胞とのみ関連した細胞傷害性がみられたという点で、機能的特性を示した。対照的に、抗EGFR抗体は、非癌表皮由来細胞株CCD−27skであるようなそのような例で、結合と細胞傷害性との間に高い相関が示された。
【0050】
実施例3
生体内(in vivo)MDA−MB−231腫瘍実験
図5および6に関連して、週齢4ないし8週のメスSCIDマウスに対して、500万個のヒト乳癌細胞(MB−231)を含む100マイクロリットル生理食塩水をマウスの首筋に皮下注射することで、該細胞を移植した。マウスを、各群5匹からなる2つの処置群に、無作為に分けた。20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体または緩衝液対照を、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHP0を含む希釈剤でストック濃度から希釈した後に容量300マイクロリットルで腹腔内投与した。次に、抗体の投与を7週間にわたって週に1回、同じ様式でおこなった。腫瘍増殖の測定は、ほぼ7日目毎にカリパスを用いて、最大8週間あるいは個々の動物がカナダ動物飼育評議会(Canadian Council for Animal Care; CCAC)の評価項目(エンド・ポイント)に達するまで測定した。動物の体重を、本研究期間にわたって記録した。本研究終了後、全ての動物を、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0051】
AR36A36.11.1は、ヒト大腸癌の生体内(in vivo)モデルで、腫瘍増殖を抑制し、かつ全身腫瘍組織量を減少させた。移植後56日目(最終処置投薬後6日目)で、AR36A36.11.1での平均腫瘍容積は、緩衝液対照処置群の腫瘍容積の0%であった(p=0.0002、t−検定、図5)。
【0052】
毒性の臨床徴候が、本研究の全体を通して見られなかった。無作為に週間隔で計量される体重は、健康および発達障害の代用となった。図6は、処置期間の終了時に群間の体重による有意差が認められなかったことを示す(p=0.0676、t−試験)。したがって、AR36A36.11.1は耐容性が高く、乳癌異種移植モデルで全身腫瘍組織量を減少させた。
【0053】
実施例4
生体内(in
vivo)MB−231株化腫瘍実験
【0054】
図7および8を参照すると、5ないし6週齢のメスSCIDマウスに対して、500万個のMB−231ヒト乳癌細胞を含む100マイクロリットルの生理食塩水を該マウスの首筋に皮下注射することによって、該細胞の移植をおこなった。腫瘍増殖の測定は、1週間毎にカリパスを用いておこなった。コホートの大部分で平均腫瘍容量が移植後59日目に約100mm(60〜140mm)に達した際に、10匹のマウスを無作為に2つの処理群の各々に分けた。20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体または緩衝液対照を、2.7mM KCI、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHP0を含む希釈剤でストック濃度から希釈した後に容量300マイクロリットルで腹腔内投与した。次に、週3回ずつ抗体を投与し、同様にして移植後81日目までに合計10回の投与をおこなった。腫瘍増殖の測定は、移植後90日目まで、または動物がCCACの評価項目(エンド・ポイント)に達するまで、ほぼ7日目毎にカリパスを用いておこなった。動物の体重を、研究の継続期間に対して記録した。研究終了時、全ての動物を、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0055】
AR36A36.11.1は、ヒト乳癌の生体内(in vivo)モデルで、腫瘍増殖を抑制し、かつ全身腫瘍組織量を減少させた。移植後83日目(最終処置投薬後2日目)で、AR36A36.11.1での平均腫瘍容積は、緩衝液対照処置群の腫瘍容積の46%であった(p=0.038、t−検定、図7)。これは、平均T/Cの32%に一致する。
【0056】
毒性の臨床徴候が、本研究の全体を通して見られなかった。無作為に週間隔で計量される体重は、健康および発達障害の代用となった。図8は、処置期間の終了時に群間の体重による有意差が認められなかったことを示す(p=0.06493、t−試験)。
【0057】
要約すれば、AR36A36.11.1は、耐容性が高く、SCIDマウスでの乳癌の株化腫瘍異種移植モデルにおける腫瘍増殖抑制で、緩衝液対照よりも有意に有効性が高い。3週間を越える処置期間が3週間を越えることで、AR36A36.11.1は、対照と比べて50%未満の平均T/C腫瘍容積の評価項目(エンド・ポイント)に達した。処置上の利益は、周知のヒト癌疾患モデルで観察され、この抗体がヒト等の他のほ乳類での薬理学的および製薬学的利益を持つことを示唆している。
【0058】
実施例5
生体内(in vivo)SW1116腫瘍実験
【0059】
図9および10に関連して、週齢4ないし8週のメスSCIDマウスに対して、500万個のヒト大腸癌細胞(SW1116)を含む100マイクロリットル生理食塩水をマウスの首筋に皮下注射することで、該細胞を移植した。マウスを、各群5匹からなる2つの処置群に、無作為に分けた。20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体または緩衝液対照を、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHP0を含む希釈剤でストック濃度から希釈した後に容量300マイクロリットルで腹腔内投与した。次に、抗体の投与を7週間にわたって週に1回、同じ様式でおこなった。腫瘍増殖の測定は、ほぼ7日目毎にカリパスを用いて、最大8週間あるいは個々の動物がカナダ動物飼育評議会(Canadian Council for Animal Care; CCAC)の評価項目(エンド・ポイント)に達するまで測定した。動物の体重を、本研究期間にわたって記録した。本研究終了後、全ての動物を、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0060】
AR36A36.11.1は、ヒト大腸癌の生体内(in vivo)モデルで、腫瘍増殖を抑制し、かつ全身腫瘍組織量を減少させた。移植後50日目(最終処置投薬後5日目)で、AR36A36.11.1での平均腫瘍容積は、緩衝液対照処置群の腫瘍容積の51%であった(p=0.0055、t−検定、図9)。
【0061】
毒性の臨床徴候が、本研究の全体を通して見られなかった。無作為に週間隔で計量される体重は、健康および発達障害の代用となった。図10に示すように、処置期間の終了時に群間の体重による有意差を認められなかった(p=0.4409、t−試験)。したがって、AR36A36.11.1は耐容性が高く、大腸癌異種移植モデルで全身腫瘍組織量を減少させた。
【0062】
実施例6
生体内 (in vivo) PC−3腫瘍発現
【0063】
図11および12を参照すると、4ないし8週齢のオスSCIDマウスに対して、100万個の前立腺癌細胞(PC−3)を含む100マイクロリットルの生理食塩水を該マウスの首筋に皮下注射することによって、該細胞の移植をおこなった。マウスを、各群5匹ずつ2つの処置群に、無作為に分けた。移植の翌日に、20mg/kgのAR36A36.11.1試験抗体または緩衝液対照を、2.7mM KCI、1mM KHPO、137mM NaCl、および20mM NaHP0を含む希釈剤でストック濃度から希釈した後に容量300マイクロリットルで腹腔内投与した。次に、抗体の投与を試験期間中、週に1回、同じ様式でおこなった。腫瘍増殖の測定は、ほぼ7日目毎にカリパスを用いておこなった。試験は、6回の注射後に完了した(41日間)。なぜなら、大きな潰瘍の病変のために動物がカナダ動物飼育評議会(Canadian Council for Animal Care; CCAC)の評価項目(エンド・ポイント)に達したからである。本研究終了後、全ての動物を、CCACガイドラインに従って安楽死させた。
【0064】
AR36A36.11.1は、ヒト前立腺癌の生体内(in vivo)モデルで、腫瘍増殖を抑制し、かつ全身腫瘍組織量を減少させた。移植後41日目(最終処置投薬後5日目)で、AR36A36.11.1での平均腫瘍容積は、緩衝液対照処置群の腫瘍容積の14%であった(p=0.009、t−検定、図7)。
【0065】
PC−3前立腺癌異種移植モデルでは、体重は疾患進行の代わりの指標として使用し得る。 (Wang et al. Int J Cancer, 2003)
図12に見られるように、試験終了(41日目)までに、対照動物は試験開始から体重が27%減少したことを示した。対照的に、AR36A36.11.1による処置群は、対照群と比べて有意に体重が高かった(p=0.0017、t−検定)。全体的に、AR36A36.11.1処置群はたった6%しか体重に落とさず、緩衝液対照群による27%減少よりもかなり少ない体重減少であった。
【0066】
したがって、AR36A36.11.1は、耐容性が高く、前立腺癌異種移植モデルで全身腫瘍組織量および悪液質を減少させた。
【0067】
参考文献
Wang Z,
Corey E, Hass GM, et al. Expression of the human cachexia-associated protein
(HCAP) in prostate cancer and in a prostate cancer animal model of cachexia.
Int J
Cancer. 2003; 105 (1) : 123-9.
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】いくつかの癌および非癌細胞株に対するAR36A36.11.1および抗EGFR抗体の典型的なFACSヒストグラムである。
【図2】細胞株PC−3、LnCap、およびCCD−27skに対するハイブリドーマ上清の細胞傷害性率と結合レベルとの比較である。
【図3】AR36A36.11.1の細胞傷害性と陽性および陰性対照との比較である。
【図4】抗EGFR対照と対比させたAR36A36.11.1の結合を示し、アイソタイプ対照を上回る平均蛍光強度増加倍率を表にしたものである。結果は、イソタイプ対照を上回る蛍光強度増加倍率の平均値を定量的に示すもので、1.5ないし5(+)、5ないし25(++)、25ないし50(+++)、および50を超える(++++)として結果を表す。
【図5】MB−231乳癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図6】MB−231乳癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図7】株化MB−231乳癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図8】株化MB−231乳癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図9】SW1116大腸癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図10】SW1116大腸癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図11】PC−3大腸癌モデルでの腫瘍増殖に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。縦軸は、抗体が投与された期間を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。
【図12】PC−3前立腺癌モデルでの体重に対するAR36A36.11.1の効果を示す。データ点は、平均値±SEMを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号280104−02としてIDACに寄託されたクローンによってコードされる、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項2】
ヒト化されている請求項1記載の抗体。
【請求項3】
キメラ化されている請求項1記載の抗体。
【請求項4】
寄託番号280104−02としてIDACに寄託されたクローンによってコードされる、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項5】
ヒト腫瘍から選択される組織試料に含まれる癌細胞の抗体誘発細胞傷害性をイニシエートする方法であって、
前記ヒト腫瘍から組織試料を得ること、
寄託番号280104−02としてIDACに寄託されたクローンによってコードされる単離されたモノクローナル抗体または該単離されたモノクローナル抗体の細胞傷害性誘発抗原結合フラグメントを得ること、および
前記単離されたモノクローナル抗体または前記細胞傷害性誘発抗原結合フラグメントと前記組織試料とを接触させることを含む方法。
【請求項6】
前記ヒト腫瘍の組織試料が、大腸、卵巣、前立腺、膵臓、および乳房組織からなる群から選択される組織に由来する腫瘍から得たものである請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の前記単離されたモノクローナル抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項8】
請求項2記載の前記ヒト化された抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項9】
請求項3記載の前記キメラ化された抗体の抗原結合フラグメント。
【請求項10】
細胞傷害性成分、酵素、放射性化合物、および血行性細胞からなる群から選択される構成要素とコンジュゲートする請求項1、2、3、7、8、または9のいずれか一項記載の単離された抗体または抗原結合フラグメント。
【請求項11】
ほ乳類で抗体誘発細胞傷害性に対して感受性を持つヒト腫瘍であり、寄託番号280104−02としてIDACに寄託されたクローンによってコードされるモノクローナル抗体の細胞傷害性誘発特性を持つモノクローナル抗体または該モノクローナル抗体の細胞傷害性誘発性の抗原結合フラグメントに対して特異的に結合する抗原を発現する前記ヒト腫瘍を、処置する方法であって、
細胞傷害性を誘発するのに有効な量の前記モノクローナル抗体または前記モノクローナル抗体の前記抗原結合フラグメントを前記ほ乳類に対して投与することで前記ほ乳類の全身腫瘍組織量を減少させることを含む方法。
【請求項12】
前記単クローン抗体が細胞傷害性成分とコンジュゲートしている請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記細胞傷害性部分が放射性同位元素である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記モノクローナル抗体が補体を活性化させる請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記モノクローナル抗体が抗体依存型細胞傷害性を媒介する請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記モノクローナル抗体がヒト化されている請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記モノクローナル抗体がキメラ化されている請求項11記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−504227(P2008−504227A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500025(P2007−500025)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000302
【国際公開番号】WO2005/083064
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(504236592)アリアス リサーチ、インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】