説明

発光ダイオード照明装置

【課題】野菜や植物等の屋内栽培施設で用いられることを想定した、発熱量が少なく、かつ寿命の長い発光ダイオード照明装置を提供する。
【解決手段】樹脂封止タイプの発光ダイオードをプリント基板上に多数敷設し、該プリント基板を透明樹脂等のケースに収納した発光ダイオード照明装置において、発光ダイオードに流す平均電流の値を、その定格値の55%乃至85%に設定し、より好ましくは定格値の70%前後に限定したことを特徴とする。また、プリント基板上に隣接して敷設される発光ダイオードの設置密度を、1平方センチメートル当たり1.0個乃至1.5個に設定し、より好ましくは1平方センチメートル当たり1.2個前後に限定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の発光ダイオードをプリント基板上に敷設した照明装置に関するものであり、より詳細には、屋内での植物等の栽培に用いられる発光ダイオード照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における半導体技術の急速な発展に伴い、発光ダイオードの特性やその効率が格段に向上し、製造技術の著しい進歩や生産規模の増大に伴って発光ダイオードの低価格化も急速に進んでいる。また、昨今における省エネルギーや節電に関する社会的関心の高まりに応じて、発光ダイオードを用いた照明装置が従来の白熱灯や蛍光灯に置き替わり広く社会に普及しつつある。
【0003】
さらに、発光ダイオードを用いた照明装置は、通常の家庭や事務所等の照明以外にも様々な分野においてその利用が広がっている。特に昨今では、いわゆる「植物工場」と称される人工照明を用いて、植物や野菜を屋内で大量に育成する栽培施設での利用が注目されるようになった。これは、発光ダイオード特有の発光波長特性や、その低消費電力性が、屋内における植物等の栽培施設での利用に適しているためといえる。
【0004】
一般に、屋内の栽培施設で使用される発光ダイオード照明装置は、特許文献1に示されるような形状を有している。すなわち、発光ダイオードを縦長のプリント基板上に多数敷設した発光ユニットを制作し、これを透明樹脂やガラス製の円筒型ケースに収納して、発光ダイオードによる照明装置を形成するものである。
【0005】
ところで、発光ダイオードにおける電気から光へのエネルギー変換効率は、従来の白熱灯よりも向上したとはいえ未だに約4〜10%程度である。それ故、発光ダイオードを使用した照明装置において、その照度を増大させれば、それに伴い照明装置自体の発熱量も増加する。しかしながら、発光ダイオードに用いられるガリウム砒素や、窒化ガリウム等の半導体材料は熱に対し脆弱であって、摂氏80度以上で素子の劣化が始まると言われており、素子に高温の熱的ストレスを加え続けると発光ダイオードとしての寿命が極端に縮まるとされている。
【0006】
したがって、発光ダイオードを使用した照明装置においては係る問題を解決すべく、例えば、照明装置に金属製のヒートシンクを設けて装置からの発熱の放散を促進したり、或いは、発光ダイオードの電流駆動回路に、特許文献2や特許文献3に示すような電流制限回路を設けて、発光ダイオードに流れる電流を抑制することにより発熱量の低減を図る措置が講じられている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−141555号公報
【特許文献2】特開2004−214519号公報
【特許文献3】特開2010−103217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、照明装置にヒートシンクを付加する方法は、装置重量の大幅な増加や装置コストの上昇を招くことになる。また、上記の先行特許文献に示されるような電流制限回路の追加は、照明装置の制御回路が複雑となり、それに伴う装置コストの上昇や、使用電子部品の増加による故障要因の増大という不具合を招くおそれがある。特に、前述の屋内栽培施設で用いられる照明装置では、1台の照明装置について極めて多数の発光ダイオードが用いられるため、このような不具合は照明装置の普及の上で致命的な欠陥とみなされていた。
【0009】
本発明は、このような従来からの課題や不具合を解決することを目的とするものであって、より具体的には、野菜や植物等の屋内栽培施設で用いられることを想定した、発熱量が少なく、かつ装置寿命の長い発光ダイオード照明装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の観点による発光ダイオード照明装置は上記の目的を達成するため、
樹脂封止タイプの発光ダイオードをプリント基板上に多数敷設し、該プリント基板を透明樹脂等のケースに収納した発光ダイオード照明装置であって、
前記発光ダイオードに流す平均電流の値を、その定格値の55%乃至85%に設定し、より好ましくは定格値の70%前後に限定したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第二の観点による発光ダイオード照明装置は、上記第一の観点において、
プリント基板上に隣接して敷設される発光ダイオードの設置密度を、1平方センチメートル当たり1.0個乃至1.5個に設定し、より好ましくは1平方センチメートル当たり1.2個前後に限定したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第三の観点による発光ダイオード照明装置は、上記第一または第二の観点において、
発光ダイオードに流す電流の低減率αに対し、1/αの数値について0.8乃至1.0の係数を乗じた数値をプリント基板上における発光ダイオードの設置密度の増加率βと定め、係る増加率βに応じてプリント基板上の発光ダイオードの敷設数を増加させ、照明装置全体においては電流低減前とほぼ同一の照度を保つことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第四の観点による発光ダイオード照明装置は、上記第一ないし第三の観点の少なくとも何れか一において、
所定の電流制御手段をさらに含み、発光ダイオードに流す電流値を所定の範囲内において自在に調整し得ることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第五の観点による発光ダイオード照明装置は、上記第一ないし第四の観点の少なくとも何れか一において、
植物の室内栽培において、栽培植物から10センチメートル程度の距離に設置し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による発光ダイオード照明装置によれば、発光ダイオードの駆動電流を低減させつつ、所定の設定条件に基づいて照明装置に実装された発光ダイオードの数を増やすことにより、照明装置全体の照度を保持することができる。これによって、照明装置からの発熱量を低下させ、照明装置に使用される発光ダイオードの寿命を延ばすことが可能となり、屋内栽培施設に用いられる発光ダイオード照明装置の経済性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態である実施例について、本願の明細書に添付した各図面を参照しつつ以下に説明を行う。
【0017】
先ず、本発明の発光ダイオード照明装置10(以下、単に「照明装置10」という)の構造を図1に示す。因みに、図(1−a)は同装置の平面図を、図(1−b)は同装置の正面図を、図(1−c)は(1−a)(1−b)中のA−A’線における略式断面図を、それぞれ示すものである。なお、同装置に含まれる各種の配線材や電子部品、或いは各種電子回路等は、本発明の骨子に直接的な関係がないためその記載を省略している。
【0018】
図1からも明らかなように、照明装置10は、主に、プリント基板11、発光ダイオード12、及び透明ケース13から構成されている。プリント基板11は、一般の電子回路に広く用いられているプリント基板であり、例えば、紙エポキシ、ガラスエポキシ、或いはベークライト等のあらゆるプリント基板用の素材を用いることが可能である。
【0019】
プリント基板11には、同基板に実装された多数の発光ダイオード12を電子的に接続するため、銅箔によるプリントパターンがフォトエッチング等の技術によって、基板の表面或いは裏面に設けられている(図示せず)。プリント基板11に実装された発光ダイオード12どうしの接続については、様々な接続回路を構成することが可能であるが、その一例として、例えば、図2に示されるような接続回路を用いることもできる。
【0020】
同図に示す回路は、約10〜15個程度の発光ダイオード12を直列に接続し、これに電流制限抵抗14を接続して一つの直列枝を生成し、係る直列枝を、例えば30〜40本程度並列に接続して1枚のプリント基板を形成する。なお、電源回路15の特性や回路方式等を適宜選択することによって、電流制限抵抗14を省略することも可能である。
【0021】
図2に示される回路では、一つの直列枝において発光ダイオード12は全て直列に接続されているため、各ダイオードを流れる電流値は全て同一の値となる。また、各直列枝は全て並列に接続されるため、各々の直列枝に印加される電圧値は全て同一の値となる。なお、同図に示す接続回路は、あくまでも本発明の一実施例を示すものであり、本発明の実施が係る接続回路のみに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0022】
発光ダイオード12は、いわゆる砲弾型に成形された樹脂封止タイプの発光ダイオードであれば、あらゆる形式や種類のものが使用できる。なお、その発光色については、屋内栽培施設において栽培の対象とされる植物や野菜の属性、或いは栽培方法等の条件に応じて、各種の半導体材料の中から発光色を選択することが可能である。
【0023】
例えば、赤系統の発光色を強調するのであれば、アルミニウム・ガリウムヒ素やガリウムヒ素リン系統の半導体材料からなる発光ダイオードを使用することが好ましく、青・緑色系統の発光色を強調するのであれば、セレン化亜鉛や炭化ケイ素系統の半導体材料からなる発光ダイオードを用いることが好ましい。また、その用途や目的等に応じて異なる発光色の発光ダイオードを多種複合的に用いるようにしても良い。
【0024】
なお、本発明の目的である、発光ダイオードに加わる熱的ストレスを軽減させてその寿命を延ばすことに鑑みれば、熱容量の小さな高輝度型・チップタイプの発光ダイオードよりも、発光素子自体が大型であり、その熱容量が大きな砲弾型の樹脂封止タイプの発光ダイオードを使用することが好ましい。
【0025】
また、現在の市場における発光ダイオードの流通傾向は、高輝度型のチップタイプにその主流を移しているため、砲弾型の樹脂封止タイプは市場において旧型となりその価格も低下している。それ故、砲弾型の樹脂封止タイプの発光ダイオードを利用することによって、照明装置全体の製品コストを低く抑えるという効果も期待できる。
【0026】
一方、透明ケース13は、多数の発光ダイオード12が実装されたプリント基板11を収納するためのケースであり、照明装置10の筐体となる部位である。透明ケース13の素材としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、或いはプラスチック等の高分子樹脂や、ガラスなどの各種の素材を用いることが可能である。また、その形状についても、図1に示される円筒型の事例に限定されるものではなく、実際の使用態様に応じて、様々な形態・形状を取り得ることは言うまでもない。
【0027】
透明ケース13は、その内部に置かれた発光ダイオードの光をケースの外部に放射する必要上、あくまでも透明であることが原則的な条件とされる。ただし、放射光を散乱させるため、例えば、その表面を半透明にしたり、或いはその表面に段差や凹凸などの不連続面を設けるような構造としても良い。
【0028】
なお、図2に示した電源回路15は、透明ケース13の内部に収めるようにしても良いし、或いは、ケースの外部に設置するような構成としても良い。因みに、プリント板に実装された発光ダイオードに加わる熱的ストレスを軽減する観点に立てば、発熱を伴う電源回路や種々の電子制御回路は、透明ケース13の外部に設けることが好ましいと言える。
【0029】
次に、本発明による照明装置10の機能、ならびにその動作について説明を行う。先ず、図3の図表に、今回の照明装置10の実験によって得られた各種データを示す。図3に示された実験データは、事例1から事例3の三つの実験事例について、図表の左欄に記した各種パラメータを記述・測定したものである。
【0030】
因みに、事例1〜3ともに、発光ダイオードの実装形式は、12個の発光ダイオードを直列に接続して一つの直列枝が形成されており、事例1の場合は30列、事例2の場合は36列、事例3の場合は43列の直列枝が各々のプリント基板上に設けられている。したがって、各事例においては、それぞれ360個、432個、および516個の発光ダイオードが実装されている事になる。
【0031】
一方、今回の実験に用いられたプリント基板11は、長さ102.6cm、幅4.4cmの長尺矩形をしており、発光ダイオード12の実装されている部分は、99.1cm×3.6cmの寸法となっている。したがって、発光ダイオードの実装部分の実質的な面積は357.6cm2となり、各々の事例における発光ダイオードの実装密度は、それぞれ下記のようになる。
事例1 1.007個/cm2
事例2 1.208個/cm2
事例3 1.443個/cm2
【0032】
また、今回の実験では、照明装置10の電源として直流の定電流電源を用いるものとし、プリント基板11への供給電流は、各事例ともに同一の500mAに設定した。したがって、各事例において一列の直列枝を流れる平均電流、すなわち、一つの発光ダイオードを流れる平均電流は、それぞれ次のような値となる。
事例1 500mA÷30列≒16.7mA
事例2 500mA÷36列≒13.9mA
事例3 500mA÷43列≒11.6mA
【0033】
なお、今回の実験で使用した発光ダイオードの定格電流は約20mAである。したがって、上記の各事例ではその定格電流に対し、それぞれ約84%、70%、および58%の割合の駆動電流が各発光ダイオードを流れることになる。
【0034】
ところで、発光ダイオードからの発熱量はその出力(消費電力)に比例し、その消費電力は、発光ダイオードに流れる電流の二乗に比例することが知られている。それ故、発光ダイオードの発熱量と、発光ダイオードを流れる駆動電流との関係は、一般に、図4に示如く電流の増加につれて発熱量が急激に増大する形となる。
【0035】
例えば、発光ダイオードに流れる電流を、その定格電流Isに対して60〜70%程度のIoに低減した場合、発光ダイオードの発熱量Qoは、定格電流Isを流した場合の発熱量Qsの半分以下に低減される。すなわち、発光ダイオードに流れる電流を減少させることによって、発光ダイオードに加わる熱的ストレスを小さくすることが可能であり、言い換えればその寿命を延ばすことができるのである。
【0036】
一方、発光ダイオードに流れる電流とその照度(輝度)との関係は、定格電流の範囲内であれば、ほぼ直線的に変化することが確認されている。それ故、発光ダイオードに流す電流を低減させた場合、当然の結果としてその発光時の輝度も低下することになる。
【0037】
本発明は、係る輝度の低下を発光ダイオードの数を増やすことによって補うものであり、これを簡単な比喩に例えれば次のようになる。すなわち、一つの発光ダイオードを隣接した二つ発光ダイオードに置き換え、一つのときの半分の電流を各々の発光ダイオードに流した場合、全体として同程度の輝度が得られ、かつ各々の発光ダイオードの発熱量は、一つのときの1/4以下に抑制されてその寿命が増大する。
【0038】
そして、本発明の骨子は、発光ダイオードに流れる電流を低減させた場合でも、ほぼ同一の照度を維持すべく発光ダイオードの数を増やし、係る電流の低減率と発光ダイオードの増加率との間において、実用的な相関関係を実験的に求めた点にある。
【0039】
このような趣旨から、今回の実験では、事例1を基準として他の事例2〜3における電流低減率αと、発光ダイオードの実装密度増加率βを求めている。因みに、本発明では、係る電流の低減率αと、実装密度の増加率βを関係付けるパラメータとして、照度係数kを次のように定義している。
k= α × β……(1)
【0040】
上記の(1)式を変形すれば
β=(1/α) × k……(2)
となるので、上記の(2)式を用いて、実験的或いは経験的に求めた照度係数kを利用することにより、目標とする電流の低減率αから、発光ダイオードの実装密度の増加率βを予測することも可能となる。
【0041】
今回の実験におけるα、β、kの各数値は、図3の図表に示されるとおりであり、これを改めて記載すれば下記のような値となる。
事例2の場合 α=0.832 β=1.200 k=0.998
事例3の場合 α=0.695 β=1.433 k=0.996
【0042】
今回の実験では、定格電流の範囲内において、発光ダイオードの輝度が電流とほぼ比例して変化することを利用し、電流の減少率αと実装密度の増加率βが相殺するような形となるように、即ちk≒1となるように予めβを算出し、係るβに基づいて事例2および3における発光ダイオードの実装数を決定した。
【0043】
次に、今回の実験における各事例の照度測定結果を説明する。因みに、照度の測定方法は「JIS C7612」の規定に準じた方法で行い、照度の測定機器に関しては「JIS C1609」に応じた照度測定器を用いて行なったものである。各事例における照度測定の結果は図3の図表に示すとおりであり、事例2および3においては、事例1よりも発光ダイオードに流す電流を低減させたにも関らず、それぞれ事例1よりも約1割増し、ならびに約2割増しの照度が測定された。
【0044】
このような実験データに鑑みれば、現実には、照度係数kの値を上記の数値(k≒1)より低い値に設定しても、結果的にほぼ同一の照度が得られることが判明した。すなわち、電流の低減率αに較べて発光ダイオードの実装密度の増加率βを低く押さえた場合でも、実際には、ほぼ同一の照度が得られることが実証された。
【0045】
係る実験結果に基づき、各事例においてほぼ同一の照度を得ることを想定し、照度係数の補正値k’を算定した。そして、係る値を基にして、上記の(2)式を用いて実装密度の増加率の補正値β’を算出した。このようにして求めたk’およびβ’の値は、図表3に示すとおりであり、係るβ’から推測された事例2および3における発光ダイオードの想定実装数を同図表に示す。
【0046】
また、今回の実験における入力電力、すなわち、電源装置15の一次側の入力電力は、各事例共に21.7Wであり、各々の事例における発光効率(lux/W)は図3の図表に示す値となる。一般に、既存の「32W+30W」タイプの蛍光灯の発光効率が23(lux/W)前後であることに鑑みれば、係る実験データは極めて良好な結果と言える。
【0047】
なお、本発明においては、照明装置10に所定の電流制御手段(図示せず)を内蔵させることによって、発光ダイオードに供給する電流を自在に調整し得ることは言うまでもない。また、所定の温度センサーや照度センサー(図示せず)を併用して設け、電流のフィードバック制御を行なうことによって、発光ダイオードへの供給電流を適正な値に維持することも可能である。
【0048】
ところで、植物は光合成によってその養分を生成しているので、植物の屋内栽培においては、なるべく植物の近くに光源を置き、植物の葉や茎に十分な光量を当てることが好ましい。一般に、光源から放射された光は、光源からの距離の二乗に反比例して減衰するためである。しかしながら、従来の照明装置ではその発熱量が大きいため、栽培植物の近傍に照明装置を置くと装置からの発熱によって、植物の葉や茎にダメージを与えてしまうおそれがあった。
【0049】
しかしながら、本発明に係る照明装置によれば、通常の定格電流よりも少ない電流で発光ダイオードを駆動するので、照明装置からの発熱量を極めて低く抑えることができる。このため、植物等の屋内栽培施設において、植物の葉や茎等の近傍(例えば、10cm程度の距離)に照明装置を設置しても、照明装置からの発熱によって栽培植物にダメージを与えるおそれが少なく、かつ、十分な光量を植物に対して与えることができる。
【0050】
また、本発明では、発光ダイオードに流す駆動電流が少ないため、駆動電流に比例して増加する電流ノイズを低減させることが可能である。さらに、駆動電流の増加によって発生しがちな発光ダイオードの順方向電圧の低下による熱暴走破壊(電流増加に伴うダイオードのPN接合面の発熱により順方向電圧が低下し、これによって更に電流が増加するという悪循環により発生する素子破壊)のリスクも低減させることができる。
【0051】
以上に説明したように、本発明によれば、従来の照明装置とほぼ同一の照度を保ちつつ、その発熱量が格段に小さく、かつ、発光ダイオードの寿命が大幅に伸びた屋内栽培施設用の発光ダイオード照明装置を低価格で実現することが可能となる。
【0052】
なお、本発明の実施形態は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、例えば、各々の実施例を構成する各部位の形状や配置、或いはその素材などは、本発明の趣旨を逸脱することなく、現実の実施態様に即して適宜変更ができるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上に説明した本発明の構成は、植物や野菜などの屋内栽培施設において用いられる発光ダイオードを使用した照明装置の分野において利用が可能である。

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による発光ダイオード照明装置の概要を示す図である。
【図2】本発明による発光ダイオード照明装置の回路構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の発光ダイオード照明装置に関する実験データを示す図表である。
【図4】発光ダイオードにおける電流と発熱量との関係を表す図である。
【符号の説明】
【0055】
10 … 発光ダイオード照明装置
11 … プリント基板
12 … 発光ダイオード
13 … 透明ケース
14 … 電流制限抵抗
15 … 電源回路




【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂封止タイプの発光ダイオードをプリント基板上に多数敷設し、該プリント基板を透明樹脂等のケースに収納した発光ダイオード照明装置であって、
前記発光ダイオードに流す平均電流の値を、その定格値の55%乃至85%に設定し、より好ましくは定格値の70%前後に限定したことを特徴とする発光ダイオード照明装置。
【請求項2】
プリント基板上に隣接して敷設される発光ダイオードの設置密度を、1平方センチメートル当たり1.0個乃至1.5個に設定し、より好ましくは1平方センチメートル当たり1.2個前後に限定したことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオード照明装置。
【請求項3】
発光ダイオードに流す電流の低減率αに対し、1/αの数値について0.8乃至1.0の係数を乗じた数値をプリント基板上における発光ダイオードの設置密度の増加率βと定め、係る増加率βに応じてプリント基板上の発光ダイオードの敷設数を増加させ、照明装置全体においては電流低減前とほぼ同一の照度を保つことを特徴とする請求項1または2に記載の発光ダイオード照明装置。
【請求項4】
所定の電流制御手段をさらに含み、発光ダイオードに流す電流値を所定の範囲内において自在に調整し得ることを特徴とする請求項1ないし3の内の少なくとも何れか一項に記載の発光ダイオード照明装置。
【請求項5】
植物の室内栽培において、栽培植物から10センチメートル程度の距離に設置し得ることを特徴とする請求項1ないし4の内の少なくとも何れか一項に記載の発光ダイオード照明装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−25966(P2013−25966A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158469(P2011−158469)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(511175314)
【Fターム(参考)】