説明

発光体及びプラズマディスプレイパネル

【課題】プロセスコストを上昇させることなく、高コントラスト化と発光効率向上を図ることができる発光体及びプラズマディスプレイパネルを提供すること。
【解決手段】発光体を構成する発光粒子100は、発光体は、紫外線により励起して所定の波長域の可視光を蛍光発光する発光部101と、発光部101内部の略中心に設けられ、可視域の光を吸収する黒体部103と、発光部101と黒体部103の境界部に設けられ、発光部101により発光される可視光を選択的に反射するサブ波長構造層102とを備える発光粒子100の集合体である。また、プラズマディスプレイパネル300は、発光体である蛍光体層322に、上記発光体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光体及びプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自発光するディスプレイは視野角の依存性が無く、自然な映像が得られるので、広くディスプレイとして使用されており、特にプラズマディスプレイパネルは薄型であり、大画面を構成するのに最適である。
【0003】
このようなプラズマディスプレイパネルに用いられる発光体(蛍光体)に関する技術として、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されたものが知られている。
【0004】
特許文献1には、顔料を蛍光体粒子の表面に融着・被覆した着色蛍光体粒子を用いてコントラストを改善するようにしたプラズマディスプレイ装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、蛍光体粒子の中心部に光吸収体を設けることにより、紫外線の蛍光体への進入を確実に行わせると同時に、光吸収体により不要な外光を吸収させて、発光効率とコントラストを改善するようにしたプラズマディスプレイパネルとその蛍光体の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、酸化物粒子のマトリクス中に少なくとも1個の金微粒子を含有させ、又は、酸化物粒子の表面に少なくとも1個の金微粒子を担時・固着してなる、選択的に可視光を吸収する酸化物複合体粒子からなる薄膜を用いて、蛍光体粒子を被覆し又は基板表面をコーティングしてカラーフィルタを得ることにより、コントラストを改善するようにした技術が記載されている。
【特許文献1】特開平11−43670号公報
【特許文献2】特開平11−228952号公報
【特許文献3】特開2001−288467号公報
【非特許文献1】Photophysics of Structural Color in the MorphoButterflies Forma, 17, 103-121, 2002
【非特許文献2】厳密結合波理論(RCWA)によるサブ波長格子の解析:日本女子大学紀要 理学部 第14号 (2006) 長吉真弓)の4.5入射角度依存性(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の発光体及びプラズマディスプレイパネルにあっては、以下のような問題がある。
【0008】
まず、特許文献1に記載の技術にあっては、蛍光体粒子の表面を融着・被覆した顔料が、蛍光体粒子に入射しようとした紫外線を吸収するため、発光効率を低下させるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術にあっては、蛍光体に入射した外光はその中心部の光吸収体で吸収されるものの、蛍光体表面では一部の外光が反射されてしまうため、蛍光体表面で反射された外光によるコントラスト低下を抑制するという効果が得られないという問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載の技術にあっては、上記酸化物複合体粒子からなる薄膜で蛍光体粒子を被覆することは、蛍光体粒子への紫外線の入射を妨げ、発光効率を低下させるという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高コントラスト化と発光効率向上を図ることができる発光体及びプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発光体は、発光粒子の集合体からなる発光体であって、前記発光粒子は、紫外線により励起して所定の波長域の可視光を蛍光発光する発光部と、前記発光部の内部に設けられ、可視域の光を吸収する黒体部と、前記発光部と前記黒体部の境界部に設けられ、前記発光部により発光される可視光を選択的に反射するサブ波長構造層と、を備える構成を採る。
【0013】
本発明のプラズマディスプレイパネルは、一対の略平行に対向配置された前面板と背面板の間に、発光体が配設され放電ガスが封入された放電空間が形成され、前記前面板と前記背面板内に設けた電極による放電に基づいて前記放電ガスから発生する紫外線を、前記発光体により可視域の発光に変換することによって、可視光を発光するプラズマディスプレイパネルであって、前記発光体は、上記に記載の発光体である構成を採る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高コントラスト化と発光効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光体を構成する発光粒子の構成図であり、図1(A)は、その正面図、図1(B)は、その断面図である。
【0017】
図1において、発光体を構成する発光粒子100は、紫外線により励起して所定の波長域の可視光を蛍光発光する発光部101と、発光部101内部の略中心に設けられ、可視域の光を吸収する黒体部103と、発光部101と黒体部103の境界部に設けられ、発光部101により発光される可視光を選択的に反射するサブ波長構造層102とを備える。
【0018】
発光部101は、黒体部103の周囲にあって外部から印可される紫外線のエネルギで励起して、例えば、加色法における赤色・青色・緑色のいずれかの波長域の光を蛍光発光する。
【0019】
サブ波長構造層102は、可視域で略透明で且つ発光粒子製造プロセスに耐えられる金属酸化物から構成することが望ましい。
【0020】
ここで、サブ波長構造層102について詳細に説明する。
【0021】
サブ波長構造層102は、微細な3次元立体構造による構造色(structural color)発現部であり、構造上、発光部101の発光波長域の光を選択的に反射する機能を有する。例えば、非特許文献1には、モルフォ蝶(Morpho Butterflies)が有する構造色の解析結果が示されている。構造色は、光の波長又はそれ以下の微細構造によって生じる光の干渉による発色現象である。すなわち、構造色は、色素や発光によらない発色現象であるため、色素や顔料による発色と異なり、紫外線などにより脱色することがない。また、構造色の場合、積層構造を最適化することにより、可視光線をほぼ完全に反射させることも可能である。
【0022】
図2は、サブ波長構造層102の一例を示す拡大断面図である。このサブ波長構造層102は、黒体部103と発光部101の境界部に設けられている。特に、ここでは、黒体部103と発光部101の間に空隙があり、この空隙にサブ波長構造層102が設けられている。
【0023】
図2に示すように、サブ波長構造層102は、複数の柱状体150と複数の平行平板151群を組み合わせて構成されている。柱状体150は、黒体部103から発光部101側に略垂直方向に林立して突出伸長している。また、平行平板151群は、各柱状体150において、各柱状体150の伸長方向と略垂直方向に一定の間隔で平行配置されている。サブ波長構造層102は、例えば、集束イオンビーム装置を用いて、無機材料を微細加工して形成される。
【0024】
このような構成を有するサブ波長構造層102は、平行平板151の屈折率をn、平行平板151の厚みをa、平行平板151に挟まれた空間の厚み(平行平板151の間隔)をb、発光部101から射出する蛍光発光色の波長をλとするとき、次の式(1)を満足することにより、発光部101の発光波長域の光を選択的に反射することができる。
λ/2=a×n+b …(1)
【0025】
すなわち、発光部101の発光波長域に応じて平行平板151の屈折率n、厚みa、及び間隔bが上記式(1)を満足するようにサブ波長構造層102を形成することにより、赤色、青色、又は緑色の各発光波長域の光を選択的に反射させることができる。例えば、モルフォ蝶の翅は、金属光沢に富んだ鮮やかな青色をしているが、これは鱗粉表面に刻まれた格子状の構造による構造色である。この格子状の構造は青色の光の波長の丁度半分に相当する200nmの間隔で並んでおり、干渉により青色の光のみが反射される。発光体において、発光部101の発光波長域から青色の波長の光を選択的に反射させる場合には、青色の波長λが上記式(1)を満足するように平行平板151の屈折率n、厚みa、及び間隔bを決定してサブ波長構造層102を構成すればよい。また、同様に、発光部101の発光波長域から赤色又は緑色の波長の光を選択的に反射させる場合には、赤色又は緑色の波長λが上記式(1)を満足するようにサブ波長構造層102を構成すればよい。
【0026】
したがって、このようなサブ波長構造層102を形成することにより、広い波長域で発光する蛍光発光波長域を狭帯域化して色純度を高めることができる。また、上記式(1)を満足する平行平板151の屈折率、厚み、及び間隔を適度に分散させたサブ波長構造層102とすることにより、赤色、青色、及び緑色の各発光波長域において、より広い波長域での選択的反射を実現することができる。このような作用により、実効的な発光効率を向上することができ、輝度の向上を図ることができる。
【0027】
また、このようなサブ波長構造層102において、特に赤色の波長域に選択的反射をするサブ波長構造層102からなる境界部を有する発光粒子100に外光が入射すると、赤色以外の外光成分は、発光部101と境界部であるサブ波長構造層102を透過し黒体部103に入射して吸収される。また、青色の波長域に選択的反射をするサブ波長構造層102からなる境界部を有する発光粒子100に外光が入射すると、青色以外の外光成分は、発光部101と境界部であるサブ波長構造層102を透過し黒体部103に入射して吸収される。同様に、緑色の波長域に選択的反射をするサブ波長構造層102からなる境界部を有する発光粒子100に外光が入射すると、緑色以外の外光成分は、発光部101と境界部であるサブ波長構造層102を透過し黒体部103に入射して吸収される。このような作用でコントラストを向上させることができる。
【0028】
上記のように、サブ波長構造層102は、色素や顔料による発色と異なり、サブ波長構造を最適化することにより発光部101の発光波長域から特定色の光をほぼ完全に反射させることも可能である。
【0029】
このように、本実施の形態によれば、発光体は、紫外線により励起して所定の波長域の可視光を蛍光発光する発光部101と、発光部101内部の略中心に設けられ、可視域の光を吸収する黒体部103と、発光部101と黒体部103の境界部に設けられ、発光部101により発光される可視光を選択的に反射するサブ波長構造層102とを備える発光粒子100の集合体である。この構成により、外部から印可されるエネルギによって発光部101で蛍光発光した光は、サブ波長構造層102により発光部101の発光波長域が選択的に反射されるとともに、発光波長域外の外光はサブ波長構造層102を透過して発光部101の略中心にある黒体部103に到達し、黒体部103で吸収される。したがって、蛍光発光した光は発光粒子100から効率よく放射され、同時に、発光波長域外の外光はサブ波長構造層102を透過して黒体部103で吸収されるため、高コントラスト化と発光効率向上を図ることができる。発光効率の向上により、低消費電力化も可能である。また、発光効率の向上により、高輝度の映像を得ることが可能になる。
【0030】
また、発光粒子100の集合体である発光体を、プラズマディスプレイ装置などの表示装置に用いることで、外光に対するコントラスト向上を実現することができる。
【0031】
また、サブ波長構造層102は、色素や顔料による発色と異なり、紫外線などにより劣化することがないため、長寿命化も図ることができる。
【0032】
また、サブ波長構造層102は、サブ波長構造を最適化することにより発光部101の発光波長域の光をほぼ完全に選択的に反射させることができるため、高コントラスト化と発光効率向上の両立をより高い次元で図ることができる。
【0033】
また、サブ波長構造層102による発光波長域の光の選択的反射は、光の波長又はそれ以下の微細構造によって生じる光の干渉による発色現象であり、色素や顔料による発色のように光の吸収が電子により行われるものではない。したがって、サブ波長構造層102の材質として、高温プロセスに耐える材料(例えば、無機材料)を用いることができ、プラズマディスプレイパネルの製造工程で容易に実施することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、図2に示すように、黒体部103と発光部101の間に空隙があり、その空隙にサブ波長構造層102が形成されているが、これに限定されるわけではなく、空隙無しに発光部101内にサブ波長構造層を形成するようにしてもよい。この場合、発光部101の屈折率をnhとしたとき、次の式(2)を満足することにより、サブ波長構造層を含む発光部は、当該発光部の発光波長域の光を選択的に反射することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
λ/2=a(n−nh)+b …(2)
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態2は、黒体部103を無機材料から構成する場合である。
【0036】
本発明の実施の形態2に係る発光体を構成する発光粒子の基本的構成は、図1及び図2に示す実施の形態1の場合と同様であるため、ここでは、便宜上、同一の符号を用いて説明する。
【0037】
本実施の形態では、黒体部103は、無機材料からなる。黒体部103は、赤色(R)、青色(B)、緑色(G)の各発光部101に対応して以下の材質の光吸収材料を用いることができる。例えば、(1)赤色を蛍光発光する発光粒子100内部の黒体部103は、酸化鉄、(2)青色を蛍光発光する発光粒子100内部の黒体部103は、アルミン酸コバルト、(3)緑色を蛍光発光する発光粒子100内部の黒体部103は、コバルトグリーン、をそれぞれ用いることができる。
【0038】
外光は、発光部101及びサブ波長構造層102を一部透過して、無機材料からなる黒体部103に到達するが、この黒体部103によって発光波長域外の外光は吸収される。これにより、コントラストが向上する。
【0039】
また、黒体部103は、例えば、マグネタイトやチタンブラックなどの可視光を吸収する黒色の無機材料から構成してもよい。これにより、吸収可能な光の波長域が拡大し、さらにコントラストの向上を図ることができる。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、黒体部103に無機材料を用いるため、サブ波長構造層102の場合と同様に、高温プロセスに耐えることができ、プラズマディスプレイパネルの製造工程で容易に実施することができる。
【0041】
(実施の形態3)
実施の形態3は、発光粒子の外表面上、つまり、発光粒子の発光部の表面上に、波長選択性を持たないサブ波長構造体を有する場合である。
【0042】
図3は、本発明の実施の形態3に係る発光体を構成する発光粒子の構成図であり、図3(A)は、その正面図、図3(B)は、その断面図である。なお、この発光体は、図1に示す実施の形態1に対応する発光体と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図3に示す、発光体を構成する発光粒子200は、図1に示す発光粒子100の構成に加えて、発光部101の表面上に、波長選択性を持たないサブ波長構造体201が形成されている。すなわち、発光粒子200は、発光部101の最外部(最外周面)が、波長選択性を持たないサブ波長構造体201を有している。
【0044】
図4は、サブ波長構造体201の一例を示す拡大図である。
【0045】
図4において、サブ波長構造体201は、蛍光発光する発光部101の表面に、所定の形状を有する構造単位201aが、蛍光発光するために外部から印可されるエネルギである紫外線の波長域(例えば、147nm)よりも小さいピッチで周期的にアレイ状に配列されている。好ましくは、構造単位201aのピッチは、紫外線波長域の最短波長よりも小さい。なお、ここでいう「ピッチ」とは、サブ波長構造体201が多数の微細構造単位の二次元的な配列により構成されている場合には、最も密な配列方向におけるピッチを意味する。
【0046】
また、波長選択性を持たないサブ波長構造体201とは、反射を低減すべき光束を完全に反射させない態様だけではなく、所定波長の反射を低減すべき光束の反射を防止する効果を有する態様をも含んでいる。
【0047】
このように、上記所定の形状を有する構造単位201aを周期的にアレイ状に配列させることによって、紫外線に対して、見かけ上屈折率(密度)を連続的に変化させ、サブ波長構造体201が接する気体との界面における透過/反射特性の入射角依存性及び波長依存性が少ない反射防止機能面を形成することができる。これにより、紫外線に対する反射が抑制されるため、紫外線を効率よく発光粒子200(特に発光部101)に入射させることができ、発光効率を高めることができる。また、可視域に対しても、反射が抑制されるため、高コントラスト化を図ることができる。
【0048】
反射防止機能面を持つサブ波長構造体201としては、例えば、図4に示すように、高さhの円錐形状の突起を構造単位201aとし、これら円錐形状の突起(構造単位201a)がピッチpで周期的にアレイ状に配列された構造体を挙げることができる。
【0049】
構造単位201aのピッチpは、サブ波長構造体201において、一配列方向において実質上略一定であり、紫外線の波長域よりも小さければよい。しかし、界面での透過/反射特性の入射角依存性及び波長依存性をより一層低減させることができるという点から、かかるピッチpは、好ましくは紫外線の波長域の1/2以下であり、さらに好ましくは1/3以下である。基本的には波長域の1/2以下であれば垂直入射時に反射率を抑えることができる。しかし、斜めに入射する場合、光から見たときの見かけのピッチが大となるため反射率が増大することになる。そこで、斜めから入射する光に対しても反射率を抑えるにはよりピッチが小である方が好ましい結果となる(非特許文献2参照)。非特許文献2には、4.5入射角度依存性(図8)に詳細な実験結果が記載されている。
【0050】
また、構造単位201aの高さhは、特に限定されず、サブ波長構造体201において、すべての構造単位201aの高さhが必ずしも一定である必要はないものの、かかる高さhが高いほど、紫外線に対する反射防止機能が向上するという利点がある。したがって、構造単位201aの高さhは、好ましくは少なくともピッチp以上(厳密には、最小の構造単位201aの高さがピッチp以上)であり、さらに好ましくは少なくともピッチpの3倍以上(厳密には、最小の構造単位201aの高さhがピッチpの3倍以上)である。上述したように、1倍以上で反射率を抑えることができる。より反射率を抑えるにはより大きなアスペクト比が望ましい結果をもたらすことになる。非特許文献2には、4.3アスペクト比依存性(図6)に詳細な実験結果が記載されている。また、斜め入射による反射率の増大を抑えるにもアスペクト比が大きなことが有効である。
【0051】
本実施の形態では、上記のように、波長選択性を持たないサブ波長構造体201として、構造単位201aが図4に示す円錐形状である構造体を用いている。この場合、例えば、一例として、ピッチ0.07μm、高さ0.07μmの円錐形状の構造単位201aを有するサブ波長構造体201を形成することができる。これは、紫外線の波長(147nm)の1/2以下のピッチで、且つ、このピッチ以上の高さを有する構造単位に相当する。
【0052】
なお、波長選択性を持たないサブ波長構造体201の構造は、必ずしも図4に示す円錐形状の構造体に限定されるわけではなく、各種の形状を採ることができる。
【0053】
図5〜図9は、波長選択性を持たないサブ波長構造体201の構造単位の各種形状を示す図である。これらは、図4に示す円錐形状の構造単位201aに代えて、図3の発光粒子200の発光部101のサブ波長構造体201の構造単位として同様に用いることができる。
【0054】
例えば、サブ波長構造体201は、正六角錐形状や四角錐形状などの角錐形状の構造単位を有する構造体であってもよい。図5の例は、正六角錐形状の構造単位201bを有する場合である。また、サブ波長構造体201の構造単位の形状は、必ずしも錐形状に限定されるわけではなく、先端が丸くなっている釣鐘形状(図6及び図7に示す構造単位201c、201d)であっても、円錐台形状(図8に示す構造単位201e)や角錐台形状(図9に示す構造単位201f)などの錐台形状であってもよい。また、各構造単位は、厳密な意味で幾何学的な形状である必要はなく、実質的に錐形状や釣鐘形状状、錐台形状などであればよい。
【0055】
これらにより、外部から印可されるエネルギである紫外線を効率よく発光粒子200(特に発光部101)に入射させることができ、発光効率の向上を図ることができる。
【0056】
また、紫外線の波長域に対して効果的な反射防止構造体とすることで、より波長の大きい可視域の波長に対しても効果的な反射防止構造体とすることができ、外光が発光粒子200の最外周面で反射することを抑制でき、コントラストの向上をも図ることができる。
【0057】
このように、本実施の形態によれば、発光粒子200の外表面上に、波長選択性を持たないサブ波長構造体201を有するため、紫外線に対して反射が抑制され、発光効率のより一層の向上を図ることができ、且つ、可視域に対しても反射が抑制され、より一層の高コントラスト化を実現することができる。
【0058】
(実施の形態4)
実施の形態4は、上記各実施の形態における発光体を構成する発光粒子100、200を、プラズマディスプレイパネルの蛍光体層に適用した場合である。
【0059】
図10は、本発明の実施の形態4に係るプラズマディスプレイパネル(PDP)の概略断面図であり、発光色毎に空間的に分離された発光領域となる放電セルの1つを断面で示している。
【0060】
図10に示すプラズマディスプレイパネル(PDP)300は、互いに離隔して対向配置された前面板310と背面板320を備えている。なお、図10では、本実施の形態の特徴的な構成を示しており、その他の部分については一部省略している。
【0061】
前面板310と背面板320の間の空間には、プラズマ放電を発生させる放電空間が形成されている。放電空間には、ヘリウム(He)やネオン(Ne)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)などを混合した放電ガスが封入されている。放電空間は、隔壁321により複数の区画に仕切られており、単位発光領域となる複数の放電セル330が形成されている。3つの隣り合う放電セル330の内壁及び側面には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各蛍光体層が放電セル毎に色分けして塗布されている。
【0062】
前面板310には、PDP300としての機能を実現するために、電極や誘電体層、保護膜などの各構成要素がそれぞれ適切な位置に形成されている。例えば、前面板310は、ガラスなどからなる前面基板310a上に、透明電極311及び金属電極312からなる走査電極と、透明電極313及び金属電極314からなる維持電極とで対をなすストライプ状の表示電極が複数形成され、また、この表示電極を覆うように、例えば、ガラスなどからなる誘電体層315が形成されている。さらに、誘電体層315上には、例えば、酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層316が形成されている。また、遮光部317は、外光の吸収を行い、コントラストの低下を抑制する。また、同様に、反射防止膜318は、外光の反射を抑制し、コントラストの低下を抑制する。なお、これらの構成は一例であり、様々な変形例を適用することができる。
【0063】
また、例えば、背面板320は、ガラスなどからなる背面基板320a上に、前面板310と背面板320との間に形成される放電空間を区画し放電セル330を形成する隔壁321と、隔壁321により区画された放電セル330内に形成される蛍光体層322と、絶縁体層323で覆われたデータ電極324とを備える。背面板320は、絶縁体層323で覆われたデータ電極324と、ストライプ状の複数の隔壁321とが、前面板310と背面板320の間に形成されている。本実施の形態では、蛍光体層322は、上記各実施の形態における発光粒子100、200の集合体である発光体を用いて形成されている。
【0064】
次に、上記構成を有するPDP300の動作について説明する。
【0065】
上記のように構成されたPDP300において、電極間に電圧が印加されると、放電セル330に放電が発生し、励起された、例えば、混合ガス中のヘリウム(He)原子から紫外線が発生する。そして、発生した紫外線により蛍光体層322が励起されて可視光が発生し、表示動作が行われる。すなわち、表示電極とデータ電極との交点となる複数の放電セル330で構成される微小領域において表示動作が行われて画像が表示される。このとき、蛍光体層322は、上記各実施の形態における発光粒子100、200の集合体である発光体を用いて形成されているため、高コントラストで且つ高発光効率の発光粒子100、200の集合体である発光体が、放電ガスから発生する紫外線により発光する。なお、遮光部317は、外光の吸収を行って、コントラストの低下を抑制している。また、反射防止膜318は、外光の反射を抑制して、コントラストの低下を抑制している。
【0066】
このように、本実施の形態によれば、発光体である蛍光体層322に、上記各実施の形態に係る発光体を用いるため、高コントラストで且つ高発光効率の発光粒子100、200の集合体である発光体が、放電ガスから発生する紫外線で発光する。これにより、PDP300は、高コントラストで且つ高輝度の映像を得ることができる。
【0067】
なお、以上の説明は、本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0068】
例えば、上記各実施の形態では、黒体部103と発光部101との間にサブ波長構造層102を設けているが、このサブ波長構造層102は、光の波長又はそれ以下の微細構造によって生じる光の干渉により、発光部101の発光波長域の光を選択的に反射するものであれば、どのような構造を有するものであってもよい。
【0069】
また、上記各本実施の形態では、発光粒子、発光体及びプラズマディスプレイパネル(PDP)という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、例えば、蛍光体粒子や蛍光体材料、プラズマディスプレイ装置、PDP表示装置などであってもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の発光体及びプラズマディスプレイパネルは、高コントラスト化と高輝度化が要望されるプラズマディスプレイパネルに有用である。すなわち、高コントラストで明るい画像表示が可能であり、TV受像機や情報端末ディスプレイなどの高性能化、省電力化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発光体を構成する発光粒子の構成図
【図2】図1に示すサブ波長構造層の一例を示す拡大図
【図3】本発明の実施の形態3に係る発光体を構成する発光粒子の構成図
【図4】図3に示すサブ波長構造体の一例を示す拡大図
【図5】図3に示すサブ波長構造体の他の例を示す拡大図
【図6】図3に示すサブ波長構造体のさらに他の例を示す拡大図
【図7】図3に示すサブ波長構造体のさらに他の例を示す拡大図
【図8】図3に示すサブ波長構造体のさらに他の例を示す拡大図
【図9】図3に示すサブ波長構造体のさらに他の例を示す拡大図
【図10】本発明の実施の形態4に係るプラズマディスプレイパネルの断面図
【符号の説明】
【0072】
100、200 発光粒子
101 発光部
102 サブ波長構造層
103 黒体部
201 サブ波長構造体
201a〜201f 構造単位
300 プラズマディスプレイパネル(PDP)
310 前面板
310a 前面基板
311、313 透明電極
312、314 金属電極
315 誘電体層
316 保護層
317 遮光部
318 反射防止膜
320 背面板
320a 背面基板
321 隔壁
322 蛍光体層
323 絶縁体層
324 データ電極
330 放電セル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光粒子の集合体からなる発光体であって、
前記発光粒子は、
紫外線により励起して所定の波長域の可視光を蛍光発光する発光部と、
前記発光部の内部に設けられ、可視域の光を吸収する黒体部と、
前記発光部と前記黒体部の境界部に設けられ、前記発光部により発光される可視光を選択的に反射するサブ波長構造層と、
を備える発光体。
【請求項2】
前記黒体部は、当該発光体の略中心に設けられ、
前記発光部は、空隙を置いて前記黒体部の周囲を包囲するように設けられ、
前記サブ波長構造層は、前記発光部と前記黒体部の間の前記空隙に設けられている、
請求項1記載の発光体。
【請求項3】
前記黒体部は、前記発光粒子の略中心に設けられ、
前記発光部は、前記黒体部の周囲を包囲するように設けられ、
前記サブ波長構造層は、前記発光部と前記黒体部の境界部における前記発光部の内部に設けられている、
請求項1記載の発光体。
【請求項4】
前記黒体部は、無機材料からなる、請求項1記載の発光体。
【請求項5】
前記発光粒子は、外表面上に、波長選択性を持たないサブ波長構造体を有する、請求項1記載の発光体。
【請求項6】
一対の略平行に対向配置された前面板と背面板の間に、発光体が配設され放電ガスが封入された放電空間が形成され、前記前面板と前記背面板内に設けた電極による放電に基づいて前記放電ガスから発生する紫外線を、前記発光体により可視域の発光に変換することによって、可視光を発光するプラズマディスプレイパネルであって、
前記発光体は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発光体である、
プラズマディスプレイパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−127003(P2009−127003A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306148(P2007−306148)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】