発光体
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノメータ(nm)オーダーのサイズの金属−炭素複合超微粒子を含有する発光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に炭素材料は、電池電極材料、炭素繊維、トナー材料等の工業的利用価値が大きいため、様々な炭素材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
グラファイト構造を有する炭素材料としてよく知られている物質には、カーボンブラックがある。これは石油ピッチ等の材料を酸素を除いた条件下で高温焼成して得ることができる。このカーボンブラックは、図22に概略図示するように、グラファイト構造の小片1が球状に集合することにより球状構造2をなしたものである。
【0004】
しかしながら、このようにして得られる球状構造のカーボンブラックの粒子は、通常、μmオーダーのサイズのものであり、小さい場合でもサブμmの直径を有するものであるため、工業的に上記したように利用する上で制約がある。
【0005】
一方、1985年に炭素クラスタービームの質量分析法により見出されたフラーレン、例えば、C60は、正二十面体の頂点をすべて切り落として正五角形を出した“切頭二十面体”と呼ばれる多面体構造を有し、図23に示すように、この多面体の60個の頂点をすべて炭素原子Cn で置換したクラスター(分子集合体)であり、公式サッカーボール型の分子構造を有する。同様に、C70もいわばラグビーボール型の分子構造を有する。同様に得られるC76、C78、C80、C82、C84、C86……等のカゴ状分子も高次フラーレンと呼ばれる。
【0006】
こうしたフラーレンは、1990年にクレッチマーらによる炭素電極のアーク放電法で大量合成が可能となった(W. Kraschmer, K. Fostiropoulos, D. R. Huffman :Chem. Phys. Lett. 170(1990)167. 及びW. Kraschmer, L. D. Lamb, K. Fostiropoulos, D. R. Huffman :Nature 347(1990)354.)。
【0007】
一般にアーク放電法では、気化した炭素が反応チャンバー内で炭素クラスターを形成する過程で生成し、内壁に付着した煤の中から抽出されるが、翌年1991年にはアーク放電後の負極の炭素付着物の中にカーボンナノチューブ(ナノメータオーダーのチューブ状の炭素付着物)が発見され、その部位で更に大きなサイズの炭素原子の組織化が起きることが明らかとなった(S. Iijima:Nature 345(1991)56.)。
【0008】
この負極上の炭素付着物の中には、図24に示すように、タマネギ状に多層グラファィトが成長したいわゆるナノカプセルもまた無数に存在する(M. Ata, N. Matsuzawa, Y. Kijima, J. Seto and H. Imoto : Jpn. J. Appl. Phys. 32(1993)3549.)。この構造は、ジャイアントフラーレンと呼ばれることもある。本出願人は既に、そのようなナノカプセルを特願平5−22091号として提案した。
【0009】
即ち、図24に示す如く、コア部23の周囲に同心球状にグラファイト構造21が重なった同心球構造22を有するnmオーダーのサイズの炭素超微粒子(ナノカプセル)が存在することを確認し、その構造を明らかにしたものである。
【0010】
この炭素超微粒子は、同心球構造の超微小球体であり、カーボンブラック等の小球体とは全く異なる構造を有している。そして、サイズも、カーボンブラックがμmオーダーであるのに対し、nmオーダー(特に数nm〜150nm)であってこれまで知られている炭素球よりもはるかに小さいグラファィト構造を有する炭素超微粒子であることを確認した。
【0011】
近年、上記したアーク放電法によるフラーレン、あるいはナノカプセル、ナノチューブの製法において、炭素電極を金属複合材料とすることによって生成された金属入りフラーレンや、金属複合ナノカプセル、ナノチューブの製造が相次いで報告された。例えば金属複合ナノカプセル、ナノチューブについてだけ見ても、以下のような様々な報告がなされている。
【0012】
R. S. Ruoff, D. C. Lorents, B. Chan, R. Malhotra, and S. Subramoney : Science 259(1993)346.
M. Tomiya, Y. Saito, and T. Hayashi : Jpn. J. Appl. Phys.32(1993)L280.
D. Ugarte : Chem. Phys. Lett. 209(1993)99.
Y. Yoshida : Appl. Phys. Lett. 62(1993)3447.
【0013】
S. A. Majetich, J. O. Artman, M. E. McHenry, N. T. Nuhfer and S. W. Staley : Phys. Rev. B48(1993)16845.
Y. Saito, M. Okuda, T. Yoshikawa, S. Bandow, S. Yamamuro, K. Wakoh, K.Sumiyama and K. Suzuki : Jpn. J. Appl. Phys. 33(1994)L186.
S. Bandow and Y. Saito : Jpn. J. Appl. Phys. 32(1993)L1677.
【0014】
S. Seraphin, D. Zhou, J. Jiao, J. C. Withers and R. Loutfy : Appl. Phys. Lett. 63(1993)2073.
Y. Murakami, T. Shibata, K. Okuyama, T. Arai, H. Suematsu and Y. Yoshida : J. Phys. Chem. Solids 54(1993)1861.
D. S. Bethune, C. H. Kiang, M. S. de Vries, G. Gorman, R. Savoy, J. Vazquez and R. Beyers : Nature 363(1993)605.
【0015】
P. M. Ajayan, J. M. Lambert, P. Bernier, L. Barbedette, C. Colliex andJ. M. Planeix : Chem. Phys. Lett. 215(1993)509.
M. Ohkohchi, Y. Ando, S. Bandow and Y. Saito : Jpn. J. Appl. Phys. 32 (1993)L1248.
S. Subramoney, R. S. Ruoff, D. C. Lorents and R. Malhotra : Nature 366(1993)637.
【0016】
P. M. Ajayan, C. Colliex, J. M. Lambert, P. Bernier, L. Barbedette, M.Tence and O. Stephan : Phys. Rev. Lett. 72(1994)1722.
S. Seraphin, D. Zhou, J. Jiao, M. A. Minke, S. Wang, T, Yadav and J. C. Withers : Chem. Phys. Lett. 217(1994)191.
Y. Saito and T. Yoshikawa : J. Cryst. Growth 134(1993)154.
【0017】
S. Seraphim, D. Zhou, J. Jiao, J. C. Withers and R. Loutfy : Nature 362(1993)503.
Y. Saito, T. Yoshikawa, M. Okuda, N. Fujimoto, K. Sumiyama, K. Suzuki,A. Kasuya and Y. Nishina : J. Phys. Chem. Solids 54(1993)1849.
P. M. Ajayan, T. W .Ebbesen, T. Ichihashi, S. Iijima, K. Tanigaki and H. Hiura : Nature 362(1993)522.
【0018】
S. C. Tang, P. J. F. Harris snd M. L. H. Green : Nature 362(1993)520.
S. Subramoney, R. S. Ruoff, D. C. Lorents, B. Chan, R. Malhotra, M. J.Dyer and K. Parvin : Carbon 32(1994)507.
C. Guerret−Piecourt, Y. LeBouar, A. Loiseau and H. Pascard : Nature 372(1994)761.
【0019】
M. Ata, Y. Kijima, A. J. Hudson, H. Imoto, N. Matsuzawa and N. Takahashi : Adv. Materials 6(1994)590.
M. Ata, Y. Kijima, H. Imoto, N. Matsuzawa and N. Takahashi : Jpn. J. Appl. Phys. 33(1994)4032.
M. Ata, K. Yamaura, A. J. Hudson and K. Kurihara : Jpn. J. Appl. Phys.34(1995)4207.
M. Ata, K. Yamaura and A. J. Hudson : Adv. Mat. 7(1995)286.
【0020】
金属のカーバイドは様々な電気伝導性やバンド構造を有することから、種々の電子デバイス、とりわけ発光デバイスの材料として有用な物質である。しかし、一般に、金属カーバイドは存在状態としては不安定なものが多く、例えば金属酸化物と易黒鉛化炭素の混合物を真空中或いは不活性気体中で熱処理して得られる金属カーバイドは、大気中の水分、酸素等により容易に金属酸化物や水酸化物へ変化する。
【0021】
このようなことから、金属カーバイドは様々な導電性やバンドギャップを有する物質であるにもかかわらず、そのものを電子デバイスの素材として用いられる例はほとんど存在しないのが現状である。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の如き金属カーバイドの持つ優れた性質、特に発光体としての性質を効果的に発揮できる構造を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ナノメータ(nm)オーダーサイズのメタルカーバイドを安定に存在させ、かつその機能性を鋭意探索の結果、そのようなメタルカーバイドに紫外光や電子線を照射することにより、いわゆるフォトルミネッセンスが観測できることを見出し、更にアーク放電時の原料である炭素電極の調製法により、多くの金属カーバイド入りナノチューブやナノカプセルが得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0024】
即ち、本発明は、超微粒子状(即ち、ナノメータオーダーサイズ)のグラファイトカプセル構造(カーボンナノカプセル)中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス状金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、ビーム照射又は電圧の印加によってエネルギー励起され、フォトルミネッセンス又はエレクトロルミネッセンスによる光を放出する発光体に係るものである。ここで、「発光体」とは、上記複合粒子、又は複合粒子を含有する層を意味する以外にも、それを用いたフォトルミネッセンス素子等の発光素子をも包含するものである。
【0025】
本発明の発光体によれば、例えば、金属−炭素複合電極(金属複合炭素電極)の直流アーク放電で得られる金属カーバイドを包含した多層又は単層(通常は多層)グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルであって、金属カーバイド単結晶又はアモルファス状金属カーバイドはグラファイトの層に包まれていることから、大気中に放置した場合や水中に分散した場合でさえ、水や酸素との反応は起きえない。従って、このような微細な金属単結晶は、その結晶サイズがナノレベルの極めて微細な単結晶であるにもかかわらず、安定な材料である。これは、カプセルのいわゆる保護膜として機能しているグラファイト層によって金属カーバイドが酸素や水に対し不活性となることによる。
【0026】
こうして、ナノサイズの金属カーバイド単結晶又はアモルファスが単層或いは多層のグラファイトカプセルに包含されることにより、金属カーバイドの劣化を防止することができる。そして、このようなカプセル構造が、包含される金属カーバイドの電気伝導性及びバンドギャップに基づいて発光体として機能することが本発明者により新たに発見され、発光体或いは発光素子としての応用を可能としたものである。
【0027】
後述する実施例で示すように、本発明に基づいて、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートで形成されたカーボンナノカプセルからの発光スペクトルは殆どのものがブロードである。透過電子顕微鏡で金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルを含む炭素堆積物を観測すると、ナノカプセルのサイズは直径数nmから数十nmまでと様々であり、包含されている金属カーバイド単結晶又はアモルファスのサイズも様々である。包含されている金属カーバイドは殆ど単結晶であり、アモルファスはまれである。
【0028】
これらのことから、観測される発光スペクトルは、包含された金属カーバイドのバンド構造よりも、そのサイズのばらつきが発光の量子効果に強く影響を与えていることが示唆される。従って、もし金属カーバイドを包含したカーボンナノカプセルのサイズを揃えることができるならば、発光スペクトルの単色性を増すことが可能であると考えられる。
【0029】
球状グラファィトカプセル構造の安定性は、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなる本発明に基づくカーボンナノカプセルの精製にとって有用であり、例えば金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルを含む炭素堆積物を粉砕し、非水溶媒又は水溶媒に分散させて遠心分離法での精製を行う場合でさえ構造の破壊は起きない。
【0030】
また、この金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルを含む炭素堆積物には不定形炭素や板状グラファィトのような炭素が含まれる。これらの炭素系物には何ら機能性はなく、カプセルの機能を引き出すためには取り除く方がよい。
【0031】
これらは例えば堆積物に電極を設置し、或いは堆積物を粉砕したものを20重量%程度ポリビニリデンフルオライドのような樹脂で塗料化して銅箔に塗布し、電池セルと同じ構造とし、これらをエチレンカーボネートのような非水溶媒中、LiPF6 、LiBF4 の如き電解質と金属リチウム電極で充電過程を経ることで、板状グラファイト構造のみに選択的にリチウムイオンをインターカレーションできる。これを酸素分圧10%程度の状態で加熱酸化することにより、不定形或いはインターカレートされた板状グラファイトは選択的に酸化し、ナノカプセルやナノチューブのみを取り出すことができる。
【0032】
また、これら不定形炭素や板状グラファイトに比べ、金属カーバイドを含有したグラファイトカプセルやナノチューブは比重が大きいことから、遠心分離により取り出すことも可能である。更に、例えば、ガドリニウム複合グラファイトのアーク放電で得られるカプセルに含まれるGdC2 のような強磁性体は、非水又は水溶液に界面活性剤と共に分散させ、容器の外壁に永久磁石を置くことにより磁気的手法で精製可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の発光体は、実際には、多層又は単層のグラファイトシートからなるナノメータオーダーのカプセル構造中に、バナジウム等の典型金属、ガリウム等の遷移金属、ランタン等のランタノイド系列の希土類金属及びアクチニウム等のアクチノイド系列の金属から選ばれた金属又は複数の金属のカーバイドの単結晶又はアモルファス状カーバイドが包含されたものであり、カーボンナノカプセルと称される。この金属カーバイドの包含量(含有量)は、カーボンナノカプセル全体に対して1〜70重量%であってよく、5〜20重量%が更に望ましい。
【0034】
後述する金属複合炭素電極のアーク放電により得られた上記金属カーバイド包含多層又は単層グラファイトカプセルはそのままでは粉状物質である。そこで、ポリメチルメタクリレートの如きポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、様々なアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等をアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルフォルムアミド、酢酸エチル等の有機溶媒の単独或いは混合物に溶解させ、これに上記金属カーバイド包含多層又は単層グラファイトカプセルを分散させることにより塗料とし、ポリエステルフィルム、ガラス、導電薄膜を蒸着したガラス、金属、半導体等の基体上に吹き付け、或いは、樹脂フィルム上であればロール塗布等の任意の方法で展開し、乾燥させることにより、薄膜化が可能である。前者の場合は、発光層が上記グラファイトカプセル(複合粒子)を分散させた樹脂層からなり、後者の場合は、発光層が実質的に上記グラファイトカプセル(複合粒子)のみからなる。
【0035】
また、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファィトシートからなる上記カーボンナノカプセルは、電子線照射や光照射等のビーム照射によってエネルギー励起されて光放出(発光)するため、蛍光体(フォトルミネッセンス素子)として利用可能である。このような利用には、上記金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファィトシートからなるカーボンナノカプセルを分散して含む有機塗料を薄膜化するか、或いは、ナノカプセルの粒子を粘性ポリマー表面に直接吹き付けて螢光体層を形成することができる。
【0036】
電界発光を得るには、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなる上記カーボンナノカプセルを分散して含む塗料を吹き付け、キャスティング、ドクターブレード、ロール塗布のような手法により導電性基板上に展開し、乾燥後にその上に蒸着等によりアルミニウム等の電極を設置する。そして、両電極間に印加する直流又は交流の電圧(電界)によりエネルギー励起され、光を放出するエレクトロルミネッセンス素子としての電界発光用セルを形成すればよい。
【0037】
本発明の発光体を製造するには、金属及び/又は金属化合物の単体又は混合物を炭素中に含有する金属−炭素複合体を処理することによって、超微粒子状のグラファイトカプセル構造中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス金属カーバイドが包含された複合粒子を堆積させるのがよい。
【0038】
この製造方法において、上記した金属−炭素複合体を処理して複合粒子を堆積させる方法としては、金属−炭素複合体(金属複合炭素電極)を正極として直流又は交流アーク放電を生ぜしめ、複合粒子を対向電極(負極)上に堆積させる方法が望ましい。
【0039】
このアーク放電による堆積方法では、ヘリウム等の不活性気体、50〜600Torr 、好ましくは 150〜350Torr の圧力の不活性気体中でアーク放電を生ぜしめるのがよい。
【0040】
また、上記した金属−炭素複合体を処理して複合粒子を堆積させる他の方法として、金属−炭素複合体を高周波加熱、レーザ照射等によって加熱し、蒸発させて複合粒子を堆積させることもできる。
【0041】
また、グラファイト又は炭素のアーク放電で得られるススと、金属酸化物又は金属超微粒子とを混合し、真空又は不活性ガス中で加熱することにより、カプセル構造を得ることができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例について更に詳細に説明する。
【0043】
金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの構造例
図1に概略的に例示するように、上記の金属カーバイド30を内包するようにしてグラファイトシート31が多層に積層され、ナノメータオーダーのカプセル構造からなる複合粒子(カーボンナノカプセル)32を形成している。
【0044】
発光体としての構成例
図2によれば、上記のカーボンナノカプセル32を樹脂33中に分散させた発光層34を基板35上に形成することにより、発光素子36を構成している。この発光素子36はフォトルミネッセンス素子として、入射光37によってカーボンナノカプセル32中の金属カーバイドがエネルギー励起され、螢光38を放出することができる。入射光としては例えばHe−Cdレーザや電子線を使用することができる。
【0045】
図3の例は、上記のカーボンナノカプセル32を樹脂39中に分散させた発光層40を透明基板41上の電極(通常は透明電極)42上に形成し、更に発光層40上に対向電極43を形成することにより、発光素子44を構成したものである。この発光素子44はエレクトロルミネッセンス素子として、両電極42−43間に直流又は交流の電圧45を印加し、発光層40に電界を印加することにより、電界発光46を生ぜしめることができる。電極42と43を例えばマトリックス状に配し、その交差点を選択的に電界発光させれば、ディスプレイとしても使用可能である。
【0046】
金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの製造
このカーボンナノカプセル32は、図4に概略的に例示した真空装置50によって製造することができる。即ち、水冷された真空チャンバー51内に金属を含有する高純度グラファイト(又は炭素)製の金属複合炭素電極(正極)52と、高純度グラファイト(又は炭素)製の電極(負極)53とを 0.2〜1.5cm の間隔を置いて配置し、不活性ガスの存在下で両電極間に直流(又は交流)電圧54を印加することによって、対向電極52−53間にアーク放電を生じさせる。
【0047】
使用可能な不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、キセノン等が挙げられ、アーク放電に際する不活性ガスの圧力は 150〜350Torr が望ましい。
【0048】
このような条件下で放電を行うと、電極、特に正極52の構成材料である金属複合炭素が蒸発してプラズマ化され、負極53の先端には上記した金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの堆積物32が、負極53の先端から2〜10cmの長さに亘って析出(付着)する。堆積物32を効率よく得るには、電極52と53との間のギャップをできるだけ近づけた方がよい。
【0049】
本発明者は、電極53上の付着物32を詳細に分析したところ、析出した付着物32は、図1に示した如く金属カーバイドを内包した多層グラファイトシートからなるナノメータオーダーのカプセル構造であることを透過電子顕微鏡観察によって確認した。
【0050】
即ち、このカプセル構造は、図1に示した如く、同心球状にグラファイト31がシート状に重なったナノメータオーダーの同心構造中に金属カーバイド30が内包されたものである。このカプセルは、カーボンブラック等の小球体とは全く異なる構造を有しており、サイズも、カーボンブラックがμmオーダーであるのに対し、nmオーダー(特に数nm〜50nm)であってこれまで知られている炭素球よりもはるかに小さいグラファイト構造を有する炭素超微粒子であることを確認した。
【0051】
上記において、電極52、53のサイズは電源の容量に依存する。通常、 100アンペア程度の直流をかける場合には、特に正極は直径数mm〜50mmとするのがよく、数mm〜10mm程度が適切である。この範囲を超えるとカーボンナノカプセルの成長が遅く、逆に小さすぎる場合にはカーボンナノカプセルが析出せずに飛び散る傾向がある。
【0052】
また、2本の電極52、53は通電下で接触させ、接触部位の抵抗加熱で十分に加熱したのち、数mm〜15mm程度、好ましくは2〜4mmのギャップでアーク放電を行うのがよい。
【0053】
金属カーバイド包含多層グラファイトカプセル製造の具体例
金属V(5A族、典型金属)、Gd(3A族、典型金属)、Y(3A族、典型金属)、Hf(4A族、典型金属)、Ga(3B族、遷移金属)及びLa(3A族、ランタノイド系希土類金属)について、金属複合炭素電極中の金属の割合とアーク放電時のヘリウム圧の条件で、金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの生成がどのように変化するかを検討した。
【0054】
金属複合炭素電極を正極としてアーク放電を行い、炭素負極先端に形成された堆積物の透過電子顕微鏡を観測することにより、生成の効率を評価した。金属複合炭素電極は、ピッチの焼成体である易黒鉛化炭素粉末と上記金属の酸化物とを混合し、プレス機で加熱成形し、外径1cm、長さ10cmの棒とした。これを正極としてアーク放電を行った。このような複合電極を製造する際、炭素に対する金属の割合は上記の各金属についてそれぞれ、3重量%(以下、単に「%」と表す。)、6%、9%、12%、15%、20%とした。
【0055】
水冷チャンバー中で直流アーク放電を行った後に負極先端に生じた堆積物を透過電子顕微鏡で観察し、その顕微鏡像の中に確認されるグラファイトカプセルの中で、中空の物に対して、金属カーバイドを含むものの割合が最も多かった時の、金属の炭素に対する分量を下記の表1に示す。なお、この際のアーク放電は、直流 100アンペアの電流で、ヘリウム 100Torr下で行った。
【0056】
【0057】
以上のことから、電極中の金属の含有率が重量%で6%〜9%程度の場合が、最も効率的に金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルが生成していることが分かる。
【0058】
一方、V、Gdを6%含む電極を用いて、アーク放電の際のHe圧の効果について調べた。その結果、 100Torr、 150Torrの場合の放電より、内圧を 200〜450Torr にした場合の放電の方が、効果的に金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルが生成しており、更に負電極先端への堆積速度も速いことが分かった。従って、これらのことから、チャンバー内のヘリウム圧は通常のフラーレンの製造で採用される 100〜150Torr より高めに設定することが望ましい。
【0059】
次に、図5〜図12に、上記の方法で得られた金属カーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルの透過電子顕微鏡写真を示す。これらは全て、上記の表1に示した条件で得られた負極先端の堆積物の透過電子顕微鏡写真である(但し、図11はSb(5B族、遷移金属)、図12はTa(5A族、典型金属)について上記と同様にして得られたナノカプセルを示す)。これらの写真から、各金属カーバイドを内包したカーボンナノカプセル構造が得られたことが明らかである。
【0060】
即ち、図5のVカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルは、数10nm又はそれ以下の多層グラファイトシート内にVカーバイド単結晶が内包されていることが分かる。同様に、図6〜図12では、何重にも重なった多層グラファイトシート内にGd等の金属カーバイド単結晶が内包されていることが分かる。
【0061】
また、図13〜図16に、上記の条件で得られた負極先端の堆積物(上記金属カーバイド結晶包含多層グラファイトカプセル)のX線回折スペクトルを示す(但し、図13はV(5A族、典型金属)、図14はGd(3A族、典型金属)、図15はHf(4A族、典型金属)、図16はLa(3A族、ランタノイド系希土類金属)についてのもの)。
【0062】
図13(a)は、図5に示したVカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはVカーバイド結晶(V8 C7 )の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。グラファイトナノカプセルに含まれたVカーバイドはV4 C3 で表わされるが、これはV8 C7 と非常によく似ているので、図13(a)の回折ピークを示すV8 C7 はV4 C3 と等価であると考えられる。
【0063】
また、図13(b)は、グラファイトカーボンのG(002)ピークを拡大して示すが、この回折スペクトルが2つのピークの重なりからなっており、これらの2θ=26.1°及び26.6°のピークはd002方向に沿うグラファイトの層間距離に対応し、前者は 0.341nm、後者は 0.335nmの位置にそれぞれ相当している。
【0064】
図14は、図6に示したGdカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはGdカーバイド結晶(GdC2)の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。
【0065】
図14は、グラファイトカーボンのG(002)及びG(004)の回折スペクトルがそれぞれ2つのピークの重なりからなっており、このうち(002)については2つのピークはc方向に沿うグラファイトの層間距離に対応し、一方は 3.365Å(平面的なグラファイト構造)、他方は 3.432Å(ターボストラティック(連結層型)のグラファイト構造)にそれぞれ相当している。
【0066】
図15は、図8に示したHfカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはHfカーバイド結晶(HfC)の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。この場合、G(001)の回折スペクトルは、図14のスペクトルと同様に、2種類のグラファイト構造の存在を示している。
【0067】
図16は、図10に示したLaカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはLaカーバイド結晶(α−LaC2 )の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。
【0068】
発光素子としての発光特性の測定
次に、金属複合炭素電極のアーク放電により得られた金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルのフォトルミネッセンスの測定を行った。励起源としてHe−Cdレーザを用い、励起光は 325nmとした。発光スペクトルはシングルモノクロメータで分光し、ロックイン検波法によりGaAs光電面フォトマルチプライヤーで受光した。
【0069】
金属複合炭素電極のアーク放電により得られた金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルを含む炭素堆積物を瑪瑙乳鉢を用いて粉状とし、テトラヒドロフランを溶媒としてポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂と混合し、塗料化した。この際、樹脂は10重量%以下とした。この塗料を石英ガラス上に展開し、窒素雰囲気中で乾燥させ、フィルムとした。得られたフィルムを石英製のジュワー中に固定し、発光スペクトルを測定した。図17〜図21には、金属としてそれぞれV、Gd、Y、Ta及びSbをそれぞれ使用したときの各発光スペクトルデータを示す。但し、炭素電極の金属含有量は、すべて9%とした。
【0070】
上記以外にも、他のメタル(1A族、2A族、6A族、7A族、1B族、2B族、4B族、6B族、7B族、アクチノイド)を用いても、同様に複合粒子が得られた。
【0071】
なお、比較例として、純度99.999%で殆ど金属を含まない炭素電極のアーク放電で得られた炭素付着物を上記と同様にフィルムとしたもの、及びPMMAのみをフィルムとしたもののスペクトルも上記と同様に測定した。
【0072】
図17〜図21のスペクトルから明らかなように、殆どの薄膜において、上記の金属のカーバイドを包含したカーボンナノカプセルを含有した薄膜からは青ないし緑色の発光(フォトルミネッセンス)が観測された。
【0073】
これに反し、純度99.999%の殆ど金属を含まない炭素電極のアーク放電で得られた炭素付着物を同様にフィルムとしたもののスペクトルも測定したが、このフィルムからの発光は用いた分光器のフォトマルの感度では測定できなかった。
【0074】
また、ポリマーPMMAのみからなる薄膜からは弱い発光が観測され、そのピークは 390nm付近であった。測定では、できるだけPMMAの含量を少なくしたが、実測のスペクトルではこのPMMAの弱い発光が重なっていると考えられるが、明らかに、異なる金属を用いた場合には異なるスペクトルが得られている。また、得られた発光スペクトルは、ポリマーの発光に比べて著しく広い。
【0075】
更に、顕微フォトルミ法により、バインダーポリマーを含まない粉状小球体からの発光を測定したところ、それぞれのカプセルのサイズにより異なる発光が観測された。このことはまた、明らかにカプセルの中のカーバイド単結晶のサイズにより発光スペクトルが異なることを示しており、発光が異なるサイズ効果によるものであることを示している。
【0076】
次に、6%のV、Gd及びYをそれぞれ含む各炭素電極のアーク放電で得られた炭素堆積物をそれぞれ粉砕し、希硝酸水溶液に分散し、3時間放置した。水洗、乾燥後、上記と同様にPMMAを用いて薄膜とし、発光スペクトルの測定を行った。得られたスペクトルは図17〜図19に示したスペクトルと殆ど一致した。これは、酸処理によってカプセルに包含されたメタルカーバイド単結晶以外の堆積物中の金属成分が塩として取り除かれたからであると考えられるが、そうした金属成分がなくても同様の発光特性を示すことは、発光が金属カーバイドによるものであることを意味している。
【0077】
以上の各例から、本発明に基づく発光素子のスペクトルは、ナノカプセル中に包含されたナノサイズの金属カーバイド単結晶からの発光であることが十分に支持される。
【0078】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述の実施例は本発明の技術的思想に基いて更に変形が可能である。
【0079】
例えば、上述した金属カーバイドを形成する金属は酸化物の形以外にも金属単体として炭素電極に用いてよいし、また、上述した金属又はその酸化物は単一種類だけでなく複数種を混合して用いてもよい。
【0080】
また、複合粒子を生成するのに、上述した方法以外にも、グラファイト又は炭素のアーク放電で得られるススと、上記の金属の酸化物又は金属超微粒子とを混合し、真空又は不活性ガス中で加熱することにより、微細なカプセル構造を得ることができる。
【0081】
また、上述の製造条件(電極サイズ、電極材料、放電条件、使用ガス種、圧力、更には真空装置の構造等)は上述したものに限らず、種々変更してよい。
【0082】
【発明の作用効果】
本発明は上述した如く、超微粒子状(即ち、ナノメータオーダーサイズ)のグラファイトカプセル構造(カーボンナノカプセル)中に単結晶又はアモルファス金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、ビーム照射又は電圧印加によってエネルギー励起され、フォトルミネッセンス又はエレクトロルミネッセンスによる光を放出する発光体としているので、金属カーバイドはグラファイトの層に包まれていることから、大気中に放置した場合や水中に分散した場合でさえ、水や酸素との反応は起きえない。従って、このような微細な金属カーバイドは、そのサイズがナノレベルの極めて微細なものであるにもかかわらず、安定な材料である。これは、カプセルのいわゆる保護膜として機能しているグラファイト層によって金属カーバイドが酸素や水に対し不活性となることによる。
【0083】
こうして、ナノサイズの金属カーバイド単結晶が単層或いは多層のグラファイトカプセルに包含されることにより、金属カーバイドの劣化を防止することができる。そして、このようなカプセル構造が、包含される金属カーバイドの電気伝導性及びバンドギャップに基づいて発光体として機能し、発光体或いは発光素子としての応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの概略図である。
【図2】同カプセルを使用した発光素子(フォトルミネッセンス素子)の概略断面図である。
【図3】同カプセルを使用した発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)の概略断面図である。
【図4】同カプセルを製造する方法を実施するための装置の概略断面図である。
【図5】同方法により電極上に析出したVカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図6】Gdカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図7】Yカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図8】Hfカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図9】Gaカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図10】Laカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図11】Sbカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図12】Taカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図13】Vカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図14】Gdカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図15】Hfカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図16】Laカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図17】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたVカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図18】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたGdカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図19】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたYカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図20】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたTaカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図21】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたSbカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図22】カーボンブラックの構造を説明する概略図である。
【図23】フラーレン(C60)の分子構造を示す模式図である。
【図24】同心球状のグラファイト構造の炭素超微粒子の概略図である。
【符号の説明】
30・・・金属カーバイド
31・・・グラファイトシート
32・・・カーボンナノカプセル
(金属カーバイド包含多層グラファイトカプセル)
33、39・・・樹脂
34、40・・・発光層
36・・・発光素子(フォトルミネッセンス素子)
37・・・入射光
38・・・発光(螢光)
42、43・・・電極
44・・・発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)
45、54・・・電源
46・・・発光
51・・・真空チャンバー
52・・・金属複合炭素電極(正極)
53・・・炭素電極(負極)
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノメータ(nm)オーダーのサイズの金属−炭素複合超微粒子を含有する発光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に炭素材料は、電池電極材料、炭素繊維、トナー材料等の工業的利用価値が大きいため、様々な炭素材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
グラファイト構造を有する炭素材料としてよく知られている物質には、カーボンブラックがある。これは石油ピッチ等の材料を酸素を除いた条件下で高温焼成して得ることができる。このカーボンブラックは、図22に概略図示するように、グラファイト構造の小片1が球状に集合することにより球状構造2をなしたものである。
【0004】
しかしながら、このようにして得られる球状構造のカーボンブラックの粒子は、通常、μmオーダーのサイズのものであり、小さい場合でもサブμmの直径を有するものであるため、工業的に上記したように利用する上で制約がある。
【0005】
一方、1985年に炭素クラスタービームの質量分析法により見出されたフラーレン、例えば、C60は、正二十面体の頂点をすべて切り落として正五角形を出した“切頭二十面体”と呼ばれる多面体構造を有し、図23に示すように、この多面体の60個の頂点をすべて炭素原子Cn で置換したクラスター(分子集合体)であり、公式サッカーボール型の分子構造を有する。同様に、C70もいわばラグビーボール型の分子構造を有する。同様に得られるC76、C78、C80、C82、C84、C86……等のカゴ状分子も高次フラーレンと呼ばれる。
【0006】
こうしたフラーレンは、1990年にクレッチマーらによる炭素電極のアーク放電法で大量合成が可能となった(W. Kraschmer, K. Fostiropoulos, D. R. Huffman :Chem. Phys. Lett. 170(1990)167. 及びW. Kraschmer, L. D. Lamb, K. Fostiropoulos, D. R. Huffman :Nature 347(1990)354.)。
【0007】
一般にアーク放電法では、気化した炭素が反応チャンバー内で炭素クラスターを形成する過程で生成し、内壁に付着した煤の中から抽出されるが、翌年1991年にはアーク放電後の負極の炭素付着物の中にカーボンナノチューブ(ナノメータオーダーのチューブ状の炭素付着物)が発見され、その部位で更に大きなサイズの炭素原子の組織化が起きることが明らかとなった(S. Iijima:Nature 345(1991)56.)。
【0008】
この負極上の炭素付着物の中には、図24に示すように、タマネギ状に多層グラファィトが成長したいわゆるナノカプセルもまた無数に存在する(M. Ata, N. Matsuzawa, Y. Kijima, J. Seto and H. Imoto : Jpn. J. Appl. Phys. 32(1993)3549.)。この構造は、ジャイアントフラーレンと呼ばれることもある。本出願人は既に、そのようなナノカプセルを特願平5−22091号として提案した。
【0009】
即ち、図24に示す如く、コア部23の周囲に同心球状にグラファイト構造21が重なった同心球構造22を有するnmオーダーのサイズの炭素超微粒子(ナノカプセル)が存在することを確認し、その構造を明らかにしたものである。
【0010】
この炭素超微粒子は、同心球構造の超微小球体であり、カーボンブラック等の小球体とは全く異なる構造を有している。そして、サイズも、カーボンブラックがμmオーダーであるのに対し、nmオーダー(特に数nm〜150nm)であってこれまで知られている炭素球よりもはるかに小さいグラファィト構造を有する炭素超微粒子であることを確認した。
【0011】
近年、上記したアーク放電法によるフラーレン、あるいはナノカプセル、ナノチューブの製法において、炭素電極を金属複合材料とすることによって生成された金属入りフラーレンや、金属複合ナノカプセル、ナノチューブの製造が相次いで報告された。例えば金属複合ナノカプセル、ナノチューブについてだけ見ても、以下のような様々な報告がなされている。
【0012】
R. S. Ruoff, D. C. Lorents, B. Chan, R. Malhotra, and S. Subramoney : Science 259(1993)346.
M. Tomiya, Y. Saito, and T. Hayashi : Jpn. J. Appl. Phys.32(1993)L280.
D. Ugarte : Chem. Phys. Lett. 209(1993)99.
Y. Yoshida : Appl. Phys. Lett. 62(1993)3447.
【0013】
S. A. Majetich, J. O. Artman, M. E. McHenry, N. T. Nuhfer and S. W. Staley : Phys. Rev. B48(1993)16845.
Y. Saito, M. Okuda, T. Yoshikawa, S. Bandow, S. Yamamuro, K. Wakoh, K.Sumiyama and K. Suzuki : Jpn. J. Appl. Phys. 33(1994)L186.
S. Bandow and Y. Saito : Jpn. J. Appl. Phys. 32(1993)L1677.
【0014】
S. Seraphin, D. Zhou, J. Jiao, J. C. Withers and R. Loutfy : Appl. Phys. Lett. 63(1993)2073.
Y. Murakami, T. Shibata, K. Okuyama, T. Arai, H. Suematsu and Y. Yoshida : J. Phys. Chem. Solids 54(1993)1861.
D. S. Bethune, C. H. Kiang, M. S. de Vries, G. Gorman, R. Savoy, J. Vazquez and R. Beyers : Nature 363(1993)605.
【0015】
P. M. Ajayan, J. M. Lambert, P. Bernier, L. Barbedette, C. Colliex andJ. M. Planeix : Chem. Phys. Lett. 215(1993)509.
M. Ohkohchi, Y. Ando, S. Bandow and Y. Saito : Jpn. J. Appl. Phys. 32 (1993)L1248.
S. Subramoney, R. S. Ruoff, D. C. Lorents and R. Malhotra : Nature 366(1993)637.
【0016】
P. M. Ajayan, C. Colliex, J. M. Lambert, P. Bernier, L. Barbedette, M.Tence and O. Stephan : Phys. Rev. Lett. 72(1994)1722.
S. Seraphin, D. Zhou, J. Jiao, M. A. Minke, S. Wang, T, Yadav and J. C. Withers : Chem. Phys. Lett. 217(1994)191.
Y. Saito and T. Yoshikawa : J. Cryst. Growth 134(1993)154.
【0017】
S. Seraphim, D. Zhou, J. Jiao, J. C. Withers and R. Loutfy : Nature 362(1993)503.
Y. Saito, T. Yoshikawa, M. Okuda, N. Fujimoto, K. Sumiyama, K. Suzuki,A. Kasuya and Y. Nishina : J. Phys. Chem. Solids 54(1993)1849.
P. M. Ajayan, T. W .Ebbesen, T. Ichihashi, S. Iijima, K. Tanigaki and H. Hiura : Nature 362(1993)522.
【0018】
S. C. Tang, P. J. F. Harris snd M. L. H. Green : Nature 362(1993)520.
S. Subramoney, R. S. Ruoff, D. C. Lorents, B. Chan, R. Malhotra, M. J.Dyer and K. Parvin : Carbon 32(1994)507.
C. Guerret−Piecourt, Y. LeBouar, A. Loiseau and H. Pascard : Nature 372(1994)761.
【0019】
M. Ata, Y. Kijima, A. J. Hudson, H. Imoto, N. Matsuzawa and N. Takahashi : Adv. Materials 6(1994)590.
M. Ata, Y. Kijima, H. Imoto, N. Matsuzawa and N. Takahashi : Jpn. J. Appl. Phys. 33(1994)4032.
M. Ata, K. Yamaura, A. J. Hudson and K. Kurihara : Jpn. J. Appl. Phys.34(1995)4207.
M. Ata, K. Yamaura and A. J. Hudson : Adv. Mat. 7(1995)286.
【0020】
金属のカーバイドは様々な電気伝導性やバンド構造を有することから、種々の電子デバイス、とりわけ発光デバイスの材料として有用な物質である。しかし、一般に、金属カーバイドは存在状態としては不安定なものが多く、例えば金属酸化物と易黒鉛化炭素の混合物を真空中或いは不活性気体中で熱処理して得られる金属カーバイドは、大気中の水分、酸素等により容易に金属酸化物や水酸化物へ変化する。
【0021】
このようなことから、金属カーバイドは様々な導電性やバンドギャップを有する物質であるにもかかわらず、そのものを電子デバイスの素材として用いられる例はほとんど存在しないのが現状である。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の如き金属カーバイドの持つ優れた性質、特に発光体としての性質を効果的に発揮できる構造を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ナノメータ(nm)オーダーサイズのメタルカーバイドを安定に存在させ、かつその機能性を鋭意探索の結果、そのようなメタルカーバイドに紫外光や電子線を照射することにより、いわゆるフォトルミネッセンスが観測できることを見出し、更にアーク放電時の原料である炭素電極の調製法により、多くの金属カーバイド入りナノチューブやナノカプセルが得られることを見出し、本発明に到達したものである。
【0024】
即ち、本発明は、超微粒子状(即ち、ナノメータオーダーサイズ)のグラファイトカプセル構造(カーボンナノカプセル)中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス状金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、ビーム照射又は電圧の印加によってエネルギー励起され、フォトルミネッセンス又はエレクトロルミネッセンスによる光を放出する発光体に係るものである。ここで、「発光体」とは、上記複合粒子、又は複合粒子を含有する層を意味する以外にも、それを用いたフォトルミネッセンス素子等の発光素子をも包含するものである。
【0025】
本発明の発光体によれば、例えば、金属−炭素複合電極(金属複合炭素電極)の直流アーク放電で得られる金属カーバイドを包含した多層又は単層(通常は多層)グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルであって、金属カーバイド単結晶又はアモルファス状金属カーバイドはグラファイトの層に包まれていることから、大気中に放置した場合や水中に分散した場合でさえ、水や酸素との反応は起きえない。従って、このような微細な金属単結晶は、その結晶サイズがナノレベルの極めて微細な単結晶であるにもかかわらず、安定な材料である。これは、カプセルのいわゆる保護膜として機能しているグラファイト層によって金属カーバイドが酸素や水に対し不活性となることによる。
【0026】
こうして、ナノサイズの金属カーバイド単結晶又はアモルファスが単層或いは多層のグラファイトカプセルに包含されることにより、金属カーバイドの劣化を防止することができる。そして、このようなカプセル構造が、包含される金属カーバイドの電気伝導性及びバンドギャップに基づいて発光体として機能することが本発明者により新たに発見され、発光体或いは発光素子としての応用を可能としたものである。
【0027】
後述する実施例で示すように、本発明に基づいて、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートで形成されたカーボンナノカプセルからの発光スペクトルは殆どのものがブロードである。透過電子顕微鏡で金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルを含む炭素堆積物を観測すると、ナノカプセルのサイズは直径数nmから数十nmまでと様々であり、包含されている金属カーバイド単結晶又はアモルファスのサイズも様々である。包含されている金属カーバイドは殆ど単結晶であり、アモルファスはまれである。
【0028】
これらのことから、観測される発光スペクトルは、包含された金属カーバイドのバンド構造よりも、そのサイズのばらつきが発光の量子効果に強く影響を与えていることが示唆される。従って、もし金属カーバイドを包含したカーボンナノカプセルのサイズを揃えることができるならば、発光スペクトルの単色性を増すことが可能であると考えられる。
【0029】
球状グラファィトカプセル構造の安定性は、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなる本発明に基づくカーボンナノカプセルの精製にとって有用であり、例えば金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルを含む炭素堆積物を粉砕し、非水溶媒又は水溶媒に分散させて遠心分離法での精製を行う場合でさえ構造の破壊は起きない。
【0030】
また、この金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなるカーボンナノカプセルを含む炭素堆積物には不定形炭素や板状グラファィトのような炭素が含まれる。これらの炭素系物には何ら機能性はなく、カプセルの機能を引き出すためには取り除く方がよい。
【0031】
これらは例えば堆積物に電極を設置し、或いは堆積物を粉砕したものを20重量%程度ポリビニリデンフルオライドのような樹脂で塗料化して銅箔に塗布し、電池セルと同じ構造とし、これらをエチレンカーボネートのような非水溶媒中、LiPF6 、LiBF4 の如き電解質と金属リチウム電極で充電過程を経ることで、板状グラファイト構造のみに選択的にリチウムイオンをインターカレーションできる。これを酸素分圧10%程度の状態で加熱酸化することにより、不定形或いはインターカレートされた板状グラファイトは選択的に酸化し、ナノカプセルやナノチューブのみを取り出すことができる。
【0032】
また、これら不定形炭素や板状グラファイトに比べ、金属カーバイドを含有したグラファイトカプセルやナノチューブは比重が大きいことから、遠心分離により取り出すことも可能である。更に、例えば、ガドリニウム複合グラファイトのアーク放電で得られるカプセルに含まれるGdC2 のような強磁性体は、非水又は水溶液に界面活性剤と共に分散させ、容器の外壁に永久磁石を置くことにより磁気的手法で精製可能である。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の発光体は、実際には、多層又は単層のグラファイトシートからなるナノメータオーダーのカプセル構造中に、バナジウム等の典型金属、ガリウム等の遷移金属、ランタン等のランタノイド系列の希土類金属及びアクチニウム等のアクチノイド系列の金属から選ばれた金属又は複数の金属のカーバイドの単結晶又はアモルファス状カーバイドが包含されたものであり、カーボンナノカプセルと称される。この金属カーバイドの包含量(含有量)は、カーボンナノカプセル全体に対して1〜70重量%であってよく、5〜20重量%が更に望ましい。
【0034】
後述する金属複合炭素電極のアーク放電により得られた上記金属カーバイド包含多層又は単層グラファイトカプセルはそのままでは粉状物質である。そこで、ポリメチルメタクリレートの如きポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、様々なアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等をアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルフォルムアミド、酢酸エチル等の有機溶媒の単独或いは混合物に溶解させ、これに上記金属カーバイド包含多層又は単層グラファイトカプセルを分散させることにより塗料とし、ポリエステルフィルム、ガラス、導電薄膜を蒸着したガラス、金属、半導体等の基体上に吹き付け、或いは、樹脂フィルム上であればロール塗布等の任意の方法で展開し、乾燥させることにより、薄膜化が可能である。前者の場合は、発光層が上記グラファイトカプセル(複合粒子)を分散させた樹脂層からなり、後者の場合は、発光層が実質的に上記グラファイトカプセル(複合粒子)のみからなる。
【0035】
また、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファィトシートからなる上記カーボンナノカプセルは、電子線照射や光照射等のビーム照射によってエネルギー励起されて光放出(発光)するため、蛍光体(フォトルミネッセンス素子)として利用可能である。このような利用には、上記金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファィトシートからなるカーボンナノカプセルを分散して含む有機塗料を薄膜化するか、或いは、ナノカプセルの粒子を粘性ポリマー表面に直接吹き付けて螢光体層を形成することができる。
【0036】
電界発光を得るには、金属カーバイドを包含した多層又は単層グラファイトシートからなる上記カーボンナノカプセルを分散して含む塗料を吹き付け、キャスティング、ドクターブレード、ロール塗布のような手法により導電性基板上に展開し、乾燥後にその上に蒸着等によりアルミニウム等の電極を設置する。そして、両電極間に印加する直流又は交流の電圧(電界)によりエネルギー励起され、光を放出するエレクトロルミネッセンス素子としての電界発光用セルを形成すればよい。
【0037】
本発明の発光体を製造するには、金属及び/又は金属化合物の単体又は混合物を炭素中に含有する金属−炭素複合体を処理することによって、超微粒子状のグラファイトカプセル構造中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス金属カーバイドが包含された複合粒子を堆積させるのがよい。
【0038】
この製造方法において、上記した金属−炭素複合体を処理して複合粒子を堆積させる方法としては、金属−炭素複合体(金属複合炭素電極)を正極として直流又は交流アーク放電を生ぜしめ、複合粒子を対向電極(負極)上に堆積させる方法が望ましい。
【0039】
このアーク放電による堆積方法では、ヘリウム等の不活性気体、50〜600Torr 、好ましくは 150〜350Torr の圧力の不活性気体中でアーク放電を生ぜしめるのがよい。
【0040】
また、上記した金属−炭素複合体を処理して複合粒子を堆積させる他の方法として、金属−炭素複合体を高周波加熱、レーザ照射等によって加熱し、蒸発させて複合粒子を堆積させることもできる。
【0041】
また、グラファイト又は炭素のアーク放電で得られるススと、金属酸化物又は金属超微粒子とを混合し、真空又は不活性ガス中で加熱することにより、カプセル構造を得ることができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例について更に詳細に説明する。
【0043】
金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの構造例
図1に概略的に例示するように、上記の金属カーバイド30を内包するようにしてグラファイトシート31が多層に積層され、ナノメータオーダーのカプセル構造からなる複合粒子(カーボンナノカプセル)32を形成している。
【0044】
発光体としての構成例
図2によれば、上記のカーボンナノカプセル32を樹脂33中に分散させた発光層34を基板35上に形成することにより、発光素子36を構成している。この発光素子36はフォトルミネッセンス素子として、入射光37によってカーボンナノカプセル32中の金属カーバイドがエネルギー励起され、螢光38を放出することができる。入射光としては例えばHe−Cdレーザや電子線を使用することができる。
【0045】
図3の例は、上記のカーボンナノカプセル32を樹脂39中に分散させた発光層40を透明基板41上の電極(通常は透明電極)42上に形成し、更に発光層40上に対向電極43を形成することにより、発光素子44を構成したものである。この発光素子44はエレクトロルミネッセンス素子として、両電極42−43間に直流又は交流の電圧45を印加し、発光層40に電界を印加することにより、電界発光46を生ぜしめることができる。電極42と43を例えばマトリックス状に配し、その交差点を選択的に電界発光させれば、ディスプレイとしても使用可能である。
【0046】
金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの製造
このカーボンナノカプセル32は、図4に概略的に例示した真空装置50によって製造することができる。即ち、水冷された真空チャンバー51内に金属を含有する高純度グラファイト(又は炭素)製の金属複合炭素電極(正極)52と、高純度グラファイト(又は炭素)製の電極(負極)53とを 0.2〜1.5cm の間隔を置いて配置し、不活性ガスの存在下で両電極間に直流(又は交流)電圧54を印加することによって、対向電極52−53間にアーク放電を生じさせる。
【0047】
使用可能な不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、キセノン等が挙げられ、アーク放電に際する不活性ガスの圧力は 150〜350Torr が望ましい。
【0048】
このような条件下で放電を行うと、電極、特に正極52の構成材料である金属複合炭素が蒸発してプラズマ化され、負極53の先端には上記した金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの堆積物32が、負極53の先端から2〜10cmの長さに亘って析出(付着)する。堆積物32を効率よく得るには、電極52と53との間のギャップをできるだけ近づけた方がよい。
【0049】
本発明者は、電極53上の付着物32を詳細に分析したところ、析出した付着物32は、図1に示した如く金属カーバイドを内包した多層グラファイトシートからなるナノメータオーダーのカプセル構造であることを透過電子顕微鏡観察によって確認した。
【0050】
即ち、このカプセル構造は、図1に示した如く、同心球状にグラファイト31がシート状に重なったナノメータオーダーの同心構造中に金属カーバイド30が内包されたものである。このカプセルは、カーボンブラック等の小球体とは全く異なる構造を有しており、サイズも、カーボンブラックがμmオーダーであるのに対し、nmオーダー(特に数nm〜50nm)であってこれまで知られている炭素球よりもはるかに小さいグラファイト構造を有する炭素超微粒子であることを確認した。
【0051】
上記において、電極52、53のサイズは電源の容量に依存する。通常、 100アンペア程度の直流をかける場合には、特に正極は直径数mm〜50mmとするのがよく、数mm〜10mm程度が適切である。この範囲を超えるとカーボンナノカプセルの成長が遅く、逆に小さすぎる場合にはカーボンナノカプセルが析出せずに飛び散る傾向がある。
【0052】
また、2本の電極52、53は通電下で接触させ、接触部位の抵抗加熱で十分に加熱したのち、数mm〜15mm程度、好ましくは2〜4mmのギャップでアーク放電を行うのがよい。
【0053】
金属カーバイド包含多層グラファイトカプセル製造の具体例
金属V(5A族、典型金属)、Gd(3A族、典型金属)、Y(3A族、典型金属)、Hf(4A族、典型金属)、Ga(3B族、遷移金属)及びLa(3A族、ランタノイド系希土類金属)について、金属複合炭素電極中の金属の割合とアーク放電時のヘリウム圧の条件で、金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの生成がどのように変化するかを検討した。
【0054】
金属複合炭素電極を正極としてアーク放電を行い、炭素負極先端に形成された堆積物の透過電子顕微鏡を観測することにより、生成の効率を評価した。金属複合炭素電極は、ピッチの焼成体である易黒鉛化炭素粉末と上記金属の酸化物とを混合し、プレス機で加熱成形し、外径1cm、長さ10cmの棒とした。これを正極としてアーク放電を行った。このような複合電極を製造する際、炭素に対する金属の割合は上記の各金属についてそれぞれ、3重量%(以下、単に「%」と表す。)、6%、9%、12%、15%、20%とした。
【0055】
水冷チャンバー中で直流アーク放電を行った後に負極先端に生じた堆積物を透過電子顕微鏡で観察し、その顕微鏡像の中に確認されるグラファイトカプセルの中で、中空の物に対して、金属カーバイドを含むものの割合が最も多かった時の、金属の炭素に対する分量を下記の表1に示す。なお、この際のアーク放電は、直流 100アンペアの電流で、ヘリウム 100Torr下で行った。
【0056】
【0057】
以上のことから、電極中の金属の含有率が重量%で6%〜9%程度の場合が、最も効率的に金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルが生成していることが分かる。
【0058】
一方、V、Gdを6%含む電極を用いて、アーク放電の際のHe圧の効果について調べた。その結果、 100Torr、 150Torrの場合の放電より、内圧を 200〜450Torr にした場合の放電の方が、効果的に金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルが生成しており、更に負電極先端への堆積速度も速いことが分かった。従って、これらのことから、チャンバー内のヘリウム圧は通常のフラーレンの製造で採用される 100〜150Torr より高めに設定することが望ましい。
【0059】
次に、図5〜図12に、上記の方法で得られた金属カーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルの透過電子顕微鏡写真を示す。これらは全て、上記の表1に示した条件で得られた負極先端の堆積物の透過電子顕微鏡写真である(但し、図11はSb(5B族、遷移金属)、図12はTa(5A族、典型金属)について上記と同様にして得られたナノカプセルを示す)。これらの写真から、各金属カーバイドを内包したカーボンナノカプセル構造が得られたことが明らかである。
【0060】
即ち、図5のVカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルは、数10nm又はそれ以下の多層グラファイトシート内にVカーバイド単結晶が内包されていることが分かる。同様に、図6〜図12では、何重にも重なった多層グラファイトシート内にGd等の金属カーバイド単結晶が内包されていることが分かる。
【0061】
また、図13〜図16に、上記の条件で得られた負極先端の堆積物(上記金属カーバイド結晶包含多層グラファイトカプセル)のX線回折スペクトルを示す(但し、図13はV(5A族、典型金属)、図14はGd(3A族、典型金属)、図15はHf(4A族、典型金属)、図16はLa(3A族、ランタノイド系希土類金属)についてのもの)。
【0062】
図13(a)は、図5に示したVカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはVカーバイド結晶(V8 C7 )の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。グラファイトナノカプセルに含まれたVカーバイドはV4 C3 で表わされるが、これはV8 C7 と非常によく似ているので、図13(a)の回折ピークを示すV8 C7 はV4 C3 と等価であると考えられる。
【0063】
また、図13(b)は、グラファイトカーボンのG(002)ピークを拡大して示すが、この回折スペクトルが2つのピークの重なりからなっており、これらの2θ=26.1°及び26.6°のピークはd002方向に沿うグラファイトの層間距離に対応し、前者は 0.341nm、後者は 0.335nmの位置にそれぞれ相当している。
【0064】
図14は、図6に示したGdカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはGdカーバイド結晶(GdC2)の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。
【0065】
図14は、グラファイトカーボンのG(002)及びG(004)の回折スペクトルがそれぞれ2つのピークの重なりからなっており、このうち(002)については2つのピークはc方向に沿うグラファイトの層間距離に対応し、一方は 3.365Å(平面的なグラファイト構造)、他方は 3.432Å(ターボストラティック(連結層型)のグラファイト構造)にそれぞれ相当している。
【0066】
図15は、図8に示したHfカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはHfカーバイド結晶(HfC)の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。この場合、G(001)の回折スペクトルは、図14のスペクトルと同様に、2種類のグラファイト構造の存在を示している。
【0067】
図16は、図10に示したLaカーバイド結晶包含多層グラファイトカプセルについてのスペクトルであるが、*印を記した回折ピークはLaカーバイド結晶(α−LaC2 )の存在を示し、Gを記した回折ピークはグラファイト構造を示している。
【0068】
発光素子としての発光特性の測定
次に、金属複合炭素電極のアーク放電により得られた金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルのフォトルミネッセンスの測定を行った。励起源としてHe−Cdレーザを用い、励起光は 325nmとした。発光スペクトルはシングルモノクロメータで分光し、ロックイン検波法によりGaAs光電面フォトマルチプライヤーで受光した。
【0069】
金属複合炭素電極のアーク放電により得られた金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルを含む炭素堆積物を瑪瑙乳鉢を用いて粉状とし、テトラヒドロフランを溶媒としてポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂と混合し、塗料化した。この際、樹脂は10重量%以下とした。この塗料を石英ガラス上に展開し、窒素雰囲気中で乾燥させ、フィルムとした。得られたフィルムを石英製のジュワー中に固定し、発光スペクトルを測定した。図17〜図21には、金属としてそれぞれV、Gd、Y、Ta及びSbをそれぞれ使用したときの各発光スペクトルデータを示す。但し、炭素電極の金属含有量は、すべて9%とした。
【0070】
上記以外にも、他のメタル(1A族、2A族、6A族、7A族、1B族、2B族、4B族、6B族、7B族、アクチノイド)を用いても、同様に複合粒子が得られた。
【0071】
なお、比較例として、純度99.999%で殆ど金属を含まない炭素電極のアーク放電で得られた炭素付着物を上記と同様にフィルムとしたもの、及びPMMAのみをフィルムとしたもののスペクトルも上記と同様に測定した。
【0072】
図17〜図21のスペクトルから明らかなように、殆どの薄膜において、上記の金属のカーバイドを包含したカーボンナノカプセルを含有した薄膜からは青ないし緑色の発光(フォトルミネッセンス)が観測された。
【0073】
これに反し、純度99.999%の殆ど金属を含まない炭素電極のアーク放電で得られた炭素付着物を同様にフィルムとしたもののスペクトルも測定したが、このフィルムからの発光は用いた分光器のフォトマルの感度では測定できなかった。
【0074】
また、ポリマーPMMAのみからなる薄膜からは弱い発光が観測され、そのピークは 390nm付近であった。測定では、できるだけPMMAの含量を少なくしたが、実測のスペクトルではこのPMMAの弱い発光が重なっていると考えられるが、明らかに、異なる金属を用いた場合には異なるスペクトルが得られている。また、得られた発光スペクトルは、ポリマーの発光に比べて著しく広い。
【0075】
更に、顕微フォトルミ法により、バインダーポリマーを含まない粉状小球体からの発光を測定したところ、それぞれのカプセルのサイズにより異なる発光が観測された。このことはまた、明らかにカプセルの中のカーバイド単結晶のサイズにより発光スペクトルが異なることを示しており、発光が異なるサイズ効果によるものであることを示している。
【0076】
次に、6%のV、Gd及びYをそれぞれ含む各炭素電極のアーク放電で得られた炭素堆積物をそれぞれ粉砕し、希硝酸水溶液に分散し、3時間放置した。水洗、乾燥後、上記と同様にPMMAを用いて薄膜とし、発光スペクトルの測定を行った。得られたスペクトルは図17〜図19に示したスペクトルと殆ど一致した。これは、酸処理によってカプセルに包含されたメタルカーバイド単結晶以外の堆積物中の金属成分が塩として取り除かれたからであると考えられるが、そうした金属成分がなくても同様の発光特性を示すことは、発光が金属カーバイドによるものであることを意味している。
【0077】
以上の各例から、本発明に基づく発光素子のスペクトルは、ナノカプセル中に包含されたナノサイズの金属カーバイド単結晶からの発光であることが十分に支持される。
【0078】
以上、本発明の実施例を説明したが、上述の実施例は本発明の技術的思想に基いて更に変形が可能である。
【0079】
例えば、上述した金属カーバイドを形成する金属は酸化物の形以外にも金属単体として炭素電極に用いてよいし、また、上述した金属又はその酸化物は単一種類だけでなく複数種を混合して用いてもよい。
【0080】
また、複合粒子を生成するのに、上述した方法以外にも、グラファイト又は炭素のアーク放電で得られるススと、上記の金属の酸化物又は金属超微粒子とを混合し、真空又は不活性ガス中で加熱することにより、微細なカプセル構造を得ることができる。
【0081】
また、上述の製造条件(電極サイズ、電極材料、放電条件、使用ガス種、圧力、更には真空装置の構造等)は上述したものに限らず、種々変更してよい。
【0082】
【発明の作用効果】
本発明は上述した如く、超微粒子状(即ち、ナノメータオーダーサイズ)のグラファイトカプセル構造(カーボンナノカプセル)中に単結晶又はアモルファス金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、ビーム照射又は電圧印加によってエネルギー励起され、フォトルミネッセンス又はエレクトロルミネッセンスによる光を放出する発光体としているので、金属カーバイドはグラファイトの層に包まれていることから、大気中に放置した場合や水中に分散した場合でさえ、水や酸素との反応は起きえない。従って、このような微細な金属カーバイドは、そのサイズがナノレベルの極めて微細なものであるにもかかわらず、安定な材料である。これは、カプセルのいわゆる保護膜として機能しているグラファイト層によって金属カーバイドが酸素や水に対し不活性となることによる。
【0083】
こうして、ナノサイズの金属カーバイド単結晶が単層或いは多層のグラファイトカプセルに包含されることにより、金属カーバイドの劣化を防止することができる。そして、このようなカプセル構造が、包含される金属カーバイドの電気伝導性及びバンドギャップに基づいて発光体として機能し、発光体或いは発光素子としての応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく金属カーバイド包含多層グラファイトカプセルの概略図である。
【図2】同カプセルを使用した発光素子(フォトルミネッセンス素子)の概略断面図である。
【図3】同カプセルを使用した発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)の概略断面図である。
【図4】同カプセルを製造する方法を実施するための装置の概略断面図である。
【図5】同方法により電極上に析出したVカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図6】Gdカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図7】Yカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図8】Hfカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図9】Gaカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図10】Laカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図11】Sbカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図12】Taカーバイド単結晶包含多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの同様の透過電子顕微鏡写真のスケッチ図である。
【図13】Vカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図14】Gdカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図15】Hfカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図16】Laカーバイド単結晶内包多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルのX線回折スペクトル図である。
【図17】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたVカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図18】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたGdカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図19】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたYカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図20】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたTaカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図21】多層グラファイトからなるカーボンナノカプセルの中に包含されたSbカーバイド単結晶からのHe−Cdレーザ励起による発光スペクトル図である。
【図22】カーボンブラックの構造を説明する概略図である。
【図23】フラーレン(C60)の分子構造を示す模式図である。
【図24】同心球状のグラファイト構造の炭素超微粒子の概略図である。
【符号の説明】
30・・・金属カーバイド
31・・・グラファイトシート
32・・・カーボンナノカプセル
(金属カーバイド包含多層グラファイトカプセル)
33、39・・・樹脂
34、40・・・発光層
36・・・発光素子(フォトルミネッセンス素子)
37・・・入射光
38・・・発光(螢光)
42、43・・・電極
44・・・発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)
45、54・・・電源
46・・・発光
51・・・真空チャンバー
52・・・金属複合炭素電極(正極)
53・・・炭素電極(負極)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超微粒子状のグラファイトカプセル構造中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス状金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、ビーム照射によってエネルギー励起され、フォトルミネッセンスによる光を放出する発光体。
【請求項2】
超微粒子状のグラファイトカプセル構造中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス状金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、電圧の印加によってエネルギー励起され、エレクトロルミネッセンスによる光を放出する発光体。
【請求項3】
多層又は単層のグラファイトシートからなるナノメータオーダーのカプセル構造中に、典型金属、遷移金属、ランタノイド系列の希土類金属及びアクチノイド系列の金属から選ばれた金属又は複数の金属のカーバイドの単結晶又はアモルファス状カーバイドが包含されている、請求項1又は2に記載した発光体。
【請求項4】
複合粒子を含有する発光層を有する、請求項1又は2に記載した発光体。
【請求項5】
発光層が複合粒子を分散させた樹脂からなる、請求項4に記載した発光体。
【請求項6】
発光層が実質的に複合粒子のみからなる、請求項4に記載した発光体。
【請求項7】
発光層が一対の電極間に設けられ、これらの電極間に印加される直流又は交流の電界によって発光する、請求項4に記載した発光体。
【請求項1】
超微粒子状のグラファイトカプセル構造中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス状金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、ビーム照射によってエネルギー励起され、フォトルミネッセンスによる光を放出する発光体。
【請求項2】
超微粒子状のグラファイトカプセル構造中に単結晶金属カーバイド又はアモルファス状金属カーバイドが包含された複合粒子を含有し、電圧の印加によってエネルギー励起され、エレクトロルミネッセンスによる光を放出する発光体。
【請求項3】
多層又は単層のグラファイトシートからなるナノメータオーダーのカプセル構造中に、典型金属、遷移金属、ランタノイド系列の希土類金属及びアクチノイド系列の金属から選ばれた金属又は複数の金属のカーバイドの単結晶又はアモルファス状カーバイドが包含されている、請求項1又は2に記載した発光体。
【請求項4】
複合粒子を含有する発光層を有する、請求項1又は2に記載した発光体。
【請求項5】
発光層が複合粒子を分散させた樹脂からなる、請求項4に記載した発光体。
【請求項6】
発光層が実質的に複合粒子のみからなる、請求項4に記載した発光体。
【請求項7】
発光層が一対の電極間に設けられ、これらの電極間に印加される直流又は交流の電界によって発光する、請求項4に記載した発光体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【特許番号】特許第3682792号(P3682792)
【登録日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【発行日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−297440
【出願日】平成7年10月20日(1995.10.20)
【公開番号】特開平9−111232
【公開日】平成9年4月28日(1997.4.28)
【審査請求日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開平07−165406(JP,A)
【文献】特開平08−217432(JP,A)
【文献】特開平07−165406(JP,A)
【文献】特開平08−217432(JP,A)
【文献】特開平05−208805(JP,A)
【文献】特開平06−227806(JP,A)
【文献】特開平05−282938(JP,A)
【文献】特開平08−306485(JP,A)
【登録日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【発行日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成7年10月20日(1995.10.20)
【公開番号】特開平9−111232
【公開日】平成9年4月28日(1997.4.28)
【審査請求日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開平07−165406(JP,A)
【文献】特開平08−217432(JP,A)
【文献】特開平07−165406(JP,A)
【文献】特開平08−217432(JP,A)
【文献】特開平05−208805(JP,A)
【文献】特開平06−227806(JP,A)
【文献】特開平05−282938(JP,A)
【文献】特開平08−306485(JP,A)
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