説明

発光管

【課題】 発光管は、発光管9内に設置する電流貫通導体2の封止材11Cなどに対する接合が強固であり、密着性が高い。
【解決手段】 発光管は、脆性材料からなる発光容器9、金属またはサーメット製の中実の電流貫通導体2、および電流貫通導体2の外側に固定されている、少なくとも金属粉末を含む成形体の焼結体11Cを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光管に関するものである。
【従来の技術】
【0002】
特許文献1に開示の高圧放電灯においては、パイプ状のモリブデン製電流貫通導体の先端にタングステン電極を取り付け、高圧放電灯の発光管内に挿入する。そして、パイプ状の電流貫通導体の外周にリング状のモリブデンサーメットからなる封止材を取り付け、焼結させて電流貫通導体および封止材を発光管端部に取り付ける。
【特許文献1】特開平11−149903号公報
【0003】
特許文献2に開示のセラミックメタルハライド高圧放電灯においては、電流供給導体は比較的高い融点を持った第1部分と比較的低い融点を持った第2部分を有し、これらの部分を互いに向き合った端部で溶接継手を形成している。さらに高融点の第1部分の先端には電極が溶接されている。
【特許文献2】特開平7−192697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の構造では、パイプ状のモリブデン製電流貫通導体とタングステン電極との接合が難しい。なぜなら、モリブデンもタングステンも高融点金属であって溶融しにくく、また硬度が高く、もろい性質を有するので、これらを高い接合強度をもって接合するプロセスは実施が難しく、高コストである。
【0005】
サーメット封止材と電流貫通導体との間の熱膨張差を抑制し、気密性を高くするためには、電流貫通導体をモリブデンなどで形成することが望ましい。パイプ状の電流貫通導体を電極と同じタングステンによって形成することも考えられるが、この場合にはサーメット封止材と電流貫通導体との熱膨張差が大きくなり、両者の間での気密性が劣化する傾向がある。
【0006】
同様に、特許文献2に開示されているような構造では、例えば第1部分としてタングステン、第2部分としてタンタルの組合わせや或いは第1部分としてモリブデン第2部分としてニオブが示されている。いずれの材料も高融点金属であって溶融しにくく、また硬度が高く、もろい性質を有するので、これらを高い接合強度をもって突合せで接合するプロセスは実施が難しく、高コストである。
【0007】
特許文献2の場合、電流貫通導体をセラミックのリードスルー管に挿入し、第1部分と第2部分の境界部に封止用のフリット材を溶融流し込んで、電流貫通導体を過大な熱応力が生じないように密封固着する高度な接合技術が要求される。このような工程は厳密なプロセスパラメーターの制御が必要であり、歩留りが低くなったり、工程のコストが高くなる傾向がある。
【0008】
本発明の課題は、発光管内に設置する電流貫通導体の接合が強固であり、密着性の高い発光管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、脆性材料からなる発光容器、金属またはサーメット製の電流貫通導体、およびこの電流貫通導体の外側に固定されている、少なくとも金属粉末を含む成形体の焼結体を備えていることを特徴とする、発光管に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。本発明においては、例えば図1(a)、図1(b)に示すように、金属粉末(または金属粉末とセラミック粉末との混合物)の例えば円板状の成形体1を準備する。成形体1には貫通孔1aが形成されている。次いで、図1(c)に示すように、金属またはサーメット製の中実の電流貫通導体2を貫通孔1aに挿通する。この状態で成形体1を焼結させ、図1(d)に示す複合体3を得る。複合体3は、金属製の中実の電流貫通導体2と、電流貫通導体2の外周側に取り付けられている円板状の焼結体11を備えており、電流貫通導体2は貫通孔11aに挿通されている。焼結過程において、成形体1の焼成収縮が生じ、これによって電流貫通導体2の外表面と成形体貫通孔1a内表面の間での焼結作用による固着力及び成形体1の焼結収縮作用により電流貫通導体の外周面に対して径方向へと向かう圧縮応力が生じ、焼結体11は電流貫通導体2の周りに強固に固定される。
【0011】
このような構造によれば、電流貫通導体2と焼結体11との結合は強固であり、気密性も得られ、成形体の焼結を経ているので熱サイクルにも強い。電流貫通導体2が管状であると、成形体1が焼成収縮する際に、電流貫通導体2が径方向へと収縮変形して、成形体1の焼成収縮によって加わる応力を径方向へと逃がすために、強固で気密性の高い結合は得られない。
【0012】
特に、本発明においては、電流貫通導体の全体を例えばタングステンのような電極に適した材質によって形成した場合であっても、電流貫通導体を発光容器に対して気密かつ強固に接合可能である。従って、電流貫通導体の全体をタングステンなどの一種の適当な金属によって形成する場合には、高融点金属の接合プロセスが不要であり、これによって製造コストを著しく削減することができる。
【0013】
同様に本発明においては、例えば図2(a)、図2(b)に示すように、金属粉末(または金属粉末とセラミック粉末との混合物)の例えば円板状の成形体1を準備する。成形体1には貫通孔1aが形成されている。次いで、図2(c)に示すように、金属またはサーメット製の中実の長尺部品2aと2bを貫通孔1aに挿通し、長尺部品2aと2bとの突合せ部が成形体1の中央部になるように組み立てる。この状態で成形体1を焼結させ、図1(d)に示す複合体3を得る。複合体3は、金属製の中実の長尺部品2a及び2bと、長尺部品2a及び2bの外周側に取り付けられている円板状の焼結体11を備えており、長尺部品2a及び2bは貫通孔11aに挿通されている。焼結過程において、成形体1の焼成収縮が生じ、これによって長尺部品2a及び2bの外表面と成形体貫通孔1a内表面の間での焼結作用による固着力及び成形体1の焼結収縮作用により電流貫通導体の外周面に対して径方向へと向かう圧縮応力が生じ、焼結体11は長尺部品2a及び2bの周りに強固に固定される。
【0014】
このような複合体によれば、電流貫通導体2または長尺部品2a及び2bと焼結体11との結合は強固であり、気密性も得られ、成形体の焼結を経ているので熱サイクルにも強い。電流貫通導体2または長尺部品2a及び2bが管状であると、成形体1が焼成収縮する際に、電流貫通導体2または長尺部品2a及び2bが径方向へと収縮変形して、成形体1の焼成収縮によって加わる応力を径方向へと逃がすために、強固で気密性の高い結合は得られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好適な実施形態においては、焼結体が円板状(図1または図2参照)あるいは管状をなしている。図3の例は、管状の焼結体を作成した例を示す。図3(a)、図3(b)に示すように、金属粉末(または金属粉末とセラミック粉末との混合物)の管状成形体1Aを準備する。成形体1Aには貫通孔1aが形成されている。次いで、図3(b)に示すように、金属製の中実の電流貫通導体2を貫通孔1aに挿通する。この状態で成形体1Aを焼結させ、図3(c)に示す複合体3Aを得る。複合体3Aは、金属製の中実の電流貫通導体2と、電流貫通導体2の外周側に取り付けられている管状の焼結体11Aを備えており、電流貫通導体2は貫通孔11aに挿通されている。焼結過程において、電流貫通導体2の外表面と成形体貫通孔1a内表面との間での焼結作用による固着力及び成形体1Aの焼成収縮作用により電流貫通導体2の外周面に対して径方向へと向かう圧縮応力が生じ、焼結体11Aは電流貫通導体2の周りに強固に固定される。
【0016】
図3(d)の例では、電流貫通導体2の外周に、円板状の焼結体11と管状の焼結体11Aとが本発明によって固定されている。
【0017】
電流貫通導体の形態は限定されないが、棒状であってよく、また板状であってよい。電流貫通導体の横断面形状は特に限定されず、真円形、楕円形、レーストラック形状、四角形、三角形などの多角形など任意であってよい。
【0018】
電流貫通導体の外径は特に限定されないが、電流貫通導体の外径が大きくなると、成形体の焼結の際の収縮量が大きくなるため焼結体側に発生する引張応力が過大になり過ぎて焼結体にクラックが発生し電流貫通導体との密着性が損なわれる傾向がある。このため、本発明 の観点からは、電流貫通導体の外径は5.0mm以下であることが好ましく、3.0mm以下であることが更に好ましい。しかし、電流貫通導体の外径が小さくなりすぎると、成形体の焼結の際の収縮量が小さくなるため固着力と圧縮力が小さくなって電流貫通導体の固定が難しくなる。このため、電流貫通導体の外径は0.1mm以上とすることが好ましい。
【0019】
電流貫通導体の材質は特に限定されず、あらゆる金属、サーメットであってよい。ただし、本発明は、電流貫通導体が加工の難しい高融点金属あるいはそのサーメットである場合に、結合力の強固な複合体を作製できる点で特に有効である。この観点からは、融点1500℃以上の金属あるいはその金属のサーメットが特に好適である。
【0020】
このような電流貫通導体を構成する金属としては、タングステン、モリブデン、タンタル及びイリジュウム、からなる群より選ばれた一種以上の金属あるいはその合金が好ましい。また、サーメットとしては、前記高融点金属とセラミック粉末との焼結体が好ましい。このようなセラミック粉末として以下を例示できる。
すなわちアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2),窒化珪素(Si3N4),炭化珪素(SiC),ムライト(3Al2O3・2SiO2)、スピネル(MgO・Al2O3)、YAG(3Y2O3・5Al2O3)等の高融点セラミックス粉末である。
【0021】
また、電流貫通導体の導電性を高く維持するという観点からは、サーメットを構成する金属の割合は30体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることが更に好ましい。
【0022】
また、焼結体の形態も、電流貫通導体に対して焼成収縮時に圧縮応力を径方向へと向かって印加できるような形態であれば特に限定されない。焼結体には、電流貫通導体が挿通可能な貫通孔を設けることが好ましい。好適な実施形態においては、焼結体が管状あるいは円板状である。
【0023】
焼結体の材質は特に限定されず、あらゆる金属、サーメットであってよい。ただし、本発明は、焼結体が加工の難しい高融点金属あるいはそのサーメットである場合に、結合力の強固な複合体を作製できる点で特に有効である。この観点からは、融点1500℃以上の金属あるいはその金属のサーメットが特に好適である。
【0024】
このような焼結体を構成する金属としては、タングステン、モリブデン、タンタルおよびニオブからなる群より選ばれた一種以上の金属あるいはその合金が好ましい。また、サーメットとしては、前記高融点金属とセラミック粉末との焼結体が好ましい。このようなセラミック粉末として以下を例示できる。
すなわちアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2),窒化珪素(Si3N4),炭化珪素(SiC),ムライト(3Al2O3・2SiO2)、スピネル(MgO・Al2O3)、YAG(3Y2O3・5Al2O3)等の高融点セラミックス粉末である。
【0025】
また、焼結体の熱膨張が発光容器の取付け部と近い値になって取付部に発生する熱応力を小さくするという観点からは、サーメットを構成する金属の割合は発光容器取付け部との熱膨張係数差が2ppm以下になるような体積割合であることが好ましく、発光容器取付け部との熱膨張係数が1ppm以下になるような体積割合であることが更に好ましい。
【0026】
特に好ましくは、焼結体が、タングステン、タングステンを含むサーメット、モリブデン、モリブデンを含むサーメット、タンタル、タンタルを含むサーメット、ニオブおよびニオブを含むサーメットからなる。
【0027】
焼結体を構成するための金属粉末の粒径は特に限定されず、焼成収縮量などを考慮して適宜決定する。金属粉末の粒径は、例えば0.5μm〜50μmとすることができる。またセラミック粉末の粒径も特に限定されず、焼成収縮量を考慮して決定するが、例えば0.1μm〜10μmとすることができる。また、焼結前の成形体の成形方法は特に限定されず、押し出し成形、プレス成形、スリップキャスティング、ドクターブレード法など、任意の方法を利用可能である。
【0028】
また、焼結体を成形する際には、金属粉末(および必要に応じてセラミック粉末)に対して、分散媒を添加できる。このような分散媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルカルビトールアセテート等を例示できる。また他の添加剤としては、PVA(ポリビニルアルコール)、メチルセルロース、エチルセルロース、及び界面活性剤や可塑剤等を例示できる。
【0029】
また、焼結前の成形体は、所定のウエット材料を成形したものであってよく、この成形体を乾燥した後の乾燥体であってよく、あるいは乾燥後に脱脂した脱脂体であってよい。
【0030】
焼成温度は、材質の種類によって決定されるので限定されないが、一般的には、1400℃〜2000℃とすることができる。
【0031】
好適な実施形態においては、電流貫通導体が全体にわたって同一素材からなっている。これによって電流貫通導体、更には複合体の製造コストを低減することができる。また電流貫通導体の端部にタングステンやモリブデン等が溶接で接合されていても良い。
【0032】
本発明の複合体の用途は特に限定されず、以下を例示できる。
各種高圧放電ランプの電極、プロジェクター発光管の電極、その他セラミックス部材と金属部品を複合化するときの金属部品。
【0033】
好適な実施形態においては、電流貫通導体が電極としても機能する。この場合には、電極全体を同じ材質によって形成することが可能であるので、最適な異種材料の組合せを溶接する必要がない。高融点金属を溶接により結合をする必要がないので、製造コストを著しく低減できる。
これと同様に、複数の長尺部品を突き合わせて接合し、接合部分の外周側に焼結体を固着させる、例えば図2記載の方法によれば、やはり最適な異種材料の組合せを溶接する必要がない。従って、高融点金属を溶接により結合をする必要がないので、製造コストを著しく低減できる。
【0034】
また、好適な実施形態においては、焼結体が発光容器への取り付け部として機能する。これによって、電極として機能する電流貫通導体を発光管内部に気密に取り付けることができるので、本発明は高圧放電灯に対して特に好適である。
【0035】
また、好適な実施形態においては、焼結体が電極ラジエーターとして機能する。これによって、電極先端部での放熱が効率良くなるため高圧放電灯に対して特に好適である。
【0036】
また、好適な実施形態においては、焼結体が電流貫通導体の直径を調整するスリーブとして機能する。これによって、電流貫通導体と発光管のリードスルー管との間に生ずる空間体積量を制御できるため、発光管の効率や寿命が向上し高圧放電灯に対して特に好適となる。
【0037】
また、好適な実施形態においては、焼結体が電流リード線との溶接のための端部として機能する。電流貫通導体がタングステンやサーメット等の溶接の非常に困難な材料のみで構成された場合、電流供給用のリード線との溶接接合が難しい。このため電流貫通導体の外側にモリブデン、ニオブ、タンタル等の溶接の容易な材料を焼結体として固定することにより、電力供給リード線との溶接が容易になり、高圧放電灯に対して特に好適となる。
【0038】
また、焼結体の内径と電流貫通導体の外径の関係は両者の密着性を発現させるために重要であり、焼結体に電流貫通導体を挿入せずに焼結したときの内径が電流貫通導体の外径より2%〜20%小さくなるように成形時の内径を調整することが必要である。さらに、焼結体の外径は特に限定されないが、焼結体の外径が大きすぎると焼結体の成形や焼結などが困難になるため、焼結体の外径は50mm以下であることが好ましい。また、焼結体の外径は、電流貫通導体の外径に対して0.1mm以上大きいことが好ましく、0.3mm以上大きいことが更に好ましい。
【0039】
焼結体の厚さは限定されないが、例えば0.1mm以上、20mm以下とすることができる。また、成形体の内径は電流貫通導体の外径以上であるが、この差は両者を組み立てるときの作業性を考慮して0.01mm以上とすることが好ましい。
【0040】
焼結体の外周部分に厚さが0.1〜1mm、高さ5mm以下、1mm以上のリング状の突起を設けることもできる。このようなリング状の突起部分は、他の外部部材への取り付け具としても機能させることができる。
【0041】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。
図4(a)、図4(b)、図4(c)は、それぞれ本発明で使用可能な成形体1B、1C、1Dを示す断面図である。成形体1Cの外周エッジにはリング状の突起4が形成されている。また、成形体1Dの外周エッジには面取り部5が設けられている。これら成形体を、図4(d)に示すように電流貫通導体2の外周に取り付け、焼結させると、図4(e)に示すような焼結体11Cおよび複合体3Cが得られる。
【0042】
図5(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ本発明に係る複合体3D、3E、3F、3Gを示す正面図である。複合体3Dにおいては、電流貫通導体2の外周に、円板状の焼結体11が固定されており、かつ管状の焼結体11Aと11Bが固定されている。複合体3Eにおいては、電流貫通導体2の外周に、円板状の焼結体11Cが固定されており、かつ管状の焼結体11Aと11Bが固定されている。焼結体11Cの外周側エッジにはリング状突起4が形成されている。複合体3Fにおいては、電流貫通導体2の外周に、円板状の焼結体11Dが固定されており、かつ管状の焼結体11Aと11Bが固定されている。焼結体11Dの外周側エッジには面取り部5が形成されている。複合体3Gにおいては、電流貫通導体2の外周に円板状の焼結体11が固定されており、かつ管状の焼結体11Bと11Eが固定されている。
【0043】
本発明において電流貫通導体に固定される焼結体の形態は、円板状や管状には限られない。例えば図6(a)、(b)、(c)に示すような星形あるいは歯車形の焼結体11F、11G、11Hを電流貫通導体2の外周に取り付け、焼結させることができる。このような形状の焼結体は大きな表面積を有するように設計することが容易で、電極ラジエーターとして特に好適である。
【0044】
以下、本発明を高圧放電灯発光管に適用した実施例を中心として更に説明する。
図7は、本発明を適用して作製した高圧放電灯発光管10を概略的に示す断面図である。透光性材料からなる発光容器9の両端内側が封止部材11Cによって封止されている。具体的には、各封止部材11Cの各貫通孔11a中に電極兼電流貫通導体2が挿通されている。ここで、封止材11Cと電流貫通導体2とは本発明によって結合されており、本発明の複合体3Cを構成している。複合体3Cはそれぞれ気密に保持されている。各封止部材3Cの外側エッジにはリング状突起4が形成されている。
【0045】
一方、発光容器9の端部内側には、板状金属片7を挟んで、脆性材料からなる内側部材6が固定されている。発光容器9、板状金属片7および内側部材6は、後述するようなプロセスによって強固に結合されている。そして,板状金属片7のエッジとリング状突起4のエッジとを、任意の方法、例えば溶接法によって8のように気密に接合し、高圧放電灯用の発光管を得る。この発光容器9の内側空間12に所定の発光物質を封入することによって、高圧放電灯の発光管として使用できる。
【0046】
板状金属片7は、後述のようにして圧着把持されている把持部7aと、発光容器の端部から突出する非把持部7bとを備えている。このように、板状金属片7の非把持部を発光管端部から突出させることによって、一般的に、発光容器端部の封止が一層容易となる。即ち、フリット等の封止材を使用して封止する場合には(例えば図8)、非把持部7bの内側に封止材を付着させることによって、封止を行うことができる。また、レーザー溶接法によって封止を行う場合にも、こうした非把持部は溶接時の熱を逃がし、熱の発光管側への集中を防止してクラック発生を防止する作用があり、また溶接材料の漏れなどを防止する作用もある。
【0047】
このように、高圧放電灯用発光管に対して本発明を適用することによって、以下の作用効果が更に得られる。即ち、本発明の複合体3Cにおいては、発光容器9の端部と内側部材6に強固に埋設結合された板状金属片7と熱膨張差の少ない封止部材11Cの内側に中実の電極兼電流貫通導体2を挿通して固定し、導体2の先端を電極として機能させることができる。このような導体2の全体を例えばタングステンのような電極に適した材質によって形成した場合であっても、本発明によれば、封止材11Cは導体2に対して気密かつ強固に接合されており、熱サイクルに対しても強い。従って、導体2の全体をタングステンなどの一種の適当な金属によって形成できるので、高融点金属の接合プロセスが不要であり、これによって製造コストを著しく削減することができる。
【0048】
図8に示す高圧放電灯発光管の場合には、各封止材11Gの各貫通孔11a中に電極兼電流貫通導体2が挿通されている。ここで、封止材11Gと電流貫通導体2とは本発明によって結合されており、本発明の複合体3Gを構成している。複合体3Gはそれぞれ気密に保持されている。一方、発光容器9の端部内側には、板状金属片7を挟んで、脆性材料からなる内側部材6が固定されている。発光容器9、板状金属片7および内側部材6は、後述するようなプロセスによって強固に結合されている。そして,板状金属片7の内側面と封止材3G表面とをシール材13によって更にシールしている。
【0049】
このようなシール材は、ガラスシール材やセラミックシール材を例示でき、特に以下のものが好ましい。例えば Dy2O3:Al2O3:SiO2 = 50〜80:10〜30:10〜30 (重量%)組成のフリット材又は酸化物の混合粉体を用いることが出来る。
【0050】
図9に示す高圧放電灯発光管の場合には,電流貫通導体14の固定には本発明を適用していない。この場合には、端部封止部材30と電流貫通導体14との接合は従来法によるので、端部封止材と電流貫通導体との間の熱膨張差を小さくする必要がある。例えば端部封止部材30がモリブデンサーメット製の場合には、電流貫通導体のうち封止部分14bは、これと熱膨張の近いモリブデンによって形成し、先端側14aはタングステンによって形成する。しかし、タングステンとモリブデンとの結合部分を強固に結合することは難しく、製造コストが著しく高い。
【0051】
図10の例では、発光容器9の端部内側に外側封止部材20が固定されており、外側封止部材20と内側封止部材21との間に板状金属片7が後述のようにして圧着把持されている。一方、電極兼電流貫通導体2と封止材11Hとは本発明によって一体化されており、複合体3Hを構成している。そして、板状金属片7の内側面と封止材11Hとの間にシール材13が施されている。電流貫通導体2の先端には図6で説明したような歯車型の電極ラジエーター17が固定されている。
【0052】
図11の例では、発光容器9の端部外側に外側封止部材22が固定されており、外側封止部材22と内側封止部材23との間に板状金属片7が後述のようにして圧着把持されている。一方、電極兼電流貫通導体2と封止材11Hとは本発明によって一体化されており、複合体3Hを構成している。そして、板状金属片7の内側面と封止材11Hとの間にシール材13が施されている。電極兼電流貫通導体2の先端にはスパイラル状の電極ラジエーター17が固定されている。
【0053】
図12の例では、いわゆるエリプティカル型の発光容器に対して本発明を適用した例を示す。発光容器29の端部内側に封止部材24が固定されており、発光管29と封止部材24との間に板状金属片7が後述のようにして圧着把持されている。一方、電極兼電流貫通導体2と封止材11Hとは本発明によって一体化されており、複合体3Hを構成している。そして、板状金属片7の内側面と封止材11Hとの間にシール材13が施されている。電極兼電流貫通導体2の先端にはスパイラル状の電極ラジエーター17が固定されている。
【0054】
図13の例では、いわゆるエリプティカル型の発光容器に対して本発明を適用した例を示す。発光管29の端部外側に外側封止部材25が固定されており、外側封止部材25と内側封止部材24との間に板状金属片7が後述のようにして圧着把持されている。一方、電極兼電流貫通導体2と封止材11Hとは本発明によって一体化されており、複合体3Hを構成している。そして、板状金属片7の内側面と封止材11Hとの間にシール材13が施されている。電流貫通導体2の先端にはスパイラル状の電極ラジエーター17が固定されている。
【0055】
図14の例では、いわゆるエリプティカル型の発光容器に対して本発明を適用した例を示す。発光管29の端部はリードスルー管としてキャピラリー状に直径が細くなっている。一方、電極兼電流貫通導体2と封止材兼スリーブ1A、溶接のための端部11A及び電極ラジエーター17とは本発明によって一体化されており、複合体3Hを構成している。そして、発光管29の端部キャピラリー内側面と封止材兼スリーブ1Aとの間にシール材13が施されている。電極兼電流貫通導体2の先端には歯車状の電極ラジエーター17が固定されている。また反対側にはリード線との溶接を容易にする溶接のための端部11Aが固定されている。
【0056】
図15(a)〜(c)は、本発明による高圧放電灯発光管の組み立てプロセスを示す模式的断面図である。図15(a)に示すように、発光容器の成形体9Aと内側部材6との間に管状の板状金属片7を挿入し、はさみこむ。次いで成形体9Aを焼結させて焼成収縮させ、図15(b)に示すように板状金属片7を発光容器9と封止部材6との間に圧着把持させる。一方、本発明に従って、図15(c)のように電極兼電流貫通導体2と焼結体11Cとの複合体3Cを準備し、焼結体11Cのリング状突起4を板状金属片7に溶接して高圧放電灯発光管を得る。
【0057】
また、図16(a)〜(c)に示す例では、図15(a)〜(c)と同様のプロセスによって高圧放電灯発光管を作製している。ただし、本例では、電流貫通導体2の先端に複数の小円板からなる電極ラジエーター16が設けられている。
【0058】
電極兼電流貫通導体2は、例えば図17(a)、(b)に示すように、所定形状の成形体の貫通孔中に挿入し、成形体を焼結させて複合体とする。そして、得られた焼結体11Cを、例えば図16(c)に示すように板状金属片7に対してシール材13によって固定、あるいは溶接する。
【0059】
図18(a)の例では、封止部材1だけでなく、電極ラジエーター17の成形体16も準備する。そして、図18(b)に示すように,電極兼電流貫通導体2を、成形体1の貫通孔1aに挿通すると共に、電極ラジエーター17の成形体16中にも挿通する。そして成形体1および電極成形体16を焼結させ、図18(c)に示すように、電流貫通導体2の外周に焼結された封止部材11および電極ラジエーター17を固定する。次いで、図18(d)に示すように、封止部材11を板状金属片7に対して固定し、高圧放電灯とする。
【0060】
高圧放電灯発光管において、板状金属片を圧着把持する封止部材や発光容器を形成する脆性材料は、特に限定されないが、ガラス、セラミックス、サーメット、単結晶を例示できる。
【0061】
このガラスとしては石英ガラス、アルミシリケートガラス、硼珪酸ガラス、シリカ−アルミナ−リチウム系結晶化ガラス等を例示できる。このセラミックスとしては、例えばハロゲン系腐食性ガスに対する耐蝕性を有するセラミックスを例示でき、特に好ましくは、アルミナ、イットリア、イットリウム−アルミニウムガーネット、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素である。またこれらの内いずれかからなる単結晶でもよい。
【0062】
サーメットとしては、アルミナ、イットリア、イットリウム−アルミニウムガーネット、窒化アルミニウムのようなセラミックスと、モリブデン、タングステン、ハフニウム、レニウムなどの金属とのサーメットを例示できる。単結晶としては、可視光域が光学的に透明な特性を有する、例えばダイアモンド(炭素単結晶)やサファイヤ(Al単結晶)等を例示できる。
【0063】
高圧放電灯発光管においては、板状金属片の厚み方向の両側は、熱膨張係数が同等かまたは同じ脆性材料で圧着把持することが好ましい。これによって、脆性材料間の応力発生は殆ど無く、金属材料に発生する応力は金属材料の厚み中心を対称にしてほぼ等価な応力分布となり、更に脆性材料に比べて圧倒的に薄い厚みのため、発生した応力は金属材料の塑性変形により緩和される。従って、圧着把持工程後であっても、温度変化を伴う使用条件下に於いても、金属材料が折損したり割れたり、大変形を起こす等の致命的な損傷が発生することは無い。
【0064】
前記高圧放電灯発光管では、板状金属片と脆性材料との接触界面に発生する応力が、板状金属片の把持部の変形により緩和される。
把持部と脆性材料との接触界面に発生する応力は、例えば以下の原因によって発生する。金属材料の熱膨張係数がα1、ヤング率がE1、脆性材料の熱膨張係数がα2、ヤング率がE2とする。金属材料を脆性材料の中に埋設し、焼結温度T1により圧着把持させ、室温まで冷却したとき、両者が全く変形せずまた界面での滑りも生じなかった場合、金属側の発生応力σ1は次式のように表される。
σ1∝E1x(T1−室温)x(α1−α2) (1)
同様に脆性材料側の発生応力σ2は次式の様に表される。
σ2∝E2x(T1−室温)x(α2−α1) (2)
【0065】
モリブデンとアルミナの組合せを例に取ると、モリブデンの熱膨張係数は約5ppm/℃、ヤング率は約330Gpa、アルミナの熱膨張係数は約8ppm/℃、ヤング率は約360Gpaであるので、例えば焼結温度が1,500℃で室温まで冷却したときに、モリブデン側に塑性変形が全く無ければ、モリブデン側には約1,500MPaの圧縮応力が発生する。同様にアルミナ側では約1,600MPaの引張応力が発生することになる。
【0066】
この応力値ははるかにそれぞれの材料の強度を超えており、通常このような脆性材料と金属部材の構造体ではいずれかの材料の界面で破壊が生じて、複合された部材を実現することは不可能である。
【0067】
しかしながら金属では降伏応力以上の応力が発生すると塑性変形が起こる。その際破壊に至るまでの変形の大きさは「伸び」で表され、一般的に「伸び」は数%〜数10%と非常に大きい値をとる。
セラミックス材料に対して、金属材料側を相対的に薄肉にし、金属側のみに降伏応力以上の応力を発生させて塑性変形するように設計することにより、熱膨張差による応力を緩和しようとするものである。
【0068】
例えばモリブデンを100ミクロンの厚みの薄板とし、アルミナの厚みが10mmのブロックとすると、モリブデン薄板が変形して応力を緩和するのに必要なモリブデン側の歪は(3)式で表される。
ε=(T1−室温)x(α1−α2)〜0.5% (3)
厚み方向での変形量は
Δt=εxt〜0.5ミクロン (4)
となり非常に僅かな変形で発生する応力を緩和することができる。
【0069】
白金とアルミナの組合せを例に取ると、白金の熱膨張係数は約9ppm/℃、ヤング率は約170GPa、アルミナの熱膨張係数は約8ppm/℃、ヤング率は約360GPaであるので、例えば焼結温度が1,500℃で室温まで冷却したときに、白金側に塑性変形が全く無ければ、白金側には約250MPaの引張応力が発生する。同様にアルミナ側では約530MPaの圧縮応力が発生することになる。
【0070】
この場合も白金を100ミクロンの厚みの薄板とし、アルミナの厚みが10mmのブロックとすると、白金薄板が変形して応力を緩和するのに必要な白金側の歪は(3)式で表され約0.1%となる。白金側には圧着把持方向に対して引張応力が発生するが、その深さ方向の僅か0.1%の変形が起これば引張応力は緩和される。これは10mmの圧着把持深さであれば、僅か10μmである。
【0071】
このように脆性材料と金属材料との構造体において主に両者の熱膨張差に起因して発生する応力は、その歪は約1%以下の大きさである。一方金属材料の降伏強度は引張強度より小さくその破断に至るまでの伸びは、数%〜数10%の大きさのため、金属材料側の厚みを脆性材料厚みより相対的に薄くして金属側にのみ降伏応力以上の応力を発生させて塑性変形させ、熱膨張差を緩和させても、その変形量は「伸び」の値以内であり、金属材料が破壊することはない。また金属材料が変形することにより、脆性材料側に発生した応力も緩和され、脆性材料−金属構造体を実現することができる。 焼成収縮を利用して一体化するような製法を用いる場合、高温での熱処理操作となり、金属材料の高温クリープ変形等によっても応力が緩和される。
【0072】
好適な実施形態においては、板状金属片の把持部を圧着する両側の脆性材料の熱膨張係数差が2ppm以下であり、特に好ましくは1ppm以下である。最も好ましくは両者の熱膨張係数が同じである。このように両者の熱膨張係数を合わせることによって、本発明の脆性材料−金属構造体の熱サイクルに対する安定性、信頼性を一層向上させることができる。
【0073】
好適な実施形態においては、板状金属片の把持部を圧着する両側の脆性材料が、焼成収縮率の異なる焼結体であり、板状金属片が焼成時の収縮差によって圧接されている。このときの収縮率差の好適値については後述する。
あるいは、好適な実施形態においては、板状金属片の把持部を圧着する両側の脆性材料の内側が、ガラス、単結晶などの焼成収縮しない脆性材料であり、外側が焼成収縮する脆性材料である。
【0074】
好適な実施形態においては、板状金属片の厚さが、少なくとも把持部において1000μm以下であり、特に好ましくは200μm以下である。このように板状金属片を薄くすることによって、板状金属片の変形によって板状金属片と脆性材料間に発生する応力を低減し、発光容器の気密性を一層高くすることが可能となる。ただし、板状金属片が薄すぎると、構造体としての強度が不足するため、板状金属片の把持部の厚さは20μm以上とすることが好ましく、50μm以上とすることが一層好ましい。
【0075】
好適な実施形態においては、板状金属片の把持部を圧着する脆性材料のうち、外側の脆性材料の厚さが0.1mm以上である。これによって、外側の脆性材料から板状金属片に対して径方向に向かって加わる圧力を十分に大きくし、発光容器の気密性を一層向上させることができる。この観点からは、外側の脆性材料の厚さを0.5mm以上とすることが一層好ましい。
【0076】
発光管の製法は特に限定されず、これら発光管の胴部については(1)押出し成形、泥漿鋳込み成形、インジェクション成形により、発光管を2部品に分けて成形し、脱脂前に成形体を接合〜本焼成することで一体化させる方法がある。また、(2)ゲルキャストを代表とするロストワックス法にて成形してもよく、胴部発光管デザインを選ばない端部封止構造が実現できる。
【0077】
またメタルハライドランプでは耐食性を重んじ、Mo、W、Re等が主に用いられるが、高圧ナトリウムランプでは更にNbを前記金属部品として採用できる。また同様のことは超高圧水銀ランプでもNb採用の可能性がある。
【0078】
これらの発光容器を以下の様に封止することで放電灯発光管となる。
(1)メタルハライドランプ(一般照明)
50〜200mbarのAr雰囲気下でMo製の金属キャップ(キャップ自体にガイド部分があってもよい)の孔からHg(必須ではない。)、金属(Na、希土類元素等)沃化物を投入してMoもしくはW電極を挿入し、TIG溶接もしくはレーザー溶接により溶接封着する。
【0079】
(2) メタルハライドランプ(自動車用途・点光源用)
金属沃化物とHg(必須でない。)を(1)と同様に封止する。場合に応じ7〜20barのXeを始動ガスとして用いる。特に本発明のような場合はごく短時間&低温で封止が終了するため始動ガスをはじめとする発光物質の蒸発をほぼ完全に抑制できる。胴部材料は通常の透光性アルミナでもよいが、直線透過率の高いYAG、サファイア、粒径が10μm以下の多結晶アルミナ等を選ぶとなお良い。
【0080】
(3) 高圧Naランプ
金属キャップはNbを用いる。電極はMo、W、Nbを用いこれらを溶接する。発光物質はNa-HgアマルガムとAr等の始動ガスか、Hgを用いない場合はXeを封入する。特にチューブ表面に補助電極を用いる場合(コイル巻き、メタライズ印刷等種類は不問)は、電極保持部材近傍と補助電極の短絡を防止するため場合に応じて絶縁手段を補助電極上などに設けてもよい。
【0081】
(4)超高圧水銀ランプ
胴部材料は、直線透過率の高いYAG、サファイア、粒径が10μm以下の多結晶アルミナ等が好適である。発光物質はHgとBrである。金属キャップはMo、WのほかにNbが使用可能であり、溶接法は上記と同様である。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
図1(a)〜(d)を参照しつつ説明した方法によって、複合体3を作製した。具体的には、平均粒径2ミクロンの金属モリブデン粉末100部に、有機溶剤15部、バインダー5部及び潤滑剤2部を加えてハイ土状に混練後、更に真空土練機で空気を含まない状態に練り、押出し用の金型を準備して押出し成形を実施し、乾燥して所定の長さの金属モリブデン粉末成形体1を準備した。押出し成形体1の断面形状は略円形状で、中心部には一体化するタングステン線材の直径とほぼ同等の穴1aが長手方向に形成されている。この穴は押出し用の金型の中心に予め芯材を固定することによって形成することができるが、成形体の長さが短い場合は、中実の棒状に押出した成形体を所定長さに切断した後に、ドリルで機械加工して形成することも可能である。所定長さへの切断は乾燥前でも乾燥後でも良い。
【0083】
このように形成された金属モリブデン粉末成形体1は、大気中600℃で加熱して、成形体内からバインダー及び潤滑剤を熱分解して予め除去しておく。
【0084】
次に金属モリブデン粉末成形体1の中心の穴1aに、長さ40mmのタングステン線材2を挿入して両者を組み立て、水素雰囲気中1,800℃で焼成し、金属モリブデン粉末成形体を焼結する。金属モリブデン粉末成形体は焼結によって開気孔の無い緻密質の金属モリブデン焼結体となる。同時に金属モリブデン粉末成形体が焼結するときの体積収縮作用と焼結作用により、金属モリブデン焼結体とタングステン棒の界面は密着し、両者は一体化して気密性の高い複合体3が得られた。
【0085】
このようにして得られたタングステン棒と金属モリブデン部材が一体化した構造体は、例えば高圧放電灯用の電極兼電流貫通導体として好適である。
【0086】
(実施例2:プレス成形部材との一体化)
図4(b)、(d)、(e)に示すような形態の複合体3Cを作製した。具体的には、平均粒径2ミクロンの金属モリブデン粉末100部にバインダー3部及び可塑剤1.5部を加えた造粒粉末を用意した。この造粒紛体に一軸方向の圧力(1,000kg/cm2)を印加してプレス成形を実施し、その後乾燥して所定形状の金属モリブデン粉末成形体1Cを準備した。
【0087】
プレス成形体1Cの断面形状は略円形状で、中心部には一体化するタングステン線材の直径とほぼ同等の穴1aが長手方向に形成されている。この穴はプレス成形用のダイセット金型の中心に予め芯材を固定することによって形成することができるが、成形体の厚さが短い場合は、中実の円盤状の成形体にドリルで機械加工して、穴を形成することも可能である。
【0088】
プレス成形の場合、ダイセット金型の構造を工夫することにより、成形体に薄肉のリブ4を形成したり角部を面取り形状5にしたりすることが可能である。
【0089】
このように成形された金属モリブデン粉末成形体1は、大気中600℃で加熱して、成形体内からバインダー及び可塑剤を熱分解して予め除去しておく。
【0090】
次に、金属モリブデン粉末成形体の中心の穴1aに、長さ40mmのタングステン線材2を挿入して両者を組み立て、水素雰囲気中1,800℃で焼成し、金属モリブデン粉末成形体を焼結する。金属モリブデン粉末成形体は焼結によって開気孔の無い緻密質の金属モリブデン焼結体となる。同時に金属モリブデン粉末成形体が焼結するときの体積収縮作用と焼結作用により、金属モリブデン焼結体とタングステン棒の界面は密着し、両者は一体化して気密性の高い構造体が得られる。
【0091】
このようにして得られたタングステン棒と金属モリブデン部材が一体化した構造体は、例えば高圧放電灯用の電極兼電流貫通導体として好適である。
【0092】
(実施例3:押出し成形部材との一体化)
図3(a)〜(c)に示すような複合体3Aを作製した。具体的には、平均粒径2ミクロンの金属モリブデン粉末70体積パーセントと平均粒径0.3ミクロンのアルミナ(酸化アルミニウム)粉末30体積パーセントの混合粉末100部に有機溶剤20部、バインダー5部及び潤滑剤2部を加えてハイ土状に混練後、更に真空土練機で空気を含まない状態に練り、押出し用の金型を準備して押出し成形を実施し、乾燥して所定の長さの金属モリブデン‐アルミナ混合粉末成形体1Aを準備した。
【0093】
押出し成形体1Aの断面形状は略円形状で、中心部には後で一体化するタングステン線材の直径とほぼ同等の穴が長手方向に形成されている。この穴は押出し用の金型の中心に予め芯材を固定することによって形成することができるが、成形体の長さが短い場合は、中実の棒状に押出した成形体を所定長さに切断した後に、小径のドリルで機械加工して形成することも可能である。所定長さへの切断は乾燥前でも乾燥後でも良い。
【0094】
このように形成された金属モリブデン‐アルミナ混合粉末成形体は、大気中600℃で加熱して、成形体内からバインダー及び潤滑材を熱分解して予め除去しておく。
【0095】
次に、金属モリブデン‐アルミナ混合粉末成形体1Aの中心に設けられた穴1aに、長さ40mmのタングステン線材2を挿入して水素雰囲気中1,800℃で焼成する。金属モリブデン‐アルミナ混合粉末成形体は焼結によって開気孔の無い緻密質の金属モリブデン‐アルミナ サーメット焼結体となる。同時に金属モリブデン‐アルミナ混合粉末成形体が焼結するときの体積収縮作用と焼結作用により、金属モリブデン‐アルミナサーメット焼結体とタングステン棒の界面も密着し、両者は一体化して気密性の高い構造体が得られる。
【0096】
このようにして得られたタングステン棒と金属モリブデン‐アルミナサーメット部材が一体化した構造体は、例えば高圧放電灯用の電極兼電流貫通導体として好適である。
【0097】
(実施例4:押出し成形部材との一体化)
図6(a)、(d)に示すような形態の複合体を作製した。躯体的には、平均粒径2ミクロンの金属タングステン粉末80体積パーセントと平均粒径0.3ミクロンのアルミナ(酸化アルミニウム)粉末20体積パーセントの混合粉末100部に有機溶剤20部、バインダー5部及び潤滑剤2部を加えてハイ土状に混練後、更に真空土練機で空気を含まない状態に練り、押出し用の金型を準備して押出し成形を実施し、乾燥して所定の長さの金属タングステン‐アルミナ混合粉末成形体11Fを準備した。
【0098】
金属タングステン‐アルミナ混合粉末押出し成形体11Fの断面形状は、複数のフィンが立った歯車形状で、中心部には後で一体化するタングステン線材の直径とほぼ同等の穴が長手方向に形成されている。この穴は押出し用の金型の中心に予め芯材を固定することによって形成することができるが、成形体の長さが短い場合は、中実の棒状に押出した成形体を所定長さに切断した後に、ドリルで機械加工して形成することも可能である。所定長さへの切断は乾燥前でも乾燥後でも良い。
【0099】
このように形成された金属タングステン‐アルミナ混合粉末成形体は、大気中600℃で加熱して、成形体内からバインダー及び潤滑材を熱分解して予め除去しておく。
【0100】
次に、成形体の中心に設けられた穴に、長さ40mmのタングステン線材2を挿入して水素雰囲気中1,800℃で焼成し、金属タングステン‐アルミナ混合粉末成形体を焼結し、サーメットとする。金属タングステン‐アルミナ混合粉末成形体は焼結によって開気孔の無い緻密質のサーメット焼結体11Fとなる。同時に金属タングステン‐アルミナ混合粉末成形体が焼結するときの体積収縮作用と焼結作用により、金属タングステン‐アルミナ サーメット焼結体11Fとタングステン棒2の界面も密着し、両者は一体化する。このようにして得られたタングステン棒と金属タングステン‐アルミナサーメット部材が一体化した構造体は、例えば高性能の電極ラジエターを備える高圧放電灯用の電極として好適である。
【0101】
(実施例5)
実施例1と同様にして複合体を作製した。ただし、タングステン棒2の直径、焼結前の成形体の外径(直径)、内径、肉厚、長さは、表1に示すように種々変更した。そして、実施例1と同様にして実験を行ったところ、表2に示すような結果が得られた。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
(実施例6)
図16、図17に示したような手順に従い、図7の高圧放電灯発光管を作製した。
具体的には、モリブデン板を深絞り成形して作製した厚さ0.2mmの円筒状金属片7を準備した。或いはモリブデン粉末を管状に押出成形後、焼結することにより厚さ0.2mmの円筒状金属片7を準備した。また、高純度アルミナ焼結体からなる封止部材6を準備し、6の外側に円筒状金属片7を固定し、その外側にアルミナ粉末の成形体9Aを固定した。成形体9Aは、ドライバッグ成形機で成形した、内径が2.1mm、外径が4mm、長さが20mmの高純度アルミナからなるチューブ状の発光管用成形体2(成形圧力1,500kg/cm2)である。この組み立て体を、水素雰囲気中1,800℃で焼成し、図16(b)に示す発光容器を得た。
【0105】
一方、実施例1と同様にして電極兼電流貫通導体2とモリブデンサーメット製の封止部材11Cとの接合体3Cを作製した。そして、接合体3Cを発光容器の片側に挿入しリング状突起4と板状金属片7とをレーザ溶接した。この片側が溶接された発光容器をグローブボックス中に移し高純度のアルゴンガス雰囲気中で、接合体3Cが溶接されていないもう一方の発光容器の封止部材の穴を利用して、水銀およびスカンジウム-ナトリウム系のハロゲン化金属を所定量投入し、さらに接合体3Cを挿入してリング状突起4と板状金属片7をレーザー溶接した。この一連の工程により、図16(c)に示す高圧放電灯用発光管を作製した。この発光管に電流供給のためのリード線を溶接し、ガラス外球中に挿入してランプとし、所定の安定器電源を利用して電流を流すことにより、メタルハライド高圧放電ランプとして発光させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】(a)は成形体1を示す断面図であり、(b)は、成形体1の正面図であり、(c)は、成形体1に電流貫通導体2を挿通した状態を示す断面図であり、(d)は、(c)の組み立て体の焼結によって得られた複合体3を示す断面図である。
【図2】(a)は成形体1を示す断面図であり、(b)は、成形体1の正面図であり、(c)は、成形体1に電流貫通導体2a及び2bを挿通した状態を示す断面図であり、(d)は、(c)の組み立て体の焼結によって得られた複合体3を示す断面図である。
【図3】(a)は管状の成形体1Aを示す断面図であり、(b)は、成形体1Aに電流貫通導体2を挿通した状態を示す断面図であり、(c)は、(b)の組み立て体の焼結によって得られた複合体3Aを示す断面図であり、(d)は他の複合体3Bを示す断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)は各成形体1B、1C、1Dを示す断面図であり、(d)は、成形体1Cを電流貫通導体2に取り付けた状態を示す断面図であり、(e)は、成形体1Cの焼結によって得られた複合体3Cを示す断面図である。
【図5】(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ、複合体3D、3E、3F、3Gを示す断面図である。
【図6】(a)、(b)、(c)は星型の焼結体11F、11G、11Hを示す正面図であり、(d)は複合体を示す断面図である。
【図7】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図であり、端部が溶接されている。
【図8】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図であり、端部がシール材13でシールされている。
【図9】本発明が適用されていない高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図であり、電流貫通導体が材質の異なる部分14a、14bを含んでいる。
【図10】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図である。
【図11】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明を適用した得られた高圧放電灯発光管を概略的に示す断面図である。
【図15】(a)、(b)および(c)は高圧放電灯発光管の組み立てプロセスを概略的に示す断面図である。
【図16】(a)、(b)および(c)は高圧放電灯発光管の組み立てプロセスを概略的に示す断面図である。
【図17】(a)、(b)は、各複合体3、3Cを示す断面図であり、(c)は高圧放電灯発光管の端部を示す断面図である。
【図18】(a)は、封止部材の成形体1および電極成形体16を示す断面図であり、(b)は、成形体1および16を電流貫通導体2に取り付けた状態を示す断面図であり、(c)は、(b)の成形体の焼結によって得られた複合体を示す断面図であり、(d)は,(c)の複合体を使用して得られた高圧放電灯発光管の端部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0107】
1、1A、1B、1C、1D 成形体 1a 成形体の貫通孔 2、2a、2b 長尺部品 3、3A、3B、3C、3D、3E、3F、3G 複合体 9 発光容器 10 高圧放電灯発光管 11、11A、11B、11C、11D、11F、11G、11H 焼結体 11a 焼結体の貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料からなる発光容器、金属またはサーメット製の中実の電流貫通導体、およびこの電流貫通導体の外側に固定されている、少なくとも金属粉末を含む成形体の焼結体を備えていることを特徴とする、発光管。
【請求項2】
前記焼結体が円板状あるいは管状をなしていることを特徴とする、請求項1記載の発光管。
【請求項3】
前記電流貫通導体のうち、前記焼結体が固定されている部分が同一素材からなっていることを特徴とする、請求項1または2記載の発光管。
【請求項4】
前記電流貫通導体が複数の長尺部品からなり、これら長尺部品を長手方向につないだ際の連結部が、前記焼結体により固定されていることを特徴とする、請求項1または2記載の発光管。
【請求項5】
前記電流貫通導体が電極としても機能することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項6】
前記焼結体が前記発光容器への取り付け部として機能する、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項7】
前記焼結体が、電極ラジエーターとして機能する、請求項6記載の発光管。
【請求項8】
前記焼結体が、前記電流貫通導体の直径を調整するためのスリーブとして機能する、請求項6記載の発光管。
【請求項9】
前記焼結体が、電流リード線との溶接のための端部として機能する、請求項6記載の発光管。
【請求項10】
前記電流貫通導体が、高融点金属あるいは高融点金属含有サーメットの線材からなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項11】
前記高融点金属が、タングステン、モリブデン、タンタルおよびイリジュウムからなる群より選ばれた一種以上の金属あるいはこの金属を含む合金であることを特徴とする、請求項10記載の発光管。
【請求項12】
前記焼結体が、高融点金属あるいは高融点金属含有サーメットからなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項13】
前記電流貫通導体の外径が5mm以下であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項14】
前記焼結体の外径が10mm以下であり、かつ前記電流貫通導体の外径よりも0.1mm以上大きいことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項15】
前記焼結体の厚さが0.5mm以上、20mm以下であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項16】
前記焼結体の外周部分に、厚さが0.1〜1mm、高さが1mm〜5mmのリング状の突起を有する、請求項1〜11のいずれか一つの請求項に記載の発光管。
【請求項17】
前記電流貫通導体が同一素材からなっていることを特徴とする、請求項3記載の発光管。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一つの請求項に記載の発光管を備えていることを特徴とする、高圧放電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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