説明

発光素子、その製造方法およびそれを用いる発光方法

本発明は、発光基体;および当該発光基体の表面上に形成される、金属微細組織を有する金属層;を含む発光素子を提供し、この際、発光基体は組成YSiO:Tbである発光材料を含む。本発明はまた、当該発光素子の製造方法および発光方法を提供する。本発明に係る発光素子は、発光の均一性が高い、発光の効率が高い、発光の安定性が良好であり、および構造が簡単であり、超高輝度の発光デバイスに応用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料に関する。具体的に、ガラス基材の発光材料を有する発光素子、その製造方法および発光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な発光基体の材料として、蛍光体、ナノクリスタルおよびガラスなどが挙げられる。クリスタルおよび蛍光体に対して、ガラスは、透明性、耐久性、良好な化学安定性および優れた光学性質を持つ。さらに、ガラスは、より加工し易く、様々な形状や大きさが異なる製品に加工しうる。例えば、形状またはサイズが異なる表示装置または照明の光源が挙げられる。
【0003】
例えば、真空マイクロエレクトロニクス領域において、電界放出デバイスは通常、ガラスを発光体として用いる。電界放出デバイスは、照明および表示の技術領域において、大きな可能性を示し、国内外の研究機関に多くの注目を集めている。電界放出デバイスの原理とは、真空中で、陽極が、加速電界を形成するために、電界放出陰極アレイ(Field emissive arrays、FEAs)に正電圧を印加し、陰極から放出された電子は高速で陽極基板上の発光材料にぶつかることによって発光することである。電界放出デバイスは、動作温度範囲が広く(−40℃〜80℃)、応答時間が短く(<1ms)、構造が簡単であり、電力消費が少なく、グリーン環境保護の要件に満たしている。さらに、蛍光体、発光ガラス、発光フィルム等の材料は、電界放出デバイス中の発光材料として用いることができる。しかしながら、それらは、本質的に発光効率が低いという問題があるため、電界放出デバイスへの応用に制限されてしまい、特に照明領域への応用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の開示
本発明は、発光の均一性が高い、発光の効率が高い、安定性が優れる、構造が簡単な発光素子、および製造工程が簡単で、低コストの発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明はまた、操作簡単で、安全性があり、発光材料の発光効率を大きく向上させる発光素子の発光方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発光素子は、発光基体を含む。前記発光基体の表面に、金属微細組織を有する金属層が形成される。前記発光基体は、化学組成がYSiO:Tbである発光材料を含む。
【0007】
本発明による発光素子の製造方法は以下の工程を含む:
化学組成がYSiO:Tbである発光材料を含む発光基体を製造し;
前記発光基体の表面に金属層を形成し;および
前記発光基体および金属層を真空焼き鈍し処理を行うことによって、前記金属層が金属微細組織を形成し、冷却することによって前記発光素子を形成する。
【0008】
また、本発明による発光素子の発光方法は以下の工程を含む:
上述の発光素子の製造方法に従って発光素子を得て;および
前記金属層に対して陰極線を発射し、当該陰極線の励起によって前記金属層と前記発光ガラスとの間に表面プラズモンが形成されることによって、発光ガラスを発光させる。
【発明の効果】
【0009】
上述した発光素子において、微細構造を有する金属層を発光基体上に設置し、陰極線照射の下で当該金属層と発光基体との間の界面に表面プラズモンが形成される。表面プラズモン現象を介して、発光基体の内部量子効率が大幅に向上される。すなわち、発光ガラスの自然放出が増加する。したがって、発光基体の発光効率が大幅に向上することによって、発光材料の低発光効率であるという課題を解決することができる。したがって、発光素子の発光方法において、金属層に対して陰極線を発射するだけで、金属層と発光基体との間に表面プラズモンが形成されるため、発光基体の発光効率を向上させることができ、発光の安定性の向上につながる。発光素子は、発光基体と金属層とを含み、構造が簡単である。また、発光基体と金属層との間に均一的な界面が形成されるため、優れた発光均一性および安定性を達成することが可能となる。発光素子の発光方法において、金属層に対して陰極線を発射するだけで、金属層と発光基体との間に表面プラズモンが形成されるため、発光基体の発光効率を向上させることができ、発光の安定性を高めることが可能となる。
【0010】
上述した発光素子の製造方法において、発光ガラス上に金属層を形成するだけで、その後焼き鈍し処理を経て、前記発光素子を得ることができる。したがって、当該製造方法は、製造工程が簡単であり、低コストであり、幅広い生産性および応用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例に係る発光素子の構造の概略図である。
【図2】本発明の実施例に係る発光素子の製造方法のフローチャートである。
【図3】本発明の実施例に係る発光素子の発光方法のフローチャートである。
【図4】実施例1の発光素子の発光スペクトルと金属層を含まない発光ガラスの発光スペクトルとの比較図(電子線を加速電圧5KVで照射した時の発光スペクトル)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の目的、技術手段および発明の効果をより明白するために、本発明の実施形態とともに図面および実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。ただし、以下に示す具体的な実施例は、本発明をより明白に解釈するためであって、本発明が以下のものに限定されないことは理解すべきである。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係る発光素子10の概略図を示す。発光素子10は、発光基体13および発光基体13の表面に設置される金属層14を含む。金属層14は金属微細組織を有する。当該微細構造は、場合によって、マイクロナノ構造とも称する。さらに、当該金属微細組織は、非周期的であり、すなわち、不規則的に並ぶ金属から構成される。
【0014】
本発明の一実施形態において、発光基体13は、発光材料YSiO:Tbを含有する発光ガラスであってもよい。前記ガラスの組成および当該組成のモル部は20NaO−20BaO−30B−30SiOである。当該ガラスは、本明細書で記述するガラス材料に限らず、低融点のガラス粉末を用いる。この際、発光材料YSiO:Tbは、発光基体中における質量パーセントが5%〜35%である。
【0015】
本発明の他の実施形態において、発光基体13は、透明または半透明の基板と、当該基板上に形成される、化学組成がYSiO:Tbである発光フィルムとを含み、金属層14は当該発光フィルム表面上に形成される。
【0016】
この際、金属層14は、例えば酸化腐食され難い金属などの化学的に安定な金属から形成されてもよく、汎用金属から形成されてもよい。金、銀、アルミニウム、銅、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、白金、パラジウム、マグネシウム、および亜鉛中からなる群から選択される少なくとも1種類の金属から形成するのが好ましく、金、銀およびアルミニウム中から選択される少なくとも1種類の金属から形成することがより好ましい。また、金属層14の金属は、上記例挙した金属を単独で用いてもよく、それらの複合金属であってもよい。複合金属は、上記例挙した金属の2種類以上の合金であってもよい、例えば、金属層14は、銀−アルミニウム合金層または金−アルミニウム合金層であってもよく、この際、銀または金の重量部は好適には70%以上である。金属層14の厚さは、好ましくは0.5nm〜200nmであり、より好ましくは1nm〜100nmである。
【0017】
発光素子として、上述の発光素子10は、超高輝度および超高速動作の発光デバイスに幅広く応用することができる。例えば、発光素子10は電界放出ディスプレイ、電界放出型光源、または広告用大型ディスプレイなど製品に応用される。電界放出ディスプレイを例として以下のように説明する。加速電界を形成するために、陽極が電解放出陰極に正の電圧を印加する。陰極が放出する電子、すなわち金属層14に対して放出する陰極線16は、微細構造を有する金属層14と発光基体13との間に、表面プラズモンを形成する。この表面プラズモン現象を介して、発光基体13の内部量子効率が大幅に向上し、その結果、発光ガラスの自然放出を増加させることができる。したがって、発光基体の発光効率が大幅に向上されることによって、発光材料の低発光効率であるという課題を解決することができる。また、発光基体13の表面に形成された金属層であるため、当該金属層と発光基体13との間に均一な界面を形成することができ、発光の均一性を高めることができる。
【0018】
図1および図2を参照して、本発明の実施例に係る発光素子の製造方法のフローチャートを説明する。当該製造方法は以下の工程を含む:
S01:化学組成がYSiO:Tbである発光材料を含む発光基体13を製造する;
S02:発光基体13の表面に金属層14を形成する;および
S03:発光基体13および金属層14を真空焼き鈍し処理を行うことによって、金属層14が金属微細組織を形成し、冷却することによって発光素子10を形成する。
【0019】
工程S01において、上述した2種類の構造を有する発光基体13(第1の構造は発光材料YSiO:Tbを有する発光ガラスであり、第2の構造は基板上に化学組成がYSiO:Tbである発光フィルムが形成されてなる。)に合わせて、それぞれの製造方法を説明する。第1の発光基体13の製造方法は、以下の工程を含む:YSiO:Tb発光材料とガラス粉末とを混合し、次いで1000〜1300℃の温度で溶融し、その後室温まで冷却し、発光材料YSiO:Tbを有する発光ガラスを得る。この場合において、発光材料YSiO:Tbも粉末状であり、ガラス粉末に対し、1:19〜7:13の質量比で混合し、混合後の発光材料YSiO:Tbは、混合物全体に対して、5%〜35%の質量パーセントを占める。次いで、混合物を1000〜1300℃の温度で溶融し、スチールプレートに流し込んで室温まで冷却し、望ましい基体13を得る。溶融温度は好ましくは1200℃である。
【0020】
第2の発光基体の製造方法は、以下の工程を含む:半透明または透明基板を基板として選択し、当該基板上にYSiO:Tb発光フィルムを形成する。この際、YSiO:Tb発光フィルムは、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、化学気相成長法、分子線エピタキシー法、パルスレーザーアグレーション法または噴霧熱分解法などの方法を用いて、基板上に堆積し形成される。
【0021】
前記の構成と類似して、ここでの金属層14は、例えば酸化腐食され難い金属などの化学的に安定な金属から堆積して形成されてもよく、汎用金属から堆積して形成されてもよい。金、銀、アルミニウム、銅、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、白金、パラジウム、マグネシウム、および亜鉛中からなる群から選択される少なくとも1種類の金属から形成するのが好ましく、金、銀およびアルミニウム中から選択される少なくとも1種類の金属から形成することがより好ましい。工程S02において、当該金属層14は、上記の少なくとも1種類の金属が、スパッタリング法や蒸着法などに限らず、物理または化学気相成長法によって、発光基体13の表面に形成してなる。金属層14の厚さは、好ましくは0.5nm〜200nmであり、より好ましくは1nm〜100nmである。
【0022】
工程S03を具体的に以下のように説明する:発光基体13の表面に金属層14を形成された後に、50℃〜650℃で真空焼き鈍し処理をし、焼き鈍し時間が5min〜5hであり、その後室温まで自然冷却させる。この際、好ましい焼き鈍し温度は100℃〜500℃であり、焼き鈍し時間が15min〜3hである。
【0023】
図1および図3を参照して、本発明の実施例に係る発光素子の発光方法のフローチャートを説明する。当該発光方法は以下の工程を含む:
S11:上記の発光素子の製造方法に従って、発光素子10を得る;
S12:金属層14に対して、陰極線16を発射し、陰極線16の励起によって、金属層14と発光基体13との間に表面プラズモンが形成されることによって、発光基体13を発光させる。
【0024】
発光素子10は、前記の各種構造および組成などの特徴を有する。実際の応用において、工程S12を実現するには、電界放出ディスプレイまたは照明の光源を用いて、真空環境で、陽極が電解放出陰極に正の電圧を印加し、加速電界を形成する。陰極が陰極線16を放出する。この陰極線16により励起され、電子ビームはまず金属層を透過し、発光基体13の発光を誘発する。この一連の過程において、金属層14と発光基体13との界面に表面プラズモン現象が生じる。当該現象を介して、発光基体13の内部量子効率が大幅に向上し、その結果、発光材料の自然放出を増加させることができる。したがって、発光材料の発光効率が大幅に向上する。
【0025】
上述のように、発光基体13は2種類の構造を有する。第1種類の構造において、電子ビームは金属層14を透過し、発光ガラス中に存在するYSiO:Tbの発光を誘発する。表面プラズモンがYSiO:Tbを含有する発光ガラス表面と金属層14との間に形成されることによって、YSiO:Tb発光材料の発光を促進する。第2種類の構造において、電子ビームは金属層14を透過し、直接的にYSiO:Tb発光フィルムの発光を誘発し、表面プラズモンがYSiO:Tb発光フィルムと金属層14との間に形成されることにより、YSiO:Tbの発光を促進する。
【0026】
表面プラズモン(Surface Plasmon、SP)は、金属と媒体との界面に沿って伝播する波であり、その振幅が界面から離れるにつれ、指数関数的に減衰する。金属の表面構造が変更すると、表面プラズモンポラリトン(Surface plasmon polaritons、SPPs)の性質、分散関係、励起モード、カップリング効果などが大きく変化する。SPPsによって引き起こされる電磁場は、光波がサブ波長スケールで伝播することを制限できるだけでなく、光周波数からマイクロ波帯までの電磁場放射を生じかつ制御することができ、光伝播の制御を実現する。したがって、本発明の実施例は、当該SPPsの励起性能を利用して、発光基体の光学密度を増大し、その自然放出速度および効率を促進する;さらに、発光基体が発光する際に、表面プラズモンのカップリング効果を利用してカップリング共鳴が生じる。それによって、発光基体の内部量子効率が大幅に向上し、発光基体の発光効率が大幅に向上する。
【実施例】
【0027】
以下、複数の実施例に基づき、本発明の発光素子の異なる組成、製造方法、および性能などについて例示的に説明するが、本発明は、係る実施例等に何ら限定されるものではない。また、本発明の精神および原則内における置き換えや改良などの行為は本発明の特許請求の範囲にあたる。
【0028】
以下の各実施例において、市販のYSiO:Tb発光材料を直接的に用いることができる。
【0029】
実施例1
SiO:Tb蛍光粉体とガラス粉末(組成および当該組成のモル部は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)とを1:4の質量比で混合し、溶融し、YSiO:Tb発光材料を含有する発光ガラスが得られた。次いで、マグネトロンスパッタ装置を用いて、当該発光ガラスの表面に、厚さが2nmである金属銀層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、300℃で、30分間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例1の発光素子が得られた。
【0030】
前記製造された発光素子の発光スペクトルを分析した。電子銃から生じた陰極線を当該発光元素に衝突させ、電子ビームが金属層を透過し、YSiO:Tbを含有する発光ガラスを発光させ、図4に示す発光スペクトルが得られた。図4のスペクトルは、発光材料が緑光の発光材料であることを示す。図4において、曲線11は金属層不含の発光ガラスの発光スペクトルを示し、曲線12は、本実施例1で製造された金属構成のある発光素子の発光スペクトルを示す。図4から、金属層と発光ガラスとの間に表面プラズモンが生じたため、本発明の金属構成を有する発光素子の350nm〜700nmにおける発光積分強度が金属層不含の発光ガラスの同範囲内の発光積分強度の4倍であり、本発明に係る発光素子の発光性能が大きく向上されることが分かった。
【0031】
以下の各実施例において、得られた各発光素子の発光スペクトル、およびそれらから判断される発光強度効果ついては全て実施例1と類似しているため、当該記述を省略する。
【0032】
実施例2
SiO:Tb蛍光粉体とガラス粉末(組成および当該組成のモル部は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)とを1:19の質量比で混合し、溶融し、YSiO:Tb発光材料を含有する発光ガラスが得られた。次いで、マグネトロンスパッタ装置を用いて、当該発光ガラスの表面に、厚さが0.5nmである金属金層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、200℃で、1時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例2の発光素子が得られた。
【0033】
実施例3
SiO:Tb蛍光粉体とガラス粉末(組成および当該組成のモル部は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)とを7:13の質量比で混合し、溶融し、YSiO:Tb発光材料を含有する発光ガラスが得られた。次いで、マグネトロンスパッタ装置を用いて、当該発光ガラスの表面に、厚さが200nmである金属アルミニウム層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、500℃で、5時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例3の発光素子が得られた。
【0034】
実施例4
大きさが1×1cmの両面光学研磨したサファイア基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが100nmの金属マグネシウム層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、650℃で、5分間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例4の発光素子が得られた。
【0035】
実施例5
大きさが1×1cmの両面光学研磨した酸化マグネシウム基板上に、分子線エピタキシー法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが1nmの金属パラジウム層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、100℃で、3時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例5の発光素子が得られた。
【0036】
実施例6
大きさが1×1cmの両面光学研磨した酸化マグネシウム基板上に、噴霧熱分解法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが5nmの金属白金層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、450℃で、15分間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例6の発光素子が得られた。
【0037】
実施例7
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが20nmの金属鉄層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、50℃で、5時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例7の発光素子が得られた。
【0038】
実施例8
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが10nmの金属チタン層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、150℃で、2時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例8の発光素子が得られた。
【0039】
実施例9
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが50nmの金属銅層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、200℃で、2.5時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例9の発光素子が得られた。
【0040】
実施例10
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが150nmの金属亜鉛層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、350℃で、0.5時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例10の発光素子が得られた。
【0041】
実施例11
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが120nmの金属クロム層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、250℃で、2時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例11の発光素子が得られた。
【0042】
実施例12
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが40nmの金属ニッケル層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、80℃で、4時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例12の発光素子が得られた。
【0043】
実施例13
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが180nmの金属コバルト層を堆積して形成した。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、400℃で、1時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例13の発光素子が得られた。
実施例14
SiO:Tb蛍光粉体とガラス粉末(組成および当該組成のモル部は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)とを3:17の質量比で混合し、溶融し、YSiO:Tb発光材料を含有する発光ガラスが得られた。次いで、マグネトロンスパッタ装置を用いて、当該発光ガラスの表面に、厚さが0.5nmである金属金−アルミニウム層を堆積して形成した。この際、金−アルミニウム層において、金およびアルミニウムはそれぞれ約80質量%および約20質量%である。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、200℃で、1時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例14の発光素子が得られた。
実施例15
SiO:Tb蛍光粉体とガラス粉末(組成および当該組成のモル部は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)とを3:7の質量比で混合し、溶融し、YSiO:Tb発光材料を含有する発光ガラスが得られた。次いで、マグネトロンスパッタ装置を用いて、当該発光ガラスの表面に、厚さが15nmである金属銀−アルミニウム層を堆積して形成した。この際、銀−アルミニウム層において、銀およびアルミニウムはそれぞれ約90質量%および約10質量%である。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、200℃で、1時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例15の発光素子が得られた。
【0044】
実施例16
大きさが1×1cmの両面光学研磨した石英基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが10nmの金属銀−アルミニウム層を堆積して形成した。この際、銀−アルミニウム層において、銀およびアルミニウムはそれぞれ約80質量%および約20質量%である。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、150℃で、2時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例16の発光素子が得られた。
【0045】
実施例16
大きさが1×1cmの両面光学研磨した酸化マグネシウム基板上に、マグネトロンスパッタリング法を用いてYSiO:Tb発光フィルムを製造した。電子ビーム蒸発装置を用いて、当該発光フィルムの表面に、厚さが10nmの金属金−アルミニウム層を堆積して形成した。この際、金−アルミニウム層において、金およびアルミニウムはそれぞれ約90質量%および約10質量%である。その後、真空度が1×10−3Pa以上の真空環境において、150℃で、2時間焼き鈍し行った。次いで、室温まで冷却をすることによって、実施例17の発光素子が得られた。
【0046】
上述の各実施例において、微細組織を有する金属層14を発光基体13に設置し、当該金属層14が陰極線を照射されることにより発光基体13との界面に表面プラズモンを形成することができる。当該表面プラズモンの効果に起因して、発光基体13の内部量子効率が大幅に向上する。したがって、発光材料の自然放出を増加させることができる。故に、発光材料の発光効率が大幅に向上する。したがって、発光材料の発光効率が低いという課題を解決することができる。発光素子10は、発光性基体13および金属層14を含む単純な二層構造を有する。加えて、発光性基材13と金属層14との間に均一な界面が形成され、その結果、優れた発光の均一性および安定性が達成される。発光素子の発光方法において、金属層14に対して陰極線を発射するだけで、金属層14と発光基体13との間に表面プラズモンが形成される。これによって、発光基体13の発光効率が向上し、発光の安定性を高めることができる。
【0047】
本発明の実施例に開示される発光素子の製造方法において、金属層14を発光基体13に形成させるだけで、その後焼き鈍しを行うことによって、望ましい発光素子10を得ることができる。当該製造方法は、製造工程が簡単であり、幅広く生産応用が可能であり、特に、例えば電界放出ディスプレイなどの超高輝度および超高速動作の発光デバイスに応用できる。
【0048】
以上の実施例は本発明の好ましい実施例であり、本発明を限定されない。また、本発明の精神および原則内における置き換えや改良などの行為は本発明の特許請求の範囲にあたる。
【符号の説明】
【0049】
10 発光素子
13 発光基体
14 金属層
16 陰極線
11 金属層を含まない発光ガラスの発光スペクトル
12 実施例1の発光素子の発光スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光基体を含む発光素子であって、前記発光基体の表面に、金属微細組織を有する金属層が形成され、前記発光基体は、化学組成がYSiO:Tbである発光材料を含むことを特徴とする、発光素子。
【請求項2】
前記発光基体が、YSiO:Tb発光材料を含有する発光ガラスであり、前記ガラスの組成は、20NaO−20BaO−30B−30SiOであることを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光材料YSiO:Tbが、発光基体中においての質量パーセントが5%〜35%であることを特徴とする、請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記発光基体が、透明または半透明基板と、当該基板上に形成される化学組成がYSiO:Tbである発光フィルムとを含み、前記金属層は前記発光基体の表面上に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記金属層の金属が、金、銀、アルミニウム、銅、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、白金、パラジウム、マグネシウム、および亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種類の金属であることを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記金属層の厚さが、0.5nm〜200nmであることを特徴とする、請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
化学組成がYSiO:Tbである発光材料を含む発光基体を製造し;
前記発光基体の表面に金属層を形成し;および
前記発光基体および金属層を真空焼き鈍し処理を行うことによって、前記金属層が金属微細組織を形成し、冷却することによって前記発光素子を形成すること
を含む、発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記発光基体の製造は、YSiO:Tb発光材料と組成が20NaO−20BaO−30B−30SiOであるガラス粉末とを混合し、次いで1000〜1300℃の温度で溶融し、その後室温まで冷却し、発光材料YSiO:Tbを有する発光ガラスを得ることを特徴とする請求項7に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記発光基体の製造工程は、半透明または透明基板を基板として選択し、当該基板上にYSiO:Tb発光フィルムを形成することを特徴とする請求項7に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法に従って、発光素子を得て;および
前記金属層に対して陰極線を発射し、該陰極線の励起によって前記金属層と前記発光基体との間に表面プラズモンが形成されることによって、発光基体を発光させること
を含む、発光素子の発光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−503416(P2013−503416A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525839(P2012−525839)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073520
【国際公開番号】WO2011/022880
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512016928)海洋王照明科技股▲ふん▼有限公司 (14)
【Fターム(参考)】