説明

発光表示装置のマルチスキャン駆動方式

【課題】走査ライン間で、画像データにわずかな違いがあったとしても画質を損なうことなくマルチスキャン駆動を可能にする発光表示装置のマルチスキャン駆動方式を提供する。
【解決手段】複数の走査ライン4間において画像データを構成する一定数のビットのうち一部のビットを比較する走査ライン間データ比較部8と、走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、駆動する走査ラインを選択する走査ライン選択部10と、走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、信号ライン駆動部3によって駆動される画像データを保存する画像メモリ部9を備え、走査ライン間データ比較部8における比較結果において画像データが一致した場合、走査ライン選択部10により選択された複数の走査ラインを同時に駆動するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マトリクス状に並んだ発光素子で構成される発光表示装置を駆動するマルチスキャン駆動方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のマトリクス状に並んだ発光素子で構成される発光表示装置においては、1フレームの駆動期間を表示ユニット内の走査ライン数に応じて分割し、走査ラインを1ラインずつ駆動していく。
このとき、表示ユニット内の走査ライン数が多くなればなるほど走査ラインを駆動する時間が短くなる。
駆動する時間は長い方が発光効率は高くなるため、駆動時間を長くするために、特許文献1に示されるように、駆動しようとする複数の走査ライン間の画像データが同じだった場合、その走査ラインを同時に駆動する、マルチスキャン駆動方式が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−251799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマルチスキャン駆動方式は、駆動しようとする複数の走査ライン間の画像データを比較し、比較した結果が同じであれば、その走査ラインを同時に駆動する。
ただしこの場合、走査ライン間で画像データが一致していなければならず、画像データにわずかな違いがあった場合、マルチスキャン駆動を行うことができない。その結果、映像表示時に、実際にマルチスキャン駆動を行う確率は著しく低くなる。
また、走査ライン間の画像データにわずかな違いがある場合に、この方法でマルチスキャン駆動を行った場合、駆動した発光素子は走査ライン間で同じ輝度を示すことから、実際の画像データとは異なる表示となり、画質の劣化につながる。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、走査ライン間で、画像データにわずかな違いがあったとしても画質を損なうことなくマルチスキャン駆動を可能にする発光表示装置のマルチスキャン駆動方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、発光素子がマトリクス状に配列された表示ユニット部と、前記表示ユニット部の走査ラインを駆動する走査ライン駆動部と、前記表示ユニット部の信号ラインを駆動する信号ライン駆動部と、複数の走査ライン間において画像データを構成する一定数のビットのうち一部のビットを比較する走査ライン間データ比較部と、前記走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、駆動する走査ラインを選択する走査ライン選択部と、前記走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、前記信号ライン駆動部によって駆動される画像データを保存する画像メモリ部を備え、前記走査ライン間データ比較部における比較結果において前記画像データが一致した場合、前記走査ライン選択部により複数の走査ラインを同時に駆動するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、走査ライン間で、画像データにわずかな違いがあったとしてもマルチスキャン駆動を行うことができ、画質を損なうことなく発光効率の高い画像表示装置を
実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における表示ユニット部の概略構成を示す図である。
【図3】画像データである階調データのビット構成を示す説明図である。
【図4】実施の形態1における走査ラインの駆動状態を示す説明図である。
【図5】実施の形態1における走査ライン間データ比較部の制御フローの一例を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2の表示ユニット部の概略構成を示す図である。
【図7】実施の形態2の全体構成を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3の表示ユニット部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1、2に基づいて説明する。
図1において、表示ユニット部1は、表示ユニット部1の信号ライン2が信号ライン駆動
部3に接続され、走査ライン4が走査ライン駆動部5に接続され、信号ライン駆動部3と走査ライン駆動部5の選択により発光素子6が駆動され、映像表示を行う。
ここで、映像表示の基となる画像データは外部からコントローラ7に入力後、走査ライン間データ比較部8において、画像データの比較が行われ、比較の結果に応じて画像データが画像メモリ9に保存される。
また、画像データの比較の結果に応じて走査ライン選択部10に、駆動する走査ラインの選択情報が入力され、その情報に基づいて走査ラインの駆動が行われる。
【0010】
映像表示の基となる画像データは外部からコントローラ7に入力後、走査ライン間データ比較部8において、画像データの比較が行われる。この時の動作について説明する。
図2において、表示ユニット部1に配列された発光素子6は、表示ユニット部1内の各信号ラインを2、2、・・・、2とし、走査ラインを4、4、・・・、4とすると、信号ライン2と走査ライン4によって駆動される発光素子6は6abと表される。
ここで、1つの発光素子を駆動するための基となる画像データは、図3のように一定のビット(bit)数で構成された階調データ11で表され、発光素子6abに対する階調データは11abで表される。また、これらの階調データは上位cビットと下位dビットに分割されている。
走査ライン間データ比較部8では、任意の走査ライン4と4において、それぞれの走査ラインの同じ信号ラインに属する画像データ同士を比較する。
つまり、走査ライン4、4に含まれる発光素子のうち、信号ライン2に属する発光素子6eg、6fgがあり、発光素子6eg、6fgに対応する階調データ11eg、11fg同士を比較する。また、画像データの比較はそれぞれの階調データの上位cビットのみ比較を行う。
【0011】
なお、走査ライン間の画像データの比較において、仮に画像データを12ビットとし上位6ビットと下位6ビットに分け、複数の走査ラインにおいて、その上位6ビットが同じであればマルチスキャンを行うとした場合、例えば階調データ2048も2111も、同じく2048として駆動されてしまい、この時の差はおよそ3%となる。
また、上位4ビットと下位8ビットに分けたときの差はおよそ12%となり、マルチスキャンの頻度を増やすために、比較用の上位ビット数を少なくすればするほどこの差は大きくなる。
【0012】
このような画像データの比較をその走査ライン上の全ての発光素子について行うが、比較の結果、一致しなかった場合、各階調データ11は画像メモリ9中の走査ラインメモリ12に保存される。
このとき、走査ラインメモリ12に保存された階調データを基に、信号ライン駆動部3は表示ユニット部1の駆動を行う一方、走査ライン駆動部5は、走査ライン選択部10の選択に応じて表示ユニット部1の走査ライン4、4を1ラインずつ駆動する。
【0013】
一方、走査ライン4上の全ての発光素子の階調データ11eg(1≦g≦m)が、比較した他の走査ライン4上の階調データ11fg(1≦g≦m)と一致した場合、走査ライン間データ比較部8において、走査ライン4と走査ライン4の画像データが一致したと判断する。
このとき走査ライン4eもしくは4上の発光素子のそれぞれの階調データの上位cビッ
トは、画像メモリ9中の走査ライン共通メモリ13に保存され、下位dビットは、走査ライン4、4毎に別々に、階調補正メモリ14に保存される。
画像メモリ9に保存された画像データを基に、信号ライン駆動部3は、表示ユニット部1の信号ライン2を駆動する。
これと同時に、走査ライン選択部10においては、走査ライン4e、4を同時に選択し
、走査ライン駆動部5は走査ライン4e、4を同時に駆動する。
【0014】
走査ライン4の駆動の様子を図4に示す。
図4(a)は走査ライン間で画像データが一致するラインが無かった場合の駆動の様子、図4(b)は走査ライン4と4、4と4、・・・4m−1と4において、それぞれ画像データが一致したときの駆動の様子を表す。
すなわち、ある画像データはその上位cビットに対して、走査ラインの任意のライン間での比較が行われ、その結果、走査ライン間のデータが全て異なる場合、図4(a)のように、走査ライン毎に走査ラインメモリ12に保存され、1ラインずつ駆動される。
これに対し、走査ライン1と2、走査ライン3と4、・・・、走査ラインm−1とmにおける画像データの上位cビットが同じであった場合、図4(b)のように、それぞれのラインの画像データの上位cビットは走査ライン共通メモリ13に保存され、このデータを元に、各走査ラインを駆動する。
またこのときデータの下位dビットは階調補正メモリ14に保存され、駆動期間中の補正
期間においては、このデータを元に駆動が行われる。
【0015】
図4(b)において、1フレームの駆動期間は複数ライン走査期間と補正期間に分割されており、複数ライン走査期間では、画像データが一致した走査ラインを同時に選択し、画像メモリ9の中の走査ライン共通メモリ13の中のデータを基に、信号ラインを駆動する。
このとき第1走査ラインの駆動期間は、各走査ラインを1ラインずつ選択した場合の走査ライン4の駆動期間と走査ライン4の駆動期間を足し合わせた期間になり、駆動期間が長くなる。
また、補正期間では、各走査ラインを1ラインずつ選択し、画像メモリ9の中の階調補正メモリ14の中のデータを基に、信号ライン2を駆動する。
このような駆動を行うことで、複数の走査ラインを同時に駆動した場合でも、同時に駆動した走査ライン間の階調データの差を表現することができ、逆に言えば、複数の走査ライン間で、多少階調データが異なる場合でも、画質を損なうことなくマルチスキャンを実現することが可能となる。
【0016】
図4(b)の図は、走査ライン4と4、4と4、・・・、4m−1と4においてそれぞれの画像データが一致したときの駆動の様子を表しているが、3つ以上の走査ラインの画像データが一致した場合や、全走査ラインの中で、2つの走査ラインのみの画
像データが一致した場合でも、同様の制御を行うことで、マルチスキャンを行うことができる。
特に、同時に選択する走査ラインの数が増えるほど、その走査ラインの駆動期間は長くなり、発光効率は高くなる。
【0017】
そこで、マルチスキャン時に、同時に選択する走査ラインの数がなるべく多くなるよう比較制御を行う。
図5は走査ライン4の比較制御フローの一例であり、16ライン間の画像データを比較した結果、それぞれの画像データが一致したとき、16ラインを同時に駆動する。
16ライン間の画像データが一致しない場合には、8ライン間の画像データを比較し、それぞれの画像データが一致したとき、8ラインを同時に駆動する。
8ライン間の画像データが一致しない場合には、順次4ライン、2ラインについて同様の手順で比較、駆動を行う。
そして、最終的に2ライン間においても画像データが一致しない場合には、1ラインづつ駆動する。
なお、1フレームの駆動期間の中で、複数ライン走査期間と補正期間は必ずしも1つずつでなくても良い。
【0018】
以上のように、この発明の実施の形態1によれば、発光素子がマトリクス状に配列された表示ユニット部と、前記表示ユニット部の走査ラインを駆動する走査ライン駆動部と、前記表示ユニット部の信号ラインを駆動する信号ライン駆動部と、複数の走査ライン間において画像データを構成する一定数のビットのうち一部のビットを比較する走査ライン間データ比較部と、前記走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、駆動する走査ラインを選択する走査ライン選択部と、前記走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、前記信号ライン駆動部によって駆動される画像データを保存する画像メモリ部を備え、前記走査ライン間データ比較部における比較結果において前記画像データが一致した場合、前記走査ライン選択部により複数の走査ラインを同時に駆動するようにしたもので、このように構成することにより、走査ライン間で、画像データにわずかな違いがあったとしてもマルチスキャン駆動を行うことができ、画質を損なうことなく発光効率の高い画像表示装置を実現することができる。
【0019】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、階調補正メモリ14により走査ライン毎のわずかな階調のズレを補正する場合について述べたが、表示ユニット部において、図6に示すように、発光素子間の信号ライン2に抵抗成分が発生する場合がある。
このとき、例えば走査ライン4と走査ライン4を同時に駆動する場合、信号ライン駆動部から信号ライン2に出力された電流は、発光素子6a1と6amに分流することになるが、それぞれの発光素子6a1、6amと信号ライン駆動部3との間には異なる抵抗成分があるため、分流したそれぞれの電流値は異なる値になる。
その結果、同時に駆動した2つの発光素子の間には発光時の明るさに差が発生する。この差を吸収するため、この実施の形態2では、図7に示すように画像メモリ9内に、同時に選択する走査ラインの組み合わせに応じて走査ライン間の補正を行うための補正データを保存した走査ライン間補正メモリ15を設ける。
【0020】
この時の駆動方法を図4(b)に基づいて説明すると、複数ライン走査期間においては走査ライン上の階調データが一致する2つ以上の走査ラインを同時に駆動し、補正期間においては、階調補正メモリ14のデータに加えて、走査ライン間補正メモリ15の補正データに基づいて補正を行うことで、信号ライン2上の発光素子6間に発生する抵抗成分に左右されることなく、マルチスキャンの駆動が可能となる。
【0021】
実施の形態3.
実施の形態2において、表示ユニット部1内の発光素子6間の信号ライン2上の抵抗成分を補正する方法について述べたが、この実施の形態3では、表示ユニット部1において、図8に示すように、走査ライン4、4、・・・、4を2つ毎のグループ4・4、4・4、・・・、4m−1・4に分け、各グループの走査ラインにおいて2つの発光素子6、6が対称になるように配置し、マルチスキャン時に、走査ライン4と4、走査ライン4と4、・・・、走査ライン4m−1と4の組み合わせで駆動を行う。
この場合、それぞれの組み合わせにおける2つの発光素子と信号ライン駆動部間のそれぞれの抵抗成分はほぼ同じ値になるため、抵抗成分の差に起因する発光の明るさの差を軽減することが可能となる。
なお、図8には走査ラインを2つ毎のグループに分けた場合を示したが、3つ毎以上のグループに分けても良い。
【符号の説明】
【0022】
1:表示ユニット部
2:信号ライン
3:信号ライン駆動部
4:走査ライン
5:走査ライン駆動部
6:発光素子
7:コントローラ
8:走査ライン間データ比較部
9:画像メモリ
11:階調データ
12:走査ラインメモリ
13:走査ライン共通メモリ
14:階調補正メモリ
15:走査ライン間補正メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子がマトリクス状に配列された表示ユニット部と、前記表示ユニット部の走査ラインを駆動する走査ライン駆動部と、前記表示ユニット部の信号ラインを駆動する信号ライン駆動部と、複数の走査ライン間において画像データを構成する一定数のビットのうち一部のビットを比較する走査ライン間データ比較部と、前記走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、駆動する走査ラインを選択する走査ライン選択部と、前記走査ライン間データ比較部における比較結果に基づいて、前記信号ライン駆動部によって駆動される画像データを保存する画像メモリ部を備え、
前記走査ライン間データ比較部における比較結果において前記画像データが一致した場合、前記走査ライン選択部により複数の走査ラインを同時に駆動するようにしたことを特徴とする発光表示装置のマルチスキャン駆動方式。
【請求項2】
前記走査ライン間データ比較部は、前記画像データの一部のビットとして上位ビットのみを比較し、
前記画像メモリ部は、
前記走査ライン間データ比較部における比較結果が一致した場合の前記画像データの上位ビットを保存する走査ライン共通メモリと、
前記走査ライン間データ比較部における比較結果が一致した場合の前記画像データの下位ビットを保存する階調補正メモリを有し、
前記走査ライン間データ比較部における比較結果において前記画像データが一致した場合、前記走査ライン共通メモリ及び階調補正メモリに保存されたデータを前記信号ライン駆動部に供給することを特徴とする請求項1記載の発光表示装置のマルチスキャン駆動方式。
【請求項3】
1フレームの駆動期間の中に、2ライン以上の走査ラインを同時に駆動する複数ライン走査期間と、走査ラインを1ラインずつ駆動し、走査ライン間の補正を行う補正期間を設け、前記複数ライン走査期間において前記走査ライン共通メモリに保存されたデータを前記信号ライン駆動部に供給すると共に、前記補正期間において前記階調補正メモリに保存されたデータを前記信号ライン駆動部に供給することを特徴とする請求項2記載の発光表示装置のマルチスキャン駆動方式。
【請求項4】
前記画像メモリ部は、同時に駆動される走査ラインの組み合わせに応じて、前記発光素子と前記信号ライン駆動部との抵抗成分の差に起因する前記発光素子の明るさを補正するための補正ダータを保存した走査ライン間補正メモリを有することを特徴とする請求項2または3記載の発光表示装置のマルチスキャン駆動方式。
【請求項5】
前記表示ユニット部は、前記走査ラインを2つ毎以上のグループに分けられ、各グループの走査ラインにおいて前記発光素子が対称になるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の発光表示装置のマルチスキャン駆動方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−109198(P2013−109198A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254771(P2011−254771)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】