説明

発光表示装置

【課題】明るく、眩しすぎず、見る方向により変化し、優れた意匠性を有する発光表示装置を容易に得ること。
【解決手段】透明板の少なくとも一断面に、前記透明板内部を透過する光を発する光源装置を複数設け、前記透明板の一表面に任意の形状のレンズフィルムを貼り合わせてなること、前記レンズフィルムはシリンドリカルレンズフィルムであって、前記シリンドリカルレンズフィルムの表面を形成する半円柱の柱方向が、前記光源装置からの光線の方向と略直交すること、光源装置にLEDを用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業施設やイベント、店舗、パーティション、事務機器、家具什器、備品などに使われる発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の利用分野における発光表示装置は、ネオン管により文字や絵の形にそのまま光らせたものや、各種電球・蛍光灯などを用いて発光しないサインボードを照らすことにより目立たせたもの、もしくは半透明の板に各種サインを取り付けて、内部に電球や蛍光灯を入れることでサインを光らせて目立たせる内照式のサインボードなどであった。また、更に目立たせたい場合は、これらの発光装置の色を変えたり点滅させたり、機械的に動かすなどの工夫を凝らしている。
【0003】
ここ数年は、これらのものから発光体として有機ELや発光ダイオード(以下、LEDとする。)を用いたものが増えてきた。特にLEDは、省エネ、高寿命の点からも大変注目されており、性能の向上や普及が目覚ましい。
【0004】
しかしながら、LEDが小さな点光源であり、通常の電球よりも指向性が高いために、特定の方向から見た時は非常に眩しく、チカチカしてしまう反面、1つ1つの光量は小さいことから照明などの広範囲を照らす場合には、LEDの数を増やしたり、拡散板などを用いて点光源を面光源のようにみせたりするなどの工夫を凝らしているのが実情である。また各種サインやインテリアには、ガラス板やアクリル板にレーザー彫刻を施したものに、端部から光を取り入れて彫刻した部分を光らせたものも見かけるようになってきたが、非常に加工に時間と費用がかかる。また、彫刻した部分が光るので細いラインなどには向いているが、大面積を光らせたい場合は相当な量を彫らないとならない。彫刻することから厚みや形状の制約も受けやすい。導光インキを刷って光を取り出す手法もあるが、目に留まるほどの光取り出し効果を得るのは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、明るく、眩しすぎず、見る方向により変化し、優れた意匠性を有する発光表示装置を容易に得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、透明板の少なくとも一断面に、前記透明板内部を透過する光を発する光源装置を複数設け、前記透明板の一表面に任意の形状のレンズフィルムを貼り合わせてなることを特徴とする発光表示装置である。
【0007】
またその請求項2記載の発明は、前記レンズフィルムはシリンドリカルレンズフィルムであって、前記シリンドリカルレンズフィルムの表面を形成する半円柱の柱方向が、前記光源装置からの光線の方向と略直交することを特徴とする請求項1記載の発光表示装置である。
【0008】
またその請求項3記載の発明は、前記光源装置はLEDからなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の発光表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明はその請求項1記載の発明により、任意の大きさ・形状のレンズフィルムを貼り合せた板に、一断面から複数の光を透明板内部に透過させることで、レンズフィルムが貼ってある部分全体を光らせつつ、それとは異なった形の光もレンズフィルムから出すことが可能であり、これまでにない照明意匠が得られる。また、見る角度により光る位置が変化するため機械的な稼働をさせなくても立体的に見える。
【0010】
また本発明はその請求項2記載の発明により、シリンドリカルレンズを使用することで、フィルム全体の発光とフィルム内にライン状の光がハッキリ見えるようになる。
【0011】
また本発明はその請求項3記載の発明により、光源装置にLEDを用いることで省電力でありながら明るく、チカチカせず、意匠性の高い発光表示装置を安価に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の発光表示装置の一実施例を写した写真である。
【図2】本発明の発光表示装置の一実施例を別の角度から写した写真である。
【図3】従来の発光表示装置の一例を写した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明における透明板としては、取り入れた光を効率的に透過させることができるように、高透明であるガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂等でできた板が好適である。塩化ビニル樹脂など板の場合は各種の添加剤が含まれていることが多く、好ましくない。
形状としては、通常は薄型矩形の平面板状が好適に用いられるが、後述するレンズフィルムが貼り合せられる形状ならば、平面板ではなく曲面板であっても使用可能である。
【0014】
樹脂製透明板を作製する方法としては、押し出し法、キャスト法、カレンダー法など種々の方法があるが、作製方法により寸法精度や切削・接着性、曲げ加工性、硬度などに差が出てくるため、使用用途によって作製方法を選択することが好ましい。また、後述する光源装置を設けた一断面は、断面の状態により透明板中に光を透過できる光量が変化する。効率的に光を取り入れるためには、断面が透明になる位に研磨することが好ましい。逆に適当に断面を粗らしておくことで意図的に透過させる光量を制限させておくことも可能である。
【0015】
透明板を透過した光は、光源装置を設けた一断面とは異なる他の断面など、後述するレンズフィルム以外の部分から出てくることとなる。よって、透明板のその他の断面には適宜、高反射率の材料を貼り合わせたり、光を透過させない材料で封止したりすることが好ましい。曲面板に対して光を透過させた場合には、曲率によっては臨界角を超えてしまうため、光を入射した断面と透明板上で相対する面から光が出てしまう。よってこのような光が出てしまう場所にも適宜、高反射率の材料を貼り合わせたり、光を透過させない材料で封止したりすることが好ましい。
【0016】
本発明におけるレンズフィルムとしては集光・拡散の効果が得られるものを任意に使用することができるが、シリンドリカルレンズを使用してレンズフィルム全体の発光とレンズフィルム内にライン状の光がハッキリ見えるようにしたものが好適である。具体的にはピッチ100〜200μm、高さ50〜150μmの連続する半円柱形状とするのが好ましい。ピッチと高さが大きい、即ち大きなレンズ形状にしすぎると、光源の形がそのままレンズに映ってしまい、集光・拡散の効果が得られ難い。また、レンズフィルム全体がうまく発光しない。逆にピッチと高さが細かすぎると、レンズ形状が小さくなり、レンズ表面が平滑に近づくことになる。これは平滑な通常のフィルムに近づくことを意味するので、これも集光・拡散の効果が得られにくくなくなってしまう。
【0017】
レンズフィルムの作製には、レンズ形状の賦形を含めて1種の材料で作ってしまう方法とベースとなるフィルムとレンズ形状を賦形したものの2層以上の構造で作ることが可能となる。レンズフィルムを2層以上で作製する際に使用する基材としては、種々のフィルムを使用することができるが、フィルム表面から光を効率的に取り出せるようにするため、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等でできたフィルムを使用するのが好ましい。またポリエチレンテレフタレート樹脂ならば2軸延伸の高透明フィルムがより好適である。各種フィルムは、任意の厚みのものが使用できるが、レンズ自体の厚みよりもフィルムが厚い方がフィルムの腰を活かしてレンズ加工し易く、逆にフィルムが厚くなりすぎるとフィルムカットが困難になることから、厚くするにも限界がある。このことから、50μm〜200μmが好ましい。レンズ形状を賦形するのに使用する材料としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を使用することが好ましく、両者を併用することも可能である。また、レンズフィルムの集光・拡散効果が得られれば着色剤を添加することも可能である。
【0018】
このようにして得たレンズフィルムを、透明板の表面に透明粘着剤などにより、空気が入らないようにしっかり貼り合わせる。貼り合わせる面は、意匠性を考慮すると表面側が好適である。しかしながら、意図的に裏面側とすることでレンズフィルムを化粧板で保護することができ、レンズフィルムが剥がされたりレンズフィルムに埃や水などが付着したりするのを防止することができる。
【0019】
本発明における光源装置としては、LEDが好適である。色については特に限定しないが、白色単色であっても十分な効果が得られるが、他の単一色あるいは複数色からなるものを並べて配しても良い。
【0020】
光源装置を配する方法としは、具体的には、透明板の一断面に、複数の光源装置を等間隔に配して、複数の光線が透明板中を平行して透過するようにする。そして適宜の形状のシリンドリカルレンズからなるレンズフィルムを、その連続する半円柱形状の柱方向が光線と直交方向になるように配することで、レンズフィルム全体が光り、かつレンズフィルム上を透過する光線部分も別途光って見えるようになる。さらにレンズフィルム上を透過する光線部分は見る角度によってその位置が変化して見えるようになり、立体的な意匠性を有するものとなる。光源装置の間隔は、透明板やレンズフィルムの形状にもよるが、5〜15mm程度が好適である。
【実施例1】
【0021】
<レンズフィルムと粘着剤>
両面易接着付き高透明PETフィルム(東洋紡製75μmPET)の一方の面に、アクリル系紫外線硬化型樹脂(ADEKA製)の硬化物にて、単位レンズのピッチ140μm,高さ80μmのシリンドリカルレンズ郡を形成した。
シリンドリカルレンズ付きフィルムの裏面に、アクリル系粘着剤を塗布してPETセパレーターをかぶせて、粘着剤付きレンズフィルムを作製した。
【0022】
<透明板>
キャスト法で作製した3mm厚のアクリル板をカットし、端部から光を効率的に取り入れ易いように、紙やすり#400、#600、#1000番で順番にカット面を研磨した。アクリル板表面に粘着付きレンズフィルムを文字の形に切り抜いたものを空気が入らないように貼り付けた。
【0023】
<光源装置>
アクリル板をカット・研磨した面の一断面に、白色LED(フレキシブルテープ基板タイプ サイドLED 三菱電機オスラム製)を、断面巾内にLEDの光る部分が入るように取り付けた。この時、LEDを取り付ける一断面が、シリンドリカルレンズの半円柱の柱方向とLEDの光線方向が直交する面になるようにした。LEDと電源を接続し、本発明の発光表示装置を完成させた。
【0024】
<比較例1>(導光インキ印刷付の発光表示装置)
キャスト法で作製した3mm厚のアクリル板をカットし、端部から光を効率的に取り入れ易いように、紙やすり#400、#600、#1000番で順番にカット面を研磨した。アクリル板表面にシルクスクリーン法にて導光インキで文字を印刷し、導光インキ印刷付きのアクリル板を作製した。実施例1と同様にLED、電源を取り付けて発光表示装置を完成させた。
【0025】
結果を図1、図2に実施例1の写真を、図3に比較例1の写真を示す。
実施例1では「TOP」の文字全体が光って見える。さらに「TOP」の文字の中に縦方向に集光・拡散された光が見え、図1と図2の違いから分かるように、見る角度によって光る場所が変わっている。また、明るい所でも十分見られる明るさであった。比較例12では、「TOP」の文字全体がぼんやり光る程度であり、明るい所でははっきり見ることが出来ないものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の発光表示装置は、商業施設やイベント、店舗、パーティション、事務機器、家具什器、備品などに使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明板の少なくとも一断面に、前記透明板内部を透過する光を発する光源装置を複数設け、前記透明板の一表面に任意の形状のレンズフィルムを貼り合わせてなることを特徴とする発光表示装置。
【請求項2】
前記レンズフィルムはシリンドリカルレンズフィルムであって、前記シリンドリカルレンズフィルムの表面を形成する半円柱の柱方向が、前記光源装置からの光線の方向と略直交することを特徴とする請求項1記載の発光表示装置。
【請求項3】
前記光源装置は発光ダイオードからなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の発光表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−209332(P2011−209332A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73983(P2010−73983)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】