説明

発光装置、及び発光シート

【課題】発光可能時間に制約がなく、どこにでも自由に貼着できる発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置1は、自発光性の発光部12と、この発光部12を覆う透光性カバー部13とを備えている。発光部12は、発光基体と、この発光基体にエネルギーを供給する放射性物質とを含んでおり、発光装置1の裏面側には、貼着層14と、保護シート15とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光性の発光部を備えた発光装置、及び発光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の場所を自動的に夜間照明したいという要望がある。そのような要望、用途向けの製品の一つに、蓄光性を有した発光シートがある。このような発光シートは、所望の場所に貼付して使用される。このような発光シートに関する先行技術の例として、例えば次の特許文献1、2があり、これらには、建築物や通路に貼付して使用される蓄光フィルムの発光時間を延ばし、また発光輝度及び残光輝度を高くするための技術が開示されている。また特許文献3には、車両の運転者等の視線誘導シートに用いられる発光シートが提案されており、基材シートと、この基材シート表面に互いに接触しないように独立して多数凸状に設けられた発光部とからなる発光シートが開示されている。
【0003】
また、所望の場所を必要時に照明する照明器具としては、次の非特許文献1に記載されているような、人体を検知すると自動的に点灯する、いわゆるセンサー付きライト等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-116522号公報
【特許文献2】特開平11-109864号公報
【特許文献3】特開2001-092393号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.takex-eng.co.jp/ja/products/item_contents/1448
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蓄光性を有した発光シートのような製品では、発光可能時間に大きな制約がある上、蓄光可能な時間帯がある野外のような環境でなければそもそも利用することができない。また、照明器具は電力さえ供給されればそのような問題はないが、電力の供給可能な場所に設置しなければならず、また配線が必要であり施工に手間もかかる。
【0007】
そこで、本発明は発光可能時間に制約がなく、どこにでも自由に貼着できる安全な発光装置及び発光シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による発光装置は、自発光性の発光部と、この発光部を覆う透光性カバー部とを備え、前記発光部は、発光基体と、この発光基体にエネルギーを供給する放射性物質とを含んでいる。
【0009】
前記発光部は、鉛からなる基板上に形成されていてもよい。
【0010】
前記透光性カバー部は、高分子ポリマーで形成されていてもよい。
【0011】
前記透光性カバー部は、中空層が前記発光部を覆うように形成されており、前記中空層には水が充填されていてもよい。
【0012】
前記発光装置の裏面側には、該装置を壁面に貼着するための貼着層と、この貼着層を使用時まで保護する保護シートが設けられていてもよい。
【0013】
前記放射性物質は、トリチウムを含んでいてもよい。
【0014】
本発明による発光シートは、前記発光装置を複数備え、それらが平面的に連設された構造になっている。
【0015】
前記発光シートは、発光色を異ならせた少なくとも2種類の発光装置で構成され、かつその複数種類の発光装置は、所望の図案となるようにモザイク的に配置されていてもよい。
【0016】
前記発光シートは、隣接した発光装置間に切込溝が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による発光装置は、自発光性の発光部を備えているので、発光可能時間に制約がなく、常に暗い場所でも使用できる。
【0018】
基板が鉛で形成された構成では、発光部から放出されたガンマ線やX線を遮断できるので、安全性が高くなる。
【0019】
透光性カバー部が柔軟な高分子ポリマーで形成された構成では、発光装置が破損しにくい。
【0020】
発光装置の裏面側に、壁面に貼着するための貼着層と、この貼着層を使用時まで保護する保護シートとが設けられた構成では、発光装置を所望の場所に貼着できるので、使い勝手がよい。
【0021】
発光部にトリチウムを含んでいる構成では、トリチウムが弱いベータ線しか放出しないので、安全性が高く、そのため透光性カバー部を薄くして装置が小型化できる。
【0022】
本発明による発光シートは、複数の発光装置を連設したものなので、一度の作業で多数の発光装置を壁面にまとめて貼着できる。したがって、発光装置を1一つずつ貼着していくよりも手間が軽減できる。
【0023】
発光シートが発光色を異ならせた少なくとも2種類の発光装置で構成され、それらの発光装置が所望の図案となるようにモザイク的に配置されている場合は、発光シートの美観が優れているので、壁面の装飾に利用できる。
【0024】
発光シートの隣接した発光装置間に切込溝が形成されている構成では、発光装置を適宜切断分離することで、発光シートのサイズが調節できる。また、切断分離した個々の発光装置も利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)〜(c)は、本発明による基本的な発光装置の斜視図であり、いずれも長方体形状を有している。
【図2】は、本発明による他の発光装置の斜視図である。
【図3】(a)は、本発明による他の発光装置の斜視図であり、(b)はその発光装置の立面図である。
【図4】(a)は、本発明による他の発光装置の斜視図であり、(b)はその発光装置の立面図である。
【図5】(a)は、本発明による他の発光装置の斜視図であり、(b)は、その発光装置を使用したキーホールの平面図である。
【図6】は、本発明による発光シートの斜視図である。
【図7】は、本発明による他の発光シートの斜視図である。
【図8】(a)は本発明による他の発光シートの平面図、(b)は、その発光シートから発光装置のそれぞれを切断分離して壁面に貼着させた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1(a)の例は、本発明による基本的な発光装置1であって、基板11と、自発光性の発光部12と、発光部12を覆う透光性カバー部13とを備えている。
【0027】
基板11は、発光部12を形成するための土台であり、どのような形状としてもよい。例えば、透光性カバー部13の上下面よりも小さな寸法の板体でもよい。基板11は、金属材、ガラス材、あるいは樹脂材等で形成すればよい。なお、基板11の発光部12を形成する部分は凹形状としてもよい。
【0028】
発光部12は、各種蛍光体や蓄光体よりなる発光基体と、この発光基体にエネルギーを供給する放射性物質とを含んでいる。この放射性物質は特に限定されないが、弱いベータ線を放出するトリチウム化合物が好適である。トリチウムの半減期は13年余りであるため、トリチウムを用いた発光装置1は10年程度の寿命を有することになる。なお、ベータ線を放出する他の元素には、例えばプロメシウムがあり、その化合物も本発明で利用できる。
【0029】
発光基体の発光は、発光基体を構成する特定原子中で、外部から与えられたエネルギーによって電子の励起が生じ、その電子が基底状態に戻るときに、エネルギー差に相当する波長の光を放出する現象である。基底状態と励起状態とのエネルギー差は、発光基体の組成、構造に固有なので、発光色は発光基体の種別毎に異なる。放射性物質は発光基体にエネルギーを常に供給するので、発光部12は自発光性を有する。
【0030】
蛍光体の例としては、亜鉛、カドミウムなどの酸化物、硫化物、白金シアン錯塩、アニリンなどがある。
【0031】
一方蓄光体は、蓄光して燐光を発する物質であるが、例えば硫化亜鉛、アルミン酸ストロンチウム、あるいはリン酸アルミニウムなどがある。このような物質を用いれば、昼間の環境光を蓄光することもできるので、蛍光体を使った場合よりも輝度が高くなって目立つという効果がある。
【0032】
なお、発光基体とトリチウム化合物とを含んだ自発光塗料が腕時計の夜光塗料として利用されていたが、本発明の発光部12として用いてもよい。
【0033】
透光性カバー部13は、透明、あるいは有色透光性のガラス材や樹脂で形成できるが、柔軟な高分子ポリマーで形成するのが望ましい。そうすれば、発光装置1が破損しにくくなる。発光部12を構成する放射性物質としてトリチウム化合物を選択した場合、トリチウム化合物が放出するベータ線は低エネルギーで弱いため、透光性カバー部13が薄くても遮蔽できる。なお、特開昭54-116970号公報にあるように、水素を含有しない樹脂によって透光性カバー部13を形成してもよい。
【0034】
このような発光装置1の製造を簡単に説明すると、所定の溶剤に発光基体と放射性物質とを分散させたペーストを用意し、そのペーストを基板11の中心部に塗布する。基板11に塗布されたペーストは溶剤の蒸発によって固化して発光部12となる。その後、発光部12が形成された基板11を透光性カバー部13によって封止すれば、発光装置1が得られる。透光性カバー部13は、予め形成されたものを基板11に接着して固定してもよいし、基板11を溶融状態の高分子ポリマーに水没させた状態にして、その高分子ポリマーを固化させることによって形成してもよい。
【0035】
発光装置1の裏面側には、該装置を壁面等に貼着するための貼着層14と、この貼着層14を使用時まで保護する保護シート15が設けられている。保護シート15は剥離紙であってもよい。貼着層14及び保護シート15は、特に種別が限定されることはなく、例えば、両面テープとして市販されているようなものを用いてもよい。また壁面は、建物内外の壁面、家具等の壁面、家電品の壁面等、どのようなものの壁面でもよい。
【0036】
また、図1(b)の例では、基板11の広さを透光性カバー部13の上面と同じにしている。すなわち発光装置1は、基板11の表面と同じ広さの透光性カバー部13によって被覆された構造になっている。
【0037】
図1(c)の例では、ガラス材、あるいは樹脂からなる基板11の表面に、発光部12を形成して、透光性カバー部13を被せた構造になっている。この構造では、基板11と透光性カバー部13は同じ材質としてもよい。
【0038】
図2の例では、発光装置1の形状を、円盤体としている。基本的な構造は、図1(a)の例と同様である。また、発光装置1の形状は、長方体や円盤体に限定されず、どのような形であってもよい。
【0039】
上記のような発光装置1は、例えば、扉のキーホール、照明のスイッチや引き紐の先端等、夜間に手探りでその場所を探すような所に貼着して使用する。そうすれば、常に発光するので、暗くてもすぐにその場所が発見できる。また、発光装置1はワンポイントの装飾用品として用いてもよい。
【0040】
以下、本発明の応用例を説明する。
【0041】
図3(a)、図3(b)の例は、図1(b)に示した発光装置1の変形で、透光性カバー部13の内部には、中空層16が発光部12を覆うように形成されており、中空層16には水が充填されている。この水は、放射性物質から放出される中性子線を減速、遮断する効果がある。このようにすれば、中性子線が遮断されるので安全性が高くなる。また基板11を鉛とすれば、ガンマ線やX線も遮断できるので、安全性が更に高くなる。なお、図3(b)は、図3(a)に示した発光装置1の立面図である。
【0042】
図4(a)、図4(b)の例は、図1(c)に示した発光装置1の変形で、基板11、透光性カバー部13はいずれも高分子ポリマーで形成され、更にそれらの内部には、中空層16が発光部12を覆うように形成されている。そして上記と同様に、それらには水が充填されている。このようにしても、中性子線を遮断することができる。
【0043】
図5(a)の例では、発光装置1の形状を、中心部に孔を空けた円盤体としている。基本的な構造は、図1(a)の例と同様である。図5(b)は、この発光装置1を、住戸扉等のキーホール部30に添付した利用形態を示している。中心部の孔は、キーホール31の外径に合致するようになっており、この孔を通じて、キーをキーホール31に挿入できる。この場合、夜間に照明がない扉であっても、発光装置1によりキーホール31の場所が分かるので、施錠、解錠が容易にできる。
【0044】
図6の例は、発光装置1を複数備えた発光シート2であって、複数の発光装置1が平面的に連接された構造になっている。個々の発光装置1は、上記のいずれであってもよい。隣接した発光装置1の間には、切込溝21が形成されている。切込溝21は、透光性カバー部13を薄くして溝を形成する等により、手指のみで切断分離できることが望ましいが、少なくともナイフやハサミ等の器具で容易に切断できればよい。なお、このような発光シート2は、シートのままでも、単独の発光装置1としても切断分離しても、壁面等に貼着させて使用できる。また、貼着層14、保護シート15は、切込溝21に合わせた切れ目を入れておくとよい。
【0045】
図7の例は、発光シート2の変形で、円盤体の形状とした発光装置1が平面的に連接された構造になっている。このように、発光シート2を構成する発光装置1は、長方体の形状に限定されず、どのような形状であってもよい。なお、この例でも、隣接した発光装置1の間には、切込溝21が形成されている。
【0046】
図8(a)の例は、発光シート2の更なる変形で、壁面の装飾を主たる目的としたものである。具体的には、3角形の上下面を有した5面体の発光装置1が平面的に連接された構造で、発光装置1は、発光色を異ならせた複数種類のものを使っている。上述したように、発光色は発光基体の種別に固有なので、その種別を適宜選択すれば、所望の発光色の発光装置1が得られる。更に、このような場合は、発光模様が所望の図案となるように、発光装置1をモザイク的に配置するとよい。更に、発光装置1は、発光色だけでなく形状も異ならせてもよい。なお、隣接した発光装置1の間に切込溝21を形成しておけば、図8(b)に示しているように、発光装置1のそれぞれを切断分離して貼着することにより、壁面に合わせて図案の広がり具合の調節ができる。
【0047】
これらの発光シート2は、樹木、デスク等の家具、調度品に貼着して使用すれば、夜間、そこに障害物があるのが判るので安全である。また、階段の手すりや段差部分に貼着しておけば、夜間の停電時でも安全に移動できるようになる。
【符号の説明】
【0048】
1 発光装置
2 発光シート
11 基板
12 発光部
13 透光性カバー部
14 貼着層
15 保護シート
16 中空層
21 切込溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光性の発光部と、この発光部を覆う透光性カバー部とを少なくとも備え、
前記発光部は、発光基体と、この発光基体にエネルギーを供給する放射性物質とを含んでいる発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記発光部は、鉛からなる基板上に形成されている発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記透光性カバー部は、高分子ポリマーで形成されている発光装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記透光性カバー部は、中空層が前記発光部を覆うように形成されており、前記中空層には水が充填されている発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記発光装置の裏面側には、該装置を壁面に貼着するための貼着層と、この貼着層を使用時まで保護する保護シートとが設けられていることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放射性物質は、トリチウムを含んでいる発光装置。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の発光装置を複数備えた発光シートであって、
前記発光装置が平面的に連設された構成の発光シート。
【請求項8】
請求項7において、
前記発光シートは、発光色を異ならせた少なくとも2種類の発光装置で構成されており、かつその複数種類の発光装置は、所望の図案となるようにモザイク的に配置されている発光シート。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記発光シートは、隣接した発光装置間に切込溝が形成されている発光シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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