説明

発光装置および電子機器

【課題】発光装置において、封止層を構成する1層または複数層の薄膜を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができるようにする。
【解決手段】基板10と、基板10上に配列され、発光層を挟む陽極81および陰極を有する複数のOLED50と、基板10上に形成され、複数のOLED(Organic Light Emitting Diode)50の陽極と陰極とを互いに絶縁する絶縁膜18と、基板10上に形成され、絶縁膜18の外側に位置する周辺壁20と、基板10上に形成され、複数のOLED50および絶縁膜18を覆う封止層とを備える。封止層は、1層または複数層の薄膜で構成され、絶縁膜18と周辺壁20との間には、封止層を構成する薄膜のうち最大の膜厚が最も厚い薄膜(有機緩衝膜22またはガスバリア層24)の端が位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED(Organic Light Emitting Diode)に代表される発光素子を備えた発光装置と、この発光装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
OLEDは、有機EL(Electro Luminescent)材料で形成された固体の発光層を陽極と陰極とで挟んだ構成を有する。OLEDを備えた発光装置としては、基板上に複数のOLEDを画素として配列した構成の発光装置が知られている。この発光装置では、各画素は封止されて外気から保護されている。封止の方法の一つに、基板上に薄膜を形成し、形成した薄膜で封止層を構成する薄膜封止がある。薄膜封止では、封止層は、特許文献1に示されるように単層構成であってもよいし、特許文献2に示されるように複数層構成であってもよい。
【0003】
図11は、従来の発光装置(単層構成)の端部の断面図である。複数の画素は、画素基板501上の中央(図示略)に配列されている。各画素は画素基板501上の画素隔壁502を貫通して存在し、各画素の発光領域は画素基板501上の画素隔壁502に画定されている。画素基板501上には、画素隔壁502を覆って陰極層503が形成されている。陰極層503は、複数の画素に共通する陰極、すなわち共通陰極である。画素基板501上には、画素隔壁502と画素基板501の周端との間に、周辺層504が形成されている。画素基板501上には、周辺層504および陰極層503を覆って封止層が形成されている。封止層は、1層の薄膜で構成されている。具体的には、無機材料で形成されたガスバリア膜505である。
【0004】
図12は、従来の発光装置(複数層構成)の端部の断面図である。この発光装置では、画素隔壁502と画素基板501の周端との間に周辺層が存在しない。また、封止層は3層の薄膜で構成されている。具体的には、画素基板501上に形成された電極保護膜506、その上に形成された有機緩衝膜507、その上に形成されたガスバリア膜508である。これらの薄膜は、それぞれ、陰極層503を覆っている。有機緩衝膜507は、有機材料で形成されている。電極保護膜506およびガスバリア膜508は、それぞれ、無機材料で形成されており、有機緩衝膜507の端を越えて延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−74073号公報
【特許文献2】特開2004−95199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上に複数の画素を配列した構成の発光装置の額縁の幅は、狭い方が望ましい。特に、発光装置を表示装置として用いる場合には、狭額縁化が重要になる。しかし、上述した従来の発光装置では、ガスバリア膜505の端の位置(図11のP1)や有機緩衝膜507の端の位置(図12のP2)が個体毎に大きくばらついてしまう。そのため、広めの基板を用いる必要があり、額縁の幅が広くなっていた。
【0007】
P1やP2が個体毎に大きくばらつく要因は、封止層の形成方法にある。封止層は、画素の形成後に形成されるから、その形成には、画素に与える悪影響が少ない形成方法を採用するのが好ましい。例えば、画素がOLEDの場合、蒸着法や塗布法を用いるのが一般的である。画素に与える悪影響が少ない形成方法を採用することは、特に、ガスバリア膜505や有機緩衝膜507のようなある程度の厚さを要する膜を形成する場合に重要となる。しかし、採用可能な形成方法では、形成される層の端の位置精度が低くなってしまう。これが、P1やP2が個体毎に大きくばらつく理由である。
【0008】
本発明は、上述した背景に基づいてなされたものであり、封止層を構成する1層または複数層の薄膜を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができる発光装置と、この発光素子を備える電子機器を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以降の説明において、発光素子は例えばOLEDである。周辺層としては、回路または配線を保護するためのものを例示することができる。周辺層に保護される回路としては、発光素子を駆動または制御するための回路を例示することができる。周辺層に保護される配線としては、発光素子に電流を供給するための配線や、発光素子を駆動した電流を流すための配線を例示することができる。
【0010】
本発明に係る第1の発光装置は、基板と、前記基板上に配列され、発光層を挟む二つの電極を有する複数の発光素子と、前記基板上に形成され、前記二つの電極を互いに絶縁する絶縁膜と、前記基板上に形成され、前記絶縁膜の外側に位置する周辺層と、前記基板上に形成され、前記複数の発光素子および前記絶縁膜を覆う封止層とを備え、前記封止層は1層または複数層の薄膜で構成され、前記絶縁膜と前記周辺層との間には、前記1層または複数層の薄膜のうち最大の膜厚が最も厚い薄膜の端が位置する、ことを特徴とする。封止層が1層の薄膜で構成されている場合、最大の膜厚が最も厚い膜の数は1である。封止層が複数層の薄膜で構成されている場合、最大の膜厚が最も厚い膜の数は1または複数である。
第1の発光装置では、基板の端と、発光素子および絶縁膜を覆う封止層を構成する1層または複数層の薄膜のうち最大の膜厚が最も厚い膜の端との間に、周辺層が存在する。したがって、最大の膜厚が最も厚い膜の端の位置精度が低くても、周辺層の端の位置精度が高ければ、額縁の幅を狭くすることができる。また、周辺層を設ける方法は任意である。したがって、周辺層を位置精度の高い形成方法で形成することが可能である。また、封止層を構成する1層または複数層の薄膜に、最大の膜厚が最も厚い膜以外の膜が含まれている場合には、含まれている膜を、発光素子に深刻な悪影響を及ぼすことなく位置精度の高い形成方法で形成することが可能である。よって、第1の発光装置によれば、封止層を構成する1層または複数層の薄膜を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができる。
【0011】
本発明に係る第2の発光装置は、基板と、前記基板上に配列され、発光層を挟む二つの電極を有する複数の発光素子と、前記基板上に形成され、前記二つの電極を互いに絶縁する絶縁膜と、前記基板上に形成され、前記絶縁膜の外側に位置する周辺層と、前記基板上に形成され、前記複数の発光素子および前記絶縁膜を覆う封止層とを備え、前記封止層は、複数層の薄膜で構成され、前記複数層の薄膜には、有機材料で形成された有機緩衝膜が含まれ、前記絶縁膜と前記周辺層との間には、前記有機緩衝膜の端が位置する、ことを特徴とする。
第2の発光装置では、基板の端と、発光素子および絶縁膜を覆う有機緩衝膜の端との間に、周辺層が存在する。したがって、有機緩衝膜の端の位置精度が低くても、周辺層の端の位置精度が高ければ、額縁の幅を狭くすることができる。また、周辺層を設ける方法は任意である。したがって、周辺層を位置精度の高い形成方法で形成することが可能である。また、封止層を構成する複数層の薄膜のうち有機緩衝膜以外の膜を、発光素子に深刻な悪影響を及ぼすことなく位置精度の高い形成方法で形成することが可能である。よって、第2の発光装置によれば、封止層を構成する有機緩衝膜を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができる。
【0012】
第2の発光装置において、前記基板上に設けられ、前記絶縁膜を囲み、前記基板とは異なる他の基板を支えるシールを備え、前記複数層の薄膜には、無機材料で形成され、前記有機緩衝膜を覆い、前記有機緩衝膜の端近傍では前記有機緩衝膜の厚みに応じた長さにわたって前記基板に対して傾いた方向に延在しているガスバリア膜が含まれ、前記ガスバリア膜の前記傾いた方向に延在している部分と前記シールとは離間している、ようにしてもよい。この態様によれば、ガスバリア膜の傾いた部分にシールが接触しないから、ガスバリア膜が破損する可能性を低く抑えることができる。
【0013】
この態様または第2の発光装置において、前記基板上に形成され、直線状に延在する配線を備え、前記配線上には、前記絶縁膜と前記周辺層との間の前記有機緩衝膜の端が位置し、前記配線上の前記有機緩衝膜の端は前記配線に略平行である、ようにしてもよい。こうすることにより、有機緩衝膜の端が平坦な面上に直線状に形成されるから、封止性能が向上する。なお、有機緩衝膜の端の下に配置される配線は、任意であり、例えば、発光素子に電流を供給するための配線であってもよいし、発光素子を駆動した電流を流すための配線であってもよい。
【0014】
本発明に係る第3の発光装置は、基板と、前記基板上に配列され、発光層を挟む二つの電極を有する複数の発光素子と、前記基板上に形成され、前記二つの電極を互いに絶縁する絶縁膜と、前記基板上に形成され、前記絶縁膜の外側に位置する周辺層と、前記基板上に無機材料で形成され、前記複数の発光素子および前記絶縁膜を覆う封止層とを備え、前記封止層は、1層の薄膜で構成され、前記1層の薄膜は、無機材料で形成されたガスバリア膜であり、前記絶縁膜と前記周辺層との間には、前記ガスバリア膜の端が位置する、ようにしてもよい。
第3の発光装置では、基板の端と、発光素子および絶縁膜を覆うガスバリア膜の端との間に、周辺層が存在する。したがって、ガスバリア膜の端の位置精度が低くても、周辺層の端の位置精度が高ければ、額縁の幅を狭くすることができる。また、周辺層を設ける方法は任意である。したがって、周辺層を位置精度の高い形成方法で形成することが可能である。また、封止層はガスバリア膜のみで構成されている。よって、第2の発光装置によれば、封止層を構成するガスバリア膜を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができる。
【0015】
第3の発光装置において、前記基板上に設けられ、前記絶縁膜を囲み、前記基板とは異なる他の基板を支えるシールを備え、前記ガスバリア膜は、前記絶縁膜の端近傍では前記絶縁膜の厚みに応じた長さにわたって前記基板に対して傾いた方向に延在しており、前記ガスバリア膜の前記傾いた方向に延在している部分と前記シールとは離間している、ようにしてもよい。この態様によれば、ガスバリア膜の傾いた部分にシールが接触しないから、ガスバリア膜が破損する可能性を低く抑えることができる。
【0016】
この態様または第3の発光装置において、前記基板上に形成され、直線状に延在する配線を備え、前記配線上には、前記絶縁膜と前記周辺層との間の前記ガスバリア膜の端が位置し、前記配線上の前記ガスバリア膜の端は前記配線に略平行である、ようにしてもよい。こうすることにより、ガスバリア膜の端が平坦な面上に直線状に形成されるから、封止性能が向上する。なお、ガスバリア膜の端の下に配置される配線は、任意であり、例えば、発光素子に電流を供給するための配線であってもよいし、発光素子を駆動した電流を流すための配線であってもよい。
【0017】
本発明に係る電子機器は、上記の発光装置のいずれか1つを有する。したがって、上述した各種効果に起因した効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の構成の一部を示す概略平面図である。
【図2】発光装置1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。
【図3】図1に示す発光装置1のA−A’線矢視断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置2の構成の一部を示す概略平面図である。
【図5】図4に示す発光装置2のB−B’線矢視断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る発光装置3の一部の断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る発光装置4の一部の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る各発光装置を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る各発光装置を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る各発光装置を表示装置として採用した携帯情報端末の構成を示す図である。
【図11】従来の発光装置(単層構成)の端部の断面図である。
【図12】従来の発光装置(複数層構成)の端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置1の構成の一部を示す概略平面図である。発光装置1は基板10を備える。基板10の端部には接続端子11が形成されている。接続端子11には、外部の回路から、各種の信号や電源電圧が供給される。また、基板10上には、矩形の画素領域Gと、画素領域Gと基板10の外周の間に位置する周辺領域Hが設けられている。周辺領域Hには、走査線駆動回路12およびデータ線駆動回路(図示略)が形成されている。画素領域Gには、複数の走査線13と複数のデータ線14が形成され、それらの交差点の各々の近傍には複数の単位回路(画素回路)Pが設けられている。
【0021】
図2は、発光装置1の単位回路Pの詳細を示す回路図である。各単位回路Pは、nチャネル型のトランジスタT1、pチャネル型のトランジスタT2、容量素子C、およびOLED50を含む。pチャネル型のトランジスタT2のソース電極は電流供給線15に接続される一方、そのドレイン電極はOLED50の陽極81に接続される。電流供給線15は、OLED50を駆動するための電流を供給するための配線である。また、トランジスタT2のソース電極とゲート電極との間には、容量素子Cが設けられている。nチャネル型のトランジスタT1のゲート電極は走査線13に接続され、そのソース電極は、データ線14に接続され、そのドレイン電極はトランジスタT2のゲート電極と接続される。
【0022】
単位回路Pは、その単位回路Pに対応する走査線13を走査線駆動回路12が選択すると、トランジスタT1がオンされて、データ線駆動回路(図示略)からデータ線14を介して供給されるデータ信号を内部の容量素子Cに保持する。そして、トランジスタT2が、データ信号のレベルに応じた電流をOLED50に供給する。これにより、OLED50は、データ信号のレベルに応じた輝度で発光する。
【0023】
図1に示すように、基板10上の、周辺領域Hには、陰極用電源配線16が画素領域Gをとりまくコの字状に形成されている。つまり、陰極用電源配線16は、画素領域Gの周に沿って直線状に延在し、2箇所で略直角に折れ曲がっている。陰極用電源配線16は、走査線駆動回路12と画素領域Gとの間に配置されている。陰極用電源配線16は、OLED50を駆動した電流を流すための配線である。OLED50は、陽極(二つの電極のうち一方)81と陰極(二つの電極のうち他方)と両電極の間に挟まれた発光機能層とを有する。
【0024】
図3は、図1に示す発光装置1のA−A’線矢視断面図である。基板10上には酸化珪素を主体とする下地保護層(図示略)が形成され、その上に金属配線層を含む配線層17が形成されている。配線層17には、画素領域G内に、各単位回路Pについて、トランジスタT1およびトランジスタT2が設けられている。また、配線層17には、周辺領域H内に、走査線駆動回路12やデータ線駆動回路(図示略)が設けられている。これらの回路は、トランジスタ、容量素子等の回路素子を有する。金属配線層は、アルミニウム等の、導電性を有する材料で形成されており、その一部は、各トランジスタの電極や、走査線13、データ線14、電流供給線15、陰極用電源配線16となっている。
【0025】
配線層17上には、画素領域G内に、OLED50の陽極81が単位回路P毎に設けられている。各陽極81は、対応するコンタクトホールを通じて、自己を含む単位回路P内のトランジスタT2のドレイン電極に電気的に接続されている。配線層17および各陽極81上には、絶縁膜18が形成されている。絶縁膜18は、OLED50の陽極81と陰極とを互いに絶縁する膜であり、アクリルまたはポリイミドで形成され、画素領域Gにおいては、各陽極81の上面の少なくとも一部のみが露出するように配線層17および陽極81を覆っている。絶縁膜18の外端は周辺領域Hに位置している。絶縁膜18に囲まれている領域には、陽極81上に、発光機能層82が形成されている。発光機能層82の端面は絶縁膜18に接している。発光機能層82は、有機EL材料で形成された発光層を備える。有機EL材料は低分子材料であっても高分子材料であってもよい。発光機能層82は、発光層の他に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層および電子ブロック層の一部または全部を備えていてもよい。
【0026】
絶縁膜18および発光機能層82上には、陰極層19が形成されている。陰極層19は、導電性の材料で形成されており、その形成は、例えば蒸着により行われる。陰極層19は複数層で構成されてもよい。また、陰極層19は、画素領域Gの全体および周辺領域Hにわたって形成され、複数の単位回路Pに共通して設けられている。陰極層19の一部は、対応する単位回路P内のOLED50の陰極となる。周辺領域Hにおいて、陰極層19は、陰極用電源配線16に重なっており、配線層17に形成されたコンタクトホールCHを通じて陰極用電源配線16に電気的に接続されている。陰極層19の端は、配線層17上に位置している。
上述したように、発光機能層82は、各単位回路Pに応じて設けられており、絶縁膜18は発光機能層82を形成する領域を区画するように設けられている。ここでは、平面的に見た際、発光機能層82の一部と絶縁膜18とが互いに重なり合った構成を採ったが、これに限るものではなく、発光機能層82と絶縁膜18とが排他的に設けられている構成(発光機能層と絶縁膜18とが互いに重なり合わない構成)を採ってもよい。
また、別の構成例としては、発光機能層及び陰極層19は、少なくとも画素領域において、複数の単位回路Pに対し共通に設けられていてもよい。この際に、発光機能層が発光する領域は、絶縁膜18により区画されており、各陽極81に応じて発光する領域が設けられている。この発光する領域は、絶縁膜18の周縁部など、絶縁膜18と重なっていてもよい。ここで、発光機能層及び陰極層19は、絶縁膜18及び陽極81の上を覆うように設けられている。
【0027】
配線層17上には、周辺領域Hに、周辺壁20が形成されている。周辺壁20は、アクリルまたはポリイミドで形成されている。ここで、絶縁膜18と同じプロセスで一括して形成されていることが望ましい。すなわち、本実施形態における絶縁膜18と周辺壁20とは同一の絶縁層からなり、この絶縁層はOLED50の2つの電極を絶縁するとともに、走査線駆動回路12やデータ線駆動回路などの駆動回路を覆うように設けられていることが望ましい。周辺壁20は、走査線駆動回路12やデータ線駆動回路(図示略)を保護するための構造物であり、走査線駆動回路12やデータ線駆動回路(図示略)を覆うように設けられている。
【0028】
配線層17、陰極層19および周辺壁20上には、OLED50を外気から保護する封止層が形成されている。封止層は、3層の薄膜を積層して構成されている。3層の薄膜とは、配線層17、陰極層19および周辺壁20上に形成された陰極保護膜21と、陰極保護膜21上に形成された有機緩衝膜22と、配線層17、陰極保護膜21および有機緩衝膜22上に形成されたガスバリア膜23である。
【0029】
陰極保護膜21は、陰極層19の保護や、有機緩衝膜22の形成の容易化を目的としたものであり、少なくとも陰極層19を覆って延在している。尚、本実施形態において、陰極保護膜21の端は、周辺壁20の外側に位置している。また、陰極保護膜21は、無機材料で形成されている。この無機材料としては、珪素酸化物や珪素酸窒化物などの珪素酸化物や、酸化チタン等の金属酸化物などの無機酸化物を例示することができる。
【0030】
有機緩衝膜22は、絶縁膜18の形状の影響により画素毎に生じる陰極保護膜21の段差を埋め、ガスバリア膜23における応力集中を防止するためのものであり、有機材料で形成されている。有機緩衝膜22は、上面が平坦となるように、例えば塗布法(例えば印刷法)により形成される。有機緩衝膜22は、陰極層19を覆って延在し、少なくとも画素領域において少なくとも絶縁膜18の上方に形成されている。有機緩衝膜22の端221は、画素領域Gを囲む略長方形であり、絶縁膜18と周辺壁20との間に位置している。有機緩衝膜22の端221のうち、3つの辺は、陰極用電源配線16上に位置している。陰極用電源配線16上の端221は、陰極用電源配線16に略平行である。
【0031】
ガスバリア膜23は、酸素や水分などの外気の浸入を防ぐためのものであり、陰極保護膜21および有機緩衝膜22を覆って延在している。また、ガスバリア膜23は、有機緩衝膜22の端221近傍では有機緩衝膜22の厚みに応じた長さにわたって基板10に対して傾いた方向に延在している。また、ガスバリア膜23は、珪素化合物や珪素酸化物などの無機材料で形成されている。本実施形態において、ガスバリア膜23は、周辺壁20が設けられた領域と絶縁膜18が設けられた領域との間の領域において、下地層(本実施形態においては、陰極保護膜21)と接している。下地層は、回路層17に含まれる絶縁膜であってもよい。この下地層は、珪素酸化物、珪素酸窒化物、珪素窒化物などの珪素化合物であることが望ましい。
【0032】
有機緩衝膜22の端221の位置は、発光装置1の個体毎に、図3に示すL1の範囲でずれる虞がある。しかし、端221の位置がこの範囲でずれたとしても、基板10の端と、OLED50および絶縁膜18を覆う有機緩衝膜22の端221との間に、周辺壁20が存在することに変わりはない。したがって、発光装置1によれば、端221の位置精度が低くても、周辺壁20の端の位置精度が高ければ、額縁の幅を狭くすることができる。
その上、発光装置1では、周辺壁20を、OLED50の形成前に形成することが可能である。つまり、周辺壁20の形成に、その端の位置精度が高くなる形成方法を採用することができる。
また、封止層を構成する3層の薄膜のうち有機緩衝膜22以外の膜(陰極保護膜21およびガスバリア膜23)を、OLED50に深刻な悪影響を及ぼすことなく位置精度の高い形成方法で形成することが可能である。
よって、発光装置1によれば、封止層を構成する有機緩衝膜22を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができる。
【0033】
また、発光装置1では、有機緩衝膜22の端221のうち、3つの辺が、陰極用電源配線16に略平行であり、陰極用電源配線16上に位置する。つまり、有機緩衝膜22の端221の多くの区間が平坦な面上に位置する。よって、封止性能が向上する。なお、有機緩衝膜22の端221の下に配置される配線は、陰極用電源配線16に限らない。例えば、電流供給線15に接続され、単位回路Pに電流を供給するための配線であってもよい。なお、上述した単位回路Pの構成は一例に過ぎない。
尚、本実施形態の特徴を換言すると以下のようになる。本実施形態における絶縁膜18と周辺壁20とは同じ絶縁層で設けられており、この絶縁層は、画素領域上及び駆動回路上の両方に覆うように設けられており、画素領域が設けられた領域と駆動回路が設けられた領域の間には、絶縁層が設けられていない領域がある。有機緩衝膜22の端221は、この絶縁層が設けられていない領域に位置し、この領域において、ガスバリア層23は下地層と接している。この絶縁層が設けられていない領域には、陰極用電源配線16や電流供給線15に接続された配線を設けることが好ましい。ここで、駆動回路は、走査線駆動回路、データ線駆動回路、検査回路であってもよい。
【0034】
<第2の実施の形態>
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置2の構成の一部を示す概略平面図であり、図5は、図4に示す発光装置2のB−B’線矢視断面図である。発光装置2が発光装置1と異なるのは、封止層が1層の薄膜で形成されている点である。発光装置2では、配線層17および陰極層19上に、OLED50を外気から保護する封止層が形成されている。この封止層は、1層の薄膜で構成されている。この薄膜とは、配線層17および陰極層19上に形成されたガスバリア膜24である。
【0035】
ガスバリア膜24は、酸素や水分などの外気の浸入を防ぐためのものであり、陰極保護膜21を覆って延在している。また、ガスバリア膜24は、絶縁膜18の外端近傍では絶縁膜18の厚みに応じた長さにわたって基板10に対して傾いた方向に延在している。本実施形態において、ガスバリア膜23は、周辺壁20が設けられた領域と絶縁膜18が設けられた領域との間の領域において、少なくとも下地層(本実施形態においては、回路層17に含まれる絶縁膜や配線層)と接している。下地層は、珪素酸化物、珪素酸窒化物、珪素窒化物などの珪素化合物であることが望ましい。ガスバリア膜24の端241は、画素領域Gを囲む略長方形であり、絶縁膜18と周辺壁20との間に位置している。ガスバリア膜24の端241のうち、3つの辺は、陰極用電源配線16上に位置している。陰極用電源配線16上の端241は、陰極用電源配線16に略平行である。また、ガスバリア膜24は、珪素化合物や珪素酸化物などの無機材料で形成されている。ガスバリア膜24の形成方法は、例えば蒸着法を例示することができる。
【0036】
ガスバリア膜24の端241の位置は、発光装置2の個体毎に、図5に示すL2の範囲でずれる虞がある。しかし、端241の位置がこの範囲でずれたとしても、基板10の端と、OLED50および絶縁膜18を覆うガスバリア膜24の端241との間に、周辺壁20が存在することに変わりはない。したがって、発光装置2によれば、端241の位置精度が低くても、周辺壁20の端の位置精度が高ければ、額縁の幅を狭くすることができる。よって、発光装置2によれば、封止層を構成するガスバリア膜24を位置精度の低い形成方法で形成しても狭額縁化を実現することができる。
【0037】
また、発光装置2では、ガスバリア膜24の端241のうち、3つの辺が、陰極用電源配線16に略平行であり、陰極用電源配線16上に位置する。よって、封止性能が向上する。なお、ガスバリア膜24の端241の下に配置される配線が陰極用電源配線16に限らないことや、図2に示す単位回路Pの構成が一例に過ぎないことは、発光装置1と同様である。
尚、本実施形態の特徴を換言すると以下のようになる。本実施形態における絶縁膜18と周辺壁20とは同じ絶縁層で設けられており、この絶縁層は、画素領域上及び駆動回路上の両方に覆うように設けられており、画素領域が設けられた領域と駆動回路が設けられた領域の間には、絶縁層が設けられていない領域がある。ガスバリア膜23はこの絶縁層が設けられていない領域において下地層と接している。この絶縁層が設けられていない領域には、陰極用電源配線16や電流供給線15に接続された配線を設けることが好ましい。ここで、駆動回路は、走査線駆動回路、データ線駆動回路、検査回路であってもよい。
【0038】
<第3の実施の形態>
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る発光装置3の一部の断面図である。発光装置3が発光装置1と異なるのは、基板10の他に基板を有する点である。他の基板とは、OLED50を挟んで基板10と対向している対向基板25である。対向基板25は、例えばカラーフィルタ基板であり、シール26によって支持されている。
基板10のOLED50が設けられた側と対向基板25との間には、樹脂からなる充填材が充填されている。
第1及び第2の実施の形態では、ガスバリア膜23により、外気がOLED50に到達するのを防いでいたが、本実施形態では、充填材、シール26及び対向基板25により封止性能をさらに向上させている。
【0039】
シール26は、例えば樹脂で形成されており、絶縁膜18を囲むように、ガスバリア膜23上に設けられている。シール26の一端はガスバリア膜23に固着しており、他端は対向基板25に固着している。ガスバリア膜23のシール26に接触している部分は、周辺壁20上の部分である。つまり、シール26と、ガスバリア膜23の基板10に対して傾いた方向に延在している部分231とは、互いに離間している。
【0040】
部分231にシール26が接触していると、応力集中により、ガスバリア膜23が破損し易いが、上述したように、発光装置3では、両者は接触していない。また、周辺壁20の上面は略平坦である。よって、発光装置3によれば、発光装置1で得られる効果の他に、ガスバリア膜23が破損する可能性を低く抑えることができるという効果が得られる。
ガスバリア膜23及び有機緩衝膜22が周辺壁20及び画素領域を覆い、その外側の領域にシール26を配置する構成と比して、本実施形態では、シール26と周辺壁20とが重なっているため、発光装置3を狭額縁にすることができる。また、有機緩衝膜22の端221とシール26とが重ならないようするするために設けられるマージン領域に、陰極用電源配線16などの配線を配置できるため、さらに、発光装置3の狭額縁化に図ることができる。
【0041】
<第4の実施の形態>
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る発光装置4の一部の断面図である。発光装置4が発光装置2と異なるのは、基板10の他に対向基板25を有する点である。対向基板25は、シール27によって支持されている。シール27は、例えば樹脂で形成されており、絶縁膜18を囲むように、配線層17および周辺壁20上に設けられている。シール27の一端は配線層17および周辺壁20に固着しており、他端は対向基板25に固着している。シール27と、ガスバリア膜24の基板10に対して傾いた方向に延在している部分242とは、互いに離間している。
【0042】
部分242にシール27が接触していると、応力集中により、ガスバリア膜24が破損し易いが、上述したように、発光装置4では、両者は接触していない。そもそも、シール27とガスバリア膜24とは、互いに離間している。よって、発光装置4によれば、発光装置2で得られる効果の他に、ガスバリア膜24が破損する可能性を低く抑えることができるという効果が得られる。
また、第3の実施の形態と同様、発光装置4を狭額縁とすることができる。
【0043】
<変形例>
上述した各実施の形態では、封止層が1層または3層の薄膜で構成されているが、2層の薄膜で構成されてもよいし、4層以上の薄膜で構成されてもよい。いずれの場合であっても、最大の膜厚が最も厚い膜は、形成される膜の端の位置精度の低い形成方法で形成されることになる。また、形成される膜の端の位置精度の低い形成方法で形成される膜は複数であってもよい。また、周辺壁に保護される回路は走査線駆動回路に限られず、データ線駆動回路や検査回路であってもよい。また、周辺壁に保護されるものは回路に限らない。例えば、周辺壁によって配線が保護されるようにしてもよい。また、発光素子はOLEDに限らない。
【0044】
<応用例>
次に、上述した実施の形態に係る各発光装置を適用した電子機器について説明する。
図8は、上述した各発光装置を表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置2003と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
【0045】
図9は、上述した各発光装置を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置3003を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、表示装置3003に表示される画面がスクロールされる。
【0046】
図10は、上述した各発光装置を表示装置として採用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置4003を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示装置4003に表示される。
【0047】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図8から図10に示したもののほか、テレビやビデオカメラ等の映像を表示可能な機器や、電子写真方式の画像形成装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0048】
1〜4…発光装置、10…基板、12…走査線駆動回路、13…走査線、14…データ線、15…電流供給線、16…陰極用電源配線(配線)、17…配線層、18…絶縁膜、19…陰極層、20…周辺壁(周辺層)、2000…パーソナルコンピュータ(電子機器)、21…陰極保護膜、22…有機緩衝膜、23,24…ガスバリア膜、25…対向基板(他の基板)、26,27…シール、3000…携帯電話機(電子機器)、4000…携帯情報端末(電子機器)、G…発光領域、H…周辺領域、P…単位回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配列され、発光層を挟む二つの電極を有する複数の発光素子と、
前記基板上に形成され、前記二つの電極を互いに絶縁する絶縁膜と、
前記基板上に形成され、前記絶縁膜の外側に位置する周辺層と、
前記基板上に形成され、前記複数の発光素子および前記絶縁膜を覆う封止層とを備え、
前記封止層は1層または複数層の薄膜で構成され、
前記絶縁膜と前記周辺層との間には、前記1層または複数層の薄膜のうち最大の膜厚が最も厚い薄膜の端が位置する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に配列され、発光層を挟む二つの電極を有する複数の発光素子と、
前記基板上に形成され、前記二つの電極を互いに絶縁する絶縁膜と、
前記基板上に形成され、前記絶縁膜の外側に位置する周辺層と、
前記基板上に形成され、前記複数の発光素子および前記絶縁膜を覆う封止層とを備え、
前記封止層は、複数層の薄膜で構成され、
前記複数層の薄膜には、有機材料で形成された有機緩衝膜が含まれ、
前記絶縁膜と前記周辺層との間には、前記有機緩衝膜の端が位置する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記基板上に設けられ、前記絶縁膜を囲み、前記基板とは異なる他の基板を支えるシールを備え、
前記複数層の薄膜には、無機材料で形成され、前記有機緩衝膜を覆い、前記有機緩衝膜の端近傍では前記有機緩衝膜の厚みに応じた長さにわたって前記基板に対して傾いた方向に延在しているガスバリア膜が含まれ、
前記ガスバリア膜の前記傾いた方向に延在している部分と前記シールとは離間している、
ことを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記基板上に形成され、直線状に延在する配線を備え、
前記配線上には、前記絶縁膜と前記周辺層との間の前記有機緩衝膜の端が位置し、
前記配線上の前記有機緩衝膜の端は前記配線に略平行である、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の発光装置。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に配列され、発光層を挟む二つの電極を有する複数の発光素子と、
前記基板上に形成され、前記二つの電極を互いに絶縁する絶縁膜と、
前記基板上に形成され、前記絶縁膜の外側に位置する周辺層と、
前記基板上に無機材料で形成され、前記複数の発光素子および前記絶縁膜を覆う封止層とを備え、
前記封止層は、1層の薄膜で構成され、
前記1層の薄膜は、無機材料で形成されたガスバリア膜であり、
前記絶縁膜と前記周辺層との間には、前記ガスバリア膜の端が位置する、
ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記基板上に設けられ、前記絶縁膜を囲み、前記基板とは異なる他の基板を支えるシールを備え、
前記ガスバリア膜は、前記絶縁膜の端近傍では前記絶縁膜の厚みに応じた長さにわたって前記基板に対して傾いた方向に延在しており、
前記ガスバリア膜の前記傾いた方向に延在している部分と前記シールとは離間している、
ことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記基板上に形成され、直線状に延在する配線を備え、
前記配線上には、前記絶縁膜と前記周辺層との間の前記ガスバリア膜の端が位置し、
前記配線上の前記ガスバリア膜の端は前記配線に略平行である、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の発光装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の発光装置を備える、
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−233543(P2011−233543A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180220(P2011−180220)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2008−221031(P2008−221031)の分割
【原出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】