説明

発光装置の製造方法、バックライト、および液晶表示装置

【課題】発光型半導体素子と発光色が異なる複数の蛍光体とを組合せて用いる場合において、品質や特性を向上させた発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置1は、光源として発光ダイオード2のような発光型半導体素子を有する。発光ダイオード2から放射された光は、発光色が異なる複数の蛍光体9を有する発光部8で可視光に変換されて放出される。複数の蛍光体9は、下記条件1および条件2から選ばれる少なくとも1つの条件を満足する。条件1:複数の蛍光体9のうちの1種の蛍光体の平均粒径をD1(μm)、比重をw1(g/mm)、他の1種の蛍光体の平均粒径をD2(μm)、比重をw2(g/mm)としたとき、複数の蛍光体9が式:−0.2<{(D1)×w1}−{(D2)×w2}<0.2で表される条件を満足する。条件2:複数の蛍光体9は無機結合剤で結合・一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法、バックライト、および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)は電気エネルギーを紫外光や可視光等の光に変換して放射する半導体素子であり、このようなLEDチップを例えば透明樹脂で封止したLEDランプが各種の分野で使用されている。可視光型のLEDランプを実現するために、GaP、GaAsP、GaAlAs、GaN、InGaAlP等からなる発光層を有するLEDチップが利用されている。また、発光ダイオードに代えてレーザダイオード等の発光型半導体素子を光源として用いることも検討されている。
【0003】
発光ダイオードやレーザダイオードは半導体素子であるために、長寿命でかつ信頼性が高く、光源として用いた場合に交換作業が軽減されるというような利点を有する。このため、例えばLEDチップを用いたLEDランプは、携帯通信機器、PC周辺機器、OA機器、家庭用電気機器等における表示装置、例えば液晶表示装置のバックライト、各種スイッチ類等の産業用途から一般照明用途まで、幅広く使用されている。
【0004】
LEDランプから放射される光の色調は、LEDチップの発光波長に限られるものではない。例えば、LEDチップを封止する透明樹脂中に蛍光体を含有させることによって、青色から赤色まで用途に応じた可視光領域の光を得ることができる。また最近では、各種表示装置に対して微妙な色合いをより高精細に再現する機能が要求されている。このため、LEDランプには1個のランプで白色光や各種の中間色の発光を可能にすることが求められている。
【0005】
特に、白色発光のLEDランプは液晶表示装置のバックライトや車載用ランプ等の用途に急速に普及しており、将来的には蛍光ランプの代替品として大きく伸張することが期待されている。現在、普及もしくは試行されている白色発光型のLEDランプとしては、青色発光タイプのLEDチップと黄色発光蛍光体(YAG)、さらには赤色発光蛍光体とを組合せたランプと、紫外発光タイプのLEDチップと青色、緑色、赤色発光の各蛍光体の混合物とを組合せたランプ(例えば特許文献1、2参照)とが知られている。
【0006】
前者の白色LEDランプは、後者の白色LEDランプに比べて輝度特性等に優れることから、現状では後者の白色LEDランプより普及している。ただし、視野方向によっては黄色っぽく見えたり、また白色面に投影したときに黄色や白色のムラが現れるというような難点を有している。このため、前者の白色ランプは擬似白色と呼ばれることもある。一方、後者の紫外発光LEDチップを用いた白色LEDランプは、輝度が前者より劣るものの、発光並びに投影光のムラが少ないという利点を有する。このため、将来的には照明用途の白色ランプの主流となることが期待され、その開発が急速に進められている。
【0007】
紫外発光LEDチップを用いた白色LEDランプの開発を進めていくなかで、青色発光LEDチップを用いた白色LEDランプほどではないものの、紫外発光LEDチップと発光色が異なる複数の蛍光体とを組合せた白色LEDランプにおいても、発光や投影光にムラが生じることが分かってきた。さらに、LEDランプの側面から漏れ出てくる光(側面漏光)が目的とする白色からずれるといった現象も発生することが分かってきた。このような現象(光の不均一性)は、LEDランプを照明装置等に使用する上で好ましいことではなく、その品質や特性を低下させる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−073052公報
【特許文献2】特開2003−160785公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、発光ダイオードやレーザダイオード等の発光型半導体素子と発光色が異なる複数の蛍光体とを組合せて用いる場合において、品質や特性を向上させた発光装置を提供することにある。本発明の他の目的は、そのような発光装置を適用したバックライトと液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る発光装置の製造方法は、発光型半導体素子を有する光源と、発光色が異なる複数の蛍光体を有し、前記光源からの光により励起されて可視光を発光する発光部とを具備する発光装置の製造方法に関する。前記発光部は、前記複数の蛍光体が分散して含有された樹脂層を有する。前記樹脂層は、前記複数の蛍光体として、下記条件1および条件2から選ばれる少なくとも1つの条件を満足する蛍光体を用いて形成する。
条件1:前記複数の蛍光体のうちの1種の蛍光体の平均粒径をD1(μm)、比重をw1(g/mm)、他の1種の蛍光体の平均粒径をD2(μm)、比重をw2(g/mm)としたとき、前記複数の蛍光体は、式:−0.2<{(D1)×w1}−{(D2)×w2}<0.2で表される条件を満足する。
条件2:前記複数の蛍光体は無機結合剤で結合・一体化されている。
【0011】
本発明のバックライトは、発光装置を2つ以上具備するバックライトに関する。前記発光装置は、本発明の発光装置の製造方法により製造されたものであって、下記条件3および条件4を満足する。
条件3:前記発光装置の真上で測定した発光色度を(x、y)、前記発光装置の前面発光および側面漏光を全方位にわたって測定した際の発光色度を(x1、y1)としたとき、これら発光色度の色差(絶対値)の最大値(Δx、Δy)が、Δx<0.05およびΔy<0.05の条件を満足する。
条件4:前記発光装置は25℃における発光色度と85℃における発光色度の色差(Δx、Δy(絶対値))がΔx<0.005、Δy<0.01の範囲内である温度特性を有する。
【0012】
本発明の液晶表示装置は、本発明のバックライトと、前記バックライトの発光面側に配置され、透過型または半透過型の液晶表示部とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発光型半導体素子と発光色が異なる複数の蛍光体とを組合せて用いる場合において、品質や特性を向上させた発光装置を提供できる。また、本発明によれば、そのような発光装置を適用したバックライトと液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の一実施形態による発光装置の構成を示す断面図である。
【図2】図2は発光装置の全方位にわたる発光色度を測定する方法を説明するための図である。
【図3】図3は青、緑および赤の3種類の蛍光体の一体化前の粒度分布と一体化後の粒度分布を比較して示す図である。
【図4】図4は青、緑および赤の3種類の蛍光体を混合した混合蛍光体の平均粒径とLEDランプの輝度との関係の一例を示す図である。
【図5】図5は本発明の一実施形態によるバックライトの概略構成を示す図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態による液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態による液晶表示装置の概略構成を示す図である。
【図8】図8は実施例16による白色LEDランプの温度と発光色度との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、それらの図面は図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に限定されるものではない。
【0016】
図1は本発明の発光装置をLEDランプに適用した一実施形態の構成を示す断面図である。同図に示す発光装置(LEDランプ)1は、光源としてLEDチップ2を有している。なお、発光装置1の光源はLEDチップ2に限られるものではなく、レーザダイオード(半導体レーザ)等であってもよい。LEDチップ2は一対のリード端子3a、3bを有する基板4上に実装されている。LEDチップ2の下部電極はリード端子3aと電気的および機械的に接続されている。LEDチップ2の上部電極はボンディングワイヤ5を介してリード端子3bと電気的に接続されている。
【0017】
発光装置1には、例えば紫外光を発光する光源が用いられる。従って、光源としては紫外光を発光するLEDチップ2が用いられる。このような紫外発光タイプのLEDチップ2は、代表的には360〜420nmの範囲の発光波長を有する。紫外発光LEDチップ2としては、窒化物系化合物半導体層からなる発光層を有するLEDチップが例示される。なお、LEDチップ2の発光波長は、発光色が異なる複数の蛍光体との組合せに基づいて、目的とする発光色が得られるものであればよい。従って、必ずしも発光波長が360〜420nmの範囲のLEDチップに限られるものではない。さらに、LEDチップ以外の発光型半導体素子(レーザダイオード等)を光源として用いてもよい。
【0018】
基板4上には円筒状の樹脂枠6が設けられており、その内壁面6aには反射層7が形成されている。樹脂枠6内には透明樹脂8が充填されており、この透明樹脂8中にLEDチップ2が埋め込まれている。LEDチップ2は透明樹脂8で覆われている。LEDチップ2が埋め込まれた透明樹脂8は、発光色が異なる複数の蛍光体を組合せた混合蛍光体9を含有している。透明樹脂8中に分散させた混合蛍光体9は、LEDチップ2から放射される光、例えば紫外光により励起されて可視光を発光するものである。
【0019】
発光色が異なる複数の蛍光体(混合蛍光体9)を含有する透明樹脂8は発光部として機能するものであり、LEDチップ2の発光方向前方に配置されている。透明樹脂8には例えばシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等が使用される。複数の蛍光体の種類や組合せは、目的とするLEDランプ1の発光色に応じて適宜に選択されるものであり、特に限定されるものではない。例えば、LEDランプ1を白色発光ランプとして使用する場合には、青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体との混合物が用いられる。白色以外の発光色を得る場合には、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、赤色発光蛍光体等から2種以上の蛍光体を適宜に組合せて使用することができる。
【0020】
LEDランプ1に適用する蛍光体9は特に限定されるものではないが、LEDチップ2から放射される光、例えば波長が360〜420nmの範囲の紫外光を効率よく吸収する蛍光体を使用することが好ましい。具体的には、赤色発光蛍光体としては例えば3価のユーロピウムおよびサマリウムで付活した希土類酸硫化物蛍光体(RS:Eu、Sm蛍光体(RはLa、YおよびGdから選ばれる少なくとも1種の元素、特にRは少なくともLaを含むことが好ましい))が挙げられる。
【0021】
青色発光蛍光体としては、例えば2価のユーロピウムで付活したハロ燐酸塩蛍光体、2価のユーロピウムで付活したアルミン酸塩蛍光体、2価のユーロピウムおよびマンガンで付活したアルミン酸塩蛍光体等が挙げられる。緑色発光蛍光体としては、例えば2価のユーロピウムおよびマンガンで付活したアルミン酸塩蛍光体、2価のユーロピウムで付活したアルカリ土類珪酸塩蛍光体、3価のテルビウムおよびセリウムで付活した希土類珪酸塩蛍光体等が挙げられる。
【0022】
上記した各蛍光体はいずれも紫外光の吸収効率に優れるものである。このような青、緑、赤の各蛍光体を含む混合蛍光体(BGR蛍光体)9と発光波長が360〜420nmの範囲の紫外発光LEDチップ2とを組合せてLEDランプ1を構成することによって、任意の色温度の白色光をより再現性よく得ることができる。すなわち、青色発光LEDチップと黄色発光蛍光体(YAG蛍光体等)とを組合せたLEDランプは、LEDチップの発光波長のバラツキ、LEDチップの発熱による発光効率の低下や色シフト等により均一な白色光を得ることが難しい。さらに、黄色発光蛍光体の発光に伴う黄色味がかった白色の混入も、白色光の色調や均一性を低下させる要因となる。
【0023】
これに対して、紫外発光LEDチップ2と三色混合蛍光体(BGR蛍光体)9とを組合せたLEDランプ1は、白色を形成する光が全て蛍光体からの発光であり、LEDチップ2から放射される光の直接的な関与が少ない。このため、色再現性に優れる白色光をより均一に得ることができる。すなわち、LEDチップ2の発光波長にバラツキがあったとしても、LEDランプ1はBGR蛍光体9からの発光のみで白色光を得ているため、白色光の色再現性を高めることができる。さらに、LEDチップの発熱により発光効率や発光波長が変化した場合も同様である。白色光以外の中間色光を得る場合も同様である。
【0024】
発光色が異なる複数の蛍光体は、樹脂枠6内に充填された透明樹脂8全体に分散させなければならないものではなく、例えばLEDチップ2の周囲は透明樹脂のみでポッティングし、その外側に複数の蛍光体を含有する透明樹脂を充填してもよい。また、その逆であってもよい。さらに、樹脂枠6内の一部分のみに複数の蛍光体を含有する透明樹脂8を配置してもよい。いずれの場合においても、発光色が異なる複数の蛍光体を含有する透明樹脂が発光部として機能する。
【0025】
LEDランプ1に印加された電気エネルギーはLEDチップ2で紫外光や紫色光に変換され、それらの光は透明樹脂8中に分散された蛍光体9でより長波長の光に変換される。そして、透明樹脂8中に含有させた複数の蛍光体の組合せに基づく色、例えば白色の光がLEDランプ1から放出される。LEDランプ1は例えば白色ランプとして機能するものである。ここで、蛍光体からの発光は反射層7で反射された光を含めて、その大半がLEDランプ1の前方(図1では上方)に効率よく放出される。ただし、一部は樹脂枠6や反射層7を透過して側方に側面漏光として放出される。
【0026】
この実施形態のLEDランプ1は、前面発光および側面漏光の発光色度を全方位にわたって測定した際の色度差が小さく、これにより均一な光を得ることが可能となる。具体的には、光源としてのLEDチップ2の真上で測定した発光色度を(x、y)、LEDランプ1の前面発光および側面漏光を全方位にわたって測定した際の発光色度を(x1、y1)としたとき、これら発光色度の色差(絶対値)の最大値(Δx、Δy)が、Δx<0.05およびΔy<0.05の条件を満足するものである。このような発光色度差(Δx<0.05、Δy<0.05)を満足させることによって、LEDランプ1を照明装置等として使用する際の品質や特性を大幅に向上させることが可能となる。
【0027】
発光色度差(Δx、Δy)は以下のようにして測定するものとする。まず、図2に示すように、LEDチップ2の中心から鉛直線上に色度計の検出器10を配置し、この位置でLEDチップ2の真上の発光色度(x、y)を測定する。発光強度が強すぎる場合には樹脂板等のアテニュエータを用いる。次に、鉛直線方向を零度とし、鉛直線とLEDチップ2および検出器10間を結ぶ線とが成す角度θを変化させて、発光色度(x1、y1)を測定する。角度θがある値のときの発光色度が(x1、y1)であった場合、これらの色度の差(x−x1、y−y1)が発光の不均一として認識される。このような発光色度(x1、y1)を前面発光および側面漏光の全方位にわたって測定する。
【0028】
上記した方法にしたがってLEDランプ1の前面発光および側面漏光の発光色度(x1、y1)を全方位にわたって測定する。通常は角度θが90度の範囲まで測定すれば十分である。これら各方位による発光色度(x1、y1)とLEDチップ2の真上で測定した発光色度(x、y)との差(x−x1、y−y1)をそれぞれ絶対値として求める。そして、これらの色度差の最大値を(Δx、Δy)とする。この実施形態のLEDランプ1は、このような発光色度差の最大値(Δx、Δy)がΔx<0.05およびΔy<0.05の条件を満足するものである。発光色度差はΔx<0.035およびΔy<0.035であることがより好ましく、さらに好ましくはΔx<0.025およびΔy<0.025の範囲である。
【0029】
上述したように、この実施形態のLEDランプ1は、発光色度差がΔx<0.05およびΔy<0.05の条件を満足し、発光の均一性に優れるものである。このようなLEDランプ1は、以下に示す条件(a)、条件(b)のいずれか一方、もしくは両方を満足させた複数の蛍光体を使用することで再現性よく得ることができる。条件(a)は、複数の蛍光体のうちの1つの蛍光体の平均粒径をD1(μm)、比重をw1(g/mm)、他の1つ蛍光体の平均粒径をD2(μm)、比重をw2(g/mm)としたときに、−0.2<{(D1)×w1}−{(D2)×w2}<0.2の条件を満足させることである。条件(b)は複数の蛍光体を予め無機結合剤で結合・一体化することである。
【0030】
白色LEDランプを構成する青、緑および赤の各蛍光体のうち、赤色発光蛍光体が青色や緑色発光蛍光体に比べて比重が大きい場合、これら三色の蛍光体を単に混合したものを透明樹脂8に添加しただけでは、硬化処理前に赤色発光蛍光体だけが早く沈降してしまう。このような沈降速度の差に起因する蛍光体の分散状態の不均一性が発光や投影光のムラ、側面漏光の色ずれ等の現象を生じさせていたものと考えられる。そこで、青、緑、赤の各蛍光体を混合したBGR蛍光体9を予め無機結合剤で結合・一体化し、この状態で透明樹脂8中に分散させる。これによって、各蛍光体の透明樹脂8中での分散状態を均一化させることができる。
【0031】
複数の蛍光体を無機結合剤で結合・一体化した蛍光体は、例えば以下のようにして得ることができる。まず、複数の蛍光体粉末を水に投入して懸濁液とする。この懸濁液を撹拌しながら、無機結合剤として微粉化したアルカリ土類ホウ酸塩等を加え、この状態で一定時間撹拌する。無機結合剤は複数の蛍光体の合計量に対して0.01〜0.3質量%の割合で添加することが好ましい。この後、撹拌を停止して蛍光体を沈降させ、ろ過、乾燥、さらに300℃以上の温度で数時間ベーキングする。これに篩分け等の処理を施すことによって、複数の蛍光体を結合・一体化した蛍光体を得ることができる。
【0032】
図3は三色混合蛍光体(BGR蛍光体)の一体化処理を施す前と後の粒度分布の一例を示している。一体化処理を施すことで3種類の蛍光体がランダムに結び付き、粒度分布が大粒径側にシフトしていることが分かる。なお、図3はアルカリ土類ホウ酸塩を蛍光体に対して0.1質量%添加して一体化したものであり、粒度分布の代表値である中位値(50%値)は処理前の7.3μmから10.5μmに増加している。このように、複数の蛍光体に一体化処理を施すことによって、複数の蛍光体がランダムに結び付いて一体化される。このような複数の蛍光体を一体化した複合蛍光体9を使用することによって、複数の蛍光体を透明樹脂8中に均一に分散させることが可能となる。
【0033】
さらに、複数の蛍光体を無機結合剤で一体化した場合、結合剤自体が耐光性に優れることから、結合剤の劣化による発光色度や発光効率の低下を抑制することができる。例えば、有機結合剤で複数の蛍光体を一体化した場合、有機樹脂の種類によってはLEDチップ2からの光、特に紫外光で劣化し、経時的に白濁や着色が生じるおそれがある。これはLEDランプ1の発光色度や発光効率の低下要因となる。このような点に対して、無機結合剤は耐UV特性に優れることから、無機結合剤で一体化した蛍光体を用いたLEDランプ1によれば、発光色度や発光効率を長期間にわたって安定に維持することができる。
【0034】
複数の蛍光体の透明樹脂8中での均一な分散状態は、各蛍光体の比重に応じて粒径を制御することによっても実現することできる。すなわち、各蛍光体の比重に基づいて粒径バランスを制御して沈降速度を揃えることによって、複数の蛍光体を透明樹脂8中に均一に分散させることができる。具体的には、複数の蛍光体のうちの1つの蛍光体の平均粒径をD1(μm)、比重をw1(g/mm)、他の1つ蛍光体の平均粒径をD2(μm)、比重をw2(g/mm)としたときに、
式:−0.2<{(D1)×w1}−{(D2)×w2}<0.2 …(1)
で表される条件を満足させる。
【0035】
平均粒径Dは粒度分布の中位値(50%値)を示すものである。ここで、複数の蛍光体として3種類以上の蛍光体を使用する場合には、各蛍光体の組合せにおける粒径バランス({(D1)×w1}−{(D2)×w2}の値)がそれぞれ(1)式の条件を満足することが好ましい。例えば、青、緑、赤の各蛍光体を用いる場合、青色発光蛍光体と緑色発光蛍光体、青色発光蛍光体と赤色発光蛍光体、緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体の各組合せにおいて、それぞれ(1)式の条件を満足させることが好ましい。
【0036】
複数の蛍光体の各組合せにおける粒径バランスのいずれかが−0.2以下もしくは0.2以上である場合には、複数の蛍光体の沈降速度のバラツキが大きくなり、透明樹脂8中での分散状態が不均一になる。例えば、第1の蛍光体の平均粒径D1が10μm、比重w1が4×10−3g/mm、第2の蛍光体の比重w2が5×10−3g/mmであるとしたとき、第2の蛍光体の平均粒径D2は6.3〜11μmの範囲とすることが望ましい。複数の蛍光体の粒径バランスは−0.15以上0.15以下の範囲とすることがより好ましい。
【0037】
表1はBGR蛍光体を用いる場合において、単に混合しただけのBGR蛍光体を用いた従来のLEDランプ(ランプ1)、一体化処理を施したBGR蛍光体を用いたLEDランプ(ランプ2)、(1)式で表される粒径バランスを満足させたBGR蛍光体を用いたLEDランプ(ランプ3)、一体化処理と粒径バランスの両方を満足させたBGR蛍光体を用いたLEDランプ(ランプ4)のそれぞれの発光色度差の一例を示している。なお、青色発光蛍光体の比重は4.2×10−3g/mm、緑色発光蛍光体の比重は3.8×10−3g/mm、赤色発光蛍光体の比重は5.7×10−3g/mmである。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に示すように、一体化処理を施した蛍光体や(1)式で表される粒径バランスを満足させた蛍光体を用いることによって、発光の均一性に優れたLEDランプを提供することができる。さらに、(1)式で表される粒径バランスは一体化処理を施す蛍光体に対しても有効であることが分かる。これは一体化処理時における均一性が向上するためである。このように、一体化処理を施した蛍光体や(1)式で表される粒径バランスを満足させた蛍光体を用いることによって、発光の均一性に優れたLEDランプを得ることができる。さらに、これら両方の条件を満足させた蛍光体を用いることによって、LEDランプの発光の均一性をより一層向上させることが可能となる。
【0040】
LEDランプ1の輝度特性には、複数の蛍光体を含む混合蛍光体9の粒径も影響する。このような点から、複数の蛍光体はそれらの混合物としての平均粒径が7μm以上であることが好ましい。ここで言う平均粒径は、粒度分布の中位値(50%値)を示すものである。図4は三色混合蛍光体(BGR蛍光体)の平均粒径とそれを用いたLEDランプの輝度との関係の一例を示している。図4から明らかなように、BGR蛍光体の混合物としての平均粒径を7μm以上とすることによって、LEDランプ1の輝度を高めることができる。混合蛍光体の平均粒径は8μm以上とすることがより好ましい。混合蛍光体の平均粒径に基づく輝度の向上は、一体化処理を施した蛍光体および(1)式で表される粒径バランスを満足させた蛍光体のいずれに対しても有効である。
【0041】
この実施形態のLEDランプ1は、例えば照明装置として各種の用途に使用することができる。LEDランプ1の代表的な使用例としては、液晶表示装置に代表される各種表示装置のバックライトが挙げられる。図5は本発明の一実施形態によるバックライトの概略構成を示す図である。同図に示すバックライト20は、直線状もしくはマトリクス状に配列された複数のLEDランプ1を有している。これらLEDランプ1は配線層21を有する基板22上に実装されており、LEDランプ1の各リード端子は配線層21と電気的に接続されている。複数のLEDランプ1は順に直列接続されている。なお、バックライト20の発光部はLEDランプ1に限られるものではなく、光源にレーザダイオード等の発光型半導体素子を適用した発光装置を使用することが可能である。
【0042】
上述したバックライト20は、例えば図6や図7に示すように液晶表示装置30、40に適用される。これらの図に示す液晶表示装置30、40は、本発明の液晶表示装置の実施形態を示すものである。図6はサイドライト型のバックライト20Aを適用した液晶表示装置30を示している。サイドライト型バックライト20Aは、LEDランプ1を用いた発光部31と導光板32とを有している。導光板32は一方の端面が光入射部とされており、その部分に発光部31が配置されている。
【0043】
導光板32は光入射部となる一方の端面から他方の端面に向けてテーパ形状とされており、テーパ部分の下面側には反射層33が設けられている。発光部31から放射された光は、導光板32内で屈折や反射を繰り返すことによって、導光板32の上面からその法線方向に照射される。このようなサイドライト型バックライト20Aの発光面側に、透過型または半透過型のカラー液晶表示部34が配置されており、これらによって液晶表示装置30が構成されている。サイドライト型バックライト20Aとカラー液晶表示部34との間には、拡散シートや反射シート等の光学シート35を配置してもよい。
【0044】
図7は直下型のバックライト20Bを適用した液晶表示装置40を示している。直下型バックライト20Bは、透過型または半透過型のカラー液晶表示部34の形状および面積に応じてマトリクス状に配列したLEDランプ1を有している。カラー液晶表示部34はバックライト20Bを構成する複数のLEDランプ1の発光方向に直接配置されている。このような直下型バックライト20Bとカラー液晶表示部34、さらに必要に応じてこれらの間に配置された光学シート35によって、液晶表示装置40が構成されている。
【0045】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0046】
実施例1
まず、青色発光蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr、Ca、Ba、Eu)10(PO・Cl)蛍光体、緑色発光蛍光体としてユーロピウムおよびマンガン付活アルカリ土類アルミン酸塩(3(Ba、Mg、Eu、Mn)O・8Al)蛍光体、赤色発光蛍光体としてユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン((La、Eu、Sm)S)蛍光体を用意した。ここでは、平均粒径が6.0μmの青色発光蛍光体、平均粒径が7.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が9.5μmの赤色発光蛍光体を使用した。これら各蛍光体の混合物としての平均粒径は8.8μmである。
【0047】
上述した青色発光蛍光体を1.3g、緑色発光蛍光体を2g、赤色発光蛍光体を10g計量し、これらを以下に示す方法で一体化した。なお、各蛍光体の混合比はLEDランプのCIE色度値(x、y)がx=0.28〜0.36、y=0.28〜0.36の範囲に入るように設定したものである。以下の実施例2〜14および比較例1〜2も同様である。一体化工程は、まず各蛍光体粉末を水に投入して懸濁液とした。この懸濁液を撹拌しながら、ホウ酸バリウム・カルシウム(3(Ba、Ca)O・B)を各蛍光体の合計量に対して0.1質量%の割合で添加した。撹拌を30分間継続した後に停止し、蛍光体を沈降させた。これをろ過してベーキングした後に200メッシュのナイロン篩いにかけて、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を得た。
【0048】
このようにして得た一体化蛍光体を用いて、図1に示したLEDランプ1を作製した。LEDランプ1の作製工程は、まず透明樹脂8を構成するシリコーン樹脂に、一体化蛍光体を30質量%の割合で混合してスラリーとした。このスラリーから一部を抜き取って、発光波長が395nmの紫外発光LEDチップ2上に滴下し、140℃でシリコーン樹脂を硬化させた。このようにして、一体化されたBGR蛍光体を含有するシリコーン樹脂で紫外発光LEDチップ2を封止して、LEDランプ1を作製した。得られたLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0049】
実施例2
上記した実施例1において、平均粒径が12.0μmの青色発光蛍光体、平均粒径が13.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が10.5μmの赤色発光蛍光体を使用する以外は、実施例1と同様にして、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。さらに、この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0050】
実施例3
上記した実施例1において、一体化工程におけるホウ酸バリウム・カルシウムの添加量を各蛍光体の合計量に対して0.2質量%とする以外は、実施例1と同様にして一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0051】
実施例4
上記した実施例1において、一体化工程でホウ酸バリウム・カルシウム・マグネシウムを使用すると共に、このホウ酸バリウム・カルシウム・マグネシウムの添加量を各蛍光体の合計量に対して0.2質量%とする以外は、実施例1と同様にして一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0052】
実施例5
上記した実施例1において、平均粒径が10.5μmの青色発光蛍光体、平均粒径が11.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が9.0μmの赤色発光蛍光体を使用する以外は、実施例1と同様にして、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0053】
実施例6
上記した実施例5において、一体化工程でホウ酸バリウム・カルシウムの添加量を各蛍光体の合計量に対して0.3質量%とする以外は、実施例5と同様にして、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0054】
実施例7
上記した実施例1と同組成の蛍光体において、青色発光蛍光体(比重=4.2g/mm)は平均粒径が6μmの蛍光体粉末、緑色発光蛍光体(比重=3.8g/mm)は平均粒径が7μmの蛍光体粉末、赤色発光蛍光体(比重=5.7g/mm)は平均粒径が7μmの蛍光体粉末を用意した。これら各蛍光体の前述した(1)式で表される粒径バランスを計算すると、青色発光蛍光体(D1)と緑色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは−0.035、青色発光蛍光体(D1)と赤色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは−0.128、緑色発光蛍光体(D1)と赤色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは−0.093であり、いずれも前述した(1)式の粒径バランスを満足している。
【0055】
次に、上記した各蛍光体の混合物をシリコーン樹脂に添加してスラリーとした。シリコーン樹脂への混合量は各蛍光体の合計割合が30質量%となるようにした。このスラリーから一部を抜き取って、発光波長が395nmの紫外発光LEDチップ2上に滴下し、140℃でシリコーン樹脂を硬化させた。このようにして、青、緑および赤の各蛍光体を個々に含有するシリコーン樹脂で紫外発光LEDチップ2を封止して、LEDランプ1を作製した。得られたLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0056】
実施例8
上記した実施例1と同組成の蛍光体において、青色発光蛍光体(比重=4.2g/mm)は平均粒径が12μmの蛍光体粉末、緑色発光蛍光体(比重=3.8g/mm)は平均粒径が13μmの蛍光体粉末、赤色発光蛍光体(比重=5.7g/mm)は平均粒径が10.5μmの蛍光体粉末を用意した。これら各蛍光体の前述した(1)式で表される粒径バランスを計算すると、青色発光蛍光体(D1)と緑色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは−0.037、青色発光蛍光体(D1)と赤色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは−0.024、緑色発光蛍光体(D1)と赤色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは0.014であり、いずれも前述した(1)式の粒径バランスを満足している。これら各蛍光体を用いて、実施例7と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0057】
実施例9
上記した実施例1と同組成の蛍光体において、青色発光蛍光体(比重=4.2g/mm)は平均粒径が10.5μmの蛍光体粉末、緑色発光蛍光体(比重=3.8g/mm)は平均粒径が11μmの蛍光体粉末、赤色発光蛍光体(比重=5.7g/mm)は平均粒径が9μmの蛍光体粉末を用意した。これら各蛍光体の前述した(1)式で表される粒径バランスを計算すると、青色発光蛍光体(D1)と緑色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは0.003、青色発光蛍光体(D1)と赤色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは0.001、緑色発光蛍光体(D1)と赤色発光蛍光体(D2)の粒径バランスは−0.002であり、いずれも前述した(1)式の粒径バランスを満足している。これら各蛍光体を用いて、実施例7と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0058】
比較例1
実施例1と同組成、同粒径、並びに同量の青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体を用意した。これら各蛍光体において、青色発光蛍光体と赤色発光蛍光体の粒径バランスは−0.363、緑色発光蛍光体と赤色発光蛍光体の粒径バランスが−0.328であり、前述した(1)式の粒径バランスの範囲から外れている。これら各蛍光体の混合物をシリコーン樹脂に添加してスラリーとした。シリコーン樹脂への混合量は各蛍光体の合計割合が30質量%となるようにした。このスラリーから一部を抜き取って発光波長が395nmの紫外発光LEDチップ2上に滴下し、140℃でシリコーン樹脂を硬化させて、青、緑および赤の各蛍光体を個々に含有するシリコーン樹脂で紫外発光LEDチップ2を封止した。このようにして作製したLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0059】
実施例10
まず、青色発光蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類クロロ燐酸塩((Sr、Ca、Ba、Eu)10(PO・Cl)蛍光体、緑色発光蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類珪酸塩(Ba、Sr、Ca、Eu)SiO)蛍光体、赤色発光蛍光体としてユーロピウムおよびサマリウム付活酸硫化ランタン((La、Eu、Sm)S)蛍光体を用意した。次いで、平均粒径が5.9μmの青色発光蛍光体を8.0g、平均粒径が10.0μmの緑色発光蛍光体を1.5g、平均粒径が9.0μmの赤色発光蛍光体を6g計量し、これらを実施例1と同様な方法で一体化した。この一体化蛍光体(BGR蛍光体)を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0060】
実施例11
上記した実施例10において、平均粒径が8.6μmの青色発光蛍光体、平均粒径が10.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が11.9μmの赤色発光蛍光体を使用する以外は、実施例10と同様にして、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0061】
実施例12
上記した実施例10において、平均粒径が12.0μmの青色発光蛍光体、平均粒径が10.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が13.2μmの赤色発光蛍光体を使用する以外は、実施例10と同様にして、一体化し3色混合蛍光体を作製した。さらに、この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0062】
実施例13
上記した実施例10において、平均粒径が5.0μmの青色発光蛍光体、平均粒径が7.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が8.0μmの赤色発光蛍光体を使用する以外は、実施例10と同様にして、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0063】
実施例14
上記した実施例10において、平均粒径が4.0μmの青色発光蛍光体、平均粒径が6.0μmの緑色発光蛍光体、平均粒径が7.0μmの赤色発光蛍光体を使用する以外は、実施例10と同様にして、一体化した三色混合蛍光体(BGR蛍光体)を作製した。この一体化蛍光体を用いて、実施例1と同様にしてLEDランプを作製した。このLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0064】
比較例2
実施例14と同組成、同粒径並びに同量の青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体および赤色発光蛍光体を用意した。これら蛍光体の混合物をシリコーン樹脂に混合してスラリーとした。シリコーン樹脂への混合量は各蛍光体の合計割合が30質量%となるようにした。このスラリーから一部を抜き取って、発光波長が395nmの紫外発光LEDチップ上に滴下し、140℃でシリコーン樹脂を硬化させることによって、青、緑および赤の各蛍光体を個々に含有するシリコーン樹脂で紫外発光LEDチップを封止した。このようにして作製したLEDランプを後述する特性評価に供した。
【0065】
上述した実施例1〜14および比較例1〜2の各LEDランプに20mAの電流を流して点灯させ、各ランプの発光輝度と前述した方法に基づく全方位での発光色度差(Δx、Δy)を測定した。これらの測定結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2から明らかなように、実施例1〜14による各LEDランプは前面発光および側面漏光の全方位にわたって均一な発光が得られており、白色LEDランプを照明装置等として使用する場合の品質や特性を大幅に高めることができる。特に、複数の蛍光体の粒径バランスを満足させた上で一体化することによって、全方位にわたる発光の均一性がより向上することが分かる。さらに、LEDランプの輝度に関しては、混合蛍光体の平均粒径を7μm以上とすることで高めることができる。
【0068】
実施例15
上述した実施例5の白色LEDランプを用いて、LEDチップの初期バラツキが白色LEDランプの発光特性に及ぼす影響を調べた。LEDチップは1枚の半導体ウエハから多数個同時に作製されるため、半導体ウエハの中心部と周辺部とではLEDの特性に違いが生じる場合がある。このため、LEDチップの発光波長にも微妙なバラツキが生じる。このような初期バラツキを有するLEDチップを用いて白色LEDランプを作製し、発光色度や輝度に及ぼす影響を調べた。
【0069】
表3に初期バラツキにより発光波長が微妙に異なる6個の紫外発光LEDチップ(UV−LED)を示す。表3は各LEDチップの発光波長と出力、さらにこれらの最大値、最小値、平均値、最大値と最小値の差(Δ)、Δを平均値で割った値を示している。このような紫外発光LEDチップをそれぞれ用いて作製した白色LEDランプの発光色度と輝度を表4に示す。表4は白色LEDランプの発光色度と輝度、これらの最大値、最小値、最大値と最小値の差(Δ)、平均値、さらに各輝度を平均値で割った規格化光束を示している。
【0070】
なお、表3および表4に示す比較例は、青色発光LEDチップ(B−LED)と黄色発光蛍光体(YAG蛍光体)とを用いて作製した白色LEDランプである。青色発光LEDチップも紫外発光LEDチップと同様な初期バラツキを有する。表3に初期バラツキにより発光波長が微妙に異なる6個の青色発光LEDチップを示す。このような青色発光LEDチップをそれぞれ用いて作製した白色LEDランプの発光色度と輝度を表4に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
表3から明らかなように、紫外発光LEDチップは青色発光LEDチップとほぼ同等の発光波長の初期バラツキを有している。それにもかかわらず、実施例の白色LEDランプ(UV−LED+BGR蛍光体)は比較例の白色LEDランプ(B−LED+Y蛍光体)に比べて、得られる白色光のバラツキが小さいことが分かる。これは、紫外光そのものは無色であり、あくまでもBGR蛍光体の発光色で白色光を得ているためである。従って、LEDチップの発光波長にバラツキがあっても、得られる白色光はバラツキが小さい。これに対して、比較例の白色LEDランプはLEDチップの青色発光を用いて白色光を形成しているため、青色光の波長のバラツキがそのまま白色光のバラツキになっている。
【0074】
実施例16
上述した実施例5の白色LEDランプを用いて、白色LEDランプの温度特性を調べた。温度特性は25℃、50℃、75℃、85℃の各温度に30分放置した後、各温度状態による発光色度を測定した。表5に各温度による発光色度と色度差を示す。さらに、図8に各温度による発光色度を示す。ここでも、比較例として青色発光LEDチップと黄色発光蛍光体(YAG蛍光体)とを用いて作製した白色LEDランプを作製し、その温度特性を調べた。比較例の測定結果を表5および図8に併せて示す。
【0075】
【表5】

【0076】
表5および図8から明らかなように、実施例の白色LEDランプ(UV−LED+BGR蛍光体)は比較例の白色LEDランプ(B−LED+Y蛍光体)に比べて、温度特性に優れていることが分かる。具体的には、25℃と85℃における発光色度の色差(絶対値)を、Δx<0.005およびΔy<0.01の範囲とすることができる。このような温度特性を有する白色LEDランプは、液晶表示装置のバックライト等に好適である。一方、比較例の白色LEDランプは青色発光LEDチップが温度変化に弱いため、白色光を形成する青色光の波長が変化し、それがそのまま白色光のバラツキになっている。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の発光装置は、発光色が異なる複数の蛍光体を有する発光部から放出される光の均一性に優れるものである。このような発光装置は、各種表示装置のバックライトに代表される産業用途や一般照明用途に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1…発光装置(LEDランプ)、2…LEDチップ、3a、3b…リード端子、4…基板、5…ボンディングワイヤ、6…樹脂枠、7…反射層、8…透明樹脂、9…混合蛍光体、10…検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光型半導体素子を有する光源と、
発光色が異なる複数の蛍光体を有し、前記光源からの光により励起されて可視光を発光する発光部とを具備する発光装置の製造方法であって、
前記発光部は、前記複数の蛍光体が分散して含有された樹脂層を有するものであって、前記樹脂層は、前記複数の蛍光体として、下記条件1および条件2から選ばれる少なくとも1つの条件を満足する蛍光体を用いて形成することを特徴とする発光装置の製造方法。
条件1:前記複数の蛍光体のうちの1種の蛍光体の平均粒径をD1(μm)、比重をw1(g/mm)、他の1種の蛍光体の平均粒径をD2(μm)、比重をw2(g/mm)としたとき、前記複数の蛍光体は、式:−0.2<{(D1)×w1}−{(D2)×w2}<0.2で表される条件を満足する。
条件2:前記複数の蛍光体は無機結合剤で結合・一体化されている。
【請求項2】
請求項1記載の発光装置の製造方法において、
前記複数の蛍光体が、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、および赤色発光蛍光体を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の発光装置の製造方法において、
前記複数の蛍光体は、それらの混合物としての平均粒径が7μm以上であることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の発光装置の製造方法において、
前記発光型半導体素子は360〜420nmの範囲の発光波長を有する発光ダイオードであることを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の発光装置の製造方法において、
前記発光部は、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体、および赤色発光蛍光体から発光される可視光の混色により白色光を放出することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
発光装置を2つ以上具備するバックライトであって、
前記発光装置は、請求項1乃至5のいずれか1記載の発光装置の製造方法により製造されたものであって、下記条件3および条件4を満足するものであることを特徴とするバックライト。
条件3:前記発光装置の真上で測定した発光色度を(x、y)、前記発光装置の前面発光および側面漏光を全方位にわたって測定した際の発光色度を(x1、y1)としたとき、これら発光色度の色差(絶対値)の最大値(Δx、Δy)が、Δx<0.05およびΔy<0.05の条件を満足する。
条件4:前記発光装置は25℃における発光色度と85℃における発光色度の色差(Δx、Δy(絶対値))がΔx<0.005、Δy<0.01の範囲内である温度特性を有する。
【請求項7】
請求項6記載のバックライトと、
前記バックライトの発光面側に配置され、透過型または半透過型の液晶表示部と
を具備することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−209565(P2012−209565A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128785(P2012−128785)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2006−536340(P2006−536340)の分割
【原出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】