説明

発光装置

【課題】発光装置の温度上昇による劣化を防止しつつ、効率良く発光が可能な発光装置を提供する。
【解決手段】本発明の発光装置1は、電圧の印加により照明光を発光する発光部3と、前記照明光の発光方向に設けられた光学部材5と、前記光学部材5の温度を計測する温度計測手段6と、電源電圧を昇圧することにより、前記発光部3に供給する充電用の電圧を生成する昇圧回路13と、前記温度計測手段6により計測された前記光学部材5の温度に応じて前記照明光を連続発光するのに適した発光間隔を設定すると共に、設定した前記発光間隔に基づいて前記発光部3における発光のタイミングを制御する発光制御手段10と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影時に被写体を証明するために用いられる発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮影時に被写体を照明するためにカメラ等に装着される発光装置がある。このような発光装置においては、連続発光すると、発光部近傍に設けられたフレネルレンズ等のカバーレンズの温度が上昇し、変形等する可能性がある。
このため、従来、温度検出手段をカバーレンズの近傍に取り付け、該温度検出手段によりカバーレンズの温度を測定し、温度が第1の温度以上になったら発光用のコンデンサの昇圧動作を制限し、第1の温度以上の第2の温度以上になったら昇圧動作を禁止している発光装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3762009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術によると、コンデンサの昇圧動作の制限方法が一種類であるため、必ずしも実際の検出温度に応じた適切な制限が行われるわけではない。必要以上に昇圧動作が制限され、昇圧時間が長くなる可能性もある。また、第2の温度以上になると、測定温度が下がるまで昇圧が禁止され、一旦昇圧動作が禁止されると検出温度が低下するまで昇圧動作は行われないため、次の発光までに時間がかかる。
【0005】
本発明の課題は、発光装置の温度上昇による劣化を防止しつつ、効率良く発光が可能な発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1記載の発明は、電圧の印加により照明光を発光する発光部(3)と、前記照明光の発光方向に設けられた光学部材(5)と、前記光学部材(5)の温度を計測する温度計測手段(6)と、電源電圧を昇圧することにより、前記発光部(3)に供給する充電用の電圧を生成する昇圧回路(13)と、前記温度計測手段(6)により計測された前記光学部材(5)の温度に応じて前記照明光を連続発光するのに適した発光間隔を設定すると共に、設定した前記発光間隔に基づいて前記発光部(3)における発光のタイミングを制御する発光制御手段(10)と、を備えることを特徴とする発光装置(1)である。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発光装置(1)において、前記光学部材(5)の温度と、前記発光部(3)を連続発光させたときに前記光学部材(5)を融解させない発光間隔とを対応付けたデータを記憶するデータ記憶手段(16)を備え、前記発光制御手段(10)は、前記温度計測手段(6)により計測された前記光学部材(5)の温度と、前記データ記憶手段(16)に記憶されている前記データとに基づいて前記発光間隔を設定すること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の発光装置(1)において、前記発光制御手段(10)は、設定した前記発光間隔に基づいて前記昇圧回路(13)における昇圧動作のデューティ比を変更すること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置(1)において、前記発光制御手段(10)は、設定した前記発光間隔と、前記発光部(3)における直前の発光量とに基づいて前記昇圧回路(13)における昇圧動作のデューティ比を変更すること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項5記載の発明は、請求項4に記載の発光装置(1)において、前記発光制御手段(10)は、前記発光部(3)における直前の前記発光量が設定値よりも大きいときにはデューティ比をより小さくし、前記発光量が設定値よりも小さいときにはデューティ比をより大きくすること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項6記載の発明は、請求項3又は4に記載の発光装置(1)において、前記発光制御手段(10)は、昇圧動作の開始直後においてはデューティ比を大きくし、昇圧動作の終了間近においてはデューティ比を小さくすること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項7記載の発明は、請求項1又は2に記載の発光装置(1)において、ユーザに充電完了を報知する充電完了報知手段を備え、前記発光制御手段(10)は、設定した前記発光間隔に基づいて、前記充電完了報知手段により充電完了を報知するタイミングを遅らせること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項8記載の発明は、請求項1又は2に記載の発光装置(1)において、前記発光制御手段(10)は、設定した前記発光間隔に基づいて、前記発光部(3)における発光のタイミングを遅らせること、を特徴とする発光装置(1)である。
請求項9記載の発明は、請求項8に記載の発光装置(1)において、前記発光制御手段(10)は、前記発光部(3)における直前の発光量が設定値よりも大きいときには前記発光部(3)における発光タイミングの遅れを大きくし、前記発光部(3)における直前の前記発光量が設定値よりも小さいときには前記発光部(3)における発光タイミングの遅れを小さくすること、を特徴とする発光装置(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光装置の温度上昇による劣化を防止しつつ、効率良く発光が可能な発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発光装置の概略図である。
【図2】発光装置のブロック図である。
【図3】温度検出装置の検出温度と連続発光間隔との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の第一実施形態の発光装置について説明する。
図1は、発光装置1の概略図である。本実施形態では、発光装置1として、例えば一眼レフカメラに着脱可能に取り付けられる外付け用の発光装置1について説明するが、これに限定されず、カメラと一体型の発光装置であってもよい。
【0011】
図示するように、発光装置1は、閃光を発光するキセノン管2を有する発光部3と、発光部3を覆う筐体4と、筐体4の被写体側開口部を覆うカバーレンズ5とを備える。カバーレンズ5は、プラスチック製のフレネルレンズ等であり、キセノン管2から発光された光を拡散させるものである。
筐体4の内面のカバーレンズ5近傍には、サーミスタや温度センサIC等の温度検出装置6が取り付けられている。温度検出装置6は、後述する制御部10に接続されている。
【0012】
図2は発光装置1のブロック図である。
発光装置1は、電池11を収納可能な電池収納部12と、電池収納部12に接続された昇圧回路13と、その昇圧回路13の二次側に配置された整流素子14と、高電圧に充電されるコンデンサ15とを備える。
さらに発光装置1は、上述の発光部3と、温度検出装置6と、発光部3の発光動作を行う発光回路17と、発光装置1全体を制御する制御部10とを備える。
【0013】
発光装置1に設けられた電源(図示せず)がオンにされると、制御部10は初期チェックを行い、昇圧回路13を動作させ、所定の電圧までコンデンサ15を充電して昇圧回路13を停止させる。
次に制御部10は、発光装置1が取り付けられているカメラから発光指示を受信すると、発光回路17を動作させて、発光部3を発光させる。なお、発光指示は、カメラのレリーズボタンの全押し動作に連動している。
【0014】
発光部3の発光が終了するとカバーレンズ5近傍の温度が温度検出装置6によって検出される。検出された温度情報は制御部10に送られる。
連続発光する場合、制御部10は、再度、昇圧回路13を動作させてコンデンサ15を充電させる。この際、温度検出装置6によって検出された温度に応じて、昇圧回路13によるコンデンサ15の充電速度が変更される。
すなわち、温度検出装置6によって検出された温度によって、連続発光を行うことが可能な連続発光間隔が変更される。
【0015】
図3は、カバーレンズ5の近傍に設けられた温度検出装置6の検出温度の温度と、発光部3を連続発光させたときにカバーレンズ5を融解させない発光間隔とを対応付けたグラフである。なお、このグラフは、フル発光を行う場合のグラフである。本実施形態で制御部10は、このグラフの関係を示すテーブルを記憶している記憶部16(図2に図示)を備えている。
ただし、本発明はこれに限定されず、制御部10は、記憶部16に温度検出装置6の検出温度と連続発光間隔との関係を示すテーブルを記憶する代わりに、検出温度と連続発光時間との関数を演算してもよい。
【0016】
図3のグラフによると、温度検出装置6の検出温度が70度以上で80度より低い場合、連続発光間隔は2秒である。検出温度が80度以上で90度より低い場合、連続発光間隔は3秒である。検出温度が90度以上で100度より低い場合、連続発光間隔は4秒である。検出温度が100度以上で110度より低い場合、連続発光間隔は5秒である。検出温度が110度以上で120度より低い場合、連続発光間隔は7秒である。検出温度が120度以上で130度より低い場合、連続発光間隔は10秒である。検出温度が130度以上の場合、連続発光間隔は12秒である。
【0017】
このように、温度検出装置6の検出温度による、連続発光間隔の変更は、制御部10から昇圧回路13へ送られる信号のデューティ比を変更することで行われる。
デューティ比は、充電時間/(充電時間+充電停止時間)で表される。すなわち、デューティ比が大きいということは、充電停止時間が短く、短時間で充電可能なため、連続発光間隔が短くなる。デューティ比が小さいということは、充電停止時間が長く、連続発光間隔が長くなる。
【0018】
本実施形態で、デューティ比=1の場合、すなわち、充電を停止せず継続した場合の、発光装置1が発光可能となる時間は、例えば1秒である。温度検出装置6の検出温度が70度より低い場合、デューティ比=1で、充電は停止せず、この最短時間の1秒で充電される。
温度検出装置6の検出温度が高くなるに従い、段階的にデューティ比が小さくなり、発光装置1が発光可能になるまでの時間が長くなる。例えば、デューティ比が1/2の場合、発光装置1が発光可能になるまでの時間は2秒になる。例えば、デューティ比が1/3の場合、発光装置1が発光可能になるまでの時間は3秒になる。
【0019】
本実施形態において、カバーレンズ5の融解温度は約130度である。温度検出装置6の検出温度が130度になると、連続発光間隔は12秒となる。この12秒は、本実施形態の発光装置1における発光による温度上昇分が冷却可能な時間である。温度検出装置6で130度が検出されたとき、12秒間発光しないと、カバーレンズ5の温度は低下する。12秒後に発光しても、130度以上にはならず、発光装置1の融解による変形や破壊が防止される。
なお、温度検出装置6の検出温度が130度になった場合、発光装置1の背面等に警告を表示するようにしてもよい。
【0020】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
【0021】
(1)本実施形態は、発光装置1のカバーレンズ5の近傍の温度に応じて、コンデンサを充電するための信号のデューティ比を細かく変更し、充電時間を段階的に変更している。したがって、カバーレンズ5が変形等することのない必要且つ十分な時間で連続発光間隔が決定されるので、充電時間が不必要に長くなることがなく、効率がよい。
【0022】
(2)本実施形態では、温度検出装置6による検出温度によらず、充電速度は異なるものの、コンデンサ15の充電は行うので、連続発光間隔が不必要に長くなることがない。
【0023】
(3)カバーレンズ5の融解温度付近まで温度上昇(例えば130度)すると、融解温度を越えない発光間隔で、発光が継続される。したがって、発光装置1の温度上昇による変形等の劣化を防止しつつ、効率良く発光が可能である。
【0024】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、本発明は以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
【0025】
(1)上述の実施形態では、温度検出装置6の検出温度により制御部10から昇圧回路13へ送られる信号のデューティ比を変更したが、これに限定されない。発光部3の直前の発光量によってデューティ比を変更してもよい。例えば、小発光の場合、温度上昇は少ないのでデューティ比を大きくし、大発光の場合は温度上昇が大きいのでデューティ比を小さくする。
この場合、小発光、中発光、大発光において、予め、どのぐらい発熱量があるかを測定し、それぞれ、どのぐらいの充電時間が適切かを予め決定しておく。それに併せて充電時間を延長するようにデューティ比を変更する。例えば、大発光の場合は小発光に比べてデューティ比を1/3倍、中発光なら1/2倍というような制御を行う。
【0026】
(2)また、発光の直後か充電完了近くかでデューティ比を変えるようにしてもよい。例えば、発光直後はデューティ比を大きくして充電完了近くはデューティ比を小さくする。
【0027】
(3)発光間隔を伸ばす方法としては、デューティ比を変更せず、充電は一定の速度で行い、レディーランプの点灯を遅らせるようにしてもよい。
【0028】
(4)さらに、予め、温度検出装置6により検出された温度に対応して設定された時間だけ発光タイミングを遅らせてもよい。
また、上記実施形態及び変形形態は適宜に組み合わせて用いることができるが、各実施形態の構成は図示と説明により明らかであるため、詳細な説明を省略する。さらに、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0029】
1:発光装置、3:発光部、5:カバーレンズ、6:温度検出装置、10:制御部、13:昇圧回路、15:コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加により照明光を発光する発光部と、
前記照明光の発光方向に設けられた光学部材と、
前記光学部材の温度を計測する温度計測手段と、
電源電圧を昇圧することにより、前記発光部に供給する充電用の電圧を生成する昇圧回路と、
前記温度計測手段により計測された前記光学部材の温度に応じて前記照明光を連続発光するのに適した発光間隔を設定すると共に、設定した前記発光間隔に基づいて前記発光部における発光のタイミングを制御する発光制御手段と、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記光学部材の温度と、前記発光部を連続発光させたときに前記光学部材を融解させない発光間隔とを対応付けたデータを記憶するデータ記憶手段を備え、
前記発光制御手段は、前記温度計測手段により計測された前記光学部材の温度と、前記データ記憶手段に記憶されている前記データとに基づいて前記発光間隔を設定すること、
を特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
前記発光制御手段は、設定した前記発光間隔に基づいて前記昇圧回路における昇圧動作のデューティ比を変更すること、
を特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記発光制御手段は、設定した前記発光間隔と、前記発光部における直前の発光量とに基づいて前記昇圧回路における昇圧動作のデューティ比を変更すること、
を特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の発光装置において、
前記発光制御手段は、前記発光部における直前の前記発光量が設定値よりも大きいときにはデューティ比をより小さくし、前記発光量が設定値よりも小さいときにはデューティ比をより大きくすること、
を特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の発光装置において、
前記発光制御手段は、昇圧動作の開始直後においてはデューティ比を大きくし、昇圧動作の終了間近においてはデューティ比を小さくすること、
を特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
ユーザに充電完了を報知する充電完了報知手段を備え、
前記発光制御手段は、設定した前記発光間隔に基づいて、前記充電完了報知手段により充電完了を報知するタイミングを遅らせること、
を特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
前記発光制御手段は、設定した前記発光間隔に基づいて、前記発光部における発光のタイミングを遅らせること、
を特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の発光装置において、
前記発光制御手段は、前記発光部における直前の発光量が設定値よりも大きいときには前記発光部における発光タイミングの遅れを大きくし、前記発光部における直前の前記発光量が設定値よりも小さいときには前記発光部における発光タイミングの遅れを小さくすること、
を特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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