説明

発情期診断システム、発情期診断方法、および発情期診断プログラム

【課題】飼養施設や環境、時期など様々に異なる条件に対応して、家畜の発情期診断を高精度に実行する。
【解決手段】家畜の行動量センサ10の測定値を得る測定値取得部110と、測定値データを関数に適用しパラメータを生成するパラメータ生成部111と、各パラメータの重み付けを示す係数群における各係数を変化させ所定数の個体群を生成する個体群生成部112と、交叉または突然変異の処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代繰り返す遺伝的操作部113と、各期間における重み付け済みパラメータの群を世代毎に生成し各世代における各期間の各パラメータの閾値到達可否を判定するパラメータ判定部114と、閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上の期間を候補期間として特定し家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代とする世代特定部115と、以降、最適世代の個体群に基づいて発情期を特定する時期診断部116とから発情期診断システム100を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発情期診断システム、発情期診断方法、および発情期診断プログラムに関するものであり、具体的には、飼養施設や環境、時期など様々に異なる条件に対応して、家畜の発情期診断を高精度に実行する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産農家一戸あたりの経営規模拡大並びに家畜の飼養頭数増加という傾向が強くなっている。多頭化にすることで家畜1頭当たりにかかる労働時間等が低減され、作業効率の向上が見込まれるためである。ところが、多頭化した家畜全頭に対して目視確認等を継続することは大変な労苦であり、確認漏れなどが生じやすい。こうした状況においては、家畜の繁殖管理を行う上で、畜産経営に大きく影響する発情体の発見割合の低下が問題視されている。
【0003】
そこで、家畜一頭ずつの目視による発情確認作業の負荷を軽減するため、家畜の体調や行動量をセンサ類で測定し、この測定値と発情期における家畜の体調や行動量の基準値とを照合して発情期を診断するといった技術が提案されている。
【0004】
こうした従来技術としては例えば、サーモグラフィを用いて哺乳類の外陰部周辺部位とその隣接部位を撮影し、得られた熱画像を解析することにより発情の可能性のある個体のスクリーニングを行うことを特徴とする、哺乳類の雌の発情時期のスクリーニング方法(特許文献1参照)などが提案されている。
【0005】
また、装着型振動計を起動スイッチの操作で駆動させ、間欠振動数値、連続振動数値、静動または振動停止数値などを発生させ、これら振動数値情報を集中計算装置に伝送、入力、記憶し、棒グラフ、折れ線グラフ等の図表に図表化し、解析機能で解析された解析内容に基づき、牛、豚、馬等の発情を集中計算装置の発情予知機能で発情の時期を予知し、かつ、受精後の分娩日時予知を集中計算装置の分娩日時予知機能で分娩日時を予知し、さらに、集中計算装置の疾病発見機能で疾病を発見する技術(特許文献2参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−204750号公報
【特許文献2】特開2003−325077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの発情期診断手法は、行動量センサ等の測定値から固定的に所定指標を求め、単純に、この指標が所定閾値を越えた時期を発情期であると診断していた。一方、畜産家の施設毎に家畜の飼養方法や環境、或いは地域や家畜個体の特性は異なる。そのため、一律の指標や閾値を用いた診断を行う場合、ある時期の特定の施設では発情期の診断精度が高くても、別の時期の別の施設では発情期の判別が精度良くできないという問題が発生していた。つまり、家畜の飼養方法や環境、地域や家畜個体の特性、或いは時期等といった多様な条件に適応した発情期診断が出来ず、実は不十分な精度での発情期診断しか出来ない状況にあった。
【0008】
そこで本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、飼養施設や環境、時期など様々に異なる条件に対応して、家畜の発情期診断を高精度に実行する技術の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の発情期診断システムは、家畜の発情期を診断するコンピュータシステムであり、入力データから所定パラメータを生成する関数を複数種記憶した記憶部と、以下の機能部を有している。
【0010】
すなわち、前記発情期診断システムは、家畜に取り付けられた行動量センサの測定値を測定日時情報と共に入力部ないし前記行動量センサとの通信部にて受け付けて取得し、記憶部に格納する測定値取得部を備えている。
【0011】
また、前記発情期診断システムは、前記記憶部から所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部に格納するパラメータ生成部を備えている。
【0012】
また、前記発情期診断システムは、前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部に格納する個体群生成部を備えている。
【0013】
また、前記発情期診断システムは、前記記憶部における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部に格納する遺伝的操作部を備えている。
【0014】
また、前記発情期診断システムは、前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定部を備えている。
【0015】
また、前記発情期診断システムは、前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部に格納する世代特定部を備えている。
【0016】
また、前記発情期診断システムは、以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサより得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部に出力する時期診断部を備えている。
【0017】
なお、前記発情期診断システムは、前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部が特定した発情期と、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成部、前記遺伝的操作部、前記パラメータ判定部、および前記世代特定部に対して処理の再実行を指示する継続判定部を備えるとしてもよい。
【0018】
また、本発明の発情期診断方法は、入力データから所定パラメータを生成する関数を複数種記憶した記憶部を備え、家畜の発情期を診断するコンピュータが、以下の処理を実行するものである。
【0019】
すなわち、前記コンピュータは、家畜に取り付けられた行動量センサの測定値を測定日時情報と共に入力部ないし前記行動量センサとの通信部にて受け付けて取得し、記憶部に格納する測定値取得処理を実行する。
【0020】
また、前記コンピュータは、前記記憶部から所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部に格納するパラメータ生成処理を実行する。
【0021】
また、前記コンピュータは、前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部に格納する個体群生成処理を実行する。
【0022】
また、前記コンピュータは、前記記憶部における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部に格納する遺伝的操作処理を実行する。
【0023】
また、前記コンピュータは、前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定処理を実行する。
【0024】
また、前記コンピュータは、前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部に格納する世代特定処理を実行する。
【0025】
また、前記コンピュータは、以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサより得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部に出力する時期診断処理を実行する。
【0026】
なお、前記発情期診断方法において、前記コンピュータが、前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部が特定した発情期と、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成処理、前記遺伝的操作処理、前記パラメータ判定処理、および前記世代特定処理の再実行をする継続判定処理を行うとしてもよい。
【0027】
また、本発明の発情期診断プログラムは、入力データから所定パラメータを生成する関数を複数種記憶した記憶部を備え、家畜の発情期を診断するコンピュータに、以下の処理を実行させるプログラムである。
【0028】
すなわち、前記発情期診断プログラムは、コンピュータに、家畜に取り付けられた行動量センサの測定値を測定日時情報と共に入力部ないし前記行動量センサとの通信部にて受け付けて取得し、記憶部に格納する測定値取得処理と、前記記憶部から所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部に格納するパラメータ生成処理と、前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部に格納する個体群生成処理と、前記記憶部における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部に格納する遺伝的操作処理と、前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定処理と、前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部に格納する世代特定処理と、以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサより得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部に出力する時期診断処理と、を実行させることを特徴とする。
【0029】
なお、前記発情期診断プログラムにおいて、前記コンピュータに、前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部が特定した発情期と、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成処理、前記遺伝的操作処理、前記パラメータ判定処理、および前記世代特定処理の再実行をする継続判定処理を実行させる、としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、飼養施設や環境、時期など様々に異なる条件に対応して、家畜の発情期診断を高精度に実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態の発情期診断システムの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態の関数データベースのデータ構造例を示す図である。
【図3】本実施形態の行動量データベースのデータ構造例を示す図である。
【図4】本実施形態のパラメータデータベースのデータ構造例を示す図である。
【図5】本実施形態の個体群データベースのデータ構造例を示す図である。
【図6】本実施形態の世代個体群データベースのデータ構造例を示す図である。
【図7】本実施形態の最適世代データベースのデータ構造例を示す図である。
【図8】本実施形態の閾値データベースのデータ構造例を示す図である。
【図9】本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例1を示す図である。
【図10】本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例2を示す図である。
【図11】本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例3を示す図である。
【図12】本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例4を示す図である。
【図13】本実施形態の行動量推移の例を示す図である。
【図14】本実施形態におけるパラメータ算定結果の例を示す図である。
【図15】本実施形態の判定結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
−−−システム構成−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態の発情期診断システム100を含むネットワーク構成図である。図1に示す発情期診断システム100(以下、システム100)は、飼養施設や環境、時期など様々に異なる条件に対応して、家畜の発情期診断を高精度に実行するコンピュータシステムである。本実施形態では、一例として前記システム100を畜産農家等が管理するサーバコンピュータとして想定している。また、本実施形態において発情期診断対象たる家畜として、一例として牛を想定するが、勿論、牛だけに適用対象を限定するものではなく、他の様々な家畜に適用できる。
【0033】
また、本発明におけるネットワーク構成例では、前記システム100の他、例えば無線ネットワーク21で通信可能に結ばれる行動量センサ10、および有線ネットワーク20で通信可能に結ばれたリーダ30が含まれている。このうち前記行動量センサ10は、前記畜産農家の牛舎や放牧場などの各種施設で飼養される牛(家畜)に取り付けられた装置であり、前記無線ネットワーク21を介して前記システム100とは通信可能に結ばれている。詳細な構造については特に説明しないが、当該行動量センサ10は、例えば、牛の頸部に装着されたバンドと一体となった装置であり、牛の首の振動数をカウントする。
【0034】
一方、前記リーダ30は、前記畜産農家の施設のうち例えば放牧場に分散配置されている装置であり、当該リーダ30に接近して通信可能(無線通信電波の到達圏内に入った)となった牛の行動量センサ10より測定値データを取得し、これを有線ネットワーク20を介して前記システム100に送信するコンピュータである。
【0035】
続いて、上記各装置の構成について説明する。前記システム100は、記憶部101、RAM103、CPUなどの制御部104、通信部107らがBUSにより互いに接続されて構成されている。前記記憶部101には後述する各種データベース125〜131が少なくとも記憶されている。
【0036】
前記システム100は、ハードディスクドライブなどの前記記憶部101に格納されたプログラム102を、RAM103などの揮発性メモリに読み出すなどして制御部104により実行することになる。また、前記システム100は、コンピュータ装置が一般に備えている各種キーボードやボタン類などの入力部105、ディスプレイなどの出力部106を備えている。また前記システム100は、他装置との間のデータ授受を担うNIC(Network Interface Card)など通信部107を有し、前記行動量センサ10やリーダ30などとネットワークを介して通信可能となっている。
【0037】
続いて、前記システム100が、例えばプログラム102に基づき記憶部101にて構成・保持する機能部につき説明を行う。前記システム100は、家畜に取り付けられた前記行動量センサ10の測定値を測定日時情報(および家畜ID)と共に入力部105ないし前記行動量センサ10との通信部107にて受け付けて取得し、前記記憶部101の行動量データベース126に格納する測定値取得部110を備えている。
【0038】
また、前記システム100は、前記記憶部101の行動量データベース126から(処理対象の家畜IDに紐付いた)所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部101のパラメータデータベース127に格納するパラメータ生成部111を備える。なお、前記関数としては、例えば、ある数のデータ(=ある期間内、例えば8時間分、12時間分、の行動量センサ10の測定値)の積算、ある時間帯の積算値と隣接する時間帯の積算値との差分(=微分)、ある時間帯(例えば、午前4時〜午前7時の間、午後10時〜午前2時の間、など)のデータの積算、各積分値の二乗、など様々な関数を想定できる。ここでは「関数」と表現したが、当然、各種数式の概念を含むものである。
【0039】
また、前記システム100は、前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部101の個体群データベース128に格納する個体群生成部112を備えている。なお前記係数は、例えば10段階の変更ができるものとする。また、その初期値は例えば各パラメータ間で等しく「1」とするか、或いは、乱数発生プログラム(特に図示しないがサーバコンピュータとして前記システム100が当初から当然備える機能)で発生させた乱数値の所定桁の値などとして、前記RAM103に格納するものとできる。また、各計数を初期値からランダムに変化させる処理は、例えば、前記乱数発生プログラムに乱数値を発生させ、この乱数値の所定桁の値で前記初期値を更新するなどとすればよい。
【0040】
前記個体群としては、例えば、パラメータ群が含むパラメータ数が5つであれば、初期値「11111」から変化した、「21153」、「13407」、「11113」・・・といったものを具体的には想定できる。
【0041】
また、前記システム100は、前記記憶部101の個体群データベース128における前記個体群より複数個体(例えば2つ)を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部101の世代個体群データベース129に格納する遺伝的操作部113を備えている。個体群よりの個体の選択や交叉、突然変異の各処理に関しては、遺伝的アルゴリズムの一般的手法(=に対応したプログラム)を採用すればよい。
【0042】
また、前記システム100は、前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部101のパラメータデータベース127に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値(閾値データベース131)との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定部114を備えている。
【0043】
また、前記システム100は、前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部105より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部101の最適世代データベース130に格納する世代特定部115を備えている。
【0044】
また、前記システム100は、以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサ10より得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部106に出力する時期診断部116を備えている。
【0045】
なお、前記システム100は、前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部116が特定した発情期と、入力部105より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成部112、前記遺伝的操作部113、前記パラメータ判定部114、および前記世代特定部115に対して処理の再実行を指示する継続判定部117を備えるとしてもよい。
【0046】
一方、前記行動量センサ10は、上述したように、畜産農家が飼養する牛に取り付けられた装置であり、前記無線ネットワーク21を介して前記システム100やリーダ30とは通信可能に結ばれている。前記行動量センサ10は、CPUなどの制御部14、記憶部11、RAM13、日時情報を管理するクロック機能15、センサ部16、通信部17らがBUSにより互いに接続されて構成されている。前記記憶部11内には、プログラム12と家畜IDが格納されている。こうした行動量センサ10は、不揮発性記憶部である記憶部11に格納されたプログラム12を、RAM13などの揮発性メモリに読み出すなどして制御部14により実行することになる。また、前記通信部17は、前記システム100やリーダ30との間のデータ授受を担うNIC(Network Interface Card)などである。
【0047】
続いて、前記行動量センサ10が、例えばプログラム12に基づき記憶部11にて構成・保持する機能につき説明を行う。前記行動量センサ10は、家畜たる牛の頸部の振動数をカウントするセンサ部16を制御して一定時間毎(例えば、5分毎など)の振動数をカウントし、クロック機能15にて例えば代表時間=前記一定時間の開始時刻などを測定日時情報として得て、前記測定値たる振動数値と測定日時情報とを対応付けて記憶部11に蓄積しておく機能を備える。
【0048】
また、前記行動量センサ10は、自身が備える通信部17に対し、前記システム100の通信部107ないし前記リーダ30の通信部37との無線通信の確立を一定時間毎に試行させ続け、システム100ないしリーダ30との無線通信が確立できた際に、前記記憶部11に蓄積された前記振動数値と測定日時情報との対に家畜ID(家畜を一意に特定可能な識別情報であり記憶部11に予め設定されている)を対応付けて通信部17からシステム100ないしリーダ30に送信する機能を備える。
【0049】
他方、前記リーダ30は、上述したように、畜産農家の施設のうち例えば放牧場内に分散設置される装置であり、前記無線ネットワーク21を介して前記行動量センサ10と、また前記有線ネットワーク20を介して前記システム100とは通信可能に結ばれている。前記リーダ30は、CPUなどの制御部34、記憶部31、RAM33、通信部37らがBUSにより互いに接続されて構成されている。前記記憶部31内には、プログラム32が格納されている。こうしたリーダ30は、不揮発性記憶部である記憶部31に格納されたプログラム32を、RAM33などの揮発性メモリに読み出すなどして制御部34により実行することになる。また、前記通信部37は、前記システム100や行動量センサ10との間のデータ授受を担うNIC(Network Interface Card)などである。
【0050】
続いて、前記リーダ30が、例えばプログラム32に基づき記憶部31にて構成・保持する機能につき説明を行う。前記リーダ30は、自身が備える通信部37に対し、前記行動量センサ10の通信部17との無線通信の確立を一定時間毎に試行させ続け、行動量センサ10との無線通信が確立できた際に、前記行動量センサ10から送信されてくる前記振動数値と測定日時情報との対に家畜IDが対応付けされたデータを通信部37を介して受信すると共に、これを有線ネットワーク20を介して前記システム100に送信すると共に、前記行動量センサ10に対して前記記憶部11に蓄積している前記振動数値と測定日時情報との対のデータの削除指示を通知する機能を備える。このようなリーダ30が放牧場内に分散設置されているとすれば、家畜が放牧場に所在している時にも測定値等の収集処理を行うことができる。
【0051】
これまで示した前記システム100における各部110〜117はハードウェアとして実現してもよいし、メモリやHDD(Hard Disk Drive)などの適宜な記憶部に格納したプログラムとして実現するとしてもよい。この場合、システム100のCPU104など制御部がプログラム実行に合わせて記憶部より該当プログラムを読み出して、これを実行することとなる。
【0052】
−−−データ構造例−−−
次に、本実施形態の前記システム100が利用するデータベース等のデータ構造例について説明する。図2は本実施形態の関数データベース125のデータ構造例を示す図である。この関数データベース125は、入力データ=前記行動量センサ10の測定値たる振動数値から所定パラメータを生成する関数を複数種記憶したデータベースである。この関数データベース125は、例えば、関数IDに対して、関数を対応付けたデータ構造となっている。関数の例としては、1.最大値(ある期間内での)、2.平均値(ある期間内での)、3.周期、4.標準偏差、5.各時間間隔での積分値、6.積分値の二乗、7.前期間との微分値、8.微分値の絶対値、9.前記6.で求めた値(積分値の二乗)の微分値、10.前記9.で求めた値の絶対値、11.前期間との相対比、12.各関数の全期間平均値に対する相対値、など様々な関数を想定できる。
【0053】
また、積算時に用いる測定値の処理範囲たる時間間隔としては、例えば、1時間間隔、3時間間隔、6時間間隔、8時間間隔、12時間間隔といった例を想定できる。或いは、特定の時間帯(例:深夜帯、早朝帯)について測定値を積算するなどとしてもよい。
【0054】
図3は本実施形態の行動量データベース126のデータ構造例を示す図である。この行動量データベース126は、前記家畜たる牛に取り付けられた行動量センサ10の測定値たる前記振動数値と、測定日時情報と、家畜IDとを格納するデータベースである。この例では、家畜ID毎にシートを分けて前記振動数値や測定日時らを管理している。
【0055】
図4は本実施形態のパラメータデータベースのデータ構造例を示す図である。このパラメータデータベース127は、前記行動量データベース126における所定期間毎(例えば、1時間毎などの時間帯)の前記振動数値のデータを、前記複数種の関数(関数データベース125に格納されているもの)それぞれに適用して生成された複数種のパラメータを、前記所定期間に対応付けて格納したデータベースである。この例では、家畜ID毎にシートを分けて前記複数種のパラメータらを管理している。
【0056】
図5は本実施形態の個体群データベース128のデータ構造例を示す図である。この個体群データベース128は、前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とした場合、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて生成した所定数の個体群を格納するデータベースである。図示した例では、個体IDをキーにして、パラメータ毎の係数値を対応付けた構成としている。前記個体群としては、例えば、パラメータ群が含むパラメータ数が5つであれば、初期値「11111」(=パラメータ数に対応した5桁となる)から変化した、「21153」、「13407」、「11113」・・・といったものを具体的に想定できる。
【0057】
図6は本実施形態の世代個体群データベース129のデータ構造例を示す図である。この世代個体群データベース129は、前記個体群データベース128における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理で得られる、所定世代分の個体群を記憶したデータベースである。図示した例では、例えば、世代IDをタブとした各シート(つまり世代ごとのシート)に、個体ID、および各パラメータ毎の計数値を対応付けた構成としている。
【0058】
図7は本実施形態の最適世代データベース130のデータ構造例を示す図である。この最適世代データベース130は、家畜の実際の発情期と候補期間とが一致する世代=最適世代の個体群のデータを格納したデータベースである。図示した例では、例えば、登録日時をキーとして、該当日時における最適世代の個体群のデータを対応付けた構成としている。この最適世代データベース130から最適世代の個体群のデータを利用する場合、システム100は、前記登録日時が最新のものを選んで読み出すこととすればよい。
【0059】
図8は本実施形態の閾値データベース131のデータ構造例を示す図である。この閾値データベース131は、パラメータ種毎に予め定めた閾値を格納したデータベースである。
【0060】
−−−処理手順例1−−−
以下、本実施形態における発情期診断方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明する発情期診断方法に対応する各種動作は、前記システム100のRAM103に読み出して実行するプログラム102によって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0061】
図9は、本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例1を示す図である。ここでは、前記行動量センサ10から前記システム100に、前記振動数値等のデータをアップロードする処理について説明する。この場合、前記行動量センサ10は、家畜たる牛の頸部の振動数をカウントするセンサ部16を制御して一定時間毎(例えば、5分毎など)の振動数をカウントし、クロック機能15にて例えば代表時間=前記一定時間の開始時刻などを測定日時情報として得て、前記測定値たる振動数値と測定日時情報とを対応付けて記憶部11に蓄積している(s100)。
【0062】
また、前記行動量センサ10は、自身が備える通信部17に対し、前記システム100の通信部107との無線通信の確立を一定時間毎に試行させ続け、システム100との無線通信が確立できた際に、前記記憶部11に蓄積された前記振動数値と測定日時情報との対に家畜ID(家畜を一意に特定可能な識別情報であり記憶部11に予め設定されている)を対応付けて通信部17からシステム100に送信する(s101)。
【0063】
一方、前記システム100の測定値取得部110は、前記行動量センサ10から、前記測定値たる振動数値と測定日時情報と家畜IDとを、前記通信部107にて受け付けて取得し、前記記憶部101の行動量データベース126に格納する(s102)。なお、前記行動量センサ10から振動数値等を取得するのではなく、行動量センサ10が測定した振動数値等のデータを目視する担当者が、前記入力部105を介して振動数値等を入力するに応じて取得するとしてもよい。
【0064】
−−−処理手順例2−−−
図10は、本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例2を示す図である。次に、前記行動量センサ10から前記リーダ30を経由して前記システム100に、前記振動数値等のデータがアップロードされる処理について説明する。この場合、前記行動量センサ10は、家畜たる牛の頸部の振動数をカウントするセンサ部16を制御して一定時間毎(例えば、5分毎など)の振動数をカウントし、クロック機能15にて例えば代表時間=前記一定時間の開始時刻などを測定日時情報として得て、前記測定値たる振動数値と測定日時情報とを対応付けて記憶部11に蓄積する(s200)。
【0065】
また、前記行動量センサ10は、自身が備える通信部17に対し、前記システム100の通信部107ないし前記リーダ30の通信部37との無線通信の確立を一定時間毎に試行させ続ける(s201)。
【0066】
前記試行の結果、前記リーダ30との無線通信が確立できた場合(s202:リーダ)、前記リーダ30は、前記記憶部11に蓄積された前記振動数値と測定日時情報との対に家畜ID(家畜を一意に特定可能な識別情報であり記憶部11に予め設定されている)を対応付けて通信部17からリーダ30に送信する(s203)。なお、前記リーダ30は前記システム100との無線通信が確立できた場合(s202:システム)、上記処理手順例1のステップs101以降と同様の処理を実行することになる。
【0067】
一方、前記リーダ30は、自身が備える通信部37に対し、前記行動量センサ10の通信部17との無線通信の確立を一定時間毎に試行させ続け、行動量センサ10との無線通信が確立できた際に、前記行動量センサ10から送信されてくる前記振動数値と測定日時情報との対に家畜IDが対応付けされたデータを通信部37を介して受信する(s204)。また、前記リーダ30は、前記ステップs204で受信したデータを、前記有線ネットワーク20を介して前記システム100に送信する(s205)。また前記リーダ30は、前記行動量センサ10に対して前記記憶部11に蓄積している前記振動数値と測定日時情報との対のデータの削除指示を通知する(s206)。行動量センサ10ではこの削除指示を受けて、記憶部11に蓄積している前記振動数値と測定日時情報との対のデータの削除処理を実行する(s207)。
【0068】
他方、前記システム100の測定値取得部110は、前記リーダ30を経由して送られてきた前記行動量センサ10の測定値と測定日時情報と家畜IDとを、前記通信部107にて受け付けて取得し、前記記憶部101の行動量データベース126に格納する(s208)。
【0069】
−−−処理手順例3−−−
図11は、本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例3を示す図である。次に、前記行動量センサ10由来の振動数値等のデータに基づいて、最適世代の個体群を特定し、最終的に発情期の診断結果を出力する処理について説明する。この場合、前記システム100のパラメータ生成部111は、前記記憶部101の行動量データベース126から、処理対象とした家畜ID(例えば、IDの数値が小さいものから順に選び出す)に紐付いた所定期間毎、例えば、1時間間隔の前記振動数値のデータを読み出して積算する(s300)。本実施形態では1つの振動数値のデータは午前7時からの5分ごとの値であるから、12個分の振動数値のデータを積算し、午前7時から1時間毎の値を得ることになる。
【0070】
こうした各時刻ごとの振動数(積算値)を「行動量」としてグラフ化したのが、図13の上段に示す「1日の行動量推移」グラフである。この例では、“U2161”、“U5835”、“Y0515”、“Y4374”、の各牛についての毎時の行動量を1つのグラフ中にあわせて示している。また、同図の中段には「発情期が判別しやすい牧場・個体の例」、および下段には「発情期の判別が困難な牧場・個体の例」、として、前記毎時の行動量推移を一ヶ月間にわたってまとめたグラフを示している。図でわかるように、「発情期が判別しやすい牧場・個体」=U牧場の“U5835”なる牛の場合、2008/06/18から、2008/06/19の間に行動量のピークが明確に現れており、この期間が発情期であろうと判断しやすい。一方、「発情期の判別が困難な牧場・個体」=Y牧場の“Y0515”なる牛の場合、明らかな行動量のピークが特に無く、このままでは発情期の判断は困難である。
【0071】
また前記パラメータ生成部111は、前記1時間毎の振動数値を前記関数データベース125の関数(f1〜)それぞれに適用して複数種のパラメータを生成する(s301)。また、前記パラメータ生成部111は、前記生成したパラメータを、図4でも示したように、前記7時から1時間おきの各時刻に対応付けて記憶部101のパラメータデータベース127に格納する(s302)。こうして得たパラメータの具体例として、前記“U5835”および“Y0515”の各牛に関する「6時間間隔の積分値の二乗」のパラメータ値を図14に示す。“U5835”なる牛に関しては、2008/06/18から、2008/06/19の間にパラメータ値のピークが明確に現れており、一方、“Y0515”なる牛に関しては、明らかなピークが特に無い。
【0072】
続いて、前記システム100の個体群生成部112は、前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部101の個体群データベース128に格納する(s303)。
【0073】
なお前記係数は、例えば10段階の変更ができるものとする。また、その初期値は例えば各パラメータ間で等しく「1」とするか、或いは、乱数発生プログラム(特に図示しないがサーバコンピュータとして前記システム100が当初から当然備える機能)で発生させた乱数値の所定桁の値などとして、前記RAM103に格納するものとできる。また、各計数を初期値からランダムに変化させる処理は、例えば、前記乱数発生プログラムに乱数値を発生させ、この乱数値の所定桁の値で前記初期値を更新するなどとすればよい。
【0074】
前記個体群としては、例えば、パラメータ群が含むパラメータ数が5つであれば、初期値「11111」から変化した、「21153」、「13407」、「11113」・・・といったものを具体的には想定できる。
【0075】
次に、前記システム100の遺伝的操作部113は、前記記憶部101の個体群データベース128における前記個体群より複数個体(例えば2つ)を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部101の世代個体群データベース129に格納する(s304)。個体群よりの個体の選択や交叉、突然変異の各処理に関しては、遺伝的アルゴリズムの一般的手法(=に対応したプログラム)を採用すればよい。
【0076】
また、前記システム100のパラメータ判定部114は、前記各世代の個体群(前記世代個体群データベース129のもの)が示す各係数を、前記記憶部101のパラメータデータベース127に格納された前記各所定期間(例:毎時、或いはこの毎時のデータを24時間分=日毎)の対応パラメータに乗じて(例:本実施形態の場合、パラメータ(f1)には係数(f1)を乗じる)、例えば毎時あるいは日毎における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、この毎時或いは日毎の重み付け済みパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値(閾値データベース131の格納値)との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における毎時或いは日毎の各パラメータの閾値到達可否を判定する(s305)。
【0077】
図15において、ある世代に関しての日毎の閾値到達可否の判定結果例を示している。図15の上段に示した表では、“U牧場”の牛“U5835”に関して、「6月19日」、「6月16日」、「6月24日」の3日について、積算(12H)、積算(8H)、微分(12H)、行動量(深夜帯)、行動量(朝)の各パラメータの閾値到達可否の結果を示している。この例では、重み付け済みパラメータが閾値に到達していた場合、「○」としている。また、図15の下段に示した表では、“Y牧場”の牛“Y4374”に関して、「7月25日」と、「7月11日」から「7月30日」まで断続的に計8日について、積算(12H)、積算(8H)、微分(12H)、行動量(深夜帯)、行動量(朝)の各パラメータの閾値到達可否の結果を示している。この例では、重み付け済みパラメータが閾値に到達していた場合、「○」としている。
【0078】
続いて、前記システム100の世代特定部115は、前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部105より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部101の最適世代データベース130に格納する(s306)。図15の上段に示した例(ある世代)では、閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上=5パラメータとなったのが「6月19日」であり、つまりこの日を候補期間として特定している。図15の下段に示した例(ある世代)では、閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上=5パラメータとなったのが「7月25日」であり、つまりこの日を候補期間として特定している。図示はしていないが、当然、他の世代に関しても、同様に候補期間を特定している(勿論、候補期間が無い世代が出てくることもあり得る)。
【0079】
前記世代特定部115は、前記入力部105より前記家畜たる牛(“U5835”、および“Y4374”)の実際の発情期を受け付けたとする(s307)。そして、前記世代特定部115は、前記候補期間が実際の発情期と一致する世代を最適世代として特定し、前記記憶部101の最適世代データベース130に格納する(s308)。図15の上段に示す例では、ある世代に関して牛“U5835”の発情期の候補期間として特定した「6月19日」が、実際の発情期と一致する結果となっている(“最終判定”=“◎”)。同様に、図15の下段に示す例では、ある世代に関して牛“Y4374”の発情期の候補期間として特定した「7月25日」が、実際の発情期と一致する結果となっている(“最終判定”=“◎”)。
【0080】
こうして最適世代、つまりは発情期診断に最適なパラメータの係数群を特定した前記システム100は、これ以降、前記行動量センサ10から得る振動数値等に関しては、この最適世代のパラメータの係数群(最適世代データベース130に格納されているもののうち登録日時最新のもの)を用いて発情期診断を実行することになる。すなわち、前記システム100の時期診断部116は、以降、前記行動量センサ10より得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部106に出力する(s309)。
【0081】
−−−処理手順例4−−−
図12は、本実施形態における発情期診断方法の処理フロー例4を示す図である。次に、上述のように最適世代のパラメータの係数群が特定された後も、実際の発情期と診断結果とが一致するか引き続き判定し続ける処理について説明する。この場合、前記システム100の継続判定部117は、前記最適世代の個体群(前記最適世代データベース130に格納のもの)に基づいて前記時期診断部116が特定した発情期と、入力部105より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合する(s400)。
【0082】
そして両者が一致した場合(s401:OK)、前記継続判定部117は処理を前記ステップs400に戻す。一方、両者が一致しなかった場合(s401:NG)、前記継続判定部117は、前記個体群生成部112、前記遺伝的操作部113、前記パラメータ判定部114、および前記世代特定部115に対して処理の再実行を指示する(s402)。つまり、前記処理手順例3における前記ステップs303〜s309が再実行されることになる。こうした処理を継続することで、たとえ家畜を飼養する施設や環境、気候、体調や年齢など各種条件が変化していったとしても、常に前記最適世代のパラメータの係数群が特定されている状態を維持することができる。
【0083】
以上説明したように本実施形態によれば、例えば牧場毎に異なる飼養形態、方法等に対応して、(導入初期には既存システムと同様に誤判別や判別不能の可能性があるものの)飼養期間が伸び、データが蓄積されることにより、発情期診断精度が著しく向上していく。つまり、多様な環境・使用条件下であっても、システムが牧場等の飼養施設毎や飼養家畜の種類毎等に独自に進化しつづけて、発情期診断精度が向上していくことになる。また、本実施形態の発情期診断システムを実際に導入・運用するに際して、コストが大きな特別な装置を導入する必要が無く、既存のPC等を利用すればよい為、利用者にとって過大なコスト負担を危惧する必要も無い。
【0084】
したがって、飼養施設や環境、時期など様々に異なる条件に対応して、家畜の発情期診断を高精度に実行できる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 行動量センサ
15 クロック機能
16 センサ部
20 有線ネットワーク
21 無線ネットワーク
30 リーダ(放牧場)
100 発情期診断システム
101、11、31 記憶部
102、12、32 プログラム
103、13、33 RAM
104、14、34 制御部(CPU)
105 入力部(キーボード、マウス等)
106 出力部(ディスプレイ、スピーカー等)
107、17、37 通信部
110 測定値取得部
111 パラメータ生成部
112 個体群生成部
113 遺伝的操作部
114 パラメータ判定部
115 世代特定部
116 時期診断部
117 継続判定部
125 関数データベース
126 行動量データベース
127 パラメータデータベース
128 個体群データベース
129 世代個体群データベース
130 最適世代データベース
131 閾値データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の発情期を診断するコンピュータシステムであり、
入力データから所定パラメータを生成する関数を複数種記憶した記憶部と、
家畜に取り付けられた行動量センサの測定値を測定日時情報と共に入力部ないし前記行動量センサとの通信部にて受け付けて取得し、記憶部に格納する測定値取得部と、
前記記憶部から所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部に格納するパラメータ生成部と、
前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部に格納する個体群生成部と、
前記記憶部における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部に格納する遺伝的操作部と、
前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定部と、
前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部に格納する世代特定部と、
以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサより得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部に出力する時期診断部と、
を備えることを特徴とする発情期診断システム。
【請求項2】
前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部が特定した発情期と、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成部、前記遺伝的操作部、前記パラメータ判定部、および前記世代特定部に対して処理の再実行を指示する継続判定部を備えることを特徴とする請求項1に記載の発情期診断システム。
【請求項3】
入力データから所定パラメータを生成する関数を複数種記憶した記憶部を備え、家畜の発情期を診断するコンピュータが、
家畜に取り付けられた行動量センサの測定値を測定日時情報と共に入力部ないし前記行動量センサとの通信部にて受け付けて取得し、記憶部に格納する測定値取得処理と、
前記記憶部から所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部に格納するパラメータ生成処理と、
前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部に格納する個体群生成処理と、
前記記憶部における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部に格納する遺伝的操作処理と、
前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定処理と、
前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部に格納する世代特定処理と、
以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサより得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部に出力する時期診断処理と、
を実行することを特徴とする発情期診断方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部が特定した発情期と、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成処理、前記遺伝的操作処理、前記パラメータ判定処理、および前記世代特定処理の再実行をする継続判定処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の発情期診断方法。
【請求項5】
入力データから所定パラメータを生成する関数を複数種記憶した記憶部を備え、家畜の発情期を診断するコンピュータに、
家畜に取り付けられた行動量センサの測定値を測定日時情報と共に入力部ないし前記行動量センサとの通信部にて受け付けて取得し、記憶部に格納する測定値取得処理と、
前記記憶部から所定期間毎の前記測定値のデータを読み出し、この測定値データを前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記所定期間に対応付けて記憶部に格納するパラメータ生成処理と、
前記複数種のパラメータ間での各パラメータの重み付けを示す係数群を遺伝的アルゴリズムにおける個体とし、前記係数群に含まれる各係数を初期値からランダムに変化させて所定数の個体群を生成し、記憶部に格納する個体群生成処理と、
前記記憶部における前記個体群より複数個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける交叉、または、前記個体群より1個体を抽出して遺伝的アルゴリズムにおける突然変異の少なくともいずれかの処理を行って次世代の個体群を生成する処理を所定世代分繰り返し、各世代の個体群を記憶部に格納する遺伝的操作処理と、
前記各世代の個体群が示す各係数を、前記記憶部に格納された前記各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を世代毎に生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータとパラメータ種毎に予め定めた閾値との比較処理を前記各世代について実行し、各世代における各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定する、パラメータ判定処理と、
前記各世代における各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を候補期間として特定し、前記各世代のうち、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期と候補期間が一致する世代を最適世代として特定し記憶部に格納する世代特定処理と、
以降、前記家畜に取り付けられた行動量センサより得た測定値について、前記複数種の関数それぞれに適用して複数種のパラメータを生成し、前記最適世代の個体群が示す各係数を各所定期間の対応パラメータに乗じて、各所定期間における重み付け済みのパラメータの群を生成し、前記各所定期間のパラメータ群が含む各パラメータと前記閾値との比較処理を実行し、各所定期間の各パラメータの閾値到達可否を判定し、前記各所定期間の各パラメータのうち前記閾値に到達したパラメータの割合が所定割合以上となった期間を発情期として特定し、当該発情期の情報を出力部に出力する時期診断処理と、
を実行させることを特徴とする発情期診断プログラム。
【請求項6】
前記コンピュータに、
前記最適世代の個体群に基づいて前記時期診断部が特定した発情期と、入力部より受け付けた前記家畜の実際の発情期とを照合し、両者が一致しなかった場合に、前記個体群生成処理、前記遺伝的操作処理、前記パラメータ判定処理、および前記世代特定処理の再実行をする継続判定処理を実行させることを特徴とする請求項5に記載の発情期診断プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−55958(P2011−55958A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207356(P2009−207356)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(500227727)株式会社マイメディア (2)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)