説明

発振機械システムの振動数を自動調節するための回路およびこの回路を備えるデバイス

【課題】ヒゲゼンマイを有するテンプ輪などの、発振機械システムの振動数を調節する自動調節回路を提供する。
【解決手段】圧電素子23が、交流電圧VPを発生させるように発振ヒゲゼンマイ上に付され、また自動調節回路に接続され、これにより、交流電圧を整流し、交流電圧の周波数を調節する。整流された電圧は、自動調節回路に給電するためにコンデンサCc内に蓄電される。自動調節回路は、基準信号VRを供給するためにMEMS共振器16に接続された発振器段15、交流電圧の周波数を基準信号の周波数と比較するための手段、および比較手段からの結果に従って圧電素子に周波数適応信号VAを供給し、テンプ輪の振動数を調節するための周波数適応ユニット18を備える。自動調節回路の電子コンポーネントは、単一の電子モジュールを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振機械システム(oscillating mechanical system)の振動数を自動調節するための回路に関する。
【0002】
本発明はまた、発振機械システムと、発振機械システムの振動数を自動調節するための回路とを備えるデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
時計学の分野では、発振機械システムは、一端が、回転するテンプ輪のテン真に固定され、他端が、底板の固定要素に固定されているヒゲゼンマイが取り付けられているテンプ輪とすることができる。機械システムの振動は、一般的に機械的であるエネルギー源によって維持される。このエネルギー源は、例えば、ガンギ車がアンクルと連携動作することにより歯車列を駆動する香箱であってよい。この回転するアンクルは、例えば、回転するテンプ輪のテン真に近い位置に固定されたピンを作動させる。したがって、ヒゲゼンマイを有するテンプ輪は、時計ムーブメントの調節部材を形成しうる。この発振調節部材は、時刻指示針へとつながる、ガンギ車による歯車列の駆動速度を決定する。
【0004】
発振機械システムの振動数を正確に調節するために、ゼンマイの長さを適応させるか、または錘をテンプ輪の外部円形部分に加えるか、もしくはそこから取り除くことができる。しかし、腕時計の場合、これらのすべての付加的調節要素は、時計のケースの内側にかなりの空間を占有し、そのため、製造時間が比較的長くなり、またコストも高くなる。それ故、これには、いくつかの短所がある。
【0005】
機械式時計または電気機械式時計では、螺旋形のゼンマイ香箱に連結された発電機の回転速度を調節して、歯車列によって時計の針を機械的に駆動することが知られている。発電機は、交流電圧を発生させるが、これは電子調節回路の整流器を使って整流される。この調節回路の機能は、時刻指示針が正しい現在時刻指示の機能として移動されうるように発電機の回転速度を制御することである。調節回路のトランジスタは、発電機を制動するために決定された時間周期で発電機を短絡し、それにより、回転速度を調節することができる。欧州特許出願第0 762 243 A1号または欧州特許出願第0 822 470 A1号では、このタイプの調節回路を備える時計を開示しており、これに関して引用されうる。
【0006】
前記の発電機は、回転する永久磁石とこの磁石に対向するコイルとを備え、コイルは誘導交流電圧を発生させることができる。このタイプの発電機および調節回路を製作するのは複雑な作業となる場合がある。調節回路を備える前記発電機を設計するために、一般的に、多数の要素が用意されなければならない。さらに、回転する磁石の磁界が、いくつかの近傍の強磁性部品への干渉を引き起こす可能性もある。したがって、これには、いくつかの短所がある。
【0007】
回転する永久磁石と誘導交流電圧を発生させるコイルとで形成される発電機の代わりに、圧電素子を使って発振機械システムを実現することが、フランス特許第2 119 482 号においてすでに提案されている。この圧電素子は、好ましくは、テンプ輪に連結されたヒゲゼンマイ上に配置される。これを達成するために、圧電材料(PZT)の薄膜をゼンマイの長さの大部分に、また前記金属ゼンマイの内面および外面に付着する。電圧変換器は、交流電圧を圧電素子に供給して、ゼンマイにおける圧縮力と伸長力を交互に発生させ、ヒゲゼンマイに連結されたテンプ輪の振動を調節する。しかし、この特許文献では、自動調節回路を使用してヒゲゼンマイを有するテンプ輪の振動数を調節することについては言及しておらず、これは不利な点である。
【0008】
交流電圧発電機として圧電ヒゲゼンマイと組み合わせたテンプ輪の振動数を調節することは、特開2002−228774から知られる。交流電圧は、電子調節回路によって制御される少なくとも2つのダイオードおよびFETトランジスタを備える整流器において整流される。整流された電圧は、少なくとも電源電圧蓄電器に蓄電される。電子回路は、整流され、蓄電器内に蓄電された、発電機からの交流電圧によって直接的に給電されうる。圧電発電機は、バイメタル型(PZT)である。振動数を調節するために、水晶発振器回路によって供給される基準周波数の信号と発電機からの交流信号との比較を行う。提案された電子回路では、容易に実現できる方法で調節回路を用いて非常にコンパクトな発振機械システムを考案することは可能でなく、これは短所である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願第0 762 243 A1号
【特許文献2】欧州特許出願第0 822 470 A1号
【特許文献3】フランス特許第2 119 482 号
【特許文献4】特開2002−228774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、限られた数のコンポーネントを備える、発振機械システムの振動数を正確に調節し、現行技術の前述の短所を解消するためのコンパクトな自動調節回路を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、独立請求項1において述べられている特徴を備える、発振機械システムの振動数を自動調節するための回路に関する。
【0012】
自動調節回路の特定の実施形態は、従属請求項2から10において記載される。
【0013】
本発明によるこの自動調節回路の1つの利点は、この自動調節回路が、発振機械システムにおいて配置された圧電素子または電気活性ポリマー素子に直接的に、または2つの電線によって接続されうる、単一の電子モジュールの形態で作ることができるということである。この発振機械システムは、好ましくは、圧電素子または電気活性ポリマー素子を備える、ヒゲゼンマイが配置されたテンプ輪とすることができる。
【0014】
有利なことに、この自動調節回路は、前記自動調節回路の他のコンポーネントを集積化した同じ基板上に、またはそのそばに、またはその中に配置あるいは製作されうる、MEMS共振器に接続された発振器段を備える。この方法で、これらすべてのコンポーネントを備える自動調節回路は、単一のコンパクトなコンポーネントを形成する。これにより、その振動数自動調節回路を備える発振機械システムの寸法がかなり縮小され、したがってこの機械システムは、機械式腕時計に有利に装着されうる。
【0015】
有利なことに、この自動調節回路は、適応電圧を印加して、圧電素子または電気活性ポリマー素子における圧縮力または伸長力を連続的にまたは決定された時間周期で発生させることができる。これにより、発振機械システムの振動数を調節することができる。この点に関して、発振器段によって発生する基準信号の周波数と圧電素子によって、または電気活性ポリマー素子によって発生する交流電圧の周波数とが比較される。
【0016】
したがって、本発明はまた、独立請求項11において言及されている特徴を備える、発振機械システム、および発振機械システムの振動数を自動調節するための回路を備えるデバイスに関するものでもある。
【0017】
デバイスの特定の実施形態は、従属請求項12から15に記載される。
【0018】
発振機械システムの振動数自動調節回路およびこの自動調節回路を備えるデバイスの目的、利点、および特徴は、図面に例示されている、少なくとも1つの非限定的な実施形態を参照しつつなされる以下の説明においてより明確に示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による発振機械システム、および発振機械システムの振動数自動調節回路を備える、デバイスの簡素化された図である。
【図2】本発明によるデバイスの圧電素子または電気活性ポリマー素子を備える発振機械システムのヒゲゼンマイの一部を示す図である。
【図3】発振機械システムの圧電素子または電気活性ポリマー素子に接続されている、本発明による自動調節回路の電子コンポーネントの簡素化されたブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、この技術分野の当業者によく知られている発振機械システムの振動数自動調節回路のすべての電子コンポーネントは、簡素化された方法でのみ説明される。後述のように、自動調節回路は、圧電素子または電気活性ポリマー素子を備えるヒゲゼンマイが装着されているテンプ輪の振動数を調節するために主に使用される。しかし、他の発振機械システム、例えば、音叉などの音響システムも企図されうるものであるが、以下の説明では、圧電素子または電気活性ポリマー(EAP)素子を備えるヒゲゼンマイを有するテンプ輪の形態の発振機械システムのみを参照する。
【0021】
図1は、発振機械システム2、3、および発振機械システムの振動数foscを自動調節するための回路10を備える、デバイス1を示している。機械式時計では、発振機械システムは、例えば、3本のアーム5によって回転するテン真6に接続されている金属リングから形成されるテンプ輪2、および以下で簡単に説明されている圧電素子または電気活性ポリマー素子が配置されているヒゲゼンマイ3を備えることができる。ヒゲゼンマイ3の第1の端部3aは、テンプ棒(図示せず)のヒゲ持ち4によって固定して保持される。このテンプ棒は、時計ムーブメントの底板(図示せず)に固定される。ヒゲゼンマイ3の第2の端部3bは、回転するテンプ輪のテン真6に直接的に固定される。
【0022】
ヒゲゼンマイ3を備えるテンプ輪2の振動は、電気的であってもよいが、好ましくは機械的である、エネルギー源(図示せず)によって維持される。機械的エネルギー源は、ガンギ車がアンクルと連携動作することにより歯車列を従来通りに駆動する香箱であってよい。この回転するアンクルは、例えば、回転するテンプ輪のテン真に近い位置に固定されたピンを作動させる。したがって、ヒゲゼンマイを有するテンプ輪は、時計ムーブメントの調節部材を形成しうる。
【0023】
図2に一部示されているように、ヒゲゼンマイ3は、概して0.3mm未満の厚さ、例えば、約0.025から0.045mmのワイヤまたは金属片を使って知られている方法により製作される。好ましくは、金属片24をコイルが互いに一定間隔をあけて並んだ螺旋の形状に高温で巻く前に、少なくとも1つの圧電層または電気活性ポリマー層23を金属片24の面の1つに付着する。この圧電層は、例えば、好ましくは厚さ0.1mm未満の酸化チタンから形成されうる。第1の圧電層または電気活性ポリマー層23を外面として指定される面に付着し、第2の圧電層または電気活性ポリマー層23’を内面として指定される別の面に付着することもできる。圧電層または電気活性ポリマー層23、23’を備える金属片が巻かれたときに、内面は回転するテンプ輪のテン真に対向する面であるが、外面は内面に対向している。
【0024】
圧電層または電気活性ポリマー層23、23’は、金属片24の全長にわたって付着されるが、1つまたはいくつかの圧電層または電気活性ポリマー層でこの金属片の一部のみをコーティングすることを企図することも可能である。例えば、この金属片全体を円形もしくは矩形の横断面の圧電材料または電気活性ポリマー材料にすることを企図することも可能である。
【0025】
テンプ輪2がヒゲゼンマイ3とともに振動すると、圧縮力または伸長力が交互に圧電層または電気活性ポリマー層に印加され、これにより、交流電圧が発生する。ヒゲゼンマイ3を備えるテンプ輪2の振動数は、3から10Hzまでの範囲内とすることができる。したがって、この交流電圧を受け取るために、自動調節回路10が2つの圧電層または電気活性ポリマー層に電気的に接続される。自動調節回路は、圧電層または電気活性ポリマー層の2つの端子に直接的に、または2本の金属線によって接続される。
【0026】
図3は、発振機械システムの振動数を調節するための自動調節回路10のさまざまな電子的要素を示している。自動調節回路10は、テンプ輪などの、発振機械システムのヒゲゼンマイ上に配置される圧電素子または電気活性ポリマー素子23の2つの端子に接続される。自動調節回路10は、従来の整流器11によって圧電素子または電気活性ポリマー素子23から受け取った交流電圧VPを整流することができる。交流電圧VPの整流された電圧は、コンデンサCcに蓄電される。コンデンサCcの端子VDDとVSSの間の整流された電圧は、電池などの付加的電圧源を使用することなく自動調節回路のすべての電子的要素に給電するのに十分な電圧とすることができる。
【0027】
自動調節回路10は、MEMS共振器16に接続されている発振器段15を備える。MEMS共振器を備える発振器段の発振回路は、500kHz未満の周波数、例えば、約200kHzの周波数を有することができる、振動信号を供給する。したがって、発振器段15は、好ましくは、基準信号VRを供給することができ、その周波数は発振回路からの振動信号の周波数に等しいものとしてよい。
【0028】
振動信号の周波数を分周して、振動信号の周波数に関して分周された周波数の基準信号VRを供給するために少なくとも1つの分周器を備える発振器段を企図することも可能である。このような場合、基準信号VRの周波数は、圧電素子または電気活性ポリマー素子によって発生する交流電圧周波数VPと同様であってよい。
【0029】
MEMS発振器は、厚い、SOI型のモノリシック・シリコン基板内に製作されうる。同じ基板を、自動調節回路10の他のコンポーネントのすべてを集積化するためにも使用することができる。これを達成するために、別の薄いSOI層を厚いSOI基板上に付着し、他の電子コンポーネントを集積化することができる。したがって、自動調節回路は、発振機械システムの振動数を調節するための単一のコンパクトな電子モジュールを形成することができる。生産される自動調節回路を不透明のプラスチック材料内に従来の方法でカプセル化することもできる。これにより、他の外部要素との相互接続が減り、また電力の消費が低減する。
【0030】
第1のモノリシック・シリコン基板内にMEMS共振器を作製することを企図することも可能であることに留意されたい。MEMS共振器は、自動調節回路の他のコンポーネントを集積化する第2のシリコン・モノリシック基板上に、またはそのそばに配置されうる。2つの基板は、従来の不透明なプラスチック材料内にカプセル化され、単一のコンパクトなモジュールを形成する。
【0031】
発振機械システムの振動数を調節することができるようにするために、自動調節回路10において交流電圧VPと基準信号VRとの比較を行わなければならない。これを達成するために、自動調節回路10は、交流電圧VPの周波数を基準信号VRの周波数と比較するための比較手段12、13、14、17を備える。基準信号の周波数が発振器段15からの振動信号の周波数、つまり、約200kHzの周波数と一致する場合、この比較手段は、交流電圧VPと基準信号VRとの間の有意な周波数ギャップを考慮するように考案されなければならない。
【0032】
この比較手段は、圧電素子または電気活性ポリマー素子からの交流電圧VPを入力で受け取り、第1のカウント信号NPをプロセッサ・ユニット17に供給する、第1の交番カウンタ12によってまず第一に形成される。この比較手段は、基準信号VRを入力で受け取り、第2のカウント信号NRをプロセッサ・ユニット17に供給する、第2の交番カウンタ14をさらに備える。
【0033】
交流電圧VPと基準信号VRとの間の周波数ギャップを考慮するために、第1の交番カウンタ12と第2の交番カウンタ14との間に測定窓13を配置する。この測定窓13は、第2の交番カウンタ14のカウント時間を決定する。プロセッサ・ユニット17は、第2の交番カウンタに対するカウント時間を決定するための構成パラメータを測定窓13に供給する。これらの構成パラメータは、プロセッサ・ユニット内のメモリ(図示せず)に格納される。これらの構成パラメータは、その時計が女性用であるか、男性用であるかによって異なっていてもよい。プロセッサ・ユニット17において処理されるさまざまなオペレーションは、例えば、発振器段15の発振回路によって供給されるクロック信号によって制御される。
【0034】
第2の交番カウンタ14のカウント時間は、第1のカウント信号NPにおける第1の交番カウンタによってカウントされる特定の決定された交番数のカウント時間に比例するように適応される。プロセッサ・ユニットは、カウント周期の開始および終了を定めるために第1の交番カウンタ12を制御することもできる。しかし、第1の交番カウンタ12が決定された数のカウンタとされた交番の開始および終了に関する情報をプロセッサ・ユニットに供給することを企図することも可能である。例えば、第1の交番カウンタにおいて200回の交番がカウントされる場合、測定窓13は、第2の交番カウンタ14が約5000回短い時間周期で基準信号VRの交番数をカウントするように構成される。この時間周期は、カウント時間、例えば、第1の交番カウンタの200回の交番に依存するものとしてもよい。これにより、自動調節回路の電力消費量が低減される。
【0035】
測定窓13によって制御されるカウントの開始は、第1の交番カウンタ12によって決定されうるが、好ましくは、プロセッサ・ユニット17によって直接的に制御されものとしてもよい。プロセッサ・ユニットは、第1の時間周期において交流電圧VPのカウントされた交番の第1の決定された数に関係する第1のカウント信号NPをまず第一に受信することができる。この第1のカウント信号は、例えば、プロセッサ・ユニットのレジスタ内に格納される。その後、プロセッサ・ユニットは、測定窓13によって制御される第2の時間周期内に第2の交番カウンタ14内のカウントされた交番の第2の数に関係する第2のカウント信号NRを受信することができる。この第2のカウント信号NRは、プロセッサ・ユニットの別のレジスタ内にも格納されうる。最後に、プロセッサ・ユニット内で2つのカウント信号が比較され、これにより、交流電圧VPの周波数が基準信号の周波数に関して比例する形で高すぎるか、または低すぎるかを判定する。
【0036】
プロセッサ・ユニット内の2つのカウント信号NPとNRとで行われた比較に基づき、前記プロセッサ・ユニットは、周波数適応ユニット18を操作するが、その出力は圧電素子または電気活性ポリマー素子23の端子に接続されている。この周波数適応ユニット18は、周波数適応信号を供給するように配置されるものとしてよく、これは連続する電圧VAであり、そのレベルはプロセッサ・ユニットによって伝達される2つのカウント信号の間の差の関数である。コンデンサまたは抵抗器のスイッチング可能なアレイをこの目的のために備えることができる。適応ユニット18の電圧フォロワによって連続的な電圧値が圧電素子または電気活性ポリマー素子23の端子のうちの一方の端子に、あるいは圧電素子または電気活性ポリマー素子の他方の端子に供給されうる。したがって、これは、圧電素子または電気活性ポリマー素子に一定の力を誘起し、発振機械システムの振動を2つのカウント信号の比較の関数として制動または加速する。
【0037】
一定の電圧VAを持つ連続的電圧が、プロセッサ・ユニットにおいてプログラムされうる、決定された時間周期において周波数適応ユニット18によって供給されうる。自動調節回路のいくつかの電子コンポーネントも、エネルギー節約のため決定された時間周期においてのみスイッチオンするように配置されうる。例えば、測定窓13、第2の交番カウンタ14、MEMS共振器16に接続されている発振器段15、およびプロセッサ・ユニット17の一部は、静止モードのままにされ、決定された時間周期にスイッチオンされて振動数を調節することができる。しかし、非常に低い周波数で動作する第1の交番カウンタ12は、連続的にオン状態であり、交流電圧VPのカウントされた交番の特定の回数後に自動調節回路10の他の部分のスイッチオンを制御するために使用することができる。
【0038】
発振機械システムの振動数が適応している場合、特に発振器段15のドロップ・アウト時間が延長されうる。これらの条件において、自動調節回路のアイドル状態にある電子コンポーネントの大半を、例えば、1分おきにスイッチオンするようにでき、これにより、自動調節回路の電力消費が大幅に低減される。これらの条件において、整流された電源電圧を蓄電するコンデンサCcは、ほとんどまったく無負荷になることはなく、それは、基準信号VRと交流信号VPとの周波数比較を行ったときにエネルギーのより大きな使用が時折発生するだけであるからである。
【0039】
自動調節回路10は、よく知られている熱補償要素、および自動調節回路10がスイッチオンになる毎に使用されるリセット・ユニットも備えることができる。自動調節回路およびMEMS共振器16およびコンデンサCcのすべての電子コンポーネントは、同じコンパクトな電子モジュールの一部をなす。これらすべての電子コンポーネントは、同じモノリシック・シリコン基板内に有利に集積化されうるが、このことは、発振機械システムの振動数を調節するために電源内蔵電子モジュールが1つあればよいということを意味する。
【0040】
発振器段15が圧電素子または電気活性ポリマー素子23の交流電圧VPの所望の周波数と一致する分周された周波数の基準信号VRを供給する場合、第2の交番カウンタ14のカウント時間は、第1の交番カウンタ12によって直接的に制御されうる。交流電圧VPの交番数NPは、プロセッサ・ユニット17内で、第2の交番カウンタ14内のカウントされた交番数NRと直接的に比較されうる。
【0041】
ここで行ったばかりの説明から、発振機械システムの振動数を自動調節するための回路のいくつかの変更形態およびこれに含まれうるデバイスは、請求項によって定められた本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって考案されうる。発振機械システムは、音響システムであってもよい。発振機械システムの振動数は、交流電圧と基準信号との間の周波数の比較に基づき、ある数のコンデンサを圧電素子または電気活性ポリマー素子と並列に配置することによって適応されうる。圧電素子と同じ目的で使用されるヒゲゼンマイ上に複合金属イオン層を付着することを企図することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
Cc コンデンサ
P 第1のカウント信号
R 第2のカウント信号
DDとVSS 端子
P 交流電圧
R 基準信号
1 デバイス
2、3 発振機械システム
2 テンプ輪
3 ヒゲゼンマイ
3a 第1の端部
3b 第2の端部
4 ヒゲ持ち
5 アーム
6 テン真
10 回路
12、13、14、17 比較手段
12 第1の交番カウンタ
13 測定窓
14 第2の交番カウンタ
15 発振器段
17 プロセッサ・ユニット
16 MEMS共振器
18 周波数適応ユニット
23 第1の圧電層または電気活性ポリマー層
23’ 第2の圧電層または電気活性ポリマー層
24 金属片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振機械システム(2、3)の振動数を自動調節するための自動調節回路(10)であって、前記発振機械システムは、この発振機械システムの振動の後に交流電圧(VP)を発生させることができる圧電素子または電気活性ポリマー素子(23)を備え、前記自動調節回路は、前記圧電素子または電気活性ポリマー素子に接続されて、前記発振機械システムの振動数を適応させるように意図されており、前記自動調節回路は、
前記圧電素子または電気活性ポリマー素子によって発生した前記交流電圧(VP)を整流し、前記自己調節回路に電気を供給するために前記整流された電圧を少なくとも1つのコンデンサ(Cc)に蓄電するための整流器(11)と、
基準信号(VR)を供給するための、MEMS共振器(16)に接続されている発振回路を備える発振器段(15)と、
前記交流電圧(VP)の周波数を前記基準信号(VR)の周波数と比較するための比較手段(12、13、14、17)と、
前記発振機械システムの振動数を調節するために、前記圧電素子または電気活性ポリマー素子(23)に接続されて、前記比較手段(12、13、14、17)における前記比較の結果に基づき前記圧電素子または電気活性ポリマー素子に周波数適応信号(VA)を供給するように意図されている周波数適応ユニット(18)とを備え、且つ当該自動調節回路のすべての前記電子コンポーネントは、単一の電子モジュールを形成するために一緒にまとめられており、
前記比較手段(12、13、14、17)は、第1の決定された時間周期において前記圧電素子または電気活性ポリマー素子の前記交流電圧(VP)の第1の交番数をカウントし、第1のカウント信号(NP)を供給するための第1の交番カウンタ(12)と、前記第1の決定された時間周期に部分的に基づき第2の決定された時間周期において前記発振器段(15)によって供給される前記基準信号(VR)の第2の交番数をカウントし、第2のカウント信号(NR)を供給するための第2の交番カウンタ(14)と、前記第1のカウント信号を前記第2のカウント信号と比較し、前記比較の結果に基づき前記周波数適応ユニット(18)を制御するためのプロセッサ・ユニット(17)とを備えることを特徴とする
自動調節回路(10)。
【請求項2】
前記MEMS共振器は、単一のコンパクトなモジュールを形成するために、前記自動調節回路の他のすべての電子コンポーネントを集積化するためにも使用される、モノリシック・シリコン基板内に製作されることを特徴とする請求項1に記載の自動調節回路(10)。
【請求項3】
前記MEMS共振器は、前記自動調節回路の他の電子コンポーネントを集積化するために第2のモノリシック・シリコン基板上に、またはそのそばに配置される、第1のモノリシック・シリコン基板内に製作され、前記2つの基板は単一のコンパクトなモジュールを形成するようにカプセル化されることを特徴とする請求項1に記載の自動調節回路(10)。
【請求項4】
前記発振器段(15)は、前記発振回路からの前記振動信号の周波数と同一の周波数の基準信号(VR)を供給するようになされていることを特徴とする請求項1に記載の自動調節回路(10)。
【請求項5】
前記発振器段(15)は、200kHz以上の周波数を有する基準信号(VR)を供給するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の自動調節回路(10)。
【請求項6】
前記比較手段(12、13、14、17)は、前記第1の交番カウンタ(12)と前記第2の交番カウンタ(14)との間に配置された測定窓(13)をさらに備え、前記測定窓(13)は、前記第1の時間周期を考慮しながら前記第2の交番カウンタ(14)について前記第2のカウント時間周期を決定するために処理ユニット(17)によって供給される構成パラメータによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動調節回路(10)。
【請求項7】
前記発振器段(15)は、周波数が前記圧電素子または電気活性ポリマー素子の前記交流電圧(VP)の所望の適応周波数に従って定義されている基準信号(VR)を供給するために、前記振動信号の周波数を分周するための周波数分周器を備えることと、前記処理ユニット(17)は、前記第2のカウント周期と同じである第1のカウント周期で前記第1および第2の交番カウンタ(12、14)のカウント・オペレーションを制御することとを特徴とする請求項1に記載の自動調節回路(10)。
【請求項8】
前記周波数適応ユニット(18)は、前記比較手段(12、13、14、17)の処理ユニット(17)における前記比較の結果に従って前置圧電素子または電気活性ポリマー素子(23)に連続的適応電圧(VA)を供給するようになされていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の自動調節回路(10)。
【請求項9】
前記周波数適応ユニット(18)は、決定された時間周期において連続的適応電圧(VA)を供給するようになされていることを特徴とする請求項8に記載の自動調節回路(10)。
【請求項10】
前記第1の交番カウンタ(12)は、前記周波数比較のため決定された周期において前記発振器段(15)、前記第2の交番カウンタ(14)、および前記プロセッサ・ユニット(17)の一部をスイッチオンするようになされ、前記決定された周期外では、前記発振器段(15)、前記第2の交番カウンタ(14)、および前記プロセッサ・ユニット(17)の一部は、前記コンデンサ(Cc)内の前記整流された電圧による給電を受けないことを特徴とする請求項1に記載の自動調節回路(10)。
【請求項11】
発振機械システム(2、3)および請求項1から10のいずれか一項に記載の前記発振システムの振動数を自動調節するための前記自動調節回路(10)を備えるデバイスであって、前記発振機械システム(2、3)は、前記発振機械システムの振動数と一致する周波数で交流電圧を発生するための圧電素子または電気活性ポリマー素子(23)を備え、前記圧電素子または電気活性ポリマー素子の2つの端子は前記自動調節回路の発振器段(15)からの前記交流電圧(VP)と基準電圧(VR)との間の周波数比較に基づき前記自動調節回路(10)から周波数適応信号(VA)を受信するように前記自動調節回路に接続されることを特徴とするデバイス。
【請求項12】
前記発振機械システム(2、3)は、時計のテンプ輪(2)であり、前記テンプ輪には、前記圧電素子または電気活性ポリマー素子(23)が載せられるヒゲゼンマイ(3)が装着されることを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記圧電素子または電気活性ポリマー素子は、前記ヒゲゼンマイ(3)の金属片(24)の少なくとも1つの表面に配置された少なくとも1つの圧電層または電気活性ポリマー層(23)を備えることを特徴とする請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記圧電素子または電気活性ポリマー素子は、前記金属片(24)の外面に配置された第1の圧電層または電気活性ポリマー層(23)および前記金属片(24)の内面に配置された第2の圧電層または電気活性ポリマー層(23’)を備えることと、前記圧電素子または電気活性ポリマー素子の第1の接続端子は、前記第1の圧電層または電気活性ポリマー層に固定されることと、前記圧電素子または電気活性ポリマー素子の第2の接続端子は、前記第2の圧電層または電気活性ポリマー層に固定され、前記第1および第2の端子は前記自動調節回路(10)に接続されることとを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記第1および第2の圧電層または電気活性ポリマー層(23、23’)は、前記金属片(24)の前記内面および外面の一部にまたは全長に付着されることを特徴とする請求項14に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96991(P2013−96991A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−236337(P2012−236337)
【出願日】平成24年10月26日(2012.10.26)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)