説明

発振装置および電子機器

【課題】高効率に音波の指向性を絞り込むことができる発振装置を提供する。
【解決手段】一対の圧電素子110が両端に個々に装着されている細長形状の弾性部材120が、中央で複数の支持部材130により支持されている。このように片持ち支持構造を利用していることから、音波の放射部は弾性部材120と圧電素子110からなる圧電振動子の両端に限定される。このため、例えば、複数の圧電振動子を配列させる場合に、隣接する圧電振動子の音波放射位置を近接させることができる。すなわち、圧電振動子間の短径方向の距離を制御することで、隣接する圧電振動子から発振された音波の位相キャンセリングを抑制することができ、高効率に音波の指向性を絞り込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を利用した発振装置、この発振装置を利用した電子機器、に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話において、TV電話や動画再生、ハンズフリー電話機能などの音響機能を商品価値とした薄型スタイリッシュ携帯の開発に取り組んでおり、小型でかつ大音量の電気音響変換器開発への要求が高まっている。また、プライバシ−保護の観点から、特定位置にのみ音場を形成できる超指向性スピーカの開発が要求されている。超指向性のスピーカとして、超音波を音声などの搬送波に利用して、空気中の非線形状態により復調するパラメトリックスピーカが開発されている。
【0003】
現在、上述のような電気音響変換器として各種の提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−134697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波の指向性を絞り込むには、フェーズドアレイ法のように、微少な超音波振動子を多数配列したアレイ探触子から、タイミングを変えて発振した超音波を合成した主ビームを発生させる方法が取られていた。この場合、多数の圧電振動子をアレイ状に配列する必要があるため、超音波デバイスのサイズが増加する問題があった。
【0006】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、高い指向性を有する小型の発振装置、このような発振装置を利用した電子機器、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発振装置は、電界の印加により伸縮運動する一対の圧電素子と、一対の圧電素子が両端に個々に装着されている細長形状の弾性部材と、弾性部材を中央で支持している支持部材と、を有する。
【0008】
本発明の第一の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置に可聴域の音波に復調される超音波を出力させる発振駆動部と、を有する。
【0009】
本発明の第二の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置に超音波を出力させる発振駆動部と、発振装置から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する測距部と、を有する。
【0010】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0011】
さらに、本発明では前後左右上下の方向を規定しているが、これは本発明の構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定したものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。また、本発明で云う前後左右上下の方向とは、完全に幾何学的に直交している必要はなく、相対的に前後左右上下となる方向となっていればよく、例えば、各方向が任意の方向に傾斜していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発振装置は、複数の圧電素子が各々の両端に個々に装着されている細長形状の弾性部材が、中央で支持部材により支持されている。従って、片持ち支持構造を利用していることから、音波の放射部は弾性部材と圧電素子からなる圧電振動子の端部に限定される。このため、例えば、複数の圧電振動子を配列させて形成するときに、隣接する圧電振動子の音波放射位置を近接させることができる。すなわち、振動子間の短径方向の距離を制御することで、隣接する振動子から発振された音波の位相キャンセリングを抑制することができ、高効率に音波の指向性を絞り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の発振装置である電気音響変換器の構造を示す模式的な平面図である。
【図2】電気音響変換器の要部の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態の発振装置である電気音響変換器100を図面を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0015】
本実施の形態の電気音響変換器100は、図1および図2に示すように、電界の印加により伸縮運動する一対の圧電素子110と、一対の圧電素子110が両端に個々に装着されている細長形状の弾性部材120と、弾性部材120を中央で支持している支持部材130と、を有する。
【0016】
より詳細には、電界の印加により伸縮運動する複数の圧電素子110と、複数の圧電素子110が各々の両端に個々に装着されている細長形状の複数の弾性部材120と、複数の弾性部材120の各々を中央で個々に支持している複数の支持部材130と、複数の弾性部材120が平面形状で前後左右に配列されるように支持部材130を支持している本体フレーム140と、を有する。
【0017】
なお、弾性部材120のアスペクト比は、例えば、片側で5〜20である。また、弾性部材120は、例えば、全長が20〜100mm、全幅が3〜10mm、板厚が0.01〜0.5mmのりん青銅、ニッケル鉄合金、ステンレス等からなり、支持部材130は、例えば、板厚が1〜3mmのステンレスからなる。本体フレーム140は、平面形状で前後左右に四辺が位置する矩形に形成されており、弾性部材120は、前後方向に細長形状で前後左右に複数が配列されている。
【0018】
なお、本実施の形態の電気音響変換器100では、矩形の弾性部材120の両端上面の全域に左右方向に細長形状の矩形の圧電素子110が形成されている。また、複数の圧電素子110の各々には発振駆動部であるドライバ回路150が結線されている。
【0019】
音波発生のメカニズムは、圧電素子110への電界の印加により発生する伸縮運動を利用する。また、超音波の周波数は20kHz以上に限定する。圧電素子110は機械品質係数Qが高いため、基本共振周波数の近傍にエネルギが集中するため、基本共振周波数では高い音圧レベルを得ることができるが、その他の周波数帯域では、音圧が減衰してしまう。
【0020】
本構成では、特定周波数に限定した超音波を発振させるため、むしろ、圧電素子110の機械品質係数Qが高いことが特性として優位となる。また、圧電振動子の基本共振周波数は圧電素子110の形状に影響を受けるため、高い周波数帯域、例えば、超音波帯域に共振周波数を調整する場合、小型化に優位となる。
【0021】
なお、本構成では、FM(Frequency Modulation)やAM(Amplitude Modulation)変調させた超音波を発振させ、空気の非線形状態(疎密状態)を利用して、変調波を復調させ可聴音を再生する、いわゆるパラメトリックスピーカの原理に基づいて音響再生を行う。本実施の形態の電気音響変換器100では、圧電素子110は、高周波数帯域の発振に限定した構成になるため、小型化が可能となる。
【0022】
上述のような構成において、本構成の電気音響変換器100では、超音波を音声の搬送波として利用するパラメトリックスピーカの原理を利用して音響再生を行う。このパラメトリックスピーカの原理を利用することで、超指向性の音場形成が可能となる。なお、音波の指向性を制御するにはフェーズドアレイ法のように、アレイ状の複数の圧電振動子から音波を放射することが好ましく、本構成の電気音響変換器100においても、アレイ状に配列されている複数の圧電振動子を利用して超指向性の音場形成が可能となる。
【0023】
本実施の形態の電気音響変換器100は、複数の圧電素子110が各々の両端に個々に装着されている細長形状の複数の弾性部材120の各々が、中央で複数の支持部材130により個々に支持されて本体フレーム140に前後左右に配列されている。このように片持ち支持構造を利用していることから、音波の放射部は弾性部材120と圧電素子110からなる圧電振動子の両端に限定される。
【0024】
このため、隣接する圧電振動子の音波放射位置を近接させることができる。すなわち、圧電振動子間の短径方向の距離を制御することで、隣接する圧電振動子から発振された音波の位相キャンセリングを抑制することができ、高効率に音波の指向性を絞り込むことができる。
【0025】
なお、ドライバ回路150で複数の圧電素子110を駆動するときには、全部に同一の駆動信号を入力して高効率に高指向性の音波を発生させてもよく、複数の圧電素子110に入力する駆動信号を個別に制御して高効率な高指向性の音波の出力方向を制御してもよい。
【0026】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では圧電素子110で弾性部材120の上面のみ拘束するユニモルフ構造の電気音響変換器100を例示した。しかし、二個の圧電素子110で弾性部材120の上面と下面とを拘束したバイモルフ構造の発振装置なども実施可能である。この場合、装置全体を大型化することなく、さらに高効率に大音量の出力が可能となる。
【0027】
また、上記形態では圧電素子110が一個の圧電層からなることを想定した。しかし、圧電素子が、圧電層と電極層とが交互に積層された積層構造からなってもよい(図示せず)。
【0028】
さらに、上記形態では、矩形の弾性部材120の両端上面の全域に矩形の圧電素子110が形成されていることを例示した。しかし、しかし、矩形の弾性部材120の一端上面の一部に小型の圧電素子(図示せず)が形成されていてもよい。
【0029】
さらに、上記形態では電気音響変換器100に発振駆動部であるドライバ回路150が接続されている電子機器を想定した。しかし、このような電気音響変換器100と、電気音響変換器100に超音波を出力させる発振駆動部と、電気音響変換器100から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する測距部と、を有するソナーなどの電子機器(図示せず)も実施可能である。
【0030】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0031】
100 電気音響変換器
110 圧電素子
120 弾性部材
130 支持部材
140 本体フレーム
150 ドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界の印加により伸縮運動する一対の圧電素子と、
一対の前記圧電素子が両端に個々に装着されている細長形状の弾性部材と、
前記弾性部材を中央で支持している支持部材と、
を有する発振装置。
【請求項2】
複数の前記弾性部材が平面形状で前後左右に配列されるように複数の前記支持部材を支持している本体フレームを、さらに有する請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記本体フレームは、矩形の平面形状に形成されており、
前記弾性部材は、矩形の平面形状に形成されていて複数が矩形に配列されている請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記弾性部材の両端の両面に一個ずつ前記圧電素子が装着されている請求項1ないし3の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置に可聴域の音波に復調される超音波を出力させる発振駆動部と、
を有する電子機器。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置に前記超音波を出力させる発振駆動部と、
前記発振装置から発振されて測定対象物で反射した前記超音波を検知する超音波検知部と、
検知された前記超音波から前記測定対象物までの距離を算出する測距部と、
を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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