説明

発泡剤組成物

本発明は、ジクロロエチレン、ならびにハロケトン、フルオロ酸、フルオロエステル、フルオロアミン、(ハイドロ)フルオロエーテル、(ハイドロ)フルオロチオエーテル、(ハイドロ)フルオロオレフィン、環式(ハイドロ)フルオロカーバイドおよびヨードフルオロ(ハイドロ)カーバイドから選択される少なくとも1つの化合物(C)を含む発泡剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性および熱硬化性発泡体の製造に使用することができる発泡剤組成物
に関する。
【背景技術】
【0002】
他の用途と同様に、熱可塑性および熱硬化性発泡体の分野において、オゾン層の破壊を制限することを目的としたモントリオール議定書が、フッ素化製品の使用に関して厳しい規制を課している。フッ素化製品の規制は、これらのODP(オゾン層破壊係数)によって特徴付けられる。CFC(クロロフルオロカーボン)が第1世代の製品であり、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が第2世代であり、どちらもゼロまたは無視し得るODPを有していない。これは、第3世代の製品、すなわちHFC(ハイドロフルオロカーボン)に当てはまる。さらに、これら製品は、発泡体の分野において今日に至るまで広く使用されている。
【0003】
温室効果を有するガスの放出を規制する京都議定書の批准は、これらフッ素化製品についてさらなる制約、すなわちこれらのGWP(地球温暖化係数)の低下を課している。
【0004】
このような状況下、イソシアネートベースの発泡体の製造において、発泡剤として少なくとも1つのHFCの使用が、欧州特許第381986号に記述されている。ますます厳しくなる環境上の制約に直面して、発泡剤組成物におけるHFCの部分的置き換えが提言されている。国際公開第02/099006号は、発泡体製造において、HFCおよび発泡剤としてのトランス−1,2−ジクロロエチレンの共沸性組成物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主題は、無視し得るODPおよび低いGWPの基準を同時に満足する発泡剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1主題は、ジクロロエチレン、ならびにハロケトン、フルオロ酸、フルオロエステル、フルオロアミン、(ハイドロ)フルオロエーテル、(ハイドロ)フルオロチオエーテル、(ハイドロ)フルオロオレフィン、環式(ハイドロ)フルオロカーボンおよびヨードフルオロ(ハイドロ)カーボンから選択される少なくとも1つの化合物(C)を含む発泡剤組成物である。
【0007】
発泡剤組成物が、基本的にジクロロエチレン、ならびにハロケトン、フルオロ酸、フルオロエステル、フルオロアミン、(ハイドロ)フルオロエーテル、(ハイドロ)フルオロチオエーテル、(ハイドロ)フルオロオレフィン、環式(ハイドロ)フルオロカーボンおよびヨードフルオロ(ハイドロ)カーボンから選択される少なくとも1つの化合物(C)を含むと有利である。
【0008】
本発明による発泡剤組成物は、無視し得るODPを有するのみならず、好ましくは150未満の低いGWPも有している。
【0009】
この発泡剤組成物は、ジクロロエチレン1から94重量%および化合物C99から6重量%、好ましくは、ジクロロエチレン50から94重量%および化合物C50から6重量%および有利にはジクロロエチレン70から94重量%および化合物C30から6重量%を含む。
【0010】
(ハイドロ)フルオロエーテルを、化合物Cとして選択することが好ましい。
【0011】
(ハイドロ)フルオロエーテルは、炭素、フッ素、少なくとも1つのエーテル官能基および場合によって水素を含む化合物を意味する。
【0012】
(ハイドロ)フルオロエーテルとしては、一般式(R−O)−R(式中、xは1または2に等しく、Rは1から4個の炭素原子を有する場合によってフッ素化されたアルキル基を表し、Rは少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個と9個の間の炭素原子を有する(ペル)フッ化脂肪族基を表す。)を有する(ハイドロ)フルオロエーテルを特に挙げることができる。Rは酸素、窒素および硫黄などのヘテロ原子を含むこともできる。
【0013】
好ましいハイドロフルオロエーテルは、xの値が1に等しいハイドロフルオロエーテルである。特に、1−メトキシノナフルオロブタン、n−COCH、CFCF(CF)CFOCHおよび(CFCOCH、および1−エトキシノナ−フルオロブタン、n−COC、CFCF(CF)CFOCおよび(CFCOCを挙げることもできる。
【0014】
以下の式を有する化合物も、ハイドロフルオロエーテルとして適している。C17OCH、C11OC、COCHまたは1,1−ジメトキシペルフルオロシクロヘキサン。
【0015】
1−メトキシノナフルオロブタン、n−COCH、CFCF(CF)CFOCHおよび(CFCOCH、および1−エトキシノナフルオロブタン、n−COC、CFCF(CF)CFOCおよび(CFCOCは、ハイドロフルオロエーテルとして有利に選択される。
【0016】
ジクロロエチレンとしては、トランス−1,2−ジクロロエチレンまたはシス−1,2−ジクロロエチレンを特に挙げることもできる。
【0017】
トランス−1,2−ジクロロエチレンが有利に選択される。
【0018】
フルオロアミンとしては、N−(ジフルオロメチル)−N,N−ジメチルアミンを特に挙げることもできる。
【0019】
(ハイドロ)フルオロチオエーテルとしては、1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−2−[(ペンタフルオロエチル)チオ]エタンを特に挙げることもできる。
【0020】
環式(ハイドロ)フルオロカーボンの例は、ヘプタフルオロシクロペンタンである。
【0021】
ヨードフルオロ(ハイドロ)カーボンとしては、ヨードトリフルオロメタン(CFI)、ヨードペンタフルオロエタン(CI)、1−ヨードヘプタフルオロプロパン(CFCFCFI)、2−ヨードヘプタフルオロプロパン(CFCFICF)、ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CHFCFI)、2−ヨード−1,1,1−トリフルオロエタン(CFCHI)、ヨードトリフルオロエチレン(CI)、1−ヨード−1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(CFCHFCFI)または2−ヨードノナフルオロ−tert−ブタン((CFCI)を特に挙げることもできる。ヨードトリフルオロメタンおよびヨードペンタフルオロエタンが好ましい。
【0022】
ハロケトンは、炭素、フッ素、少なくとも1つのケトン官能基および場合により水素、塩素および臭素を含む化合物を意味する。ハロケトンは、一般式RCORによって表すことができ、ここでRおよびRは、同一または異なっており、脂肪族または脂環式フルオロカーボン基から成る群から独立に選択され、場合によって水素、臭素または塩素を含み、基の炭素原子の鎖は直鎖または分枝、飽和または不飽和であることができる。RおよびRは、場合により環を形成することができる。ハロケトンは、3から10個の炭素原子、好ましくは4から8個の炭素原子を含むことができる。ハロケトンは、追加的なケトン官能基を形成するための酸素など他のヘテロ原子またはエーテル、アルデヒドまたはエステル基を追加的に含むことができる
【0023】
ハロケトンとしては、1,1,1,2,2,4,5,5,5−ノナフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−3−ペンタノン、1,1,1,2,4,5,5,5−オクタフルオロ−2,4−ビス(トリ−フルオロメチル)−3−ペンタノン、1,1,1,2,4,4,5,5−オクタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−3−ペンタノン、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−3−ヘキサノン、1,1,2,2,4,5,5,5−オクタフルオロ−l−(トリフルオロメトキシ−4−(トリフルオロメチル)−3−ペンタノン、1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−2−ブタノン、1,1,1,2,2,5,5,5−オクタ−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)−3−ペンタノンまたは2−クロロ−1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−3−ペンタノンを特に挙げることもできる。1,1,1,2,2,4,5,5,5−ナノフルオロ−4−(トリフルオロ−メチル)−3−ペンタノンが好ましい。
【0024】
ハロケトンとしては、例えばモノブロモペルフルオロケトン、モノヒドロモノブロモペルフルオロケトン、(ペルフルオロ−アルコキシ)モノブロモペルフルオロケトン、(フルオロアルコキシ)モノブロモペルフルオロケトンおよびモノクロロモノブロモペルフルオロケトンのブロモフルオロケトンを挙げることもできる。
【0025】
適切な(ハイドロ)フルオロオレフィンは、場合により、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノノアフルオロ−1−ヘキセンまたは一般式CFCY=CX(式中、XおよびYは、独立に水素原子またはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、nおよびpは、値0、1または2を有する整数であり、(n+p)が2に等しい)のフルオロプロペンである。例えば、CFCH=CF、CFCH=CFH、CFCBr=CF、CFCH=CH、CFCF=CF、CFCCI=CF、CFCH=CHCI、CFCCI=CHF、CFCH=CCIおよびCFCF=CCIを挙げることもできる。
【0026】
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225zc)、1,1,1,3−テトラフルオロプロペンのシスおよびトランス異性体(HFO−1234ze)および1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)が特に好ましい。
【0027】
特に好ましい発泡剤組成物は、トランス−1,2−ジクロロエチレンおよび少なくとも1つのハイドロフルオロエーテルを含む。トランス−1,2−ジクロロエチレンおよび1−メトキシノナフルオロブタンを含む発泡剤組成物は、非常に有利な結果をもたらしている。同様のことが、トランス−1,2−ジクロロエチレンおよび1−エトキシノナフルオロブタンを含む組成物に当てはまる。
【0028】
本発明による発泡剤組成物は、有利に良好な寸法安定性を有する熱可塑性および熱硬化性発泡体をもたらす。これはポリウレタン発泡体の製造のために特に適している。
【0029】
多くの用途において、ポリウレタン発泡体の成分はプレブレンドされる。より一般的に、発泡体の剤型は、2つの成分としてプレブレンドされる。「成分A」の名称で良く知られている第1の成分は、イソシアネートまたはポリイソシアネート組成物を含む。「成分B」の名称で良く知られている第2の成分は、ポリオールまたはポリオールの混合物、界面活性剤、触媒(複数可)および発泡剤(複数可)を含む。
【0030】
したがって、本発明の第2主題は、ポリオールまたはポリオールの混合物、および第1主題の発泡剤を含む組成物である。第2主題による組成物は、エマルジョンの形態であることが好ましい。
【0031】
発泡剤は、第2主題の組成物におけるポリオールまたはポリオールの混合物100重量部当たり1と60重量部の間を表すことが好ましい。有利には、ポリオールまたはポリオールの混合物100重量部当たり5と35重量部の間を表す。
【0032】
ポリオールとしては、グリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエーテルポリオール(例えば、アルキレンオキシドまたはアルキレンオキシドの混合物のグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパンもしくはペンタエリスリトールを用いた縮合によって得られたポリエーテルポリオール)、またはポリエステルポリオール(ポリカルボン酸(特に、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸、イソフタール酸またはテレフタール酸)からグリセロール、エチレングリコール、トリメチロールプロパンもしくはペンタエリスリトールを用いて得られたポリエステルポリオール)を特に挙げることもできる。
【0033】
アルキレンオキシド、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの、芳香族アミン、特に2,4−および2,6−トルエンジアミン混合物への添加によって得られたポリエーテルポリオールも同様に適している。
【0034】
ポリオールの他の種類として、ヒドロキシル末端を含むポリチオエーテル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリオレフィンおよびポリシロキサンを特に挙げることもできる。
【0035】
本発明の別の主題は、ポリウレタン発泡体、特に硬質ポリウレタン発泡体の製造のための方法である。この方法は、有機ポリイソシアネート(ジイソシアネートを含む)を、第2主題による組成物と反応させることから成る。この反応は、アミンおよび/または他の触媒ならびに界面活性剤を用いて活性化することができる。
【0036】
本発明による発泡剤に加えて、ポリウレタン発泡体の製造のための方法は、水などの化学的発泡剤の存在の下で行うことができる。
【0037】
ポリイソシアネートとして、18個の炭素原子にまで及ぶことのできる炭化水素基を有する脂肪族ポリイソシアネート、15個の炭素原子までに及ぶことのできる炭化水素基を有する脂環式ポリイソシアネート、6から15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を有する芳香族ポリイソシアネートおよび8から15個の炭素原子を有するアリール脂肪族炭化水素基を有するアリール脂肪族ポリイソシアネートを特に挙げることもできる。
【0038】
好ましいポリイソシアネートは、2,4−および2,6−ジイソシアネートトルエン、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリ−メチレンポリフェニルイソシアネートおよびこれらの混合物である。改質ポリイソシアネート、例えば、カルボジイミド基、ウレタン基、イソシアンウレート基、ウレア基またはジウレア基を含む改質ポリイソシアネートも適切なことがある。
【実施例】
【0039】
硬質ポリウレタン発泡体の調製のための手順
ポリオールStepanpol PS2412(ポリエステル型)100重量部、界面活性剤(Tegostab B8465)1.5重量部、水3重量部および本発明による発泡剤組成物10重量部をビーカーに入れる。次いで得られた混合物を、垂直機械式撹拌機を使用して平均速度2000回転/分において1分間撹拌する。
【0040】
その後Desmodur 44V70L(イソシアネート)110重量部をビーカーに入れ、平均速度3500回転/分において15秒間撹拌する。
【0041】
混合物の撹拌の間に、Dabco K15(2−エチルヘキサノール酸のカリウム塩とジエチレングリコールの混合物)2.82重量部とPolycat5(ペンタメチルジエチレントリアミン)0.18重量部から成る触媒を、プラスチック製注射器を用いて注入する。(全部で)25秒間撹拌した後、混合物を紙で覆った長方形の型に注ぐ。5分間待ってから発泡体を型から取り除き、24時間後に帯鋸を用いて発泡体を切断する。
【0042】
切断した発泡体の容積を、炉に通す前と炉中で70℃において72時間加熱した後において測定する。
【0043】
炉に通す前後の発泡体の容積の差が寸法安定性の指標であり、データを以下の表に示す。
【0044】
パーセントで表される容積の差は、以下の方法で計算する。
容積の差(%)=(最終容積−開始時容積)/開始時容積
実施例に使用した発泡剤は以下の通り。
【0045】
実施例1(本発明によるもの):トランス−1,2−ジクロロエチレン(TDCE)の75重量%および1−メトキシノナフルオロブタンの25重量%。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジクロロエチレン、ならびにハロケトン、フルオロ酸、フルオロエステル、フルオロアミン、(ハイドロ)フルオロエーテル、(ハイドロ)フルオロチオエーテル、(ハイドロ)フルオロオレフィン、環式(ハイドロ)フルオロカーボンおよびヨードフルオロ(ハイドロ)カーボンから選択される少なくとも1つの化合物(C)を含む発泡剤組成物。
【請求項2】
1から94重量%のジクロロエチレンおよび99から6重量%の化合物C、好ましくは、50から94重量%のジクロロエチレンおよび50から6重量%の化合物C、ならびに有利には70から94重量%のジクロロエチレンおよび30から6重量%の化合物Cを含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリオールまたはポリオールの混合物を追加的に含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ジクロロエチレンがトランス−1,2−ジクロロエチレンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
化合物Cが、1−メトキシノナフルオロブタンおよび/または1−エトキシノナフルオロブタンであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
発泡剤が、ポリオールの100重量部当たり1から60重量部の割合で、好ましくは5から35重量部の割合で存在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1、2、4または5に記載の発泡剤を使用することを特徴とする、発泡体製造のための方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物を使用することを特徴とする、ポリウレタン発泡体製造のための方法。

【公表番号】特表2009−535432(P2009−535432A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502167(P2009−502167)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051013
【国際公開番号】WO2007/113435
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】