説明

発泡性熱可塑性樹脂粒子とその製造方法、発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物及び発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法

【課題】 表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電を効果的に防止して移送・貯留時の窒素ガス置換等の安全対策を軽減できる発泡性熱可塑性樹脂粒子とその製造方法、そのための組成物及び帯電防止方法の提供。
【解決手段】 保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を表面に被覆してなることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子。発泡性熱可塑性樹脂粒子に表面処理剤を被覆する表面処理工程を施して製品化する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子に被覆する工程を含むことを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。保湿剤と界面活性剤を必須成分として含み、液状をなしている発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性熱可塑性樹脂粒子とその製造方法、発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物及び発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法に関する。発泡性熱可塑性樹脂粒子は、食品等の各種包装容器、緩衝材、建設資材などの各種分野において多用されている熱可塑性樹脂発泡成形品の原料として用いられる。
【背景技術】
【0002】
発泡性熱可塑性樹脂粒子の中でも代表的な発泡性スチレン系樹脂粒子は、一般に、懸濁重合法により得られたスチレン系樹脂粒子又は押出機を用いて作製した樹脂ペレットを、撹拌機を備えた耐圧容器内で水系分散剤に懸濁させ、これに加温加圧下で発泡剤を含浸させる、所謂含浸法によって製造されている。発泡剤含浸後、容器から取り出した粒子は、洗浄、脱水、篩による分級の各工程を経た後、ブレンダー、ミキサー等の混合機によりブロッキング防止剤や帯電防止剤等の表面処理剤を被覆して製品となる。この際、脱水終了後から混合機で表面処理剤が被覆されるまでの工程では、樹脂粒子から逸散する可燃性の発泡剤への静電気発火による災害を防止するために、送粒ラインや1次ストックタンクで窒素ガス置換等の発火防止対策が必要となる。
【0003】
また発泡性スチレン系樹脂粒子は、押出機内で発泡剤と樹脂を溶融混練し、押出機先端に取り付けたダイから押し出して粒子状に切断する、所謂押出法と呼ばれる方法で製造することもできるが、この場合は粒子表面に分散剤等の不純物の付着がないため、含浸法で得られる発泡性スチレン系樹脂粒子よりも更に静電気による帯電が大きくなる恐れがあり、混合機における表面処理剤被覆までは、窒素ガス置換等の発火防止対策が必須となっている。
【0004】
発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造及び帯電防止性付与に関する従来技術としては、例えば、特許文献1〜5に記載の技術が提案されている。
特許文献1には、ホコリ吸着が少なく、熱融着性及び表面仕上りが良好な発泡成形品を得ることを目的とし、表面がヒドロキシ高級脂肪酸アミド及びカチオン系界面活性剤で被覆されてなる発泡性スチレン系樹脂粒子が開示されている。しかし、これらのヒドロキシ高級脂肪酸アミド及びカチオン系界面活性剤は、製品に被覆される粉体状の表面処理剤であり、特許文献1には表面処理前の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して帯電防止性を付与することは記載されていない。
特許文献2には、ポリスチレンに代表される熱可塑性樹脂と発泡剤とを押出機内で溶融混練した後、ダイスより加熱加圧された液中に吐出し、即時切断して顆粒化し、次いで分散剤又は界面活性剤の存在下に加熱処理する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法が開示されている。しかし、この方法では、球状化処理した樹脂粒子を水冷後、乾燥しているだけなので、その樹脂粒子は帯電し易いものである。特許文献2には表面処理前の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して帯電防止性を付与することは記載されていない。
特許文献3には、スチレンやトルエン、キシレン等の揮発性溶剤類の含有量が少ない発泡成形体を製造するためのスチレン系発泡性樹脂粒子が開示されている。この特許文献3には、その表面にアミン類やグリセリン等の帯電防止剤、ブロッキング防止剤、ハイサイクル剤をコーティングすることができる旨が記載されているが、特許文献3には表面処理前の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して帯電防止性を付与することは記載されていない。
【0005】
特許文献4には、熱可塑性合成樹脂粒子に帯電防止剤を添加し高剪断力のもとに両者を撹拌混合し、該樹脂粒子の表面層が軟化した状態で該樹脂粒子の表面に帯電防止剤を付着せしめて帯電防止剤含有合成樹脂粒子とし、しかるのち、該帯電防止剤含有合成樹脂に水性媒体中で発泡剤を含浸させる帯電防止能を有する発泡剤樹脂粒子の製造方法が開示されている。
特許文献5には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルの重合体あるいは共重合体1〜30質量%と界面活性剤0.01〜3質量%とを含有したオレフィン系樹脂粒子を発泡させてなる帯電防止性オレフィン系樹脂予備発泡粒子が開示されている。
【特許文献1】特開平5−125213号公報
【特許文献2】特開平9−221562号公報
【特許文献3】特開2002−356575号公報
【特許文献4】特公平6−860号公報
【特許文献5】特開平10−147660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1〜3には、表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子を送粒ラインや1次ストックタンクに移送・貯留する場合に帯電し易いこと、この移送・貯留の帯電防止の必要性及び具体的な帯電防止対策などについては全く記載されていない。従って、特許文献1〜3に記載された従来技術においては、表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子を移送・貯留する場合に送粒ラインや1次ストックタンクを窒素ガス置換等、静電気による火花が発生しても樹脂粒子から逸散した可燃性発泡剤などが発火しないような対策を講じる必要がある。しかし、送粒ラインや1次ストックタンクを窒素ガス置換するには、多量の窒素ガスが必要となり、またそのための装置の維持にも多大な工数及びコストがかかってしまう問題がある。
【0007】
また特許文献4及び5に記載された技術では、発泡性熱可塑性樹脂粒子に帯電防止剤を含有させているので、発泡性熱可塑性樹脂粒子を移送・貯留する場合に樹脂粒子が帯電し難くなり、発泡性熱可塑性樹脂粒子を移送・貯留する場合の安全対策をある程度軽減できる。しかし、発泡性熱可塑性樹脂粒子の移送等における帯電を防止し、窒素ガス置換せずに静電気による発火等を完全に防ぐためには、多量の帯電防止剤を樹脂粒子中に含有させなければならず、製品のコストが上昇してしまう。また多量の帯電防止剤を樹脂粒子中に含有させた場合、発泡成形時に発泡粒子同士の融着が悪くなり、得られる発泡成形体の機械強度が低下したり、あるいは断熱性能が低下する可能性がある。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電を効果的に防止して移送・貯留時の窒素ガス置換等の安全対策を軽減できる発泡性熱可塑性樹脂粒子とその製造方法、発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物及び発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を表面に被覆してなることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子を提供する。
【0010】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記保湿剤が、1種又は2種以上の多価アルコールを含むことが好ましい。
【0011】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子において、粉体状の表面処理剤が前記帯電防止剤を被覆した後の表面に被覆されてなる構成とすることが好ましい。
【0013】
また本発明は、発泡性熱可塑性樹脂粒子に表面処理剤を被覆する表面処理工程を施して製品化する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子に被覆する工程を含むことを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記保湿剤が、1種又は2種以上の多価アルコールを含むことが好ましい。
【0015】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含み、液状をなしていることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物を提供する。
【0017】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物において、前記保湿剤が、1種又は2種以上の多価アルコールを含むことが好ましい。
【0018】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物において、前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に、前述した本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物を被覆することを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法を提供する。
【0020】
本発明の帯電防止方法において、発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物を被覆した発泡性熱可塑性樹脂粒子について、温度23℃、相対湿度20%の雰囲気下で測定した体積固有抵抗ρが1.0×1013Ωcm未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電を効果的に防止して移送・貯留時の窒素ガス置換等の安全対策を軽減でき、そのためのコストや工数を削減できる発泡性熱可塑性樹脂粒子とその製造方法、発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物及び発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子(以下、樹脂粒子と略記する場合がある。)は、発泡剤を含む熱可塑性樹脂粒子の表面に、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を被覆してなることを特徴とする。
【0023】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等が挙げられる。さらに前記ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ホモポリスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体(ハイインパクトポリスチレン)、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン改質ポリエチレン樹脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子に用いられる発泡剤としては、例えばプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン等の炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール等の各種アルコール類等が使用可能であり、これらの中でも、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン単独もしくはこれらの混合物が特に好適である。発泡剤の添加量は、発泡性粒子の目標発泡倍率により増減できるが、一般的には樹脂100質量部に対して2〜15質量部の範囲が好ましい。
【0025】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子には、前記熱可塑性樹脂及び発泡剤以外の添加成分として、発泡性粒子が発泡した際の気泡を調整するために気泡核剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤等の当該分野で周知の各種添加剤を必要に応じて1種又は2種以上添加することができる。
気泡核剤としては、含浸法においては、例えばエチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪酸アマイドや、トリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス等が挙げられ、樹脂粒子に対して、通常0.01〜0.8質量部程度添加するのが好ましい。
気泡核剤としては、押出法においては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、シリカ、ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末等の他、重曹クエン酸、アゾジカルボン酸アミド等が使用できるが、この内、微粉末タルクを樹脂に対して0.2〜2.0質量部添加するのが好ましい。含浸法で用いられる気泡核剤を添加してもよい。
【0026】
本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子の形状や寸法は特に限定されないが、後述する各製造方法の違いによって、真球状、円柱状、略球状などの形状が一般的であり、真球状又は略球状の場合の粒径は通常0.3〜2.0mm程度であり、円柱状の場合は粒子径0.5〜1.5mm、粒子長2.0〜8.0mm程度である。
【0027】
本発明において発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に被覆される帯電防止剤は、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含み、液状をなしている帯電防止剤組成物(発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物)を用いることが好ましい。
【0028】
この帯電防止剤組成物に用いられる保湿剤としては、発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に被覆された際に保湿作用を発揮する各種の物質、例えば、多価アルコール又はその溶液、リン酸や乳酸などの酸溶液、ショ糖やブドウ糖などの糖水溶液、ポリアクリル酸塩などの吸水性高分子化合物の水溶液、塩化カルシウムなどの無機塩水溶液、クエン酸ナトリウムなどの有機酸塩水溶液等が挙げられ、これらの中でも多価アルコール又はその溶液が好ましい。
【0029】
前記多価アルコールとしては、グリセリン、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトールなどが挙げられ、これらの中でも、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが特に好ましい。本発明の帯電防止剤組成物には、前述した各種保湿剤の中から選択される1種を、又は2種以上を配合することができる。
【0030】
本発明の帯電防止剤組成物に用いられる保湿剤は、未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して、100〜1500質量ppmの範囲となるように配合することが好ましい。未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して保湿剤が100質量ppm未満では、帯電防止効果が不十分となる可能性がある。一方、未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して保湿剤が1500質量ppmを超えると、べたつきが大きくなり、送粒時に付着したり、タンク貯留時にブロッキングを生じ易くなる。さらに好ましくは、200〜500質量ppmの範囲である。
【0031】
本発明の帯電防止剤組成物に用いられる界面活性剤(以下、活性剤と記す。)としては、アニオン活性剤、カチオン活性剤、両性活性剤の中から選択される1種又は2種以上が使用できる。
【0032】
アニオン活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリルエーテルスルホン酸塩などが挙げられる。
カチオン活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アミンオキサイド、イミダゾリニウムベタイン、アルキルグリシン等が挙げられる。
なお、これらの活性剤は、水、アルコールなどの適当な溶媒、好ましくは水に溶解した状態で使用に供することが好ましい。
【0033】
本発明の帯電防止剤組成物に用いられる活性剤は、未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して、5〜500質量ppmの範囲となるように配合することが好ましい。未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して活性剤が5質量ppm未満では帯電防止効果が不十分となる。一方、未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子に対して活性剤が500質量ppmを超えると、樹脂粒子の乾燥が困難になる。さらに好ましくは、50〜150質量ppmの範囲である。
【0034】
本発明の帯電防止剤組成物は、前記保湿剤及び活性剤の必須成分以外に、水やアルコールなどの溶媒、難燃剤、安定化剤、pH調整剤、皮膜形成剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0035】
本発明の帯電防止剤組成物は、未被覆の発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に混合機による被覆、スプレー装置による被覆などの各種の被覆方法を用いて被覆することができる。スプレー装置による噴霧による被覆は、連続的に均一に被覆することができるので、好ましい被覆方法である。帯電防止剤組成物を樹脂粒子表面に被覆後、必要に応じて気流乾燥することにより、溶媒を除去することができる。
【0036】
本発明の帯電防止剤組成物は、発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に被覆することで、樹脂粒子表面の体積固有抵抗を低下させ、樹脂粒子が帯電し難くなる。特に、相対湿度20%程度またはそれ以下の乾燥した雰囲気中でも発泡性熱可塑性樹脂粒子の体積固有抵抗ρを1.0×1013Ωcm未満に保つことができる。その結果、発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に前記帯電防止剤組成物を被覆してなる本発明の発泡性熱可塑性樹脂粒子は、ライン内を送粒したりタンクに貯留する際に粒子同士が擦れ合っても帯電し難くなり、窒素ガス置換せずに空気雰囲気下で送粒・貯留の作業を行っても、静電気発火の可能性が低くなり、発泡性熱可塑性樹脂粒子製造工程における窒素ガス置換等の安全対策を軽減することができる。また、製品の保管、輸送、使用時においても従来より安全に取り扱うことができる。
【0037】
次に、図面を参照して本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法を説明する。
図1は、本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法の一実施形態として、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の製造工程を示す構成図である。本実施形態では、[含浸法]、[押出法(ストランドカット法及び水中ホットカット法)]の各製法による発泡性ポリスチレン樹脂粒子の製造工程に本発明の製造方法を適用した場合を例示しており、また本実施形態では、帯電防止剤として保湿剤と界面活性剤を必須成分として含み、液状をなしている帯電防止剤組成物をスプレーにより被覆する場合を例示している。
【0038】
[含浸法]
含浸法による発泡性ポリスチレン樹脂粒子の製造方法は、出発材料として予め懸濁重合法により作製された真球状ないし略球状のポリスチレン粒子を使用する。撹拌装置を備えたオートクレーブ1内に水系分散剤を入れ、その中にポリスチレン粒子を投入し、さらにペンタン等の発泡剤を導入し、加温加圧下で撹拌し、ポリスチレン粒子に発泡剤を含浸させる。所定時間経過後、冷却し、得られた発泡性ポリスチレン樹脂粒子(図示せず)を洗浄槽2に移し、水洗する。次に、洗浄した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を脱水機3に移し、脱水乾燥する。
【0039】
発泡性ポリスチレン樹脂粒子を乾燥後、又は半乾燥状態の時点で、脱水機3内に帯電防止剤スプレー装置4から帯電防止剤組成物を噴霧し、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に帯電防止剤組成物を被覆する。帯電防止剤組成物を被覆した発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、必要に応じて更に乾燥した後、送粒ライン18内を空気送粒して篩機5に送り、粒度により選別し、適当な粒径の発泡性ポリスチレン樹脂粒子が1次タンク6に貯留される。この送粒及びタンク貯留の際、帯電防止剤組成物を被覆していない発泡性ポリスチレン樹脂粒子では、樹脂粒子同士が擦れ合って帯電し、空気雰囲気では逸散した発泡剤に静電気発火する危険性があるため、送粒及びタンク貯留を窒素ガス雰囲気下で行う必要があった。一方、本実施形態においては、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に帯電防止剤組成物を被覆することで、送粒及びタンク貯留の際に樹脂粒子同士が擦れ合っても帯電し難くなり、空気雰囲気下でも静電気発火の危険性を格段に少なくすることができる。従って、本実施形態においては、空気雰囲気下で表面処理工程前の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を送粒及びタンク貯留することが可能となる。
【0040】
1次タンク6に貯留された発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、混合機7に適量送粒し、表面処理剤を投入して混合し、樹脂粒子表面に表面処理剤を被覆する(表面処理工程)。
ここで使用する表面処理剤としては、ヒドロキシ脂肪酸アミドなどの粉体状の帯電防止剤、ステアリン酸亜鉛などの結合防止剤等が挙げられる。この表面処理剤の使用量は、発泡性ポリスチレン樹脂粒子100質量部に対して、粉体状の帯電防止剤が0.02〜2.0質量部の範囲、結合防止剤が0.05〜0.5質量部の範囲とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態では、表面処理剤を被覆する前の発泡性ポリスチレン樹脂粒子表面に、前述した保湿剤と活性剤とを必須成分として含む帯電防止剤組成物を被覆してあるので、粉体状の表面処理剤を発泡性ポリスチレン樹脂粒子に混ぜて混合することで、粉体状の表面処理剤が効率よく樹脂粒子表面に付着し、被覆されるので、剥離し難くなる。
【0042】
混合機7において発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に表面処理剤を被覆した後、この発泡性ポリスチレン樹脂粒子を2次タンク8に送粒、貯留する。次いで、適当な容器に発泡性ポリスチレン樹脂粒子を充填、包装して製品とする。この製品は、さらに保冷倉庫9に保管し、熟成・保管する。
【0043】
[押出法]
1.ストランドカット法
ストランドカット法では、円柱状(ペレット)の発泡性ポリスチレン樹脂粒子が作製される。出発材料とするポリスチレンは、押出機10に供給可能であればよく、その形状や大きさは限定されない。この方法では、先端に多数の小孔を有するダイ11が装着された押出機10にポリスチレンを投入し、押出機10内で加熱溶融し、これに発泡剤を添加して溶融混練して発泡剤含有樹脂とし、ダイ11から該樹脂を細紐(ストランド)状に押し出し、これを直ちに冷却水槽12の冷却水中に導入し、硬化させてストランド16とする。
【0044】
冷却水槽12で十分冷却されたストランド16は、冷却水槽12から引き上げられ、ペレタイザー13に送られて所定長さのペレット状に切断される。得られたペレット15(発泡性ポリスチレン樹脂粒子)は、噴霧室14に導入され、該室内で表面に帯電防止剤組成物をスプレー被覆する。
【0045】
図2は、本発明の製造方法における帯電防止剤の被覆に好適な実施形態を示し、図2(a)は噴霧室14の配置状態を示す構成図、(b)は噴霧室に接続した帯電防止剤スプレー装置4を示す構成図である。本実施形態では、図2(a)に示すように、ペレタイザー13から送られたペレット15が噴霧室14の上方から供給され、噴霧室14を落下する間に、側方に取り付けられた2流体ノズル22から噴射された帯電防止剤ミスト19に接触し、ペレット15表面に帯電防止剤組成物が被覆されるようになっている。表面に帯電防止剤組成物が被覆されたペレット15は、噴霧室14の底から送粒ライン18に入り、送粒ブロアー17により該ライン内を空気送粒されるようになっている。
【0046】
本実施形態において、帯電防止剤スプレー装置4は、図2(b)に示すように、帯電防止剤組成物20を収容する容器と、該容器から帯電防止剤組成物20を定量圧送する定量ポンプ21と、前記噴霧室14の側方からノズル先端を突出して設けられた2流体ノズル22とを備えて構成されている。この2流体ノズル22は、定量ポンプ21に接続された帯電防止剤導入管22bと、エアー導入管22aとを有している。
【0047】
表面に帯電防止剤組成物が被覆されたペレット15は、送粒ライン18内を通って1次タンク6に空気送粒される。その後、前述した[含浸法]の場合と同じく、混合機7内で表面処理剤を被覆する表面処理工程を経て製品化される。
【0048】
2.水中ホットカット法
水中ホットカット法では、略球形の発泡性ポリスチレン樹脂粒子が作製される。出発材料とするポリスチレンは、前記ストランドカット法の場合と同じく、押出機1に供給可能であればよく、その形状や大きさは限定されない。この方法では、先端に多数の小孔を有するダイ24が装着された押出機23にポリスチレンを投入し、押出機23内で加熱溶融し、これに発泡剤を添加して溶融混練して発泡剤含有樹脂とし、ダイ24から該樹脂をカッティング室25内に押し出す。カッティング室25は、冷却水循環ライン26が接続され、冷却水が循環供給されており、また室内には高速回転刃が設けられている。
【0049】
ダイ24から押し出された樹脂は、カッティング室25内で冷却水に接触して冷却されるとともに、高速回転刃によりカットされ、略球状に分散した状態で循環水の流動とともにカッティング室25から流出し、冷却水循環ライン26内を搬送される。この冷却水循環ライン26には、水循環ポンプ27と脱水機28が接続されている。冷却水循環ライン26内を冷却されながら脱水機28に搬送された発泡性ポリスチレン樹脂粒子29は、冷却水と分離され、脱水されて取り出される。一方、冷却水は冷却水循環ライン26に戻る。
【0050】
脱水機28から取り出された発泡性ポリスチレン樹脂粒子29は、噴霧室内に投入され、前述したストランドカット法の場合と同じく、図2に示す帯電防止剤スプレー装置4によって発泡性ポリスチレン樹脂粒子29表面に帯電防止剤組成物をスプレー被覆する。
【0051】
表面に帯電防止剤組成物が被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子29は、送粒ライン18内を通って1次タンク6に空気送粒される。その後、前述した[含浸法]の場合と同じく、混合機7内で表面処理剤を被覆する表面処理工程を経て製品化される。
【0052】
本実施形態においては、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に帯電防止剤組成物を被覆することで、送粒及びタンク貯留の際に樹脂粒子同士が擦れ合っても帯電し難くなり、空気雰囲気下でも静電気発火の危険性を格段に少なくすることができる。従って、本実施形態においては、空気雰囲気下で表面処理工程前の発泡性ポリスチレン樹脂粒子を送粒及びタンク貯留することが可能となるので、送粒及びタンク貯留の際に窒素ガス置換を実施する従来技術と比べ、多量の窒素ガス及び窒素ガス置換のための種々の機器を不要にでき、また製造工程が簡略化できるので、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の製造コストを低減することができる。
また、液状の帯電防止剤組成物を樹脂粒子にスプレー被覆する簡単な操作で帯電防止することができるので、発泡性ポリスチレン樹脂粒子内に帯電防止剤を混合する従来技術と比べ、安価な発泡性ポリスチレン樹脂粒子を提供することができる。
【0053】
なお、前述した本発明の各実施形態及び後述する実施例の記載は、例示に過ぎず、本発明はこれらの例示にのみ限定されるものではなく、種々の変更、修正が可能である。
例えば、前述した各実施形態では、予め保湿剤と活性剤を混合した帯電防止剤組成物を発泡性ポリスチレン樹脂粒子などの発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に被覆したが、保湿剤と活性剤を別々に樹脂粒子表面に被覆することも可能である。
また、帯電防止剤を被覆した発泡性ポリスチレン樹脂粒子を送粒、貯留する際に、空気雰囲気下ではなく、空気に窒素ガスや炭酸ガスを混ぜて、或いは空気中の酸素を吸着した後の酸素低減化ガスを用いることもできる。
【実施例】
【0054】
[実施例1]
スチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名トーヨースチロールHRM−10N)100質量部に粉末タルク(キハラ化成社製、商品名SP−GB)0.3質量部を予めタンブラーにて混合した後、口径90mmの一軸押出機(バレル径(D)と有効スクリュー長さ(L)との比L/Dが35)を用いて加熱溶融混練し、同時に発泡剤としてペンタン(i−ペンタン/n−ペンタン=2/8混合物)6質量部を押出機内に圧入混合し、押出機スクリュー先端部での樹脂温度を170℃、ダイへの樹脂導入部の圧力を14MPaに保持して、直径0.6mm、ランド長さ3.5mmの小孔150個を有するダイより、該ダイに連結され40℃の冷却水が循環するカッティング室内に発泡剤含有溶融樹脂を押し出すと同時に、円周方向に10枚の刃を有する高速回転カッターにて押出物を切断し、冷却水循環ラインの途中に設けた脱水機により脱水することで、直径約1.0mmの球状発泡性ポリスチレン樹脂粒子を連続的に生産した。この時の吐出量は1800g/分である。脱水した樹脂粒子を、図2に示す帯電防止剤噴霧用の2流体ノズルを設けた噴霧室に連続的に導入して、ポリエチレングリコール(日本油脂社製、商品名PEG#300)とアニオン活性剤(ソジウムヤシアルキルエーテルサルフェート(C8〜18):日本油脂社製、商品名パーソフトEK、有効固形分30質量%水溶液)とを予め質量比で50:50に混合した混合液を定量ポンプと2流体ノズルから、毎分1.1gを、噴霧室内で発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に吹き付けて、内径75mm×20mのステンレス鋼製の送粒管内を空気送粒により1次タンクまで送粒して、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0055】
[実施例2]
スチレン樹脂(東洋スチレン社製、商品名トーヨースチロール HRM−10N)90質量部、カーボンブラックマスターバッチ(住化カラー社製、商品名ブラックSPAB−851HC)10質量部、及びタルク(キハラ化成社製、商品名SP−GB)0.4質量部を予めタンブラーにて混合した後、口径90mmの一軸押出機(バレル径(D)と有効スクリュー長さ(L)との比L/Dが35)を用いて加熱溶融混練し、同時に発泡剤としてペンタン(i−ペンタン/n−ペンタン=2/8混合物)8質量部を押出機内に圧入混合し、押出機スクリュー先端部での樹脂温度を127℃、金型への樹脂導入部の圧力を15MPaに保持して、口径0.7mmランド長さ5mmの吐出口120個を備えた丸形ダイよりストランド状に押出すとともに、ストランドを水槽内に導いて直ちに急冷し、ロータリー式ペレタイザーにて切断ペレット化して円柱状の黒色に着色した発泡性ポリスチレン樹脂粒子(粒子長L=3〜4mm、粒子径D=0.5〜0.7mm)を1000g/分の吐出量で連続的に生産しながら、ペレタイザー出口から図2に示す帯電防止剤噴霧用の2流体ノズルを設けた噴霧室に連続的に導入して、ポリエチレングリコール(日本油脂社製、商品名PEG#300)とアニオン活性剤(ソジウムヤシアルキルエーテルサルフェート(C8〜18:日本油脂社製、商品名パーソフトEK(有効固形分30質量%水溶液))とを予め質量比で50:50に混合した混合液を、定量ポンプと2流体ノズルを用いて、毎分0.6gを、ペレタイザーから供給される発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に霧状に吹き付けて、内径75mm×20mのステンレス鋼製の送粒管内を空気送粒により1次タンクまで送粒して、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0056】
[実施例3]
アニオン活性剤をカチオン活性剤(第4級アンモニウム塩:第一工業製薬社製、商品名カチオーゲンES−L(有効固形分50質量%)に蒸留水を加えて有効固形分を30質量%に調整した水溶液)に変えた以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0057】
[実施例4]
アニオン活性剤を両性活性剤(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:日本油脂社製、商品名アノンBL(有効固形分36質量%)に蒸留水を加えて有効固形分を30質量%に調整した水溶液)に変えた以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0058】
[実施例5]
ポリエチレングリコールをグリセリン(純正化学社製、試薬特級)に変えた以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0059】
[実施例6]
ポリエチレングリコールをポリエチレングリコールとグリセリンの混合液(質量比1:1)に変えた以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0060】
[実施例7]
ポリエチレングリコールとアニオン活性剤の混合比率を50:50から75:25に変更し、吹き付け量を毎分0.6gから毎分0.15gに変更した以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0061】
[実施例8]
ポリエチレングリコールとアニオン活性剤の混合比率を50:50から97.5:2.5に変更し、吹き付け量を毎分0.6gから毎分1.5gに変更した以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0062】
[実施例9]
ポリエチレングリコールとアニオン活性剤の混合比率を50:50から7:93に変更し、吹き付け量を毎分0.6gから毎分1.5gに変更した以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0063】
[実施例10]
内容積52Lの反応器に、蒸留水18kg、ピロリン酸マグネシウム58g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日本油脂社製、商品名NR−R−25)を純分で1.30g入れ、粒子径が0.5〜0.7mmで重量平均分子量が300000のポリスチレン種粒子(スチレンをピロリン酸マグネシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した水性媒体中で、通常の懸濁重合を行って得たもの)5.0kgを加えて撹拌し懸濁させた。次いで予め用意した蒸留水1500mLに、ピロリン酸マグネシウム5.0g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを純分で1.0g加えた分散液に、ベンゾイルパーオキサイド67.6g及びt−ブチルパーオキシベンゾエート16.9gをスチレン2160gに溶解して添加し、ホモミキサーで撹拌して懸濁液を作り、この懸濁液を75℃に保持した反応器に加えた。ポリスチレン種粒子に、スチレンと重合開始剤を吸収させる為に、1時間保持した後に、スチレンを連続的に5900g/hrの速度で2.5時間供給しながら、スチレンの供給終了時に105℃になるように反応器を昇温した。引き続き120℃まで昇温し30分保持した後、トルエン310g、スチレン110gを蒸留水2000mL、ピロリン酸マグネシウム6.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを純分で0.26g加えた分散液を、ホモミキサーで撹拌し懸濁液として反応器に添加し、100℃まで冷却してブタン2265gを圧入し、3時間保持した後、常温まで冷却して取り出し洗浄、脱水、乾燥した。この操作を2回繰り返して、粒子径0.8〜1.2mmの発泡性ポリスチレン樹脂粒子40kgを得た。この発泡性ポリスチレン樹脂粒子を毎分1000gの割合で噴霧室に導入した以外は、実施例2と同様にして、表面が帯電防止剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0064】
[比較例1]
帯電防止剤を添加しない以外は、実施例1と同様にして、発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0065】
[比較例2]
帯電防止剤を添加しない以外は、実施例2と同様にして、発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0066】
[比較例3]
実施例10で作製した発泡性ポリスチレン樹脂粒子について、無処理のまま、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0067】
[比較例4]
アニオン活性剤を蒸留水に変えた以外は、実施例2と同様にして、表面がポリエチレングリコールで被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0068】
[比較例5]
アニオン活性剤を蒸留水に変えた以外は、実施例5と同様にして、表面がグリセリンで被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0069】
[比較例6]
実施例2で用いたアニオン活性剤に蒸留水を加えて有効固形分を15質量%に調整した水溶液を毎分0.6gで霧状に吹き付けた以外は、実施例2と同様にして、表面がアニオン活性剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0070】
[比較例7]
実施例3で用いたカチオン活性剤に蒸留水を加えて有効固形分を15質量%に調整した水溶液を毎分0.6gで霧状に吹き付けた以外は、実施例1と同様にして、表面がカチオン活性剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0071】
[比較例8]
実施例4で用いた両性活性剤に蒸留水を加えて有効固形分を15質量%に調整した水溶液を毎分0.6g霧状に吹き付けた以外は、実施例1と同様にして、表面が両性活性剤で被覆された発泡性ポリスチレン樹脂粒子を得た。これについて、後述する方法で帯電防止性を評価した。
【0072】
1次タンクから採取した、実施例1〜10、及び比較例1〜8の発泡性ポリスチレン樹脂粒子について、以下の方法で、その体積固有抵抗値を測定して発泡性ポリスチレン樹脂粒子の帯電防止性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0073】
[体積固有抵抗測定方法]
図3は体積固有抵抗測定に用いた装置構成を示す図であり、(a)は装置の構成図、(b)はステンレス鋼板30の側面図である。図3中、符号30はステンレス鋼板、30aは端子、31はフッ素樹脂板、32は発泡性ポリスチレン樹脂粒子、33は極超絶縁計である。図3(a)に示す測定装置は、2枚のステンレス鋼板30を、フッ素樹脂板31を挟んで対向配置し、これらのステンレス鋼板30間に発泡性ポリスチレン樹脂粒子32を充填し、これらのステンレス鋼板30間の抵抗値をそれぞれの端子30aと接続した極超絶縁計33で測定するようになっている。図3中の各部A〜Cの寸法は、A=120mm、B=75mm、C=11mmとしている。ステンレス鋼板30の厚みは2mmである。
【0074】
発泡性ポリスチレン樹脂粒子約2kgをポリ袋に入れ、ポリ袋の口を開封した状態で、温度23℃、相対湿度55%及び20%に調節した恒温恒湿室内に24時間放置した後、図3に示す2枚のステンレス鋼板をフッ素樹脂板で絶縁した容器に樹脂粒子を充填し、極超絶縁計(東亜電波工業社製SM−10E)を用いてステンレス鋼板間の抵抗値Rを測定し、次式により樹脂粒子の体積固有抵抗ρを算出した。
体積固有抵抗ρ=81.8× R (Ωcm)
【0075】
各試料について3回繰り返して測定した平均値を体積固有抵抗値とした。温度23℃、相対湿度20%の雰囲気下で測定した体積固有抵抗値を基に、以下の基準で帯電防止性を評価した。
【0076】
<帯電防止性評価>
○:1.0×1013Ωcm未満。
×:1.0×1013Ωcm以上(静電気発火の恐れがある)。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1,2に記した結果から、本発明に係る実施例1〜10の発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、樹脂粒子表面に保湿剤として多価アルコールと活性剤とを含む帯電防止剤を被覆したことにより、相対湿度55%雰囲気下で10〜1010オーダーの低い体積固有抵抗値を示したのみならず、相対湿度20%のかなり乾燥した雰囲気下でも1.0×1013Ωcm未満の体積抵抗値を示した。発泡性ポリスチレン樹脂粒子の体積固有抵抗値が1.0×1013Ωcm以上であると、該樹脂粒子の送粒、タンク貯留時に樹脂粒子同士が擦れ合って帯電し易く、樹脂粒子から逸散した可燃性の発泡剤等が静電気発火する恐れがあるが、本発明に係る実施例1〜10の発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、そのような静電気発火の恐れが少なくなり、乾燥した空気雰囲気下で取り扱うことができる。
【0080】
一方、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に何も被覆していない比較例1〜3、及び樹脂粒子表面に保湿剤として多価アルコールのみを被覆した比較例4及び5のそれぞれの発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、相対湿度55%雰囲気下でも1.0×1013Ωcm以上の体積抵抗値を示し、乾燥した空気雰囲気下では送粒時等に静電気発火する恐れがあることから、送粒時等には雰囲気を窒素ガス置換する必要がある。
また、発泡性ポリスチレン樹脂粒子の表面に活性剤のみを被覆した比較例6〜8の発泡性ポリスチレン樹脂粒子は、相対湿度55%雰囲気下では10オーダーの低い体積固有抵抗値を示したが、相対湿度20%雰囲気下では体積固有抵抗値が1013オーダーに急増し、乾燥した空気雰囲気下では送粒時等に静電気発火する恐れがあることから、送粒時等には雰囲気を窒素ガス置換する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の製造方法における帯電防止剤の被覆に好適な実施形態を示す構成図である。
【図3】実施例で行った発泡性熱可塑性樹脂粒子の体積固有抵抗の測定方法を説明する構成図である。
【符号の説明】
【0082】
1…オートクレーブ、2…洗浄槽、3…脱水機、4…帯電防止剤スプレー装置、5…篩機、6…1次タンク、7…混合機、8…2次タンク、9…保冷倉庫、10,23…押出機、11,24…ダイ、12…冷却水槽、13…ペレタイザー、14…噴霧室、15…ペレット(発泡性熱可塑性樹脂粒子)、16…ストランド、17…送粒ブロアー、18…送粒ライン、19…帯電防止剤ミスト、20…帯電防止剤組成物、21…定量ポンプ、22…2流体ノズル、25…カッティング室、26…冷却水循環ライン、27…水循環ポンプ、28…脱水機、29,32…発泡性ポリスチレン樹脂粒子(発泡性熱可塑性樹脂粒子)、30…ステンレス鋼板、31…フッ素樹脂板、33…極超絶縁計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を表面に被覆してなることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子。
【請求項2】
前記保湿剤が、1種又は2種以上の多価アルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
【請求項3】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
【請求項4】
粉体状の表面処理剤が前記帯電防止剤を被覆した後の表面に被覆されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子。
【請求項5】
発泡性熱可塑性樹脂粒子に表面処理剤を被覆する表面処理工程を施して製品化する発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法において、保湿剤と界面活性剤を必須成分として含む帯電防止剤を表面処理工程前の発泡性熱可塑性樹脂粒子に被覆する工程を含むことを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記保湿剤が、1種又は2種以上の多価アルコールを含むことを特徴とする請求項5に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
保湿剤と界面活性剤を必須成分として含み、液状をなしていることを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物。
【請求項9】
前記保湿剤が、1種又は2種以上の多価アルコールを含むことを特徴とする請求項8に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物。
【請求項11】
発泡性熱可塑性樹脂粒子の表面に、請求項8〜10のいずれかに記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物を被覆することを特徴とする発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法。
【請求項12】
発泡性熱可塑性樹脂粒子用帯電防止剤組成物を被覆した発泡性熱可塑性樹脂粒子について、温度23℃、相対湿度20%の雰囲気下で測定した体積固有抵抗ρが1.0×1013Ωcm未満であることを特徴とする請求項11に記載の発泡性熱可塑性樹脂粒子の帯電防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−206753(P2006−206753A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21167(P2005−21167)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】