説明

発泡性積層塗膜の補修方法

【課題】本発明は、新旧の発泡性塗料層が一体となり、耐熱性能が優れる補修を行った発泡性積層塗膜が得られる下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法を提供すること。
【手段】下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の欠陥部分及びその周囲を除去した部分及びその周囲に新たな下塗り塗料を塗布し、旧発泡性塗料層に塗布された新たな下塗り塗料を除去し、旧発泡性塗料層を露出した後に、この部分の旧発泡性塗料層と接するように、て新たな発泡性塗料を塗布することで、新旧の発泡性塗料層を一体化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性積層塗膜の補修方法に関する。詳しくは、下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、船舶、機械、家電製品、家具、橋梁やトンネル等の土木構造物、ビルや戸建住宅等の建築物、或いはこれらに用いられる部品や部材等に、様々な塗料が用いられ、これらの表面に塗布されている。形成される塗膜に対し、同時に複数の性能を求められることが多い。1種類の塗料ではこの要求に応じきれない場合が多く、この場合、2種以上の塗料を積層し塗膜を形成する。この積層塗膜に膨れ、剥がれ、部分欠損等の欠陥が生じると、コストや作業手間等のために、欠陥部分とその周囲の積層塗膜のみ研磨し、研磨した部分に求められている複数の性能が備わるように、再度複数の塗料を積層する、積層塗膜の補修方法が提案されている(例えば特許文献1〜特許文献3)。
【0003】
ところで、下塗り塗料とその表面に塗布された発泡性塗料とを含む積層塗膜(以下、「発泡性積層塗膜」という。)がある(例えば特許文献4又は特許文献5)。この積層塗膜を形成する発泡性塗料は、熱により内在する発泡剤の作用で発泡することにより体積膨張し断熱層を形成する。発泡性積層塗膜に欠陥が生じた場合、単に上記のような積層塗膜の補修方法により補修をすると、下塗り塗料が研磨により除去された部分のみに新たな下塗り塗料を塗布することはできないことから、古い発泡性塗料と新たに塗布された発泡性塗料との間に新たに塗布した下塗り塗料が挟まれてしまう。そうすると、発泡により体積膨張するときに、新旧の発泡性塗料層が別々に体積膨張するために、新たに塗布した部分の発泡性塗料と古い発泡性塗料の境界にひび割れが生じたり、新しい発泡性塗料層が剥落してしまい、断熱層に欠損が生じてしまい、下地が熱により劣化する虞が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−46718号公報
【特許文献2】特開2008−23464号公報
【特許文献3】特開平11−47679号公報
【特許文献4】特開2001−64548号公報
【特許文献5】特開2000−212472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題の解決、即ち、本発明は、新旧の発泡性塗料層が一体となり、耐熱性能が優れる補修を行った発泡性積層塗膜が得られる下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題解決のため鋭意検討した結果、下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の欠陥部分及びその周囲を除去した部分及びその周囲に新たな下塗り塗料を塗布し、旧発泡性塗料層に塗布された新たな下塗り塗料を除去し、旧発泡性塗料層を露出した後に、この部分の旧発泡性塗料層と接するように、新たな発泡性塗料を塗布することで、新旧の発泡性塗料層を一体化させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、即ち、本発明は、以下の(1)〜(6)で表す下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法である。
(1)(a)下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の欠陥部分及びその周囲を除去する工程と、(b)この除去した部分及びその周囲に新たな下塗り塗料を塗布する工程と、(c)この新たな下塗り塗料が固化することにより形成された新下塗り塗料層の旧発泡性塗料層との境界付近を除去し、旧発泡性塗料層の新下塗り塗料層との境界付近を露出させる工程と、(d)前工程で削り出した上記境界付近の旧発泡性塗料層と接し且つ上記新下塗り塗料層を被覆するように、新たな発泡性塗料を塗布した後に固化することで新発泡性塗料層を形成する工程を有することを特徴とする下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
(2)上記(d)工程において、新たな発泡性塗料を、削り出した旧発泡性塗料層と接するように塗布するときに、上記境界付近の旧発泡性塗料層の表面に重なり接することを特徴とする上記(1)の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
(3)上記の新たな下塗り塗料の色が、旧下塗り塗料層の色と異なることを特徴とする上記(1)又は(2)の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
(4)更に、上記の新たな下塗り塗料の色が、旧発泡性塗料層の色と異なることを特徴とする上記(1)〜(3)の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
(5)旧発泡性塗料層の色と同じ色の発泡性塗料を、新しい発泡性塗料として用いることを特徴とする上記(1)〜(4)何れかの下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
(6)上記(d)工程の後に、新発泡性塗料層の表面に、上塗り塗料を塗布した後に固化することで上塗り塗料層を形成する工程を有すること特徴とする上記(1)〜(6)何れかの下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新旧の発泡性塗料層が一体となり、耐熱性能が優れる補修を行った発泡性積層塗膜が得られる下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法が得られる。また、本発明によれば、新旧の発泡性塗料層が一体となるので、新たに塗布した部分の発泡性塗料層のみ剥落してしまうことが起こり難い。従って、本発明によれば、断熱性の優れる下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法の一例を模式的な断面図で工程の概略を示した図である。
【図2】耐火試験前の実施例2の試験体(上塗り塗料層を有する試験体)の模式的な断面図である。
【図3】図1に示したICタグとともに袋詰めにした無定形の製品(プレミックスモルタル)を複数パレットに積層した状態の模式的な右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法は、(a)下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の欠陥部分及びその周囲を除去する工程と、(b)この除去した部分及びその周囲に新たな下塗り塗料を塗布する工程と、(c)この新たな下塗り塗料が固化することにより形成された新下塗り塗料層の旧発泡性塗料層との境界付近を除去し、旧発泡性塗料層の新下塗り塗料層との境界付近を露出させる工程と、(d)前工程で削り出した上記境界付近の旧発泡性塗料層と接し且つ上記新下塗り塗料層を被覆するように、新たな発泡性塗料を塗布した後に固化することで新発泡性塗料層を形成する工程を有することを特徴とする。ここで、下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜とは、下地表面に下塗り塗料を塗布し形成した下塗り塗料層の表面に、発泡性塗料を塗布したことにより形成した下塗り塗料層を備える積層塗膜である。この発泡性積層塗膜は、更に、発泡性積層塗膜の表面に上塗り塗料を塗布し形成した上塗り塗料層を備えていてもよい。また、これらの下塗り塗料層、発泡性塗料層及び上塗り塗料層は、1種類の塗料を用いて形成しても良く、また2種以上の塗料を用いて形成しても良い。また、これらの下塗り塗料層、発泡性塗料層及び上塗り塗料層は、それぞれの塗料を1回塗布することにより形成してもよく、2回以上重ねて塗布することで形成しても良く、或いは2種以上の塗料を1回又は複数回重ねて塗布することで形成しても良い。
【0010】
本発明における新旧の発泡性塗料層を形成する発泡性塗料としては、塗布した塗料が硬化又は乾燥による固化後に、内在する発泡剤により発泡し、そのことにより体積膨張する塗料であれば、特に限定されずに用いることができ、水性のものでも有機溶剤を用いたものでも、ポリウレタン樹脂塗料やUV硬化型塗料等のように反応により硬化するものでもよい。加熱により発泡する発泡性耐火塗料が、発泡性塗料として好適に用いることができる。新旧の発泡性塗料層を形成する発泡性塗料は、材質が同じものであるとより一体化し易いことから好ましく、更に色が同じものであると、上塗り塗料を表面に被覆しない場合及び透明な上塗り塗料を表面に被覆する場合に、補修箇所が分かり難いことから、美観上好ましい。
【0011】
本発明における新旧の下塗り塗料層を形成する下塗り塗料としては、目的、塗布する下地の材質、表面に塗布する発泡性塗料の材質等により、種類及び材質を選択できる。用いる下塗り塗料としては、例えば、錆止め塗料、防虫塗料、防腐塗料、下地調整用塗料等が挙げられる。水性のものでも有機溶剤を用いたものでも、ポリウレタン樹脂塗料やUV硬化型塗料等のように反応により硬化するものでもよい。新たな下塗り塗料の色が旧下塗り塗料層の色と異なると、(c)工程において、誤って旧下塗り塗料層を削ってしまうことを防ぐことができることから好ましい。また、新たな下塗り塗料の色が旧発泡性塗料層の色と異なると、(c)工程において除去予定の旧発泡性塗料層に積層している新下塗り塗料層が除去し終えたことが目視で確認し易いことから好ましい。
【0012】
本発明の(d)工程において、新たな発泡性塗料を、削り出した旧発泡性塗料層と接するように塗布するときに、上記境界付近の旧発泡性塗料層の表面に重なり接するようにすると、新旧の発泡性塗料層がより一体化し、発泡・膨張時に剥落し難くなることから好ましい。
【0013】
本発明の(a)工程における発泡性積層塗膜の欠陥部分及びその周囲を除去する方法、及び(c)工程の新下塗り塗料層の旧発泡性塗料層との境界付近を除去する方法は、削り取ることが好ましい。この削り取る方法としては、サンドペーパー、ヤスリ、ワイヤブラシ、研磨機、皮スキ、カッター、ウォータージェット、ショットブラスト等から選ばれる1種又は2種以上を用いる方法が好適な例として挙げられる。削り取る以外の方法としては、溶剤を浸み込ませた布を用いて拭き取る方法、加熱して軟らかくした後に布で拭き取る方法等があるが、下地を溶剤や熱で傷める虞が無いことから、削り取る方法の方が好ましい。
【0014】
上記(d)工程の後に、新発泡性塗料層の表面に、上塗り塗料を塗布した後に固化することで上塗り塗料層を形成する工程を有すると、形成された補修後の発泡性積層塗膜が、下塗り塗料層の性能及び発泡性塗料層の性能並びに上塗り塗料層の性能を併せ持つことができることから好ましい。ここで用いることのできる上塗り塗料としては、例えば、撥水性塗料、耐候性塗料、遮熱塗料、防汚性塗料、防水塗料、クリア塗料、有色塗料等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
[実施例1]
以下に実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法の一例を模式的な断面図で工程の概略を示した図である。
下地として鋼板(寸法:300×300×3.2mm)を用いて、一面(300×300mm)に下塗り塗料として赤褐色の水性防錆塗料を塗布し乾燥させた。このとき、下塗り塗料を塗布する面(下地表面)の中央に気泡を模して発泡スチロール粒(粒径約5mmの粒を半球状に切断したもの)を付けておいた。下塗り塗料が乾燥した後に、上塗り塗料として白色の水性発泡耐火塗料を塗布した。これを乾燥させて、発泡スチロール製の模擬気泡11のために膨れが発生した欠陥部分1がある、下塗り塗料層(厚み:0.05mm)と発泡性塗料層(厚み:2.00mm)からなる発泡性積層塗膜4を下地表面9に備わる試験体12を作製した。図1の(1)は、発泡スチロール製の模擬気泡11のために膨れが発生した欠陥部分1がある、下地表面9に形成した下塗り塗料層と発泡性塗料層からなる発泡性積層塗膜4の模式的な断面図である。
【0016】
図1の(2)は、欠陥部分1及びその周囲をディスクグラインダ及びサンドペーパーで削り取り、その部分の下地表面を露出させた状態の試験体の模式的な断面図である。
【0017】
図1の(3)は、この旧発泡性積層塗膜の除去した部分5及びその周囲に新たな下塗り塗料6を塗布した状態の試験体の模式的な断面図である。新たな下塗り塗料6を塗布するときに、固化後(乾燥後)の新たな下塗り塗料6の厚みが旧下塗り塗料層2の厚みとなるように、厚みを測定しながら新たな下塗り塗料6を塗布することが好ましい。露出した下地表面9及び旧下塗り塗料層2、並びに旧発泡性塗料層3の新たに露出した部分は、図示していないが、細かな凹凸が形成されているため、新たに塗布された下塗り塗料6との接着が向上している。また、塗布した新たな下塗り塗料6は、灰色の水性塗料からなる。
【0018】
図1の(4)は、新下塗り塗料層6の乾燥後に、新下塗り塗料層の旧発泡性塗料層との境界付近8、及びその下にある旧発泡性塗料層3の一部分を、ディスクグラインダ及びサンドペーパーで削り取ることにより、旧発泡性塗料層の新下塗り塗料層との境界付近11を露出させた状態の試験体の模式的な断面図である。
【0019】
図1の(5)は、新下塗り塗料層6及び旧発泡性塗料層の新下塗り塗料層との境界付近11の表面上に、新たな発泡性塗料7を積層し、乾燥させた状態の試験体の模式的な断面図である。新たな発泡性塗料7は、旧発泡性塗料層3と同じ白色の水性塗料からなる。新たな発泡性塗料7は、乾燥後の厚みが旧発泡性塗料層3の厚みと同じになるように、厚みを測定しながら塗布することが好ましい。サンドペーパー等で削っていない旧発泡性塗料層3の上に塗布された新たな発泡性塗料7を、サンドペーパー等で削り、旧発泡性塗料層3の表面と平滑になるようにすることが好ましいことから行った。
【0020】
下地の鋼板の裏面(下地表面9の裏側となる面)の中央に熱電対16を貼り付けた。補修した発泡性積層塗膜4の中央に200×200mmの開口15ができるように、補修した発泡性積層塗膜4の表面の一部を耐火性のブランケット13で覆った。この一部を耐火性のブランケットで覆った試験体表面(発泡性積層塗膜4の表面)の側から火炎を当て、60分間耐火試験を行った。このときの加熱温度の最高温度は945℃として、加熱曲線はISO834に従った。鋼板の裏面中央における最高温度と、試験後の発泡性積層塗膜4の状態を、表1に示した。
【0021】
【表1】

【0022】
[実施例2]
鋼板(寸法:300×300×3.2mm)の下地表面に、模擬気泡11のために膨れが発生した欠陥部分1を有する下塗り塗料層と発泡性塗料層からなる発泡性積層塗膜4を備える試験体22を、実施例1と同様に補修した。補修した下塗り塗料層と発泡性塗料層からなる発泡性積層塗膜4の表面に、淡い黄色透明な上塗り塗料14を塗布し乾燥させた。用いた上塗り塗料14は、水性塗料であった。また、乾燥後の上塗り塗料層14の厚みは、0.05mmであった。補修した発泡性積層塗膜4を備える試験体22を、実施例1と同様に、耐火試験を行った。鋼板の裏面中央における最高温度と、試験後の発泡性積層塗膜4の状態を、表1に実施例1の結果とともに示した。耐火試験前の試験体の模式的な断面図を図2に示した。
【0023】
[比較例1]
図3は、下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法の比較例に当る一例を模式的な断面図で工程の概略を示した図である。鋼板(寸法:300×300×3.2mm)の下地表面に、模擬気泡11のために膨れが発生した欠陥部分1を有する下塗り塗料層と発泡性塗料層からなる発泡性積層塗膜4を備える試験体32を、新たな下塗り塗料の塗布及び乾燥までは、実施例1と同様に補修した。従って、図3の(1)〜(3)までは、図1の(1)〜(3)と全く同じである。
【0024】
図3の(4)は、新下塗り塗料層6の乾燥後に、その表面に、新たな発泡性塗料7を塗布し、乾燥させた状態の試験体の模式的な断面図である。
【0025】
図3の(5)は、旧発泡性塗料層3の表面、新発泡性塗料層7の表面及び新下塗り塗料層6の露出部分が、略同一表面となるように、新発泡性塗料層7の表面及び新下塗り塗料層6の露出部分を、ディスクグラインダ及びサンドペーパーによる削り取った状態の試験体の模式的な断面図である。新たな発泡性塗料7は、旧発泡性塗料層3と同じ白色の水性発泡性耐火塗料からなる。新たな発泡性塗料7は、旧発泡性塗料層3と直接接することなく、その間に新下塗り塗料層6が挟まれていた。この試験体32を実施例1と同様に、耐火試験を行った。鋼板の裏面中央における最高温度と、試験後の発泡性積層塗膜4の状態を、表1に実施例1の結果とともに示した。
【0026】
本発明の実施例の補修方法により発泡性積層塗膜の補修を行った試験体は、何れも加熱による発泡時に、新発泡性塗料層7が脱落することなく耐火試験終了後まで、旧発泡性塗料層3と新発泡性塗料層7が一体となった新発泡性塗料層となっていた。このため、発泡した発泡性塗料層により火炎による熱の伝熱を抑制し、試験体を構成する鋼板の裏面中央における最高温度は、低く抑えられた。しかし、比較例に当る補修方法により発泡性積層塗膜の補修を行った試験体は、加熱による発泡時に新発泡性塗料層7が脱落し、このため、試験体を構成する鋼板の裏面中央における最高温度は、743℃と高温になった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法は、塗膜形成時の欠陥或いは経年変化による欠陥を有する発泡性積層塗膜の、該欠陥を修復できる。本発明の補修方法は、下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜を備え、該発泡性積層塗膜に膨れや剥がれ等の欠陥があるものであれば、自動車、船舶、機械、家電製品、家具、橋梁やトンネル等の土木構造物、ビルや戸建住宅等の建築物、或いはこれらに用いられる部品や部材等の様々なものに適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 下地の表面に形成したと発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の欠陥部分
2 旧下塗り塗料(層)
3 旧発泡性塗料(層)
4 発泡性積層塗膜
5 旧発泡性積層塗膜の除去した部分
6 新たな下塗り塗料(新下塗り塗料層)
7 新たな発泡性塗料(新発泡性塗料層)
8 新下塗り塗料層の旧発泡性塗料層との境界付近
9 下地の表面
10 下地
11 模擬気泡
12 試験体
13 耐火性のブランケット
14 上塗り塗料(層)
15 開口
16 熱電対
22 試験体
32 試験体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の欠陥部分及びその周囲を除去する工程と、
(b)この除去した部分及びその周囲に新たな下塗り塗料を塗布する工程と、
(c)この新たな下塗り塗料が固化することにより形成された新下塗り塗料層の旧発泡性塗料層との境界付近を除去し、旧発泡性塗料層の新下塗り塗料層との境界付近を露出させる工程と、
(d)前工程で削り出した上記境界付近の旧発泡性塗料層と接し且つ上記新下塗り塗料層を被覆するように、新たな発泡性塗料を塗布した後に固化することで新発泡性塗料層を形成する工程を有することを特徴とする下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
【請求項2】
上記(d)工程において、新たな発泡性塗料を、削り出した旧発泡性塗料層と接するように塗布するときに、上記境界付近の旧発泡性塗料層の表面に重なり接することを特徴とする請求項1に記載の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
【請求項3】
上記の新たな下塗り塗料の色が、旧下塗り塗料層の色と異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
【請求項4】
更に、上記の新たな下塗り塗料の色が、旧発泡性塗料層の色と異なることを特徴とする請求項1〜請求項3何れかの下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
【請求項5】
旧発泡性塗料層の色と同じ色の発泡性塗料を、新しい発泡性塗料として用いることを特徴とする請求項1〜請求項4何れかの下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。
【請求項6】
上記(d)工程の後に、新発泡性塗料層の表面に、上塗り塗料を塗布した後に固化することで上塗り塗料層を形成する工程を有すること特徴とする請求項1〜請求項5何れかの下塗り塗料層と発泡性塗料層を含む発泡性積層塗膜の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−136288(P2011−136288A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297910(P2009−297910)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】