説明

発泡成形体の製造方法及び発泡成形体

【課題】高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】嵩倍数の異なる少なくとも2種の予備発泡粒子の混合物を発泡成形することにより得られ、前記混合物が30〜80倍の第1の嵩倍数(X)を有する第1予備発泡粒子とX+5〜X+30倍の第2の嵩倍数を有する第2予備発泡粒子とを少なくとも含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の製造方法及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、魚介類や農産物等を収容し、保管あるいは輸送する際に用いられる、高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法及び前記の製造方法より得られる発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロール材等の合成樹脂からなる製品は、断熱性を備えている上に、更に、軽量で成型がしやすく、衝撃吸収性にも優れているという特性を有する。このため、従来から、これらは、野菜、果物、肉類、魚介類等を保管あるいは輸送する際に使用する容器として汎用されている。
【0003】
また、これらは原料となる発泡性樹脂粒子を何倍の大きさに膨らませるか、いわゆる製品の倍数の大きさを変化させることによって、その性質は大きく変わる。このため、これらの製品はその倍数に従って、その用途を変えて使用されている。
【0004】
更に、発泡性樹脂粒子を大きく膨らませれば膨らませるほど、合成樹脂材の量は少なくて済む。このため、製品を安価に製造することもできる。しかしながら、製品の倍数を大きくすればするほど、その強度は弱くなる。そこで、特許文献1には、容器の形状を変えることで引張強度を向上させた、合成樹脂からなる容器及びその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−274980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
魚介類や農産物等の保管、輸送用として使用する発泡成形体は、一般的に50〜60倍の倍数が好適とされ、この数値内で製品化されたものが市場に出回っているが、より一層の軽量化及び使用に耐えられる強度を備えた容器の開発が求められている。
【0007】
しかしながら、前記の観点からは、従来の発泡成形体や特許文献1に記載の発泡成形体は満足のいくものではなかった。特に、発泡成形体の倍数を上げつつ、特許文献1に記載のように形状を変更した場合、一定の強度の向上は認められるものの、軽量化と強度との両立という観点からは必ずしも満足のいくものではなかった。具体的には、強度の向上を目的として発泡成形体の形状を変更した場合、発泡成形体の形状によっては所定の方向での強度向上は図れることがあるものの、全ての方向において強度の向上を図ることができないことがあった。このような場合、発泡成形体、特に保管、輸送用の容器は、使用時の衝撃や振動に抗し切れず、破損等を起こすことがある。
【0008】
このため、発泡成形体全体において高い強度を示すような、高倍数で、強度に優れた発泡成形体の提供が課題とされている。また、そのような発泡成形体の簡便な製造方法の提供も課題とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、嵩倍数の異なる少なくとも2種の予備発泡粒子の混合物を発泡成形することにより得られ、前記混合物が30〜80倍の第1の嵩倍数(X)を有する第1予備発泡粒子とX+5〜X+30倍の第2の嵩倍数を有する第2予備発泡粒子とを少なくとも含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記製造方法により得ることができる発泡成形体も提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、使用原料として、低嵩倍数の予備発泡粒子と高嵩倍数の予備発泡粒子とを用いるため、それらの混合物から得られる発泡成形体は両者に由来する特性を最大限に引き出すことができる。
従って、本発明によれば、高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法を提供できる。
【0012】
また、本発明によれば、発泡成形体が樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む場合、ポリスチレン系樹脂は発泡性により優れるため、更により高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法を提供できる。
【0013】
本発明によれば、高倍数で、強度に優れた発泡成形体を提供することもできる。
【0014】
また、本発明によれば、箱形状であるような高倍数で、強度に優れた発泡成形体を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴は、嵩倍数の異なる少なくとも2種の予備発泡粒子の混合物を発泡成形することにより得られ、前記混合物が30〜80倍の第1の嵩倍数(X)を有する第1予備発泡粒子とX+5〜X+30倍の第2の嵩倍数を有する第2予備発泡粒子とを少なくとも含む発泡成形体の製造方法である。
【0016】
具体的には、発泡成形体の原料として、嵩倍数の異なる少なくとも2種以上の予備発泡粒子の混合物を使用する。より具体的には、発泡成形体の原料として、30〜80倍の第1の嵩倍数(X)を有する第1予備発泡粒子とX+5〜X+30倍の第2の嵩倍数を有する第2予備発泡粒子とを少なくとも含む予備発泡粒子の混合物を使用する。このため、耐衝撃性や耐熱性に優れた比較的嵩倍数の低い予備発泡粒子と、高倍数の発泡成形体を得ることができる比較的嵩倍数の高い予備発泡粒子とを少なくとも含む予備発泡粒子の混合物を使用することによって、これらの特性を維持しつつ、発泡成形体を製造できる。
【0017】
従って、本発明によれば、高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法を提供できる。
以下、本発明の樹脂粒子の製造方法及び本発明の製造方法によって得られる発泡成形体について詳説する。
【0018】
本発明の発泡成形体は、
(1)発泡剤を樹脂粒子に含浸させる含浸工程(発泡性樹脂粒子の製造工程)と、
(2)発泡性樹脂粒子を予備発泡させる予備発泡工程(予備発泡粒子の製造工程)と、
(3)予備発泡粒子を発泡成形する発泡成形工程(発泡成形体の製造工程)とを含む製造方法によって得ることができる。
【0019】
<発泡性樹脂粒子>
本発明において、発泡性樹脂粒子とは、樹脂粒子に所定の割合で発泡剤を含浸させた加熱発泡性能を有する樹脂粒子を意味する。
【0020】
(1)樹脂粒子
樹脂粒子を構成する樹脂成分は加熱によって発泡可能であれば特に限定されず、公知の樹脂成分を使用できる。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリ乳酸系樹脂、PET等)等を挙げることができる。これら樹脂成分は、単独で使用しても、混合して使用してもよい。なお、(メタ)アクリルはアクリル又はメタクリルを意味する。
【0021】
なお、複数の樹脂成分を使用する場合、使用原料についての、単量体間の質量比率、単量体と樹脂との間の質量比率及び樹脂間の質量比率と、それらから得られる樹脂粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体に含まれる樹脂成分の質量比率とは略同一である。
【0022】
樹脂成分はポリスチレン系樹脂が好ましい。ポリスチレン系樹脂は高倍の発泡成形体を得ることができるからである。
【0023】
本発明において、ポリスチレン系樹脂とは、スチレン単独重合体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。また、スチレン系単量体とは、スチレン単量体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との混合物を意味する。ここでスチレン単量体を主成分とするとは、スチレン単量体が全単量体100質量部に対して80質量部以上を占めることを意味する。
共重合体はランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0024】
また、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン及びポリエチレングリコールジメタクリレートのようなビニル系単量体を挙げることができる。本発明において、アルキルとは炭素数1〜30のアルキルを意味する。
本発明においては、より高倍の発泡成形体を得ることができるため、樹脂成分としてスチレン単独重合体が好ましい。
【0025】
また、ポリスチレン系樹脂は樹脂成分の発泡性確保の観点から、好ましくは20×104〜40×104、より好ましくは25×104〜35×104の平均分子量を有する。なお、本発明において、平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定される重量平均分子量を意味する。
【0026】
樹脂粒子の製造には、公知の重合法、即ち、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、シード重合法等を適宜使用できる。また、樹脂成分を樹脂粒子とする際、公知の製造方法及び製造設備をいずれも使用できる。例えば、まず、押出機を使用して樹脂成分を溶融混錬し、押出し、次いで水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。
【0027】
(2)発泡剤
発泡剤としては、公知の種々の発泡剤が使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン(ノルマルブタン)、イソブタン、n−ペンタン(ノルマルペンタン)及びイソペンタンのような炭化水素を挙げることができる。これらの内、より大きな発泡性能を発泡性樹脂粒子に導入できる、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタンのいずれかが好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0028】
発泡剤の含有率としては、発泡性樹脂粒子100質量部に対して、3〜9質量部であることが好ましい。発泡剤の含有率が3質量部未満であると、発泡性樹脂粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなることがある。一方、9質量部を超えると、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有率は、4〜8質量部の範囲である。
【0029】
また、更に均一に発泡性樹脂粒子を予備発泡させ得る発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤として、例えば、シクロヘキサン及びd−リモネンのような溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート及びやし油のような可塑剤(高沸点溶剤)を挙げることができる。
【0030】
(3)その他の原材料
本発明においては、所望の発泡成形体を得ることができる限り、樹脂粒子は他の添加剤等を含んでいてもよい。添加剤として、具体的には、表面処理剤、難燃剤、難燃助剤、被覆剤、連鎖移動剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤、表面処理剤等が挙げられる。なお、樹脂粒子がこれらの添加剤を含む場合、樹脂粒子から得られる予備発泡粒子、発泡成形体もこれらの添加剤を含む。
【0031】
(4)発泡性樹脂粒子の製造方法
発泡性樹脂粒子は発泡剤を樹脂粒子に含浸させることによって得ることができる。
発泡性樹脂粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも用いることができる。
例えば、V型等の回転混合機であって、密閉耐圧の容器に樹脂粒子を入れて流動させ、次いで発泡剤を導入することで樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法や、
攪拌機付密閉耐圧容器内で樹脂粒子を水性媒体に懸濁させ、次いで発泡剤を導入し、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法を挙げることができる。
【0032】
また、発泡剤の含浸は80〜120℃、1.0〜7.0時間行うことが好ましい。更に、前記含浸は所望の発泡成形体等を得ることができる限り、加圧条件下で行ってもよい。
【0033】
<予備発泡粒子>
本発明において、予備発泡粒子とは、発泡性樹脂粒子を所定の嵩倍数まで加熱発泡させた樹脂粒子を意味する。
【0034】
予備発泡粒子は、所望の嵩倍数を有する予備発泡粒子を得ることができる限り、公知の予備発泡方法を用いて製造できる。予備発泡方法の一例を挙げれば、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性樹脂粒子を加熱し、所定の嵩倍数に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
【0035】
本発明においては、より容易に予備発泡を行うことができるため、95〜125℃の水蒸気を用いて発泡性樹脂粒子を予備発泡させることが好ましい。また、予備発泡粒子から水分を除去するために、好ましくは室温で、12時間以上放置してもよい。
【0036】
本発明の発泡成形体の製造方法では、嵩倍数の異なる少なくとも2種以上の予備発泡粒子の混合物を使用する。本発明においては、このような混合物を使用することによって、高倍数で、強度に優れた発泡成形体を簡便に製造できる。
【0037】
具体的には、前記混合物は、30〜80倍、好ましくは40〜70倍、より好ましくは50〜60倍の第1の嵩倍数(X)を有する第1予備発泡粒子を含む。
【0038】
また、前記混合物は、X+5〜X+30倍、好ましくはX+8〜X+20倍、より好ましくはX+8〜X+15倍の第2の嵩倍数を有する第2予備発泡粒子も含む。
【0039】
更に、前記混合物は、より高倍数で、強度に優れた発泡成形体を容易に得ることができるため、第1予備発泡粒子100質量部に対して、好ましくは100〜300質量部、より好ましくは150〜250質量部の割合で第2予備発泡粒子を含む。
【0040】
他方、前記混合物は、その全体において、好ましくは40〜70倍、より好ましくは45〜65倍の嵩倍数を有する。混合物全体の嵩倍数が40倍より低い場合、軽量化を図ることができないことがある。また、混合物全体の嵩倍数が70倍より高い場合、高い強度を得ることができないことがある。
【0041】
また、予備発泡粒子の平均粒子径は5.0mm以下が好ましく、4.5mm以下がより好ましい。平均粒子径が5.0mmより大きいと、発泡成形機への予備発泡粒子の充填性が低下することがあり、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。なお、本発明においては、予備発泡粒子は、それらの流動性確保の観点から、球状〜略球状(卵状)であることが好ましい。
【0042】
予備発泡粒子の混合は、所望の物性に影響を与えない限り、公知の混合方法、混合機を使用できる。本発明においては、高い嵩倍数の予備発泡粒子を均一に混合できるため、送風機を用いて気流中で混合することが好ましい。
【0043】
<発泡成形体>
本発明の発泡成形体は、上記混合物中の予備発泡粒子を熱融着させ、成形することにより得ることができる。
本発明の発泡成形体は公知の発泡成形方法を用いて製造できる。発泡成形方法の一例を挙げると、公知の発泡成形機の金型内に予備発泡粒子を充填し、再度加熱し、次いで予備発泡粒子同士を熱融着させることにより発泡成形体を得ることができる。加熱用の熱媒体として水蒸気を好適に使用することができる。
【0044】
本発明の製造方法によって得られる発泡成形体は、好ましくは50〜70倍、より好ましくは55〜65倍の倍数を有することができる。このことは本発明の発泡成形体は高倍数を有していることを示している。
【0045】
本発明の発泡成形体は箱形状であることが好ましい。この場合、好ましくは140〜300N、より好ましくは140〜200Nの引張強度を有することができる。
【0046】
また、本発明の発泡成形体は好ましくは0〜20%、より好ましくは0〜10%の割れ率を有することができる。このことは本発明の発泡成形体は、箱形状に成形を行った場合であっても、高い強度を有していることを示している。即ち、本発明の発泡成形体はその全体において高い強度を有していることを示している。さらに、発泡成形体の肉厚は15〜30mmの範囲で実施することが好ましく、17〜25mmの範囲がより好ましい。肉厚が15mm未満だと発泡成形機への予備発泡粒子の充填性が低下することがあり、得られる発泡成形体の強度が低下することがある。一方、肉厚が30mmを越えて実施しても容器の重量が重くなることがある。箱形状の寸法として一例をあげると、農産物用の場合は例えば320mm×540mm×高さ250mm、肉厚19mm等の寸法の容器が、水産物用の場合は例えば350×550×高さ150mm、肉厚25mm等の寸法の容器が用いられている。
【0047】
このため、本発明の製造方法によれば、上面に開口部が設けられた合成樹脂を含む発泡成形体製の容器、特に魚介類や農産物等を収容し、保管あるいは輸送する際等に用いられる上面に開口部が設けられた容器であっても、所望の物性を損なうことなく発泡成形体を製造できる。また、容器の形状を変えず、軽量化(例えば1〜20質量%)を図ったものでありながら、使用に耐え得る引張強度を備えた発泡成形体を製造することもできる。
【0048】
従って、本発明によれば、高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法を提供できる。また、本発明の発泡成形体は、包装用緩衝材、建築用部材、自動車部材等として幅広く使用することができ、特に発泡体製容器として使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法及び製造条件を以下で説明する。
【0050】
<樹脂成分の重量平均分子量(Mw)>
測定に使用したGPC装置は、東ソー社製HLC−8121GPC/HTであり、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いる。測定試料は、1.0mg/mlの濃度に調整し、GPC装置への注入量を0.3mlとする。各分子量の検量線は、分子量既知のポリエチレン試料を用いて校正する。重量平均分子量(Mw)は、直鎖状ポリエチレン換算値として求める。
【0051】
<樹脂粒子、発泡性樹脂粒子及び予備発泡粒子の平均粒子径>
試料の平均粒子径は、JIS標準ふるい目開き5.60mm、4.75mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mmの篩いで分級して累積重量分布曲線を求めることにより算出する。本発明において、平均粒子径とは、累積重量分布曲線における重量50%時の粒子径を意味する。
【0052】
<発泡性樹脂粒子の発泡剤含有量>
発泡性樹脂粒子を5〜20mg精秤し、測定試料とする。この測定試料を180〜200℃に保持された熱分解炉(島津製作所社製、製品名「PYR−1A」)にセットし、測定試料を密閉後、120秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させる。この放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製、製品名「GC−14B」、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを得る。予め測定しておいた発泡剤成分の検量線に基づいて、得られたチャートから発泡性樹脂粒子中の発泡剤含有量(質量部)を算出する。
【0053】
ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:信和化工社製「Shimalite 60/80 NAW」(φ3mm×3m)カラム温度:70℃
検出器温度:110℃
注入口温度:110℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:60ml/分
【0054】
<予備発泡粒子の嵩倍数>
約5gの予備発泡粒子の重量(a)を小数以下2位で秤量する。次に、最小メモリ単位が5cm3である500cm3メスシリンダーに秤量した予備発泡粒子を入れ、これにメスシリンダーの口径よりやや小さい円形の樹脂板であって、その中心に幅約1.5cm、長さ約30cmの棒状の樹脂板が直立して固定された押圧具を当てて、予備発泡粒子の体積(b)を読み取り、式(a)/(b)により予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)を求める。なお、嵩倍数は、嵩密度の逆数、即ち、式(b)/(a)とする。
【0055】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。なお、倍数は密度の逆数、すなわち式(b)/(a)とする。
【0056】
<発泡成形体の引張強度>
万能試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロン UCT−10T」)に1000Nのロードセルを接続し、コの字型冶具で箱の長手面を挟んで500mm/分の速度で引張試験測定を行い、2次最大点荷重値を引張強度とする。
【0057】
本発明においては、
(1)引張強度が140〜300Nである場合・・・合格(○)
(2)引張強度が140N未満である場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0058】
<発泡成形体の割れ率>
実施例1及び比較例3で得られた箱を10箱用意し、それぞれに水10kgを入れた。箱の長手面を引っ張って50cm動かした時に割れた箱の個数を数え、下記式により割れ率を算出した。結果を表1に示す。
割れ率(%)=割れた個数×100/10
【0059】
本発明においては、
(1)割れ率が0〜20%である場合・・・・・合格(○)
(2)割れ率が20%より高い場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0060】
製造例1
5リットルのオートクレーブにスチレン単量体100質量部、水100質量部、リン酸三カルシウム0.125質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.005質量部、ベンゾイルパーオキサイド0.25質量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.1質量部、ジイソブチルアジペート1.0質量部を仕込み、90℃で5時間重合させた。その後、リン酸三カルシウム0.1質量部を添加し、シクロヘキサン0.7質量部、ノルマルブタン9.0質量部を圧入して110℃にて5時間保った。冷却後、水を分離し、乾燥して発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。次に、得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の表面に、表面処理剤としてステアリン酸亜鉛0.1質量%、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.08質量%を被覆し、被覆された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を得た。
【0061】
実施例1
(予備発泡)
製造例1で得られた被覆された発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、容量25Lの予備発泡装置にて予備発泡した後に20℃で24時間熟成し、嵩倍数が57倍と65倍の予備発泡粒子(第1予備発泡粒子及び第2予備発泡粒子)を得た。
嵩倍数57倍を得る時は、予備発泡装置への発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の投入量を440g、嵩倍数65倍を得る時は発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の投入量を385gとして予備発泡粒子を得た。
【0062】
(予備発泡粒子の混合)
300×300×400mmの網籠に嵩倍数57倍の第1予備発泡粒子4600ml(100質量部)と、嵩倍数が65倍の第2予備発泡粒子12000ml(230質量部)を入れた後、同サイズの網籠を上に乗せて封をし、下方から送風機(高木鉄工所社製、製品名「電動送排風機 汎用エース型」 最大風量13m3/分)からの風を2分間当てて、網籠内で予備発泡粒子の混合物を混合した。
【0063】
(成形)
320mm×540mm×170mmの箱形状のキャビティを有する成形型を備えた発泡ビーズ自動成形機(積水工機製作所社製、製品名「エース11型」)のキャビティ内に前記混合物を充填し、ゲージ圧0.070MPaの水蒸気で15秒間加熱成形を行った。次に、前記金型のキャビティ内の発泡成形体を12秒間水冷した後、減圧下にて放冷して、肉厚20mmの発泡成形体を得た。
発泡成形体の割れ率は0%であった。
【0064】
実施例2
第1予備発泡粒子を嵩倍数55倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量455g)とした以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0065】
実施例3
第1予備発泡粒子を嵩倍数50倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量500g)とした以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0066】
実施例4
第2予備発泡粒子を嵩倍数70倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量357g)とした以外は実施例3と同様にして発泡成形体を得た。
【0067】
比較例1
第1予備発泡粒子を嵩倍数62倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量403g)とした以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0068】
比較例2
第1予備発泡粒子を嵩倍数40倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量625g)とし、第2予備発泡粒子を嵩倍数80倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量313g)とした以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0069】
比較例3
第1予備発泡粒子を嵩倍数60倍(予備発泡装置への樹脂粒子投入量417g)とし、第2予備発泡粒子を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0070】
表1に実施例及び比較例の評価結果を記載する。
【0071】
【表1】

【0072】
表1より、実施例については発泡成形体の倍数、引張強度及び割れ率が良好な結果を示した。他方、比較例についてはこれらが良好な結果を示さない場合があった。
【0073】
従って、本発明によれば、高倍数で、強度に優れた発泡成形体の簡便な製造方法を提供できる。このため、本発明の発泡成形体は、包装用緩衝材、建築用部材、自動車部材等として幅広く使用することができ、特に発泡体製容器として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩倍数の異なる少なくとも2種の予備発泡粒子の混合物を発泡成形することにより得られ、前記混合物が30〜80倍の第1の嵩倍数(X)を有する第1予備発泡粒子とX+5〜X+30倍の第2の嵩倍数を有する第2予備発泡粒子とを少なくとも含むことを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記発泡成形体が、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂を含む請求項1に記載の発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって得られる発泡成形体。
【請求項4】
前記発泡成形体が、箱形状である請求項3に記載の発泡成形体。

【公開番号】特開2012−207165(P2012−207165A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75097(P2011−75097)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】