説明

発泡樹脂板の穿孔器

【課題】簡単な構造で同じ形状の孔を容易に穿つことができるばかりでなく、穿った孔の内径がその全長に亘って等しい発泡樹脂板の穿孔器を提供する。
【解決手段】発泡樹脂板pに孔を穿つための穿孔器1であって、熱刃部2とこの熱刃部2を加熱する加熱手段5からなり、熱刃部2は刃元2bから刃先2aに向かってテーパ状に拡開した形状であり、熱刃部2の刃先2aは穿たれる孔と略同一形状であることを特徴とする発泡樹脂板の穿孔器1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂板に孔を穿つための穿孔器に関し、更に詳しくは、穿孔の際に切り屑等が出ず、切り口が滑らかで、その全長に亘って内径が等しい孔を穿つことができる発泡樹脂板の穿孔器に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂板は安価で軽く、加工も容易で、断熱性、吸湿性、衝撃吸収性等に優れているため、断熱材、包装材、防音材やショーウインドウの飾り付け等に広く使用されている。近年では建築物の基礎として、コンクリートを打設するための型枠としても使用され、コンクリート硬化後もこの型枠を取り外すことなく、断熱効果の高い建築物が提供されている。
【0003】
このような発泡樹脂板は、現場で所定の形状に加工して使用される。例えばショーウインドウの飾り付け等では発泡樹脂板から星型や三角形、四角形等の孔を穿ち、後から光などを当てて、見た目に楽しい発光パネルが作成され、またコンクリートを打設する際の型枠として使用される場合は、円形の孔を穿ち、そこにパイプ等を嵌合させて配線用、換気用等の窓が作成される。
このような加工を行う際に、のこぎり等を用いて切り抜くことも可能であるが、切り口が滑らかにならず見栄えが悪いばかりでなく、曲面状に正確に切断するのが困難であり、特に型枠として使用する場合には、発泡樹脂板の厚さの全体に亘って均一の内径の孔を開けることが困難であるため、例えば、パイプを嵌め込んだ際にパイプとの間に隙間ができ、この隙間からコンクリートが漏れてしまう恐れがある。さらに静電気を帯びた切り屑が大量に発生して道具類に付着するため、後片付けが煩雑になる。
【0004】
このような事態を避けるため、電熱線等を熱刃として用い、発泡樹脂を溶断する方法が採られることが多い。例えば、針孔に電熱線を通した長い針を、弾性発泡体の一方の端面から他方の端面へ軸線方向に挿通することにより、前記電熱線を前記弾性発泡体中に挿通し、前記弾性発泡体の両端面の外方において、前記電熱線に電源を接続し、前記電熱線を緊張状態に保ちながら、前記電熱線及び前記弾性発泡体のいずれか一方を、前記軸線と平行状態を保ったまま、側方向に移動させて、前記弾性発泡体を溶断する方法(特許文献1参照)や、加熱部からの伝熱によって加熱した切断針を発泡成形体へ突き刺し、所望形状輪郭に沿って移動させる発泡成形体の開口方法及び開口装置(特許文献2及び3参照)が提供されている。
【0005】
しかしながら、熱刃として電熱線や切断針を使用した場合、発泡樹脂を切り進む際に生じる抵抗により該電熱線や切断針が撓むため、切断面が少々歪んでしまう。即ち、電熱線等を用いて発泡樹脂板を円形に穿孔しても、その径は孔の全長に亘って一定とはならず、その孔にパイプ等を嵌入すると、孔の入り口付近では隙間無く嵌合したとしても出口付近では孔とパイプ等の間に隙間が生じてしまう欠点は完全には解消されない。
さらに、電熱線等により所望の形状の孔を開ける場合には、この電熱線等を所定の形状通りに移動させる必要があるが、これを手動で行うと正確に行うことができないため、一定形状の孔を穿つことができず、機械的におこなうと電熱線等を正確に移動させるための移動手段や制御手段が必要となり、機械全体が複雑となり、いきおい高価とならざるを得ない。
【特許文献1】特開2001−18200号公報
【特許文献2】特開平9−122823号公報
【特許文献3】特開平9−122824号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、上記のような従来技術の問題を解決するため、容易に撓まない熱刃を用い、単純な動作で同じ形状の孔を何度も穿つことができる穿孔器として、図11に記載した穿孔器Aを先に開発した。これは、穿つべき孔の形状と同じ断面形状をもつ筒状、例えば、円形の孔を穿つ場合には、円筒状の金属管A1に加熱手段A2を着設したものであり、この穿孔器Aを単に直線的に移動させることにより、同一形状に穿孔することができる。
しかしながら、発泡樹脂は熱に極めて弱いため、発泡樹脂の近くに熱源が長時間置かれると、例えそれが発泡樹脂と接触していなくても樹脂が溶融してしまう。このため、発泡樹脂製の板pをこの穿孔器Aで穿孔すると、熱刃としての金属管A1の先端が発泡樹脂板pを表面側から貫いてその裏面側に達する頃には、表面側の樹脂が金属管A1の熱気に炙られて溶融し、穿たれる孔9は表面側が大きく裏面側が小さい断面台形状となってしまい、全長に亘って径が等しい孔を穿孔するという目的を達成できなかった。
本発明者は上記従来の欠点を解決するため鋭意研究の結果、熱刃部の形状を刃元から刃先に向かって拡開するテーパ状とすれば、発泡樹脂も必要以上に溶融しないことを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたもので、簡単な構造で容易に同じ形状の孔を穿つことができるばかりでなく、全長に亘って内径が等しい孔を穿つことができる発泡樹脂板の穿孔器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、発泡樹脂板に孔を穿つための穿孔器であって、熱刃部とこの熱刃部を加熱する加熱手段からなり、熱刃部は刃元から刃先に向かってテーパ状に拡開した形状であり、熱刃部の刃先は穿たれる孔と略同一形状であることを特徴とする発泡樹脂板の穿孔器を内容とする。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、熱刃部が中空であり、該熱刃部の後方に熱刃部内の熱気の放散を防ぐ遮風壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂板の穿孔器を内容とする。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、熱刃部の刃元からその後方側に伝熱部が延設され、加熱手段が該伝熱部に着設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡樹脂板の穿孔器を内容とする。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、さらに、刃先の向きを一定に保ちつつ直線状に移動させるためのガイドレールが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発泡樹脂板の穿孔器を内容とする。
【0011】
本発明の請求項5に係る発明は、刃先の形状が円形であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発泡樹脂板の穿孔器を内容とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発泡樹脂板の穿孔器は、熱刃部の刃先が穿たれる孔と略同一形状であるから、該穿孔器を直線状に移動させて、刃先を発泡樹脂板内に没入させるだけで、容易に同一形状の孔を穿孔することができる。また、熱刃部が刃元から刃先に向かってテーパ状に拡開した形状であるので、熱刃部の刃先が発泡樹脂板を溶断しながら該発泡樹脂板内に没入される際にも、その溶断面と刃元の間に一定の隙間が生じるため、熱刃部の熱気に炙られることがなくなり、必要以上に発泡樹脂板が溶融しないので、その全長に亘って内径が等しい孔を穿つことができる。
【0013】
熱刃部を中空とすると、穿孔される部分の発泡樹脂を全て溶融させるのでなく、切断面付近の発泡樹脂のみを溶解させるので、穿孔に必要な熱量が少なくて済む。また、該熱刃部の後方に熱刃部内の熱気の放散を防ぐ遮風壁を設けると、例えば、屋外で使用する場合でも、風により熱気が吹き飛ばされず熱刃部が冷えにくくなるので、スムーズに穿孔することができる。
【0014】
熱刃部の刃元からその後方側に伝熱部を延設するとともに、この伝熱部に加熱手段を着設すれば、伝熱部と加熱手段の接触面積を増大させることができ、熱刃部を効率的に加熱することができる。また加熱手段から発生する熱が直接発泡樹脂板を溶解させる事が無くなるため、より正確に穿孔することができる。
【0015】
刃先の向きを一定に保ちつつ直線状に移動させるためのガイドレールを設ければ、穿孔の際に穿孔器がぶれて孔が歪むようなトラブルを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の発泡樹脂板の穿孔器1は、図1及び図2に概略的に示したように、熱刃部2とこの熱刃部2を加熱する加熱手段5からなり、熱刃部2は刃元2bから刃先2aに向かってテーパ状に拡開した形状であり、熱刃部の刃先2aは穿たれる孔と略同一形状であることを特徴とする。
【0017】
本発明において、熱刃部2は発泡樹脂板pの内部に没入されることにより、その発泡樹脂板pを溶断し、所定形状の孔を穿つ部分である。その刃先2aの形状は特に限定されず、穿ちたい孔の形状により適宜定めればよい。例えば、断面形状が円形の孔を穿ちたい場合には刃先の形状も円形とし、断面形状が矩形の孔を穿ちたい場合には刃先の形状も矩形にすればよい。
【0018】
この熱刃部2は、刃元2bから刃先2aに向かってテーパ状に拡開した形状とされる。そのため、この熱刃部2を発泡樹脂板pに没入させると、刃先2aの形状を柱状にした形状(刃先2aの形状が円形の場合は円柱状)の溶断面が形成されるが、この溶断面と刃元2bの間には隙間が形成される。従って、溶断面が刃元3b付近に蓄えられた熱に炙られることもなく、刃先2aの部分以外で発泡樹脂が溶解することもないので、内径が均一な孔を穿孔することが可能となる。熱刃部2は、穿孔する発泡樹脂板の厚みよりも大き目に設計される。
なお、ここでいうテーパ状とは、刃先2a付近の全周に亘って、外向きの傾斜が付けられている形状をいい、その傾きが一様である必要はなく、例えば、椀状のように刃先2aに近づくほど傾斜角が緩くなる形状や、ラッパ状のように刃先2aに近づくほど傾斜角が急になる形状でもよい。
テーパ状の傾斜角は、穿孔する発泡樹脂板の厚みにもよるが、例えば厚みが50mmの場合で、約2度以上とするのが好ましい。また、傾斜角の上限は特に制限されないが、傾斜角が大きくなると熱刃部の面積が大きくなるので所定温度に加熱するエネルギー量が大きくなり不経済となる傾向があり、従って、この点も考慮して適宜決定される。
【0019】
本発明においては、熱刃部2を中実にして穿孔される部分の発泡樹脂を全て溶解させることも可能であるが、図2に示したような中空の熱刃部2を用いて孔の表面部分だけを溶解させるほうが、必要な熱量も少なくて済むため好ましい。なお、この場合、熱刃部2がテーパ状であるため、刃先2aから刃元2bに係る部分の内側でも発泡樹脂の溶解が生じ、その分熱刃部2の熱が奪われて冷えるため、熱刃部2の外側に放出される熱が減少し、溶断面の樹脂をさらに溶解させにくくなるので、穿たれた孔の内径はより均一になる。
【0020】
熱刃部2を中空にした場合、穿孔器1を、例えば、風のある屋外で使用する場合は、熱刃部2内の熱気が吹き飛ばされて一層冷え易くなるので、溶断の邪魔にならない部分、即ち熱刃部の後方に遮風壁4を設けて熱刃部2内の熱気の放散を防ぐのが好ましい。
遮風壁4の位置は溶断の邪魔にならない限り特に限定されないが、刃元2b付近に設けるのが好ましく、また、後述の伝熱部3を設ける場合はこの伝熱部3の内部に設けてもよい。
【0021】
本発明において、熱刃部2は加熱手段5により加熱される。加熱手段5としては、熱刃部を適切に加熱できるかぎりその種類は限定されないが、簡単な構造で速やかに昇温できるコイル状、面状等の電熱ヒーターが好ましい。
【0022】
加熱手段5の設置位置は、溶断の邪魔にならず、且つ加熱手段5から発せられる熱が直接、発泡樹脂を溶解させない限り特に限定されない。例えば、中実の熱刃部2を用いる場合はこの熱刃部2の中に埋め込んでもよいし、中空で且つ刃元2b付近に遮風壁4が設けられた熱刃部2を用いる場合は遮風壁4のすぐ後ろに設けてもよい。
より好ましくは、熱刃部の刃元2bからその後方側に伝熱部3を延設するとともに、加熱手段5を該伝熱部3に着設する。なお、図1及び図2に示した例では、刃元2bから円筒状に延設された伝熱部3の周りに加熱手段5として電熱線をコイル状に巻き付け、この電熱線に通電することにより熱刃部2を加熱している。
このようにすると、加熱手段5から発せられる熱が効率よく伝熱部3に伝わるとともに、発泡樹脂の穿孔に伴い熱刃部2の温度が下がった際にも、伝熱部3に蓄えられた熱が速やかに熱刃部2に伝わって昇温するため、直ちに次の発泡樹脂板pを穿孔できる。
【0023】
上記したような穿孔器1は発泡樹脂板pに向かって真っ直ぐ熱刃部2を移動させることにより、その全長に亘って内径が等しい孔を穿つことができる。そのため、穿孔器1を移動させやすくする手段をさらに設けるほうが好ましい。
最も単純な手段としては、取っ手6を設けて手動で穿孔器1を移動させる方法が考えられるが手ぶれが生じ易いため、好ましくは、ガイドレール7等を設けて確実に直線状に移動できるようにする。ガイドレール7には、上下方向及び/又は水平方向への位置調整機構を設けることができる。
【0024】
本発明の穿孔器1において、熱刃部2及び伝熱部3の素材は、融点が発泡樹脂よりも高く、伝熱性が高く、強度が強い点で金属が好ましいが、軽量で伝熱性に優れている点でアルミニウムが好ましい。
その成形方法は特に限定されず、例えば、金属管の一端側だけを拡開させ、拡開させた側を熱刃部2とし、反対側を伝熱部3とする方法や、金属板を絞り加工して器型の熱刃部2を作成し、その後ろ側に伝熱部3としての金属管を溶接する方法が挙げられるが、後者の方法が好ましい。
【0025】
上記の如き穿孔器は、発泡樹脂板の溶断速度に合わせて一定の速度で直線的に移動させることにより、熟練を要することなく、正確且つ容易に孔の厚み方向に均一で綺麗な孔を穿つことができる。
【0026】
次に、本発明の穿孔器1の他の例について、図3及び図4に基づいて説明する。
この穿孔器1では、熱刃部2として、アルミニウム板を絞り加工して形成した椀状のものが採用されるとともに、伝熱部3としてアルミニウム管が採用されてこれらが溶接され、面状ヒーターからなる加熱手段5が前記伝熱部3に着設され、さらに伝熱部3に取っ手6が2つ設られている。
この例では、熱刃部2を椀に見立てた場合の底の部分が遮風壁4として機能するため、屋外で使用する場合でも、この風が熱刃部2から伝熱部3に吹き抜けることはなく、従って熱刃部2内に滞留する熱気の放散が防がれる。
また、この穿孔器1で発泡樹脂板pに穿孔するには、2つの取っ手6を手でもち、直線状に移動させるように且つ発泡樹脂板pに対する刃先2aの角度が変化しないように注意しながら熱刃部2を発泡樹脂板pに没入させる。
【0027】
次に、本発明の穿孔器1の別の例について、図5及び図6に基づいて説明する。
この穿孔器1は、アルミニウム管の一端側が押し広げられてラッパ状の熱刃部2とされ、他端側が伝熱部3とされると共に、他端側に円形の板を溶接して遮風壁4とされており、面状ヒーターからなる加熱手段5が前記伝熱部3に着設され(便宜上、これを溶断ユニットMと称する)、一端に車輪8aが設けられた吊下アーム8を介してガイドレール7から前記溶断ユニットMが吊下された穿孔器1である。
この例でも、風が遮風壁4により妨げられ熱刃部2から伝熱部3に吹き抜けることはなく、従って熱刃部2内に滞留する熱気の放散が防がれる。
また、この穿孔器1で発泡樹脂板pに穿孔するには、ガイドレール7の一端側に発泡樹脂板pを固定し、そのまま溶断ユニットMをガイドレール7に沿って移動させて熱刃部2を発泡樹脂板pに没入させる。この穿孔器1を用いると、熟練を必要とせずに正確且つ容易に孔の厚み方向に均一で綺麗な孔を穿つことができる。
【0028】
次に、本発明の穿孔器1のさらに別の例について、図7、図8及び図9に基づいて説明する。
この穿孔器1は、アルミニウム管の一端側が押し広げられて円錐台形状の熱刃部2とされ、他端側が伝熱部3とされると共に、熱刃部2の刃元2b付近に円形の板を溶接して遮風壁4とされており、電熱線をコイル状に巻回してなる加熱手段5が前記伝熱部3に着設された溶断ユニットMを有し、2本のガイドレール7上に設けられた摺動板7aから吊下アーム8を介して前記溶断ユニットMが吊下された穿孔器1である。
この例におけるガイドレール7はそれぞれ3本の支柱7bにより支持されており、2本で一組となっている。この2本のガイドレール7の上には摺動板7aが摺動可能に架設され、さらに、図9(b)、(c)に示されるように、摺動板7aはガイドレール7内に遊嵌されたロングナット7cをその4隅でボルト7dにより固着しているが、ロングナット7cがガイドレール7内で直線状に動くため、摺動板7aや溶断ユニットMも同じく直線状に移動する。
上記した通り、溶断ユニットMは吊下げアーム8を介して摺動板7aに吊下されているが、吊下げアーム8は高さ調節機構8bにより上下に移動し、これにより溶断ユニットMの高さが決定される。詳述すれば、高さ調節機構8bは吊下げアーム8に螺刻されたねじ山と、このねじ山に螺着する2つのナットからなり、このナットを回転させて吊下げアーム8上で適当な位置まで移動させることにより溶断ユニットMの高さを決定する。
この例でも、遮風壁4により妨げられるため、風が熱刃部2から伝熱部3に吹き抜けることはなく、従って熱刃部2内に滞留する熱気の放散が防がれる。また、この穿孔器1で発泡樹脂板pに穿孔する方法は、図5に示した方法と同様であり、これにより、熟練を必要とせずに正確且つ容易に孔の厚み方向に均一で綺麗な孔を穿つことができる。
【0029】
実施例
熱刃部2としてアルミニウム板(厚さ2mm)を絞り加工して形成した円錐台状とし、後ろ側に伝熱部3としてアルミニウム管(厚さ2mm)を溶接した他は図7〜図9に示したのと同様の穿孔器1を用い、発泡スチレン樹脂板pを穿孔した。
即ち、図10に示すように、熱刃部2の刃先2aの外径は163mm、刃元2bの外径は140mm、熱刃部2の長さは55mm、伝熱部3の長さは140mm、加熱手段5の巾は100mmとし、加熱手段5の温度を400℃に設定し、発泡倍率は50倍で厚み50mmの発泡スチレン樹脂板pを穿孔した。穿たれた孔9は直径165mmで、孔9の全長に亘って均一な径を有するものであった。また、熱刃部2内の発泡スチレン樹脂板pの被穿孔片p1は、少し時間が経つと小さくなり、熱刃部2から簡単に取り出すことができた。
【0030】
穿孔された発泡スチレン樹脂板2枚を150mmの間隔で並べて型枠を構築し、両型枠の孔に外径165mm、長さ160mmの塩ビ管を挿通した後コンクリートを流し込んだところ、型枠と塩ビ管との間隔からのコンクリートの洩れは全く認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
叙上のとおり、本発明は発泡樹脂板に孔を穿つための穿孔器であって、熱刃部とこの熱刃部を加熱する加熱手段からなり、熱刃部は刃元から刃先に向かってテーパ状に拡開した形状であり、熱刃部の刃先は穿たれる孔と略同一形状であることにより、簡単な構造で容易に同じ形状の孔を穿つことができるばかりでなく、全長に亘って内径が等しい孔を穿つことができるので、ショーウインドウの飾りつけや建築物の基礎工事における発泡樹脂製の型枠等の穿孔に用いる穿孔器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の発泡樹脂板の穿孔器を示す概略説明図である。
【図2】図1の穿孔器の構造を示す概略断面図である。
【図3】別の穿孔器を示す概略説明図である。
【図4】図3の穿孔器の構造を示す概略断面図である。
【図5】更に別の穿孔器を示す概略説明図である。
【図6】図5の穿孔器の構造を示す概略断面図である。
【図7】更に別の穿孔器を示す概略説明図である。
【図8】図7の穿孔器を溶断ユニットの進行方向正面側からみた図である。
【図9】(A)は図8のA−A断面図であり、(B)は図8のB−B断面拡大図であり、(C)は図9(B)のC−C断面図である。
【図10】実施例における、穿孔器を用いて発泡樹脂板を穿孔する状態を説明するための概略図である。
【図11】従来の発泡樹脂板の穿孔器を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 穿孔器
2 熱刃部
2a 刃先
2b 刃元
3 伝熱部
4 遮風壁
5 加熱手段
6 取っ手
7 ガイドレール
7a 摺動板
7b 支柱
7c ロングナット
7d ボルト
8 吊下アーム
8a 車輪
8b 高さ調節機構
9 孔
M 溶断ユニット
p 発泡樹脂板
p1 発泡樹脂板の被穿孔片
A 従来の穿孔器
A1 金属管
A2 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂板に孔を穿つための穿孔器であって、熱刃部とこの熱刃部を加熱する加熱手段からなり、熱刃部は刃元から刃先に向かってテーパ状に拡開した形状であり、熱刃部の刃先は穿たれる孔と略同一形状であることを特徴とする発泡樹脂板の穿孔器。
【請求項2】
熱刃部が中空であり、該熱刃部の後方に熱刃部内の熱気の放散を防ぐ遮風壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂板の穿孔器。
【請求項3】
熱刃部の刃元からその後方側に伝熱部が延設され、加熱手段が該伝熱部に着設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡樹脂板の穿孔器。
【請求項4】
さらに、刃先の向きを一定に保ちつつ直線状に移動させるためのガイドレールが設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発泡樹脂板の穿孔器。
【請求項5】
刃先の形状が円形であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発泡樹脂板の穿孔器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−262314(P2009−262314A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118212(P2008−118212)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(592159955)テクノファースト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】