説明

発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置

【課題】サーモエレメントに直接ビール等の発泡飲料を接触させないことにより、サーモエレメント周囲に発泡飲料の残渣が付着せず、洗浄作業時に分解する必要が無く、スポンジ通しによる洗浄を確実に行うことができるようにする。
【解決手段】外側端面52がサーモエレメント20の感温部22の端面41に接触し、内側端面53が発泡飲料供給流路39の発泡飲料に接触する熱伝導部材としてのプレート51を設け、発泡飲料とサーモエレメントとが直接接触しないようにする。それにより発泡飲料供給流路39内の洗浄時におけるスポンジ通しの際、スポンジを加圧する水が感温開口等から抜け出てスポンジが途中で詰まることを防止することもできる。熱伝導部材としてはそのほか、サーモエレメントの感温部を覆うキャップとし、またプレートとサーモエレメントとの間にスプリングを介在させ、或いは流路を伝熱管で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ビール等の発泡飲料を貯留する容器の圧力を、供給する飲料の温度に応じて調整するための発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置に関し、特に生ビールの温度を検出する感温部にビール酵母汚れが付着しないようにした発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樽内に貯留される生ビールを販売する際には、飲料温度に応じた適切な炭酸ガス圧力を樽内に加えておく必要があり、以前はビールの注出時には雰囲気温度によって、圧力調節バルブを手動で調節し、樽に供給される炭酸ガスの圧力を調節することが行われていた。しかしながら、その調節には熟練を要するため、ビールの温度に応じて、樽に供給する炭酸ガスの圧力を自動調節する装置の開発が行われ、例えば図6に示すような温度圧力調節装置1を用いた発泡飲料供給装置が本件出願人等により提案されている(特許文献1)。後述する本発明の発砲飲料供給装置用温度圧力調節装置の温度圧力調節機能は、基本的に図6の従来例と同様の機能を奏するので、ここで発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置の全体概要について説明する。
【0003】
図6に全体構造の断面図、図7(a)に要部の他の断面図、図7(b)(c)に2分割状態の断面図を示すように、この発泡飲料供給装置用の温度圧力調節装置1においては、炭酸ガスボンベ側に接続して温度圧力調節装置1にほぼ所定圧の炭酸ガスを導入するガスボンベ接続部2と、ビールの温度に応じて圧力が調整された炭酸ガスを樽に供給するガス供給部3と、樽からビールを導入する樽接続部4と、温度圧力調節装置1で温度を検出した後のビールを冷却器に供給する冷却器接続部5の各接続部を備えている。
【0004】
温度圧力調節装置1における前記ガスボンベ接続部2とガス供給部3の間には、作動ロッド部6を有する弁体7を備え、この弁体7はスプリング8により、常時弁座体10の弁開口11を閉じる方向に付勢されている。弁座体10の中心部には通孔12を形成しており、この通孔12の内壁と弁体7の作動ロッド部6の外周と間に、弁開口11からの炭酸ガスを圧力調整室13に流入させる間隙を形成している。弁体7の作動ロッド部6の先端は、ダイヤフラム14をダイヤフラム受け15との間で狭持するロッド受け16に当接し、ダイヤフラム受け15に当接している第2リテーナ19とそれに対向する第1リテーナ17間に縮設したスプリング18によってその当接状態を維持している。第1リテーナ17の図中左側にはサーモエレメント20内で図中左右に摺動可能に支持されたロッド21が当接しており、サーモエレメント20の感温部22の温度が高くなるとその内部のワックス29が膨張してロッド21が図中右側に移動し、スプリング18を押し縮めてダイヤフラム14に加わる荷重を変化させている。
【0005】
サーモエレメント20はその筒部23の外周に雄ねじ24を形成しており、本体筒部25にねじ26で固定したエレメントホルダー27の内面に形成した雌ねじ28に螺合することにより、サーモエレメント20はエレメントホルダー27に支持されている。また、このサーモエレメント20の感温部22の側壁には、互いに対向する部分に平行に面取り部31を形成しており、この部分を工具で挟んで回転させる等によりサーモエレメント20全体を回転させ、固定されている雌ねじ28に対する雄ねじ24の螺合により、サーモエレメント20をその軸線方向に進退自在としている。上記温度圧力調節装置1においては、図中右側の温度圧力調節部材33と、この温度圧力調節部材33と袋ナット34により固定される流路形成部材35と2分割可能の構造としている。温度圧力調節部材33は、サーモエレメント20を前記のように螺合して支持したエレメントホルダー27と、このエレメントホルダー27とねじ26で固定しており内部にスプリング18等の部材からなる圧力調節装置を収納している本体筒部25と、この本体筒部25に対してねじ36で固定しており、本体筒部25の端部を覆って内部に弁体7等の弁部材を収納している弁収納部37とを一体化している。
【0006】
したがって例えば図7(b)(c)に示すように、袋ナット34を外し、流路形成部材35と温度圧力調節部材33とが分離され全体が2分されている、温度圧力調節部材33を流路形成部材35に組み付ける前の状態において、或いは組み付け後に分解した状態において、弁体7が所定の温度で所定の開度を維持することができるか否かの検査を行うことができる。この検査工程において弁体7が所定の開度にならないときには、感温部22における平行な面取り部31を工具で挟む等によって左右いずれかの方向に回転させることによりサーモエレメント20をその軸線方向に進退させ、スプリング18のバイアス力を調整することによって所定の開度になるように微調整を行うことができる。
【0007】
このような温度圧力調節装置1を用いることにより、樽が周囲から熱を受け、内部の生ビールの温度が上昇すると、供給する生ビールの温度をサーモエレメント20の感温部22で検出し、内部のワックス29の膨張によりロッド21が図中右方向に移動し、上記スプリングのバイアス力を高め、弁体7を弁座体10に対して弁開方向に付勢し、弁部11を温度上昇に対応した量だけ開放することにより、作動ロッド6の外周と弁座体10の通孔12内周の間隙とそれに続く圧力調整室13からガス供給管を介して樽内により多くの炭酸ガスを供給し、内部のガス圧力を上昇させ、生ビール内への適切な炭酸ガスの供給を行うことができる。また樽内の温度が低下したときは上記と逆に作動し、生ビール内への炭酸ガスの過剰な溶け込みを防止し、また押し出し圧力の上昇によるビール注出時の過剰な泡立ちを防止することができる。
【0008】
一方流路形成部材35は、樽接続部4の樽接続部流路37と冷却器接続部5の冷却器接続部流路38とをその軸線が一致するように、即ち両流路が一直線上に配置されて1本の発泡飲料供給流路39となるように構成している。また、樽接続部流路37と冷却器接続部流路38との接続部、即ち発泡飲料供給流路39の略中間位置には、その側壁に感温開口40を形成しており、この感温開口40によって発泡飲料供給流路39とエレメントホルダー27内の感温室9とが接続している。
【0009】
上記のように構成した温度圧力調節装置1の発泡飲料供給流路39部分のスポンジによる洗浄に際しては、図7(b)(c)に示すように温度圧力調節部材33と流路形成部材35とを袋ナット34によって分解し、発泡飲料供給流路39における樽接続部流路37部分にこの流路より径の大きなスポンジを発泡飲料入口43側から押し込み、その背後に対して炭酸ガスボンベの圧力により加圧された水を供給する。それによりスポンジはその縮径により生じた反発力によって流路の内面を押圧しつつ、炭酸ガスボンベの圧力により加圧された水圧によって押されて発泡飲料供給流路39内を冷却器接続部流路38側に移動する。それにより感温開口部40部分、及び冷却器接続部流路38の内面を洗浄した後、発泡飲料出口44から排出され、この発泡飲料供給流路39の洗浄が終了する。
【特許文献1】特開2004−189303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記本件出願人等が提案している従来技術においては、炭酸ガスにより押し出された水を用いてスポンジをビール通路部内に通すスポンジ通し洗浄を可能にしつつ、定期的なサーモエレメント感温部の洗浄、再組み付けを容易にさせるため、ビール通路側とビール液温を感知するサーモエレメントが組み込まれた本体側とを分割可能にさせたものであり、この技術により分解洗浄は容易になった。
【0011】
しかしながらこの従来技術においては、前記のように感温室9を狭くすることによってこの部分に滞留するビールの量をできる限り減少させ、洗浄が困難な残渣の付着部分を減少させることができたものであるが、本体側のサーモエレメント端部外周部とそれを覆う樹脂部品ホルダとの隙間、及びサーモエレメントの端面41が位置する感温開口40に僅かではあるがビールが滞留し、製品を使用しないときに滞留したビールが乾燥するとビール酵母汚れになって付着することとなる。そのため図7(b)(c)に示すように分解して洗浄を行う時に、ブラシ等で感温部の水洗いをしても微少隙間のビール酵母汚れが取り除きにくく、それがビールの味を変えてしまう要因の一つになりうる、という問題があった。
【0012】
また、この部分の洗浄に際して、前記のようにスポンジで洗浄するときには図7(c)に示すように流路形成部材35を温度圧力調節部材33から分解した状態で、例えば樽接続部流路37部分にこの流路より径の大きなスポンジを発泡飲料入口43側から押し込み、その背後に対して炭酸ガスボンベの圧力により加圧された水を供給し、スポンジはその縮径により生じた反発力によって流路の内面を押圧しつつ、炭酸ガスボンベの圧力により加圧された水圧によって押されて発泡飲料供給流路39内を冷却器接続部流路38側に移動することとなるが、スポンジの後端部が感温開口部40を通過するとき、感温開口部40が外部に開放されるため、加圧水がここから外部に噴出し、スポンジを押す力が少なくなり、スポンジが発砲飲料供給流路39内で止まってしまい、その時にはこれを感温開口部40から、或いは発泡飲料出口44からこれを抜き出す必要が生じる。特にこの現象は上記の原因のほか、加圧水の圧力低下や、発泡飲料供給ホースが長いときに発生し易い。更に、上記のように分解した状態でサーモエレメント20の周囲の部分を別途ブラシで酵母汚れを除去する必要があり、また発泡飲料供給流路39における感温開口部のサーモエレメントを囲む内面部分もブラシで酵母汚れを除去する必要もある。
【0013】
したがって本発明は、サーモエレメントに直接ビール等の発泡飲料が接触することなく、それによりサーモエレメント周囲にビール等の発泡飲料の残渣が付着することによる酵母汚れを防止し、この部分の洗浄の手数を省くとともに、発泡飲料の味の劣化を防することができ、更に、感温部分近傍の発砲飲料供給路をスポンジで洗浄する際、スポンジを押し込む加圧水が感温開口部から抜け出すことによるスポンジのつまりを防止することができる発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置を得ることを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、上記課題を解決するため、発泡飲料容器から外部に供給する流路内の発泡飲料の温度を検出し変位するサーモエレメント部材と、前記サーモエレメント部材により炭酸ガスボンベから発泡飲料容器に炭酸ガスを供給する管路に配置した温度圧力調節部材を調節する発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記発泡飲料供給流路とサーモエレメントとの間に、発泡飲料供給流路の発泡飲料がサーモエレメントと直接接触することを防止するとともに発泡飲料の熱をサーモエレメントに伝える熱伝導部材を介在したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記熱伝導部材は外側端面がサーモエレメントの感温部端面に接触し、内側端面が発泡飲料と接触するプレートであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記熱伝導部材は端面が発泡飲料と接触する、サーモエレメントの感温部を覆うキャップであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記キャップの外周にはOリング取付部を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記熱伝導部材は内側端面が発泡飲料に接触し外側端面がスプリングを受ける熱伝導性のプレートと、前記プレートとサーモエレメントの感温部端面との間に介在した熱伝導性スプリングとからなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記熱伝導部材の発泡飲料に接触する部分は、流路の内壁と面一に形成したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記熱伝導部材は発泡飲料供給流路の少なくとも一部を形成する内面を備えた伝熱管であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る他の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置は、前記発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記熱伝導部材を発泡飲料供給部材にインサート成型したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記のように構成したので、サーモエレメントに直接ビール等の発泡飲料が接触することなく、それによりサーモエレメント周囲にビール等の発泡飲料の残渣が付着することによる酵母汚れを防止し、この部分の洗浄の手数を省くことができ、残渣の洗浄残りによる発泡飲料の味の劣化を防止することができる。更に、感温部分近傍の発砲飲料供給路をスポンジで洗浄する際、スポンジを押し込む加圧水が感温開口部から抜け出すことによるスポンジのつまりを防止することができる。特に従来はこの洗浄時に流路形成部材と温度圧力調節部材とに分解し、それぞれ前記洗浄を行う必要があったが、このような分解が必要無くなり、装置のメンテナンスが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、発泡飲料とサーモエレメントとの直接接触を無くすという目的を、発泡飲料容器から外部に供給する流路内の発泡飲料の温度を検出し変位するサーモエレメント部材と、前記サーモエレメント部材により炭酸ガスボンベから発泡飲料容器に炭酸ガスを供給する管路に配置した温度圧力調節部材を調節する発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、前記発泡飲料供給流路とサーモエレメントとの間に、発泡飲料供給流路の発泡飲料がサーモエレメントと直接接触することを防止するとともに発泡飲料の熱をサーモエレメントに伝える熱伝導部材を介在させることにより実現した。
【実施例1】
【0024】
図1には本発明による発砲飲料供給装置用温度圧力調節装置における1実施例の全体構造を示しており、前記図6及び図7に示す本件出願人による先の出願の装置とは一部の構成以外はほぼ同様であり、前記従来技術の説明において図6及び図7の説明として、その全体構成及び作動の詳細を述べたので、図1の装置においては同一部材には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0025】
図1に示す実施例においては、図2(a)に他の断面図を示すように、前記従来のものと比較して、特にサーモエレメント20の端面41に熱伝導部材としてのプレート51の外側端面52を接触させ、このプレート51によって前記従来の感温開口部40を塞ぎ、プレート51の内側端面53が発泡飲料供給流路39を流れる発泡飲料と直接接触するように構成している点で相違する。図示の例においてはプレート51には内側端面53を平面形状とし、またフランジ部54を設け、このフランジ部54が流路形成部材35の段部55に嵌合し、所定の位置に熱伝導性部材51を配置して固定することができるようにしている。
【0026】
このプレート51の取り付けに際しては、流路形成部材35の成型時にインサート成型することができるが、その外別途固定するときには、前記図7(c)のように流路形成部材35を温度圧力調節部材33から分離している状態で、図1に示すようなプレート51を予めプレート51の外径に適合する開口を形成した流路形成部材35に圧入することにより、或いは接着剤によって固定することができる。その後温度圧力調節部材33を袋ナット34により結合し、その際サーモエレメント20の端面41がプレート51の外側端面52に接触した状態で袋ナット34の回転を止めることによって、プレート51とサーモエレメント20の端面41との接触を確実なものにすることができる。
【0027】
プレート51としては種々の材料からなるものを用いることができるが、発泡飲料供給路39を流れる発泡飲料の温度をサーモエレメント20の感温部22に確実に伝達し、また発泡飲料の温度変化をサーモエレメントが速やかに検出して発泡飲料のタンクに供給する炭酸ガスの圧力を調節できるようにするため、熱伝導性の良い銅やアルミニウム材を用い、更には発泡飲料供給装置の各種部材に用いられているステンレススチールを用いても良く、更に他の素材を用いることもできる。
【0028】
上記のようなプレート51を用いて発泡飲料供給流路39を流れる発泡飲料とサーモエレメント20との直接接触を防止し、前記図6及び図7に示すようなサーモエレメント20の周囲の感温室9に発泡飲料が流れ込まないようにしたので、従来この部分に生じていた発泡飲料の残渣の発生が無くなり、図7(b)(c)のように流路形成部材35と温度圧力調節部材22とを分解して、サーモエレメント20及び感温室9の内壁部分、更には感温開口40部分のブラシによる洗浄作業を行う必要が無くなる。そのため従来洗浄時に行ってきた流路形成部材35と温度圧力調節部材33との分解作業が不必要となり、単に発泡飲料供給流路39のスポンジ通し作業のみで良くなるため、この発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置の日常のメンテナンスが簡単なものとなる。
【0029】
更に、従来の感温開口40が無くなり、この部分がプレート51で封鎖した構成となるので、前記従来の装置における発泡飲料供給流路39の洗浄に際して、図7(c)のように分解した状態で流路の片側からスポンジを挿入し、高圧の水でスポンジを流路内に押し込むとき、スポンジの後端部が感温開口40を通過しようとする際に、スポンジを押圧する高圧水が感温開口40から外部に噴出し、スポンジを押圧する力が減少し、ここに止まってしまうことによる洗浄作業の困難性、及び詰まったスポンジの取り除き作業の発生を防止することができ、この点からも洗浄作業を容易にすることができる。
【0030】
上記のようなプレート51を用いることにより、従来の装置におけるサーモエレメントに直接発泡飲料を触れさせるものよりもサーモエレメントの感温度が低下することが予測されるが、その点は例えばサーモエレメントを細く形成する等のサーモエレメント自体の形状変更により、または内部のサーモワックスの量を少なくし、或いはサーモエレメント内部のワックスの種類変更等による特性変更によって、従来のものとほぼ同様の特性に調節することができ、従来からの特性の変化を無くすことができる。なお、それらの対策によってでも特性変化を生じる恐れがあるときには、スプリング18の弾性特性の変更等によって調節してもよい。
【実施例2】
【0031】
図1及び図2(a)の実施例ではプレート51の内側端面53を平面形状に形成した例を示したが、その外図2(b)に示すようにプレート51の内側端面53における発泡飲料供給流路39の全体の内面と一致するように、円弧面56を形成しても良い。このような流路内面と面一な円弧面56を形成することにより、前記のようなスポンジ通しによる発泡飲料供給路39内面の洗浄時に、スポンジがプレート51の端部に引っ掛かることが無くなり、円滑な洗浄作業を行うことができるとともに、通常の使用時に発泡飲料がこの部分を通過するとき突出部による乱流の発生で、流れる飲料に泡が発生することを防止することも可能となる。
【実施例3】
【0032】
本発明はそのほか例えば図3に示すような態様でも実施することができる。図3(a)に示す例においては発泡飲料供給流路39の流路壁57に取付穴58を形成し、この取付穴58に対してサーモエレメント20の感温部22に嵌合する熱伝導部材としてのキャップ60を液密に固定する。その固定に際しては、流路形成部材35を製造するとき、このキャップ60をインサート成型し、確実な固定を行うようにすることができる。その際には流路形成部材35にインサートされたキャップ60にサーモエレメント20の感温部22を嵌合することとなる。
【実施例4】
【0033】
また、図3(b)に示すように外周にOリング取付部61を設けたキャップ62を用い、Oリング取付部61内にOリング63を嵌入し、流路形成部材35に形成したサーモエレメント嵌合部64に嵌合するように構成しても良い。それにより前記図3(a)のキャップ60を用いるときよりキャップ周囲からの液漏れ防止効果が高くなる。なお、図3(a)及び(b)の例においても、前記図2(b)の例と同様に、発泡飲料供給流路39の内面と一致するように円弧面を形成しても良い。
【0034】
このときのキャップ60及びキャップ62は、図示するようにサーモエレメント20の感温部22のほぼ全体を覆うように形成することが好ましいが、その一部であっても良い。またこのキャップ60及びキャップ62についても前記プレート51と同様に、熱伝導性の良い銅やアルミニウム材を用い、更には発泡飲料供給装置の各種部材に用いられているステンレススチールを用いても良く、更に他の素材を用いても良い。このキャップ60及びキャップ62によっても前記実施例と同様の作用を行うことができる。
【実施例5】
【0035】
本発明の更に他の実施例を図4に示す。図4(a)に示す実施例においては発泡飲料供給流路39に接するように熱伝導性のプレート66を液密に固定し、このプレート66とサーモエレメント20の感温部22の端面41との間に熱伝導性の板バネ67を介在させている。従ってこの例においても熱伝導部材としてのプレート66と板バネ67により発泡飲料供給流路39を流れる発泡飲料の熱をサーモエレメント20に伝達することができ、また発泡飲料とサーモエレメントとの直接の接触を防止することができる。更に図4(b)に示すように、前記板バネ67に代えて熱伝導性のコイルスプリング68を用いても同様の作用を行わせることができる。なお図示の例では図4(a)のプレート6に代えて同じ作用をなすスプリング受け69としている。これらの例においても前記図2(b)の例と同様に、発泡飲料供給流路39の内面と一致するように円弧面を形成しても良い。これらの熱伝導性のスプリング類を用いることにより発泡飲料とサーモエレメントの直接接触を防止する作用等も、前記各実施例と同様である。
【実施例6】
【0036】
本発明は更に図5に示す態様によっても実施することができる。即ち図5に示す例においては、流路形成部材35における発泡飲料供給流路39の一部を、熱伝導性のパイプ材或いはパイプ状部材からなる伝熱管70をインサート成型により取り付けた例を示している。図示の例では伝熱管70のサーモエレメント側を平坦面71とし、この部分にサーモエレメント20の感温部22の端面41を接触させ、熱伝導性を高めるようにしている。そのほか、伝熱管70を通常のパイプ材とし、そのパイプ材とサーモエレメントとの間に熱伝導性部材を介在させる等、種々の態様で実施することもできる。このような伝熱管70を流路形成部材35に取り付けるに際しては、前記インサート成型によるほか、予めこの伝熱管70を取り付ける嵌合部を流路形成部材35に形成し、Oリング等により液密に伝熱管70を取り付けるようにしても良い。この実施例においても、発泡飲料とサーモエレメントの直接接触を防止する作用等も、前記各実施例と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示す断面図である。
【図2】(a)は実施例1の他の断面を示す図であり、(b)は実施例2の断面図である。
【図3】(a)は本発明の実施例3の断面図であり、(b)は同実施例4の断面図である。
【図4】本発明の実施例5の断面図である。
【図5】本発明の実施例6の断面図である。
【図6】従来例の全体構成を示す断面図である。
【図7】(a)は同従来例の要部の他の断面図であり、(b)(c)は分解状態の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 温度圧力調節装置
2 ガスボンベ接続部
3 ガス供給部
4 樽接続部
5 冷却器接続部
6 作動ロッド部
7 弁体
8 スプリング
10 弁座体
11 弁開口
12 通孔
13 圧力調整室
14 ダイヤフラム
15 ダイヤフラム受け
16 ロッド受け
17 スリーブ
18 スプリング
19 リテーナ
20 サーモエレメント
21 ピストン
22 感温部
23 ガイド筒部
24 雄ねじ
25 本体筒部
26 ねじ
27 エレメントホルダー
28 雌ねじ
29 ワックス
31 面取り部
33 温度圧力調節部材
34 袋ナット
35 流路形成部
36 ねじ
37 樽接続部流路
38 冷却器接続部流路
39 発泡飲料供給流路
40 感温開口
41 端面
43 入口
44 出口
51 プレート
52 外側端面
53 内側端面
54 フランジ
55 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡飲料容器から外部に供給する流路内の発泡飲料の温度を検出し変位するサーモエレメント部材と、前記サーモエレメント部材により炭酸ガスボンベから発泡飲料容器に炭酸ガスを供給する管路に配置した温度圧力調節部材を調節する発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置において、
前記発泡飲料供給流路とサーモエレメントとの間に、発泡飲料供給流路の発泡飲料がサーモエレメントと直接接触することを防止するとともに発泡飲料の熱をサーモエレメントに伝える熱伝導部材を介在したことを特徴とする発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項2】
前記熱伝導部材は外側端面がサーモエレメントの感温部端面に接触し、内側端面が発泡飲料と接触するプレートであることを特徴とする請求項1記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項3】
前記熱伝導部材は端面が発泡飲料と接触する、サーモエレメントの感温部を覆うキャップであることを特徴とする請求項1記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項4】
前記キャップの外周にはOリング取付部を備えたことを特徴とする請求項3記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項5】
前記熱伝導部材は内側端面が発泡飲料に接触し外側端面がスプリングを受ける熱伝導性のプレートと、前記プレートとサーモエレメントの感温部端面との間に介在した熱伝導性スプリングとからなることを特徴とする請求項1記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項6】
前記熱伝導部材の発泡飲料に接触する部分は、流路の内壁と面一に形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項7】
前記熱伝導部材は発泡飲料供給流路の少なくとも一部を形成する内面を備えた伝熱管であることを特徴とする請求項1記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。
【請求項8】
前記熱伝導部材を発泡飲料供給部材にインサート成型したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の発泡飲料供給装置用温度圧力調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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