発煙消火装置
【課題】電気的な火災検知と点火を必要とすることなく火災時に電源を確保できない場所であっても使用可能でコスト的にも安価とする。
【解決手段】噴出口14を備えた筐体12に燃焼により消火用エアロゾルを発生する固形消火剤26を収納し、感熱作動部16の火災検出位置に配置した形状記憶バネ28−1が火災温度に達した時の記憶形状へのバネ変位を、筒体の中に並べた複数の樹脂ボール30を介して筐体12に伝達し、ステム32−2の先端の破砕具80によりバルーン78を衝破し、封入している易酸化性物質76を酸化剤74に接触させることによる科学反応の発熱で固形消火剤26に着火して燃焼させ、噴出口14から消火用エアロゾルを噴出させて消火する。
【解決手段】噴出口14を備えた筐体12に燃焼により消火用エアロゾルを発生する固形消火剤26を収納し、感熱作動部16の火災検出位置に配置した形状記憶バネ28−1が火災温度に達した時の記憶形状へのバネ変位を、筒体の中に並べた複数の樹脂ボール30を介して筐体12に伝達し、ステム32−2の先端の破砕具80によりバルーン78を衝破し、封入している易酸化性物質76を酸化剤74に接触させることによる科学反応の発熱で固形消火剤26に着火して燃焼させ、噴出口14から消火用エアロゾルを噴出させて消火する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生して火災を消火抑制する発煙消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルダクト、制御盤、機器筐体内などの閉鎖された密閉空間で発生した火災を消火抑制するため、固形消火剤に点火して燃焼させることで消火用エアロゾルを発生する発煙消火装置が知られている。
【0003】
このような発煙消火装置にあっては、感知器により火災を検知した際に、発煙消火器の点火装置に電気信号を送り、固形消火剤に点火して燃焼させるようにしている。固形消火剤の燃焼により発生するエアロゾルは例えば塩化カリウムや臭化カリウムなどを主成分とし、それ以外に水、二酸化炭素及び窒素を含み、燃焼反応の抑制により消火抑制を果たすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−503853号公報
【特許文献2】特開平6−269513号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0235200号明細書
【特許文献4】特開2000−167080号公報
【特許文献5】特開平8−61307号公報
【特許文献6】特表2007−512913号公報
【特許文献7】国際公開第2007/016705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の発煙消火装置にあっては、固形消火剤の点火燃焼による起動は全て電気信号により行っているが、火災時にあっては、通常、火災発生場所の電源を切るようにしており、そのため、発煙消火装置に専用の無停電電源を準備する必要があり、コストが高くなるという問題がある。また無停電電源が準備できないような場所については使用することができず、使用条件が制約されるという問題もある。
【0006】
本発明は、電気的な火災検知と点火を必要とすることなく火災時に電源を確保できない場所であっても使用可能とするコスト的にも安価な発煙消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は発煙消火装置であって、
消火用エアロゾルを噴出する噴出口を備えた筐体と、
筐体に収納され、燃焼により消火用エアロゾルを発生する固形消火剤と、
固形消火剤に点火して燃焼させる点火機構と、
筐体から火災検出位置までの距離に応じた長さを有し、火災検出位置に配置した形状記憶バネが所定温度に達した時の記憶形状への変位を筐体側に伝達して点火機構を作動させる感熱作動部と、
を備え、
点火機構は、少なくとも酸化剤と易酸化性物質とを分離配置した着火剤を具備し、感熱作動部が作動した際の機械的な動作により酸化剤と易酸化性物質とを固形消火剤の表面にて接触させ、この接触による発熱で固形消火剤に着火するように構成される。
【0008】
ここで、易酸化性物質が、高粘性の液状易酸化性物質であり、より望ましくは、グリセリンである。
【0009】
また、点火機構は、易酸化性物質を封入した容器を具備し、固形消火剤に形成した収納穴の奥に酸化剤を配置すると共に穴開口側に容器を配置して閉鎖し、感熱作動部が作動した際に破砕具により容器を破砕して易酸化性物質を酸化剤に接触させる。
【0010】
また、点火機構は、易酸化性物質を封入した容器を具備し、消火剤組成物に形成した収納穴の最深部に酸化剤を配置し、続いて容器を配置し、穴開口側に破砕具を備えたプランジャを配置し、感熱作動部が作動した際に、前プランジャを押込んで破砕具により容器を破砕して易酸化性物質を酸化剤に接触させる。
【0011】
また、点火機構は、ピストンの移動により吐出される易酸化性物質をシリンダに充填したインジェクタを具備し、消火剤組成物に形成した収納穴の奥に酸化剤を配置した状態で穴開口にインジェクタを配置して閉鎖し、感熱作動部が作動した際に、インジェクタのピストンの押込みにより易酸化性物質を吐出して酸化剤に接触させる。
【0012】
更に、点火機構は、酸化剤と易酸化性物質を個別に封入した容器を具備し、消火剤組成物に形成した収納穴に容器を配置し、感熱作動部が作動した際に破砕具により容器を破砕して易酸化性物質と酸化剤に接触させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火災検出温度に達したときの形状記憶バネの記憶形状への変位または感熱ラッチされた圧縮バネの開放変位による点火機構の作動により固形消火剤に点火し、固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生させることができ、電気を必要としないため無停電電源を不要とし、また無停電電源を準備できない場所であっても使用することができ、適用対象の拡大を図ることができる。
【0014】
また本発明の感熱作動部は、固形消火剤の燃焼によりエアロゾルを噴射する筐体の設置位置から離れた火災検出する監視エリアに形状記憶バネまたは感熱ラッチされた圧縮バネを配置し、火災温度に達した時の記憶バネ形状への変位または圧縮バネの開放変位を筐体に伝達して固形消火剤に点火することができ、機械的な感熱作動部であっても、火災検出位置までの距離を必要に応じて変更することができ、設置対象とする機器や場所の監視エリアに応じた配置が容易にできる。
【0015】
また筐体に感熱作動部を連結すると共な筐体内に点火機構と固形消火剤を設けるだけで良いことから、構成が簡単で小型化と低コスト化ができ、特に、プリンタやコピーなどの発火の恐れのあるオフィス機器、家電製品、制御盤などに直接組み込み、万一、機器火災となっても適切に対応でき、適用機器の安全性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による発煙消火装置の実施形態を示した説明図
【図2】図1の実施形態の内部構造を示した断面図
【図3】図1の実施形態の動作を示した説明図
【図4】感熱作動部に単一の筒体を設けた本発明の他の実施形態を示した断面図
【図5】感熱作動部に3本の筒体を設けた本発明の他の実施形態を示した断面図
【図6】擦り薬側を回転移動して点火させる点火機構を備えた本発明の他の実施形態を示した断面図
【図7】図6の点火機構を取り出して示した説明図
【図8】感熱作動部に可撓性チューブを使用した本発明の他の実施形態を示した説明図
【図9】感熱作動部に圧縮バネをラッチした本発明の他の実施形態を示した説明図
【図10】感熱作動部に圧縮バネをラッチした本発明の他の実施形態を示した説明図
【図11】本実施形態の煙道部に配置する火炎噴出防止部材の具体例を示した説明図
【図12】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図13】図12の実施形態の動作を示した説明図
【図14】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図15】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図16】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図17】図16の2重バルーンを取り出して示した説明図
【図18】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図19】図18のバルーンを取り出して示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明による発煙消火装置の実施形態を示した説明図である。図1において、本実施形態の発煙消火装置10は筐体12と筐体12の前方に装着された感熱作動部16で構成されている。
【0018】
筐体12の内部には固形消火剤が収納されており、火災検出時の点火により燃焼して消火用のエアロゾルを噴出口14から発煙消火装置10を設置している監視エリアに噴出するようにしている。
【0019】
筐体12の前方に装着された感熱作動部16は、この実施形態にあっては先端筒体18と基部筒体22の2本の筒体を連接して構成されており、先端に手動起動レバー20が設けられている。
【0020】
先端筒体18及び基部筒体22の内部には、後の説明で明らかにするように、所定の火災温度、例えば72℃に達した時に反転して伸びる形状記憶バネが収納されており、形状記憶バネの火災検出時の反転動作によるバネ変位を機械的に筐体12側に伝えて、筐体12の内部に収納している点火機構を動作して固形消火剤に点火するようにしている。
【0021】
図2は図1の実施形態の内部構造を示した断面図である。筐体12の内部には消火剤収納部24が設けられ、消火剤収納部24に固形消火剤26を収納している。消火剤収納部24は筐体12の外形に対応した箱型形状をもち、収納した固形消火剤26の中央には通し穴が形成されている。
【0022】
本実施形態で使用する固形消火剤26は燃焼により消火用のエアロゾル、即ち2μm程度の超微粒子を発生し、これを外部に噴出して消火を行う。固形消火剤26の燃焼により発生するエアロゾルは例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの炭酸塩あるいはリン酸塩またはその混合物を含有しており、それ以外に二酸化炭素、水蒸気、窒素などを含んでいる。
【0023】
このエアロゾルは火災が発生した監視エリアに充満することで、火災発生場所における燃焼の火災中心を抑制消滅させることで消火を行う。またエアロゾルはその主成分が炭酸塩あるいはリン酸塩などであることから、毒性がなく環境に対し優しい性状を有する。
【0024】
固形消火剤26を収納した筐体12の内部には、背後からその周囲を通って前方の噴出口14に至る煙道45が形成されている。このように背後から前方に回りこむ煙道45の形成は、固形消火剤26と噴出口14との距離を離し、且つ炎の出る向きと噴出口が直線方向とならないよう煙道45を屈曲させた構成としたことで、固形消火剤26の燃焼による炎が外部に吹き出さないようにしている。
【0025】
また固形消火剤26による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、煙道部45の途中に金網などのエアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材64を配置する。
【0026】
筐体12の前方に設けられた感熱作動部16の先端筒体18の内部先端には形状記憶バネ28−1が設けられている。形状記憶バネ28−1は縮めた状態で組み込まれており、予め定めた火災温度例えば72℃に達すると記憶形状であるバネが伸びた状態に反転する。形状記憶バネ28−1に続いてはこの実施例では3個の樹脂ボール30が設けられている。尚、樹脂ボール30の代わりに金属ボールを使用してもよい。
【0027】
樹脂ボール30は先端筒体18の中を自由に転がることのできるサイズとなっている。樹脂ボール30に続いては隔壁34に対し摺動自在にステム32が設けられている。ステム32の前部と隔壁34の間にはバイアスバネ36−1が配置されている。
【0028】
また基部筒体22については先端側から隔壁34−1に摺動自在に設けたステム32−1、隔壁34−1の右側に組み込んだ形状記憶バネ28−2、形状記憶バネ28−2に続いて配置した3個の樹脂ボール30、隔壁34−2に摺動自在に設けたステム32−2、隔壁34−2とステム32−2の左側に組み込まれたバイアスバネ36−2を設けている。
【0029】
形状記憶バネ28−2は先端筒体18の形状記憶バネ28−1と同様、縮めた状態で組み込まれており、火災検出温度72℃に達すると記憶形状に伸びる反転動作を行う。
【0030】
基部筒体22の付け根部分に設けられたステム32−2の右側には擦り薬38が設けられ、端部には第1磁石42が取り付けられている。ステム32−2の端部は固形消火剤26に設けた通し穴に挿入自在に位置しており、この通し穴の入り口側の内周部に着火薬40を被着している。
【0031】
また筐体12の後端側から突出した支持部を固形消火剤26の通し穴の中に位置させ、その先端に第2磁石44をステム32−2の第1磁石42に相対して設けている。
【0032】
ステム32−2に設けた擦り薬38と固形消火剤26に設けた着火薬40は本実施形態における点火機構を構成しており、感熱作動部16に設けている形状記憶バネ28−1が火災による熱を受けて火災検出温度例えば72℃に達してバネ伸展状態に反転すると、形状記憶バネ28−1の反転によるバネ変位が樹脂ボール30を介して基部筒体22のステム32−2に伝達され、先端側に設けている擦り薬38が着火薬40を設けた通し穴に挿入するように移動し、着火薬40に対し擦り薬38を摩擦接触させることで、マッチをすると同様にして着火薬40を発火させ、固形消火剤26に点火するようにしている。
【0033】
第1磁石42と第2磁石44は形状記憶バネ28−1の火災温度に達した時の反転によるバネ変位に伴うステム32−2の動きを更に加速させるために設けている。これは火災による温度上昇が急激の場合には記憶形状バネ28−1の反転動作は短時間に急速に行われて問題ないが、火災による温度上昇の割合がゆるやかであった場合には形状記憶バネ28−1の反転動作が比較的ゆっくり行われる可能性がある。
【0034】
このような場合、形状記憶バネ28−1のゆっくりした動きに応じてステム32−2もゆっくり動き、擦り薬38の着火薬40に対する摩擦接触の動きが遅くなって着火できない恐れがある。
【0035】
そこで第1磁石42と第2磁石44を設けることで、ステム32−2が右方向に動き始めて磁石間の距離が縮まると磁力が増加し、磁気吸着によりステム32−2を急速に移動させ、擦り薬38の着火薬40に対する摩擦接触を急速に行わせて確実に着火できるようにしている。
【0036】
またステム32-2の左側の大径部端面には弁シール35が設けられており、感熱作動部16の形状記憶バネ28−1の反転でステム32−2を右側に移動して固形消火剤26に点火したときに、弁シール35を隔壁34−2の端面に押しあてた状態でシールし、固形消火剤26の燃焼で発生したエアロゾルの樹脂ボール30の組み込み側への噴出を阻止するために閉鎖する弁構造を備えている。
【0037】
先端筒体18及び基部筒体22に設けたバイアスバネ36−1,36−2は、樹脂ボール30の重みによるステム32−2の動きを阻止する。本実施形態の発煙消火装置10は、上向きあるいは斜め上向きに設置した時、樹脂ボール30の自重によりステム32−2が動いてしまうことから、この動きをバイアスバネ36−1,36−2で阻止する。
【0038】
本実施形態で使用するバイアスバネ36−1、36−2としては、形状記憶バネ28−1の反転によるバネ力に対し、数分の1程度の弱いバネ力のものを使用する。しかしながら、筐体12に設ける感熱作動部16を構成する筒体の連結数が増加すると、これに伴ってバイアスバネの数も増加し、バイアスバネが直列に配置されることで形状記憶バネのバネ力を上回ってしまう恐れがある。
【0039】
このような負数のバイアスバネの配置によるバネ力の増加を抑えるため、最終段となる基部筒体22のステム32−2に対してのみバイアスバネ36−2を設けるだけで、樹脂ボール30によるステム32−2の動きを阻止するようにしてもよい。
【0040】
また樹脂ボール30によるステム32−2の動きを制するためには、感熱作動部16に対し筐体12側を高くするように監視エリアに設置することで解消することもできる。
【0041】
図3は図1の実施形態の動作を示した説明図である。図3において、本実施形態の発煙消火装置10を設置した監視エリアで火災が発生し、火災による熱気流を感熱作動部16で受けると、先端筒体18及び基部筒体22に収納している形状記憶バネ28−1、28−2が火災検出温度である72℃への到達で反転して図示のように記憶形状に伸びる。
【0042】
形状記憶バネ28−1、28−2の反転により生じたバネ変位により樹脂ボール30が筐体12側に押されて移動し、筐体12側に配置しているステム32−2が急速に移動し、ステム32−2の先端側に設けている擦り薬38が固形消火剤26側に設けている着火薬40に急激に摩擦接触して発火し、マッチをすると同じ着火作用により固形消火剤26に点火して燃焼する。
【0043】
このときの形状記憶バネ28−1、28−2の反転によるステム32−2の移動で、ステム32の弁シール35が隔壁34−2に押し付けられ、樹脂ボール30側への通路を閉鎖した状態とする。
【0044】
固形消火剤26の燃焼で発生したエアロゾルは背後の煙道45を通って前方に開口した噴出口14から監視エリアに噴出され、短時間で監視エリアをエアロゾル100で充満して消火する。
【0045】
ここで本実施形態で使用する固形消火剤26は、監視エリア1立方メートルをエアロゾルにより消火するに必要な重量としては例えば80グラム〜200グラムの範囲内の量となる。
【0046】
また固形消火剤26を点火して燃焼することによりエアロゾル100を監視エリアに充満させる時間は20〜60秒程度の短時間となる。監視エリアに充満されたエアロゾル100は燃焼場所における燃焼の火災中心を消滅させる作用を果たすことで消火抑制を行う。
【0047】
一方、手動操作により発煙消火装置10を起動させたい場合には、先端筒体18から飛び出している手動起動レバー20を押し込み、樹脂ボール30を介して手動起動レバー20の動きを筐体12に伝えて固形消火剤26に点火し、燃焼によってエアロゾルを噴出させる。
【0048】
なお、形状記憶バネ28の感熱の感度を高めるために、形状記憶バネが配置される先端筒体18や基部筒体22の周囲に穴を開けて熱気流の流入特性を向上させるようにしても良い。
【0049】
図4は感熱作動部に単一の筒体を設けた本発明の他の実施形態を示した断面図である。図4において、この実施形態の発煙消火装置10は、筐体12の前方に先端筒体18のみを装着している。筐体12の内部には固形消火剤26が収納されている。
【0050】
先端筒体18は、図1の実施例と同様、筒体内部に先端側から形状記憶バネ28−1、3つの樹脂ボール30、隔壁34に摺動自在に設けたステム32、ステム32と隔壁34の間に配置されたバイアスバネ36更に隔壁34の通し穴を閉鎖する弁シール35を備えている。
【0051】
ステム32の筐体12側には擦り薬38が設けられ、これに対応して固形消火剤26の通し穴の入り口側内周には着火薬40が設けられ点火機構を構成している。またステム32の右側には第1磁石42が設けられ、これに相対して筐体12側に第2磁石44を設け、ステム32の移動を磁気的に付勢するようにしている。
【0052】
このように先端筒体18のみを筐体12に設けた場合には、先端筒体18は形状記憶バネ28−1及び樹脂ボール30、更に手動起動レバーについては図2の先端筒体18と同じ構造であるが、筐体12側のステム32については図2の基部筒体22の構造をそのまま備えている。図4に示す先端筒体18のみを備えた発煙消火装置10は、本実施形態における最小サイズということができる。
【0053】
図5は感熱作動部に3本の筒体を設けた本実施形態の他の実施形態を示した断面図である。図5の実施形態における発煙消火装置10は、筐体12の前方に基部筒体22、中間筒体46、更に先端筒体18を連結した感熱作動部16を設けている。
【0054】
先端筒体18及び基部筒体22、更に筐体12の構成は、図1の実施形態と同じであり、中間筒体46を新たに設けている。中間筒体46は先端側から隔壁34−11に摺動自在に設けたステム32−11、3つの樹脂ボール30、隔壁34−12に設けたステム32−12更にバイアスバネ36を設けており、前後に基部筒体22と先端筒体18を連結している。
【0055】
中間筒体46の数は必要に応じて任意の複数本を設けることができ、これによって筐体12に設ける感熱作動部16の長さを監視エリアの状態に合わせた長さを選択することができる。
【0056】
図6は擦り薬側を移動しながら回転して点火させる点火機構を備えた他の実施形態を示した断面図である。図6において、筐体12に装着された感熱作動部の基部筒体22には、ステム32−2が隔壁34−2に対し摺動自在に設けられ、バイアスバネ36−2で樹脂ボール30側に付勢されている。
【0057】
ステム32−2の右側外周には擦り薬38が設けられ、これに相対して筐体12に収納した固形消火剤26の通し穴口内周部に着火薬40を設けている。ステム32−2の筐体側の端部には第1磁石48が取り付けられ、これに相対して筐体12側に第2磁石50が取り付けられている。
【0058】
図7は図6の点火機構を取り出しており、ステム32−2の端部に取り付けた第1磁石48とこれに相対した筐体側の第2磁石50は、それぞれ相対するテーパー面48aとテーパー面50aを持っている。
【0059】
テーパー面48aを持つ第1磁石48は図示の磁極を持ち、筐体側に固定される第2磁石50のテーパー面50aには逆極性となる向きに磁極が配置されている。このため感熱作動部に設けている形状記憶バネの火災温度への到達で反転して樹脂ボール30を介してステム32−2が矢印で示すように軸方向に移動すると、第1磁石48が固定側の第2磁石50に接近し、このとき第1磁石48と第2磁石50におけるテーパー面48a、50aの磁極は同極性で相対しており、磁気的吸着のために逆極性で相対するように第1磁石48が回転する。
【0060】
この第1磁石48の回転に伴いステム32−2の先端外周に設けている擦り薬38も回転し、固形消火剤26の通し穴の内周に設けている着火薬40に対し、擦り薬38が軸方向に移動し且つ回転しながら摩擦接触し、確実に固形消火剤26を点火することができる。
【0061】
図8は感熱作動部に可撓性チューブを使用した他の実施形態を示した説明図である。図8において、この実施形態の発煙消火装置10は、筐体12の前方に設けた感熱作動部16として、筐体12の差込口52に可撓性チューブ54を嵌め入れている。
【0062】
可撓性チューブ54は先端側に感熱板56を装着し、続いて形状記憶バネ28を配置し、その後ろに筐体12側に至るまで複数の樹脂ボール30を摺動自在に組み込んでいる。筐体12の前方に形成した差込口52の内部には、隔壁34に対しステム32を摺動自在に設け、ステム32の右側外周には擦り薬38が設けられ、擦り薬38に対応して固形消火剤26の通し穴内周に着火薬40が設けられている。
【0063】
またステム35の右側端部には第1磁石42が設けられ、第1磁石42に相対して固定側となる筐体12に第2磁石44を設けている。
【0064】
またステム32の樹脂ボール30側にはバイアスバネ36が設けられ、可撓性チューブ54に設けた樹脂ボール30の重量を支えてステム32を動かないようにしており、更に弁シール35が設けられ、形状記憶バネ28が反転した際のステム32の動きで隔壁34の通し穴を閉鎖するようにしている。
【0065】
この図8の実施形態にあっては、筐体12に対し可撓性チューブ54を用いた感熱作動部16を装着することで、本実施形態の発煙消火装置を設置する監視エリアの火災検知を必要とする任意の位置に感熱作動部16の先端の感熱板56を自由に配置することができる。
【0066】
また感熱作動部16を構成する可撓性チューブ54の長さは、監視エリアにおける筐体12の設置位置とこれに対する火災検出位置との関係から必要に応じて適宜の長さのものを準備して使用することができる。
【0067】
この図8の実施形態の感熱板側に、図2の先端に設けた手動起動レバーを設けても良い。
【0068】
図9は感熱作動部に圧縮バネを配置した本発明の他の実施形態を示した説明図である。図9において、本実施形態の発煙消火装置10は筐体12の前方に基部筒体22を介して配置した先端筒体18に感熱バネ機構を備えた感熱作動部を配置している。
【0069】
先端筒体18の内部先端には低温ハンダ60により固定されたリテーナ58により圧縮バネ62が組み込まれている。この低温ハンダ60で固定したリテーナ58により圧縮バネ62をラッチ状態で保持した構造以外は、図1の実施形態における形状記憶バネ28−1、28−2を除いた構造となっている。
【0070】
図9の実施形態にあっては、監視エリアに設置した状態で火災による熱を受けて先端筒体18の低温ハンダ60が例えば火災検出温度72℃に達した時に溶融し、リテーナ58による圧縮バネ62のラッチが解除され、圧縮バネ62が伸びて、樹脂ボール30を筐体12側に押すバネ変位をおこす。
【0071】
このバネ変位は基部筒体22の樹脂ボール30を介してステム32−2に伝達され、擦り薬38を着火薬40に摩擦接触させることで着火し、固形消火剤26に点火して燃焼させることで噴出口14からエアロゾルを監視エリアに噴出して消火させる。
【0072】
この図9の実施形態にあっても、必要に応じて感熱作動部16を構成する筒体の数を変えることで、例えば図4と同じで先端筒体のみとした最小サイズ、あるいは図5に示した中間筒体46を設けて感熱作動部の長さを必要に応じて適宜の長さとすることができる。
【0073】
図10(A)は感熱作動部に圧縮バネを配置した本発明の他の実施形態を示した説明図であり、先頭筒体の部分を示している。図10において、本実施形態の発煙消火装置10は筐体12の前方に配置した先端筒体18の内部には後端を樹脂ボール30に当接し先端を外部に突出したプランジャ21が摺動自在に配置され、プランジャ21の外部に突出した先端に感熱板61を低温ハンダ60により固定し、これによって圧縮バネ62を圧縮状態に保持している。なお、筐体12側は図9と同じになる。
【0074】
図10(A)の実施形態にあっては、監視エリアに設置した状態で火災による熱を受けて先端筒体18の低温ハンダ60が例えば火災検出温度72℃に達した時に溶融し、プランジャ21の感熱板61に対する固定が図10(B)に示すように解除され、圧縮バネ62が伸びて、樹脂ボール30を筐体12側に押すバネ変位をおこす。
【0075】
このバネ変位は図9に示したと同じ基部筒体22の樹脂ボール30を介してステム32−2に伝達され、擦り薬38を着火薬40に摩擦接触させることで着火し、固形消火剤26に点火して燃焼させることで噴出口14からエアロゾルを監視エリアに噴出して消火させる。
【0076】
図11は上記の実施形態の煙道部45に配置する火炎噴出防止部材64の具体例を示した説明図である。図11(A)の火炎噴出防止部材64Aはガラスや磁器などの細径パイプ66を複数並べて炎の噴出しを抑制する。図11(B)の火炎噴出防止部材64Bは2枚の金網を分離配置して炎の噴出しを抑制する。図11(C)の火炎噴出防止部材64Aはガラスや磁器などのボール70を複数配置して炎の噴出しを抑制する。更に図11(D)の火炎噴出防止部材64Dは2枚の金網68の間にガラスや磁器などのボール70を複数配置して炎の噴出しを抑制する。
【0077】
本実施形態の発煙消火装置が使用される監視エリアとしては、制御盤や分電盤などの盤内、サーバマシン、化学実験用のドラフトチャンバ、エンジンルーム、コピー機、プリンタ、ケーブルダクト、モータ、バッテリユニット、ゴミ収集車、荷室などの閉鎖空間もしくは密閉空間などの様々な場所とすることができる。
【0078】
図12は本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した断面図であり、点火機構として化学的反応の発熱により着火させる機構を用いたことを特徴とする。
【0079】
図12において、感熱作動部16は図2の実施形態と同じであり、筐体12側に化学反応による点火機構を設けている。筐体12に収納された固形消火剤26の感熱作動部16側の表面には収納円筒穴72が形成され、その中に着火剤である酸化剤74と収納容器であるバルーン78に封入した易酸化性物質76を収納している。
【0080】
易酸化性物質76を封入したバルーン78は、プラスチックの薄膜シートやゴムで作られており、収納円筒穴72に押込むことで開口側を封鎖し、筐体12がどのような向きに設置されても、酸化剤74が収納円筒穴72から出ないようにしている。
【0081】
収納円筒穴72に押込まれたバルーン78の右側には感熱作動部16に設けたステム32−2の先端を尖らせたバルーン衝破用の破砕具80を位置させている。
【0082】
発煙消火装置10を設置している監視エリアで火災が発生して形状記憶バネ28−1,28−2が記憶形状に伸びると、樹脂ボール30を介してステム32−2が右側に移動し、先端の破砕具80によりバルーン78が衝破され、封入している易酸化性物質76を酸化剤74に接触させる。
【0083】
着火剤である酸化剤74に易酸化性物質76が接触すると発熱することによって固形消火剤26が着火され、図13に示すように、固形消火剤26が燃焼することにより煙道82,45を通って後方にエアロゾル100が噴出口14から監視エリアに噴出される。
【0084】
ここで、破砕具80でバルーン78を衝破した場合、収納円筒穴72の方向が図示の横向き、或いは下向きの場合、易酸化性物質76が外部に漏れ出して酸化剤74との接触が不足する可能性があることから、収納円筒穴72の開口部に薄膜樹脂シートなどのシールを貼り付けて封鎖し、シールを破砕具80で突き破ってバルーン78を衝破するようにし、バルーン78から出た易酸化性物質76を封じ込めて酸化剤74に確実に接触させようにする。
【0085】
図12の実施形態で着火剤として使用できる酸化剤74については、易酸化性物質76と反応し発熱する発熱性酸化剤であれば特に制限なく用いることができるが、固形消火剤26への着火性の面から過マンガン酸カリウムを用いることが好ましい。また、過マンガン酸カリウムは粉末状のものであることが好ましく、粒径が10〜150μmのものであることが好ましい。過マンガン酸カリウムの粒径が150μmより大きいものを使用すると、過マンガン酸カリウム粉末の比表面積が小さいため、易酸化性物質との反応が起こりにくくなり、着火性が損なわれる場合がある。
【0086】
また、図12の実施形態に用いる着火剤において、使用できる易酸化性物質76については液状の有機系易酸化性物質であり、高粘性のものを用いることが好ましい。
【0087】
本実施形態の着火剤は、固形消火剤への迅速な着火を目的の一つとしており、着火剤は、固形消火剤の表面に滞留することができ、固形消火剤の表面にて酸化剤と接触することにより固形消火剤を局所的に発熱し、迅速にエアロゾル消火剤が放出されるよう固形消火剤に着火燃焼できることが必要である。従って、例えばエチレングリコールなどの低粘性の易酸化性物質を用いた場合、固形消火剤の表面に留まらずに内部に滲入してしまい、迅速及び確実な着火が行えない可能性がある。
【0088】
易酸化性物質が固形消火剤の内部に滲入することを抑制するため、固形消火剤に別途バインダー等を加え成型することで浸透性を抑制することも考えられるが、そのような手段は消火剤組成物中の単位体積当たりの消火剤物質を低減することになり、消火効果の低い消火剤を与えることになる。また、消火剤組成物中にバインダー等を混合することは着火性を低下させることにもつながり好ましくない。
【0089】
本実施形態に用いることができる高粘性の易酸化性物質として、より具体的には25℃における粘性率が5〜20Pa・sの範囲である液状易酸化性物質を用いることが好ましい。粘性率が5Pa・sに満たないものを用いた場合、流動性が高いため固形消火剤の内部に滲入しやすく、固形消火剤の表面にて酸化剤と接触できず、着火が困難になる場合がある。また、20Pa・sを超えるものを用いた場合は、その粘度が高すぎるため封入された容器から速やかに易酸化性物質が漏出せず、酸化剤と混合できずに不着火になる場合がある。
【0090】
上記理由および酸化剤との良好な発熱反応性の面から、本実施形態に用いることができる易酸化性物質として最も好ましいものは、グリセリンである。
【0091】
図14は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図14において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72の底部に酸化剤74を収納し、続いてバルーン78に封入した易酸化性物質76を収納し、その外側に、内側に破砕爪86を突出したプランジャ84を摺動自在に配置している。プランジャ84に対しては、感熱作動部16に設けたステム32−2の先端に形成した押圧部88を位置させている。
【0092】
発煙消火装置10を設置している監視エリアで火災が発生して形状記憶バネ28−1,28−2が記憶形状に伸びると、樹脂ボール30を介してステム32−2が右側に移動し、先端の押圧部88によってプランジャ84が押し込まれ、破砕爪86によってバルーン78が衝破され、封入している易酸化性物質76を酸化剤74に接触させる。
【0093】
着火剤である酸化剤74及び易酸化性物質76が固形消火剤26の表面上にて接触して発熱することによって固形消火剤26に着火され、固形消火剤26が燃焼することによりエアロゾルが放出される。
【0094】
図15は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図15において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72の底部には酸化剤74が収納され、続いて易酸化性物質76を充填したインジェクタ90を配置している。インジェクタ90は、先端に注入穴96を備えたシリンダ92にピストン94を摺動自在に設け、シリンダ92内に易酸化性物質76を充填している。
【0095】
またシリンダ92の外側にはストッパフランジ98が形成され、収納円筒穴72にインジェクタ90をセットする際の位置決めを行っている。インジェクタ90のピストン94に対しては感熱作動部16に設けたステム32−2の先端に形成した押圧部88を位置させている。
【0096】
インジェクタ90の注入穴96は易酸化性物質76を充填した状態で開放したままとしていても漏れ出すことはないが、必要に応じて、注入穴96の開口部にビニールシートなどによる蓋を付けておいても良い。
【0097】
発煙消火装置10を設置している監視エリアで火災が発生して形状記憶バネ28−1,28−2が記憶形状に伸びると、樹脂ボール30を介してステム32−2が右側に移動し、先端の押圧部88によってインジェクタ90のピストン94が押し込まれ、注入穴96から易酸化性物質76を押し出して酸化剤74に接触させる。
【0098】
着火剤である酸化剤74及び易酸化性物質76が固体消火剤26の表面上にて接触し発熱することによって固形消火剤26に着火され、固形消火剤26が燃焼することによりエアロゾルが放出される。
【0099】
図16は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図16において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72には2重バルーン102が配置される。
【0100】
2重バルーン102は、図17に取出して示すように、薄膜樹脂シートを使用して蓋104、上容器106、仕切り108及び下容器110を一体化しており、上容器106に易酸化性物質76を封入し、下容器110に酸化剤74を封入している。
【0101】
再び図16を参照するに、収納円筒穴72に配置された2重バルーン102に対しては、感熱作動部に設けたステム32−2の先端に形成した破砕具80を位置させている。
本実施例において、先端を尖らせた破砕具80は、その周囲に逃げ溝80aを複数個所に形成しており、感熱作動部の動作で破砕具80を2重バルーン102に差し込んで破砕したとき、易酸化性物質76が逃げ溝80aを通って流れ出して酸化剤74に効率良く接触できるようにしている。
【0102】
図18は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図18において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72にはバルーン112が配置され、その奥に酸化剤74を配置している。
【0103】
バルーン112は、図19に取出して示すように、薄膜樹脂シートを使用して蓋114と容器116を一体化しており、内部に易酸化性物質76を封入している。
【0104】
再び図18を参照するに、収納円筒穴72に配置されたバルーン112に対しては、感熱作動部に設けたステム32−2の先端に形成した破砕具80を位置させている。
本実施例においても、先端を尖らせた破砕具80は、その周囲に逃げ溝80aを複数個所に形成しており、感熱作動部の動作で破砕具80をバルーン112に差し込んで破砕したとき、易酸化性物質76が逃げ溝80aを通って流れ出して酸化剤74に効率良く接触できるようにしている。
【0105】
なお、破砕具80でバルーン112を破砕して酸化剤と易酸化性物質が接触できる構成であれば、易酸化性物質と酸化剤の配置は逆にしても、横に並べて配置しても良い。
【0106】
尚、上記の形状記憶バネを設けた実施形態にあっては、先端筒体、中間筒体、基部筒体の各々に形状記憶バネを設けているが、少なくとも先端筒体に設け、他の筒体には設けないようにしても良い。
【0107】
また、上記の実施形態にあっては、筐体を構成する本体12及びカバー14を金属製としているが、筐体外部や内部に断熱材を装着すれば必ずしも金属製である必要はない。
【0108】
また、上記の実施形態の点火機構は、擦り薬側を移動し、着火薬側を固定しているが、逆に着火薬側を移動し、擦り薬側を固定するようにしても良い。
【0109】
また本実施形態は、対象とする機器や盤などの監視エリアに適合したサイズをもつものであるが、必要な量の消火薬剤を収納可能な筐体サイズを確保しながら、可能な限り小型化することが望ましい。
【0110】
また、上記の実施形態における筐体12側に、発煙消火装置10の動作を検知して移報信号を外部に出力するリミットスイッチなどの移報スイッチを設けるようにしても良い。例えば図2の実施形態にあっては、筐体12側にリミットスイッチを配置し、基部筒体22側に設けているステム32−2の火災検出時の移動でリミットスイッチをオンして移報信号を出力させれば良い。
【0111】
発煙消火装置10からの移報信号は、発煙消火装置10を組み込んでいる監視エリアに対応して適宜の表示や制御を可能とする。本実施形態の発煙防止装置10をオフィス機器として使用されている例えばコピー機に組み込んでいた場合には、移報信号によりコピー機の音響出力部や表示部を利用してコピー機内での火災発生と消火動作を警報し、同時に、火災の原因となったヒータなどに対するメインの電源を自動的に遮断するといった制御を行う。
【0112】
また、上記の実施形態にあっては、手動起動を先端円筒体の先端に設けている手動起動レバー20で行っているが、これに限らず筒体の途中や筐体側に備えても良い。例えば筐体12に設けた第2磁石44を第1磁石42側へ近づけるように筐体背後に手動起動部を設けた構成としても良い。
【0113】
また先端筒体18に手動起動レバー20と形状記憶バネ28を同一筒内に配置しているが、これに限らず、手動起動レバー20を独立させて先端筒体18のさらに先端に手動起動レバー用の筒体を必要に応じて取り付けるようにしても良い。
【0114】
また、ステム32−2、隔壁34−2、擦り薬38及び第1磁石42は基部円筒体22に設けるのではなく、筐体12側に設置しても良い。
【0115】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態における数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0116】
10:発煙消火装置
12:筐体
14:噴出口
16:感熱作動部
18:先端筒体
20:手動起動レバー
22:基部筒体
24:消火剤収納部
26:固形消火剤
28,28−1,28−2,28−3:形状記憶バネ
30:樹脂ボール
32,32−1,32−2,32−12:ステム
34,34−1,34−2,3411,34−12:隔壁
35:弁シール
36,36−1,36−2:バイアスバネ
38:擦り薬
40:着火薬
42,48:第1磁石
44,50:第2磁石
45,82:煙道
46:中間筒体
48a,50a:テーパー面
52:差込口
54:可撓性チューブ
56:感熱板
58:リテーナ
60:低温ハンダ
62:圧縮バネ
64A,64A〜64D:火炎噴出防止部材
72:収納円筒穴
74:酸化剤
76:易酸化性物質
78,112:バルーン
80:破砕具
80a:逃げ溝
84:プランジャ
86:破砕爪
88:押圧部
90:インジェクタ
92:シリンダ
94:ピストン
96:注入穴
98:ストッパフランジ
102:2重バルーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生して火災を消火抑制する発煙消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルダクト、制御盤、機器筐体内などの閉鎖された密閉空間で発生した火災を消火抑制するため、固形消火剤に点火して燃焼させることで消火用エアロゾルを発生する発煙消火装置が知られている。
【0003】
このような発煙消火装置にあっては、感知器により火災を検知した際に、発煙消火器の点火装置に電気信号を送り、固形消火剤に点火して燃焼させるようにしている。固形消火剤の燃焼により発生するエアロゾルは例えば塩化カリウムや臭化カリウムなどを主成分とし、それ以外に水、二酸化炭素及び窒素を含み、燃焼反応の抑制により消火抑制を果たすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−503853号公報
【特許文献2】特開平6−269513号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0235200号明細書
【特許文献4】特開2000−167080号公報
【特許文献5】特開平8−61307号公報
【特許文献6】特表2007−512913号公報
【特許文献7】国際公開第2007/016705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の発煙消火装置にあっては、固形消火剤の点火燃焼による起動は全て電気信号により行っているが、火災時にあっては、通常、火災発生場所の電源を切るようにしており、そのため、発煙消火装置に専用の無停電電源を準備する必要があり、コストが高くなるという問題がある。また無停電電源が準備できないような場所については使用することができず、使用条件が制約されるという問題もある。
【0006】
本発明は、電気的な火災検知と点火を必要とすることなく火災時に電源を確保できない場所であっても使用可能とするコスト的にも安価な発煙消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は発煙消火装置であって、
消火用エアロゾルを噴出する噴出口を備えた筐体と、
筐体に収納され、燃焼により消火用エアロゾルを発生する固形消火剤と、
固形消火剤に点火して燃焼させる点火機構と、
筐体から火災検出位置までの距離に応じた長さを有し、火災検出位置に配置した形状記憶バネが所定温度に達した時の記憶形状への変位を筐体側に伝達して点火機構を作動させる感熱作動部と、
を備え、
点火機構は、少なくとも酸化剤と易酸化性物質とを分離配置した着火剤を具備し、感熱作動部が作動した際の機械的な動作により酸化剤と易酸化性物質とを固形消火剤の表面にて接触させ、この接触による発熱で固形消火剤に着火するように構成される。
【0008】
ここで、易酸化性物質が、高粘性の液状易酸化性物質であり、より望ましくは、グリセリンである。
【0009】
また、点火機構は、易酸化性物質を封入した容器を具備し、固形消火剤に形成した収納穴の奥に酸化剤を配置すると共に穴開口側に容器を配置して閉鎖し、感熱作動部が作動した際に破砕具により容器を破砕して易酸化性物質を酸化剤に接触させる。
【0010】
また、点火機構は、易酸化性物質を封入した容器を具備し、消火剤組成物に形成した収納穴の最深部に酸化剤を配置し、続いて容器を配置し、穴開口側に破砕具を備えたプランジャを配置し、感熱作動部が作動した際に、前プランジャを押込んで破砕具により容器を破砕して易酸化性物質を酸化剤に接触させる。
【0011】
また、点火機構は、ピストンの移動により吐出される易酸化性物質をシリンダに充填したインジェクタを具備し、消火剤組成物に形成した収納穴の奥に酸化剤を配置した状態で穴開口にインジェクタを配置して閉鎖し、感熱作動部が作動した際に、インジェクタのピストンの押込みにより易酸化性物質を吐出して酸化剤に接触させる。
【0012】
更に、点火機構は、酸化剤と易酸化性物質を個別に封入した容器を具備し、消火剤組成物に形成した収納穴に容器を配置し、感熱作動部が作動した際に破砕具により容器を破砕して易酸化性物質と酸化剤に接触させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火災検出温度に達したときの形状記憶バネの記憶形状への変位または感熱ラッチされた圧縮バネの開放変位による点火機構の作動により固形消火剤に点火し、固形消火剤の燃焼により消火用エアロゾルを発生させることができ、電気を必要としないため無停電電源を不要とし、また無停電電源を準備できない場所であっても使用することができ、適用対象の拡大を図ることができる。
【0014】
また本発明の感熱作動部は、固形消火剤の燃焼によりエアロゾルを噴射する筐体の設置位置から離れた火災検出する監視エリアに形状記憶バネまたは感熱ラッチされた圧縮バネを配置し、火災温度に達した時の記憶バネ形状への変位または圧縮バネの開放変位を筐体に伝達して固形消火剤に点火することができ、機械的な感熱作動部であっても、火災検出位置までの距離を必要に応じて変更することができ、設置対象とする機器や場所の監視エリアに応じた配置が容易にできる。
【0015】
また筐体に感熱作動部を連結すると共な筐体内に点火機構と固形消火剤を設けるだけで良いことから、構成が簡単で小型化と低コスト化ができ、特に、プリンタやコピーなどの発火の恐れのあるオフィス機器、家電製品、制御盤などに直接組み込み、万一、機器火災となっても適切に対応でき、適用機器の安全性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による発煙消火装置の実施形態を示した説明図
【図2】図1の実施形態の内部構造を示した断面図
【図3】図1の実施形態の動作を示した説明図
【図4】感熱作動部に単一の筒体を設けた本発明の他の実施形態を示した断面図
【図5】感熱作動部に3本の筒体を設けた本発明の他の実施形態を示した断面図
【図6】擦り薬側を回転移動して点火させる点火機構を備えた本発明の他の実施形態を示した断面図
【図7】図6の点火機構を取り出して示した説明図
【図8】感熱作動部に可撓性チューブを使用した本発明の他の実施形態を示した説明図
【図9】感熱作動部に圧縮バネをラッチした本発明の他の実施形態を示した説明図
【図10】感熱作動部に圧縮バネをラッチした本発明の他の実施形態を示した説明図
【図11】本実施形態の煙道部に配置する火炎噴出防止部材の具体例を示した説明図
【図12】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図13】図12の実施形態の動作を示した説明図
【図14】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図15】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図16】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図17】図16の2重バルーンを取り出して示した説明図
【図18】化学反応により点火する本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した説明図
【図19】図18のバルーンを取り出して示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明による発煙消火装置の実施形態を示した説明図である。図1において、本実施形態の発煙消火装置10は筐体12と筐体12の前方に装着された感熱作動部16で構成されている。
【0018】
筐体12の内部には固形消火剤が収納されており、火災検出時の点火により燃焼して消火用のエアロゾルを噴出口14から発煙消火装置10を設置している監視エリアに噴出するようにしている。
【0019】
筐体12の前方に装着された感熱作動部16は、この実施形態にあっては先端筒体18と基部筒体22の2本の筒体を連接して構成されており、先端に手動起動レバー20が設けられている。
【0020】
先端筒体18及び基部筒体22の内部には、後の説明で明らかにするように、所定の火災温度、例えば72℃に達した時に反転して伸びる形状記憶バネが収納されており、形状記憶バネの火災検出時の反転動作によるバネ変位を機械的に筐体12側に伝えて、筐体12の内部に収納している点火機構を動作して固形消火剤に点火するようにしている。
【0021】
図2は図1の実施形態の内部構造を示した断面図である。筐体12の内部には消火剤収納部24が設けられ、消火剤収納部24に固形消火剤26を収納している。消火剤収納部24は筐体12の外形に対応した箱型形状をもち、収納した固形消火剤26の中央には通し穴が形成されている。
【0022】
本実施形態で使用する固形消火剤26は燃焼により消火用のエアロゾル、即ち2μm程度の超微粒子を発生し、これを外部に噴出して消火を行う。固形消火剤26の燃焼により発生するエアロゾルは例えば塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの炭酸塩あるいはリン酸塩またはその混合物を含有しており、それ以外に二酸化炭素、水蒸気、窒素などを含んでいる。
【0023】
このエアロゾルは火災が発生した監視エリアに充満することで、火災発生場所における燃焼の火災中心を抑制消滅させることで消火を行う。またエアロゾルはその主成分が炭酸塩あるいはリン酸塩などであることから、毒性がなく環境に対し優しい性状を有する。
【0024】
固形消火剤26を収納した筐体12の内部には、背後からその周囲を通って前方の噴出口14に至る煙道45が形成されている。このように背後から前方に回りこむ煙道45の形成は、固形消火剤26と噴出口14との距離を離し、且つ炎の出る向きと噴出口が直線方向とならないよう煙道45を屈曲させた構成としたことで、固形消火剤26の燃焼による炎が外部に吹き出さないようにしている。
【0025】
また固形消火剤26による炎の噴出を更に効果的に防止するためには、煙道部45の途中に金網などのエアロゾルだけを通過するような火炎噴出防止部材64を配置する。
【0026】
筐体12の前方に設けられた感熱作動部16の先端筒体18の内部先端には形状記憶バネ28−1が設けられている。形状記憶バネ28−1は縮めた状態で組み込まれており、予め定めた火災温度例えば72℃に達すると記憶形状であるバネが伸びた状態に反転する。形状記憶バネ28−1に続いてはこの実施例では3個の樹脂ボール30が設けられている。尚、樹脂ボール30の代わりに金属ボールを使用してもよい。
【0027】
樹脂ボール30は先端筒体18の中を自由に転がることのできるサイズとなっている。樹脂ボール30に続いては隔壁34に対し摺動自在にステム32が設けられている。ステム32の前部と隔壁34の間にはバイアスバネ36−1が配置されている。
【0028】
また基部筒体22については先端側から隔壁34−1に摺動自在に設けたステム32−1、隔壁34−1の右側に組み込んだ形状記憶バネ28−2、形状記憶バネ28−2に続いて配置した3個の樹脂ボール30、隔壁34−2に摺動自在に設けたステム32−2、隔壁34−2とステム32−2の左側に組み込まれたバイアスバネ36−2を設けている。
【0029】
形状記憶バネ28−2は先端筒体18の形状記憶バネ28−1と同様、縮めた状態で組み込まれており、火災検出温度72℃に達すると記憶形状に伸びる反転動作を行う。
【0030】
基部筒体22の付け根部分に設けられたステム32−2の右側には擦り薬38が設けられ、端部には第1磁石42が取り付けられている。ステム32−2の端部は固形消火剤26に設けた通し穴に挿入自在に位置しており、この通し穴の入り口側の内周部に着火薬40を被着している。
【0031】
また筐体12の後端側から突出した支持部を固形消火剤26の通し穴の中に位置させ、その先端に第2磁石44をステム32−2の第1磁石42に相対して設けている。
【0032】
ステム32−2に設けた擦り薬38と固形消火剤26に設けた着火薬40は本実施形態における点火機構を構成しており、感熱作動部16に設けている形状記憶バネ28−1が火災による熱を受けて火災検出温度例えば72℃に達してバネ伸展状態に反転すると、形状記憶バネ28−1の反転によるバネ変位が樹脂ボール30を介して基部筒体22のステム32−2に伝達され、先端側に設けている擦り薬38が着火薬40を設けた通し穴に挿入するように移動し、着火薬40に対し擦り薬38を摩擦接触させることで、マッチをすると同様にして着火薬40を発火させ、固形消火剤26に点火するようにしている。
【0033】
第1磁石42と第2磁石44は形状記憶バネ28−1の火災温度に達した時の反転によるバネ変位に伴うステム32−2の動きを更に加速させるために設けている。これは火災による温度上昇が急激の場合には記憶形状バネ28−1の反転動作は短時間に急速に行われて問題ないが、火災による温度上昇の割合がゆるやかであった場合には形状記憶バネ28−1の反転動作が比較的ゆっくり行われる可能性がある。
【0034】
このような場合、形状記憶バネ28−1のゆっくりした動きに応じてステム32−2もゆっくり動き、擦り薬38の着火薬40に対する摩擦接触の動きが遅くなって着火できない恐れがある。
【0035】
そこで第1磁石42と第2磁石44を設けることで、ステム32−2が右方向に動き始めて磁石間の距離が縮まると磁力が増加し、磁気吸着によりステム32−2を急速に移動させ、擦り薬38の着火薬40に対する摩擦接触を急速に行わせて確実に着火できるようにしている。
【0036】
またステム32-2の左側の大径部端面には弁シール35が設けられており、感熱作動部16の形状記憶バネ28−1の反転でステム32−2を右側に移動して固形消火剤26に点火したときに、弁シール35を隔壁34−2の端面に押しあてた状態でシールし、固形消火剤26の燃焼で発生したエアロゾルの樹脂ボール30の組み込み側への噴出を阻止するために閉鎖する弁構造を備えている。
【0037】
先端筒体18及び基部筒体22に設けたバイアスバネ36−1,36−2は、樹脂ボール30の重みによるステム32−2の動きを阻止する。本実施形態の発煙消火装置10は、上向きあるいは斜め上向きに設置した時、樹脂ボール30の自重によりステム32−2が動いてしまうことから、この動きをバイアスバネ36−1,36−2で阻止する。
【0038】
本実施形態で使用するバイアスバネ36−1、36−2としては、形状記憶バネ28−1の反転によるバネ力に対し、数分の1程度の弱いバネ力のものを使用する。しかしながら、筐体12に設ける感熱作動部16を構成する筒体の連結数が増加すると、これに伴ってバイアスバネの数も増加し、バイアスバネが直列に配置されることで形状記憶バネのバネ力を上回ってしまう恐れがある。
【0039】
このような負数のバイアスバネの配置によるバネ力の増加を抑えるため、最終段となる基部筒体22のステム32−2に対してのみバイアスバネ36−2を設けるだけで、樹脂ボール30によるステム32−2の動きを阻止するようにしてもよい。
【0040】
また樹脂ボール30によるステム32−2の動きを制するためには、感熱作動部16に対し筐体12側を高くするように監視エリアに設置することで解消することもできる。
【0041】
図3は図1の実施形態の動作を示した説明図である。図3において、本実施形態の発煙消火装置10を設置した監視エリアで火災が発生し、火災による熱気流を感熱作動部16で受けると、先端筒体18及び基部筒体22に収納している形状記憶バネ28−1、28−2が火災検出温度である72℃への到達で反転して図示のように記憶形状に伸びる。
【0042】
形状記憶バネ28−1、28−2の反転により生じたバネ変位により樹脂ボール30が筐体12側に押されて移動し、筐体12側に配置しているステム32−2が急速に移動し、ステム32−2の先端側に設けている擦り薬38が固形消火剤26側に設けている着火薬40に急激に摩擦接触して発火し、マッチをすると同じ着火作用により固形消火剤26に点火して燃焼する。
【0043】
このときの形状記憶バネ28−1、28−2の反転によるステム32−2の移動で、ステム32の弁シール35が隔壁34−2に押し付けられ、樹脂ボール30側への通路を閉鎖した状態とする。
【0044】
固形消火剤26の燃焼で発生したエアロゾルは背後の煙道45を通って前方に開口した噴出口14から監視エリアに噴出され、短時間で監視エリアをエアロゾル100で充満して消火する。
【0045】
ここで本実施形態で使用する固形消火剤26は、監視エリア1立方メートルをエアロゾルにより消火するに必要な重量としては例えば80グラム〜200グラムの範囲内の量となる。
【0046】
また固形消火剤26を点火して燃焼することによりエアロゾル100を監視エリアに充満させる時間は20〜60秒程度の短時間となる。監視エリアに充満されたエアロゾル100は燃焼場所における燃焼の火災中心を消滅させる作用を果たすことで消火抑制を行う。
【0047】
一方、手動操作により発煙消火装置10を起動させたい場合には、先端筒体18から飛び出している手動起動レバー20を押し込み、樹脂ボール30を介して手動起動レバー20の動きを筐体12に伝えて固形消火剤26に点火し、燃焼によってエアロゾルを噴出させる。
【0048】
なお、形状記憶バネ28の感熱の感度を高めるために、形状記憶バネが配置される先端筒体18や基部筒体22の周囲に穴を開けて熱気流の流入特性を向上させるようにしても良い。
【0049】
図4は感熱作動部に単一の筒体を設けた本発明の他の実施形態を示した断面図である。図4において、この実施形態の発煙消火装置10は、筐体12の前方に先端筒体18のみを装着している。筐体12の内部には固形消火剤26が収納されている。
【0050】
先端筒体18は、図1の実施例と同様、筒体内部に先端側から形状記憶バネ28−1、3つの樹脂ボール30、隔壁34に摺動自在に設けたステム32、ステム32と隔壁34の間に配置されたバイアスバネ36更に隔壁34の通し穴を閉鎖する弁シール35を備えている。
【0051】
ステム32の筐体12側には擦り薬38が設けられ、これに対応して固形消火剤26の通し穴の入り口側内周には着火薬40が設けられ点火機構を構成している。またステム32の右側には第1磁石42が設けられ、これに相対して筐体12側に第2磁石44を設け、ステム32の移動を磁気的に付勢するようにしている。
【0052】
このように先端筒体18のみを筐体12に設けた場合には、先端筒体18は形状記憶バネ28−1及び樹脂ボール30、更に手動起動レバーについては図2の先端筒体18と同じ構造であるが、筐体12側のステム32については図2の基部筒体22の構造をそのまま備えている。図4に示す先端筒体18のみを備えた発煙消火装置10は、本実施形態における最小サイズということができる。
【0053】
図5は感熱作動部に3本の筒体を設けた本実施形態の他の実施形態を示した断面図である。図5の実施形態における発煙消火装置10は、筐体12の前方に基部筒体22、中間筒体46、更に先端筒体18を連結した感熱作動部16を設けている。
【0054】
先端筒体18及び基部筒体22、更に筐体12の構成は、図1の実施形態と同じであり、中間筒体46を新たに設けている。中間筒体46は先端側から隔壁34−11に摺動自在に設けたステム32−11、3つの樹脂ボール30、隔壁34−12に設けたステム32−12更にバイアスバネ36を設けており、前後に基部筒体22と先端筒体18を連結している。
【0055】
中間筒体46の数は必要に応じて任意の複数本を設けることができ、これによって筐体12に設ける感熱作動部16の長さを監視エリアの状態に合わせた長さを選択することができる。
【0056】
図6は擦り薬側を移動しながら回転して点火させる点火機構を備えた他の実施形態を示した断面図である。図6において、筐体12に装着された感熱作動部の基部筒体22には、ステム32−2が隔壁34−2に対し摺動自在に設けられ、バイアスバネ36−2で樹脂ボール30側に付勢されている。
【0057】
ステム32−2の右側外周には擦り薬38が設けられ、これに相対して筐体12に収納した固形消火剤26の通し穴口内周部に着火薬40を設けている。ステム32−2の筐体側の端部には第1磁石48が取り付けられ、これに相対して筐体12側に第2磁石50が取り付けられている。
【0058】
図7は図6の点火機構を取り出しており、ステム32−2の端部に取り付けた第1磁石48とこれに相対した筐体側の第2磁石50は、それぞれ相対するテーパー面48aとテーパー面50aを持っている。
【0059】
テーパー面48aを持つ第1磁石48は図示の磁極を持ち、筐体側に固定される第2磁石50のテーパー面50aには逆極性となる向きに磁極が配置されている。このため感熱作動部に設けている形状記憶バネの火災温度への到達で反転して樹脂ボール30を介してステム32−2が矢印で示すように軸方向に移動すると、第1磁石48が固定側の第2磁石50に接近し、このとき第1磁石48と第2磁石50におけるテーパー面48a、50aの磁極は同極性で相対しており、磁気的吸着のために逆極性で相対するように第1磁石48が回転する。
【0060】
この第1磁石48の回転に伴いステム32−2の先端外周に設けている擦り薬38も回転し、固形消火剤26の通し穴の内周に設けている着火薬40に対し、擦り薬38が軸方向に移動し且つ回転しながら摩擦接触し、確実に固形消火剤26を点火することができる。
【0061】
図8は感熱作動部に可撓性チューブを使用した他の実施形態を示した説明図である。図8において、この実施形態の発煙消火装置10は、筐体12の前方に設けた感熱作動部16として、筐体12の差込口52に可撓性チューブ54を嵌め入れている。
【0062】
可撓性チューブ54は先端側に感熱板56を装着し、続いて形状記憶バネ28を配置し、その後ろに筐体12側に至るまで複数の樹脂ボール30を摺動自在に組み込んでいる。筐体12の前方に形成した差込口52の内部には、隔壁34に対しステム32を摺動自在に設け、ステム32の右側外周には擦り薬38が設けられ、擦り薬38に対応して固形消火剤26の通し穴内周に着火薬40が設けられている。
【0063】
またステム35の右側端部には第1磁石42が設けられ、第1磁石42に相対して固定側となる筐体12に第2磁石44を設けている。
【0064】
またステム32の樹脂ボール30側にはバイアスバネ36が設けられ、可撓性チューブ54に設けた樹脂ボール30の重量を支えてステム32を動かないようにしており、更に弁シール35が設けられ、形状記憶バネ28が反転した際のステム32の動きで隔壁34の通し穴を閉鎖するようにしている。
【0065】
この図8の実施形態にあっては、筐体12に対し可撓性チューブ54を用いた感熱作動部16を装着することで、本実施形態の発煙消火装置を設置する監視エリアの火災検知を必要とする任意の位置に感熱作動部16の先端の感熱板56を自由に配置することができる。
【0066】
また感熱作動部16を構成する可撓性チューブ54の長さは、監視エリアにおける筐体12の設置位置とこれに対する火災検出位置との関係から必要に応じて適宜の長さのものを準備して使用することができる。
【0067】
この図8の実施形態の感熱板側に、図2の先端に設けた手動起動レバーを設けても良い。
【0068】
図9は感熱作動部に圧縮バネを配置した本発明の他の実施形態を示した説明図である。図9において、本実施形態の発煙消火装置10は筐体12の前方に基部筒体22を介して配置した先端筒体18に感熱バネ機構を備えた感熱作動部を配置している。
【0069】
先端筒体18の内部先端には低温ハンダ60により固定されたリテーナ58により圧縮バネ62が組み込まれている。この低温ハンダ60で固定したリテーナ58により圧縮バネ62をラッチ状態で保持した構造以外は、図1の実施形態における形状記憶バネ28−1、28−2を除いた構造となっている。
【0070】
図9の実施形態にあっては、監視エリアに設置した状態で火災による熱を受けて先端筒体18の低温ハンダ60が例えば火災検出温度72℃に達した時に溶融し、リテーナ58による圧縮バネ62のラッチが解除され、圧縮バネ62が伸びて、樹脂ボール30を筐体12側に押すバネ変位をおこす。
【0071】
このバネ変位は基部筒体22の樹脂ボール30を介してステム32−2に伝達され、擦り薬38を着火薬40に摩擦接触させることで着火し、固形消火剤26に点火して燃焼させることで噴出口14からエアロゾルを監視エリアに噴出して消火させる。
【0072】
この図9の実施形態にあっても、必要に応じて感熱作動部16を構成する筒体の数を変えることで、例えば図4と同じで先端筒体のみとした最小サイズ、あるいは図5に示した中間筒体46を設けて感熱作動部の長さを必要に応じて適宜の長さとすることができる。
【0073】
図10(A)は感熱作動部に圧縮バネを配置した本発明の他の実施形態を示した説明図であり、先頭筒体の部分を示している。図10において、本実施形態の発煙消火装置10は筐体12の前方に配置した先端筒体18の内部には後端を樹脂ボール30に当接し先端を外部に突出したプランジャ21が摺動自在に配置され、プランジャ21の外部に突出した先端に感熱板61を低温ハンダ60により固定し、これによって圧縮バネ62を圧縮状態に保持している。なお、筐体12側は図9と同じになる。
【0074】
図10(A)の実施形態にあっては、監視エリアに設置した状態で火災による熱を受けて先端筒体18の低温ハンダ60が例えば火災検出温度72℃に達した時に溶融し、プランジャ21の感熱板61に対する固定が図10(B)に示すように解除され、圧縮バネ62が伸びて、樹脂ボール30を筐体12側に押すバネ変位をおこす。
【0075】
このバネ変位は図9に示したと同じ基部筒体22の樹脂ボール30を介してステム32−2に伝達され、擦り薬38を着火薬40に摩擦接触させることで着火し、固形消火剤26に点火して燃焼させることで噴出口14からエアロゾルを監視エリアに噴出して消火させる。
【0076】
図11は上記の実施形態の煙道部45に配置する火炎噴出防止部材64の具体例を示した説明図である。図11(A)の火炎噴出防止部材64Aはガラスや磁器などの細径パイプ66を複数並べて炎の噴出しを抑制する。図11(B)の火炎噴出防止部材64Bは2枚の金網を分離配置して炎の噴出しを抑制する。図11(C)の火炎噴出防止部材64Aはガラスや磁器などのボール70を複数配置して炎の噴出しを抑制する。更に図11(D)の火炎噴出防止部材64Dは2枚の金網68の間にガラスや磁器などのボール70を複数配置して炎の噴出しを抑制する。
【0077】
本実施形態の発煙消火装置が使用される監視エリアとしては、制御盤や分電盤などの盤内、サーバマシン、化学実験用のドラフトチャンバ、エンジンルーム、コピー機、プリンタ、ケーブルダクト、モータ、バッテリユニット、ゴミ収集車、荷室などの閉鎖空間もしくは密閉空間などの様々な場所とすることができる。
【0078】
図12は本発明による発煙消火装置の他の実施形態を示した断面図であり、点火機構として化学的反応の発熱により着火させる機構を用いたことを特徴とする。
【0079】
図12において、感熱作動部16は図2の実施形態と同じであり、筐体12側に化学反応による点火機構を設けている。筐体12に収納された固形消火剤26の感熱作動部16側の表面には収納円筒穴72が形成され、その中に着火剤である酸化剤74と収納容器であるバルーン78に封入した易酸化性物質76を収納している。
【0080】
易酸化性物質76を封入したバルーン78は、プラスチックの薄膜シートやゴムで作られており、収納円筒穴72に押込むことで開口側を封鎖し、筐体12がどのような向きに設置されても、酸化剤74が収納円筒穴72から出ないようにしている。
【0081】
収納円筒穴72に押込まれたバルーン78の右側には感熱作動部16に設けたステム32−2の先端を尖らせたバルーン衝破用の破砕具80を位置させている。
【0082】
発煙消火装置10を設置している監視エリアで火災が発生して形状記憶バネ28−1,28−2が記憶形状に伸びると、樹脂ボール30を介してステム32−2が右側に移動し、先端の破砕具80によりバルーン78が衝破され、封入している易酸化性物質76を酸化剤74に接触させる。
【0083】
着火剤である酸化剤74に易酸化性物質76が接触すると発熱することによって固形消火剤26が着火され、図13に示すように、固形消火剤26が燃焼することにより煙道82,45を通って後方にエアロゾル100が噴出口14から監視エリアに噴出される。
【0084】
ここで、破砕具80でバルーン78を衝破した場合、収納円筒穴72の方向が図示の横向き、或いは下向きの場合、易酸化性物質76が外部に漏れ出して酸化剤74との接触が不足する可能性があることから、収納円筒穴72の開口部に薄膜樹脂シートなどのシールを貼り付けて封鎖し、シールを破砕具80で突き破ってバルーン78を衝破するようにし、バルーン78から出た易酸化性物質76を封じ込めて酸化剤74に確実に接触させようにする。
【0085】
図12の実施形態で着火剤として使用できる酸化剤74については、易酸化性物質76と反応し発熱する発熱性酸化剤であれば特に制限なく用いることができるが、固形消火剤26への着火性の面から過マンガン酸カリウムを用いることが好ましい。また、過マンガン酸カリウムは粉末状のものであることが好ましく、粒径が10〜150μmのものであることが好ましい。過マンガン酸カリウムの粒径が150μmより大きいものを使用すると、過マンガン酸カリウム粉末の比表面積が小さいため、易酸化性物質との反応が起こりにくくなり、着火性が損なわれる場合がある。
【0086】
また、図12の実施形態に用いる着火剤において、使用できる易酸化性物質76については液状の有機系易酸化性物質であり、高粘性のものを用いることが好ましい。
【0087】
本実施形態の着火剤は、固形消火剤への迅速な着火を目的の一つとしており、着火剤は、固形消火剤の表面に滞留することができ、固形消火剤の表面にて酸化剤と接触することにより固形消火剤を局所的に発熱し、迅速にエアロゾル消火剤が放出されるよう固形消火剤に着火燃焼できることが必要である。従って、例えばエチレングリコールなどの低粘性の易酸化性物質を用いた場合、固形消火剤の表面に留まらずに内部に滲入してしまい、迅速及び確実な着火が行えない可能性がある。
【0088】
易酸化性物質が固形消火剤の内部に滲入することを抑制するため、固形消火剤に別途バインダー等を加え成型することで浸透性を抑制することも考えられるが、そのような手段は消火剤組成物中の単位体積当たりの消火剤物質を低減することになり、消火効果の低い消火剤を与えることになる。また、消火剤組成物中にバインダー等を混合することは着火性を低下させることにもつながり好ましくない。
【0089】
本実施形態に用いることができる高粘性の易酸化性物質として、より具体的には25℃における粘性率が5〜20Pa・sの範囲である液状易酸化性物質を用いることが好ましい。粘性率が5Pa・sに満たないものを用いた場合、流動性が高いため固形消火剤の内部に滲入しやすく、固形消火剤の表面にて酸化剤と接触できず、着火が困難になる場合がある。また、20Pa・sを超えるものを用いた場合は、その粘度が高すぎるため封入された容器から速やかに易酸化性物質が漏出せず、酸化剤と混合できずに不着火になる場合がある。
【0090】
上記理由および酸化剤との良好な発熱反応性の面から、本実施形態に用いることができる易酸化性物質として最も好ましいものは、グリセリンである。
【0091】
図14は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図14において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72の底部に酸化剤74を収納し、続いてバルーン78に封入した易酸化性物質76を収納し、その外側に、内側に破砕爪86を突出したプランジャ84を摺動自在に配置している。プランジャ84に対しては、感熱作動部16に設けたステム32−2の先端に形成した押圧部88を位置させている。
【0092】
発煙消火装置10を設置している監視エリアで火災が発生して形状記憶バネ28−1,28−2が記憶形状に伸びると、樹脂ボール30を介してステム32−2が右側に移動し、先端の押圧部88によってプランジャ84が押し込まれ、破砕爪86によってバルーン78が衝破され、封入している易酸化性物質76を酸化剤74に接触させる。
【0093】
着火剤である酸化剤74及び易酸化性物質76が固形消火剤26の表面上にて接触して発熱することによって固形消火剤26に着火され、固形消火剤26が燃焼することによりエアロゾルが放出される。
【0094】
図15は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図15において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72の底部には酸化剤74が収納され、続いて易酸化性物質76を充填したインジェクタ90を配置している。インジェクタ90は、先端に注入穴96を備えたシリンダ92にピストン94を摺動自在に設け、シリンダ92内に易酸化性物質76を充填している。
【0095】
またシリンダ92の外側にはストッパフランジ98が形成され、収納円筒穴72にインジェクタ90をセットする際の位置決めを行っている。インジェクタ90のピストン94に対しては感熱作動部16に設けたステム32−2の先端に形成した押圧部88を位置させている。
【0096】
インジェクタ90の注入穴96は易酸化性物質76を充填した状態で開放したままとしていても漏れ出すことはないが、必要に応じて、注入穴96の開口部にビニールシートなどによる蓋を付けておいても良い。
【0097】
発煙消火装置10を設置している監視エリアで火災が発生して形状記憶バネ28−1,28−2が記憶形状に伸びると、樹脂ボール30を介してステム32−2が右側に移動し、先端の押圧部88によってインジェクタ90のピストン94が押し込まれ、注入穴96から易酸化性物質76を押し出して酸化剤74に接触させる。
【0098】
着火剤である酸化剤74及び易酸化性物質76が固体消火剤26の表面上にて接触し発熱することによって固形消火剤26に着火され、固形消火剤26が燃焼することによりエアロゾルが放出される。
【0099】
図16は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図16において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72には2重バルーン102が配置される。
【0100】
2重バルーン102は、図17に取出して示すように、薄膜樹脂シートを使用して蓋104、上容器106、仕切り108及び下容器110を一体化しており、上容器106に易酸化性物質76を封入し、下容器110に酸化剤74を封入している。
【0101】
再び図16を参照するに、収納円筒穴72に配置された2重バルーン102に対しては、感熱作動部に設けたステム32−2の先端に形成した破砕具80を位置させている。
本実施例において、先端を尖らせた破砕具80は、その周囲に逃げ溝80aを複数個所に形成しており、感熱作動部の動作で破砕具80を2重バルーン102に差し込んで破砕したとき、易酸化性物質76が逃げ溝80aを通って流れ出して酸化剤74に効率良く接触できるようにしている。
【0102】
図18は化学反応により着火させる本発明の他の実施形態を筐体側について示した断面図である。図18において、筐体12に収納した固形消火剤26に形成した収納円筒穴72にはバルーン112が配置され、その奥に酸化剤74を配置している。
【0103】
バルーン112は、図19に取出して示すように、薄膜樹脂シートを使用して蓋114と容器116を一体化しており、内部に易酸化性物質76を封入している。
【0104】
再び図18を参照するに、収納円筒穴72に配置されたバルーン112に対しては、感熱作動部に設けたステム32−2の先端に形成した破砕具80を位置させている。
本実施例においても、先端を尖らせた破砕具80は、その周囲に逃げ溝80aを複数個所に形成しており、感熱作動部の動作で破砕具80をバルーン112に差し込んで破砕したとき、易酸化性物質76が逃げ溝80aを通って流れ出して酸化剤74に効率良く接触できるようにしている。
【0105】
なお、破砕具80でバルーン112を破砕して酸化剤と易酸化性物質が接触できる構成であれば、易酸化性物質と酸化剤の配置は逆にしても、横に並べて配置しても良い。
【0106】
尚、上記の形状記憶バネを設けた実施形態にあっては、先端筒体、中間筒体、基部筒体の各々に形状記憶バネを設けているが、少なくとも先端筒体に設け、他の筒体には設けないようにしても良い。
【0107】
また、上記の実施形態にあっては、筐体を構成する本体12及びカバー14を金属製としているが、筐体外部や内部に断熱材を装着すれば必ずしも金属製である必要はない。
【0108】
また、上記の実施形態の点火機構は、擦り薬側を移動し、着火薬側を固定しているが、逆に着火薬側を移動し、擦り薬側を固定するようにしても良い。
【0109】
また本実施形態は、対象とする機器や盤などの監視エリアに適合したサイズをもつものであるが、必要な量の消火薬剤を収納可能な筐体サイズを確保しながら、可能な限り小型化することが望ましい。
【0110】
また、上記の実施形態における筐体12側に、発煙消火装置10の動作を検知して移報信号を外部に出力するリミットスイッチなどの移報スイッチを設けるようにしても良い。例えば図2の実施形態にあっては、筐体12側にリミットスイッチを配置し、基部筒体22側に設けているステム32−2の火災検出時の移動でリミットスイッチをオンして移報信号を出力させれば良い。
【0111】
発煙消火装置10からの移報信号は、発煙消火装置10を組み込んでいる監視エリアに対応して適宜の表示や制御を可能とする。本実施形態の発煙防止装置10をオフィス機器として使用されている例えばコピー機に組み込んでいた場合には、移報信号によりコピー機の音響出力部や表示部を利用してコピー機内での火災発生と消火動作を警報し、同時に、火災の原因となったヒータなどに対するメインの電源を自動的に遮断するといった制御を行う。
【0112】
また、上記の実施形態にあっては、手動起動を先端円筒体の先端に設けている手動起動レバー20で行っているが、これに限らず筒体の途中や筐体側に備えても良い。例えば筐体12に設けた第2磁石44を第1磁石42側へ近づけるように筐体背後に手動起動部を設けた構成としても良い。
【0113】
また先端筒体18に手動起動レバー20と形状記憶バネ28を同一筒内に配置しているが、これに限らず、手動起動レバー20を独立させて先端筒体18のさらに先端に手動起動レバー用の筒体を必要に応じて取り付けるようにしても良い。
【0114】
また、ステム32−2、隔壁34−2、擦り薬38及び第1磁石42は基部円筒体22に設けるのではなく、筐体12側に設置しても良い。
【0115】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態における数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0116】
10:発煙消火装置
12:筐体
14:噴出口
16:感熱作動部
18:先端筒体
20:手動起動レバー
22:基部筒体
24:消火剤収納部
26:固形消火剤
28,28−1,28−2,28−3:形状記憶バネ
30:樹脂ボール
32,32−1,32−2,32−12:ステム
34,34−1,34−2,3411,34−12:隔壁
35:弁シール
36,36−1,36−2:バイアスバネ
38:擦り薬
40:着火薬
42,48:第1磁石
44,50:第2磁石
45,82:煙道
46:中間筒体
48a,50a:テーパー面
52:差込口
54:可撓性チューブ
56:感熱板
58:リテーナ
60:低温ハンダ
62:圧縮バネ
64A,64A〜64D:火炎噴出防止部材
72:収納円筒穴
74:酸化剤
76:易酸化性物質
78,112:バルーン
80:破砕具
80a:逃げ溝
84:プランジャ
86:破砕爪
88:押圧部
90:インジェクタ
92:シリンダ
94:ピストン
96:注入穴
98:ストッパフランジ
102:2重バルーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火用エアロゾルを噴出する噴出口を備えた筐体と、
前記筐体に収納され、燃焼により前記消火用エアロゾルを発生する固形消火剤と、
前記固形消火剤に点火して燃焼させる点火機構と、
前記筐体から火災検出位置までの距離に応じた長さを有し、前記火災検出位置に配置した形状記憶バネが所定温度に達した時の記憶形状への変位を前記筐体側に伝達して前記点火機構を作動させる感熱作動部と、
を備え、
前記点火機構は、少なくとも酸化剤と易酸化性物質とを分離配置した着火剤を具備し、前記感熱作動部が作動した際の機械的な動作により前記酸化剤と易酸化性物質とを前記固形消火剤の表面にて接触させ、該接触による発熱で前記固形消火剤に着火するように構成されたことを特徴とする発煙消火装置。
【請求項2】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記易酸化性物質が、高粘性の液状易酸化性物質であることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項3】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記易酸化性物質がグリセリンであることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項4】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、前記易酸化性物質を封入した容器を具備し、前記固形消火剤に形成した収納穴の奥に前記酸化剤を配置すると共に穴開口側に前記容器を配置して閉鎖し、前記感熱作動部が作動した際に破砕具により前記容器を破砕して前記易酸化性物質を前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項5】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、前記易酸化性物質を封入した容器を具備し、前記消火剤組成物に形成した収納穴の最深部に前記酸化剤を収納し、続いて前記容器を配置し、穴開口側に破砕具を備えたプランジャを配置し、前記感熱作動部が作動した際に、前記プランジャを押込んで前記破砕具により前記容器を破砕して前記易酸化性物質を前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項6】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、ビストンの移動により吐出される前記易酸化性物質をシリンダに充填し他インジェクタを具備し、前記消火剤組成物に形成した収納穴の奥に前記酸化剤を配置した状態で穴開口に前記インジェクタを配置して閉鎖し、前記感熱作動部が作動した際に、前記インジェクタのピストンの押込みにより前記易酸化性物質を吐出して前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項7】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、前記酸化剤と前記易酸化性物質を個別に封入した容器を具備し、前記消火剤組成物に形成した収納穴に前記容器を配置し、前記感熱作動部が作動した際に破砕具により前記容器を破砕して前記易酸化性物質と前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項1】
消火用エアロゾルを噴出する噴出口を備えた筐体と、
前記筐体に収納され、燃焼により前記消火用エアロゾルを発生する固形消火剤と、
前記固形消火剤に点火して燃焼させる点火機構と、
前記筐体から火災検出位置までの距離に応じた長さを有し、前記火災検出位置に配置した形状記憶バネが所定温度に達した時の記憶形状への変位を前記筐体側に伝達して前記点火機構を作動させる感熱作動部と、
を備え、
前記点火機構は、少なくとも酸化剤と易酸化性物質とを分離配置した着火剤を具備し、前記感熱作動部が作動した際の機械的な動作により前記酸化剤と易酸化性物質とを前記固形消火剤の表面にて接触させ、該接触による発熱で前記固形消火剤に着火するように構成されたことを特徴とする発煙消火装置。
【請求項2】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記易酸化性物質が、高粘性の液状易酸化性物質であることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項3】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記易酸化性物質がグリセリンであることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項4】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、前記易酸化性物質を封入した容器を具備し、前記固形消火剤に形成した収納穴の奥に前記酸化剤を配置すると共に穴開口側に前記容器を配置して閉鎖し、前記感熱作動部が作動した際に破砕具により前記容器を破砕して前記易酸化性物質を前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項5】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、前記易酸化性物質を封入した容器を具備し、前記消火剤組成物に形成した収納穴の最深部に前記酸化剤を収納し、続いて前記容器を配置し、穴開口側に破砕具を備えたプランジャを配置し、前記感熱作動部が作動した際に、前記プランジャを押込んで前記破砕具により前記容器を破砕して前記易酸化性物質を前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項6】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、ビストンの移動により吐出される前記易酸化性物質をシリンダに充填し他インジェクタを具備し、前記消火剤組成物に形成した収納穴の奥に前記酸化剤を配置した状態で穴開口に前記インジェクタを配置して閉鎖し、前記感熱作動部が作動した際に、前記インジェクタのピストンの押込みにより前記易酸化性物質を吐出して前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【請求項7】
請求項1記載の発煙消火装置に於いて、前記点火機構は、前記酸化剤と前記易酸化性物質を個別に封入した容器を具備し、前記消火剤組成物に形成した収納穴に前記容器を配置し、前記感熱作動部が作動した際に破砕具により前記容器を破砕して前記易酸化性物質と前記酸化剤に接触させることを特徴とする発煙消火装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−48927(P2013−48927A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−246182(P2012−246182)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2008−290814(P2008−290814)の分割
【原出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2008−290814(P2008−290814)の分割
【原出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
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