説明

発熱ガラスの温度制御装置

【課題】制御精度のよい発熱ガラスの温度制御方法の提案。
【解決手段】発熱ガラスの屋内側表面に取り付けた窓面温度計にてガラス温度Tgを計測し、更に、屋内の温度と湿度を計測して露点温度Tdpを算定し、制御部にて、TgがTdp以上となるように電力調整部に電流の増減指令を出して、発熱ガラスに供給される電気の電流値を変更する温度制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱ガラスへの通電の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
冬場は、屋外と屋内の気温差が大きくなる。そして、屋内の空気に含まれる水蒸気が外気で低温となった窓ガラスの屋内側で凝結し、水滴が付着する。この現象、つまり、結露は、窓を曇らせるだけでなく、カビの発生の原因ともなり、その防止が問題となる。
【0003】
その解決策として、発熱ガラスが用いられることがある。発熱ガラス100は、図3に示すように、複層構造のガラスであり、屋内側ガラス101の内面に細かい金属粉を付着し又は金属膜を溶着し、この発熱層103に電気を通電することで屋内側ガラス101自体を発熱させるものである。窓ガラスを暖めておき、その温度を一定以上にしておけば、屋内の空気に含まれる水蒸気がこれに凝結することはなく、結露が防げるからである。
【0004】
結露は、窓ガラスの屋内側の表面温度が露点温度以下になると発生する。そして、露点温度は、屋内の温度と湿度により決まる。このため、発熱ガラスの温度を常に一定にする必要はなく、発熱ガラスの温度を、屋内の温度と湿度により変化する露点温度以上になるよう変化させてもよい。そして、このようにできれば、ガラス自体の発熱量を最適化でき、省エネルギーとなる。
【0005】
そのため、屋内の温度と湿度、屋外の温度を計測し、また、発熱ガラスの屋内側表面の熱抵抗と熱貫流率を用いて、発熱ガラスの屋内側表面温度を計算で求め、また、屋内の温度と湿度により屋内の露点温度を計算で求め、発熱ガラスの屋内側表面温度が露点温度以上になるように発熱ガラスの通電制御をする方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、特許文献1では、屋内だけでなく屋外でも計測することになり、また、屋外の温度と熱抵抗から窓の屋内側表面温度を推定しての制御となることから、精度面で不安がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−256420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、制御精度のよい発熱ガラスの温度制御方法の提案が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者らは、この課題を解決すべく、次の構成の第1の発明をなした。
露点温度算定部3、制御部4及び電力調整部5を有する制御装置2、発熱ガラス100の屋内側表面107に取り付けた窓面温度計6、並びに、屋内に設置された温度湿度計7を備えてなり、
前記温度湿度計7で屋内の温度及び湿度を計測し、それを前記露点温度算定部3に伝送し、
前記露点温度算定部3にて、伝送された屋内の温度及び湿度の計測値を基に露点温度Tdpを算定し、それを制御部4に伝送し、
前記窓面温度計6で前記発熱ガラス100の屋内側表面107のガラス温度Tgを計測し、それを前記制御部4に伝送し、
前記制御部4にて、前記発熱ガラス100の屋内側表面107のガラス温度Tgの計測値が算定された露点温度Tdp以上となるように前記電力調整部5に指令値を伝送し、
前記電力調整部5にて、前記指令値に基づき前記発熱ガラス100に供給される電気の電流値Iを変更すること、
を特徴とする、発熱ガラスの温度制御装置1。
【0010】
更に、次の構成の第2の発明をなした。
制御部4及び電力調整部5を有する制御装置2、発熱ガラス100の屋内側表面107に取り付けた窓面温度計6、並びに、屋内に設置された露点温度計8を備えてなり、
前記露点温度計8で露点温度Tdpを計測し、それを制御部4に伝送し、
前記窓面温度計6で前記発熱ガラス100の屋内側表面107のガラス温度Tgを計測し、それを前記制御部4に伝送し、
前記制御部4にて、前記発熱ガラス100の屋内側表面107のガラス温度Tgの計測値が計測された露点温度Tdp以上となるように前記電力調整部5に指令値を伝送し、
前記電力調整部5にて、前記指令値に基づき前記発熱ガラス100に供給される電気の電流値Iを変更すること、
を特徴とする、発熱ガラスの温度制御装置1。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、発熱ガラスの屋内側表面の温度が露点温度を超過することが殆どなくなり、エネルギーの有効利用が図られ、また、発熱ガラスの屋内側表面の温度を実測することから、制御精度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の発明の構成要素の配置及び各種計測値等の伝送状態を示した図面であ る。
【図2】第2の発明の構成要素の配置及び各種計測値等の伝送状態を示した図面であ る。
【図3】一般的な発熱ガラスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
(実施例1の説明)
図1は、第1の発明に係る発熱ガラスの温度制御装置1の構成要素の配置及び各種計測値等の伝送状態を示した図面である。
【0015】
<物的構成の説明>
【0016】
発熱ガラス100の屋内側表面107に、そのガラス温度Tgを計測するための窓面温度計6を取り付ける。一般に、窓ガラスは下端で最低温度を取ることが多いので、窓面温度計6の位置は、下端(サッシ下枠106に近い部分)が望ましい。また、窓面に温度計を取り付けることで美観が損ねる場合等には、赤外線放射温度計を窓の開口部の三方枠に取り付けて使用してもよい。
【0017】
また、屋内における温度Trと湿度Hrを計測するための温度湿度計7を屋内に取り付ける。この温度湿度計7は、発熱ガラス100の屋内側表面107における露点温度Tdpの算定の基礎となることから、なるべく窓(発熱ガラス100)近くの壁際に取り付けるのが望ましい(例えば、窓とカーテン又は障子との間など)。
【0018】
更に、露点温度算定部3、制御部4及び電力調整部5を有する制御装置2を屋内の壁等に設置する。この制御装置2の内部は、露点温度算定部3、制御部4及び電力調整部5の間で信号伝送可能なように構成される。
【0019】
そして、発熱ガラス100の発熱層103に電気を供給するための電線110が敷設されるが、その途中に電力調整部5を割り込ませ、この電線に流れる(つまり、発熱ガラス100に供給される電気の)電流を増減できるようにする。
【0020】
また、温度湿度計7で計測した屋内温度Tr、屋内湿度Hrを露点温度算定部3に伝送するための通信線112、及び、窓面温度計6で計測したガラス温度Tgを制御部4に伝送するための通信線113を敷設する。ただし、これらの伝送はこのように有線通信だけでなく、無線通信で行ってもよいので、通信線の敷設は必須のものではない。
【0021】
<動作の説明>
温度湿度計7においては、屋内気温Tr、屋内湿度Hrを計測し、それらの計測値を通信線112を介して(又は無線にて)露点温度算定部3に伝送する。また、窓面温度計6においては、ガラス温度Tgを計測し、その計測値を通信線113を介して(又は無線にて)制御部4に伝送する。
【0022】
なお、屋内気温Tr、屋内湿度Hr、ガラス温度Tgは、一般には急変するような性質のものではないので、連続的な計測が不要な場合は、ある一定のサンプリング間隔(例えば5分から15分程度の間隔)で計測する。また、万が一の急変にそなえ、制御装置2にスイッチを設け、そのスイッチを人が操作することにより発熱ガラスの温度制御装置1の動作をそのスイッチ動作時点の計測値により行えるようにしてもよい。
【0023】
また、結露が問題となるのは冬期であり、それ以外の時期に問題となることは殆どない。そのため、この温度制御装置1にカレンダー機能を備え、予め設定した時期(例えば、11月1日から翌年3月31日)にこの温度制御機能が自動的にONになるようにしてもよい。また、手動スイッチを備え、スイッチの人による切換で、この温度制御機能をON又はOFFするようにしてもよい。
【0024】
露点温度算定部3においては、伝送された屋内気温Tr、屋内湿度Hrを基にして、露点温度Tdpを算定する。そして、算定した露点温度Tdpを制御部4に伝送する。
【0025】
以上から、制御部4には、発熱ガラス100の屋内側表面107のガラス温度Tgと屋内の露点温度Tdpが伝送される。
ここで、発熱ガラス100の屋内側表面107に結露が生じないようにするためには、Tg≧Tdpが成り立つことが必要であるが、制御の遅れ等にも配慮し、Tg=Tdp+0.1℃を目標として、制御部4から電力調整部5に、PID制御により、発熱ガラス100に流す電流の増減指令を伝送する。
【0026】
電力調整部5は、発熱ガラス100に流す電流の最大値(100%)を予め決めておき、制御部4から伝送された増減指令により、発熱ガラス100に流す電流を変化させる。
【0027】
これにより、露点温度Tdpにあわせて発熱ガラス100の屋内側表面107のガラス温度Tgを制御でき、省エネルギーを達成し、また、制御精度も向上する。
【0028】
(実施例2の説明)
図2は、第2の発明に係る発熱ガラスの温度制御装置1の構成要素配置及び各種計測値等の伝送状態を示した図面である。第2の発明の物的構成や動作は、本質的に、第1の発明と同じであるから、その相違についてのみ説明する。
【0029】
第1の発明では、温度湿度計7にて屋内気温Tr及び屋内湿度Hrを計測し、それらの計測値を露点温度算定部3に伝送し、そこで露点温度Tdpを算出している。更に、算出した露点温度Tdpの値を制御部4に伝送している。
しかし、既に露点温度Tdpを直接的に計測できる露点温度計8が実用化されていることから、温度湿度計7及び露点温度算定部3のかわりに露点温度計8を用いてもよい。構成の違いはこれだけであり、上述のとおり、動作は第1の発明と同じであるから、説明は省略する。
【符号の説明】
【0030】
1 発熱ガラスの温度制御装置、
2 制御装置、
3 露点温度算定部、
4 制御部、
5 電力調整部、
6 窓面温度計、
7 温度湿度計、
8 露点温度計、
100 発熱ガラス、
101 屋内側ガラス、
102 屋外側ガラス、
103 発熱ガラスの発熱層、
104 乾燥空気層、
105 サッシ上枠、
106 サッシ下枠、
107 発熱ガラスの屋内側表面、
108 発熱層を流れる電流、
110 電線、
111 分電盤、
112、113 通信線、
115 サッシ左枠(発熱層への電流入力のための導体を内部に含む)、
116 サッシ右枠(発熱層からの電流排出のための導体を内部に含む)

Tr 屋内気温、
Hr 屋内湿度、
Tdp 露点温度、
Tg 発熱ガラスの屋内側表面のガラス温度、
I 発熱ガラスに流れる電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露点温度算定部(3)、制御部(4)及び電力調整部(5)を有する制御装置(2)、発熱ガラス(100)の屋内側表面(107)に取り付けた窓面温度計(6)、並びに、屋内に設置された温度湿度計(7)を備えてなり、
前記温度湿度計(7)で屋内の温度及び湿度を計測し、それを前記露点温度算定部(3)に伝送し、
前記露点温度算定部(3)にて、伝送された屋内の温度及び湿度の計測値を基に露点温度(Tdp)を算定し、それを制御部(4)に伝送し、
前記窓面温度計(6)で前記発熱ガラス(100)の屋内側表面(107)のガラス温度(Tg)を計測し、それを前記制御部(4)に伝送し、
前記制御部(4)にて、前記発熱ガラス(100)の屋内側表面(107)のガラス温度(Tg)の計測値が算定された露点温度(Tdp)以上となるように前記電力調整部(5)に指令値を伝送し、
前記電力調整部(5)にて、前記指令値に基づき前記発熱ガラス(100)に供給される電気の電流値(I)を変更すること、
を特徴とする、発熱ガラスの温度制御装置(1)。
【請求項2】
制御部(4)及び電力調整部(5)を有する制御装置(2)、発熱ガラス(100)の屋内側表面(107)に取り付けた窓面温度計(6)、並びに、屋内に設置された露点温度計(8)を備えてなり、
前記露点温度計(8)で露点温度(Tdp)を計測し、それを制御部(4)に伝送し、
前記窓面温度計(6)で前記発熱ガラス(100)の屋内側表面(107)のガラス温度(Tg)を計測し、それを前記制御部(4)に伝送し、
前記制御部(4)にて、前記発熱ガラス(100)の屋内側表面(107)のガラス温度(Tg)の計測値が計測された露点温度(Tdp)以上となるように前記電力調整部(5)に指令値を伝送し、
前記電力調整部(5)にて、前記指令値に基づき前記発熱ガラス(100)に供給される電気の電流値(I)を変更すること、
を特徴とする、発熱ガラスの温度制御装置(1)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate