説明

発熱体ユニット及び蒸発燃料処理装置

【課題】通気抵抗を低減するとともに加熱応答性を向上することのできる発熱体ユニット及び蒸発燃料処理装置を提供する。
【解決手段】発熱体ユニット71は、通電により発熱するPTCヒータ73と、通気性を有しかつPTCヒータ73で生じる熱を放熱するハニカムコア44とを備える。ハニカムコア44は、複数枚の金属箔材45を積層するとともに隣り合う金属箔材45を所定のピッチ毎に平行にかつ接合箇所が積層方向に千鳥状配列となるように接合された積層体50を積層方向に展開することによって構成される。PTCヒータ73は、可撓性を有しかつハニカムコア44の隣り合う金属箔材45の間に配置された面状発熱体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体ユニット及び蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発熱体ユニットとしては、通電により発熱する発熱体と、通気性を有しかつ発熱体で生じる熱を放熱する放熱体とを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において、発熱体は、上、下両面に電極を有する正特性サーミスタである。また、放熱体は、金属(アルミニウム)製の薄板を波状あるいは格子状に形成した放熱フィンである。発熱体は、上下両側の放熱フィンの間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−22905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の発熱体ユニットでは、放熱体である放熱フィンが金属製薄板により形成されている。薄板とは、一般的に0.5〜2mm程度の厚さのものをいい、6〜200μm程度の厚さのものをいう金属箔材に比べると、板厚が厚い。したがって、このような放熱フィンを備えた発熱体ユニットでは、通気抵抗が大きいとともに加熱応答性が低いという問題点があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、通気抵抗を低減するとともに加熱応答性を向上することのできる発熱体ユニット及び蒸発燃料処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする発熱体ユニット及び蒸発燃料処理装置により解決することができる。
すなわち、請求項1に記載された発熱体ユニットによると、通電により発熱する発熱体と、通気性を有しかつ発熱体で生じる熱を放熱する放熱体とを備える発熱体ユニットであって、放熱体は、複数枚の金属箔材を積層するとともに隣り合う金属箔材を所定のピッチ毎に平行にかつ接合箇所が積層方向に千鳥状配列となるように接合された積層体を積層方向に展開することによって構成されるハニカムコアである。このように構成すると、放熱体が複数枚の金属箔材によってセル壁を形成するハニカムコアであり、その金属箔材は薄板に比べると薄い箔厚である。このため、前記特許文献1の放熱フィンと比べて、通気抵抗を低減するとともに加熱応答性を向上することができる。
【0007】
また、請求項2に記載された発熱体ユニットによると、ハニカムコアは、複数の分割体により構成され、発熱体は、ハニカムコアの分割体の間に配置された面状発熱体である。このように構成すると、ハニカムコアの分割体の間に面状発熱体を配置することによって、面状発熱体からハニカムコアの分割体への熱伝達効率を向上することができる。
【0008】
また、請求項3に記載された発熱体ユニットによると、発熱体は、可撓性を有しかつハニカムコアの隣り合う金属箔材の間に配置された面状発熱体である。このように構成すると、ハニカムコアの隣り合う金属箔材の間に面状発熱体を配置することによって、面状発熱体からハニカムコアの分割体への熱伝達効率を向上することができる。また、面状発熱体が可撓性を有するため、ハニカムコアを構成する積層体の展開にともなう金属箔材の変形に応じて面状発熱体が撓み変形することができる。
【0009】
また、請求項4に記載された発熱体ユニットによると、面状発熱体は、PTCヒータである。このように構成すると、面状発熱体が自己温度制御機能を備えることができる。
【0010】
また、請求項5に記載された蒸発燃料処理装置によると、ケースの吸着材室内に導入される蒸発燃料を吸着材に吸着させ、吸着材室内を流れる空気により吸着材から蒸発燃料を脱離させるように構成された蒸発燃料処理装置であって、吸着材室内に、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発熱体ユニットが配置されている。このように構成すると、通気抵抗を低減するとともに加熱応答性を向上することのできる発熱体ユニットを備えた蒸発燃料処理装置を提供することができる。また、蒸発燃料の脱離時において、発熱体ユニットの発熱体が通電により発熱されると、その熱が放熱体としてのハニカムコアにより放熱されることによって、吸着材の温度低下を抑制し、脱離性能を向上することができる。
【0011】
また、請求項6に記載された蒸発燃料処理装置によると、発熱体ユニットのハニカムコアのセル軸方向が、吸着材室内を流れるガスの流れ方向に対して並行をなしている。このように構成すると、ハニカムコアの各セル内にガスをスムースに流すことができるとともに各セル内のガスの流量を均一化することができる。
【0012】
また、請求項7に記載された蒸発燃料処理装置によると、発熱体ユニットのハニカムコアのセル壁に、隣り合うセル間を連通するための通気路が形成されている。このように構成すると、ハニカムコアの隣り合うセル間がセル壁の通気路を介して連通されることによって、隣り合うセル間におけるガスの流動が可能となる。このため、各セル間の通気抵抗差を低減し、各セル間の吸脱着斑の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1にかかる蒸発燃料処理装置を示す断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図2のIII部を示す拡大図である。
【図4】発熱体ユニットの一部を示す斜視図である。
【図5】ハニカムコアの展開前の積層体を示す断面図である。
【図6】PTCヒータを示す構成図である。
【図7】実施の形態2にかかる蒸発燃料処理装置を示す断面図である。
【図8】ハニカムコアの一部を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
[実施の形態1]
本実施の形態では、自動車等の車両に搭載される蒸発燃料処理装置について例示する。図1は蒸発燃料処理装置を示す断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3は図2のIII部を示す拡大図である。なお、説明の都合上、図1の状態を基準として蒸発燃料処理装置の上下左右を定め、図1における紙面表側を前側、同じく紙面裏側を後側と定めることにする。
【0015】
図1に示すように、キャニスタとしての蒸発燃料処理装置10は、樹脂製のケース12を備えている。ケース12は、上端面を閉塞しかつ下端面を開口する有天筒状のケース本体13と、ケース本体13の下端開口面を閉塞する蓋部材14とにより構成されている。ケース本体13内は、隔壁15により左右二室に仕切られており、右側に中空四角筒状の主吸着材室17が形成され、また左側に中空四角筒状の副吸着材室18が形成されている。主吸着材室17と副吸着材室18とは、蓋部材14の内側すなわちケース本体13の下端部に形成された連通路20によって相互に連通されている。
【0016】
前記ケース本体13の上面には、前記主吸着材室17に連通するタンクポート22およびパージポート23と、前記副吸着材室18に連通する大気ポート24が形成されている。タンクポート22は、蒸発燃料通路26を介して燃料タンク27内の気層部に連通されている。また、パージポート23は、パージ通路30を介して内燃機関31の吸気管32に連通されている。また、吸気管32には、吸入空気量を制御するスロットルバルブ33が設けられている。また、パージ通路30は、吸気管32に対してスロットルバルブ33の下流側において連通されている。また、パージ通路30の途中には、パージ弁34が介装されている。パージ弁34は、図示しないエンジンコントロールユニットいわゆるECU(制御手段)によって開閉制御されるようになっている。また、大気ポート24は大気に連通されている。
【0017】
前記主吸着材室17内および前記副吸着材室18内のそれぞれの上端面には、上側のフィルタ36がそれぞれ設けられている。また、主吸着材室17内および副吸着材室18内のそれぞれの下端面には、下側のフィルタ37がそれぞれ設けられている。上下の両フィルタ36,37は、例えば樹脂製の不織布、発泡ウレタン等により形成されている。また、主吸着材室17内および副吸着材室18内におけるそれぞれの下側のフィルタ37の下側には、多孔板38が積層状に設けられている。また、各多孔板38と蓋部材14との間には、コイルバネからなるバネ部材40がそれぞれ介装されている。
【0018】
前記主吸着材室17内および前記副吸着材室18内(詳しくは上側のフィルタ36と下側のフィルタ37との間の室内)には、粒状の吸着材42がそれぞれ充填されている。吸着材42としては、例えば粒状の活性炭を用いることができる。さらに、粒状の活性炭としては、破砕した活性炭(破砕炭)、粒状あるいは粉末状の活性炭をバインダともに造粒した造粒炭等を用いることができる。
【0019】
前記主吸着材室17内には、前記吸着材42の充填に先立って、直方体状の発熱体ユニット71が配置されている。図4は発熱体ユニットの一部を示す斜視図、図5はハニカムコアの展開前の積層体を示す断面図である。
図4に示すように、発熱体ユニット71は、通電により発熱するPTCヒータ73と、通気性を有しかつPTCヒータ73で生じる熱を放熱するハニカムコア44とを備えている。なお、説明の都合上、ハニカムコア44、PTCヒータ73の順に説明する。
【0020】
図4に示すように、前記ハニカムコア44は、前記吸着材42(図1参照)の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料、例えばアルミ箔等の金属箔材45で形成されている。すなわち、ハニカムコア44は、複数枚の金属箔材45によってセル壁46を形成したものであって、周方向に連続した6つのセル壁46により中空六角筒状のセル48が形成されている。また、ハニカムコア44は、複数枚(本実施の形態では8枚)の金属箔材45を積層するとともに、隣り合う金属箔材45を所定のピッチ毎に平行にかつ接合箇所が積層方向に千鳥状配列となるように接合された積層体50(図5参照)を積層方向(図5において上下方向)に展開することによって構成されている(図4参照)。また、ハニカムコア44において、隣り合う金属箔材45の接合箇所におけるセル壁46は二重壁となり、それ以外の箇所(非接合箇所)におけるセル壁46は一重壁となる。また、本実施の形態では、ハニカムコア44の平行するセル壁46の相互間の間隔が、例えば9.0〜25.4mmに設定されている。また、金属箔材45の厚さは6〜200μm程度であり、好ましくは10〜100μmの範囲内に設定するとよい。なお、ハニカムコア44は本明細書でいう「放熱体」に相当する。
【0021】
図4に示すように、前記ハニカムコア44の複数枚の金属箔材45のうちの適数枚(本実施の形態では、両外面側(前後両面側)から3枚目の計2枚)の金属箔材45における片面には、可撓性を有する面状のPTCヒータ73がそれぞれ配置されている(図4参照)。図6はPTCヒータを示す構成図である。
【0022】
図6に示すように、前記PTCヒータ73は、2枚の絶縁フィルム74の間に発熱部75が形成されてなる。ベース側(図6において下側)の絶縁フィルム74は、金属箔材45の片面に接着されている。また、発熱部75は、導電性粒子76を混入した無定形高分子からなり、ベース側の絶縁フィルム74上に印刷によって形成されている。これとともに、発熱部75の両端部には、発熱部75に電力を均等に供給するための一対の電極77が印刷によって形成されている。また、カバー側(図6において上側)の絶縁フィルム74は、発熱部75(電極77を含む)上に接着されている。なお、このようなPTCヒータ73としては、例えば特開平10−321346号公報に記載された自己温度調節面状発熱体を適用することができる。なお、PTCヒータ73は本明細書でいう「可撓性を有する面状発熱体」に相当する。
【0023】
前記発熱体ユニット71の製造方法の一例について説明する。発熱体ユニット71の製造工程としては、積層体50(図5参照)を形成する工程と、その積層体50を展開する工程とからなる。
積層体50を形成する工程では、図5に示すように、片面又は両面全体にろう材層52を設けた多数枚(本実施の形態では5枚)の金属箔材45を、そのろう材形成面に隣り合う金属箔材45と千鳥状配列となるように離型剤層53を設けて積層した状態で、その積層方向(図5において上下方向)に加圧し、かつ、加熱してろう付けすることにより、積層体50を得る。ここで、本実施の形態では、積層体50の下から3枚目の金属箔材45の下面、及び、同じく下から6枚目の上面には、前記PTCヒータ73(図6参照)が配置される。
【0024】
次に、積層体50を展開する工程では、積層体50(図5参照)の積層された金属箔材45が相互に離隔するように引張り力を加えることにより、積層体50を積層方向(図5において上下方向)に展開することによって、発熱体ユニット71(図4参照)を得る。また、前記離型剤層53(図5参照)は必要に応じて除去される。なお、このような発熱体ユニット71の製造方法としては、例えば特開昭59−179265号公報に記載された製造方法を適用することができる。また、ろう材に代えて、隣り合う金属箔材45を所定のピッチ毎に接着材により接着することもできる。また、発熱体ユニット71において、ハニカムコア44の隣り合う金属箔材45の接合箇所でかつ前記PTCヒータ73が接合されたセル壁46は三重壁となり、それ以外のPTCヒータ73が接合されたセル壁46は二重壁となる(図3及び図4参照)。
【0025】
図1に示すように、前記発熱体ユニット71は、ハニカムコア44のセル軸方向(図4において上下方向)が前記ケース12の主吸着材室17内を流れるガスの流れ方向(図1において上下方向)に対して並行をなすように配置されている。また、本実施の形態では、発熱体ユニット71の展開方向が主吸着材室17の前後方向(図2において上下方向)に向けられているとともに、発熱体ユニット71の展開方向に直交する方向が主吸着材室17の左右方向(図2において左右方向)に向けられている。なお、発熱体ユニット71において、セル軸方向が高さ方向に相当するとした場合、展開方向が奥行き方向(前後方向)に相当し、展開方向に直交する方向が幅方向(左右方向)に相当する。
【0026】
前記発熱体ユニット71の前後両側面及び左右両側面は、前記主吸着材室17の内壁すなわちケース本体13の前後両側壁(符号、13a,13bを付す)、隔壁15及び右側壁(符号、13cを付す)に接触されている(図1〜図3参照)。これにより、発熱体ユニット71が主吸着材室17内の所定位置に配置されている。また、発熱体ユニット71の上下両端面は、前記上側のフィルタ36及び前記下側のフィルタ37に面している。また、発熱体ユニット71が配置された主吸着材室17内には前記吸着材42が充填されている。これにともない、発熱体ユニット71のハニカムコア44の各セル48内に吸着材42が充填されている(図2参照)。
【0027】
前記ケース本体13の上面にはコネクタ部64が形成されている。コネクタ部64は、例えば前記タンクポート22と前記パージポート23との間に配置されている。コネクタ部64内には、一対のターミナル66が配置されている。両ターミナル66と前記PTCヒータ73の両電極77(図6参照)とは、それぞれリード線68を介して電気的に接続されている。また、コネクタ部64には、図示しない前記ECU側の外部コネクタが接続される。また、ECUによってハニカムコア44に対する通電制御がなされるようになっている。なお、ECUは本明細書でいう「制御手段」に相当する。
【0028】
次に、前記蒸発燃料処理装置10を備えた蒸発燃料システムの作用について説明する(図1参照)。なお、蒸発燃料処理システムは、蒸発燃料処理装置10、蒸発燃料通路26、燃料タンク27、パージ通路30、吸気管32、パージ弁34等によって構成されている。
まず、車両の内燃機関31が停止している状態では、パージ弁34が閉弁されており、燃料タンク27等で発生した蒸発燃料が蒸発燃料通路26を介して主吸着材室17に導入される。導入された蒸発燃料は、主吸着材室17内のハニカムコア44の各セル48内の吸着材42に吸着される。そして、主吸着材室17内のハニカムコア44の各セル48内の吸着材42に吸着されなかった蒸発燃料は、連通路20を通り、副吸着材室18に導入され、副吸着材室18内の吸着材42に吸着される。
【0029】
一方、内燃機関31の運転中においては、パージ弁34が開弁されることで、蒸発燃料処理装置10内に吸気負圧が作用する。これにともない、大気ポート24から大気中の空気(新気)が副吸着材室18に導入される。副吸着材室18に導入された空気は、副吸着材室18内の吸着材42から蒸発燃料を脱離させた後、連通路20を介して主吸着材室17に導入され、主吸着材室17内のハニカムコア44の各セル48内の吸着材42から蒸発燃料を脱離させる。そして、吸着材42から離脱された蒸発燃料を含んだ空気は、パージ通路30を介して吸気管32に排出すなわちパージされることにより、内燃機関31で燃焼処理される。また、吸着材42が蒸発燃料を脱離する際において、ECU(図示省略)により発熱体ユニット71のPTCヒータ73(図6参照)に通電がなされることによって、発熱部75が発熱されてその熱がハニカムコア44により放熱される。これによって、蒸発燃料の脱離時における吸着材42の温度低下が抑制されるため、脱離性能が向上される。
【0030】
前記した蒸発燃料処理装置10(図1参照)に備えた発熱体ユニット71によると、通電により発熱するPTCヒータ73と、通気性を有しかつPTCヒータ73で生じる熱を放熱するハニカムコア44とを備える発熱体ユニット71であって、ハニカムコア44は、複数枚の金属箔材45を積層するとともに、隣り合う金属箔材45を所定のピッチ毎に平行にかつ接合箇所が積層方向に千鳥状配列となるように接合された積層体50(図5参照)を積層方向に展開することによって構成されている。したがって、複数枚の金属箔材45によってセル壁46を形成するハニカムコア44の金属箔材45は薄板に比べると薄い箔厚である。すなわち、箔材とは、6〜200μm程度の厚さのものをいい、0.5〜2mm程度の厚さのものをいう薄板に比べると箔厚が薄い。このため、前記特許文献1の放熱フィンと比べて、通気抵抗を低減するとともに加熱応答性を向上することができる。
【0031】
また、PTCヒータ73は、可撓性を有しかつハニカムコア44の隣り合う金属箔材45の間に配置された面状発熱体である。したがって、ハニカムコア44の隣り合う金属箔材45の間にPTCヒータ73を配置することによって、PTCヒータ73からハニカムコア44の分割体への熱伝達効率を向上することができる。また、PTCヒータ73が可撓性を有するため、ハニカムコア44を構成する積層体50の展開にともなう金属箔材45の変形に応じてPTCヒータ73が撓み変形することができる。
【0032】
また、前記発熱体ユニット71において、ハニカムコア44は、PTCヒータ73を間にして分割された複数の分割体80(図3参照)により構成されたものと考えることができる。この場合、PTCヒータ73は、ハニカムコア44における隣り合う分割体80の相互間に配置されていることになる。したがって、ハニカムコア44における隣り合う分割体80の相互間にPTCヒータ73を配置することによって、PTCヒータ73からハニカムコア44の分割体80への熱伝達効率を向上することができる。
【0033】
また、面状発熱体は、PTCヒータ73である。したがって、PTCヒータ73が自己温度制御機能を備えることができる。
【0034】
また、前記した蒸発燃料処理装置10によると、ケース12の主吸着材室17内に、前記発熱体ユニット71が配置されている。したがって、通気抵抗を低減するとともに加熱応答性を向上することのできる発熱体ユニット71を備えた蒸発燃料処理装置10を提供することができる。また、蒸発燃料の脱離時において、発熱体ユニット71のPTCヒータ73が通電により発熱されると、その熱がハニカムコア44により放熱されることによって、吸着材42の温度低下を抑制し、脱離性能を向上することができる。このことは、少ないエンジンパージ量においても十分な脱離量を確保することができるため、例えばハイブリッド電気自動車(HEV車)のように、エンジンの稼働時間が少ない車両用の蒸発燃料処理装置10として有効といえる。
【0035】
また、発熱体ユニット71のハニカムコア44が吸着材42(図1参照)の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料により形成されている。したがって、吸着材42の吸脱着に際して、主吸着材室17内の中心部分と外側部分との間に温度差を生じるときは、高温側部分の熱がハニカムコア44を介して低温側部分へ伝達される。すなわち、吸着材42が蒸発燃料を吸着する際において、主吸着材室17内の中心部分が外側部分に比べて高温側部分となるため、主吸着材室17内の中心部分の熱がハニカムコア44を介して主吸着材室17内の外側部分に伝達される。これにより、主吸着材室17内の中心部分の温度上昇を抑制し、主吸着材室17内の中心部分の吸着性能を向上することができる。また、吸着材42が蒸発燃料を脱離する際において、PTCヒータ73が発熱されたときには、その熱がハニカムコア44全体に熱伝達されることにより、ハニカムコア44の温度分布が均一化される。これにより、主吸着材室17内の脱離性能を向上することができる。このことは、蒸発燃料処理装置10の小型化に有効である。
【0036】
また、発熱体ユニット71のハニカムコア44のセル軸方向が、主吸着材室17内を流れるガスの流れ方向に対して並行をなしている。したがって、ハニカムコア44の各セル48内にガス(空気及び/又は蒸発燃料が相当する)をスムースに流すことができるとともに各セル48内のガスの流量を均一化することができる。
【0037】
また、発熱体ユニット71のハニカムコア44の前後両側面及び左右両側面が、主吸着材室17の内壁すなわちケース本体13の前後両側壁13a,13b、隔壁15及び右側壁13cに接触されている(図1〜図3参照)。したがって、ハニカムコア44の熱がケース12側に伝達されやすくなるため、大気への放熱性能をさらに向上することができる。なお、ケース12は外気に接触するものとする。また、ハニカムコア44は、主吸着材室17の内壁に対して前後両側面及び左右両側面が接触するものに限らず、少なくとも一部が接触するものであればよい。
【0038】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2を説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図7は蒸発燃料処理装置を示す断面図、図8はハニカムコアの一部を示す平断面図である。
本実施の形態は、図7および図8に示すように、前記実施の形態1(図1及び図2参照)における発熱体ユニット71のPTCヒータ73を含むハニカムコア44の各セル壁46に、丸形状の通気孔58が形成されたものである。通気孔58は、隣り合うセル48間を連通している(図8参照)。また、通気孔58は、セル壁46の軸方向(図7において上下方向)に所定の間隔毎に配置されている。また、通気孔58は、例えば発熱体ユニット71の展開前の積層体50(図5参照)において積層方向に孔あけ加工を行うことによって容易に形成することができる。なお、通気孔58は本明細書でいう「通気路」に相当する。
【0039】
本実施の形態によると、発熱体ユニット71のPTCヒータ73を含むハニカムコア44のセル壁46に、隣り合うセル48間を連通するための通気孔58が形成されている。したがって、発熱体ユニット71のハニカムコア44の隣り合うセル48間がセル壁46の通気孔58を介して連通されることによって、隣り合うセル48間におけるガス(空気及び/又は蒸発燃料が相当する)の流動が可能となる。つまり、ガスの流入に際し、ハニカムコア44の入口で整流され、ガス流入後、ハニカムコア44の内部で通気孔58により通気抵抗のばらつきが緩和される。このため、各セル48間の通気抵抗差を低減し、各セル48間の吸脱着斑の発生を抑制することができる。なお、本実施の形態では、セル壁46の全てに通気孔58を形成したが、1セル当りの6つのセル壁46に対する通気孔58の個数すなわちセル48の周方向にかかる通気孔58の個数、及び、セル48の軸方向にかかる通気孔58の個数は、適宜選定することができる。また、通気孔58の形状は、丸形状に限らず、多角形状、長細状、異形状等に変更することができる。また、通気孔58は、隣り合う2つ以上のセル壁46に跨るように形成することもできる。また、通気孔58に代えて、相互に接合されるセル壁46の間の一部に非接合部を形成し、その非接合部により隣り合うセル48間を連通するための開口部によって通気路を形成することもできる。
【0040】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、発熱体ユニット71は、主吸着材室17内の中央部に配置することにより、主吸着材室17の内壁(ケース本体13の前側壁13a、後側壁13b、隔壁15及び右側壁13c)に対して接触しない状態すなわち離れた状態で配置することもできる。また、主吸着材室17内の中央部にハニカムコア44が配置される場合は、ハニカムコア44のセル軸方向が主吸着材室17内を流れるガスの流れ方向に対して並行(図1において上下方向)をなさない場合も考えられる。また、発熱体ユニット71は、主吸着材室17に限らず、副吸着材室18に配置することもできる。また、吸着材42は、主吸着材室17内(ハニカムコア44の各セル48内を含む)に充填するものに限らず、ハニカムコア44の各セル壁46の表面すなわち外表面及びセル48の内壁面に対して付着させたものでもよい。また、ハニカムコア44のセル48の断面形状は、正六角形状に限らず、辺長さや角度が等しくない六角形状や、その他の多角形状であってもよい。また、加熱体としては、PTCヒータの他、溶射ヒータ、ポリイミドヒータ等を用いることができる。また、加熱体としては、可撓性を有するものに限らず、可撓性を有しないものでもよい。また、面状ヒータの他、線状ヒータ、棒状ヒータ等を用いることもできる。また、前記実施の形態2では、加熱体としてのPTCヒータ73を含むハニカムコア44のセル壁46に通気孔58を形成したが、加熱体の種類、配置、構成等によっては通気孔を形成しない場合も考えられる。
【符号の説明】
【0041】
10…蒸発燃料処理装置
12…ケース
17…主吸着材室
42…吸着材
44…ハニカムコア(放熱体)
45…金属箔材
46…セル壁
48…セル
50…積層体
58…通気孔(通気路)
71…発熱体ユニット
73…PTCヒータ(面状発熱体)
80…分割体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱体と、通気性を有しかつ前記発熱体で生じる熱を放熱する放熱体とを備える発熱体ユニットであって、
前記放熱体は、複数枚の金属箔材を積層するとともに隣り合う金属箔材を所定のピッチ毎に平行にかつ接合箇所が積層方向に千鳥状配列となるように接合された積層体を積層方向に展開することによって構成されるハニカムコアである
ことを特徴とする発熱体ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱体ユニットであって、
前記ハニカムコアは、複数の分割体により構成され、
前記発熱体は、前記ハニカムコアの分割体の間に配置された面状発熱体である
ことを特徴とする発熱体ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の発熱体ユニットであって、
前記発熱体は、可撓性を有しかつ前記ハニカムコアの隣り合う金属箔材の間に配置された面状発熱体であることを特徴とする発熱体ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の発熱体ユニットであって、
前記面状発熱体は、PTCヒータであることを特徴とする発熱体ユニット。
【請求項5】
ケースの吸着材室内に導入される蒸発燃料を吸着材に吸着させ、前記吸着材室内を流れる空気により前記吸着材から前記蒸発燃料を脱離させるように構成された蒸発燃料処理装置であって、
前記吸着材室内に、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発熱体ユニットが配置されている
ことを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記発熱体ユニットのハニカムコアのセル軸方向が、前記吸着材室内を流れるガスの流れ方向に対して並行をなしていることを特徴とする蒸発燃料処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の蒸発燃料処理装置であって、
前記発熱体ユニットのハニカムコアのセル壁に、隣り合うセル間を連通するための通気路が形成されていることを特徴とする蒸発燃料処理装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate