説明

発熱具、及びその使用方法

【課題】一度衣類に貼り付けたものを再度貼り直した場合であっても、十分な粘着力をもって衣類に貼り付けることができる発熱具を提供することを課題とする。
【解決手段】衣類に一度貼り付けた後に貼り直すことが可能な発熱具1であって、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱組成物Aが収納され、一方面に通気性を有する袋体2と、袋体2の他方面に形成された粘着層3と、粘着層3を覆うように貼付された剥離シート4と、を備えている。剥離シート4は、粘着層3の対向する各端部31a、31bを覆う端部シート部41a、41bと、粘着層3の各端部31a、31bに挟まれた中央部32を覆う中央シート部42と、を有しており、端部シート部14a、41bと中央シート部42とは、分離して剥離可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱具及びその使用方法に関するものであり、より詳細には一度衣類に貼り付けたものを再度貼り直すことができる発熱具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、通気面を有する偏平状の袋体の内部に、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱組成物を充填した使い捨てカイロを衣類などに対して貼り付ける、いわゆる貼るタイプの使い捨てカイロが広く使用されている(例えば特許文献1)。このような貼るタイプの使い捨てカイロは、袋体の通気面と対向する面に粘着層を形成し、この粘着層を用いて衣類などに貼り付けて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−208031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の貼るタイプの使い捨てカイロは、その発熱時間が長時間となってきているため、例えば、通勤や通学時に使用したものを家に帰ってからも使用することが可能である。このように貼るタイプの使い捨てカイロを帰宅してからも使用する場合、通常、帰宅してからは通勤や通学時の服装から着替えるため、貼るタイプの使い捨てカイロも着替えた後の衣類に貼り直す必要がある。しかしながら、このように一度衣類に貼り付けたものを一旦剥がして再度貼り直す場合は、粘着層に衣類の繊維や埃などが付着するため粘着層の粘着力が弱くなり、衣類から剥がれやすくなるという問題がある。そこで、本発明は、一度衣類に貼り付けたものを再度貼り直した場合であっても、十分な粘着力をもって衣類に貼り付けることができる発熱具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発熱具は、衣類に貼り付けることが可能であり、貼り直しが可能な発熱具であって、空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱組成物が収納され、一方面に通気性を有する袋体と、前記袋体の他方面に形成された粘着層と、前記粘着層を覆うように貼付された剥離シートと、を備え、前記剥離シートは、前記粘着層の対向する各端部を覆う端部シート部と、前記粘着層の各端部に挟まれた中央部を覆う中央シート部と、を有し、前記端部シート部と前記中央シート部とは、分離して剥離可能である。
【0006】
このように構成された発熱具では、まず、1回目の貼り付けとして、端部シート部を剥がすことで露出した粘着層の各端部を利用して衣類に貼り付ける。そして、2回目の貼り付けとして、衣類を着替える等によって新たな衣類に貼りたい場合は、発熱具を衣類から一旦剥がし、中央シート部を剥離して粘着層の中央部を新たに露出させ、この粘着層の中央部と1回目の貼り付けに使用した粘着層の各端部とを使用して、新たな衣類に貼り付ける。これにより、2回目の貼り付けであっても、十分な粘着力をもって発熱具を衣類に貼り付けることができる。
【0007】
上記粘着層全体の面積に対する、前記各端部の合計面積の割合は、62.5〜87.5%とすることが好ましく、より好ましくは75〜87.5%である。このような面積比とすることで、1回目の貼り付けと、2回目の貼り付けとの粘着力を同程度とすることができる。この結果、この粘着力を適宜設定することによって、1回目及び2回目の両方の貼り付けにおいて、発熱具を十分な粘着力をもって衣類に貼り付けることができるとともに、衣類から発熱具を剥がすときにおける衣類の損傷を防ぐこともできる。また、粘着層全体の面積に対する、前記各端部の合計面積の割合が87.5%より小さくすることで、1回目の貼り付けの際に中央シート部が端部シート部と同時に剥がれてしまうことを防止することができる。なお、粘着層全体の面積とは、各端部の面積と中央部の面積とを合計した面積のことを意味する。
【0008】
また、上記粘着層の各端部の平均粘着力と、粘着層の中央部の平均粘着力とは、それぞれ10〜30Nとすることが好ましい。このように、各粘着力を10N以上とすることで、十分に衣類に粘着させることができ、また、各粘着力を30N以下とすることで貼り付けた発熱具を剥がす際に衣類を損傷することを防ぐことができる。
【0009】
また、上記粘着層は、アクリル系の粘着剤、ウレタン系の粘着剤、シリコン系の粘着剤、ゴム系の粘着剤などを使用することができ、その中でもゴム系粘着剤により形成されることが好ましい。ゴム系の粘着剤は、発熱組成物から発する熱に対する粘着力の変化が少ないため、1回目に貼るとき、すなわち発熱組成物がほとんど発熱していないときにおける粘着力と、2回目に貼るとき、すなわち発熱組成物が発熱しているときにおける粘着力が大きく変わらず、粘着力を適切な値に制御することが容易となる。なお、ゴム系の粘着剤としては天然ゴムや、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系、SBR(スチレン・ブタジエンラバー)系などの合成ゴムなどを挙げることができるが、ホットメルト加工に優れるSIS系の合成ゴムを使用することが好ましい。
【0010】
また、上記剥離シートの端部シート部と中央シート部との境界を波形とすることもできる。このように波形にすることによって、1回目と2回目の粘着面の境界線が入り組んだ形状となり、衣類へとかかる粘着力を分散することができる。
【0011】
また、上記袋体は、一方面が疎水性の不織布であることが好ましい、疎水系の不織布は、水を吸収しにくいため、使い捨てカイロ使用時の製品の反りを防ぐことができ、2回目の貼り付けを容易に行うことができる。なお、疎水系の不織布としては、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリプロピレンなどが挙げられるが、製品の反りが少ない点でポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)を挙げることができる。
【0012】
また、上記粘着層における各端部と中央部との境界部分に非粘着部を形成することが好ましい。このように構成することによって、剥離シートの端部シート部と中央シート部とをそれぞれ剥離し易くなるとともに、2回目の貼り付けのために一度貼り付けた発熱具を衣服から剥がす際に、非粘着部から指を差し込むことができ、発熱具を剥がしやすくすることができる。なお、非粘着部は、粘着層を形成していない部分であってもよいし、粘着層をまず形成し、境界部分に粘着性を有さない材料を貼り付けたり塗布したりすることなどによって形成してもよい。
【0013】
また、上記剥離シートの端部シート部及び中央シート部は、袋体の長手方向に沿って延びていることが好ましい。このように構成することによって、1回目の貼り付けにおいて安定して発熱具を衣類に貼り付けることができる。
【0014】
本発明に係る発熱具の使用方法は、上記いずれかの発熱具の使用方法であって、前記端部シートを剥がして前記粘着層の各端部を露出させて衣類に貼着させる第1ステップと、前記第1ステップの後、前記発熱具を衣類から剥がし、前記中央シート部を剥がして、前記粘着層の中央部及び前記各端部を用いて衣類に発熱具を貼着させる第2ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一度衣類に貼り付けた発熱具を再度貼り直した場合であっても、十分な粘着力をもって衣類に再度貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本実施形態に係る発熱具の平面図である。
【図2】図2は図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は本実施形態に係る剥離シートを剥離した状態における発熱具の平面図である。
【図4】図4は本実施形態に係る発熱具の変形例を示す平面図である。
【図5】図5は本実施形態に係る発熱具の他の変形例を示す平面図である。
【図6】図6は本実施形態に係る発熱具のさらに他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る発熱具の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、発熱具1は、袋体2と、袋体2の上面に形成された粘着層3と、粘着層3を覆う剥離シート4と、を備えている。
【0019】
(袋体)
袋体2は、図2に示すように、平面視矩形状の第1シート21及び第2シート22の外周縁部同士をヒートシールなどで接着することによって偏平袋状に構成されており、その内部には発熱組成物Aが充填されている。第1シート21は、通気性を有するシートから構成されており、例えば、JIS K7129に規定されるA法(感湿センサー法)により測定した水蒸気透過度が100〜2000g/m・day程度のシートが好ましく、200〜1000g/m・day程度とすることがより好ましい。このような第1シート21は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。多層構成とする場合、例えば、第1シート21を、多孔質フィルムと不織布とを積層した積層シートとすることができ、この場合は多孔質フィルムを発熱組成物と接するように配置する。このような多孔質フィルムの材質としては、例えば、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを挙げることができ、また、不織布の材質としては、ポリエステルやポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、ポリオレフィンなどを挙げることができる。また、第2シート22は、非通気性のシートから構成されており単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。第2シート22を多層構成とする場合は、例えば、第1シート21と固着させるシーラント層にメタロセン触媒によって共重合させたポリエチレンを配置し、このシーラント層上面に乳白加工をして中間層を形成することで発熱組成物の隠蔽性を上げ、また、この中間層上面に粘着加工性を上げた積層状のポリエチレンを表面層として形成した構成することができる。
【0020】
(発熱組成物)
袋体2内に充填される発熱組成物Aとしては、空気との接触により発熱するものであればよく、例えば、鉄粉、保水剤、金属塩、及び水を含む組成物を使用することができる。なお、発熱組成物A中における鉄粉、保水剤、金属塩、及び水の合計質量は、80〜100質量%程度が好ましい。なお、鉄粉が空気中の酸素と反応して発熱することにより、本発熱具1は温熱効果を発揮できる。
【0021】
鉄粉としては、還元鉄、鋳鉄等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。鉄粉の形状としては、粒状、繊維状等が挙げられる。これらの形状の鉄粉を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、粒状の鉄粉の粒径は、通常10〜300μm程度、好ましくは10〜100μm程度の範囲内を充足することが望ましい。なお、本明細書に記載の粒径は、測定対象となる試料(鉄粉等)100gを、700μm、650μm、500μm、400μm、300μm、250μm、100μm、50μm、10μmの篩を上から順に設けた電動振動篩機にかけ、15分間振動させた後、各篩に残った量及び通過した量を測定することにより算出できる。例えば、粒径が10〜300μmの鉄粉を使用する場合には、300μmの篩は全て通過し、且つ10〜250μmのいずれか又は全ての篩上に残る鉄粉を用いればよい。発熱中における前記鉄粉の含有量は、30〜80質量%程度が好ましく、45〜65質量%程度がより好ましい。
【0022】
上記発熱組成物中の保水剤とは、水を保持する機能を有する物質である。保水剤としては、例えば、多孔質物質、吸水性樹脂等を挙げることができる。多孔質物質としては、具体的には、活性炭、木粉、パーライト、バーミキュライト、ヒル石等が挙げられる。活性炭は、表面の微孔に空気を取り込んで酸素の供給を促したり、熱を保って放熱温度がばらつかないように保温することができる。活性炭は内部構造が非常に多孔性であり、そのため特に良好な水保持能を与える。さらに、活性炭は水を良く吸収するのみならず、発熱組成物の熱の発生により蒸発される水蒸気も吸収し、水蒸気の逃げの防止を助ける。従って、活性炭は水保持物質としても役立つことができる。さらに、活性炭は鉄粉の酸化により生ずる臭いも吸収することができる。前記活性炭としては、例えば、ココナツの殻、木材、木炭、石炭、骨炭等から調製された活性炭を好適に使用できる。前記活性炭の形状としては、粒状、繊維状等が挙げられる。これらの形状の活性炭を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。特に、本発明では、粒状の活性炭を使用することが好ましい。粒状の活性炭を使用する場合、その粒径は、10〜300μm程度が好ましく、10〜100μm程度がより好ましい。当該粒径の測定方法については、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。また、木粉、パーライト、バーミキュライト、及びヒル石についても、水を保持できる限り、その形状については特に制限されないが、発熱具の使用感を高めるために、粒状のものが好ましい。木粉、パーライト、バーミキュライト、及びヒル石について、粒状のものを使用する場合、その粒径は、通常300μm程度以下、好ましくは250μm程度以下である。当該粒径の測定方法についても、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。これらの多孔質物質の中でも、好ましくは、活性炭、ヒル石、バーミキュライトであり、更に好ましくは活性炭及びヒル石、特に好ましくは活性炭である。これらの多孔質物質は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
また、保水剤として使用される吸水性樹脂としては、具体的には、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール−アクリル酸共重合体、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体、ポリアクリル酸塩架橋物、アクリル酸塩−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合体、ポリアクリルニトリル酸塩架橋物等が挙げられる。これらの吸水性樹脂の中でも、好適なものとして、ポリアクリル酸塩架橋物が挙げられる。吸水性樹脂の粒径は、通常100〜500μm程度、好ましくは250〜400μm程度である。当該粒径の測定方法については、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。これらの吸水性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。保水剤は、多孔質物質及び吸水性樹脂のいずれか一方を使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。発熱組成物に使用される保水剤として、好ましくは、多孔質物質、多孔質物質と吸水性樹脂の組合せ;更に好ましくは活性炭、活性炭と他の多孔質物質(活性炭以外の多孔質物質)と吸水性樹脂の組合せ、より好ましくは活性炭とヒル石とポリアクリル酸塩架橋物の組合せが例示される。
【0024】
前記発熱組成物中における前記保水剤の含量は、2〜30質量%程度が好ましく、5〜20質量%程度がより好ましい。より具体的には、前記保水剤として、多孔質物質を単独で使用する場合であれば、発熱組成物中の含量として、10〜30質量%が好ましく、10〜20質量%程度がより好ましい。また、前記保水剤として、吸水性樹脂を単独で使用する場合であれば、発熱組成物中の含量として、2〜10質量%が好ましく、2〜7質量%程度がより好ましい。また、前記保水剤として、多孔質物質と吸水性樹脂を組み合わせて使用する場合であれば、発熱組成物中の含量として、多孔質物質5〜20質量%、吸水性樹脂1〜10質量%が好ましく、多孔質物質7〜20質量%、吸水性樹脂1〜5質量%がより好ましい。特に、保水剤として、活性炭と他の多孔質物質と吸水性樹脂の組合せを使用する場合であれば、活性炭3〜20質量%、他の多孔質物質1〜10質量%、吸水性樹脂1〜10質量%が好ましく、活性炭5〜15質量%、他の多孔質物質1〜5質量%、吸水性樹脂1〜5質量%がより好ましい。
【0025】
金属塩は、空気との酸化反応を容易にするために、鉄粉の表面を活性化させて、鉄の酸化反応を促進させることができる。このような金属塩としては、公知の発熱組成物に使用されている金属塩を使用すればよく、例えば、硫酸第二鉄、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;塩化第二銅、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マンガン、塩化マグネシウム、塩化第一銅等の塩化物等が挙げられる。また、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩及び他の塩も使用することができる。これら金属塩については、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。なお、金属塩の粒径は、通常100〜700μm程度、好ましくは250〜650μm程度である。当該粒径の測定方法については、前記鉄粉の粒径の場合と同様である。また、発熱組成物A中における金属塩の含有量は、0.5〜10質量%程度が好ましく、1〜3質量%程度がより好ましい。
【0026】
水としては、例えば、蒸留水、水道水等を使用できる。発熱組成物中における水の含有量は、1〜40質量%程度が好ましく、20〜30質量%程度がより好ましい。
【0027】
また、発熱組成物Aは、上記成分以外にも、必要に応じて、発熱組成物に配合可能な他の添加剤を含有してもよい。以上の各成分を混合することにより、発熱組成物Aを調製することができる。混合は、必要に応じて、真空下又は不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、例えば、米国特許第4,649,895号に記載された方法に従って混合すればよい。
【0028】
(粘着層)
粘着層3は、第2シート22の外側面に形成されており、例えば、アクリル系粘着剤や、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、松脂などを第2シート22に塗布することによって形成することができる。この粘着剤の塗布量は、粘着剤の厚みが40〜70μm程度となるように塗布することが好ましい。この粘着層3は、後述するように、対向する各端部31a、31bと、各端部31a、31bによって挟まれた中央部32とに分けることができる(図3参照)。そして、各端部31a、31bと中央部32との境界部分に非粘着部33が形成されている。この非粘着部33は、例えば、粘着層3をその部分だけ形成しないことによって形成したり、若しくは一旦粘着層3を形成した後に非粘着性の物質を粘着層3上に塗布したりすることで形成することができる。このように非粘着部33が形成されることによって、この非粘着部33から剥離シート4を剥離し易くなり、また、2回目の貼り付けのために一度貼り付けた発熱具1を衣服から剥がす際に、非粘着部33の部分から指を差し込むことができ、発熱具を剥がしやすくすることができる。なお、ゴム系の粘着剤の具体例としては、例えば、天然ゴムや、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系、SBR(スチレン・ブタジエンラバー)系などの合成ゴム等を挙げることができる。
【0029】
(剥離シート)
剥離シート4は、粘着層3を覆うためのシートであって、例えば、紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンなどを単独又は複数組み合わせて積層し、これらの粘着層3を覆う側の面にシリコン加工を施して形成することができる。この剥離シート4は、対向する長辺側の各端部となる端部シート部41a、41bと、これら端部シート部41a、41bによって挟まれた中央シート部42とから構成されている。そして、端部シート部41a、41bによって覆われた粘着層3の領域を端部31a、31bとし、中央シート部42によって覆われた粘着層3の領域を中央部32とする。なお、各端部シート部41a、41bと、中央シート部42とは、別々に剥がすことができるよう分離されている。粘着層3全体の面積(各端部31a、31b、中央部32の各面積を合計したものであり、非粘着部33は含まない)に対する、各端部シート部41a、41bによって覆われた粘着層3の各端部31a、31bの合計した面積の割合は、約62.5〜87.5%であることが好ましく、約75.0〜87.5%とすることがさらに好ましい。このような面積比とすることによって、後述するように1回目に貼ったときの粘着力と、2回目に貼ったときの粘着力との差を10N以内とすることができ、この結果、粘着層3の粘着力を調整することによって、1回目及び2回目の両方の貼り付けにおいて、発熱具1を衣類に十分粘着させることができるとともに、発熱具1を衣類から剥がすときに衣類を損傷させることもない。なお、粘着層3の各端部31a、31bの合計粘着力や、中央部32の粘着力は、10〜30Nとすることが好ましい。粘着力の範囲をこのようにすることによって、発熱具1を衣類に十分な粘着力をもって貼り付けるとともに、衣類から剥がすときに衣類を損傷させることもない。また、この剥離シート4は、袋体2の長手方向に沿って各端部シート部41a、41bと中央シート部42とに分離されている。
【0030】
次に、上述した発熱具1の使用方法について説明する。
【0031】
発熱具1は、発熱組成物Aが空気の存在下で発熱するため、使用前においては空気との接触を防ぐ必要があり、通常は、空気を通過させることのない気密性を有する包装体内に収容されており、使用に際し包装体を開封して発熱具1を取り出す。
【0032】
包装体から取り出された発熱具1を衣類に貼り付けるため、1回目の貼り付けとして、まず剥離シート4の端部シート部41a,41bを剥がし、粘着層3の各端部31a、31bを露出させて衣類に貼り付ける。そして、衣類を着替えるなどによって発熱具1を貼り直す必要があるときは、2回目の貼り付けとして、発熱具1を衣類から剥がし、剥離シート4の中央シート部42を剥離する。そして、中央シート部42を剥離することによって新たに露出した粘着層3の中央部32と、1回目の貼り付けの際に使用された粘着層3の各端部31a、31bとを使用して、発熱具1を衣類に貼り付ける。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る発熱具1によれば、1回目に貼るときは、粘着層3の各端部31a、31bのみを使用して衣類に貼り付け、2回目に貼るときは粘着層3の中央部32を新たに露出させて衣類に貼り付けることができるため、2回目に貼るときであっても、十分な粘着力で発熱具1を衣類に貼り付けることができる。また、粘着層3全体の面積に対する各端部31a、31bの合計面積を上述したような範囲とすることによって、1回目に貼り付けるときの粘着力と、2回目に貼り付けるときの粘着力と、の差を小さくすることができ、この結果、1回目及び2回目の両方の貼り付けにおいて、十分な粘着力をもって発熱具1を衣類に貼り付けることができるとともに、発熱具1を衣類から剥がしたときに粘着力が強すぎて衣類を損傷させるといったことも防ぐことができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、粘着層3内に、2本の非粘着部33が形成されているが、これを無くすこともできる。
【0035】
また、上記実施形態では、端部シート41a、41bは互いに独立しており、別々に剥がすように構成されているが、例えば、図4に示すように、連結部43によって、端部シート41a、41bの先端部同士及び後端部同士の少なくとも一方を連結し、端部シート41a、41bを一度に剥がすことができるような構成とすることもできる。なお、この場合、図5に示すように、中央シート部42を、粘着層3の外周縁部に向かって延びるような複数の突起部421を有するような形状とすることもできる。このように、複数の突起部421を有していることで、2回目の貼り付けを行うために中央シート部42を剥離すると、各突起部421によって覆われていた粘着層3の外周縁部が新たに露出する。これにより、2回目の貼り付けの際にも新たに露出した粘着層3の外周縁部を用いて貼り付けを行うことができ、2回目の貼り付けもより安定したものとすることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、粘着層3及びこれを覆う剥離シート4は、平面視矩形状に形成されているが、図6に示すように、楕円形状にしたりするなど、種々の形状とすることができる。同様に、袋体2も平面視楕円形状にするなど、平面視矩形状以外の種々の形状とすることができる。
【0037】
また、剥離シート4における各端部シート部41a、41bと中央シート部42の剥離する順番を明示するために、例えば、剥離シート4や、粘着層3,袋体2の少なくともいずれかに、剥離する順番を示す記号や文字などのマークを付すことができる。粘着層3や袋体2にマークを付す場合は、剥離シート4が粘着層3に付着した状態でそのマークが視認できるよう、粘着層3や剥離シート4を透明、又は半透明とする。
【0038】
また、上記実施形態では、第2シート22の外側面全体に粘着層3を形成しているが、特にこれに限定されず、例えば、ドット状に粘着層3を形成するなど、一部に粘着層3が形成されていなくてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、粘着層3の各端部31a、31bを、分離された2枚の端部シート部41a、41bで覆っているが、一枚の端部シート部で覆うこともできる。この場合、まず中央シート部42で粘着層3の中央部32を覆い、その上から粘着層3と同じ寸法の端部シート部で粘着層3の各端部31a、31bを含めた粘着層3全体を覆っている。
【実施例1】
【0040】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
まず、第2シート22の上面に粘着層3を形成し、この粘着層3を剥離シート4で覆ったものを複数作製して試験片とし、1回目の貼り付けと2回目の貼り付けの粘着力の差を評価した。なお、粘着層3の各端部31a、31b、及び中央部32の幅(図3の上下方向における距離)は、表1に示すように種々変更している。
【0042】
試験片の作製方法について説明すると、まず、第2シート22として、長さ130mm、幅95mmのポリエチレンのフィルムを準備し、この第2シート22の上面全体に、厚さが65μmとなるようにSIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系の粘着剤を塗布して粘着層3を形成した。なお、第2シート22の長手方向に延びる7.5mm幅の非粘着部33が2本形成されており、この非粘着部33は粘着層3が形成されていない部分である。この非粘着部33によって、粘着層3は、各端部31a、31bと中央部32とに分かれている。そして、この粘着層3を覆うための剥離シート4としては、第2シート22と同じ寸法を有する紙とポリエチレンをラミネートし、ポリエチレン層側の全面にシリコン加工したものを使用し、このシリコン加工したポリエチレン側の面を粘着層3に貼り付けた。なお、剥離シート4は各端部シート部41a、41b、及び中央シート部42に分離されており、剥離シート4の各端部シート部41a、41b、及び中央シート部42は、粘着層3の各端部31a、31b、及び中央部32と対応するような寸法となっている。
【0043】
このようにして作製した試験片を使用し、以下のようにして、1回目の貼り付けと2回目の貼り付けの粘着力を測定した。まず、剥離シート4の各端部シート部41a、41bを剥がして粘着層3の各端部31a、31bを露出させ、これを、JIS標準綿布 金巾3号(日本規格協会製)の上に重ね、この上から2kgの荷重を有するローラを300mm/minの速度で往復させて圧着固定して1回目の貼り付けを行い、この試験片を島津小型卓上試験機 EZTest(島津製作所製)を使用して300mm/minの速度で180度の方向に引き剥がしたときの粘着力を測定した。このときに得られた粘着力の結果を、「粘着力 1回目」として表1に示す。続いて、この試験片をJIS標準綿布 金巾3号(日本規格協会製)から剥がし、剥離シート4の中央シート部42を剥がして粘着層3の中央部32を露出させ、つまり、粘着層3全ての面が露出した状態とし、これを新たなJIS標準綿布 金巾3号(日本規格協会製)に貼り付け、上記と同様の方法で粘着力を測定した。このときに得られた粘着力の結果を「粘着力 2回目」として表1に示す。なお、表1中の面積比とは、粘着層3全体の面積に対する、端部31a、31bの合計面積の割合を意味している。この粘着層3全体の面積とは、粘着層3の端部31a、31b、中央部32の面積を合計したものであり、非粘着部33の面積は含まれていない。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から、面積比が62.5〜87.5%であれば、粘着力の差は、10N以内に収まることが分かった。
【符号の説明】
【0046】
1 発熱具
2 袋体
3 粘着層
31a、31b 端部
32 中央部
4 剥離シート
41 端部シート部
42 中央シート部
A 発熱組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類に一度貼り付けた後に貼り直すことが可能な発熱具であって、
空気との接触により発熱可能な被酸化性金属を含む発熱組成物が収納され、一方面に通気性を有する袋体と、
前記袋体の他方面に形成された粘着層と、
前記粘着層を覆うように前記粘着層上に貼付された剥離シートと、を備え、
前記剥離シートは、前記粘着層の対向する各端部を覆う端部シート部と、前記粘着層の各端部に挟まれた中央部を覆う中央シート部と、を有し、前記端部シート部と前記中央シート部とは、分離して剥離可能である、発熱具。
【請求項2】
前記粘着層全体の面積に対する前記各端部の合計面積の割合が、62.5〜87.5%である、請求項1に記載の発熱具。
【請求項3】
前記粘着層の各端部の合計粘着力と、前記粘着層の中央部の粘着力とは、それぞれ10〜30Nである、請求項1又は2に記載の発熱具。
【請求項4】
前記粘着層は、ゴム系の粘着剤により形成される、請求項1から3のいずれかに記載の発熱具。
【請求項5】
前記剥離シートの端部シート部と中央シート部との境界は、波形である、請求項1から4のいずれかに記載の発熱具。
【請求項6】
前記粘着層は、前記各端部と前記中央部との境界部分に非粘着部が形成されている、請求項1から5のいずれかに記載の発熱具。
【請求項7】
前記剥離シートの端部シート部及び中央シート部は、前記袋体の長手方向に沿って延びている、請求項1から6のいずれかに記載の発熱具。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の発熱具の使用方法であって、
前記端部シートを剥がして前記粘着層の各端部を露出させて衣類に貼着させる第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記発熱具を衣類から剥がし、前記中央シート部を剥がして、前記粘着層の中央部及び前記各端部を用いて衣類に発熱具を貼着させる第2ステップと、を含む、発熱具の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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