説明

発熱具

【課題】衣類に取り付けた状態において、着用者が動作しても剥がれにくい発熱具を提供すること。
【解決手段】発熱具10は、通気性を有する第1の面13と、第2の面14と、これらの面13,14の間に配置された発熱部11とを備える。第2の面14の外面に発熱具10を衣類へ固定するための第1の粘着部16a及び第2の粘着部16bが設けられている。第1の粘着部は、横方向Xの両端に位置し、かつ縦方向Yの全長にわたって一対設けられている。第2の粘着部16bは第1の粘着部16a間に位置し、かつX方向に延びるとともに、その上縁及び下縁が発熱具10の上縁及び下縁にまで達していない。第1の粘着部16aと第2の粘着部16bとは離間している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の加温に用いられる発熱具に関し、特に下着に貼り付けて用いられる発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
肌に直接温熱を提供する発熱具として、肌に直接貼るタイプのものだけでなく、下着に取り付けるタイプのものが提案されている。粘着剤によって発熱具を下着に首尾良く取り付けようとする場合、衣類に対する粘着力のように粘着剤の特性が影響するだけでなく、取り付ける箇所に応じて大きさや形状の制約があることから、粘着剤の塗布状態も大きく影響する。これらの理由によって、粘着剤の種類や塗布位置等が種々検討されている。例えば本出願人は先に、発熱具の縦方向Yに延びる中心線CLに沿って縦方向Yに延びかつ上下縁まで達している中央帯状域A、上縁に沿って横方向Xに延びかつ左右側縁まで達している上部帯状域B、及び下縁の中心位置から該下縁に沿って左右側縁へ向けて横方向Xに延びる下部帯状域C以外の領域に粘着部が設けられている発熱具を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−220527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の発熱具によれば、これをショーツの内面に取り付けるときや取り外すときに、着用者の指等が粘着部に粘着することが効果的に防止される。また、発熱具の取り付け時に、誤って発熱具がショーツのウエスト開口部からはみ出してしまったときに、粘着部が他の衣類に粘着することが効果的に防止される。しかし、取り付け時の操作性に加え、着用者のいかなる動作によっても剥がれにくい発熱具が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、着用者の肌に近い側に位置しかつ通気性を有する第1の面と、着用者の肌から遠い側に位置する第2の面と、第1の面及び第2の面の間に介在配置された発熱部とを備え、横方向Xに延びる上縁及び下縁と縦方向Yに延びる左右の側縁とを有し、横方向Xに長い形状である発熱具であって、
第2の面の外面に発熱具を衣類へ固定するための第1の粘着部及び第2の粘着部が設けられており、
第1の粘着部は、横方向Xの両端に位置し、かつ縦方向Yの全長にわたって一対設けられており、
第2の粘着部は、一対の第1の粘着部間に位置し、かつ横方向Xに延びるとともに、その上縁及び下縁が発熱具の上縁及び下縁にまで達しておらず、
第1の粘着部と第2の粘着部とが離間している発熱具を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の発熱具によれば、着用者の動作に起因する衣類からの剥離が効果的に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)は本発明の発熱具の第1の実施形態としての蒸気温熱具を第1の面側からみた平面図であり、図1(b)は該蒸気温熱具を第2の面側からみた平面図である。
【図2】図2は図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図3は図1に示す蒸気温熱具における発熱部を示す斜視図である。
【図4】図4は図1に示す蒸気温熱具をショーツに固定する状態を示す説明図である。
【図5】図5は図1に示す蒸気温熱具が包装材に収納された状態を示す断面図である。
【図6】図6は本発明の発熱具の第2の実施形態としての蒸気温熱具をその衣類当接面側からみた平面図(図1(b)相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態においては発熱具の一種としての蒸気温熱具について説明する。蒸気温熱具は、それに含まれる発熱体から発生した所定温度に加熱された水蒸気を、着用者の身体に適用し、主として着用者の生理機能を改善するために用いられる。
【0009】
図1(a)及び(b)に示すように、蒸気温熱具10は、横方向X及びそれに直交する縦方向Yを有し、横方向に長い形状をしている。蒸気温熱具10は、横方向Xに延びる上縁10a及び下縁10bと、縦方向Yに延びる左右の側縁10c,10dとを有している。上縁10aは、蒸気温熱具10の横方向Xに延びる中心線(図示せず)に向かう内向きの凸状となるような曲線形状をしている。下縁10bは、横方向Xに延びる中心線に対して外向きの凸状となるような曲線形状をしている。左右の側縁10c,10dは、それぞれ外向きの凸状となるような曲線形状をしている。上縁10aの両端部は左右の側縁10c,10dの上端部と滑らかに連なっている。同様に、下縁10bの両端部は左右の側縁10c,10dの下端部と滑らかに連なっている。蒸気温熱具10がこのような滑らかな輪郭を有することで、該蒸気温熱具10はその着用中に違和感が発生しづらくなっている。
【0010】
蒸気温熱具10は、発熱部11及び該発熱部11を収容する収容体12を備えている。収容体12は扁平なものであり、蒸気温熱具10の輪郭を成すとともに、発熱部11が収容される空間を形成するものである。扁平な形状を有する収容体12は、図2に示すように、着用者の肌に近い側に位置する第1の面13、及びそれと反対側であり、使用者の肌から遠い側に位置する第2の面14を有している。
【0011】
発熱部11は、横方向Xに沿って収容体12内に2個配置されている。2つの発熱部11は同形であり、平面視して矩形をしている。各発熱部11は、発熱体11aと、シート11bとシート11cとを有している。シート11bは、収容体12における第1の面13側に位置し、シート11cは、第2の面14側に位置している。図3には発熱部11の詳細が示されている。同図に示すように、発熱体11aは、シート11b,11cによって挟持されている。シート11bは透湿性シートからなる。シート11cは、透湿性シートであるか、又は非透湿性シートである。シート11cが透湿性シートである場合、該透湿性シートの通気性は、透湿性シート11bの通気性よりも低くなっている。発熱体11aは、被酸化性金属を含んでおり、この被酸化性金属が酸素と接触することによる酸化反応で生じた熱を利用して、所定温度に加熱された水蒸気を発生する部位である。発熱部11の詳細については後述する。なお、図1及び2に示す蒸気温熱具10では、その縦中心に対して左右2個の同形状の発熱部11が収容されているが、これに代えて、2つの発熱部11の大きさを異ならせてもよく、3個以上の複数個の発熱部を収容させてもよい。あるいは、2個の発熱部11をそれらの対向する辺で突き合わせて連設させ、発熱体11aを2個有する1個の発熱部11となし、該発熱部11を収容体12内の全域にわたって配置してもよい。
【0012】
蒸気温熱具10は、その第1の面13の側が着用者の肌に直接当接し、第2の面14の側が衣類(本実施形態では、例えば、後述するようにショーツ)に直接当接するように使用される。発熱部11の発熱によって発生した水蒸気は、第1の面13を通じ、対象物である着用者の肌に直接付与されるようになっている。
【0013】
蒸気温熱具10における第1の面13及び第2の面14はいずれもシート材から構成されている。そして、図2に示すように、蒸気温熱具10の収容体12はその周縁に、第1の面13及び第2の面14をそれぞれ構成するシート材の周縁部を互いに接合して形成された閉じた形状の周縁接合部15を有している。周縁接合部15は連続に形成されている。収容体12は、周縁接合部15よりも内側の部分において第1の面13と第2の面14とが非接合状態になっている。それによって収容体12には、発熱部11を収容する単一の密閉空間が形成されている。図2に示すように、発熱部11は収容体12に形成されている空間のほぼ全域を占めるように収容されている。図2では発熱部11は収容体12内の空間に、該収容体12と非接合状態で収容されているか、又は発熱部11の発熱を妨げない範囲で、収容体12の内面の一部と発熱部11とを接着剤等の接合手段を用いて固定してもよい。
【0014】
図1(b)に示すように、第2の面14を構成するシートの表面には、蒸気温熱具10を着用者の衣類、例えば図4に示すように女性のショーツ30の前身頃30aの内面に着脱可能に取り付けるための粘着部16a,16b及び16cが設けられている。蒸気温熱具10の取り付けに際しては、これが下着に貼り付けた状態で、その上縁10aが上側に位置しかつ下縁10bが下側に位置するようにする。この状態においては、蒸気温熱具10の横方向Xは、水平方向に一致する。蒸気温熱具10は、ショーツ30の内面に直接固定されるので、ショーツ30の形状(股上の深いものや浅いもの)によらず所望の位置に蒸気温熱具10を固定することができる。例えば、蒸気温熱具10の固定位置が、ショーツ30の前身頃30aにおける股下部30bの近傍、つまり最下腹部に対応する位置であると、着用者の身体への水蒸気の付与による生理痛の緩和の効果が顕著なものとなる。また、腹部や背中側の脊椎付近に適用すると失禁・頻尿や便秘の改善等の生理機能の改善効果が期待できる。一般にショーツ30は、その前身頃30a及び後身頃(図示せず)から股下部30bに向けて切れ込んだ形状をしているので、蒸気温熱具10の輪郭が、その切れ込んだ形状に一致していると、着用者の最下腹部に対応する位置にフィット性よく蒸気温熱具10を固定することができる。そこで蒸気温熱具10は、その下縁10bが、蒸気温熱具10の横方向Xに延びる中心線に対して外向きの凸状となるような曲線形状をしている。
【0015】
上述した各粘着部は、例えば熱可塑性樹脂であるアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂などの粘着剤を第2の面14の表面に塗工したり印刷したりすることで形成されている。これらの樹脂は非転着性であることが好ましい。
【0016】
蒸気温熱具10は、第2の面14における粘着部の配置位置が特徴の一つになっている。図1(b)に示すように、粘着部は、第1の粘着部16a、第2の粘着部16b及び第3の粘着部16cに大別される。第1の粘着部16aは、蒸気温熱具10の横方向Xの両端に位置し、かつ縦方向Yの全長にわたって縦長に一対設けられている。第1の粘着部16aがこのような形状で設けられていることで、蒸気温熱具10の左右の側縁域が確実に衣類に取り付けられるので、蒸気温熱具10の使用中における剥がれや位置ずれが効果的に防止される。この効果を一層顕著なものとする観点から、第1の粘着部16aの幅は、左右側縁10c,10dのそれぞれ外向き凸状部に接する縦方向Yの接線からの距離(すなわち、第1の粘着部16aの最大幅)で、10〜20mmであることが好ましい。
【0017】
第2の粘着部16bは、一対の第1の粘着部間に位置し、かつX方向に延びている。第2の粘着部16bは、X方向に延びる矩形状をしている。第2の粘着部16bは、蒸気温熱具10の縦方向Yに延びる中心線CL(以下「縦中心線CL」ともいう。)を挟んで対称の位置に一対設けられている。第2の粘着部16bがX方向に延びる形状をしていることによって、蒸気温熱具10を例えば図4に示すようにショーツ30の内面に貼り付けた場合に、着用者の腹部の凸形形状に沿いつつ取り付け状態を維持することが可能となる。また、例えば着用者が前屈動作を行うときに剥がれづらくなる。この効果を一層顕著なものとする観点から、蒸気温熱具10の横方向Xの長さが50〜300mmで、縦方向Yの長さが50〜120mmである場合には、第2の粘着部16bの横方向Xの長さを10〜80mm、特に20〜50mmとすることが好ましい。ここで、図1に示すように、第2の粘着部16bが縦中心線CLを挟んで左右対称に配置されている場合には、第2の粘着部16bの横方向Xとは、左右それぞれの第2の粘着部16bにおける横方向Xの長さのことである。また、蒸気温熱具10の横方向Xの全長X0(左右側縁の外向き凸状部に接する縦方向Yの接線間の長さ)に対する、第2の粘着部16bの長さの合計(Xb)の比率(Xb/X0)は、0.4〜0.75であることが好ましい。第2の粘着部16bの縦方向Yの長さに関しては、これを5〜60mm、特に10〜40mmとすることが好ましい。
【0018】
図1(b)に示すように、第2の粘着部16bは、その上縁161a及び下縁161bが、蒸気温熱具10の上縁10a及び下縁10bにまでは達していない。つまり、第2の粘着部16bの上縁161aと蒸気温熱具10の上縁10aとの間は、粘着部の非存在領域になっている。同様に、第2の粘着部16bの下縁161bと蒸気温熱具10の下縁10bとの間も、粘着部の非存在領域になっている。
【0019】
第2の粘着部16bの上縁161aが蒸気温熱具10の上縁10aにまで達していないことによって、本実施形態の蒸気温熱具10によれば次の有利な効果が奏される。すなわち、蒸気温熱具10を例えば図4に示すように女性のショーツ30の前身頃30aに取り付けるときに、着用者の誤操作によってショーツ30のウエスト開口部から蒸気温熱具10がはみ出して取り付けられた場合であっても、そのはみ出た部分は両側縁付近のわずかな箇所以外は粘着部が存在していないので、ショーツ以外の衣類に粘着部が付着することが防止される。また、蒸気温熱具10をショーツ30から取り外すときには、ショーツとの隙間が生じるので指を挿入しやすく、蒸気温熱具10を首尾良く取り外すことができる。
【0020】
一方、横方向に長い粘着部である第2の粘着部16bの下縁161bが蒸気温熱具10の下縁10bにまで達していないことによって、粘着剤に陰毛が貼り付くことを効果的に防止できる。ショーツ30の前身頃30aにおける股下部30bの近傍に蒸気温熱具10を取り付けると、着用者の身体への水蒸気の付与による生理痛の緩和の効果が顕著なものとなるところ、そのような位置への蒸気温熱具10の取り付けは、粘着剤への陰毛の貼り付きの原因となりやすい。これに対し、第2の粘着部16bの下縁161bと蒸気温熱具10の下縁10bとの間が粘着部の非存在領域になっていることで、そのような不都合を効果的に防止することができる。
【0021】
上述の効果を一層顕著なものとする観点から、蒸気温熱具10の横方向Xの長さ及び縦方向の長さYが上述した範囲である場合には、第2の粘着部16bの上縁161aと蒸気温熱具10の上縁10aとの距離を5〜45mm、特に15〜35mmとすることが好ましい。ここで、蒸気温熱具10の上縁10aからの距離とは、内向きの凸状となっている上縁10aにおける曲線形状の最底部において横方向Xに引いた平行線(接線)からの距離である。また、第2の粘着部16bの下縁161bと蒸気温熱具10の下縁10bとの距離を20mm以上、特に20〜70mm、とりわけ20〜50mmとすることが好ましい。第2の粘着部16bは、蒸気温熱具10をショーツ30に安定的に保持する点と、粘着剤が体毛に絡むことを防止する点との兼ね合いから、縦方向Yに関してほぼ中央域から少し上方に設けることが好ましい。
【0022】
図1(b)に示すように縦中心線CLに対して右側に位置する第1の粘着部16aと第2の粘着部16bとは連結しておらず、両者は離間しており、両者間は細い縦長の粘着部非存在領域となっている。縦中心線CLに対して左側に位置する第1の粘着部16aと第2の粘着部16bとに関しても同様である。このように第1の粘着部16aと第2の粘着部16bとが離間していることに起因して、蒸気温熱具10を例えば図4に示すようにショーツ30の内面に取り付けた場合、両粘着部が連結しているときと比較して、蒸気温熱具10の横方向Xへの伸長が阻害されにくくなる。その結果、着用者の動作等によって着用中にショーツが横方向Xに伸びた場合であっても、蒸気温熱具10がその伸びに追従し、ショーツ30から剥がれにくくなる。この効果を一層顕著なものとする観点から、第1の粘着部16aと第2の粘着部16bとの間に位置する粘着部非存在領域は、横方向Xの長さを1〜10mm、特に1〜5mmとすることが好ましい。
【0023】
第1の粘着部16a及び第2の粘着部16bに加えて、蒸気温熱具10は第3の粘着部16cも有している。第3の粘着部16cは、縦中心線CLを挟んで相対向し、かつ対称な位置に一対設けられている。2つの第3の粘着部16cは同形であり、縦方向Yに延びる一定幅の帯状をしている。第3の粘着部16cは、縦方向Yの全長にわたって伸び、その上下縁が、蒸気温熱具10の上下縁10a,10bにまで達している。第1及び第2の粘着部16a,16bに加え、第3の粘着部16cを用いることで、蒸気温熱具10の横方向Xの中央域における接合力が高くなり、蒸気温熱具10を例えば図4に示すようにショーツ30の内面に取り付けた場合、着用者の動作等によって着用中にショーツが横方向Xに伸びた場合であっても、蒸気温熱具10がショーツ30から剥がれにくくなる。また、第3の粘着部16cを設けていることにより、後述する剥離紙17を取り付けやすくなるという利点もある。
【0024】
上述の効果を一層顕著なものとする観点から、第3の粘着部16cの横方向Xの長さを5〜20mm、特に5〜15mmとすることが好ましい。縦方向Yの長さは、蒸気温熱具10の縦方向Yの長さと同じである。
【0025】
図1(b)に示すように縦中心線CLに対して右側に位置する第3の粘着部16cと第2の粘着部16bとは連結しておらず、両者は離間しており、両者間は細い縦長の粘着部非存在領域となっている。縦中心線CLに対して左側に位置する第3の粘着部16cと第2の粘着部16bとに関しても同様である。このように第3の粘着部16cと第2の粘着部16bとが離間していることに起因して、蒸気温熱具10を例えば図4に示すようにショーツ30の内面に取り付けた場合、両粘着部が連結しているときと比較して、蒸気温熱具10の横方向Xへの伸長が阻害されにくくなる。その結果、着用者の動作等によって着用中にショーツが横方向Xに伸びた場合であっても、蒸気温熱具10がその伸びに追従し、ショーツ30から剥がれにくくなる。この観点から、第3の粘着部16cと第2の粘着部16bとの間に位置する粘着部非存在領域は、横方向Xの長さを1〜10mm、特に1〜5mmとすることが好ましい。
【0026】
縦中心線CLに対して相対向する一対の第3の粘着部16c間も縦長の粘着部非存在領域となっている。この粘着部非存在領域によって、蒸気温熱具10をショーツ30へ取り付けるとき及び/又はショーツ30から取り外すときに、着用者の指が粘着部に付着しづらくなる。その結果、取り付け及び取り外しの操作性が良好になる。具体的には、例えば蒸気温熱具10をショーツ30へ取り付ける場合には、肌に近い側に位置する第1の面13に親指を当て、かつショーツ30に対向する第2の面14における一対の第3の粘着部16c間に他の指(例えば中指)を添えて蒸気温熱具10を把持することで、蒸気温熱具10をショーツ30の前身頃30aの内面に首尾良く貼り付けることができる。蒸気温熱具10をショーツ30から取り外すときには、例えば親指以外の指(例えば中指)を一対の第3の粘着部16c間に沿って蒸気温熱具10とショーツ30との間に挿入し、次いで肌に近い側に位置する第1の面13に親指を添え、親指と他の指で蒸気温熱具10を把持することで、蒸気温熱具10を首尾良く取り外すことができる。この観点から、一対の第3の粘着部16c間における粘着部非存在領域の横方向Xの長さを5mm以上、特に5〜25mm、とりわけ10〜25mmとすることが好ましい。
【0027】
図2に示すように、各粘着部16a,16b,16cは、蒸気温熱具10の使用前の状態においては剥離紙17によって保護されている。剥離紙17は2枚使用され、一方の剥離紙17によって、縦中心線CLに対して左右の一方の側に位置する3種の粘着部16a,16b,16cが保護される。また他方の剥離紙17によって、縦中心線CLに対して他方の側に位置する3種の粘着部16a,16b,16cが保護される。2枚の剥離紙17は、互いに重なり合わないように取り付けられている。その結果、縦中心線CL及びその近傍の位置において、2枚の剥離紙17は、それらの端縁部間が離間している。該端縁部は、粘着部と接合していない非接合部になっている。この端縁部は剥離紙17を剥離するためのタブ部17aとして機能する。
【0028】
このように剥離紙17が取り付けられた蒸気温熱具10は、剥離紙17が外方を向くように、縦中心線CLに沿って二つ折りされ、図5に示すように酸素バリア性の包装袋20に収納されて保管される。蒸気温熱具10の使用に際しては、これを包装袋20から取り出して剥離紙17を剥離する。この場合、剥離紙17が外方に露出しており、かつ剥離紙17における縦中心線CL寄りの端縁部は上述のとおりタブ部17aとして機能するので、該タブ部17aを摘み上げることで剥離紙17の取り外しを極めて容易に行うことができる。しかも、剥離紙17は縦中心線CLに対して左右対称に2枚取り付けられているので、蒸気温熱具10を衣類に取り付ける操作が行いやすい。詳細には、一方の剥離紙17のみを取り外した状態で、蒸気温熱具10の半分を衣類に仮取り付けし、次いで他方の剥離紙を取り外して蒸気温熱具10の半分を衣類に取り付けることができるので、衣類の適正な位置に操作性良く蒸気温熱具10を取り付けることができる。
【0029】
本実施形態の蒸気温熱具10によれば、これを図4に示すように装着することで、所定温度に加熱された水蒸気による熱が直接着用者の身体に施されるので、生理痛が効果的に緩和される。この理由は、水蒸気の発生を伴う熱は、水蒸気の発生を伴わない熱に比べて熱の伝導が速いので、人体の深部の温度を一層高め得るからである。人体の深部の温度が高くなることで、自律神経を介して温熱中枢が刺激され、それによって血管が拡張して血流が増加し、また末梢温度が上昇する。それによって生理痛が緩和されるものと考えられる。
【0030】
次に蒸気温熱具10を構成する各部材の詳細について説明する。まず収容体12について説明する。収容体12としては、十分な通気性を有し、かつ肌触りが良好なシート材が用いられる。収容体12の通気性は、後述する発熱部11におけるシート11bの通気性よりも十分に高くなっている。そのようなシート材としては不織布が好適に用いられる。少なくとも収容体12における肌当接面である第1の面13側は不織布で構成されていることが好ましい。それによって、蒸気温熱具10を着用者の肌に直接当接するように用いても、良好な着用感が得られる。
【0031】
特に、着用者の肌に直接当接する面である第1の面13を構成する不織布として、所定のパターンで分散配置された多数の凸部12aと、凸部12a間に位置する凹部12bとを表面に有し、該表面が凹凸形状をなしている不織布を用いることが好ましい。第1の面13に凹凸形状が形成されていることで、蒸気温熱具10を着用した場合には、該表面のうち主として凸部12aが着用者の肌と接することになる。つまり第1の面13の全域が着用者の肌に接するのではなく、凸部12aによる点接触で部分的に接することになる。凸部12aは繊維で形成されておりクッション感や嵩高感が良好であることから、凸部12aによる点接触により良好な着用感が得られる。
【0032】
また本実施形態の蒸気温熱具10によれば、第1の面13の凹凸形状に起因して、蒸気温熱具10と着用者の肌との接触面積が低減し、着用中に蒸れが発生しづらくなる。更に蒸気温熱具10は、所定温度に加熱された水蒸気を発生するものであるところ、凸部12aが蒸気温熱具10と着用者の肌とを隔てるスペーサとして作用し、発生した水蒸気が効率よく着用者の肌に適用されるようになる。しかも、凸部12aのスペーサとしての働きによって、着用者の身体と蒸気温熱具10との間に空気が流通する空間が形成されるので、着用者の身体に直接接する面である第1の面13を通じての空気の流入が円滑になり、発熱及び水蒸気の発生が安定して持続する。
【0033】
以上の観点から、第1の面13における凸部12aにおける不織布の厚み(T1)を1〜30mm、特に1〜10mmに設定することが好ましい。また凹部12bにおける不織布の厚み(T2)を0.01〜5mm、特に0.1〜1mmに設定することが好ましい。またT1/T2の比率を2〜50、特に2〜20に設定することも好ましい。更に同様の観点から、第1の面13の面積に対する凹部12bの面積率(第1の面13の単位面積当たりの凹部12bの面積の割合)は、3〜50%が好ましく、5〜35%であることが更に好ましい。凹部12bそれ自体の面積は、0.1〜5mm2、特に0.1〜1mm2であることが好ましい。隣り合う凸部12aどうしの最短距離(凸部の中心とその隣の凸部の中心までの距離)は0.5〜15mm、特に1〜10mmであることが好ましい。実質厚みは、無加圧の状態の不織布の断面写真又は断面映像から、凸部頂点及び凹部を通るように不織布を切断し、その断面形状を(株)キーエンス製のマイクロスコープVH−8000を用いて測定することで求められる。凹凸形状は、複数の不織布の積層によって、又は1種類の不織布をエンボス加工等することによって形成することができる。
【0034】
このような不織布の詳細については、本出願人の先の出願に係る特開2008−220943号公報に記載されている。
【0035】
次に、蒸気温熱具10における発熱部11について説明する。発熱部11における発熱体11aは、被酸化性金属、反応促進剤、電解質及び水を含む。そのような発熱体11aは、例えば発熱シート又は発熱粉体からなる。発熱体11aが発熱シートからなる場合には、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含む、含水状態の繊維シートであることが好ましい。すなわち、発熱シートは、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されていることが好ましい。発熱シートとしては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。一方、発熱体11aが発熱粉体からなる場合には、発熱粉体は被酸化性金属、反応促進剤、保水剤、電解質及び水を含んで構成されていることが好ましい。発熱シート及び発熱粉体のうち、着用者がどのような姿勢においても蒸気温熱を均一に適用し得る点から、発熱シートを用いることが好ましい。また、発熱シートは、発熱粉体に比較して、発熱の温度分布を均一化することが容易であり、また、被酸化性金属の担持能力が優れている点からも有利である。
【0036】
発熱体11aが発熱シートからなる場合、該発熱シートは60〜90重量%、特に70〜85重量%の被酸化性金属、5〜25重量%、特に8〜15重量%の反応促進剤及び5〜35重量%、特に8〜20重量%の繊維状物を含む成形シートに、該成形シート100重量部に対して、1〜15重量%、特に2〜10重量%の電解質を含む電解質水溶液が30〜80重量部、特に40〜70重量部含有されて構成されていることが好ましい。一方、発熱体11aが発熱粉体からなる場合、該発熱粉体は、20〜50重量%、特に25〜40重量%の被酸化性金属、3〜25重量%、特に5〜20重量%の反応促進剤及び3〜25重量%、特に5〜20重量%の保水剤を含む固形分100重量部に対して、0.3〜10重量%、特に0.5〜5重量%の電解質を含む電解質水溶液が20〜70重量部、特に30〜60重量部含有されて構成されていることが好ましい。発熱シートや発熱粉体を構成する各種材料としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。また、先に述べた特開2003−102761号公報に記載の材料を用いることもできる。
【0037】
発熱部11において、第1の面13側に位置するシート11bは空気及び水蒸気の透過が可能なように通気性を有している。一方、第2の面14側に位置するシート11cは、空気及び水蒸気の透過の程度がシート11bよりも低くなっている。即ちシート11cはシート11bよりも難通気性であるか、又は非通気性である。シート11cが難通気性であるか、それとも非通気性であるかは、蒸気温熱具10の具体的な用途に応じて適宜選択される。
【0038】
蒸気温熱具10においては、シート11b及びシート11cの通気度を適切に調整することで、第1の面13を通じて水蒸気が優先的に放出されるように構成されている。具体的には、シート11cの通気度は、シート11bの通気度よりも大きい。ここで、通気度はJIS P8117によって測定される値であり、100mlの空気が6.45cm2の面積を通過する時間(秒/100ml)で定義される。したがって、通気度が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、通気度が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、通気度の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。本実施形態において、シート11b及びシート11cの通気性を比較すると、シート11bの方が、シート11cよりも高くなっている。すなわち、先に述べたとおり、シート11cは非通気性であるか、又は難通気性(即ち、通気性を有するものの、シート11bよりも低い通気性を有している)である。
【0039】
発熱部11は、通気性であるシート11bと、それに対向する非通気性であるシート11cとを有する扁平な形態をしており、通気性であるシート11bを通じて蒸気温熱が発生するようになされている。あるいは、発熱部11は、通気性であるシート11bと、それに対向する難通気性であるシート11cとを有する扁平な形態をしており、通気性であるシート11bを通じて蒸気温熱が発生するようになされている。シート11cが難通気性である場合、シート11bとシート11cの通気度をバランスさせることで、空気はシート11cを通じて優先的に発熱部11内に流入するとともに、水蒸気はシート11bを通じて優先的に放出される。
【0040】
シート11cが難通気性である場合、該シート11cを通じての空気の流入を確保しつつ、該シート11cを通じての水蒸気の放出を抑制させる観点から、シート11cの通気度を、シート11cの通気度の5倍以上、特に10倍以上とすることが好ましい。あるいは、シート11bの通気度とシート11cの通気度との比(第1の面/第2の面)を0.5以下、特に0.2以下とすることも好ましい。これによって、シート11cを通じての水蒸気の放出を一層減じさせることができ、かつシート11bを通じての水蒸気の放出を一層増加させることができる。一方、シート11cが非通気性である場合、発熱部11内への空気の流入、及び水蒸気の発生は、専らシート11bを通じて行われる。
【0041】
シート11cが難通気性である場合、該シート11cの通気度を30000秒/100ml以上、特に40000秒/100ml以上、とりわけ50000秒/100ml以上とすることが好ましい。一方、シート11bの通気度は、シート11cが非通気性であるか又は難通気性であるかを問わず、100〜30000秒/100ml、特に1000〜20000秒/100mlであることが好ましい。
【0042】
発熱部11におけるシート11b,11cは、通気度を支配しかつ粉体の漏れ出しを防止する観点から選定される。そのようなシートとしては、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。透湿性フィルムは、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっている。種々の通気度及び透湿度を有するシート材を組み合わせて積層シートを構成すると、シート11b,11cの通気度を所望の値に設定する自由度が増すので好ましい。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態を、図6を参照しながら説明する。この実施形態に関し特に説明しない点については上述した第1の実施形態に関する説明が適宜適用される。また図6において、図1ないし図4と同じ部材には同じ符号を付してある。
【0044】
図6に示す第2の実施形態の蒸気温熱具10は、第1の粘着部16aと第2の粘着部16bを有しているが、第1の実施形態と異なり第3の粘着部は有していない。第1の粘着部16aを設ける位置及びその形状は、第1の実施形態と同様である。第2の粘着部16bに関しては、第1の実施形態と相違している。詳細には、一対の第1の粘着部16a間に、1本の第2の粘着部16bが帯状に設けられている。第2の粘着部16bは横方向Xに伸びる横長の矩形をしている。第2の粘着部16bは、縦方向Yのほぼ中央域に位置している。第2の粘着部16bの右端及び左端と第1の粘着部16aとの間は粘着剤の非存在領域となっており、両粘着部は連結していない。本実施形態によれば、蒸気温熱具10を例えば図4に示すようにショーツ30の内面に貼り付けた場合に、着用者の腹部の凸形形状に沿いつつ取り付け状態を良好に維持することが可能となる。したがって例えば着用者が前屈動作を行うときに、蒸気温熱具10が一層剥がれづらくなる。
【0045】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の各実施形態は、本発明の発熱具を蒸気温熱具に適用した例であるが、本発明は、蒸気温熱具以外の発熱具、例えば使い捨てカイロとして知られている、水蒸気の発生を実質的に伴わずに発熱する発熱具にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 蒸気温熱具(発熱具)
11 発熱部
11a 発熱体
11b,11c シート
12 収容体
13 第1の面
14 第2の面
15 周縁接合部
16a,16b,16c 粘着部
17 剥離紙
20 包装材
30 ショーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の肌に近い側に位置しかつ通気性を有する第1の面と、着用者の肌から遠い側に位置する第2の面と、第1の面及び第2の面の間に介在配置された発熱部とを備え、横方向Xに延びる上縁及び下縁と縦方向Yに延びる左右の側縁とを有し、横方向Xに長い形状である発熱具であって、
第2の面の外面に発熱具を衣類へ固定するための第1の粘着部及び第2の粘着部が設けられており、
第1の粘着部は、横方向Xの両端に位置し、かつ縦方向Yの全長にわたって一対設けられており、
第2の粘着部は、一対の第1の粘着部間に位置し、かつ横方向Xに延びるとともに、その上縁及び下縁が発熱具の上縁及び下縁にまで達しておらず、
第1の粘着部と第2の粘着部とが離間している発熱具。
【請求項2】
縦方向Yに延びる中心線CLを挟んで相対向しかつ縦方向Yの全長にわたって延びる一対の第3の粘着部を更に有し、
第2の粘着部が第1の粘着部と第3の粘着部との間に位置しており、第2の粘着部と第3の粘着部とが離間している請求項1記載の発熱具。
【請求項3】
一対の第1の粘着部間に、横方向Xに延びる1本の第2の粘着部が帯状に設けられている請求項1記載の発熱具。
【請求項4】
上縁が、発熱具の横方向Xに延びる中心線に向かう内向きの凸状となるような曲線形状をしており、
下縁が、発熱具の横方向Xに延びる中心線に対して外向きの凸状となるような曲線形状をしており、
左右の側縁が、それぞれ外向きの凸状となるような曲線形状をしている請求項1ないし3のいずれかに記載の発熱具。
【請求項5】
発熱部が、所定温度に加熱された水蒸気を発生するものである請求項1ないし4のいずれかに記載の発熱具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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