説明

発現エンハンサーを含む真核宿主細胞

本発明は、cLC52、RPL33及びcLC61からなる群から選択される発現エンハンサーをコードする組み換えヌクレオチド配列を含む真核宿主細胞、及び、目的タンパク質(POI)の生産方法におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発現エンハンサーを含む真核性宿主細胞及び目的タンパク質(POI)を生産するための方法におけるその使用に関する。
【0002】
成功したタンパク質分泌は、原核及び真核宿主両方を用いて確立されている。最も顕著な例は、バクテリア、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)又はハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、糸状菌(filamentous fungi)、例えばアワモリコウジカビ(Aspergillus awamori)又はトリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、又は哺乳類細胞、例えばCHO細胞である。幾つかのタンパク質の分泌が既に高い率で達成されている一方で、他の多くのタンパク質は比較的低いレベルで分泌されるだけである(Punt et al., 2002; Macauley-Patrick et al., 2005; Porro et al., 2005)。
【0003】
組み換えタンパク質の分泌の改善のための1つのアプローチは、ランダム突然変異生成により為された(Archer et al., 1994; Lang and Looman, 1995)。この方法の主たる欠点は、ポジティブな結果が通常は他の株に移行されることができないことである。
【0004】
真核生物、例えば酵母のこの分泌経路−タンパク質のフォールディング及びプロセッシング−は、多くの相互作用する参加者を伴って極めて複雑である。これらタンパク質の幾つかはタンパク質、例えばタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)に対して触媒作用を有し、他のものは、このタンパク質へ結合し、そして、これらが凝集することを妨げることによって(シャペロン、例えばBiP)、又はこのタンパク質の細胞外部への放出を分泌経路において後の工程において刺激することによって(SSOタンパク質)作用する。この相互依存性のために、1つの方法工程の速度(rate)を分泌経路において増加させることは、目的タンパク質(protein of interest)の分泌を自動的に増加させることにはならず、しかし代わりに、1以上の引き続く反応工程で速度の制限を生じ、このようにしてこの発現系のボトルネックを取り除かないでシフトだけさせる可能性がある。
【0005】
幾つかの場合において、異種タンパク質の分泌プロセスは、ヘルパー因子と呼ばれる特定のタンパク質の共過剰発現(co-overexpression)により促進されることができることが示されている(Mattanovich et al., 2004)。
【0006】
WO 2008/128701 A2は、BMH2, BFR2, C0g6, C0Y1 , CUP5, IMH 1 , KIN2, SEC31 , SSA4及びSSE1からなる群から選択される分泌ヘルパー因子を採用する、真核細胞からのPOIの分泌を増加させるための発現系を説明する。この関連遺伝子は、S.セレビシエ(S. cerevisiae)のcDNAマイクロアレーから獲得された。
【0007】
Gasser et al (Applied and Environmental Microbiology (2007) 6499-6507)は、酵母における異種タンパク質分泌を促進する新規因子のトランスクリプトミクスベースの同定を説明する。特定の分泌エンハンサーが、DNAマイクロアレーハイブリダイゼーション実験を用いて見出された。
【0008】
PDIをコードする遺伝子及び異種ジスルフィド結合したタンパク質をコードする遺伝子の共発現は、 WO 93/25676において初めて異種タンパク質の生産を増加させる手段として示唆された。WO 93/25676は、アンチスタチン及びダニ抗凝固タンパク質の組み換え発現がPDIとの共発現により増加させることができることを報告する。
【0009】
WO 94/08012は、Hsp70シャペロンタンパク質、すなわち、KAR2及びBiP又はPDIシャペロンタンパク質の発現を増加させることによる酵母中のタンパク質分泌の増加のための方法を提供する。
【0010】
WO 03/057897は、シャペロンタンパク質GroEL, GRoES, Dnak, DnaJ, GRpe, CIpB及びこのホモログからなる群から選択されるタンパク質をコードする少なくとも2つの遺伝子を共発現することによる目的タンパク質の組み換え発現のための方法を提供する。
【0011】
WO 2005/0617818及びWO 2006/067511は、2μmベース発現プラスミドを使用することによる酵母中の所望の異種タンパク質の生産のための方法を提供する。1以上のシャペロンタンパク質及び1つの異種タンパク質の遺伝子が同じプラスミドで共発現される場合に異種タンパク質の生産が実質的に増加されることが実証された。
【0012】
分泌経路を刺激するための別のアプローチは、フォールドされていないタンパク質応答(the unfolded protein response)(UPR)を活性化させる転写因子HAC1を過剰発現することである。転写分析は、330までの遺伝子がHAC1により調節され、このうち多くのものが分泌の機能的な群(functional group)又は分泌オルガネラ(例えば、ERに常駐するシャペロン、フォルダーゼ、トランスロコン(Translocon)の構成要素)のバイオゲネシスに属することを明らかにした。
【0013】
WO 01/72783は、高められたフォールドされていないタンパク質応答(UPR)を誘発することにより真核細胞から分泌される異種タンパク質の量を増加させる方法を説明し、その際、このUPRは、HAC1、PTC2及びIRE1からなる群から選択されるタンパク質の共発現により調整される。
【0014】
これらアプローチが、確立されると、他の株にも移行され、他のタンパク質にも同様に使用されることができる一方で、これらは他のタンパク質の分泌を支持するこのようなタンパク質の機能に関する実際上の知識により制限される。
【0015】
組み換えタンパク質の成功した高レベル分泌が数々の異なる工程、例えばフォールディング、ジスルフィド架橋形成、グリコシル化、細胞内輸送、又はこの細胞からの放出、で制限されてよいことが予期されることができる。これらプロセスの多くは未だ十分には理解されていない。このようなヘルパー機能は技術水準の現在の知識でもって予測することは、宿主生物の全ゲノムのDNA配列が入手可能になってさえ可能でない。
【0016】
Wentz and Shusta (Appl. Environ. Microbiol. (2007) 73(4): 1189-1198)は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharamyces cerevisiae)酵母表面ディスプレー遺伝子ライブラリーを、適した選択圧を用いて改善された分泌株を同定するために使用する。酵母cDNA促進scTCRディスプレー(The yeast cDNAs enhancing scTCR display)はCCW12, SEDI, CWP2, RPP0であり、これは温度依存性であることが見出され、かつ、ERO1は単独の20℃エンハンサー(a lone 20℃ enhancer)であることが見出された。
【0017】
本発明の課題は、簡易かつ効率的に、真核細胞中、特にピキア属の酵母細胞中で分泌されたタンパク質の生産を増加させるための新規方法を提供することである。工業的生産方法において利用できるヘルパー因子の過剰発現により分泌されたタンパク質の増加した生産のための方法において使用されるべき新規遺伝子を提供することが望ましい。
【0018】
本発明の更なる課題は、POIの生産を増加させるための改善された特性を有する組み換え宿主細胞を提供することである。
【0019】
この課題は、請求されるとおりの主題により解決される。
【0020】
特に、本発明は、機能的に活性のあるこの変異体を含む、cLC52, RPL33, cLC61からなる群から選択される発現エンハンサーをコードする組み換えヌクレオチド配列を含む真核宿主細胞に関する。
【0021】
本発明の宿主細胞は、P.パストリス(P. pastoris)に由来するヌクレオチド配列を好ましくは含む。
【0022】
本発明による宿主細胞は好ましくは真菌細胞、より好ましくは酵母細胞、又は高等真核細胞、好ましくは哺乳類又は植物細胞である。
【0023】
本発明の特定の一観点によれば、宿主細胞は、ピキア属の細胞であり、特にP.パストリス株の細胞である。
【0024】
一観点において、本発明は、POIをコードする目的遺伝子の導入のためのワイルドカード宿主細胞であるような宿主細胞に関する。
【0025】
別の観点において、本発明は、POIを生産することができる、POIをコードする組み換えヌクレオチド配列を含む生産者細胞であるような宿主細胞に関する。
【0026】
本発明は好ましくは、
−cLC52, RPL33及びcLC61からなる群から選択された発現エンハンサーをコードする組み換えヌクレオチド配列、
−POIをコードする目的遺伝子
を含むP.パストリス宿主細胞を提供する。
【0027】
機能的に活性のある変異体を含む、cLC52, RPL33 cLC61からなる群から選択されるタンパク質をコードするこのようなヌクレオチド配列は、好ましくは本発明により、真核宿主細胞中のPOIの発現を増加させるための発現エンハンサーとして使用される。
【0028】
本発明は更に、
−機能的に活性のある変異体を含む、cLC52, RPL33 cLC61からなる群から選択されるタンパク質をコードする組み換えヌクレオチド配列を含む本発明によるワイルドカード宿主細胞の提供、及び
−POIをコードするヌクレオチド配列の導入
を含む生産者宿主細胞の生産方法を提供する。
【0029】
代替的な実施態様によれば、生産者宿主細胞を生産するための方法は、次の工程
−真核宿主細胞の提供、
−機能的に活性のある変異体を含む、少なくとも1つのcLC52, RPL33 cLC61をコードするヌクレオチド配列の導入、及び
−POIをコードするヌクレオチド配列の導入
を含む。
【0030】
このようにして、本発明は、
−本発明による生産者宿主細胞を提供する工程、
−細胞培養物中でPOI及び発現エンハンサーを共発現させる工程、及び
−前記細胞培養物からPOIを獲得する工程
を含む、真核細胞中にPOIを生産する方法を提供する。
【0031】
本発明の好ましい方法において、POIはポリペプチド、好ましくは真核性ポリペプチドであり、これは血清タンパク質、例えば免疫グロブリン又は血清アルブミン、酵素、ホルモン、シグナリング分子、マトリックスタンパク質、そのフラグメント又は誘導体からなる群から選択される。
【0032】
別の好ましい方法において、POIは、宿主細胞の代謝産物の生産を媒介し、好ましくはPOIは基質、酵素又は共因子であり、代謝産物は、この代謝産物の十分な収率を得るために宿主により生産される。
【0033】
好ましくは、POIをコードする組み換えヌクレオチド配列は、宿主細胞のゲノム中への組み込みのために、又は宿主細胞中の自律複製のために適したプラスミドに提供される。
【0034】
更に好ましくは、このプラスミドは真核発現ベクター、好ましくは酵母発現ベクターであって宿主細胞からのPOIの分泌を引き起こすために有効な分泌リーダー配列及び/又は宿主細胞中のPOIの発現を引き起こすために有効なプロモーター配列を含むものである。
【0035】
一観点において、本発明は、
−POIをコードする組み換えヌクレオチド配列、及び
−機能的に活性のある変異体を含む、cLC52, RPL33 cLC61からなる群から選択されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列
を含む、本発明の方法においての使用のための共過剰発現プラスミドに関する。
【0036】
発明の詳細な説明
タンパク質の「生物学的に活性のあるフラグメント」又は「機能的に活性のあるフラグメント」は、完全長タンパク質と同様又はこれに匹敵する生物学的作用を発揮するタンパク質のフラグメントを意味するものである。この発現エンハンサーの機能的に活性のあるフラグメントは、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、いっそうより好ましくは少なくとも90%、更にいっそう好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%又は99%の配列を含むポリペプチド又はヌクレオチド配列を生じる1以上の欠失による配列番号1〜4の発現エンハンサー由来であることにより特徴付けられる。配列同一性は以下説明するように決定されてよい。このようなフラグメントは、例えば1又は複数のアミノ−及びカルボキシ−末端欠失また同様に1又は複数の内部欠失により生産されてよい。好ましくはこのようなフラグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10、より好ましくは1、2、3、4又は5、いっそうより好ましくは1、2又は3、更にいっそう好ましくは1又は2、最も好ましくは1の欠失により得られる。
【0037】
「誘導体」との用語は、1又は複数の化合物、例えばポリペプチド又はタンパク質、及び/又は融合化合物の任意の組み合わせを含み、前記融合タンパク質中ではこの化合物の任意の部分が1以上の他のポリペプチドに対して任意の部分で融合してよい。誘導体は、様々な化学技術により他の物質に対する会合又は結合により得られてもよく、これは例えば共有結合、静電相互作用、ジスルフィド結合その他である。この化合物に対して結合する他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機及び無機分子、又はこの任意の組み合わせであってよい(例えば、PEG、プロドラッグ又は薬物)。「誘導体」との用語は、変異体を含んでもよく、非天然の又は化学的に改変されたアミノ酸を潜在的に含み、化合物のフラグメントも含んでもよい。cLC52, RPL33又はcLC61の用語は、機能的に等価な又は機能的に活性がある変異体であってよく、かつ/又は同様の又は改善された機能を有するその誘導体をも指すことが理解される。
【0038】
本願で使用される場合に「発現ベクター」は、クローニングされた組み換えヌクレオチド配列の、すなわち、組み換え遺伝子の転写及び適した宿主生物中のそのmRNAの翻訳のために必要とされるDNA配列として定義される。このような発現ベクターは通常は、宿主細胞中に自律複製のための起源、選択可能なマーカー(例えば、アミノ酸合成遺伝子又は抗生物質、例えばゼオシン、カナマイシン、G418又はヒグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子)、数々の制限酵素開裂部位、適したプロモーター配列及び転写ターミネーターを含み、これら構成要素は一緒に操作可能に連結されている。
【0039】
「真核宿主」との用語は、任意の真核細胞又は生物であって、POIを発現するために培養されてよいものを意味する。この用語はヒトを含まないことも同様に理解される。
【0040】
ポリペプチド又はヌクレオチド配列の「機能的に等価な変異体」又は「機能的に活性のある変異体」との用語は、本願で使用される場合には、配列内の又は配列の遠位末端の一方又は両方での1以上のアミノ酸又はヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によるこの配列の改変から生じる配列を意味し、この改変はこの配列の活性に影響を及ぼさない(特に損なわない)。好ましい実施態様において、機能的に活性のある変異体a)は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列の生物学的に活性のあるフラグメントであり、この機能的に活性のあるフラグメントは、このポリペプチド又はヌクレオチド配列の、配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、いっそう好ましくは少なくとも90%、よりいっそう好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%又は99%を含む;b)は、少なくとも1のアミノ酸置換、付加及び/又は欠失によるポリペプチド又はヌクレオチド配列に由来し、その際、この機能的に活性のある変異体は、このポリペプチド又はヌクレオチド配列に対する又はa)において定義した機能的に活性のあるフラグメントに対する配列同一性少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、いっそう好ましくは少なくとも90%、よりいっそう好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも97%、98%又は99%を有する;かつ/又はc)は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列又はその機能的に活性のある変異体及び付加的にこのポリペプチド又はヌクレオチド配列に対して異種の少なくとも1のアミノ酸又はヌクレオチドからなり、好ましくはその際この機能的に活性のある変異体は、配列番号1、2、3又は4の任意の配列の任意の天然に生じる変異体に由来するか又は同一である。
【0041】
機能的に活性のある変異体は、上述のとおりの配列を変更することにより得られてよく、かつ、この変異体が由来する配列番号1〜4の各配列により示されるものに類似の生物学的活性(組み換え細胞中のPOIの発現を促進する能力を含む)を有することにより特徴付けられる。
【0042】
この機能的に活性のある変異体は、ポリペプチド又はヌクレオチド配列中の配列変更により得られてよく、その際、この配列変更は、本発明の組み合わせにおいて使用される場合に、変更されていないポリペプチド又はヌクレオチド配列の機能を維持する。このような配列変更は、(保存的)置換、付加、欠失、突然変異及び挿入を含むが、これに限定されない。
【0043】
このポリペプチド又はヌクレオチド配列の変異体は、(オリジナルでない)変異体を含む本発明の組成物の活性が、配列変更なしにポリペプチド又はヌクレオチド配列を含む(すなわち、オリジナルポリペプチド又はヌクレオチド配列)本発明の発現エンハンサーの活性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、いっそう好ましくは少なくとも70%、よりいっそう好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも905、更に特に少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%である場合に、本願発明の文脈において機能的に活性がある。
【0044】
本発明の好ましい一実施態様において、本発明のペプチドの機能的に活性のある変異体は、配列番号1〜4のポリペプチド又はヌクレオチド配列と実質的に同一であるが、このポリペプチド又はヌクレオチド配列からはそれぞれ、これが異なる株又は異なる種の相同性配列に由来する点で異なる。これらは天然に生じる変異体と呼ばれる。
【0045】
しかし、「機能的に活性のある変異体」との用語は、天然に生じるアレル変異体、同様に、突然変異体又は任意の他の天然に生じない変異体を含む。この分野において知られているとおり、アレル変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を実質的に変更しない、1以上のアミノ酸の置換、欠失又は付加を有することにより特徴付けられる(ポリ)ペプチドの代替形である。「生物学的機能」とは、機能が細胞の成長又生存のために必要でない場合にさえも天然に生ずる細胞中のポリペプチド又はヌクレオチド配列の機能を意味する。
【0046】
好ましい一実施態様において、アミノ酸交換、欠失又は挿入による上で定義したポリヌクレオチド又はヌクレオチド配列に由来する機能的に活性のある変異体は、この活性を保存、又はより好ましくは改善してもよい。
【0047】
保存的置換は、その側鎖及び化学的特性において関連するアミノ酸のファミリー内で生じるものである。このようなファミリーの例は、塩基性側鎖を有する、酸性側鎖を有する、非極性脂肪族側鎖を有する、非極性芳香族側鎖を有する、荷電してない極性側鎖を有する、小さい側鎖を有する、長い側鎖その他を有するアミノ酸である。
【0048】
本発明の別の実施態様において、上で定義したポリペプチド又はヌクレオチド配列は、改変されたポリペプチド又はヌクレオチド配列と実質的に同じ活性(上でフラグメント及び変異体について定義したとおり)を有する、かつ任意の他の所望される特性を有する誘導体を生産するための種々の化学的技術により改変されてよい。
【0049】
「遺伝子産物」又は「遺伝子の産物」との用語は、生化学的材料、RNA又はタンパク質のいずれかであり、これは遺伝子、例えばcLC52, RPL33又はcLC61遺伝子の発現から生じる。
【0050】
本願で使用される場合には、ポリペプチドの「ホモログ」又は「機能的ホモログ」は、その一次、二次又は三次構造において同じか又は保存された残基を相応する位置に有するポリペプチドを意味する。この用語は、相同性ポリペプチドをコードする2以上のヌクレオチド配列にも及ぶ。特に、相同性化合物は、通常は少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を、完全長天然配列又はこの任意のフラグメントに関して有する。好ましくは、相同性化合物は、天然化合物又任意の他の具体的に定義された、完全長化合物のフラグメントに対して、少なくとも約55%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも約60%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、いっそう好ましくは少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性、よりいっそう好ましくは少なくとも約75%のアミノ酸配列同一性、特に少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、更に特に少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。ヘルパー因子としての機能がこのようなホモログを用いて証明される場合には、このホモログは「機能的ホモログ」と呼ばれる。
【0051】
本願で使用される場合に「相同性ヌクレオチド配列」との用語は、そのヌクレオチド配列においてこの考慮されるヌクレオチド配列と関連するが同一でなく、かつ、実質的に同じ機能を発揮するヌクレオチド配列を指す。これらは、遺伝暗号の縮重のための変異を含むヌクレオチド組成中の変異をも包含することが意味され、その際、このヌクレオチド配列は実質的に同じ機能を発揮する。
【0052】
「宿主細胞」又は「宿主細胞株」との用語は、このようなポリペプチドにより媒介されるポリペプチド又は代謝産物を生産するための組み換え遺伝子の発現のために使用される微生物を指す。増殖した、培養宿主細胞の宿主細胞クローンは、宿主細胞株であると一般的に理解される。生産宿主細胞株は、生産方法における遺伝子産物を獲得するためのバイオリアクター中での培養のために使用準備が整った細胞株であると一般的に理解される。
【0053】
本願で使用される場合に「操作可能に連結」とは、単一核酸分子、例えばベクターでのヌクレオチド配列の会合であって、1以上のヌクレオチド配列の機能が前記核酸分子上に存在する少なくとも1の他のヌクレオチド配列により影響を及ぼされるような会合を指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合に、組み換え遺伝子のコード配列と操作可能に連結している。
【0054】
「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、本願で同定されるポリペプチド配列に関して、必要な場合に、最大パーセント配列同一性を達成するために、配列をアラインメントしギャップ導入した後に、特定のポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義され、この配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮しない。当業者は、比較される配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含め、アラインメントを測定するための適当なパラメーターを決定することができる。
【0055】
本願で使用される場合に「プラスミド」及び「ベクター」との用語とは、自律的に複製するヌクレオチド配列並びにゲノム組み込みヌクレオチド配列を含む。
【0056】
「ポリペプチド」との用語は、タンパク質又はペプチドであって2以上のアミノ酸、典型的には少なくとも3、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも50アミノ酸を含むものを指す。この用語は、高分子量ポリペプチド、例えばタンパク質も指す。以下、「ポリペプチド」及び「タンパク質」との用語が相互に交換可能に使用される。
【0057】
「プロモーター」は本願で使用される場合に、コード配列又は機能的RNAの発現の制御をできるDNA配列を指す。プロモーター活性は、その転写効率により評価されてよい。これは、プロモーターからのmRNA転写の量の測定により直接的に、例えばノーザンブロッティングにより決定されてよく、又はプロモーターから発現された遺伝子産物の量の測定により間接的に決定されてよい。
【0058】
「目的タンパク質(POI)」との用語は、本願で使用される場合に、宿主細胞中に組み換え技術を利用して生産されるタンパク質を指す。より具体的には、このタンパク質は宿主細胞中で天然に生じないポリペプチド、すなわち異種タンパク質であるか、あるいは宿主細胞に対して天然、すなわち、宿主細胞に対して同種タンパク質のいずれかであってよく、しかし、例えば、POIをコードする核酸配列を含む自己複製ベクターを用いたトランスフォーメーションにより、又は、POIをコードする核酸配列の1以上のコピーを組み換え技術により宿主細胞のゲノム中に組み込んで、又は、POIをコードする遺伝子の発現を制御する1以上の調節配列、例えばプロモーター配列の組み換え改変により、生産される。
【0059】
「cLC52」との用語は、転写調節因子に対してホモロジーを有するP.パストリスのポリペプチドを意味するものである。S.セレビシエ(S. cerevisiae)においては、cLC52に対する最高ホモロジーを有するタンパク質はNrg1及びNrg2であり、グルコース抑制を媒介する転写リプレッサーである。各外部IDsは次のものである:SGD YDR043C, SGD YBR066C。遺伝子アノテーションPIPA03435。
【0060】
「RPL33」との用語は、S.セレビシエRPL33A及びRPL33B(大(60S)リボソームサブユニットのリボソームタンパク質L37)に対するホモロジーを有する、rRNA遺伝子によりコードされるP.パストリスのポリペプチドを意味するものである。各外部IDsは次のものである:SGD YPL143W及びYDR234C。遺伝子アノテーションPIPA05837。
【0061】
「cLC61」との用語は、ペプチダーゼに対して同種である遺伝子によりコードされるP.パストリスのポリペプチドを意味する。遺伝子アノテーションPIPA02482。
【0062】
本願で使用される場合に「cLC52, RPL33又はcLC61」との用語は、遺伝子及び遺伝子産物について相互に交換可能に使用される。これらポリペプチドに対する配列情報は以下に与えられる。本発明の目的のためには、これら因子はヘルパー因子又は発現エンハンサーとも呼ばれる。この用語は、完全長タンパク質又はその機能的に活性のある変異体(生物学的に活性のあるフラグメント含む)、また同様に機能的ホモログを包含する。
【0063】
タンパク質発現及び/又は分泌として使用されることができるこのような遺伝子及び遺伝子産物が得られることは意外であり、これはこれまでには機能的ヘルパー因子として特性決定されていない。この観点において、関連する遺伝子がcLC52、RPL33及びcLC61であることが見出され、これは共発現するとタンパク質生産におけるその収率を増加できる。これら遺伝子は、恐らくPOI発現及び/又は分泌に関連していなかっただろう機能を有する。
【0064】
この関連する遺伝子のヘルパー機能を証明するために、広範な培養条件で成長させた様々な株のP.パストリス由来のcDNAライブラリーが、細胞表面上のモノクローナル抗体のFabフラグメントをディスプレーするP.パストリスの株において共過剰発現された。免疫蛍光染色後増加した蛍光シグナルを有する株を、ハイスループット蛍光活性化細胞選別を使用して濃縮した。培養及び選別の複数回のラウンド後に、好ましくは増加したストリンジェンシーで複数回のラウンドの選別において濃縮して、例えば極めてストリンジェントな単一細胞モードで、遺伝子RPL33、cLC52及びcLC61が同定されることができ、これは表面ディスプレーされたFabフラグメントの量に対してポジティブに作用し、これは以前に分泌経路に関連させられていない。このようなヘルパー因子は、慣用のDNAマイクロアレー技術を用いて以前は同定されていない。
【0065】
1以上の遺伝子の共発現は、POI発現に対してポジティブな影響を有し、このことは、バイオマス蓄積の減少さえも伴って生成物濃度の増加を生じる。これにより、より特異的な生成物収率が得られてよい。
【0066】
実験手順のより詳細な説明は実施例1に見出されることができる。この同定された遺伝子をPCRによりP.パストリスcDNAから増幅し、P.パストリス発現ベクター中にクローニングし、P.パストリスの株(表面ディスプレー又は分泌している)中にトランスフォーメーションし、これは、様々に異なるPOI(表面ディスプレーされるか又は分泌される)の高レベル生産に関して予備選択されている。表面ディスプレーされるか又は分泌される組み換えPOIの量に対する共過剰発現した遺伝子の作用を見積もるために、本発明により得られるP.パストリス株を振盪フラスコ実験、流加培養又はケモスタット発酵において、POIを発現だけする株との比較において、培養してよい。3つ全ての遺伝子が、共過剰発現研究において増加した細胞表面シグナルを生じる。特に、共過剰発現したcLC52は、分泌されたPOIの量を顕著に増加させた。
【0067】
本発明の好ましい実施態様によれば、組み換えヌクレオチド配列は、配列番号1であるcLC52遺伝子、又はこの機能的に活性のある変異体を含む。
【0068】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、組み換えヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号2及び3であるRPL33遺伝子、又はこの機能的に活性のある変異体を含む。
【0069】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、組み換えヌクレオチド配列は、配列番号4であるcLC61遺伝子、又はこの機能的に活性のある変異体を含む。
【0070】
本発明のヘルパー因子により、本発明の方法は好ましくは、促進された発現による増加した生産だけでなく、真核細胞中のPOIの増加した分泌にも関する。POIの分泌の増加は、タンパク質分泌を増加させる前記タンパク質の共発現の存在又は非存在下でのその分泌収率の比較を基礎に決定される。
【0071】
POIは、任意の真核又は原核ポリペプチドであってよい。これは、天然に分泌されるタンパク質又は細胞内タンパク質、すなわち、天然に分泌されないタンパク質であってよい。本発明は、天然に分泌されるか又は天然に分泌されないタンパク質の機能的ホモログ、機能的に活性のある変異体、誘導体及び生物学的に活性のあるフラグメントの組み換え生産も提供する。機能的ホモログは、好ましくは同一又は相応し、配列の機能的特性を有する。
【0072】
分泌されたPOIは本願で示される場合に、生物薬剤学物質として適するタンパク質、例えば抗体又はフラグメント、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、又は工業的適用において使用されることができるタンパク質、例えば酵素であってよいが、これに限定されない。
【0073】
POIは好ましくは異種組み換えポリペプチド又はタンパク質であり、これは有利には真核細胞、好ましくは酵母細胞において、好ましくは分泌タンパク質として生産されてよい。好ましく生産されるタンパク質の例は、免疫グロブリン、アプロチニン、組織因子経路阻害剤又は他のプロテアーゼ阻害剤、及びインスリン又はインスリン前駆体、インスリン類似体、成長ホルモン、インターロイキン、組織プラスミノゲンアクチベーター、形質転換成長因子a又はb、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)、GRPP、因子VII、因子VIII、因子XIII、血小板由来成長因子1、血清アルブミン、酵素、例えばリパーゼ又はプロテアーゼ、又はこれらのタンパク質の任意の1つの機能的類似体である。本願の文脈において、「機能的類似体」との用語は、天然タンパク質と同様の機能を有するポリペプチドを示すと意味される。ポリペプチドは天然タンパク質に構造上同様であってよく、かつ、1以上のアミノ酸を天然タンパク質のC及びN末端の一方又は両方又はこの側鎖に付加すること、天然のアミノ酸配列中の1又は数々の異なる部分で1以上のアミノ酸を置換すること、又は、1以上のアミノ酸を天然のタンパク質の一方又は両方の末端又はこのアミノ酸配列中の1又は複数の部位で欠失すること、天然のアミノ酸配列中の1以上の部位で1以上のアミノ酸を挿入すること、によって、天然タンパク質に由来してよい。このような改変は上述のタンパク質の幾つかについて良く知られている。
【0074】
別の実施態様において、POIは真核タンパク質又はその生物学的に活性のあるフラグメント、好ましくは免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメント、例えばFcフラグメント又はFabフラグメントである。最も好ましくはPOIは、モノクローナル抗HIV1抗体2F5のFabフラグメントである。
【0075】
POIは、宿主細胞中に生物化学反応を、この生物化学反応又は幾つかの反応のカスケードの生成物(例えば、宿主細胞の代謝産物)を獲得する目的で提供する基質、酵素、阻害剤又はコファクターから選択されることもできる。例示的な生成物は、ビタミン、例えばリボフラビン、有機酸及びアルコールであってよく、これは、本発明によるPOIの発現の後に増加した収率でもって獲得されることができる。
【0076】
一般には、タンパク質を分泌する宿主細胞は、POIの組み換え発現に適した任意の真核細胞であってよい。
【0077】
本発明による宿主細胞として使用される好ましい酵母細胞の例は、サッカロミセス(Saccharomyces)属(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、ピキア(Pichia)属(例えば、P.パストリス(P. pastoris)又はP.メタノリカ(P. methanolica))、コマガタエラ(Komagataella)属(K.パストリス(K pastoris)、K.シュードパストリス(K pseudopastoris)又はK.ファフィ(K phaffii))、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)又はクルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)を含むが、これに限定されない。
【0078】
最近の文献は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)をコマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)及びコマガタエラ・シュードパストリス(Komagataella pseudopastoris)に区分し、名称を付け直している(Kurtzman, 2005)。この中で、ピキア・パストリスは、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)及びコマガタエラ・シュードパストリス(Komagataella pseudopastoris)の全てのために同義に使用される。
【0079】
本発明により好ましく使用される酵母生産者生物は、培養すると、問題となっている異種タンパク質又はポリペプチドを大量に生産する任意の適した酵母生物であってよい。適した酵母生物の好ましい例は、酵母種サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ種(Candida sp.)、カンジダ・ウチリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、ゲオトリカム種(Geotrichum sp.)及びゲオトリカム・ファーメンタス(Geotrichum fermentans)から選択される株である。
【0080】
最も好ましい酵母宿主細胞は、メチルトローフ酵母に、例えばピキア(Pichia)又はコマガタエラ(Komagataella)、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)、又はコマガタエラ・パストリス(Komoagataella pastoris)、又はK.ファフィ(K. phaffii)、又はK.シュードパストリス(K. pseudopastoris)に由来する。宿主の例は、酵母、例えばP.パストリスを含む。P.パストリス株の例は、CBS 704 (=NRRL Y-1603 = DSMZ 70382)、CBS 2612 (=NRRL Y-7556)、CBS 7435 (=NRRL Y11430)、CBS 9173-9189及びDSMZ 70877 (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)を含み、S.セレビシエ株の例はW303、CEN. PK及びthe BY系列(EUROSCARF collection)を含む。上述の全ての株は、トランスフォーマントを生産し、かつ異種遺伝子を発現するために成功して使用されている。
【0081】
一般に、目的タンパク質は本願で示される場合に、当業者にとって良く知られている組み換え発現の方法により生産されてよい。
【0082】
本願で開示される方法は、さらに、POIの発現を可能にする条件下で前記組み換え宿主細胞を培養することを含んでよいことが理解される。分泌された、組み換えにより生産されるPOIは次いで、細胞培養培地から単離され、さらに、当業者に良く知られている技術により精製されてよい。
【0083】
タンパク質分泌を増加させるタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、種々の供給源から得られてよい。本発明による組み換えヘルパーヌクレオチド配列(「ヘルパー遺伝子」とも呼ばれる)の起源は、好ましくは植物、昆虫、真菌又は細菌の種に、好ましくは酵母の種に、より好ましくは組み換え株を得るための宿主酵母株とは異なる酵母種に由来する。本発明による好ましいピキア宿主細胞、例えばP.パストリス宿主細胞は、好ましくはS.セレビシエ株又は生産宿主とは異なる他のP.パストリス株に由来する異種ヘルパー因子遺伝子を含む。別の特定の実施態様において本発明による宿主細胞は、宿主細胞と同じ株に由来するヘルパー因子遺伝子を有する組み換えヌクレオチド配列を含む。
【0084】
本発明の特定の一実施態様によれば、ヘルパー遺伝子は好ましくは生産宿主細胞と同じ属の細胞供給源から得られている。例えば、本発明の発現ヘルパー因子の1つをコードするヌクレオチド配列は、酵母、例えばS.セレビシエ株に由来してよく、かつ、酵母、例えばS.セレビシエ生産者宿主細胞株中でPOIと一緒にヘルパー因子を共発現するために使用されてよい。特定の好ましい一実施態様は、P.パストリス生産者宿主細胞株中でPOIと一緒にヘルパー因子を共発現するための方法において使用されるためのP.パストリス由来のヘルパー因子をコードする組み換えヌクレオチド配列に関する。同種由来のヌクレオチド配列は、同じ属の宿主細胞中へのその組み込みを容易にし、このようにして、工業的製造プロセスにおいて増加した収率の可能性でもってPOIの安定な生産を可能にする。また、他の適した酵母又は他の真菌からの又は他の生物、例えば脊椎動物からの機能的に等価なヌクレオチド配列が使用されることができる。
【0085】
本発明の別の好ましい実施態様において、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から特に真核細胞、好ましくは酵母細胞、最も好ましくはP.パストリスの株の細胞中のPOIの分泌のエンハンサーとして単離されたヘルパー因子ヌクレオチド配列が使用される。
【0086】
本発明によれば、ヘルパー因子遺伝子少なくとも1つを含む、かつ、POIをコードする目的遺伝子を組み込む準備の整った本発明によるワイルドカード宿主細胞を提供することもできる。ワイルドカード細胞株(wildcard cell line)は、このようにして予備形成された宿主細胞株であり、これはその発現能力のために特徴付けられる。これは、例えば部位特異的なリコンビナーゼ媒介されたカセット交換を用いて、生物薬剤学の生産のための生産者細胞株(発現宿主細胞株とも呼ばれる)の作成のための革新的な「ワイルドカード」戦略に従う。このような新規宿主細胞は、GOIを、再現性のある、高度に効率的な生産細胞株を獲得するために、例えば予め定められたゲノム発現ホットスポット中へ数日のうちにクローニングすることを容易にする。
【0087】
本発明によれば、POIをコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結されたヘルパー因子遺伝子を含むP.パストリス宿主を提供することが好ましい。
【0088】
好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、宿主細胞のゲノム中への組み込みに適したプラスミド上に提供される、POIをコードする組み換えヌクレオチド配列を、細胞につき単一コピー又は複数コピーで採用する。POIをコードする組み換えヌクレオチド配列は、細胞につき単一コピー又は複数コピーで自律的に複製するプラスミド上に提供されてもよい。
【0089】
代替的に、POIをコードする組み換えヌクレオチド配列及びタンパク質分泌を増加させるタンパク質をコードする組み換えヌクレオチド配列は、同じプラスミド上に細胞につき単一コピー又は複数コピーで存在する。
【0090】
本発明の好ましい方法は、真核発現ベクター、好ましくは酵母発現ベクターであるプラスミドを採用する。発現ベクターは、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター及び特異的に設計されたプラスミドを含んでよいが、これに限定されない。本発明において使用される好ましい発現ベクターは、宿主細胞中の組み換え遺伝子の発現に適した任意の発現ベクターであってよく、かつ、宿主生物に依存して選択される。組み換え発現ベクターは、宿主生物のゲノム中への複製又は組み込みができる任意のベクターであってよく、これは宿主ベクターとも呼ばれ、例えば、本発明によるDNAコンストラクトを保有する酵母ベクターである。酵母中の発現のための好ましい酵母発現ベクターは、属ハンゼヌラ、ピキア、カンジダ及びトルロプシスにより示されるメチロトローフ酵母からなる群から選択される。
【0091】
本発明において、pPICZ、pGAPZ、pPIC9、pPICZalfa、pGAPZalfa、pPIC9K、pGAPHis又はpPUZZLE由来のプラスミドをベクターとして使用することが好ましい。
【0092】
本発明の好ましい一実施態様において、組み換えヘルパー遺伝子、POI遺伝子又は組み換え宿主細胞は、関連する遺伝子をベクター中にライゲーションし、この遺伝子を保有する単一ベクターを構築することにより、又は別個の複数のベクターにヘルパー因子遺伝子及びPOI遺伝子をそれぞれ有するようにさせることにより得られる。これら遺伝子は、このようなベクターを用いて宿主細胞をトランスフォーメーションすることにより宿主細胞ゲノム中に安定に組み込まれることができる。この遺伝子によりコードされるポリペプチドは、このようにして適した媒体中に得られるトランスフォーマントを培養し、発現されたPOIを培養物から単離し、そして、これを発現した生成物のために適した方法により、特に共発現したヘルパー因子からPOIを分離するために適した方法により精製することにより組み換え宿主細胞株を用いて生産されることができる。
【0093】
関連する遺伝子は、本発明の宿主細胞中に高度に発現されるように改変されることができる。遺伝子は、宿主中で最も頻繁に使用されるコドンと相関するように遺伝子配列を最適化することにより改変されることができる。例えば、遺伝子配列は、宿主中で高度に発現される遺伝子と一緒に使用されるコドンに応じて最適化されることができる。
【0094】
真核宿主細胞中のPOI発現及び分泌のための幾つかの異なるアプローチが好まれる。真核生物を所望のタンパク質及びシグナルペプチドをコードするDNAを宿す発現ベクターを用いてトランスフォーメーションし、このトランスフォーメーションした生物の培養物を準備し、この培養物を成長させ、この培養培地からタンパク質を回収することにより、タンパク質は発現され、プロセッシングされ、分泌される。シグナルペプチドは、所望のタンパク質自体のシグナルペプチド、異種シグナルペプチド又は天然及び異種シグナルペプチドのハイブリッドであってよい。本願の文脈において、「シグナルペプチド」との用語は、酵母中で発現される細胞外タンパク質の前駆体の形でN末端配列として存在するプレ配列を意味すると理解される。シグナルペプチドの機能は、小胞体に入るために異種タンパク質に分泌をさせることを可能にさせる。シグナルペプチドは、このプロセスの経過において通常は開裂される。シグナルペプチドは、タンパク質を生産する宿主細胞に対して異種又は同種であってよい。
【0095】
好ましい一観点において、本発明は、発現ベクターが、宿主細胞からPOIの分泌を引き起こすのに有効な分泌リーダー配列を含む方法に関する。発現ベクター中のこのような分泌リーダー配列の存在は、組み換え発現及び分泌のために意図されるPOIが、天然に分泌されず、したがって天然の分泌リーダー配列を欠失するか、又はそのヌクレオチド配列がその天然の分泌リーダー配列なしにクローニングされているタンパク質である場合に必要とされる。この分泌リーダー配列は酵母供給源に、例えば酵母α−因子、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のMFα、又は酵母ホスファターゼに、哺乳類又は植物の供給源その他に由来してよい。適した分泌リーダー配列の選択は当業者には明白である。
【0096】
代替的に、分泌リーダー配列は当業者に知られている慣用のクローニング技術により組み換え発現のために意図されるPOIをコードするヌクレオチド配列に融合していることができる。好ましい実施態様において、POIのヌクレオチド配列は分泌シグナル、すなわち、シグナルペプチドが開裂され、タンパク質が培地中に放出される分泌経路へタンパク質をターゲット化するペプチドに融合しており、例えばアルファ−因子、PHO又はAGA−2である。
【0097】
適した発現ベクターは、真核宿主細胞中で異種ポリペプチド又はタンパク質をコードするDNAの発現に適した調節配列を含む。調節配列の例は、プロモーター、オペレーター、及びエンハンサー、リボソーム結合部位、及び、転写及び翻訳開始及び終了を制御する配列を含む。調節配列は、発現すべきDNA配列に操作可能に連結されていてよい。例えば、プロモーター配列は、このプロモーターがコード配列の転写を制御する場合に、コード配列に操作可能に連結されているといわれている。
【0098】
プロモーターは、宿主細胞中で転写活性を示し、かつ、宿主に対して同種又は異種のいずれかであるタンパク質をコードする遺伝子に由来してよい任意のDNA配列であってよい。プロモーターは好ましくは、宿主細胞に対して異種であるタンパク質をコードする遺伝子に由来する。
【0099】
更なる一観点において、本発明は、発現ベクターが、宿主細胞中のPOIの発現を引き起こすのに有効なプロモーター配列を含む方法に関する。宿主細胞中の組み換えヌクレオチド配列の発現を可能にするには、発現ベクターは、組み換えヌクレオチド配列にコード配列の5′末端に隣接する機能的プロモーターを提供してよい。この転写は、これによって調節され、このプロモーター配列により開始される。
【0100】
哺乳類宿主細胞を用いた使用のための適したプロモーター配列は、ウィルスのゲノムから得られたプロモーター、異種哺乳類プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及びヒートショックプロテインプロモーターを含んでよいが、これに限定されない。
【0101】
酵母宿主細胞と一緒の使用のために更に適したプロモーター配列は、細胞中に高濃度で存在することが知られている代謝性酵素、例えば糖分解酵素、例えばトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、ホスホグリセラートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GADPH)、アルコールオキシダーゼ(AOX)、ラクターゼ(LAC)及びガラクトシダーゼ(GAL)をコードする遺伝子から得られたプロモーターを含んでよいが、これに限定されない。
【0102】
適したプロモーターの好ましい例は、酵母プロモーターであり、これは酵母細胞中の遺伝子転写のためのプロモーターとして機能するDNA配列を含む。好ましい例は、S,セレビシエ(S. cerevisiae)MaI, TPI, CUP, ADH又はPGKプロモーター、又はP.パストリスグルコース−6−リン酸イソメラーゼプロモーター(PPGI)、3−ホスホグリセラートキナーゼプロモーター(PPGK)又はグリセロールアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼプロモーターPGAP、アルコールオキシダーゼプロモーター(PAOX)、ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼプロモーター(PFLD)、イソシトラートリアーゼプロモーター(PICL)、翻訳伸長因子プロモーター(PTEF)、及び次のもののプロモーター:P.パストリスエノラーゼ1(PENO1)、トリオースリン酸イソメラーゼ(PTPI)、アルファ−ケトイソカプロアートデカルボキシラーゼ(PTHI)、リボソームサブユニットタンパク質(PRPS2、PRPS7、PRPS31、PRPL1)、ヒートショックプロテインファミリーメンバー(PSSA1、PHSP90、PKAR2)、6−ホスホグルコナートデヒドロゲナーゼ(PGND1)、ホスホグリセラートムターゼ(PGPM1)、トランスケトラーゼ(PTKL1)、ホスファチジルイノシトールシンターゼ(PPIS1)、フェロ−O2−オキシドレダクターゼ(PFET3)、高親和性イオンペルミアーゼ(PFTR1)、抑制性アルカリホスファターゼ(PPHO8)、N−ミリストイルトランスフェラーゼ(PNMT1)、フェロモン応答転写因子(PMCM 1)、ユビキチン(PUBI4)、単鎖DNAエンドヌクレアーゼ(PRAD2)及びミトコンドリア内膜の主要ADP/ATPキャリアーのプロモーター(PPET9)である。
【0103】
好ましい発現系においては、プロモーターは誘導的又は構成的プロモーターである。プロモーターは内因性プロモーター又は宿主細胞に対して異種であることができる。
【0104】
ヘルパー因子及び/又はPOIをコードするDNA配列は、適したターミネーター配列、例えばAOX1(アルコールオキシダーゼ)ターミネーター、CYC1(シトクロムc)ターミネーター、TEF(翻訳伸長因子)ターミネーターに操作可能に連結されていてもよい。
【0105】
発現ベクターは、1以上の表現型により選択可能なマーカー、例えば抗生物質耐を付与するか又は自己栄養要求を供給するタンパク質をコードする遺伝子、及び、意図される宿主細胞により認識される複製起点を、宿主内の増幅を保証するために含んでよい。酵母ベクターは通常は、酵母プラスミドからの複製起点、自律複製配列(ARS)、又は代替的に、宿主ゲノム中への組み込みに使用される配列、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、及び選択可能なマーカーを含む。
【0106】
例えばヘルパー因子及び/又はPOIをコードする、DNA配列、プロモーター及びターミネーターそれぞれをライゲーションするために、そして、組み込み又は宿主複製に必要な情報を含む適したベクター中にこれらを挿入するために使用される手順は、当業者によく知られており、例えばJ. Sambrook et al., "Molecular Cloning 2nd ed.", Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)により説明される。
【0107】
ヘルパー因子遺伝子及び/又はPOIを組み込みターゲットとして使用するベクターは、第1に、ヘルパー因子及び/又はPOIをコードする全DNA配列を含むDNAコンストラクトを準備し、引き続きこのフラグメントを適した発現ベクター中に挿入することにより、又は、個々の要素のための遺伝情報を含むDNAフラグメント、例えばシグナル、リーダー又は異種タンパク質を順番に挿入し、この後にライゲーションすることにより構築されてよいことが理解されるものである。
【0108】
マルチクローニング部位を有するベクターであるマルチクローニングベクターも本発明により使用されることができ、その際、所望の異種遺伝子が発現ベクターを提供するためにマルチクローニング部位で組み込まれることができる。発現ベクターは、異種遺伝子を保有するベクターであり、かつ、このような遺伝子によりコードされる異種化合物の発現に使用される。発現ベクター中では、プロモーターが異種化合物の遺伝子の上流に配置され、この遺伝子の発現を調節する。マルチクローニングベクターの場合には、異種化合物の遺伝子がマルチクローニング部位に導入されるために、このプロモーターはマルチクローニング部位の上流に配置される。
【0109】
本発明により組み換え宿主細胞を得るために提供されるDNAコンストラクトは、確立された標準的方法、例えばホスホラミダイト方法により合成によって準備されてよい。DNAコンストラクトはゲノム又はcDNA起源であってもよく、例えばゲノム又はcDNAライブラリーを準備し、本発明のポリペプチドの全て又は一部をコードするDNA配列を標準技術に一致して合成オリゴヌクレオチドを使用したハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることにより得られてよい(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratorv Manual, Cold Spring Harbor, 1989)。最後に、DNAコンストラクトは、混合した合成及びゲノム起源、混合した合成及びcDNA又は混合したゲノム及びcDNA起源であってよく、これは合成、ゲノム又はcDNA起源のフラグメントを適したようにアニーリングすることにより準備され、このフラグメントは全DNAコンストラクトの様々な部分に相応し、標準的技術に一致する。
【0110】
本発明によるトランスフォーマントは、このようなベクターDNA、例えばプラスミドDNAを宿主中に導入し、そして、POIをヘルパー因子の存在下で過剰発現するトランスフォーマントを選択することにより得られることができる。宿主細胞は、外来DNAsを組み込むことができるように真核細胞のトランスフォーメーションのために慣用される方法により処理され、これは例えば電気パルス法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法及びこの改変した方法である。P.パストリス(P. pastoris)は好ましくは電気穿孔によりトランスフォーメーションされる。
【0111】
別の好ましい実施態様において、酵母発現ベクターは、例えば相同性組み換えによって、酵母ゲノム中に安定に組み込むことができる。
【0112】
細胞をヘルパー因子及び/又はPOI遺伝子でトランスフォーメーションすることにより得られる本発明によるトランスフォーマント宿主細胞は、好ましくは第1に異種タンパク質を発現する負荷なしに多数の細胞を効率的に成長させる条件下で培養されてよい。細胞株がPOI発現のために準備される場合には、培養技術は発現生成物を生産するため選択される。
【0113】
トランスフォーマントが誘導的刺激を用いて成長する場合には、プロモーターは、その制御下にある遺伝子の転写を指向させるために活性化されてよく、そしてPOIは発現する。誘導的刺激を用いた成長条件下では、これは通常は通常条件下におけるよりもより遅く成長し、しかし、これは、前の段階において多数の細胞へと既に成長しており、この培養系は全体として多量の異種タンパク質を生産する。誘導的刺激は好ましくは熱、又はカドミウム、銅の添加、浸透圧増加剤、過酸化水素、エタノール、メタノール、メチルアミン又はこの類似物である。
【0114】
少なくとも1g/L、より好ましくは少なくとも10g/L細胞乾燥質量、好ましくは少なくとも50g/L細胞乾燥質量の細胞密度を獲得するための成長条件下で、本発明による宿主細胞株をバイオリアクター中で培養することが好ましい。このような収率の生体分子生産をパイロット又は工業規模で提供することが好ましい。
【0115】
POIは好ましくは、少なくとも1mg/L、好ましくは少なくとも10mg/L、好ましくは少なくとも100mg/L、最も好ましくは少なくとも1g/Lの収量を生産するための条件を採用して発現される。
【0116】
本発明によれば、意外なことに、バイオマスが少なく維持される場合にすら、高い収量でヘルパー因子及びPOIを効率的に共発現することができる。このようにして、高い具体的収量は、これはmgPOI/g乾燥バイオマスで測られるが、2〜200、好ましくは100〜200、500までの範囲においてパイロット及び工業規模においてこのようにして実現可能である。本発明による生産宿主の具体的生産性は、ヘルパー因子なしの生成物の発現に比較して、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.5倍、少なくとも1.2倍又は少なくとも1.3倍の増加を提供し、幾つかの場合には2倍よりも多い増加が示されることができる。
【0117】
本発明の宿主細胞は好ましくは以下の試験によりその発現能又は収量について試験される:ELISA、活性アッセイ、HPLC、又は他の適した試験。
【0118】
好ましい発酵技術はバッチ、流加回分又は連続的培養である。
【0119】
好ましくは、酵母は無機培地中で適した炭素供給源と一緒に培養され、ビタミンカクテルを回避し、これによって、さらに単離プロセスを顕著に簡易化する。好ましい無機培地の一例は、利用可能な炭素供給源(例えば、グルコース、グリセロール又はメタノール)、マクロ構成要素を含有する塩(カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、クロライド、スルファート、ホスファート)及び微量元素(銅、ヨウ化物、マンガン、モリブデン酸塩、コバルト、亜鉛及び鉄塩、及びホウ酸)を含むものである。
【0120】
トランスフォーメーションした細胞をこの所望される組み換え化合物の発現を実施するのに適した条件下で培養し、これは、発現系及び発現されるタンパク質の性質に依存して、例えばタンパク質がシグナルペプチドに融合しているかどうかやタンパク質が溶解性又は膜結合しているかどうかに依存して、細胞又は培養培地から精製されることができる。当業者に理解されるとおり、培養条件は、宿主細胞のタイプ及び利用される特定の発現ベクターを含む因子に応じて変動するものである。
【0121】
所望される化合物が細胞から分泌される場合には、これは技術水準の技術を用いて培養培地から単離され、かつ精製されることができる。酵母細胞からの組み換え発現生成物の分泌は、一般に、精製プロセスを容易にすることを含む理由等から好ましい、というのも生成物は、酵母細胞が細胞内タンパク質を放出するために破砕される場合に生じるタンパク質の複雑な混合物からよりむしろ培養上清から回収されるからである。
【0122】
分泌されたタンパク質は一般に、N末端シグナル又はリーダーペプチドを有する前駆体として初期に発現される。シグナルペプチドは一般に正に荷電したN末端を有し、この後に疎水性コアが続き、この後に、シグナルペプチダーゼとして知られる酵素のための認識部位が続く。この酵素はトランスロケーションの間にタンパク質からシグナルペプチドを開裂する。このタンパク質は小胞体からゴルジ装置へと輸送され、次いで、タンパク質の性質に依存して分泌経路における数々の経路の1つが続く。このタンパク質は培養培地中へと分泌されるか又は例えば細胞表面に維持されてよい。細胞外、膜内外及び細胞質ドメインを含む特定のレセプターは、細胞表面に維持されてよいタンパク質の例であり、細胞外ドメインだけが細胞の外側に位置する。
【0123】
培養されたトランスフォーマント細胞は、超音波又は機械により、酵素又は化学処理により破砕されてもよく、このようにして所望のPOIを含む細胞抽出物を得、ここからPOIは単離及び精製される。
【0124】
組み換えポリペプチド又はタンパク質生成物を得るための単離及び精製方法、方法、例えば溶解性の相違を利用する方法、例えば塩析及び溶媒沈降、分子量の相違を利用する方法、例えば限外濾過及びゲル電気泳動、電荷の相違を利用する方法、例えばイオン交換クロマトグラフィ、特異的親和性を利用する方法、例えばアフィニティクロマトグラフィ、疎水性の相違を利用する方法、例えば逆相高性能液体クロマトグラフィ、及び等電点の相違を利用する方法、例えば等電点電気泳動が使用されてよい。具体的精製工程は好ましくは、共発現され、かつ、POI調製物を汚染する任意のヘルパー因子を分離するために利用される。
【0125】
単離されかつ精製されたPOIは、慣用方法、例えばウェスタンブロット又はその活性のアッセイにより同定されることができる。精製された化合物の構造は、アミノ酸分析、アミノ末端分析、一次構造分析等により定義されてよい。この化合物が大量にかつ高度な精製レベルにおいて得ることができることが好ましく、このようにして、製薬学的組成物における活性成分としての使用のために必要な要求を満たす。
【0126】
本発明の好ましい宿主細胞株は、ヘルパー因子及びPOI遺伝子の組み込みを維持し、発現レベルは、約20回の培養世代、好ましくは少なくとも30回の培養世代、より好ましくは少なくとも約40回の培養世代、最も好ましくは約50回の培養世代後にさえ、高いままであり、例えば少なくともμgのレベルである。この組み換え宿主細胞は意外なまでに安定であり、このことは、産業的規模のタンパク質生産のために使用される場合に大きな利点である。
【0127】
本発明は更に詳細に以下実施例において説明され、このことは、請求されるとおりの発明の範囲を如何なる意味合いでも限定することを意図しない。
【0128】
実施例
例1:
a)表面上にFab 2F5をディスプレーするP.パストリス株の構築
Fab 2F5発現カセットの作成のために、全軽鎖遺伝子(vL及びcL)及び重鎖遺伝子のvH及びcH1領域をヒト化したIgGI mAbを含むpRC/RSVからPCRにより増幅した(Kunert et al., 1998, 2000)。非テンプレートコード制限部位(Non template codes restriction sites)をオリゴヌクレオチドプライマーを使用することに付加した(第1表)。
【0129】
第1表:Fab 2F5重鎖及び軽鎖のPCR増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー
【表1】

【0130】
軽鎖フラグメントを改変したバージョンのpGAPalfaA (Invitrogen)のEcoRI及びSacll部位中にライゲーション導入し、ここではAvrll制限部位が部位指向的突然変異作成によりNdel部位に変更され、この結果、2つの発現カセットを含むプラスミドの引き続く線状化が可能になった。
【0131】
重鎖フラグメントをアルファ−アグルチニンフラグメントを有する改変されたバージョンのpGAPZalfaAのEcoRI部位中に挿入した(アルファ−アグルチニンフラグメントを、PCRによってプライマーAgg-EcorRI#1(配列番号9)及びAgg-Xbal#2(配列番号10)(第2表)を使用してS.セレビシエゲノムDNAから増幅し、pGAPZalfaAのEcoRI及びXbal部位中にクローニング導入した)。
【0132】
第2表:S.セレビシエのためのアルファ−アグルチニンのPCR増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー
【表2】

【0133】
1つのベクター上の両方のFab鎖のための発現カセットを組み合わせるプラスミドを、BgIII及びBamHIを用いた軽鎖ベクターの二重消化、及び、アルファ−アグルチニンフラグメントへと融合した重鎖フラグメントの発現カセットの単一コピーを既に含むそれぞれのベクター(pGAPZαA)の特有のBgIII部位中へのこの発現カセットの引き続く挿入により生産した。
【0134】
P.パストリス中にジェネティシン(G418)耐性を付与するプラスミドを作成するために、Sh ble遺伝子(Fab 2F5軽鎖及び重鎖アルファアグルチニン融合体を有するプラスミドpGAPZalfaA(pGAPZalfaA-LC-HCaAggl)のゼオシン(Zeocin商標は、CAYLAの商品名)への耐性を付与する)を、pFA6KanMX4 (Longtine et.al.1998)のkanMX4カセットからのTn903 kanR遺伝子によって置換した。この交換を、Tn903 kanR遺伝子(pFA6kanMX4カット、Ncol及びSealを有する)をNcol及びEcoRVで消化したpGAPZalfaA-LC-HCalfaAgglのプラスミド骨格中にクローニング導入することによって実施した。
【0135】
この生じるプラスミドをAvrllを用いてP.パストリスSMD1168 (Invitrogen)中への電気トランスフォーメーション前に線状化した。
【0136】
P.パストリスの表面上の抗体フラグメントFab 2F5のディスプレーを確実にするために、免疫蛍光染色細胞(抗ヒトカッパ軽鎖FITCコンジュゲート;Sigma-Aldrich F3761)のフローサイトメトリー分析を実施し、高生産(ディスプレー)株を選択した。
【0137】
b)P.パストリスcDNAライブラリーの共過剰発現に適したプラスミドpLlBの構築
第1の工程においてpLIBを作成するためにpGAPZB (Invitrogen)のマルチクローニング部位(MCS)を、人工オリゴヌクレオチド(アニーリングした5′リン酸化オリゴヌクレオチドMCS#1(配列番号11)及びMCS#2(配列番号12)、(第3表)、pGAPZBのEcoRI及びNotlの間の付加的な制限部位BstAPI(A)、Pacl及びBstAPI(B)をコードする)を挿入することにより改変した。制限部位BsIAPI(A)及びBstAPI(B)は、比較的粘着性の末端をSfil(A) / Sfil(B)と形成するように設計されている。第2の工程において、当初のGAPプロモーターを、付加的な2つのbpを位置238(メガプライマー法によりPCRを用いて増幅;オリゴヌクレオチドプライマー、第4表参照のこと)に有する改変されたGAPプロモーターのPCRフラグメントで、これをBgIII及びEcoRIの間にクローニング導入することにより置き換えた。これら2つのbpの挿入は、新規のSfil制限部位を生じた。
【0138】
第3表:マルチクローニング部位のためのオリゴヌクレオチド
【表3】

【0139】
第4表:S.セレビシエのためのアルファ−アグルチニンのPCR増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー
【表4】

【0140】
別の工程において、生じるプラスミドのpGAP(Sfil)MCSmodのAOX1転写ターミネーター及びゼオシン耐性カセットを、プラスミドpPuzzle_ZeoR_Pgap_eGFP_AOXTT (Gasser et.al. 2008)からのS.セレビシエ−ゼオシン耐性カセットフラグメントのCYC1転写ターミネーターに対して変更した。相同組み換えを介した遺伝子置換事象(2F5Fab重鎖及び/又は2F5Fab軽鎖の発現カセットのノックアウト)を回避するために、ゼオシン耐性カセットの方向をKpnlを用いた制限酵素消化及び再ライゲーションにより変更した。
【0141】
pPuzzle_ZeoR_Pgap_eGFP_AOXTT(reverse)を、BamHI(この後にクレノウポリメラーゼを用いた処理が続く)及びBssSIで消化した。正確なサイズのDNAフラグメントを、プラスミドpGAP(Sfil)MCSmod(Agelで消化し、クレノウで処理し、BssSIで消化した)中にクローニングした。生じるプラスミドをpLIBと呼んだ。
【0142】
c)cDNA共発現ライブラリーの構築:
cDNA合成を、様々な環境的条件(改変した培養パラメーター:温度、pH、異なる炭素及び窒素供給源;複合的かつ最小限の塩媒体、ヒートショック)下で成長した様々な株のP.パストリスのポリARNAプールから開始して、SMART Creator cDNA Library Construction Kit (Clontech)のプロトコルに応じて、cDNA−PCRフラグメントのクローニングの工程まで実施した。cDNAが提供されたプラスミド中にクローニングされる代わりに、この生じるcDNA−PCRフラグメントをプラスミドpLIB(例1、工程b)中にクローニングし、これは、この研究のために特別に設計及び構築されている(cDNAライブラリーをPCRにより増幅し、SfIIで消化し、かつ、BstAPI及びアルカリホスファターゼ処理したpLIB中にクローニング)。電気トランスフォーメーションを介した大腸菌のトランスフォーメーションは、1×106個々のクローンを生じた。このクローニング手順の効率を、制限酵素分析により確認した。
【0143】
生じるプラスミドライブラリー(相同組み換えを介してゲノム中への組み込みのためSfilで線状化)を、細胞の表面上に抗体フラグメントFab2F5をディスプレーするP.パストリスの予備選択された株をトランスフォーメーションするために使用した(例1、工程a)。最適化されたトランスフォーメーション手順は、ゼオシンを含むYPD寒天上に1.2×106個々のクローンを有するP.パストリスcDNA共発現ライブラリーを生じた。全てのコロニーをYPD培地を使用してプレートから剥がしとった。生じる細胞懸濁液を、600nmで0.1の出発光学密度を有する発現培地を接種するために使用した(条件:10mlのBM培地を有する100mlの振盪フラスコ培養、1リットルあたり:10gの酵母抽出物、10gのペプトン、100mMのリン酸カリウム緩衝液pH6.0、13.4gの酵母窒素供給源、硫酸アンモニウムあり、0.4mgビオチン)。細胞を28℃及び180rpmで成長させ、中間対数相(OD600 8-15)を生じた。約107個の細胞を、BSAを含むPBS中で抗ヒト−カッパ−軽鎖FITCコンジュゲートで免疫蛍光染色し(Sigma-Aldrich F3761、希釈1:100)、3秒間の超音波処理後にこれらを蛍光活性化細胞選別(FACS)のために使用した。FACSをFACSCalibur (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, USA)で実施した。FACSのために2つのゲートを定義しなくてはならなかった。ゲート1は、ドットプロットFSC vs. SSCで定義され、細胞と細胞残渣を区別するために使用された。ゲート2は、ドットプロットFL1 vs. FSCで設計され、最高のFL1シグナルを有するゲート1の細胞だけを回収するようにした。両方のゲートに属する事象(細胞)だけ選別し、細胞濃縮器中で回収した。選別した事象vs.選別してない事象(第5表)の比を、移動ゲート2を介して制御した。この選別した細胞の回収を液状BM培地中で実施した。全ての回収した細胞を新規発現培養を接種するために使用し、中間対数相へと上述の条件下で再度成長させた。
【0144】
この手順を4回繰り返し、この結果、全5回の逐次的ラウンドの選別を実施した。
【0145】
第5表:選別ラウンド
【表5】

【0146】
発現、染色及び選別の5回目のラウンド後に、全ての選別した細胞をYPD寒天(1リットルあたり:10gの酵母抽出物、20gのペプトン、20gのグルコース、25mgのゼオシン、500mgのG418スルファート)上に播種した。単一クローンを個別化するために、レプリカ平板法の1回のラウンド後に、これらの単一コロニーを発現培地を接種するために使用し、中間対数相へと再度成長させた。各個々のクローンからの細胞のアリコートを免疫蛍光染色のために使用し、この後、フローサイトメトリー分析した。フローサイトメトリー分析を、FACSCalibur (Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ, USA)で実施した。この試料を、488nmで空冷したアルゴン−イオンレーザーを用いて励起させ、その一方でこの蛍光放出を585/21バンドパスフィルターを介して測定した。
【0147】
全てのデータを対数モードで獲得した。閾値設定を調節し、細胞残渣をデータ獲得から排除した。10000個の細胞を各試料のために測定した。データ分析を後でFCSExpress V3及びMS Excel Softwareを用いて実施した。免疫蛍光染色されかつ表面ディスプレーした抗体フラグメント2F5Fabの蛍光放出を、比FL1/FSCの計算により、細胞サイズに対して標準化した。各個々のクローンについて測定した全10000個の細胞のFL1/FSC比の相乗平均を計算し、同種遺伝子を共過剰発現しないコントロール株のFL1/FSC比の相乗平均に比較した。(空のpLIBプラスミドでトランスフォーメーションしたP.パストリス2F5Fabディスプレー株)。促進された2F5Fab細胞表面シグナルを有する株を、ゲノムDNAの調製のために使用した(DNeasy Blood and Tissue Kit, Qiagen 69504)。共過剰発現した同種遺伝子の同定を、pLIB特異的オリゴヌクレオチドプライマー(GAPLibamp (配列番号16)及びShble3out(配列番号17)、第6表)を用いたPCR増幅及びPCR産物の配列決定により実施した。
【0148】
第6表:共過剰発現した遺伝子のPCR増幅及び配列決定のためのオリゴヌクレオチドプライマー
【表6】

【0149】
配列をP.パストリスゲノム配列、S.セレビシエゲノムデータベース及びNCBIデータベースに対してブラストした。第5回目の選別ラウンドのアウトプットから、P.パストリスの3つのオープンリーディングフレームが同定されることができた。
【0150】
RPPA12105 P.パストリスIG-66. 機能的アノテーションなし;予備的にcLC52 (cDNAライブラリークローン52)としてアノテーションされる
コード配列(配列番号1):

RPPA10316 P.パストリスIG-66アノテーション;S.セレビシエに対するホモロジーによりRPL33A
コード配列(配列番号2):

イントロンを含むゲノム配列(配列番号3):

RPPA09410 P.パストリスIG-66 アノテーションなし(作業名cLC61 cDNAライブラリークローン61)
コード配列(配列番号4):

【0151】
同定されたオープンリーディングフレームをpLIB cDNA-ライブラリーから特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅した(第7表)。P.パストリスコザック配列(GCC)を、開始コドン(ATG)直前に挿入した。非テンプレートコードされた制限部位Sbfl及びSfilを、相応するフォワード及びバックワードプライマーを用いて付加した。制限酵素Sbfl及びSfilでの処理後に、正確なサイズのPCR産物をpPuzzle_ZeoR_Pgap_eGFP_AOXTTプラスミド(Gasser et.al. 2008)中にクローニング導入し、eGFPのオープンリーディングフレームを置き換えた(Sbfl及びSfilで消化、その後に、アルカリホスファターゼを用いた処理)。生じるプラスミド(pPZ-RPL; pPZ-cLC52, pPZ-cLC61)及び空のpPuzzle_ZeoR_Pgap_AOXTTを、Asclでの制限消化後に2F5FabをディスプレーするP.パストリスSMD1168をトランスフォーメーションするために使用した。レプリカ平板法の1回のラウンド後に、単一クローンを個別化するために、単一コロニーをYPD培地上の予備培養物に接種するために使用した。約20時間にわたる28℃で180rpmでのインキュベーション後に、これらの予備培養物をOD600=0.1を有する発現培養物を接種するために使用した。発現培養物のアリコート(28℃、180rpmで中間対数相に成長)を、免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー分析のために使用した。様々な株の発現レベルを、FL1/FSC比の相乗平均の計算により比較した(第8表)。
【0152】
第7表:同定された遺伝子のPCR増幅のためのオリゴヌクレオチドプライマー
【表7】

【0153】
第8表:発現レベル
【表8】

【0154】
例2:組み換えヒトトリプシノゲン(rhTRP)を過剰発現するP.パストリスの株中の新規ヘルパー因子遺伝子の共過剰発現
a)共過剰発現プラスミドの構築
ゼオシンに対する耐性を確認するベクターからの既に異種のタンパク質を発現する株中のP.パストリスの同種遺伝子の共発現に適したプラスミドを作成するために(例2、工程b参照のこと)、第1の工程においてKanMX4カセット(P.パストリス中のジェネティシン耐性を確認する)をpFA6kanMX4プラスミドからPCRにより増幅した(Longtine et.al.1998)。Kpnlのための制限部位を、特異的オリゴヌクレオチドプライマーKanR#1(配列番号24)及びKanR#2(配列番号25)を使用して付加した(第9表)。Kpnl処理したPCRフラグメントを、ゼオシン耐性カセットの代わりにpPuzzle ZeoR Pgap eGFP AOXTTの両方のKpnl部位の間にクローニングした(Gasser et.al. 2008)。生じるプラスミドをpPkanRと呼んだ。
【0155】
第9表:
【表9】

【0156】
共過剰発明のために全目的遺伝子(例1参照)をPCRを介してP.パストリスcDNAライブラリーから増幅させた。非テンプレートコードされたP.パストリスコザック配列及びSbfl及びSfilのための制限部位を、それぞれのフォワード及びバックワードオリゴヌクレオチドプライマーを使用して付加した(第7表)。Sbfl及びSfil処理されたPCR産物をpPKanR中にクローニングした(Sbfl及びSfil消化し、アルカリホスファターゼで処理)。新規の共過剰発現プラスミドpPKanR-RPL, pPKanR-cLC52及びpPKanR-cLC61をE.coli Top10 (Invitrogen)中にトランスフォーメーションした。制限エンドヌクレアーゼ消化及び配列決定を、この構築されたプラスミドの正確な同一性を確認するため実施した。
【0157】
b)組み換えヒトトリプシノゲン及び新規ヘルパー因子遺伝子を共発現するP.パストリス株の構築
例2の工程a)に説明されるクローニング手順から得られるプラスミドpPKanR-RPL, pPKanR-cLC52及びpPKanR-cLC61を、GAPプロモーターの制御下で組み換えヒトトリプシノゲンの高レベル発現について予備選択されたP.パストリスの株をトランスフォーメーションするために使用した(Hohenblum et.at 2004)。選択は、トリプシノゲン遺伝子についてのゼオシン耐性及びヘルパー因子遺伝子についてのジェネティシン耐性を基礎とする。
【0158】
共過剰発現したヘルパー因子遺伝子の作用を評価するために、トリプシノゲン発現株もヘルパー因子遺伝子無しにpPkanRプラスミドでトランスフォーメーションした。
【0159】
c)振盪フラスコ培養中のトランスフォーメーションしたP.パストリス株の培養
10g/lのグリセロールを含む5mlのYP培地(10g/lの酵母抽出物、20g/lのペプトン)を、例3の工程a)からのP.パストリス株の単一コロニーで接種し、一晩28℃で成長させた。これら培養物のアリコート(0.1の終OD600に相応)を、20g/Lのグルコースを補った発現培養培地12.5ml(1リットルにつき:10gの酵母抽出物、10gのマメペプトン、10.2gの(NH42PO4、1.24gのKCl、0.1gのCaCl2、pH5.0にHClを用いて調節)に移し、100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で強力な振盪で28℃で60hにわたりインキュベーションした。同じ量の基質を繰り返し4回12時間毎に、細胞を2500×gの10分間の室温での遠心分離により回収し、分析のために調製する前に添加した(1mlの細胞懸濁物の細胞質量を測定することによるバイオマス決定、培養上清中のトリプシノゲン定量化のための酵素活性アッセイ)。
【0160】
d)rhTRPの定量による新規ヘルパー因子の共過剰発現の作用の評価
P.パストリス培養物上清の脱塩を、小さい予備充填したサイズ排除クロマトグラフィカラム(Disposable PD-10 Desalting Columns 17-0851 -01 ; GE Healthcare)を使用して実施した。2.5mlの上清をカラムに設け、3.5mlの溶出緩衝液(1mM HCl)で溶出させた。溶出後に70μlの2M CaCl2溶液を添加した。不活性なトリプシノゲンを活性のあるトリプシンに変換するために300μlの脱塩した上清(+CaCl2)を690μlの活性化緩衝液(50mM TRIS/HCl pH8.6;40mM CaCl2、0.15g/L エンテロキナーゼ、豚小腸由来、Sigma-Aldrich E0632)と混合し、2時間37℃でインキュベーションした。165μlの活性化混合物を1000μlのNα−p−トシル−L−アルギニン−メチル−エステル−ヒドロクロリド(TAME)溶液と混合し、これは溶解緩衝液(50mM TRIS/HCl pH8.1;40mM CaCl2)中に溶解したTAME(Sigma-Aldtrich T4626)446mg/Lを含有し、247nmでの吸収キネティックを分光光度計中で5分間の時間にわたり測定した。必要な場合には、活性化したトリプシン溶液を希釈緩衝液で希釈して、この方法の線形範囲(ΔA247/分<0.3)にヒットさせた。1g/Lのトリプシン濃度はΔA247/分=0.101に相応する。
【0161】
このデータの評価は、PpcLC52, PpRPL33A及びPpcLC61の共過剰発現は、分泌された組み換えヒトトリプシノゲンの量に著しいポジティブな作用を有したことを示す(第10表)。
【0162】
例3:抗HIV抗体2F5のFabフラグメントを発現するP.パストリス株中の新規ヘルパー因子PpcLC52の共過剰発現
a)モノクローナル抗HIV抗体2F5のFabフラグメントを分泌するP.パストリス株SMD 1168の構築
1つのベクター上に両方のFab鎖について発現カセットを組み合わせるプラスミドを、軽鎖ベクターをBgIII及びBamHIで二重消化し、引き続き、重鎖フラグメントの発現カセットの単一コピーを既に含むベクターpGAPZalfaAの特有のBamHI中に挿入することにより、生産した。次いでプラスミドを、P.パストリス中への電気トランスフォーメーション前にAvrllで線状化した。
【0163】
全ての構築された発現カセットを、GAP forw/AOX3' backw (Invitrogen)を用いたDNA配列決定により確認した。
【0164】
この生じるプラスミドを、Ndelでの制限消化後にP.パストリスSMD1168 (Invitrogen)をトランスフォーメーションするために使用した。トランスフォーマントを、ゼオシン耐性について選択し、モノクローナル抗HIV1抗体2F5のFabフラグメントの高レベル発現についてスクリーニングした。
【0165】
b)2F5 Fab及びヘルパー因子PpcLC52を共過剰発現するP.パストリス株の構築
例3 工程a)において得たP.パストリス株のトランスフォーメーションを、例2 工程a)のプラスミドpKanR-cLC52を用いて実施し、これはAsclで線状化されている。このプラスミドを、電気トランスフォーメーションにより細胞中に導入した。このトランスフォーメーションした細胞を、20g/Lグルコース及び500mg/Lジェネティシンを含むYP寒天上で培養した。コントロールとして、2F5 Fab発現株もまた、ヘルパー因子遺伝子なしにpPkanRプラスミドを用いてトランスフォーメーションした。
【0166】
c)振盪フラスコ培養中のトランスフォーメーションしたP.パストリスの培養
10g/lのグリセロールを含む5mlのYP培地(10g/lの酵母抽出物、20g/lのペプトン)を、例3 工程b)からのP.パストリストランスフォーマントの単一コロニーで接種し、一晩28℃で成長させた。これら培養物のアリコート(終OD600=0.1に相応)を、20g/Lのグルコースを補った発現培養培地10ml(1リットルにつき:10gの酵母抽出物、10gのペプトン、100mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0、13.4gの酵母窒素塩基、硫酸アンモニウムを有する、0.4mgビオチン)に移し、100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で強力な振盪で28℃で48hにわたりインキュベーションした。同じ量の基質を繰り返し3回12時間毎に、細胞を2500×gの5分間の室温での遠心分離により回収し、分析のために調製する前に添加した(1mlの細胞懸濁物の細胞質量を測定することによるバイオマス決定、培養上清中のFab定量化のためのELISA)。
【0167】
d)2F5Fabの定量化による共発現ヘルパー因子の作用の評価
分泌された組み換えにより発現した2F5 Fabの量を決定するために、96ウェルマイクロタイタープレート(MaxiSorb, Nunc, デンマーク)を、抗ヒトIgG(Fab 特異的)で一晩RTでコーティングし(Sigma-Aldrich I5260; 1 :1000、PBS中, pH 7.4)、これは工程d)からの2F5 Fabを分泌するP.パストリス培養物の連続的に希釈された上清(PBS/Tween20 (0.1 %) + 2 % BSA中、1:50の希釈で開始)が適用され、RTで2hインキュベーションされる前であった。IgG (Rockland)のヒトFabフラグメントを、開始濃度200ng/mlで標準タンパク質として使用した。各インキュベーション工程後に、このプレートを3回、0.1%Tween 20含有PBS(pH7.4に調節)を用いて洗浄した。二次抗体としての抗ヒトカッパ軽鎖−APコンジュゲート(Sigma-Aldrich A-3813 1:1000、PBS/Tween+2%BSA中)100μlを各ウェルに添加し、1hRTでインキュベーションした。洗浄後に、プレートをpNPP、1mg/mlのp−ニトロフェニルホスファートで検出緩衝液(0.1N Na2CO3/NaHCO3 pH9.6)中で染色し、405nm(参照波長620nm)で読み取った。このデータを第10表中にまとめる。
【0168】
例4:
a)組み換えブタトリプシノゲンを過剰発現するP.パストリス株の構築
組み換えブタトリプシノゲン(rpTRP)の発現のためにコドン最適化した人工遺伝子を合成した(Geneart Germany)。DNA合成の間にP.パストリスコザック配列(GCCは、開始コドンATGの直前である)、S.セレビシエ交配因子α分泌リーダー配列、及び、制限酵素Sbfl及びSfilのための部位、オープンリーディングフレームに隣接、を添加した。rpTRP遺伝子のコード配列(コザック配列に隣接)を、配送されたプラスミドからSbfl及びSfilを用いて切断し、Sbfl, Sfil及びアルカリホスファターゼ処理したプラスミドpPuzzle_ZeoR_Pgap_eGFP_AOXTT (Gasser et.at 2008)中にクローニング導入し、これはeGFP遺伝子のオープンリーディングフレームを置き換える。ライゲーションしたプラスミドを大腸菌TOP10 (Invitrogen)中にトランスフォーメーションし、ゼオシン含有LB寒天上にまいた。制限エンドヌクレアーゼ分析を、プラスミドpPZ_Pgap_rpTRP_AOXTTの正確な同一性を確認するために実施した。Asclでの線状化後に、このベクターをP.パストリス株X33 (Invitrogen)をトランスフォーメーションするために使用し、かつ、ゼオシン及びグルコース含有YP寒天上にまいた。
【0169】
b)rpTRP及び新規ヘルパー因子遺伝子PpcLC52を共過剰発現するP.パストリス株の構築
例2a)に説明したクローニング手順から得られたプラスミドpPKanR-cLC52を、例4a)に説明するとおりのGAPプロモーターの制御下でrpTRPの高レベル発現について予備選択したP.パストリス株をトランスフォーメーションするために使用した。選択は、rpTRP遺伝子についてのゼオシン耐性及びヘルパー因子遺伝子についてのジェネティシン耐性を基礎とした。rpTRP トリプシノゲン発現株の発現に対する共過剰発現したヘルパー因子遺伝子の作用を評価するために、ヘルパー因子遺伝子無しにpPkanRプラスミドでもトランスフォーメーションした。
【0170】
c)振盪フラスコ培養中のトランスフォーメーションしたP.パストリス株の培養
例3 工程b)から得られたP.パストリス株の培養を、少しの改変を加えて例2 工程c)に説明するとおりに実施した。湿潤細胞質量の測定の代わりに、10mlの細胞懸濁物の酵母乾燥材料を、バイオマスの生産量を決定するために指定した。
【0171】
d)rhTRPの定量によるヘルパー因子の共過剰発現の作用の評価
組み換えブタトリプシノゲンの量の決定を、組み換えヒトトリプシノゲンについて例3工程d)に説明されるとおりに実施した。このデータを第10表中にまとめる。
【0172】
第10表
【表10】

【0173】
例5:発酵培養物中のブタトリプシノゲン及びPpcLC52を共過剰発現するP.パストリス株の培養
P.パストリスのバッチ発酵
発酵をバイオリアクター中で実施し、これは、工業的生産のためのパイロットスケールであり、全容積5.0l(Minifors, Infors, スイス)を有し、コンピューターベースのプロセス制御システムを備える。この培地は次のとおりである:
ビオチン(Sigma)及びH2SO4(Merck Eurolab)を除き、PTM1トレース塩ストック溶液(PTM1 trace salts stock solution)のための全ての化学薬品はRiedel-de Haenからである。
【0174】
PTM1トレース塩ストック溶液は1リットルあたり次のものを含有した。
【表11】

【0175】
バッチ培地は1リットルにつき次のものを含有した:2.0g/L クエン酸×H2O、12.6g(NH42HPO4、0.022g CaCl2×2H2O、0.9g KCl、0.5g MgSO4×7H2O、40g グリセロール、4.6ml PTM1トレース塩ストック溶液及び0.4mgD−ビオチン。このpHを25%HClを用いて5.0に調節した。
【0176】
溶解した酸素濃度を、撹拌機速度を600〜1250rpmに制御することにより、20%超の飽和に維持した。エアレーション速度は120L*h-1空気であった。この温度は25℃であり、pHをNH3(25%)を用いて制御した。発酵を開始する前に、このバッチ培地のpHを5.0に設定した。
【0177】
約24〜30hのバッチ相は、約20gl-1の乾燥バイオマス濃度を導いた。フィード培地中でグルコース(組成はフィード戦略に依存する、工程b)、工程c)及び工程d)参照のこと)は炭素供給源として働く。このpHはバッチの間に5.0であり、発酵を通じて5.0に維持した。
【0178】
試料を、グリセロールバッチ相の終わりに、フィード相の間及び/又は終了時に取り出した。細胞懸濁物10mlを遠心分離して、培養上清から細胞を分離し、次いで細胞ペレットを水で洗浄し、細胞乾燥質量(YDM)を決定するために105℃で24h乾燥させた。この上清を−20℃で凍結させ、トリプシノゲンアッセイまで維持する(ヒトトリプシノゲンについて工程c)例3で説明のとおり)。
【0179】
a)株
組み換えブタトリプシノゲン及びPpcLC52を共過剰発現する、例4 工程b)から得られた株、及び、「野生型」株を、YPG(10g/L酵母抽出物、20g/Lペプトン、10g/Lグリセロール)に対して予備培養物を接種するために使用した。予備培養物を28℃で24h振盪しつつインキュベーションした。複雑な培地成分を除去するために細胞を1500×gで10分にわたり遠心分離により回収し、バッチ培地中に再懸濁した。生じる細胞懸濁物を、600nmでの開始光学密度1.0で初期バッチ相を接種するために使用した。
【0180】
b)rpTRP及びPpcLC52を共過剰発現するP.パストリス株のケモスタット発酵
初期バッチ相(バッチ培地容積1.75リットル)の後に、発酵をケモスタットモードにおいて特定の成長速度μ=0.1及びバイオマス濃度(酵母乾燥質量)25g/Lで運転させた。フィード培地流れ(1.0g/L クエン酸×H2O;4.4g/L (NH42HPO4、0.01g/L CaCl2×2H2O、1.7g/L KCl、0.7g/L MgSO4×7H2O、55g/L グルコース×H2O、1.6mL PTM1トレース塩ストック溶液及び0.4mg/L D−ビオチン;pHを25%HClを用いて5.0に調節)及び細胞懸濁回収物流れを175g/hに設定した。空気の流れを一定に120L/hに維持した。試料をバッチ相の終わりに、かつ5回の容積変更の後に取り出した(50h供給)。
【0181】
単一の炭素供給源としてのグルコース及び特異的成長速度0.1h-1を有する定常状態条件で、PpcLC52共過剰発現株の生成物濃度及び特異的生産性は、コントロール株に比較して1.4倍より高かった。
【0182】
c)線形供給(linear feeding)と一緒でのrpTRP及びPpcLC52を共過剰発現するP.パストリス株の流加培養発酵
初期バッチ相(バッチ培地容積1.6リットル)後に、この発酵を線形供給プロファイルでもって流加培養モードにおいて運転させた。フィード培地流れ(0.28g/L CaCl2×2H2O、8.4g/L KCl 5.2g MgSO4×7H2O、464g/Lグルコール×H2O、10.0mL PTM1トレース塩ストック溶液及び0.4mg/L D−ビオチン)を17.5g/hに設定した。空気の流れを一定に120L/hに維持した。試料をバッチ相後、供給期間の間24時間毎及び供給の終了時に取り出した(100h)。
【0183】
PpcLC52を共過剰発現する株(rpTRP_cLC52)及び非共過剰発現株(rpTRP_wt)の比較は、バイオマスの等しい(線形)の蓄積を示した。rpTRP_cLC52株の平均特異的生産性は1.3倍より高く、そして、rpTRP_cLC52で蓄積した全生成物量は1.2倍より高く、これはrpTRP_コントロールに比較してである。
【0184】
c)一定の特異的成長速度μ=0.1h-1を有するブタトリプシノゲン及びPpcLC52を共過剰発現するP.パストリス株の流加培養発酵
初期バッチ相(バッチ培地容積1.4リットル)後に、この発酵を指数関数供給プロファイルでもって流加培養モードにおいて運転させた。フィード培地流れ(0.28g/L CaCl2×2H2O、8.4g/L KCl、5.2g MgSO4×7H2O、464g/L グルコース×H2O、10.0mL PTM1トレース塩ストック溶液及び0.4mg/L D−ビオチン)を、PIDコントローラーにより、μ=0.1h-1の一定の特異的成長速度に維持するために調節した。この溶解した酸素濃度を、撹拌機速度を600〜1250rpmにかつ空気流れ120〜500L*h-1に制御することにより20%飽和に維持した。リアクターの酸素輸送速度の制限のために、このプロセスは16hの供給後の酸素制限において運転した。試料をバッチ相後、供給期間の間に6回及び供給の終了時に取り出した(約25h)。
【0185】
PpcLC52を共過剰発現する株(rpTRP_cLC52)及び非共過剰発現株(rpTRP_wt)の比較は、バイオマスの等しい蓄積を示した。PpcLC52を共過剰発現する株の全生成物量(細胞フリー培養容積*生成物濃度)は、コントロール株に比較して流加培養相の終了時に1.2倍より高かった。rpTRP_cLC52株の特異的生産性は2.2倍より高かった。
【0186】
例6:ワイルドカード株の構築:
例2 工程a)に説明されるクローニング手順から得られるプラスミドpPKanR-RPL, pPKanR-cLC52及びpPKanR-cLC61を、POIを発現しないP.パストリスの株をトランスフォーメーションするために使用した。選択は、ヘルパー因子遺伝子についてのジェネティシン耐性を基礎とする。これらトランスフォーメーションした株はさらに、POIsについて改善された生産株として使用されることができる。
【0187】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
cLC52、RPL33及びcLC61からなる群から選択される、発現エンハンサーをコードする組み換えヌクレオチド配列を含む真核宿主細胞。
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列がP.パストリス(P. pastoris)に由来する請求項1記載の宿主細胞。
【請求項3】
真菌細胞、好ましくは酵母細胞、又は高等真核細胞、好ましくは哺乳類又は植物細胞である請求項1又は2記載の宿主細胞。
【請求項4】
酵母細胞がピキア属の細胞であり、特にP.パストリス(P. pastoris)の株の細胞である請求項3記載の宿主細胞。
【請求項5】
目的タンパク質(POI)をコードする目的遺伝子の導入のためのワイルドカード宿主細胞である請求項1から4のいずれか1項記載の宿主細胞。
【請求項6】
POIをコードする組み換えヌクレオチド配列を含む生産者細胞であり、POIを生産できる請求項1から4のいずれか1項記載の宿主細胞。
【請求項7】
−cLC52、RPL33及びcLC61からなる群から選択される、発現エンハンサーをコードする組み換えヌクレオチド配列、及び
−POIをコードする目的遺伝子
を含むP.パストリス(P. pastoris)宿主細胞。
【請求項8】
真核宿主細胞中のPOIの発現を増加させるための発現エンハンサーとしての、cLC52、RPL33及びcLC61からなる群から選択されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の使用。
【請求項9】
−請求項5記載の宿主細胞の提供、及び
−POIをコードするヌクレオチド配列の導入
を含む請求項6記載の宿主細胞の生産方法。
【請求項10】
−真核宿主細胞の提供、
−cLC52、RPL33及びcLC61の少なくとも1つをコードするヌクレオチド配列の導入、及び
−POIをコードするヌクレオチド配列の導入
を含む請求項6記載の宿主細胞の生産方法。
【請求項11】
−請求項6記載の生産者宿主細胞の提供、
−細胞培養物中のPOI及び発現エンハンサーの共発現、及び
−前記細胞培養物からのPOIの獲得
を含む、真核細胞中にPOIを生産する方法。
【請求項12】
前記POIが、血清タンパク質、例えば免疫グロブリン又は血清アルブミン、酵素、ホルモン、シグナリング分子、マトリックスタンパク質、そのフラグメント又は誘導体からなる群から選択されるポリペプチドである請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記POIが宿主細胞代謝産物の生産を媒介する請求項11記載の方法。
【請求項14】
POIをコードする組み換えヌクレオチド配列が、宿主細胞のゲノム中への組み込みのために又は宿主細胞中の自律複製のために適したプラスミドに提供される請求項11又は12記載の方法。
【請求項15】
プラスミドが、宿主細胞からのPOIの分泌を引き起こすのに有効な分泌リーダー配列及び/又は宿主細胞中のPOIの発現を引き起こすのに有効なプロモーター配列を含む真核性発現ベクター、好ましくは酵母発現ベクターである請求項13記載の方法。
【請求項16】
−POIをコードする組み換えヌクレオチド配列、及び
−cLC52、RPL33及びcLC61からなる群から選択されるタンパク質をコードするヌクレオチド配列
を含む、請求項10から14のいずれか1項記載の方法における使用のための共過剰発現プラスミド。

【公表番号】特表2012−527227(P2012−527227A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511289(P2012−511289)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056967
【国際公開番号】WO2010/133668
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511283000)
【氏名又は名称原語表記】FH Campus Wien
【住所又は居所原語表記】Favoritenstrasse 226, A−1100 Vienna, Austria
【Fターム(参考)】