説明

発現ベクター、トランスフェクション系、およびそれらの使用方法

【課題】宿主細胞、特に哺乳動物細胞における目的のポリペプチドの安定かつ高レベルな発現を可能にする新規な発現ベクターを提供すること。
【解決手段】所望のポリペプチドの高発現を提供する発現ベクターおよびトランスフェクション系を提供する。これらの発現ベクターおよびトランスフェクション系を使用する方法、ならびにこれらの組成物および方法によって改変された哺乳動物細胞もまた提供される。1つの局面において、本発明は、(a)第1の不活化された選択マーカーをコードする、第1のポリヌクレオチド;(b)目的の異種ポリペプチドをコードする、第2のポリヌクレオチド;および(c)第2の増幅可能な選択マーカーをコードする、第3のポリヌクレオチドを含む、発現ベクターである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、宿主細胞、特に哺乳動物細胞における目的のポリペプチドの安定かつ高レベルな発現を可能にする新規な発現ベクターを提供する。本発明はまた、本明細書中に記載される構築物を使用する、哺乳動物細胞についてのトランスフェクション系を含む。本明細書中に記載される発明は、効率的な機構を提供し、これによって、任意の所望のポリペプチドは、本明細書中に記載されるように、発生された新規な細胞株を使用して高レベルで発現され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ポリオーマのような細胞溶解ウイルスに基づくベクターは、短期間発現に対して使用されてきたが、不安定である傾向にあり、1細胞サイクルあたり多数回複製する(Lebkowski,J.S.ら、Mol.Cell.Biol.4:1951−1960,1984)。ウシ乳頭腫ウイルスに基づくベクターがまた開発されてきているが、一貫して、1細胞サイクルあたり一回も複製しない(Gilbert,D.M.ら、Cell50:59−68,1987;Ravnan,J.−B.ら、J.Virol.66:6946−6952,1992)。さらに、ウシ乳頭腫ウイルスベースのベクターは、高頻度の再編成を示す(Ashman,C.R.ら、Somatic Cell Mol.Genet.11:499−504,1985;DuBridge,R.B.ら、Mol.Cell.Biol.7:379−387,1987)。
【0003】
ヒトおよび霊長類の細胞において、エプスタイン−バーウイルスに基づくベクター(EBV)が開発されてきた(Yate,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.81:3806−3810,1984;Reisman,Dら、Mol.Cell.Biol.5:1822−1832,1985;Lupton,Sら、Mol.Cell.Biol.5:2533−2542,1985)。これらのベクターは、代表的に、1細胞サイクルあたり一回複製し(Adam,A.,J.Virol.61:1743−1746,1987;Yates,J.L.ら、J.Virology 65:483−488,1991;Hasse,S.B.ら、Nuc.Acids Res.19:5053−5058,1991)、そして長期間にわたり低い変異頻度で、安定して維持される(DuBridge,R.B.,ら、Mol.Cell.Biol.7:379−387,1987;DuBridge,R.B.ら、Mutagenesis 3:1−9,1988;Drinkwater,N.R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3402−3406、1986)。これらのベクターは、ヒトおよびサルの細胞におけるクローニングおよび発現研究のために使用されてきた(Margolskee,R.F.ら、Mol.Cell.Biol.8:2837−2847,1988;Young,J.M.ら、Gene 62:171−185,1988;Belt,P.B.G.Mら、Gene 84:407−417,1989;Peterson,C.ら、Gene 107:279−284、1991)。ゲノムへの組み込みが必要とされないので、安定した形質転換頻度が高く、クローン化された配列の回収が、プラスミド抽出によって達成される。しかし、齧歯目細胞は、EBV複製に対して許容されず、EBVの齧歯目対応物は、記載されていない(Yate,J.L.ら、Nature(London)313:812−815,1985)。
【0004】
特許文献1(Sauerら)は、真核生物細胞における遺伝子移入を達成するために、Cre−Lox部位特異的組換えの使用を開示する。しかし、記載される系は、宿主ゲノムへ転移されるDNAの効率的かつ安定した組み込みを提供しない(例えば、Sauerら、(1993)Methods in Enzymolozy 225:898頁を参照のこと)。これは、分子内交換による、ゲノム外への転移されたDNAの切除が、分子間部位特異的組換えによる、ゲノムへのDNAの組み込みよりも優性であるという事実に主に起因する。
特許文献2(Leboulchら)は、細胞を形質転換して、導入遺伝子の効率的かつ安定した部位特異的組み込みを生じるための方法および組成物を記載する。形質転換は、細胞にアクセプターベクター(好ましくは、レトロウイルスベクター)を導入することによって達成され、これは、細胞のゲノム内に組み込まれる。このアクセプターベクターは、2種の不適合性のlox配列、L1およびL2を含む。次いで、ドナーベクターは、同じL1およびL2配列が隣接する導入遺伝子を含む細胞に導入される。安定した遺伝子転移は、lox L1およびL2配列をCreリコンビナーゼと接触させることによって開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,959,317号明細書
【特許文献2】米国特許第5,928,914号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) 発現ベクターであって、以下:
(a)第1の不活化された選択マーカーをコードする、第1のポリヌクレオチド;
(b)目的の異種ポリペプチドをコードする、第2のポリヌクレオチド;および
(c)第2の増幅可能な選択マーカーをコードする、第3のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
(項目2) 項目1に記載の発現ベクターであって、前記第1の不活化された選択マーカーは、アミノ酸残基182で変異を有するネオマイシン耐性遺伝子をコードする配列、アミノ酸残基261で変異を有するネオマイシン耐性遺伝子をコードする配列、ならびにアミノ酸残基182および261で変異を有するネオマイシン耐性遺伝子をコードする配列からなる群より選択される、発現ベクター。
(項目3) 前記第3のポリヌクレオチドが、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)をコードする、項目1に記載の発現ベクター。
(項目4) 前記目的の異種ポリペプチドが、CAB−2、CAB−4、uPAR、VEGF−Dおよびウイルスタンパク質からなる群より選択される、項目1に記載の発現ベクター。
(項目5) 前記目的の異種ポリペプチドが、ウイルス糖タンパク質である、項目1に記載の発現ベクター。
(項目6) pESN1dhfr、pESN2dhfr、pESN3dhfr、pneo1dhfr5’del、pneo3dhfr5’del、pneo2dhfr5’delおよびpdhfr3’delからなる群より選択される、プラスミド。
(項目7) プラスミドpESN1dhfr。
(項目8) pESN2dhfrと命名されたプラスミド。
(項目9) pESN3dhfrと命名されたプラスミド。
(項目10) pneo1dhfr5’delと命名されたプラスミド。
(項目11) pneo3dhfr5’delと命名されたプラスミド。
(項目12) pneo2dhfr5’delと命名されたプラスミド。
(項目13) pdhfr3’delと命名されたプラスミド。
(項目14) 宿主細胞において目的のポリペプチドを産生するための方法であって、以下:
(a)項目1に記載の発現ベクターを適切な宿主細胞中に導入する工程;
(b)前記第1および第2の選択マーカーを発現する宿主細胞を、安定に組み込まれた発現ベクターについて選択する条件下で、選択する工程;
(c)該安定にトランスフェクトされた宿主細胞を、前記目的のポリペプチドの発現を支持する条件下で、増殖させる工程;および
(d)該目的のポリペプチドを単離する工程
を包含する、方法。
(項目15) 宿主細胞において目的のポリペプチドを産生するための方法であって、以下:
(a)項目6に記載の発現ベクターを適切な宿主細胞中に導入する工程;
(b)前記第1および第2の選択マーカーを発現する宿主細胞を、安定に組み込まれた発現ベクターについて選択する条件下で、選択する工程;
(c)該安定にトランスフェクトされた宿主細胞を、前記目的のポリペプチドの発現を支持する条件下で、増殖させる工程;および
(d)該目的のポリペプチドを単離する工程
を包含する、方法。
(項目16) 前記目的のポリペプチドが、CAB−2、CAB−4、uPAR、VEGF−Dおよびウイルスタンパク質からなる群より選択される、項目14に記載の方法。
(項目17) 前記ポリペプチドが、ウイルスタンパク質である、項目14に記載の方法。
(項目18) 前記宿主細胞が、哺乳動物細胞または昆虫細胞である、項目14に記載の方法。
(項目19) 目的のポリペプチドを産生する宿主細胞株であって、該ポリペプチドは、項目14に記載の方法に従って産生される、宿主細胞株。
(項目20) トランスフェクション系であって、以下:
(a)第1の構築物であって、適切な骨格中に、第1の選択マーカーをコードする配列および第2の選択マーカーをコードする配列を含み、該第2の選択マーカーは、そのコード配列中に少なくとも1つの不能化変異を含む、第1の構築物;および
(b)第2の構築物であって、適切な骨格中に、目的のポリヌクレオチドヌクレオチド配列および第3の選択マーカーをコードする配列を含み、ここで、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカーと同じ選択マーカーであるが、ただし、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカー中の不能化変異とは異なるコード配列領域にある、少なくとも1つの不能化変異を含む、第2の構築物
を含む、トランスフェクション系。
(項目21) 前記第1の選択マーカーが、抗生物質耐性をコードする、項目20に記載のトランスフェクション系。
(項目22) 前記第1の選択マーカーが、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIをコードする、項目20に記載のトランスフェクション系。
(項目23) 前記ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIが、機能的に損なわれている、項目22に記載のトランスフェクション系。
(項目24) 前記第1の構築物中の前記第2の選択マーカーが、5’コード領域における少なくとも1つの変異によって不能化されており、そして前記第2の構築物中の第3の選択マーカーが、3’コード領域における少なくとも1つの異なる変異によって不能化されている、項目20に記載のトランスフェクション系。
(項目25) 前記変異が、点変異である、項目24に記載のトランスフェクション系。
(項目26) 前記変異が、欠失である、項目20に記載のトランスフェクション系。
(項目27) 前記第2および第3の選択マーカーが、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする、項目20に記載のトランスフェクション系。
(項目28) 前記構築物が、プラスミドである、項目20に記載のトランスフェクション系。
(項目29) 項目28に記載のトランスフェクション系であって、前記プラスミドが、以下:
(c)それぞれ、前記第1および第2の選択マーカーならびに前記導入遺伝子に作動可能に連結されている、第1、第2および第3のプロモーター;
(d)該第1および第2の選択マーカーならびに該導入遺伝子に作動可能に連結されている、ポリアデニル化部位をコードする配列;および
(e)該第1および第2の選択マーカーならびに該導入遺伝子に作動可能に連結されている、複製起点をコードする配列
をさらに含む、トランスフェクション系。
(項目30) 前記第1のプロモーターが、CMVプロモーター、RSVプロモーターまたはSV−40初期プロモーターからなる群より選択される、項目29に記載のトランスフェクション系。
(項目31) 前記第2のプロモーターが、CMVプロモーター、RSVプロモーターまたはSV−40初期プロモーターからなる群より選択される、項目29に記載のトランスフェクション系。
(項目32) 前記第3のプロモーターが、CMVプロモーター、RSVプロモーターまたはSV−40初期プロモーターからなる群より選択される、項目29に記載のトランスフェクション系。
(項目33) 前記第1および第3のプロモーターが、CMVプロモーターであり、そして前記第2のプロモーターが、SV−40初期プロモーターである、項目29に記載のトランスフェクション系。
(項目34) 選択されたポリヌクレオチド配列の発現のための哺乳動物細胞株を産生するための方法であって、以下
(a)ゲノムを有する選択された哺乳動物細胞に、第1の構築物を導入する工程であって、該第1の構築物は、第1の選択マーカーをコードする配列および第2の選択マーカーをコードする配列を含み、該第2の選択マーカーは、そのコード配列中に少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;
(b)該第1の選択マーカーを発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該第1の構築物は、該ゲノムに安定に組み込まれている、工程;
(c)該哺乳動物細胞に、第2の構築物を導入する工程であって、該第2の構築物は、目的のポリヌクレオチド配列および第3の選択マーカーをコードする配列を含み、ここで、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカーと同じ選択マーカーであるが、ただし、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカー中の不能化変異とは異なるコード配列領域にある、少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;および
(d)該第2の選択マーカーによってコードされる機能的産物を発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該機能的産物は、該第2の選択マーカーと該第3の選択マーカーとの間の組換え事象によって生じる配列によってコードされ、そして得られた哺乳動物細胞は、該選択されたポリヌクレオチド配列を発現し得る、工程
を包含する、方法。
(項目35) 前記選択されたポリヌクレオチド配列が、ポリペプチドをコードする、項目34に記載の方法。
(項目36) 前記選択されたポリヌクレオチド配列の発現が、前記ポリペプチドの発現を生じる、項目35に記載の方法。
(項目37) 項目34に記載の方法によって産生された、哺乳動物細胞。
(項目38) 宿主哺乳動物細胞において目的のポリペプチドを産生するための方法であって、該方法は、以下:
(a)ゲノムを有する該細胞に、第1の構築物を導入する工程であって、該第1の構築物は、第1の選択マーカーをコードする配列および第2の選択マーカーをコードする配列を含み、該第2の選択マーカーは、そのコード配列中に少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;
(b)該第1の選択マーカーを発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該第1の構築物は、該ゲノムに安定に組み込まれている、工程;
(c)該哺乳動物細胞に、第2の構築物を導入する工程であって、該第2の構築物は、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列および第3の選択マーカーをコードする配列を含み、ここで、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカーと同じ選択マーカーであるが、ただし、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカー中の不能化変異とは異なるコード配列領域にある、少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;
(d)該第2の選択マーカーによってコードされる機能的産物を発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該機能的産物は、該第2の選択マーカーと該第3の選択マーカーとの間の組換え事象によって生じる配列によってコードされ、そして得られた哺乳動物細胞は、該目的のポリペプチドを発現し得る、工程;および
(e)該目的のポリペプチドを産生するような条件下で、該哺乳動物細胞を培養する工程
を包含する、方法。
(項目39) 前記第1の選択マーカーが、ネオマイシン耐性をコードする、項目38に記載の方法。
(項目40) 前記第2および第3の選択マーカーが、dhfrをコードする、項目38に記載の方法。
(項目41) 前記細胞への前記構築物の導入が、エレクトロポレーションによる、項目38に記載の方法。
(項目42) 前記細胞への前記構築物の導入が、リン酸カルシウムトランスフェクションによる、項目38に記載の方法。
(項目43) 目的のポリペプチドを産生する哺乳動物細胞株であって、該細胞株は、項目38に記載の方法によって産生される、哺乳動物細胞株。
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、発現ベクターであって、以下:(a)第1の不活化された(crippled)選択マーカーをコードする、第1のポリヌクレオチド;(b)目的の異種ポリペプチドをコードする、第2のポリヌクレオチド;および(c)第2の増幅可能な選択マーカーをコードする、第3のポリヌクレオチドを含む、発現ベクターを提供する。適切な第1の選択マーカーとしては、1以上の不活化(crippling)変異を含む抗生物質(例えば、ネオマイシン)耐性をコードする配列が挙げられる。1つの実施形態において、増幅可能な選択マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)である。
【0007】
本発明はまた、以下の構築物を包含する:pESN1dhfrと称するプラスミド;pESN2dhfrと称するプラスミド;pESN3dhfrと称するプラスミド;pneo*dhfr5’delと称するプラスミド(例えば、pneo1dhfr5’del、pneo2dhfr5’del、pneo3dhfr5’del);およびpdhfr3’delと称するプラスミド。
【0008】
別の局面において、本発明は、宿主細胞において目的のポリペプチドを産生するための方法であって、以下:
(a)本明細書中に記載の発現ベクターまたは構築物を適切な宿主細胞中に導入する工程;
(b)前記第1および第2の選択マーカーを発現する宿主細胞を、安定に組み込まれた発現ベクターについて選択する条件下で、選択する工程;
(c)該安定にトランスフェクトされた宿主細胞を、該目的のポリペプチドの発現を支持する条件下で、増殖させる工程;および
(d)該目的のポリペプチドを単離する工程
を包含する、方法を包含する。
【0009】
特定の実施形態において、異種ポリペプチドは、ウイルスタンパク質(例えば、HIVタンパク質)であるか、またはCAB2またはCAB4であり、そして宿主細胞は、哺乳動物細胞または昆虫細胞である。この方法を使用して目的のポリペプチドを産生する宿主細胞株もまた、本発明に含まれる。
【0010】
別の局面において、本発明は、トランスフェクション系であって、以下:
(a)第1の構築物であって、適切な骨格中に、第1の選択マーカーをコードする配列および第2の選択マーカーをコードする配列を含み、該第2の選択マーカーは、そのコード配列中に少なくとも1つの不能化(disabling)変異を含む、第1の構築物;および
(b)第2の構築物であって、適切な骨格中に、目的のポリヌクレオチド配列および第3の選択マーカーをコードする配列を含み、ここで、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカーと同じ選択マーカーであるが、ただし、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカー中の不能化変異とは異なるコード配列領域にある、少なくとも1つの不能化変異を含む、第2の構築物
を含む、トランスフェクション系を包含する。特定の実施形態において、第1の選択マーカーは、抗生物質耐性をコードし(例えば、野生型または機能的に損なわれたネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIをコードすることによって)、第2の選択マーカーは、5’コード領域における少なくとも1つの変異によって不能化されているdhfrをコードし、そして第3の選択マーカーは、3’コード領域における少なくとも1つの異なる変異によって不能化されているdhfrをコードする。この不能化変異は、例えば、点変異または欠失によるものであり得る。構築物が、プラスミドである場合、このトランスフェクション系は、以下:
(c)それぞれ、前記第1および第2の選択マーカーならびに前記導入遺伝子に作動可能に連結されている、第1、第2および第3のプロモーター;
(d)該第1および第2の選択マーカーならびに該導入遺伝子に作動可能に連結されている、ポリアデニル化部位をコードする配列;および
(e)該第1および第2の選択マーカーならびに該導入遺伝子に作動可能に連結されている、複製起点をコードする配列
をさらに含み得る。CMVプロモーター、RSVプロモーターまたはSV−40初期プロモーターのようなプロモーターが、使用され得、そして各配列は、異なるプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0011】
別の局面において、本発明は、選択されたポリヌクレオチド配列の発現のための哺乳動物細胞株を産生するための方法を包含し、該方法は、以下:
(a)ゲノムを有する選択された哺乳動物細胞に、第1の構築物を導入する工程であって、該第1の構築物は、第1の選択マーカーをコードする配列および第2の選択マーカーをコードする配列を含み、該第2の選択マーカーは、そのコード配列中に少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;
(b)該第1の選択マーカーを発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該第1の構築物は、該ゲノムに安定に組み込まれている、工程;
(c)該哺乳動物細胞に、第2の構築物を導入する工程であって、該第2の構築物は、目的のポリヌクレオチド配列および第3の選択マーカーをコードする配列を含み、ここで、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカーと同じ選択マーカーであるが、ただし、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカー中の不能化変異とは異なるコード配列領域にある、少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;および
(d)該第2の選択マーカーによってコードされる機能的産物を発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該機能的産物は、該第2の選択マーカーと該第3の選択マーカーとの間の組換え事象によって生じる配列によってコードされ、そして得られた哺乳動物細胞は、該選択されたポリヌクレオチド配列を発現し得る、工程
を包含する。特定の実施形態において、選択されたポリヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードし、そして選択されたポリヌクレオチド配列の発現は、このポリペプチドの発現を生じる。この方法によって産生された哺乳動物細胞もまた提供される。
【0012】
別の局面において、本発明は、宿主哺乳動物細胞において目的のポリペプチドを産生するための方法を包含し、該方法は、以下:
(a)ゲノムを有する該細胞に、第1の構築物を導入する工程であって、該第1の構築物は、第1の選択マーカーをコードする配列および第2の選択マーカーをコードする配列を含み、該選択マーカーは、そのコード配列中に少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;
(b)該第1の選択マーカーを発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該第1の構築物は、該ゲノムに安定に組み込まれている、工程;
(c)該哺乳動物細胞に、第2の構築物を導入する工程であって、該第2の構築物は、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列および第3の選択マーカーをコードする配列を含み、ここで、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカーと同じ選択マーカーであるが、ただし、該第3の選択マーカーは、該第2の選択マーカー中の不能化変異とは異なるコード配列領域にある、少なくとも1つの不能化変異を含む、工程;
(d)該第2の選択マーカーによってコードされる機能的産物を発現する哺乳動物細胞について選択する工程であって、該機能的産物は、該第2の選択マーカーと該第3の選択マーカーとの間の組換え事象によって生じる配列によってコードされ、そして得られた哺乳動物細胞は、該目的のポリペプチドを発現し得る、工程;および
該目的のポリペプチドを産生するような条件下で、該哺乳動物細胞を培養する工程
を包含する。
【0013】
1つの実施形態において、第1の選択マーカーは、ネオマイシン耐性をコードし、そして第2および第3の選択マーカーは、dhfrをコードする。特定の実施形態において、構築物は、エレクトロポレーションまたはリン酸カルシウムトランスフェクションによってこの細胞内に導入され得る。これらの方法に従って産生された哺乳動物細胞株もまた、包含される。
これらおよび他の実施形態は、本明細書の開示に顧みて当業者に容易に明らかである。
本発明は、以下の図面を参照してより十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1−1】図1は、CAB2(配列番号31)のヌクレオチド配列を示す。小文字は、元の配列を提示する。
【図1−2】 図1は、CAB2(配列番号31)のヌクレオチド配列を示す。小文字は、元の配列を提示する。
【図1−3】 図1は、CAB2(配列番号31)のヌクレオチド配列を示す。小文字は、元の配列を提示する。
【図2】図2は、pESNdhfr、pESN1dhfr、pESN2dhfrおよびpESN3dhfrと命名された発現ベクターの模式図である。これらの発現ベクターは、Neo遺伝子の変異の位置および/または数において異なる。pESNdhfrは、野生型Neo配列を含む。pESN1dhfrは、Neo遺伝子産物のアミノ酸残基182を変更する変異を含む。pESN2dhfrは、Neo遺伝子産物のアミノ酸残基261を変更する変異を含み、そしてpESN3dhfrは、Neo遺伝子産物のアミノ酸残基182および261の両方を変更する変異を含む。
【図3】図3は、pcDNA3と命名された発現ベクターの模式図である。このベクターは、5446ヌクレオチドであり、そしてpUC19ベクター骨格(塩基4450〜5310)において、以下の配列を含む:CMVプロモーター(塩基209〜863);T7プロモーター(塩基864〜882);ポリリンカー(塩基889〜994)、Sp6プロモーター(塩基999〜1016);BGHポリA配列(塩基1018〜1249);およびSV40プロモーター(塩基1790〜2215);SV40複製起点(塩基1984〜2069);ネオマイシン耐性をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)(Neor)(塩基2151〜2932);SV40ポリA配列(塩基3120〜3250);ならびにアンピシリン耐性をコードするORF(Ampr)(塩基4450〜5310)。
【図4】図4は、pneo*dhfr*1と命名されたDNA構築物の模式図である。これは、変異体ネオマイシン耐性遺伝子(neo*)および不能化DHFRマーカー遺伝子を含み、ここで、XXは、DHFR遺伝子における変異を表す。
【図5】図5は、pXdhfr*2と命名されたベクターを示す。これもまた、導入遺伝子および異なる部位(XXによって示される)で変異された不能化されたDHFR遺伝子を含む。
【図6】図6は、2つのコピーの不能化されたDHFRマーカー遺伝子での、pXdhfr*2とpneo*dhfr*1との間の相同組換えを示す。
【図7】図7は、相同組換えの産物を示し、ここで、不能化されたDHFR遺伝子は、レスキューされ、そして導入遺伝子は、変異体neo*遺伝子に対して近位へのこの導入遺伝子の挿入によって、哺乳動物細胞ゲノムの高発現遺伝子座に配置されている。
【図8】図8は、pdhfr*2 DNA構築物を示す;導入遺伝子(例えば、組換えタンパク質遺伝子)を、pdhfr*2のポリリンカーに挿入し、pXdhfr*2を作製し得る。
【図9】図9は、選択スキームを示し、ここで、pdhfr3’delとして示されるDNA構築物は、DHFR遺伝子の欠失変異体を使用し、そしてポリリンカーへの導入遺伝子の挿入が、pXdhfr3’delと命名された構築物(例えば、pdhfr3’del)を形成する。
【図10】図10は、DNA構築物、pneo*dhfr5’del(例えば、pneo1dhfr5’del、pneo2dhfr5’del、pneo3dhfr5’del)を示す。ここで、DHFR遺伝子は、5’欠失によって不能化され、そしてこの不能化された遺伝子は、変異体*neo遺伝子に共有結合されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(詳細な説明)
本発明は、宿主細胞、特に哺乳動物細胞において、目的のポリペプチドの安定な高レベル発現を可能にする新規発現ベクターを提供する。この構築物は、(i)第1の選択マーカーをコードする第1の配列;(ii)目的のポリペプチド産物をコードする第2の配列(例えば、「導入遺伝子」);(iii)第2の選択マーカーをコードする第3の配列を含む。代表的には、これら3つの配列は、少なくとも1つの強力プロモーター(例えば、CMVプロモーター)に作動可能に連結され、目的の産物の発現を増加し、そして正確なスプライシングを促進する。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載の構築物を用いる哺乳動物細胞のためのトランスフェクション系を含む。この系は、各構築物が第2の選択マーカー中に不能化(disabling)変異を有しているが、上記のような第1および第2の構築物を用いる。不能化変異は、第2の選択マーカーの異なる領域中にあり、その結果、この2つの産物間の相同的組換えが機能的産物を生成する。この系は、所望のポリペプチドの高発現を可能にする。本明細書に記載のトランスフェクション系により改変される哺乳動物細胞がまた提供され、これらのトランスフェクトされた細胞を作製する方法もまた提供される。
【0017】
従って、本明細書に記載の発明は、哺乳動物細胞中の高発現遺伝子座の同定という退屈なプロセスをなくし、そしてそれによって任意の所望のポリペプチドが、本明細書に記載のように生成される新規細胞株を用いて高レベルで発現され得る効率的な機構を提供する。
【0018】
(定義)
「核酸」分子は、制限されないで、原核生物配列、真核生物mRNA、真核生物mRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列もさえ含む。この用語はまた、DNAおよびRNAの任意の公知の塩基アナログを含む配列を捕捉する。「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コード」する配列は、適切な調節配列(または「制御エレメント」)の制御下に配置されたとき、インビボでポリペプチドに転写され(DNAの場合)そして翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。このコード配列の境界は、5’(アミノ)末端にある開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端にある翻訳停止コドンにより決定される。コード配列は、制限されないで、ウイルス、原核生物または真核生物mRNAからのcDNA、ウイルスまたは原核生物DNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列さえも含み得る。転写終結コドンは、このコード配列の3’に位置し得る。
【0019】
代表的な「制御エレメント」は、制限されないで、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント,転写停止シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳停止コドンの3’に位置する)、翻訳の開始の最適化のための配列(コード配列の5’に位置する)、および翻訳終止配列を含む。
【0020】
「作動可能に連結(される)」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を実行するように構成されるエレメントの配置をいう。従って、コード配列に作動可能に連結された所定のプロモーターは、適切な酵素が存在するとき、コード配列の発現を行い得る。このプロモーターは、それが、その発現を行うように機能する限り、コード配列と連続する必要はない。従って、例えば、介在する非翻訳ではあるがなお転写される配列が、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてこのプロモーター配列はなお、コード配列に「作動可能に連結される」と考えられ得る。
【0021】
本明細書で核酸分子を記載するために用いられるような「組換え(体)」は、ゲノム、cDNA,半合成、または合成起源のポリヌクレオチドを意味し、それは、その起源または操作のため:(1)天然でそれが会合しているポリヌクレオチドの全てまたは部分と会合していない;および/または(2)天然でそれが連結しているポリヌクレオチド以外のポリヌレレオチドに連結されている。タンパク質またはポペプチドに関して用いられるとき、用語「組換え(体)」は、組換え体ポリヌクレオチドの発現により産生されるポリペプチドを意味する。「組換宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養」、およびその他のそのような用語は、原核微生物または単細胞実体として培養された真核生物細胞株を示し、交換可能に用いられ、そして組換えベクターまたはその他の移入DNAのレシピエントとして使用され得る、または使用された細胞をいい、そしてトランスフェクトされた当初の細胞の子孫を含む。1つの親細胞の子孫が、偶発的または意図的な変異に起因して、当初の親と形態においてまたは総DNA相補物において必ずしも完全に同一である必要のないことは理解される。所望のポリペプチドをコードする核酸配列の存在のような、関係ある性質によって特徴付けられる、親と十分に類似である親細胞の子孫は、この定義により意図される子孫に含まれ、そして上記の用語によってカバーされる。
【0022】
核酸およびアミノ酸「配列同一性」を決定する技法は当該分野で公知である。代表的には、このような技法は、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定することおよび/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定すること、およびこれらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することを含む。一般に「同一性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれ、正確なヌクレオチド対ヌクレオチドおよびアミノ酸対アミノ酸対応をいう。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの「同一性%」を決定することにより比較され得る。2つの配列の同一性%は、核酸またはアミノ酸配列いずれにおいても、より短い配列の長さで除し、そして100を乗じた、2つのアラインされた配列間の正確なマッチの数である。核酸配列の適切なアラインメントは、SmithおよびWaterman Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所相同性アルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff、Atlas of Protein Sequences and Structure、M.O.Dayhoff編、5 suppl.3:353−358、National Biomedical Research Foundation、Washington、D.C.、USAにより開発され、そしてGribskov、Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986)により規準化されたスコアリングマトリックスを用いることによりアミノ酸に適用され得る。配列の同一性%を決定するためのこのアルゴリズムの例示の履行は、「BestFit」ユーティリティアプリケーション中のGenetics Computer Group(Madison、WI)により提供される。この方法のデフォールトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual、Version 8(1995)に記載されている(Genetics Computer Group、Madison、WIから入手可能)。本発明の文脈において同一性%を確立する好適な方法は、Edinburgh大学が著作権をもつ、John F.CollinsおよびShane
S.Sturrokにより開発され、そしてIntelliGenetics,Inc.(Mountain View、CA)により頒布されるプログラムのMPSRCHパッケージを用いることである。このパッケージスーツから、上記Smith−Watermanアルゴリズムが採用され得、そこでは、デフォールトパラメーターがスコアリングテーブルのために用いられる(例えば、12のギャップオープンペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、および6のギャップ)。生成されたデータから「マッチ」値は「配列同一性」を反映する。配列間の同一性%または類似性%を算出するためのその他の適切なプログラムは、一般に、当該分野で公知である。
【0023】
2つの核酸フラグメントは、本明細書で記載のように「選択的にハイブリダイズする」と考えられる。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強さに影響する。部分的に同一である核酸配列は、完全に同一である配列の標的分子へのハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害する。この完全に同一である配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該分野で周知であるハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザンブロット、ノザンブロット、溶液ハイブリダイゼーションなど、Sambrookら、前述、またはAusubelら、前述)を用いて評価され得る。このようなアッセイは、変化する程度の選択性を用い、例えば、低〜高ストリンジェンシーで変化する条件を用いて実施され得る。低ストリンジェンシーの条件が採用される場合、非特異的結合の不在は、配列同一性の部分的程度でさえ欠いている第2プローブ(例えば、標的分子と約30%より少ない配列同一性を有すプローブ)を用いることで評価することができ、その結果、非特異的事象の不在下、この第2プローブは標的にハイブリダイズしない。
【0024】
ハイブリダイゼーションを基礎にする検出系を利用するとき、標的核酸配列に相補的である核酸プローブが選択され、次いで、適切な条件の選択により、このプローブと標的配列とが、互いに「選択的にハイブリダイズする」、すなわちは結合し、ハイブリッド分子を形成する。「中程度にストリンジェント」下で標的配列に選択的にハイブリダイズし得る核酸分子は、代表的には、選択された核酸プローブの配列と、少なくとも約70%の配列同一性を有する長さが少なくとも約10−14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、代表的には、選択された核酸プロープの配列と、約90−95%より大きい配列同一性を有する長さが少なくとも約10−14ヌクレオチドの標的核酸配列の検出を可能にする。プローブと標的とが所定の程度の配列同一性を有する場合のプローブ/標的ハイブリダイゼーションに有用なハイブリダイゼーション条件は、当該分野で公知のように決定され得る(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach、編者 B.D.HamesおよびS.J.Higgins(1985)Oxford;Washington、D.C;IRL Pressを参照のこと)。
【0025】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー条件に関し、例えば、以下の因子を変更することによって、特定のストリンジェンシーを確立するために多くの等価な条件が採用され得ることは当該分野で周知である:プローブおよび標的配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩およびその他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング薬剤の存在または不在(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、およびポリエチレングリコール)、ハイブリダイゼーション温度および時間パラメーター、および、洗浄条件を変えること。特定のセットのハイブリダイゼーション条件の選択は、当該分野で標準的な方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、前述、またはAusubelら、前述を参照のこと)。
【0026】
第1のポリヌクレオチドは、それが第2のポリヌクレオチドの領域、そのcDNA、その相補物と同じか、または実質的に同じ塩基対配列を有する場合、またはそれが上記のような配列同一性を提示する場合、第2のポリヌクレオチド「由来」である。第1のポリペプチドは、それが(i)第2のポリヌクレオチド由来の第1のポリヌクレオチドによりコードされるか、または(ii)上記のように第2のポリペプチドに対し配列同一性を提示する場合、第2のポリペプチドに「由来」する。
【0027】
「によりコードされる」は、ポリペプチド配列をコードする核酸配列をいい、ここでこのポリペプチド配列またはその部分は、この核酸配列によりコードされるポリペプチドからの、少なくとも3〜5アミノ酸、より好ましくは少なくとも8〜10アミノ酸、そしてなおより好ましくは少なくとも15〜20アミノ酸を含む。これもまた包含されるのは、この配列によりコードされるポリペプチドと免疫学的に同定可能であるポリペプチド配列である。
【0028】
「精製されたポリヌクレオド」は、それが天然に会合するタンパク質が本質的にない、例えば、約50%より少なく、好ましくは約70%より少なく、そしてより好ましくは約90%より少なく含む、目的のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントをいう。目的のポリヌクレオドを精製する技法は、当該分野で周知であり、そして例えば、このポリヌクレオドを含む細胞のカオトロピック試薬を用いた破壊、およびイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度による沈降によるポリヌクレオドおよびタンパク質の分離を含む。
【0029】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外来DNAの取込みをいうために用いる。外来DNAが細胞膜の内側に導入されたとき、細胞は「トランスフェクトされ」ている。多くのトランスフェクション技法が一般に当該分野で公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboraories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、およびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技法は、1つ以上の外来DNA成分を適切な宿主細胞中に導入するために用いられ得る。この用語は、遺伝子物質の安定および一時的取込みの両方をいい、そしてペプチド−または抗体連結DNAの取込みを含む。
【0030】
「核酸発現ベクター」または「発現カセット」は、目的の配列または遺伝子の発現を行い得るアセンブリをいう。この核酸発現ベクターは、目的の配列または遺伝子(単数または複数)に作動可能に連結されているプロモーターを含む。その他の制御エレメントが同様に存在し得る。本明細書で記載される発現カセットは、プラスミド構築物内に含まれる得る。発現カセットの成分に加えて、プラスミド構築物はまた、細菌の複製起点、1つ以上の選択マーカー、プラスミド構築物を一本鎖DNAとして存在させるシグナル(例えば、複製のM13起点)、複数クローニング部位、および「哺乳動物」複製起点(例えば、複製のSV40またはアデノウイルス起点)を含み得る。ベクター骨格は、さらに詳細に以下に論議される。「ベクター」は、標的細胞(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子状キャリア、およびリポソーム)に遺伝子配列を移入し得る。代表的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、および「遺伝子移入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を行い得る任意の核酸構築物を意味し、そしてこれは、標的細胞に遺伝子配列を移入し得る。従って、この用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0031】
「選択マーカー」または「レポーターマーカー」は、治療的活性を有さず、むしろ遺伝子移入ベクターのより簡単な調製、操作、特徴付けまたは試験を可能にするために含まれる遺伝子移入ベクター中に含まれるヌクレオチド配列をいう。適切な選択マーカーは以下にさらに論議される。
【0032】
(発現ベクター)
1つの実施形態では、発現ベクターは、(i)第1の不活化された選択マーカー;(ii)目的の産物、「導入遺伝子」とも呼ばれる;および(iii)第2の増幅可能な選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含む。「不活化された(crippled)」とは、マーカーの機能を減退させるが破壊しない1つ以上の変異を含む、選択マーカーをコードする配列を意味する。1つの実施形態では、第1の不活化された選択マーカーは、ネオマイシン耐性(Neor)配列であり、そこでは、アミノ酸残基182(Glu)がAspに変異している(図2、pESN1.dhfrおよびYanofskyら、後述を参照のこと)。別の実施形態では、第1の不活化された選択マーカーは、Neor配列であり、そこではアミノ酸残基261(Asp)がAsn(N)に変異されている。(図2、pESN2.dhfr)。なお別の実施形態では、第1の不活化された選択マーカーは、上記に記載変異の両方を含むNeor配列であり、例えば、Glu182がAsp、そしてAsp261がSnである。(図2、pESN3,dhfrを参照のこと)。不活化変異を作製および試験するその他の選択マーカーおよび方法は、以下に論議される。
【0033】
発現ベクターにまた含まれるのは、目的の産物をコードする配列(すなわち、「導入遺伝子」)である。適切な導入遺伝子は、目的の任意のポリペプチドをコードするポリペプチドを含む。1つの実施形態では、この導入遺伝子は「CAB」のようなキメラタンパク質をコードする。CABは、膜補因子タンパク質(MTP)および減衰加速因子(SAF)の特徴を組み合わせ、補体活性化を阻害する。例えば、Higginsら(1997)J.Immunology 158(6):2872−2881を参照のこと。特定の実施形態では、導入遺伝子をコードする配列はまた、本明細書に記載のように、産物の異常mRNAスプライシングが減少またはなくなるように設計され得る。
【0034】
発現ベクターはまた、第2の選択可能な増幅し得るマーカーを含む。この第2の選択し得るマーカーは、導入遺伝子を高レベルで発現するような細胞の選択を容易にする、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)である。適切なマーカーは詳細に以下に論議される。
【0035】
本発明の発現ベクターは、当該分野で公知の技法を考慮して、本明細書の教示に従い生成され得る。例えば、導入遺伝子をコードする配列は、市販されているかも知れず、例えば、グリーン蛍光タンパク質(G.P.)は、Clonetech、Palo Alto、CAから入手可能であり、そしてルシファース(lucifers)は、Promega、Madison、WI.から入手可能である。本明細書で例示されるのは、キメラタンパク質CABの高レベル発現およびHIVタンパク質の発現を行う発現ベクターである。しかし、本発明の発現ベクター、構築物および方法が、目的の任意のポリペプチドの高レベル発現に利用可能であることを理解すべきである。
【0036】
本発明で用いられるポリヌクレオチドの別の標準的な供給源は、勿論、生物(例えば、細菌)、細胞、または選択された組織から単離されるポリヌクレオチドである。選択された供給源からの核酸は、標準的な手順により単離され得、これは、代表的には、連続的なフェノールおよびフェノール/クロロホルム抽出、次いでエタノール沈殿を含む。沈殿後、ポリヌクレオチドは、核酸分子をフラグメントに切断する制限エンドヌクレアーゼで処理され得る。選択されたサイズのフラグメントは、多くの技法により分離され得、これには、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動またはパルスフィールドゲル電気泳動(Careら(1984)Nuc.Acid Res.12:5647−5664;Chuら(1986)Science 234:1582;Smithら(1987)Methods in Enzymology 151:461)が含まれ、クローニングのための適切なサイズ開始物質を提供する。
【0037】
発現ベクターまたは構築物のヌクレオチド成分を得る別の方法はPCRである。PCRの一般的手順は、MacPhersonら、PCR:A PRACTICAL APPROACH、(IRL Press at Oxford University Press、(1991))に教示されている。各適用反応のためのPCR条件は、実験的に決定され得る。多くのパラメーターが反応の成功に影響する。これらのパラメーターは、アニーリング温度および時間、伸長時間、Mg2+およびATP濃度、pH、およびプライマー、テンプレートおよびデオキシヌクレオチドの相対的濃度である。例示のプライマーは実施例で以下に記載する。増幅後、得られるフラグメントは、アガロースゲル電気泳動、次いで臭化エチジウム染色および紫外線照射を用いた可視化により検出され得る。
【0038】
ポリヌクレオチドを得るための別の方法は、酵素消化による。例えば、ヌクレオチド配列は、適切な認識制限酵素での適切なベクターの消化により生成され得る。制限切断フラグメントは、標準的な技法を用い、4つのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の存在下、E.coli DNAポリメラーゼI(Klenow)の大フラグメントを用いた処理により平滑末端とされ得る。
【0039】
ポリヌクレオチドは、当該分野で周知の方法を用い、適切な骨格、例えば、プラスミド中に挿入される。例えば、挿入物およびベクターDNAを、適切な条件下で制限酵素と接触させ、互いに対合し得る各分子上に相補的末端または平滑末端を作製し得る。あるいは、合成の核酸リンカーをポリヌクレオチドの末端に連結し得る。これらの合成リンカーは、ベクターDNA内の特定の制限部位に対応する核酸配列を含み得る。その他の手段が当該分野で公知かつ利用可能である。種々の供給源が、成分ポリヌクレオチドのために用いられる得る。
【0040】
(トランスフェクション系のための構築物)
本発明はまた、第1および第2の構築物を用いること、特に、安定にトランスフェクトされた細胞株、特に哺乳動物細胞株を産生および選択する方法を含む。本明細書に記載のトランスフェクション系では、第1の構築物は、第1および第2の選択マーカーをコードするポリヌクレオチドを含む。第1の選択マーカーは、代表的には、強力プロモーターの制御下にある。上記のように、この第1の選択マーカーは、好ましくは、少なくとも1つの不活化変異を含む。さらに、これらの実施形態では、第2のマーカーは、好ましくは、コード領域の3’または5’にある不能化変異を含む。「不能化(disabling)」により、機能的遺伝子産物を低減、または好ましくは、排除する変異を意味する。
【0041】
例示の第1の構築物は図4に示され、そしてpneo*dhfr*1と識別される。この構築物によりコードされる第1の選択マーカーは、ネオマイシンに対する耐性を与える抗生物質耐性マーカー(neo*)、好ましくは、図中neo*で示される、neoの不活化変異体である。このneo*遺伝子は、強力プロモーター(例えば、CMVまたはRSV、neo*遺伝子の3’に示される)に作動可能に連結され、そして、一般に、ポリアデニル化配列(例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化部位)のようなその他の発現調節エレメントに連結され得る。さらに、微生物における増殖に有用な複製起点もまた含まれ得る(例えば、f1 ori)。このBGHポリA配列およびf1起点は、代表的には、neo*遺伝子の5’にある。
【0042】
この例では、pneo*dhfr*1構築物の第2の選択マーカーは、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする。しかし、この第2の選択―カーの機能は不能化されている。図4を参照して、XXは、DHFR遺伝子の5’末端に隣接する不能化変異を表す。このDHFR遺伝子は、SV40初期プロモーターにより駆動され、そしてその3’末端に、SV40ポリA、ColE1、AmpR、および(図4に示されるBglIIIのような)適切な制限部位がある。
【0043】
このトランスフェクション系の第2のベクター構築物は、目的の異質ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(図では「導入遺伝子」と標識される)、および第1の構築物で用いられる同じ第2のマーカー(即ち、「第2の」選択マーカー)をコードするポリヌクレオチドを含む。しかし、この第2の構築物では、第2のマーカー配列は、好ましくはコード領域の反対の末端上にあり、第1の構築物に対して異なる位置にある不能化変異を含む。第1の構築物の第2の選択マーカーにおける不能化変異の位置、および第2の構築物の選択マーカーにおける不能化変異における位置は、2つのコピーのコード配列間の単一の組換え事象が、機能的な選択マーカーを生成し得るようにある。一旦、第1の構築物が宿主細胞のゲノム中にランダムに組込まれると、組込まれた第1の構築物と第2の構築物との間の相同的組換え事象が、強力プロモーターの制御下にある導入遺伝子の挿入を生じる。機能的な組換えは、第2の選択マーカーをアッセイすることにより容易に選択され得る。従って、例えば、Detloffら(1994)Molecular and Cellular Biology 14:3936−6941に記載のような、その他の標的系とは異なり、本明細書に記載のトランスフェクション系は、目的の導入遺伝子を改変する相同的組換え事象に依存しない。
【0044】
例示の第2の構築物は図5に示され、そしてpXdhfr*2と称される。ここで、導入遺伝子は、CMVプロモーターに作動可能に連結され、そして3’BGHポリAテールおよびf1複製起点を含む。第2の選択マーカーであるDHFRは、第1の構築物における不能化マーカーとはコード領域の反対側にある変異(単数または複数)により不能化されている。従って、図5では、変異(XXで表される)は、DHFR配列の3’末端にある。pneo*dhfr*1構築物におけるように、この不能化DHFRマーカーには、SV40ポリA、ColE1、AmpR、およびこの場合BglIIIである適合制限部位が続く。
【0045】
トランスフェクション系における使用のための第1および第2の構築物は、当該分野で公知の方法を用い、例えば、上記のような本明細書の指針に従って生成され得る。
【0046】
(一般的方法)
本明細書中に記載される発現ベクターおよび方法は、目的の導入遺伝子の発現の改善に有用である。哺乳動物細胞における遺伝子の安定した高レベルの発現は、重要なことに、組み込みの部位およびコピー数の両方に依存する。例えば、通常の濃度のネオマイシンアナログG418によって課せられる選択圧は、低く、広範な異なる発現レベルで細胞クローンを生じる。導入遺伝子を有する異常なスプライス部位もまた、発現を妨げ得る。本明細書中に記載される発現ベクターは、目的の導入遺伝子に作動可能に連結された不活化された第1の選択可能なマーカー、および第2の増幅可能で選択可能なマーカー(これは、特定の実施形態において、不能化変異を含む)を使用することによって、この課題および他の課題を解決する。不活化マーカーおよび第2のマーカーは、高発現クローンの選択を可能にする。さらに、発現は、異常切断(slicing)が矯正されるように、導入遺伝子を変更することによって増加され得る。必要に応じて、イントロンおよび/またはエンハンサーを含む強力なプロモーターもまた、導入遺伝子の発現を促進するために付加され得る。
【0047】
本発明はまた、第1および第2の構築物を使用する、新規なトランスフェクション系を提供する。これらの高度に効率的な方法は、高レベルの所望されるポリペプチドを産生する細胞を生成し得る。細胞は、標的細胞ゲノムにランダムに組み込まれる第1の構築物を用いて形質転換される。代表的な標的細胞として、哺乳動物および細胞株(例えば、BHK、VERO、HT1080、293、RD、COS−7、およびCHO細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞は、第1の選択可能なマーカーに対する適切な基質の存在下(例えば、第1の選択可能なマーカーがネオマイシンをコードする場合には、G418)で増殖される。高濃度の抗生物質中での選択を生存する細胞は、高発現遺伝子座においてネオマイシン耐性遺伝子を組み込んでいる。
【0048】
次いで、組み込まれた第1の構築物を有する細胞は、以下の技術によって、本発明の細胞株を作製するために使用される。第2の構築物は、第1の構築物の組み込まれたコピーを有する細胞内に導入される。2個の不能化されたDHFR遺伝子間の相同組換えは、機能的DHFR遺伝子、ならびに高発現遺伝子座における機能的ポリペプチドをコードする所望の遺伝子の挿入を生じる(図7を参照のこと)。適切な毒素または抗生物質(例えば、メトトレキセート)を用いて選択を生存する細胞株は、首尾良く相同組換えを起こす。
【0049】
第2の工程は、目的のポリペプチドの高レベルの発現を得るために、機能的ポリペプチドをコードする所望される遺伝子(すなわち、導入遺伝子)における、任意の回数の変更によって繰り返され得る。本明細書中で、この技術は、図を参照してより詳細に記載される。
【0050】
(導入遺伝子)
本明細書中に記載されるトランスフェクション系は、目的の任意のポリペプチドを発現するのに有用である。本明細書中で使用される場合、用語「導入遺伝子」は、細胞における高レベルでの発現が所望される、哺乳動物細胞のゲノムに挿入される外因性DNAをいう。本発明に使用される導入遺伝子は、機能的ポリペプチドをコードし、これは、生物学的活性を有するアミノ酸配列であり、または生物学的活性を有するタンパク質の前駆体であるアミノ酸配列である。他のポリペプチド(例えば、エピトープまたは他の免疫学的に活性なポリペプチド)の発現は本発明の範囲内であると考えられるが、この導入遺伝子は、一般的に、天然タンパク質または組換えタンパク質をコードする。本発明の方法を使用して発現され得るタンパク質の例は、ホルモン;サイトカイン(例えば、増殖因子);酵素;レセプター;オンコジーン;ポリペプチドワクチン、ウイルスタンパク質、ならびに構造タンパク質および分泌タンパク質である。1実施形態において、発現ベクターは、上記のCAB2をコードする配列を含む。これらの配列は、異常スプライシングが補正されるようにさらに改変された。実施例を参照のこと。別の実施形態において、発現ベクターは、特にHIVから誘導体化されるウイルスポリペプチドをコードする配列を含む。これらのウイルスポリペプチドとして、エンベロープ(Env)ポリペプチド(例えば、gp120、gp160、gp140、gp41、およびモノマーまたはそれらの多量体)、Gagポリペプチド(例えば、Gag、Gag−プロテアーゼ、Gag−ポリメラーゼ)、rev、tatなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、この発現ベクターは、合成HIVポリペプチドについてコードする導入遺伝子(例えば、実施例に記載される構築物)を含み得る。
【0051】
本発明の構築物において使用される導入遺伝子は、イントロン領域を保持するクローン化された配列であり得る。遺伝子のエキソン構造体が公知である場合、コードエキソンはこの構造体に挿入され得る。
【0052】
目的のポリペプチドの発現は、ポリペプチドをコードする配列に対して相同性のあるプロモーターによって指向され得る(例えば、それ自体の転写プロモーター配列の制御下におけるヒトグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)。さらに、他の相同性または非相同性の発現制御要素(例えば、転写、翻訳、または翻訳後の事象に影響を及ぼす)が使用され得る。
【0053】
本発明の哺乳動物細胞における導入遺伝子の発現が安定または一過性であり得ることが理解されるべきである。通常のレベルより高いレベルでの一過性発現でさえ、細胞中の機能的研究、または目的のタンパク質の産生および回復に有用である。
【0054】
(選択マーカー)
選択マーカーをコードする任意の適切な配列は、本明細書において記載される組成物および方法において第1または第2のマーカーとして使用され得る。代表的には、本発明において使用される選択マーカー遺伝子は、容易に入手可能な供給源から入手され得る。
【0055】
本発明の1つの実施形態において(付随する図面において記載される)、第1の選択マーカーは、抗生物質に耐性を付与する遺伝子をコードする。たとえば、1つの局面において、この第1の選択マーカーは、ネオマイシン(neo)耐性遺伝子を含む。好ましい実施形態において、neo*と称される、変異体neo遺伝子を使用して、哺乳動物細胞の染色体DNA内の高発現の遺伝子座を確立することができる(例えば、以下を参照のこと:Yanofsky et al.9(1990)PNAS USA 87:3435−39)。トランスポゾンTn5のネオマイシン耐性遺伝子は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼIIをコードし、これは、G418およびカナマイシンを含む種々の抗生物質に対する耐性を付与する。単一塩基置換は、この酵素の機能を有意に損なう。選択マーカーとして使用されるneo耐性遺伝子は、制限酵素消化によって同定され得る。なぜなら、塩基変化は、XhoII制限部位の喪失を生じるからである。本発明において使用するための変異体neo遺伝子を作製する技術について、以下もまた参照のこと:Blazquezet al.,(Molecular Microbiology,(2991)5(6):1511−1518)。基質(例えば、G418)の最適な量は、各々の細胞下部について個々に決定され得る。他の類似の選択マーカーとしては、以下に列挙されるものがあげられるがそれらに限定されない。
【0056】
温度感受性選択マーカーもまた、本発明の実施において使用され得る。例えば、温度感受性neoは、非ストリンジェント温度においてほぼ野生型の機能を呈し、そしてストリンジェント温度では、低い活性を有する。エレクトロポレーションおよびpneo*ts−dhfr*lの初期の選択の後、挿入は、G418を非ストリンジェントな温度で用いて行われ得る。コロニーが増殖し始めた後、ストリンジェントな温度を使用して、低い発現挿入を有するコロニーを殺傷して除き得る。
【0057】
上記のように、第2の選択マーカーを、含ませて発現を増強する。発現ベクターにおいて、第2のマーカーは、代表的に、増幅可能なマーカーであり、例えば、DHFRである。DHFRは、プリン生合成に必要である。敏感なプリンの非存在下で、この酵素は、増殖に必要である。メトトレキサートは、DHFRの強力な競合インヒビターであり、漸増濃度のメトトレキサートにより、DHFRの増加したレベルを発現する細胞についての選択を行う。極度に高レベルの、トランスフェクトされた正常DHFR遺伝子の発現は、高い内因性DHFRレベルを伴う細胞株の選択に必要である。さらにより高いレベルへ発現を増加させるために、導入遺伝子を、標準的なDHFR増幅方法により増幅し得る。
【0058】
トランスフェクション方法において使用される構築物について、第2の選択マーカーは、請求されたトランスフェクション系の第1の構築物および第2の構築物の両方において見出される。しかし、これらのコピーの第2の選択マーカーは、異なる領域において変異によって不能化されている。これらの変異は、2つの変異したコピーの間の相同組換えが遺伝子の機能をレスキューするように存在する。1つの実施形態において、第2の(不能化された)選択マーカーは、DHFRをコードする。
【0059】
第1の構築物および第2の構築物の第2の選択マーカーに対する不能化変異は、種々の方法により導入され得る。例えば、DHFR遺伝子または他のマーカー遺伝子は、ネイティブ遺伝子配列におけるヌクレオチドの欠失またはヌクレオチドの置換によって不能化され得る。Bullerjahn et al.(J.of Bio Chem.(1992)267:864−870)は、残基の欠失および/または置換によってジヒドロ葉酸レダクターゼ(DMM)酵素の活性がどのように影響を受けるかの概説を提供する。著者らは、重要な領域における欠失を記載した(変更された遺伝子を発現することによって達成された)。これは、アミノ酸の欠失の後の、完全な活性の喪失を伴う活性の低減を生じる。さらに、メトトレキサートに耐性である酵素をコードする変異体DHFR遺伝子も入手可能である(Simonsen et al.,(1983)PNAS USA
80:2495−2499)。
【0060】
いくつかの場合において、第2の選択マーカー(例えば、DHFR)をコードする遺伝子を増幅することもまた所望され得る。これは、例えば、基質(たとえば、メトトレキサート)の濃度を増加させることにより達成され得る。したがって、多数回増幅した、DHFR遺伝子の複数コピーを有する細胞は、高レベルに対するメトトレキサートの濃度における連続的な増加によって選択され得る。この技術はまた、安定な形質転換体を同定することをも可能にする。すなわち、この表現型は、しばしば不安定であり、何回かの細胞周期の後に、選択圧の非存在かで喪失するが、他方、不安定なDHFR遺伝子の構成は、連続的な選択圧下で安定になる。安定に増幅した細胞は、増幅したDHFR遺伝子をその染色体内に含む。
【0061】
他の選択マーカーであって、安定な形質転換体の単離を可能にするものは、本発明において、第1のマーカーまたは第2の(不能化)マーカーのいずれかとして使用され得ることが理解される。別の選択マーカーの例は、アデノシンデアミナーゼ(ADA)である。チミジン、9−β−D−キシロフラノシルアデニン(Xyl−A)および2’−デノキシコホルマイシン(dCF)を補充した培地が使用される。Xyl−Aは、Xyl−ATPへと変換され得、そして核酸に取り込まれ得る。これは、細胞死を生じる。Xyl−Aは、そのイノシン誘導体をADAによって無毒化する。dCFは、ADAの中間状態アナログインヒビターであり、そして親の細胞型にとって内因性であるADAを不活化するために必要である。内因性ADAのレベルは細胞型により変動することから、選択について適切な濃度のdCPもまた変動する。Kaufman et al.,(1986)PNAS USA,83:3136。ADA欠失CHO細胞もまた利用可能である。
【0062】
本発明において使用するために適切な選択マーカーはチミジンキナーゼ(TK)である。以前の章において(TK-からTX+へ)、完全培地は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンおよびグリシンが補充された(HAT培地)。逆選択(TK+からTX-)では、完全培地は、5−ブロモデオキシウリジン(BrdU)が補充される。正常な増殖条件下で、細胞は、チミジンキナーゼを必要としない。なぜなら、dTDPを合成するための通常の手段は、dCDPを経由するからである。BrdUの培地への添加により、Tk+細胞が殺傷される。BrdUは、TXによりリン酸化されそしてついでDNAへと取り込まれるからである。HAT培地におけるTK+細胞の選択は主に、アミノプテリンの存在に起因し、これは、dCDPからのdTDPの形成をブロックする。したがって、細胞は、TKを必要とする経路であるチミジンからdTTPの合成を必要とする。チミジンキナーゼは、哺乳動物細胞培養において広汎に使用されている。なぜなら、正の選択条件および逆の選択条件の両方が存在するからである。ADAおよびDHFRのように。ほとんどの哺乳動物細胞株は、TKを発現することから、BrdUがTK-変異体を選択するために使用される場合以外は、これらの株においてマーカーを使用する可能性を除去する。以下を参照のこと:Littlefield et al.,(1964)Science 145:709−710。
【0063】
本発明において使用するための別の適切なドミナント選択マーカーの例は、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT、gpt)である。透析したウシ胎仔血清ならびにキサンチン、ヒポキサンチン、チミジン、アミノプテリン、ミコフェノール酸およびL−グルタミンを含む培地が使用され得る。アミノプテリンおよびミコフェノール酸はともに、GMPの合成についてのデノボ経路をブロックする。XGPRTの発現により、細胞は、キサンチンからGMPを合成することができ、これにより、キサンチンを含むがグアニンを含まない培地で増殖することが可能になる。XGPRTは、哺乳動物ホモログを有しない細菌酵素であり、これにより、XGPRTは、ドミナント選択マーカーとして機能することが可能になる。選択のためにミコフェノール酸の量は、細胞型により変動し、そしてグアニンの非存在および存在下での力価測定により決定され得る。以下を参照のこと:Mulligan at al.,(1981)PNAS USA 78:2072−2076。
【0064】
適切なマーカーであるハイグロマイシンB−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)もまた、使用され得る。完全培地にはハイグロマイシン−Bが補充される。ハイグロマイシン−Bは、アミノシクリトールであって、トランスロケーションを破壊し、そして誤翻訳を促進することによってタンパク質合成を阻害する。HPH遺伝子は、哺乳動物系において使用されてきた。そして、この遺伝子を効率的に発現するベクターが利用可能である。以下を参照のこと:Gritz et
al.,(1983)Gene 25:179−188;およびPalmer
et al.,(1987)PNAS USA 84:1055−1059。
【0065】
別の有用なマーカーは、クロラムフェニコール耐性である。耐性は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)によって媒介され、これは、クロラムフェニコールを、モノアセチル化誘導体およびビアセチル化誘導体へと変換することによって不活化する。3つの誘導体は、薄層クロマトグラフィーにより、検出され得る。この酵素は、哺乳動物細胞において発現され、そして容易に検出される。なぜなら、これは、哺乳動物細胞において天然には存在しないからである。この遺伝子は、トランスポゾンTn9を有するpBR322の誘導体から、適切な酵素での切断により入手することができる。これは、pSV2ベクターへと導入され得る。このことにより、pSV2−catプラスミドを得る(ATCC受託番号37155)。これは、SV40の初期プロモーターからCAT遺伝子を発現するプラスミドである。
【0066】
Gossen et al.,Science(1995)268:1766−1769は、迅速で、大いに増殖する遺伝子発現を、テトラサイクリン存在下で誘導するための、ウイルス転写活性化ドメインとのテトラサイクリン耐性遺伝子リプレッサーの融合物である。これは、低レベルのテトラサイクリンが遺伝子発現を妨害していた既存の系の改変である。テトラサイクリン耐性遺伝子リプレッサーをコードする遺伝子が変異誘発され、そして活性についてテトラサイクリンに依存した変異体融合タンパク質が作製され、そして同定された。この構築物は、遺伝子の高発現のためのオン/オフスイッチを提供する。
【0067】
別の適切なマーカーは、アデニンホスホリリボシルトランスフェラーゼ(APRT)である。この酵素APRTは、プリンサルベージ経路の別の酵素であるが、アデニンのAMPへの変換を触媒する。APRT陽性細胞は、例えば、グルタミンアナログのアザセリンを含む培地中で選択可能であり得る。アザセリンは、プリンのデノボ合成を妨害する。APRT陰性細胞は、アザセリンおよびアデニンを含む培地中では増殖し得ず、しかも2,6−ジアミノプリンでの処理により選択され得る。この化合物は、正常細胞にとって毒性であるが、APRT陰性細胞は、生存する。なぜなら、それらは、それを取り込まないからである。
【0068】
選択マーカーコード配列の発現は、例えば、CMV、RSV、ポリA’−BGH、SV40などに由来するプロモーター配列の制御下に配置され得、そして他の発現制御エレメント(例えば、転写、翻訳または翻訳後修飾に影響を与える配列)も含み得る。
【0069】
(調節配列)
選択マーカーおよび導入遺伝子に加え、本明細書において記載される構築物は、適切な調節エレメントを含み得る。調節エレメント(または制御エレメント)は、目的の宿主細胞において使用するために選択される。例えば、選択マーカーを含ませて、微生物における増殖を可能にし得る(例えば、f1複製起点およびアンピシリン耐性コード配列)。そのような調節エレメントとしては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンの3’に位置する)、翻訳開始の最適化のための配列(コード配列の5’に位置する)、翻訳終止配列、分泌シグナル配列、および翻訳後修飾(例えば、グリコシル化部位)を指示する配列。転写プロモーターとしては、誘導性プロモーター(そのプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される)、抑制性プロモーター(そのプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列は、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される)および構成的プロモーターが挙げられ得る。
【0070】
選択マーカーは、各々、プロモーターとポリアデニル化部位(例えば、図に示されるようなBGH polyA またはSV40 polyA)との間にサンドイッチされ得る。キメラmRNAは、プロモーターから転写され、そしてコード領域の3’側に配置されたポリアデニル化シグナルによって安定化される。哺乳動物転写ユニットの構築の間、プラスミド中の任意の細菌性プロモーターは、動物細胞において活性である転写調節配列に置き換えられ得る。2つのそのような配列は、図に示されている:CMVプロモーターおよびSV40初期プロモーター。使用され得る非限定的な他のプロモーターの例は、RSVおよびHSV−TKである。
【0071】
通常、遺伝子発現は、構成的であるが、調節性プロモーターが使用され得る。適切な調節プロモーターの例は、Tet、エクジソンおよびlacリプレッサーの配列である。遺伝子発現はまた、メタロチオネイン遺伝子または熱ショック遺伝子の使用によるような、熱、光または金属を用いた転写調節によって制御され得る。
【0072】
(例示的な「骨格」ベクター)
本発明の上記のトランスフェクション系の成分は、多数の適切な骨格ベクターに取り込まれて、発現ベクターおよび構築物の操作を容易にさせ得る。例えば、微生物における複製を可能にする手段を含むベクターへのこの成分の組み込みは、その構築物の増幅および単離を多大に容易にする(すなわち、シャトルベクターの作製)。例示的な骨格ベクターとしては、CMV6aおよびpUC19(実施例1)が挙げられるがそれらに限定されない。
【0073】
種々のそのような骨格ベクターは、適切な宿主系について利用可能である。
【0074】
これらの系としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:バキュロウイルス(Reilly,P.R.,et al.,BACULOVIRUS ExPRESSION VECTORS:A LABORATORY MANUAL(1992);Beanies,et al.,Biotechniques
11:378(1991);Pharmingen;Clontech,Palo Alto,CA);pAcC13(pAcC12に由来する、バキュロウイルス発現ベクター系において使用するためのシャトルベクター)(Munemitsu S.,et al.,Mol Cell Biol.10(11):5977−5982,1990),細菌{pBR322;Ausubel,F.M.,et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley and Sons,Inc.,Media PA;Clontech;Promega,Madison,WI;LifeTechnologies,Gaithersburg,MD)、酵母{Rosenberg,S.and Tekamp−Olson,P.,米国特許第RE35,749号,1998年3月17日発行;Shuster,J.R.,米国特許第5.629,203号,1997年5月13日発行;Gellissen,G.,et al.,Antonie Van Leeuwenhoek,62(1−2):79−93(1992);Romanos,M.A.,et al.,Yeast 8(6):423−488(1992);Goeddel,D.V.,Methods in Enzymology 185(1990);Guthrie,C.,and G.R.Fink,Methods in Enzymology 194(1991)、哺乳動物細胞{Clontech;Promega,Madison,WI;Life Technologies,Gaithersburg,MD;例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Haynes,J.,et al.,Nuc.Acid.Res.11:687−706(1983);1983,Lau,Y.F.,et al.,Mol.Cell.Biol.4:1469−1475(1984);Methods in Enzymology,vol.185,pp537−566 Academic Press,Inc.,San Diego CA(1991)},ならびに植物細胞(植物クローニングベクター、Clontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,CA,and Pharmacia LKB Biotechnology,Inc.,Pistcataway,NJ;Hood,E.,et al.,J Bacteriol.168:1291−1301(1986);Nagel,R.,etal.,FEMS Microbiol.Lett.67:325(1990);An,et al.,”Binary Vectors”,ならびに他のベクター(Plant Molecular Biology Manual A3:1−19(1988);Miki,B.L.A.,et al.,pp 249−265),ならびに他のベクター(Plant DNA Infectious Agents(Hohn,T.,et al.,eds.)Springer−Verlag,Wien,Austria,(1987);Plant
Molecular Biology:Essential Techniques,P.G.Jonesand J.M.Sutton,New York,J.Wiley,1997;Miglani,Gurbachan Dictionary of PlantGenetics and Molecular
Biology,New York,Food Products Press,1998;Henry,R.J.,Practical Applications of Plant Molecular Biology,New York,Chapman & Hall,1997)。
【0075】
(発現ベクターおよび構築物の誘導)
本明細書において記載されるベクターおよび構築物は、適切な宿主細胞に、種々の方法により導入され得る。特に、本発明のプロセスによって改変される哺乳動物細胞は、ベクターでのトランスフェクションまたは感染によって取得することができる。トランスフェクションは、周知技術によって実施され得る(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクションまたはマイクロインジェクション(Ausubel,et al.,前出))。例示的な方法はまた、実施例においても記載される。トランスフェクションは、複製するために使用可能なDNAフラグメントまたはウイルスベクター中に容易にパッケージングされないDNAを用いて使用され得るか、あるいは、哺乳動物のウイルスDNAの感染は、回避されるべきである。
【0076】
ビリオンまたはウイルス様粒子を得るウイルスゲノムに由来し得るベクターは、染色体外エレメントとして独立して複製可能であってもなくてもよい。高発現遺伝子座のためのDNAを含むビリオン粒子は、感染によって宿主細胞に導入され得る。このウイルスベクターは、細胞ゲノムへと組み込まれ得る。哺乳動物の形質転換のためのウイルスベクターの例は、SV40ベクター、およびパピローマウイルス、アデノウイルス、エプスタインーバーウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルスまたはマウス白血病ウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス))に基づくベクターがある。哺乳動物については、エレクトロポレーションまたはウイルス媒介導入が使用され得る。さらなる有用な送達系およびビヒクルは、本明細書において本発明者らが記載した(例えば、第2.3.1節を参照のこと)。
【0077】
適切な形質転換トランスフェクション条件は、本明細書における教示にかんがみ当業者により決定され得る。
【0078】
(細胞)
本発明において使用される細胞(例えば、宿主細胞)としては、すべての哺乳動物細胞、細胞株および細胞培養物が挙げられる。この細胞は、哺乳動物(例えば、マウス、ラットまたは他のげっ歯類、霊長類(例えば、ヒトまたはサル))に由来し得る。哺乳動物生殖細胞または体細胞系の細胞は、この目的のために使用され得る。初代細胞培養物または不死化細胞は、本発明の技術を実施する際に使用され得ることが理解される。
【0079】
哺乳動物細胞は、DNAによる形質転換のための細胞培養物中において代表的に増殖する。この細胞は、固形表面に固定され得るか、または適切な栄養培地の懸濁物中で増殖し得る。
【0080】
本発明において、恒常的な(すなわち、安定した)形質転換が生じることが好ましい。これは、細胞ゲノム中にDNAを組換えにより形質転換することの取り込みにより達成される。挿入的形質転換は、タグ化される高発現の遺伝子座を生じ、通常、そのタグのDNA構築物の、ランダムなゲノム位置への非相同組換えにより起こる。しかし、相同組換えが生じ得ることが理解される。
【0081】
抗生物質耐性遺伝子および第2の選択マーカーが染色体DNA中の単一の高発現遺伝子座に組み込まれているか否か、あるいは、所定の細胞において複数の高発現遺伝子座を少なくとも形成するための多数の組み込み部位が存在するか否かを決定する試みがなされてこず、本発明の哺乳動物細胞が、少なくとも1つの高発現遺伝子座を含むことが理解される。
【0082】
本発明の方法により入手された、形質転換された細胞は、その細胞が本質的に不死化している連続的な細胞株の調製のため、またはインビトロで継代培養されるべき能力を有する樹立細胞株の調製のために使用され得る。連続細胞株および樹立細胞株は、種々の生物および器官(例えば、げっ歯類胚;霊長類腎臓;げっ歯類およびヒトの腫瘍;ならびに線維芽細胞、上皮細胞またはリンパ細胞)から得ることができる。最高レベルの発現を示す細胞が所望の場合にクローニングされ得る。
【0083】
本発明の技術により形質転換され得る、樹立細胞株の例は、HeLa細胞、CV−1細胞、CHO細胞、3T3細胞、L細胞、およびTC7細胞である。これらの全ての細胞は、アミノグリコシド抗生物質(例えば、G418)に対して感受性であり、そしてその中に発現のためのカナマイシンまたはネオマイシン耐性遺伝子有し得る。
【0084】
さらに、本発明は、所望の機能性ポリペプチドの発現を参照して記載してきたが、このポリペプチドは本発明の課題ではないことが理解される。本発明は、真核生物遺伝子転写および発現産物(RNAを含む)の産生のために一般に有用である。
【0085】
本発明は、以下の実施例においてより完全に記載される。
【実施例】
【0086】
(実施例1:構築物)
pESN1dhfrを、以下のように構築した。PCRプライマー:
【0087】
【化1】

を使用して、pcDNA3M1を作製した。これは、野生型neoを含むpcDNA3(Invitrogen,Inc.)由来の、変異neo遺伝子を含む。本出願を通じて、適切な場合、プライマーが3’から5’の方向に示される場合は、注意される。PCRフラグメントを、TAクローニングのためのpCRIIにクローニングした。各々別々の変異を含むこのTAプラスミドを、BssHIIおよびSfuIで消化して、アミノ酸残基182で変異(野生型Gluの代わりにAsp)を含むneo遺伝子の領域を除去した。M1 PCRフラグメントをBssHIIおよびSfuIで消化したpcDNA3に連結することによって、残基182でneo変異を含むpcDNA3M1を作製した。pcMV6cをBalI/EcoRVで消化することによって、CMV IEプロモーターを得、このフラグメントを単離し、そしてNruIおよびEcoRVで消化したpcDNA3M1にこのフラグメントを連結した。生じたプラスミドをpESN1と名付けた。Ad−DHFR遺伝子をこのプラスミドに加えるために、pESN1を、Bst1107Iで平滑末端切断した。プラスミドpmCSR(Chiron Corp.)を、XhoIおよびBamHIで消化し、そしてAd−DHFRカセットを単離した。次いで、このカセットをKlenowで処理して、平滑末端化し、平滑末端化したpESN1に連結してpESN1.dhfrを作製した。M2 PCRフラグメントをBssHIIおよびSfuIで消化したpcDNA3に連結することによって、pcDNA3M2を、作製した。pcDNA3M3を、pcDNAの消化によって作製した。
【0088】
pESN2dhfrを、以下のように構築した。プライマー:
【0089】
【化2】

を使用して、pcDNA3M2を作製した。これは、アミノ酸残基261でneo遺伝子に変異(野生型Aspの代わりにAsn)を含む。PCRフラグメントを、TAクローニングのためのpCRIIにクローニングした。各々別々の変異を含むこのTAプラスミドを、BssHIIおよびSfuIで消化して、アミノ酸残基182で変異(野生型Gluの代わりにAsp)を含むneo遺伝子の領域を除去した。M2 PCRフラグメントをBssHIIおよびSfuIで消化したpcDNA3に連結することによって、残基261でneo変異を含むpcDNA3M2を、作製した。pcMV6cをBalI/EcoRVで消化することによって、CMV IEプロモーターを得、このフラグメントを単離し、そしてNruIおよびEcoRVで消化したpcDNA3M2にこのフラグメントを連結した。生じたプラスミドをpESN2と名付けた。Ad−DHFR遺伝子をこのプラスミドに加えるために、pESN2を、Bst1107Iで平滑末端消化した。プラスミドpmCSR(Chiron Corp.)を、XhoIおよびBamHIで消化し、そしてAd−DHFRカセットを単離した。次いで、このカセットをKlenowで処理して、平滑末端切断し、平滑末端化したpESN1に連結してpESN2.dhfrを作製した。
【0090】
pESN3dhfrを、以下のように構築した。pcDNA3M1およびpcDNA3M2をSmaIおよびRsrIIで消化することによって、pcDNA3M3を、作製した。次いで、pcDNA3M1由来の小フラグメントを、pcDNA3M2の大フラグメントに連結してpcDNA3M3を作製した。これは、neo遺伝子の残基182および261での変異を含む。pESN3.dhfrを、上記のようにCMV IEプロモーターおよびDHFR遺伝子を挿入することによって作製した。
【0091】
pneo*dhfr*1およびpneo*dhfr*2を、以下のように作製した。BstBI部位およびStuI部位を作製するプライマーを使用して、マウスDHFR遺伝子を、pSV2から増幅した。野生型Neor遺伝子をpcDNA3から除去し、そして野生型マウスDHFR遺伝子で置換してpcDNA3dhfrを作製した。次いで、このプラスミドを、PCRにおいて使用してマウスDHFR遺伝子を作製した。pneo*dhfr*1について、dhfrの5’領域における2つの隣接するコドンを、(pSV2dhfrを使用して)2つの停止コドンで置換して、それにより5’変異のDHFR遺伝子を形成する。pneo*dhfr*2について、3’領域における2つの隣接するコドンを、停止コドンで置換する。変異を、表1に示されるプライマーを使用するpcDNA3dhfrのPCR増幅によって導入した:
(表1)
【0092】
【表1】

dhfr遺伝子の5’末端における変異を、プライマー#5、#6、#7、および#8を使用して達成した。3’末端における変異を、プライマー#6、#8、#9、および#10を使用して達成した。これらの新たなベクターを、pXdhfr*1およびpXdhfr*2とよび、ここで、Xは、任意の導入遺伝子をいう。次いで、pESN1、pESN2、またはpESN3由来のneo耐性遺伝子の変異形態を、pdhfr*1またはpdhfr*2に挿入して、pneo*dhfr*1およびpneo*dhfr*2を作製する。これらの構築物を使用して、以下に記載されるように、宿主細胞における高発現部位を作製し得る。
【0093】
pdhfr3’delを、以下のように構築した。pcDNA3DHFR3’を、KpnI/EcoRVで消化した。pSeAP−Basic(Clontech)をClaIで消化した後にKlenow処理およびKpnIで消化することによって、分泌アルカリホスファターゼ(SeAP)を得た。次いで、平滑/粘着性(blunt/sticky)条件下で、このフラグメントをpcDNA3DHFR3’に連結した。pXdhfr3’delは、任意の導入遺伝子「X」を含むこのプラスミドをいう。
【0094】
pneo*dhfr5’delを、以下のように構築した。pcDNA3由来の同一のneo耐性遺伝子を含むプラスミドpFC55(Chiron Corp)を、BssHIIおよびSfuIで消化して、上記のように得たneo変異フラグメントを挿入した。BssHII/SfuI M1neoフラグメント、M2neoフラグメント、またはM3neoフラグメントを、pFC55に連結して、それぞれpRSVM1neo、pRSVM2neoまたはpRSVM3neoを作製した。pcDNA3dhfr5’(F.Randazzo指南)をNruI/KpnIで消化して、ポリリンカー領域の上流のCMVプロモーターを除去した。pRSVM1neoをNruI/KpnIで消化して、そして生じたフラグメントをpcDNA3dhfr5’に挿入して、pRSVM1neodhfr5’を作製した。生じたプラスミドを、BssHIIおよびKpnIで消化して、RSVM2neoフラグメントまたはRSVM3neoフラグメントのいずれかに挿入した。
【0095】
pCMVKm2:pCMVKm2ベクターは、pCMV6a(Chapmanら、Nuc.Acids Res.(1991)19:3979−3986)に由来し、そしてカナマイシン選択マーカー、ColE1複製起点、CMVプロモーターエンハンサーおよびイントロンAを含み、以下に記載される合成配列についての挿入配列が続き、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナルが続く。−−pCMVKm2ベクターは、ポリリンカー部位がpCMVKm2に挿入されて、pCMV−link(1646〜1697位でのポリリンカー)を作製する点のみがpCMV−linkベクターとは異なる;チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における発現のためのpESN2dhfrおよびpCMVPLEdhfr;および、バキュロウイルス発現系における使用のためのシャトルベクターであるpAcC13(pAcC13は、Munemitsu Sら、Mol Cell Biol.10(11):5977−5982,1990)によって記載されるpAcC12由来である)。
【0096】
pCMV−linkは、CMVプロモーター(CMV IE ENH/PRO)、ウシ成長ホルモンターミネーター(BGH pA)、カナマイシン選択マーカー(kan)、およびColE1複製起点(ColE1 ori)を含む。ポリクローニング部位はまた、CMVプロモーター配列に続いて存在する。
【0097】
ベクターpESNdhfr、pESN1dhfr、pESN2dhfr、pESN3dhfrについての制限地図を、図2に示す。図において、CMVプロモーター(pCMV、hCMVIE)、ウシ成長ホルモンターミネーター(BGHpA)、SV40複製起点(SV40ori)、ネオマイシン選択マーカー(Neo)、SV40ポリA(SV40pA)、アデノウイルス2後期プロモーター(Ad2VLP)、およびマウスdhfr遺伝子(mu dhfr)を示す。図において、ポリクローニング部位はまた、CMVプロモーター配列に続いて示される。
【0098】
簡単には、pCMVPLEdhfrの構築は、以下である。DHFRカセットを構築するために、EMCV IRES(内部リボソーム侵入部位(internal ribosome entry site))リーダーを、pCite−4a+(Novagen,Inc.,Milwaukee,WI)からPCR増幅し、そしてXba−NcoフラグメントとしてpET−23d(Novagen,Inc.,Milwaukee,WI)に挿入してpET−EMCVを得た。pESN2dhfrからdhfr遺伝子をPCR増幅して、翻訳停止コドンの代わりにGly−Gly−Gly−Serスペーサーを有する産物を得、そしてNco−BamHIフラグメントとして挿入して、pET−E−DHFRを得た。次に、減弱したneo遺伝子を、pSV2Neo(Clontech,Palo Alto,CA)誘導体からPCR増幅し、pET−E−DHFRの独特なBamHI部位に挿入してpET−E−DHFR/Neo(m2)を得た。最終的に、pCDNA3(Invitrogen、Inc.,Carsbad,CA)由来のウシ成長ホルモンターミネーターneo遺伝子の下流に挿入して、pET−E−DHFR/Neo(m2)BGHtを得た。EMCV−dhfr/neo選択マーカーカセットフラグメントを、pET−E−DHFR/Neo(m2)BGHtの切断によって調製した。
【0099】
CMVエンハンサー/プロモーター+イントロンAを、pCMV6a(Chapmanら、Nuc.Acids Res.(1991)19:3979−3986)からHindIII−SalIフラグメントとしてpUC19(New England Biolabs,Inc.,Beverly,MA)へ移した。pUC19のベクター骨格を、NdeI部位からSapI部位を削除した。上記のDHFRカセットを、EMCV IRESがCMVに続くようにこの構築物に加えた。このベクターはまた、Amp’遺伝子およびSV40複製起点を含んだ。
【0100】
合成Gag発現カセットを含むpCMVKm2ベクターは以下のように設計された:代理人整理番号1621.002の同時係属出願に記載されるような、pCMVKm2.GagMod.SF2、pCMVKm2.GagprotMod.SF2.およびpCMVKm2.GagpolMod.SF2。
【0101】
CAB構築物:記載される全ての構築物を作製し、そして以下の様式にてpAcC13にクローニングした。全ての構築物のCAB2部位をPCRによって作製したので、全てを配列決定し、ABI systemの色素ターミネーター配列分析によって確認した。最初に全ての構築物を、中間体クローニングベクターPCRII(INVITROGEN)またはpBluescript SK+(Stratagene)にクローニングした。これは、配列決定およびさらなるサブクローニングを容易にするために行われた。
【0102】
全てのCAB2構築物を、2つの部分で作製した。まず、CAB2分子のMCP部分(5’末端でのKpnI部位からアミノ酸321でのHindIII部位まで)を作製し、そしてPCRIIにクローニングし、そして正確な配列を確認するために分析した。次いで、CAB2のこの部分を、pBluescript
SK+にクローニングした。次いで、このSK+構築物に、種々の3’末端テールを含むCAB2の残りの部分(アミノ酸321でのHindIIIから5’末端のEcoRI部位まで)をクローニングした。HindIII 5’末端および3’末端を作製するために使用したプライマーは以下であった:
【0103】
【化3】

短いヘパリンのコンセンサス、TFPIヘパリンコンセンサス、およびGPIテールを含む、元々のHindIIIからEcoRIのPCR産物を、配列分析のために最初にPCRIIにクローニングした。長いヘパリンのコンセンサス、2つのフィブロネクチンテール、およびテールを有さない制御配列を含む、元々のHindIIIからEcoRIのPCR産物を、配列分析のためにpBluescript SK+にクローニングした。各々の改変体についてこれらの2つの半分をSK+に連結して完全なCAB2を作製した後、次いで、KpnIからEcoRIのフラグメントをpAcCI3にサブクローニングした。バキュロウイルス系を使用して、全てを昆虫細胞に発現した。
【0104】
昆虫細胞発現に加えて、これらの構築物のいくつかを、哺乳動物系における発現のために作製した。これらは、長いヘパリンコンセンサス配列を有するCAB2、TFPIヘパリン結合テール、および非標的化配列を有するコントロールを含む。哺乳動物系ベクターにクローニングするために必要とされる5’制限部位および3’制限部位を変化させるために、これらのCAB改変体の3つ全てを、PCRで再度作製した。全ての改変体を、5’末端NotI部位および3’末端XbaI部位を有して作製し、そして配列確認のために中間体ベクターPCRIIにクローニングした。NotIからXbaIのクローンを作製するために使用されるPCRプライマーは、制限部位における変化を除いてKpnIからEcoRIのフラグメントを作製するために使用したものと同一であった。次いで、確認した改変体を、pGEM9Z(Promega)にクローニングした。次いで、これらを、発現のための哺乳動物ベクターに移入した。
【0105】
(実施例2:異常なmRNAスプライシングの同定および補正)
Cab2は、膜補因子タンパク質(MCP)と減衰加速因子(dacay accelerating factor)(DAF)の特徴を併せ持ち、補体活性を阻害する、キメラの110kDaタンパク質である。Higginsら、前出。最初に、CHO細胞株(N2107)を、CAB2.1をコードする配列を保有するpcDNA3ベクター(Invitrogen)のトランスフェクション後に確立した。しかし、この細胞株の産生性は低く、そしてさらに、時間とともに減衰した。
【0106】
N2107細胞株の上清中に存在するポリペプチド分析は、予期せぬCAB2.1関連配列を有する42kDaタンパク質を示した。Fast Track(InVItrogen)を使用してCAB2含有プラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞の細胞ペレットから、ポリ(A+)mRNAを単離した。コード領域に隣接するプライマーを使用して、Perkin−Elmer RT−PCRキットに記載されるようにRT−PCR分析を実施した。優勢なPCR産物は、予想された42kDaのタンパク質をコードした。いくつかの中間体PCR産物および少量の全長(110kDa)PCR産物もまた存在した。従って、RT−PCRは、42kDaの夾雑物がCAB2.1におけるMCPとDAFのキメラドメインの間の異常なmRNAスプライシングによって生じたことを示した。
【0107】
異常なスプライシングを、重複PCRによって補正し、もはやコンセンサススプライシングに似ないようにアミノ酸を保存するような方法で、哺乳動物細胞由来の代替のタンパク質鎖のプロセスした産物を与えたRNAスプライシングについてのドナー部位およびアクセプター部位を除去することによって、CAB2.1、CAB4.2およびCAB4.3のスプライシングを補正した配列を産生した。変化は以下のとおりである:
【0108】
【化4】

これらの変化を、以下のプライマーでの重複PCRを使用して作製した。
アミノ酸47で開始するドナー部位を変化するために:
【0109】
【化5】

アミノ酸152で開始するドナー部位を変化するために:
【0110】
【化6】

アミノ酸372で開始するアクセプター部位を変化するために:
【0111】
【化7】

アミノ酸459で開始するアクセプター部位を変化するために:
【0112】
【化8】

使用した5’Kpnプライマーは以下であった:
【0113】
【化9】

使用した3’XbaIプライマーは以下であった:
【0114】
【化10】

上記で名付けたHindIII5’プライマーおよび3’プライマーをまた使用した。
【0115】
スプライシング部位欠失構築物は、完全なCAB2、TFPIヘパリン結合テールを伴うCAB2、それぞれアミノ酸570および561であるセリンスレオニン領域の一部および全体の欠失を伴うCAB2、ならびにTFPIヘパリンコンセンサス配列の付加を伴うセリンスレオニン領域の完全な欠失を含む。
【0116】
この分子の3’末端でのセリンスレオニン欠失を作製するために使用したプライマーは以下である:
【0117】
【化11】

これらの構築物を、元々のCAB改変体に実施したように、2つの部分で中間体ベクターpBluescript SK+に作製した。哺乳動物発現ベクターにおける最終構築物の完成の前に、全ての配列を、SK+において確認した。RT−PCRおよびノーザンブロッティングによって分析したmRNAは、異常なスプライシングを示さず、そして正確なサイズのバンドを示した。
【0118】
(実施例3:トランスフェクション)
スプライシングの補正されたCAB2.1およびCAB4.2を、LipofectAMINE試薬(BRL)を使用して、COS−7細胞に、2時間にわたって一過性にトランスフェクトした。RT−PCRは、正確な全長PCR産物(110kDa)のみを示した。これらの細胞に発現したCABタンパク質のレベルを、表2に示す。
【0119】
(表2)
【0120】
【表2】

(実施例4:トランスフェクト方法および選択方法)
プラスミドpESN1.dhfr.CAB2.1;pESN3.dhfr.CAB2.1、pESN1.dhfr.CAB42、またはpESN3.dhfr.CAB4.2の、以下の4つのトランスフェクションプロトコールを実施した:(1)エレクトロポレーション;(2)リン酸カルシウム(CaPo4)(Life Technologies,Gaithersburg,MD);(3)LipofectAMINE(Life Technologies,Gaithersburg,MD);および(4)TransIT LT−1試薬(PanVera Corp.,Madison,WI)。トランスフェクションを、エレクトロポレーション以外の全ての方法について製造業者の指導書に従って実施した。エレクトロポレーションに約3×106細胞を、そして50〜80%コンフルエントな細胞(5〜8×105細胞)を他の3つのトランスフェクション法について使用した。
【0121】
エレクトロポレーションを、以下のように実施した。CHO−DHFR細胞を、STVでトリプシン処理し、そして10%FBSを有する培地を、反応をクエンチするために添加した。細胞をDMEM(L−グルタミンを含む)で2回洗浄し、そして約6×106細胞/mLに再懸濁した。500μlの細胞を、滅菌したキュベットに添加し、約1〜30μgの間のDNAを添加した。これらの細胞を、330ボルトおよび975μファラド静電容量でエレクトロポレーションした。細胞を、100mmディッシュ中15mlのα−MEM/非選択培地(G418を含む)にプレートし、37℃で18〜24時間インキュベートした。次いで、培地をDHFRのためのα−MEM選択培地で置換して、そして細胞をコロニーが形成するまで増殖した。細胞を再度プレートし(T75フラスコ、96ウェルプレートまたは100mmディッシュ)そして20nMメトトレキサートで2〜4週間培養し、この時、メトトレキサートの濃度が40nMメトトレキサートに増加した。
【0122】
約10μgのプラスミドDNAを、トランスフェクションに使用した。トランスフェクトした細胞は、COS細胞(UCSF)またはDG44 DHFR−CHO細胞(Chiron Corp.)であった。トランスフェクション後、細胞を、非選択培地中(500mLの非選択培地は、431.5mLのα−MEM、50mL FBS(非透析)、5mLのペニシリン−ストレプトマイシン、0.5mLのゲンタマイシン、10mLのグルタミン、1mLのチミジン、1mLのアデノシンおよび1mLのデオキシアデノシンを含む)に1〜2日間回収し得た。1つのトランスフェクションからの細胞を、上記のようにトリプシン処理し、20mLの選択培地(500mLの非選択培地は、434.5mLのα−MEM、10mLのグルタミン、0.5mLのゲンタマイシン、5mLのペニシリン−ストレプトマイシンおよび50ml FBS(非透析)を含む)に希釈し、そして96ウェル培養プレートに適切な選択培地(250μgのG418(Gibco−BRL)、ヌクレオシドを含まないα−MEM、10% FBS(DHFR選択)のいずれかまたは両方の培地)でプレートした。細胞を、約2〜3週間にわたって選択培地中で維持し、この時、トランスフェクトされていない細胞または一過性にトランスフェクトされた細胞は死んだ。生存するコロニーを、トリプシン処理し、そして1mLの選択培地を含む24ウェル培養プレートに再度プレートした。
【0123】
増殖陽性ウェルを、ELISAを使用してCAB2.1またはCAB4.2の発現について試験した。CAB2.1またはCAB4.2を発現するミニプールを、DHFR選択およびメトトレキサート(MTX)での増幅のためにスケールアップした。得られた結果は、導入遺伝子の安定な発現を得る際にCaPO4が最も効果的であることを示した。
【0124】
DHFR−CHO細胞におけるCAB2.1またはCAB4.2の発現は、表3に示される。
【0125】
(表3)
【0126】
【表3】

CAB2に加えて、uPARおよびVEGF−Dの発現をまた、uPARまたはVEGF−Dをコードする導入遺伝子を含むpESN2dhfrでの、宿主細胞のリン酸カルシウムトランスフェクションによって達成した。約250mg〜約1mg/リットルの間の発現レベルを達成した。
【0127】
(本発明の実施に有用な株の寄託)
以下の株の生物学的に純粋な培養物の寄託を、American Type Culture Collection(ATCC),10801 University Boulevard,Manassas,VAで行った。示された受託番号は、首尾良い生存試験の後に割り当てられ、そして必要な費用が支払われた。寄託物は、Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purpose of
Patent Procedure and the Regulations thereunder(Budapest Treaty)の規定の元でなされた。これは、寄託した日から30年間および寄託所による寄託のサンプルの供給に対する最も新しい要請後少なくとも5年間にわたる生存培養物の維持を保障する。これらの生物は、米国特許法第122条およびそれに準じる長官の規則(米国特許法施行規則1.12条を含む)に従って表題された、米国特許庁長官によって決定されたものに対して培養物の永久かつ非限定的利用可能性を保障するBudapest Treatyの用語の下でATCCによって利用可能にされる。特許査定の際に、寄託された培養物の公的な利用可能性における全ての制限は、変更不可能に除去される。
【0128】
これらの寄託物は、単に当業者に便利なように提供されるだけであり、そして寄託が米国特許法第112条の下で要求されるという認可ではない。これらのプラスミドの核酸配列、ならびにこれらによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細書中の記載と何らかの矛盾が生じた場合に制御する。認可が、寄託された材料を作製、使用または販売するために要求され得、そしてこのような認可を本明細書では認可しない。
【0129】
【化12】

本発明の原理、好ましい実施形態および実施の様式は、前述の明細書に記載されている。しかし、本明細書中で保護されるべき発明は、記載された特定の形態に限定されるようには解釈されるべきではない。なぜなら、限定よりはむしろ例示としてみなされるべきだからである。改変および変化は、本発明の精神から逸脱することなく当業者によってなされ得る。
(配列表)
【数1】


【数2】


【数3】


【数4】


【数5】


【数6】


【数7】


【数8】


【数9】


【数10】


【数11】


【数12】


【数13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−239974(P2010−239974A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173176(P2010−173176)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2001−535583(P2001−535583)の分割
【原出願日】平成11年12月30日(1999.12.30)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】