説明

発酵ガスの昇圧方法

【課題】従来の嫌気性発酵の発酵ガスを安全で安価な方法で昇圧する事を課題とすることを課題とする。
【解決手段】ガス発酵槽1内で発生する発酵ガスを吸引するブースターファン4と、このブースターファン4の吐出側に一定静圧を加える背圧加圧装置6を備えた発酵ガスの昇圧装置を用いて発酵ガスを昇圧する方法であり、前記ブースターファン4の最大静圧能力を、前記背圧加圧装置6が加える一定静圧よりも小さくすることを特徴とする発酵ガスの昇圧方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気性発酵槽で発生する発酵ガスの昇圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場の消化槽で有機物をメタン発酵させて発生する消化ガスや有機廃棄物を嫌気性発酵して発生する発酵ガスは、脱硫装置でガスに含まれる硫黄分を除去し、水封式のガスホルダーに貯蔵してガスの需要設備にガスを供給している。前記ガスホルダーは、ガスの発生量と需要量の調整のため、及びガスの需要設備に必要なガス圧力を一定にするために設置される。
【0003】
メタンガスを単に燃焼させるガスボイラー等の場合に要求される供給ガス圧力は300mm水柱前後の場合が多く、ガスホルダーの出口圧力が概ね500mm水柱になるようにガスホルダーのホルダー重量を設計する。
【0004】
その場合、ガスホルダーと配管で連通されている発酵槽内の圧力は、自動的に500mm水柱程度に保たれることになる。500mm水柱の圧力は大きくないが、発酵槽の容積が大きくなると水槽の密閉度が維持できるように水槽を設計する必要がある。
【0005】
したがって、ガス需要設備への供給ガス圧力が高い場合や発酵槽の容積が大きい場合は、水槽の気密度を維持するために建設コストが増大する。
【0006】
特許文献1は、消化ガスから電力及び熱エネルギーを得る方法に関する。この方法は、脱硫した消化ガスを低圧ガスホルダーに貯蔵し、このガスを取り出して圧縮してガスタービンに供給し、この際前記ガスホルダーの貯留量に従ってガス圧縮機を制御し、前記消化ガスを燃料として単数又は複数のガスタービンで発電することを特徴とする。
【0007】
また、特許文献1に記載されているように、ガスのガスタービン発電機等の需要設備がある場合は、需要設備へのメタンガス等の消化ガスの供給圧力を0.5Mpa程度まで高くする必要がありガス圧縮機を用いてガスを昇圧するのが一般的である。
【0008】
ガスを圧縮機で昇圧する場合、特許文献1に記載されているように圧縮機の吐出圧を一定に制御することが容易でない。従って、実施例としてガスホルダーを低圧と高圧の2段構成にしたり、あるいは圧縮機でガス圧を必要以上に昇圧した後、減圧弁で減圧する必要がある。
【0009】
また、従来、嫌気性発酵槽とガスホルダーを一体として水槽上部の気密にゴムシートを用いて建設コストの削減を行う技術が知られている。しかし、この技術では、水槽内部の気密を確保するために水槽内の圧力を高くすることが困難となる。その場合、水槽とガスの需要設備の間に圧縮機を設けガス圧力を高める方法が取られている。
【0010】
ところで、発酵槽から直接圧縮機で発酵ガスを引き抜く場合に、発酵槽で発生する発酵ガス量よりガス需要設備でのガス消費量が少ない場合は問題ない。しかし、何らかの理由で発酵槽でのガス発生量がガス需要設備でのガス消費量より少なくなると、圧縮機により発酵槽内が負圧になる恐れがある。元々発酵槽内は高い圧力に耐えられないので圧縮機で増圧して発酵槽内の圧力が高くならないように設計している。従って、槽内が負圧になると、外気発酵槽の気密が破れ発酵槽内に空気が逆流する恐れがある。外気が発酵槽内に入ると、残存メタンガスに空気が混入することとなり爆発する恐れがあり大変危険なことになる。
【0011】
もちろん、発酵槽の機密度を向上させて各種のセンサーを設置しファンの運転インターロックを設けて危険を回避することは可能である。しかし、設備コストが上昇しセンサー等の点検維持管理に労力を要することになり実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−83085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、ガス発酵槽の機密性が十分でなくても外部から空気が混入する恐れを回避でき、安全で安価な発酵ガスの昇圧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る発酵ガスの昇圧方法は、ガス発酵槽内で発生する発酵ガスを吸引するブースターファンと、このブースターファンの吐出側に一定静圧を加える加圧装置を備えた発酵ガスの昇圧装置を用いて発酵ガスを昇圧する方法であり、前記ブースターファンの最大静圧能力を、前記加圧装置が加える一定静圧よりも小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガス発酵槽内が負圧になることがないので、ガス発酵槽の機密性が十分でなくても外部から空気が混入する恐れを回避でき、安全で安価な発酵ガスの昇圧方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る発酵ガスの昇圧方法の概略的な説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の発酵ガスの昇圧方法について更に詳しく説明する。
本発明の発酵ガスの昇圧方法は、上述したように、ブースターファンと加圧装置を備えた発酵ガスの昇圧装置を用いて発酵ガスを昇圧する方法であり、ブースターファンの最大静圧能力を、前記加圧装置が加える一定静圧よりも小さくすることを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記加圧装置としては水封方式が採用され、水槽に収容した水深の水柱圧を静圧としてブースターファンに加えることができる。こうした構成によれば、従来のガスホルダーと比べてコンパクトで安価に製作することができる。
【0019】
本発明において、前記ブースターファンの吸込み側に圧力調整装置を配置し、ブースターファンの吸込み側の圧力が規定値以下にすることが好ましい。圧力調整装置の配置により、前記発酵ガスの昇圧方法において、発酵ガスの発生量がガスの消費量より多い場合に、ブースターファンの吸込み側の圧力が増加してブースターファンの吐出側の静圧が増大していくのを防ぐことができる。
【0020】
次に、本発明の実施形態について図1を参照して説明する。但し、本発明は下記に述べることに限定されない。
図中の符番1は、上部の開口部が密閉シート2で密閉されたラグーン方式の嫌気性発酵槽である。この嫌気性発酵槽1にはガス排出管3が設けられ、このガス排出管3を経て発酵ガスがブースターファン4によりガス圧が増圧するようになっている、増圧した発酵ガスは、脱硫装置5,背圧加圧装置6を経由して需要設備7に供給される。背圧加圧装置6は、ブースターファン4の吐出側に背圧をかけるための水封式の気密タンクで構成され、水深の水柱圧を静圧としてブースターファン4に加えることができる。嫌気性発酵槽1とブースターファン4間でかつガス排出管3の出口付近には、圧力調整装置としての水シールポット8が配置されている。この水シールポット8は、嫌気性発酵槽1内のガス圧が異常に上昇した場合に大気にガスを放出し、嫌気性発酵槽1内の圧力を一定値以下に保つ機能を備えている。なお、図1において、符番9は嫌気性発酵槽1の水面、符番10は発酵ガス貯留空間を示す。
【0021】
前記背圧加圧装置6の背圧Paとブースターファン4の最大静圧能力Pbとの関係において、最大静圧能力Pbは背圧Paよりも若干小さいとすると、嫌気性発酵槽1内の圧力が(Pa−Pb)以上にならないと、ブースターファン4は空回りしてガスを増圧することができない。即ち、嫌気性発酵槽1の内部圧力は(Pa−Pb)以下になることは無く、嫌気性発酵槽内部が負圧になり空気を吸い込む恐れがない。また、背圧加圧装置6の背圧Paを大きく設定しても、(Pa−Pb)が一定になるようにブースターファン4の最大背圧Pbを決めることにより、ガス需要設備7の要求ガス圧が高くなっても嫌気性発酵槽内の圧力を高くする必要はない。
【0022】
上記実施形態によれば、嫌気性発酵槽1からのガス排出管3にブースターファン4を介し一定静圧を加える背圧加圧装置6を設け、背圧加圧装置6によりブースターファン4の吐出側の静圧より若干低い静圧能力を有するブースターファン4を使用することにより、ブースターファン4の吸込み側すなわち嫌気性発酵槽内の圧力が規定以上ないとブースターファン4は該ガスを後押ししなくなる。即ち、ブースターファン4の吐出側に一定静圧の背圧加圧装置6を設けているため、嫌気性発酵槽内の圧力が規定値以上ないと、ブースターファン4は空回りし嫌気性発酵槽内が負圧になることがありえなくなる。換言すれば、発酵ガスの発生が止まっても嫌気性発酵槽内が負圧になることは無い。
【0023】
また、前記背圧加圧装置6は水封方式を採用しているので、従来のガスホルダーと比べコンパクトで安価に製作することが可能となる。
【0024】
更に、嫌気性発酵槽1からの発酵ガスの発生量がガスの消費量より多い場合には、ブースターファン4の吸込み側の圧力が増加しブースターファン4の吐出側の静圧が増大していく場合がある。しかし、上記実施形態では、ブースターファン4の吸込み側に水シールポット8を設けているので、ブースターファン4の吐出圧力が一定圧以上にならないようにすることができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的には、上記実施形態では、背圧加圧装置として水封式の気密タンクを採用しているが、従来からある水封式のガスホルダーや背圧弁で構成してもよい。但し、背圧弁を用いた場合、ガス流量が大きいと背圧弁が大型で高価になるため実用的でない。また、水シールポットは水封によりガス圧力が規定値以上にならないようにしているが、安全弁や余剰ガス燃焼装置等のガス消費装置で置き換えても良い。
【符号の説明】
【0026】
1…嫌気性発酵槽(ガス発酵槽)、2…密閉シート、3…ガス排出管、4…ブースターファン、5…脱硫装置、6…背圧加圧装置(加圧装置)、7…ガス需要設備、8…水シールポット(圧力調整装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス発酵槽内で発生する発酵ガスを吸引するブースターファンと、このブースターファンの吐出側に一定静圧を加える加圧装置を備えた発酵ガスの昇圧装置を用いて発酵ガスを昇圧する方法であり、
前記ブースターファンの最大静圧能力を、前記加圧装置が加える一定静圧よりも小さくすることを特徴とする発酵ガスの昇圧方法。
【請求項2】
前記加圧装置を水封方式にしたことを特徴とする請求項1記載の発酵ガスの昇圧方法。
【請求項3】
前記ブースターファンの吸込み側に圧力調整装置を配置し、ブースターファンの吸込み側の圧力を規定値以下にすることを特徴とする請求項1又は2記載の発酵ガスの昇圧方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−56386(P2011−56386A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208268(P2009−208268)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】