説明

発酵乳発酵装置、および、発酵乳製造方法

【課題】容器内に収容された被発酵物の発酵終了を、発酵乳発酵装置の外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせ、また、被発酵物の発酵終了を報知することができる発酵乳発酵装置を簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置の製造費用を低減させた発酵乳発酵装置を提供することを課題とする。
【解決手段】被発酵物2が収容された容器3Aを上面に載置して、所定の温度に加熱する、ヒータ10と、ヒータ10における上面に載置され、所定の温度に加熱された被発酵物2が収容された容器3Aにおける底部が所定の温度に達したことを検知する、温度検知部材21と、所定の温度に達したことから、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を報知する、温度報知部材22と、を具備する、発酵乳発酵装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵乳発酵装置、および、発酵乳製造方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度コントローラを備えるヒータと、ヒータ上面に着脱分離可能な被発酵物を収容するための容器とを備える、発酵乳発酵装置に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に示す如くである。
当該発酵乳発酵装置においては、ヒータの上面に載置された容器を加熱する温度は、温度コントローラによって制御されるものである。
【0003】
また、容器の底に設けたヒータと、2点間の温度差を測るセンサーとを具備する、発酵乳発酵装置に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献2に示す如くである。
当該発酵乳発酵装置においては、2点間の温度差を測るセンサーによって、容器に収容された被発酵物の発酵終了が自動的に検知され、また、自動的にその加熱を停止させるものである。
【特許文献1】実開昭63−48481号公報
【特許文献2】特開2005−65673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような発酵乳発酵装置における温度コントローラや2点間の温度を測るセンサーは、加熱温度を制御し、また、発酵終了を自動的に検知もしくは加熱を自動的に停止させるものであるものの、容器内に収容された被発酵物の発酵終了を作業者に知らせるものではない。このため、当該発酵乳発酵装置においては、容器に収容された被発酵物の発酵終了を作業者が知るためには、容器の蓋を開けることによって容器内に収容された被発酵物の発酵状況を確認する必要があり、作業性が悪いものであった。
【0005】
また、2点間の温度を測るセンサーによって発酵終了を自動的に検知する発酵乳発酵装置は、任意の2点間においてセンサーを配置しなければならず、その構造が複雑なものであり、当該発酵乳発酵装置を製造するための費用が高くなるものである。
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、容器に収容された被発酵物の発酵終了を、発酵乳発酵装置の外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせ、また、被発酵物の発酵終了を報知することができる発酵乳発酵装置を簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置の製造費用を低減させた発酵乳発酵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、発酵乳発酵装置は、被発酵物が収容された容器を上面に載置して、所定の温度に加熱する、ヒータと、前記ヒータにおける上面に載置され、前記所定の温度に加熱された前記被発酵物が収容された容器における底部が前記所定の温度に達したことを検知する、温度検知部材と、前記所定の温度に達したことから、前記容器に収容された被発酵物の発酵終了を報知する、温度報知部材と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、発酵乳発酵装置は、被発酵物が収容された容器を上面に載置して、所定の温度に加熱する、ヒータと、前記ヒータにおける上面の一部もしくは全部に設けられ、前記ヒータの上面に載置された前記被発酵物が収容された容器の底部と接触される、示温部材と、を具備し、前記示温部材は、前記ヒータにおける上面に載置され、前記所定の温度に加熱された前記被発酵物が収容された容器における底部が前記所定の温度に達したことを検知するとともに、前記所定の温度に達したことから前記容器に収容された被発酵物の発酵終了を報知するものである。
【0010】
請求項3においては、発酵乳製造方法は、被発酵物が収容された容器を、ヒータの上面に載置する、載置行程と、前記ヒータの上面に載置された前記被発酵物が収容された容器を、所定の温度に加熱して、前記容器に収容された被発酵物を前記容器内にて対流させる、加熱行程と、前記容器に収容された被発酵物の対流が停止して、前記容器における底部の温度が前記所定の温度に達し、前記容器における底部の温度が前記所定の温度に達したことを前記ヒータの上面に設けられた示温手段が検知するとともに、前記所定の温度に達したことから前記容器に収容された被発酵物の発酵終了を前記示温手段が報知する、終了報知行程と、前記示温手段が報知する発酵終了に基づいて、前記被発酵物が収容された容器の加熱を停止する、加熱停止行程と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
容器内に収容された被発酵物の発酵終了を、発酵乳発酵装置の外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせ、また、被発酵物の発酵終了を報知することができる発酵乳発酵装置を簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置の製造費用を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明に用いられる、被発酵物2、および、被発酵物2が収容される容器3Aについて説明する。
容器3Aは、例えば、1リットルの牛乳を収納することができる市販されている牛乳の牛乳パックで構成されている(図14乃至図16参照)。即ち、容器3Aは、略70mm角に形成された底面を具備する。また、容器3Aには、市販されている略1リットルの牛乳とケフィアのタネ菌とが混ぜ合わされた被発酵物2が収容されている。容器3Aおよび被発酵物2の温度は、牛乳とケフィアのタネ菌とが混ぜ合わされた時点では、冷蔵庫内と同程度の温度、即ち、5℃から10℃程度の温度となっている。当該被発酵物2の温度が、一定時間、被発酵物2の発酵温度の範囲内にあった場合、当該被発酵物2は発酵する。なお、当該牛乳とケフィアのタネ菌とが混ぜ合わされた被発酵物2の発酵温度は、約25℃以上35℃以下である。また、当該被発酵物2に含有されるケフィアのタネ菌の死滅が開始される温度は、約50℃であり、被発酵物2は50℃以上に加熱されない。
なお、被発酵物2は、略1リットルの牛乳とケフィアのタネ菌とが混ぜ合わされたものに限定するものではない。即ち、被発酵物2は、牛乳や山羊乳や羊乳等と所定の生菌とが混ぜ合わされた所定の量のものであってもよいものとする。
また、被発酵物の発酵温度は、被発酵物に含有される生菌の種類等によって異なるものであり、ケフィアのタネ菌以外の生菌を使用する場合は、それぞれの死滅開始温度が設定される。
【0014】
次に、本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態について、図1から図12を用いて説明する。
図1および図2に示す如く、発酵乳発酵装置1Aは、主に、ヒータ10と、示温部材と、足部材30とを具備する。
【0015】
ヒータ10は、主に、載置台11aと、発熱部材12と、電源部材とから構成される。
載置台11aは、その上面に被発酵物2が収容された容器3Aを載置するための部材であり、略100mm角の平板形状の陶磁器製タイル材からなる。発酵乳発酵装置1Aにおいては、被発酵物2が収容された容器3Aは、載置台11aの略中央に載置されるものとする。
また、載置台11aは平板形状であれば、陶磁器、金属、人造大理石、天然石で構成してもよい。
ここで、載置台11aにおける上面のうち、載置される前記容器3Aの底部と接触する領域を載置領域Aとし、また、ヒータ10における上面のうち前記載置領域A以外の領域、および、ヒータ10における側面を開放領域Bとして以下に説明する。すなわち、発酵乳発酵装置1Aにおける載置領域Aは、載置台11aの略中央に位置される7cm角の領域をいうものとする。
電源部材は、電源コード13と電源プラグ14とからなり、電源コード13における一方の端部には電源プラグ14が備えられ、また、他方の端部は発熱部材12と接続されている。
発熱部材12は、電源部材から電力の供給を受けて載置台11a(ヒータ10)の上面に載置される被発酵物2が収容される容器3Aを所定の温度で加熱するための部材であり、載置台11aの下面に設けられている。ここで、被発酵物2が収容される容器3Aを加熱する前記所定の温度は、45℃に制御されている。
そして、牛乳パックの側面からの放熱により発熱部材12から発生した熱が消費され、設定温度である45℃よりもかなり低い30℃にてバランスするように、発熱部材12の消費電力を調整している。即ち、この発熱部材12による加温の熱量と牛乳パックの側面からの放熱の熱量が釣り合って一定に保たれるようにしている。
また、ケフィアのタネ菌以外の生菌を使用する場合は、それぞれの発酵至適温度にてバランスするようにし、固化後の温度上昇においてもそれぞれの死滅開始温度以下になるように調整される。
以下では、載置台11aにおける発熱部材12に接続された電源コード13が延出する方向を後方とし、また、載置台11aにおける当該電源コード13が延出する方向と反対の方向を前方として説明する。
なお、壁に備わる電源コンセントに電源プラグ14が差込まれた状態においては、多くの場合、載置台11aの後方は、当該壁の方向に向けられることが想定される。このことは、載置台11aの後方が当該壁と反対方向、もしくは、当該壁に対して垂直方向に向けられた場合、電源コード13が作業者等の邪魔になる可能性があるためである。
【0016】
示温部材は、当該示温部材に接触する対象物の温度が上昇して40℃に達した際に、示温部材の表面の色が変色(例えば、黄色から柿色に変色)する示温テープ20からなる。示温テープ20は、前後方向の長さを略2cm、左右方向の長さを略4cmとする長方形に形成されている。また、示温テープ20は、載置領域Aと開放領域Bとを前後に跨ぐようにして、載置台11aにおける上面の前方部分に接着材等により固定して設けられている。即ち、示温テープ20は、載置台11a(ヒータ10)における上面の一部に設けられる。
【0017】
足部材30は、載置台11aや発熱部材12と、例えば床面等とが接触することを防止するための部材である。具体的には、足部材30は、所定の高さを備えるプラスチック樹脂素材からなり、載置台11aの下面四隅から、下方に突出するように固定して設けられている。
【0018】
次に、発酵乳発酵装置1Aを用いて行われる、被発酵物2が収容された容器3Aの加熱開始から、当該被発酵物2の発酵が終了する間における、被発酵物2が収容された容器3A、および、当該被発酵物2の状態を説明する。
まず、示温テープ20と容器3Aの底部とを接触させるように、載置台11aにおける上面の載置領域Aに被発酵物2が収容された容器3Aを載置する(図14参照)。係る状態で、電源部材における電源プラグ14をコンセントに挿入して、45℃の温度で当該容器3Aの加熱を開始する。なお、当該加熱開始時における、容器3Aに収容された被発酵物2の温度は、5℃から10℃程度の温度となっている。
当該加熱を開始すると、容器3Aに収容された被発酵物2のうち、容器3A内の下方部分の被発酵物2は暖められて、容器3A内の上方部分の被発酵物2に比べて下方部分の被発酵物2の温度は上昇する。このため、容器3A内において被発酵物2が対流することとなる(図15(a)参照)。また、容器3A内において被発酵物2が対流している間においては、当該容器3Aの底面の温度は上昇するものの、当該容器3Aの底面の温度は30℃以下の温度に保持されている。
しばらく加熱を続け、被発酵物2の温度が25℃を越えたあたりから、被発酵物2の発酵が始まり、被発酵物2の粘性は次第に高くなり始める。
更に被発酵物2の発酵を進めるべく、容器3A(被発酵物2)の加熱を続けていくと、容器3A内における被発酵物2の対流が停止する(図15(b)参照)。これは、容器3Aに収容された被発酵物2が固体化、即ち、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵が終了した状態にあるためである。係る状態で容器3Aの加熱を続けると、当該容器3Aの底面の温度が上昇し、当該容器3Aの底面の温度は40℃に達する。つまり、容器3Aの底面の温度が40℃に達した状態においては、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵が終了した状態にある。
即ち、被発酵物2が対流しているうちは、容器3Aの側面からの放熱があるため、30℃に保たれるが、発酵がすすんで被発酵物2が固化することにより対流が止まり、容器3Aの側面からの放熱が減少することで、容器3Aの底部の温度が上昇することになる。この状態においても加熱温度が45℃以上にならないようにしているため、被発酵物2内の生菌を死滅させることなく、発酵成果物を得ることができる。
【0019】
以上のように、発酵乳発酵装置1Aは、ヒータ10と、示温部材とを具備する。ヒータ10は、載置台11aにおける上面のうち、載置される前記容器3Aの底部と接触する領域を載置領域Aとし、また、載置台11aにおける上面のうち前記載置領域A以外の領域、および、載置台11aにおける側面を開放領域Bとする、載置台11aを具備する。また、当該ヒータ10は、載置台11aの上面に載置される被発酵物2が収容される容器3Aを45℃の温度で加熱する発熱部材12を具備する。
示温部材は、当該示温部材に接触する対象物の温度が上昇して40℃に達した際に、示温部材の表面の色が変色する示温テープ20からなり、当該示温テープ20は、載置領域Aと開放領域Bとを前後に跨ぐようにして、載置台11aにおける上面に設けられている。
このため、載置台11aにおける上面の載置領域Aに容器3Aが載置された状態においては、載置台11a(ヒータ10)の上面に載置された容器3Aの底部と、載置領域Aに設けられた示温テープ20と、は接触される。そして、載置台11aに載置された被発酵物2が収容された容器3Aを加熱して、当該容器3Aの底面の温度が40℃に達した際には、示温テープ20の表面の色が変色することとなる(図16参照)。つまり、示温テープ20の表面の色が変色することにより、被発酵物2が収容された容器3Aの底面の温度が40℃に達したことを示温テープ20が検知したことが、示されている。
また、被発酵物2が収容される容器3Aが載置台11aの載置領域Aに載置されている状態においても、開放領域Bに設けられた示温テープ20の表面の色は看取され得る。即ち、容器3Aが載置台11aの載置領域Aに載置されている状態においても、被発酵物2が収容された容器3Aの底面の温度が40℃に達し、開放領域Bに設けられた示温テープ20の表面の色が変色することによって、当該容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了は、報知されることとなる。
したがって、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0020】
容器3Aの底面の温度が40℃に達したことを検知し、また、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を報知する、示温テープ20は、載置台11aにおける上面の一部に接着材等により固定して設けられている。即ち、容器3Aの底面の温度が所定の温度に達したことを検知する機能と、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を報知する機能とが、一枚の示温テープ20によって実現されている。
したがって、被発酵物2の発酵終了を報知することができる発酵乳発酵装置1Aを簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置1Aの製造費用を低減させることができる。
【0021】
壁に備わる電源コンセントに電源プラグ14が差込まれた状態においては、多くの場合、載置台11aの後方は、当該壁の方向に向けられることが想定される。示温テープ20は、載置台11aにおける上面の前方部分に設けられている。このことは、壁に備わる電源コンセントに電源プラグ14が差込まれた状態において、載置台11aにおける表面の開放領域Bに設けられている示温テープ20は、作業者に看取されやすいことといえる。
したがって、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0022】
載置台11aは平板形状に形成されている。即ち、載置台11aは、載置台11aに載置される被発酵物2が収容された容器3Aを囲む側壁のようなものを具備していない。このため、載置台11aに載置され、加熱される、被発酵物2が収容された容器3Aの側面からは、容易に熱が放熱することとなる。つまり、発酵乳発酵装置1Aによって被発酵物2が収容された容器3Aを加熱すると、容器3A内の下方部分の被発酵物2は、容器3A内の上方部分の被発酵物2に比べて暖かく、その温度差に起因して、容器3A内において被発酵物2が対流するのである。
したがって、載置台11aの形状を平板形状に形成することで、容器3Aを側壁のようなもので囲んで当該容器3Aを保温し、係る温度差が生じにくくしために容器3A内における被発酵物2の対流が阻害されること、を防止することができる。つまり、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵が終了する前に、容器3A内における被発酵物2の対流が停止することによって、当該容器3Aの底面の温度が40℃に達することを防止することができる。よって、被発酵物2の発酵終了の誤検知および誤報知を防止して、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を発酵乳発酵装置1Aの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0023】
載置台11aは、略100mm角の平板形状の陶磁器製タイル材からなる。このため、例えば、家庭におけるキッチンの水周りがタイル材で構成されている場合において、当該水周りのタイル材のうち一枚のタイル材を発酵乳発酵装置1Aで構成することで、家庭におけるキッチンの美観を損ねることなく、また、余分な配置スペースを必要とせず、家庭におけるキッチンに発酵乳発酵装置を配置することができる。
【0024】
足部材30は、所定の高さを備えるプラスチック樹脂素材からなり、載置台11aの下面四隅から、下方に突出するように固定して設けられている。このように構成することにより、載置台11aや発熱部材12と、床面とが接触することを防止することができる。つまり、載置台11aや発熱部材12が床面の温度に影響をうけることなく、所定の温度を保持して、載置台11aに載置される容器3Aを加熱することができる。
したがって、発酵乳発酵装置1Aによって容器3Aに収容された被発酵物2を発酵させるにあたり、被発酵物2に含有される生菌を死滅させること無く、また、容器3Aに収容された被発酵物2を確実に発酵させることができる。
なお、足部材30に代えて、上面が開放した箱形状の部材を、載置台11aの下面に設けるような構成として、載置台11aや発熱部材12と、床面等とが接触することを防止する構成としてもよいものとする。
【0025】
被発酵物2の発酵温度は、略25℃以上35℃以下である。被発酵物2に含有されるケフィアのタネ菌の死滅が開始される温度は、約50℃である。また、発熱部材12は、載置台11a(ヒータ10)の上面に載置される被発酵物2が収容される容器3Aを所定の温度で加熱する部材である。被発酵物2を収容する容器3Aを加熱する所定の温度は、45℃に設定されている。つまり、当該所定の温度は、容器3Aに収納された被発酵物2が発酵する発酵温度以上、被発酵物2に含有される生菌の死滅が開始される死菌温度未満の範囲内の温度に保持されている。
したがって、発酵乳発酵装置1Aによって容器3Aに収容された被発酵物2を発酵させるにあたり、被発酵物2内における生菌を死滅させること無く、また、容器3Aに収容された被発酵物2を確実に発酵させることができる。
【0026】
図3に示す如く、示温テープ20は、前後方向の長さを略3cm、左右方向の長さを載置台11aの左右方向の長さと略同一の長さに形成し、載置領域Aと開放領域Bとを前後に跨ぐようにして、載置台11aにおける上面の前方部分および載置台11aの前方側面に、設けられる構成としてもよいものとする。このように構成することにより、開放領域Bに設けられた示温テープ20は、より看取されやすくなる。
したがって、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観からより容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0027】
図4に示す如く、示温テープ20は、載置台11aの上面の全面に設けられる構成としてもよいものとする。また、図5に示す如く、示温テープ20は、載置台11aの上面における四辺の縁部に沿って設けられる構成としてもよいものとする。また、図6示す如く、示温テープ20は、載置第11aの上面における前方部分と側方部分の二箇所に設けられる構成としてもよいものとする。これらのように構成することにより、載置台11aの方向に関わらず、開放領域Bに設けられた示温テープ20は、看取されやすくなる。
したがって、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観からより容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0028】
載置第11aの上面における載置領域Aは、載置台11aの上面の略中央に位置されることに限定するものではない。即ち、図6に示す如く、載置第11aの上面における後側方に載置領域Aが位置される構成としてもよいものとする。このように構成することで、載置台11aにおける上面の開放領域Bを広く構成することができ、開放領域Bに設けられた示温テープ20は、より看取されやすくなり得る。
したがって、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観からより容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0029】
図7に示す如く、載置台11bのように、前後方向の長さを短くし、載置領域Aを載置第11bの上面における前方に位置される構成とし、示温テープ20のうちの開放領域Bに設けられるべき部分を載置台11bの上面における前端部から前方に突出するようにして、示温テープ20が載置台11bに設けられる構成としてもよいものとする。このように構成することにより、発酵乳発酵装置1Aを小型化させ、当該発酵乳発酵装置1Aを収納もしくは配置するためのスペースを、縮小させることができる。
【0030】
また、図8に示す如く、載置台11aの表面に載置領域Aを示す表示である載置表示15が設けられている。具体的には、載置表示15は、載置台11aの表面に載置領域Aを囲う鎖線を描いた構成とされている。このように構成することにより、容器3Aを載置台11aに載置する際に、示温テープ20全体を隠すようにして、被発酵物2を収納した容器3Aを載置台11aに載置する事態を防止することができる。したがって、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観から確実に容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0031】
本実施形態において、示温部材は、当該示温部材に接触する対象物の温度が上昇して40℃に達した際に、表面の色が変色(例えば、黄色から柿色に変色)する示温テープ20からなるものであるが、示温テープ20の表面の色が変色する設定温度は、被発酵物2や容器3A等の構成によって適宜変更してもよいものとする。接触対象物が所定の設定温度に達した際に示温テープ20の表面に所定の文字が浮かびあがる構成や、現時点の温度を逐次把握することができるように示温テープ20の表面に温度ごとのメモリ表示がされる構成としてもよいものとする。
また、示温部材の構成を示温テープ20と同様の機能を有する示温塗料とし、載置台11aの表面に当該示温塗料を塗布するような構成としても良いものとする。このように構成することで、載置台11aに設けられる示温テープ20が載置台11aから剥がれて発酵乳発酵装置1Aがその機能を失うことを防止し、発酵乳発酵装置1Aの製品寿命を向上させることができる。また、発酵乳発酵装置1Aを簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置1Aの製造費用を低減させることができる。
【0032】
発酵乳発酵装置1Aの構成を、ヒータ10および足部材30と、示温テープ20とを別体として構成してもよいものとする。このように構成した場合には、まず、図9(a)に示す如く、示温テープ20のうちの載置領域Aに設けられるべき部分を被発酵物2が収容された容器3Aの底面に接着剤等により固定する。そして、図9(b)に示す如く、係る状態の容器3Aをヒータ10の上面に載置して、当該容器3Aを加熱する。このように構成することによっても、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせ、また、被発酵物2の発酵終了を報知することができる発酵乳発酵装置1Aを簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置1Aの製造費用を低減させることができる。
【0033】
被発酵物2を収容する容器は、1リットルの牛乳を収納することができる市販されている牛乳の牛乳パックで構成されることに特に限定するものではない。例えば、図10に示す如く、容器3Bのように、その底面形状が丸みを帯びた形状に形成される場合でもよいものとする。
そして、このように容器3Bの底面形状が丸みを帯びた形状に形成された場合において、載置台11cのように、載置台11cにおける表面に当該容器3Bの底面形状に合わせて円形のくぼみを形成させ、当該くぼみ部分を載置領域Aとする構成としてもよいものとする。このように構成することにより、容器3B内における被発酵物2を、よりスムーズに対流させることができる。
したがって、被発酵物2の発酵終了の誤検知および誤報知を確実に防止して、容器3Bに収容された被発酵物2の発酵終了を発酵乳発酵装置1Aの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【0034】
図11および図12に示す如く、発酵乳発酵装置1Bは、容器3Aの底面の温度が所定の温度に達したことを検知する機能と、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を報知する機能と、は別体として構成されている。
具体的には、容器3Aの底面の温度が所定の温度に達したことを検知する機能と、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を報知する機能とを別体とされる構成は、主に、温度検知部材21と温度報知部材22とで構成される。
温度検知部材21は、容器3Aの底面の温度が所定の温度に達したことを検知する部材であり、載置台11aの表面に備えられる。温度報知部材22は、前記所定の温度に達したことから、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を報知する部材であり、温度検知部材21および載置台11aから独立して構成される。また、温度報知部材22は、例えば、液晶表示により当該所定の温度を表示することによって、被発酵物2の発酵終了を報知するように構成されている。温度検知部材21と温度報知部材22とは、電線23等により接続されている。そして、温度検知部材21において所定の温度が検知されると、温度検知部材21から当該所定の温度を検知した信号が発信され、前記電線23を介して、温度報知部材22は、温度報知部材22が前記所定の温度を検知した信号を受信するように構成されている。
このように構成することにより、容器3A内に収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Bの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせ、また、被発酵物2の発酵終了を報知することができる発酵乳発酵装置1Bを簡易構造で実現し、発酵乳発酵装置1Bの製造費用を低減させることができる。
なお、温度報知部材22は、液晶表示により当該所定の温度を表示する構成に限定するものではなく、所定の報知音を発することにより、発酵終了を報知するような構成としてもよいものとする。
【0035】
次に、本発明に係る発酵乳製造方法の実施形態について、図13から図16を用いて説明する。なお、本実施形態における発酵乳製造方法は、容器3A、被発酵物2、および、発酵乳製発酵装置1Aを用いて行うものであるため、それぞれの具体的な説明は省略する。
【0036】
図13に示す如く、本実施形態における発酵乳製造方法は、載置行程S1と、加熱行程S2と、終了報知行程S3と、加熱停止行程S4とを具備する。
【0037】
載置行程S1とは、被発酵物2が収容された容器3Aを、載置台11a(ヒータ10)の上面に載置する行程である。具体的には、図14に示す如く、示温部材と容器3Aの底部とを接触させるように、載置台11aにおける上面の載置領域Aに被発酵物2が収容された容器3Aを載置する。
【0038】
加熱行程S2とは、載置台11a(ヒータ10)の上面に載置された被発酵物2が収容された容器3Aを、所定の温度に加熱して、容器3Aに収容された被発酵物2を容器3A内にて対流させる行程である。具体的には、載置台11aにおける上面の載置領域Aに被発酵物2が収容された容器3Aが載置された状態で、電源部材における電源プラグ14を電源コンセントに挿入して、45℃の温度で当該容器3Aの加熱を開始する。なお、当該加熱開始時における、容器3Aに収容された被発酵物2の温度は、5℃から10℃程度の温度となっている。
当該加熱を開始すると、容器3Aに収容された被発酵物2のうち、容器3A内の下方部分の被発酵物2は暖められて、容器3A内の上方部分の被発酵物2に比べてその温度が上昇する。このため、図15(a)に示す如く、容器3A内において被発酵物2が対流することとなる。また、容器3A内において被発酵物2が対流している間においては、当該容器3Aの底面の温度は上昇するものの、その温度は30℃以下の温度に保持されている。
しばらく当該加熱を続け、被発酵物2の温度が25℃を越えたあたりから、被発酵物2の発酵が始まり、被発酵物2の粘性は次第に高くなり始める。
【0039】
終了報知行程S3とは、容器3Aに収容された被発酵物2の対流が停止して、容器3Aにおける底部の温度が所定の温度に達し、容器3Aにおける底部の温度が所定の温度に達したことを載置台11a(ヒータ10)の上面に設けられた示温手段が検知するとともに、所定の温度に達したことから容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了を示温手段が報知する行程である。
具体的には、容器3Aに収容された被発酵物2の粘性が高くなり始め、更に被発酵物2の発酵を進めるべく、被発酵物2の加熱を続けていくと、図15(b)に示す如く、容器3A内における被発酵物2の対流が停止する。これは、容器3Aに収容された被発酵物2が固体化、即ち、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵が終了した状態にあるためである。係る状態で容器3Aの加熱を続けると、当該容器3Aの底面の温度が上昇し、当該容器3Aの底面の温度は40℃に達する。即ち、容器3Aの底面の温度が40℃に達した状態においては、容器3Aに収容された被発酵物2の発酵が終了した状態にある。そして、図16に示す如く、容器3Aの底面の温度が40℃に達したことにより示温テープ20の表面の色が変色する。つまり、示温テープ20の表面の色が変色することにより、被発酵物2が収容された容器3Aの底面の温度が40℃に達したことを示温テープ20が検知するとともに、当該容器3Aに収容された被発酵物2の発酵終了が、示温テープ20によって報知されることとなる。
【0040】
加熱停止行程S4とは、示温手段が報知する発酵終了基づいて、被発酵物2が収容された容器3Aの加熱を停止する行程である。
具体的には、載置台11aに載置されている容器3Aを上方に持ち上げることや、電源コンセントに挿入されている電源プラグ14を当該コンセントから引き抜くこと等によって、当該容器3Aの加熱を停止する場合でもよいものとする。
【0041】
以上のように、本実施形態における発酵乳製造方法は、載置行程S1と、加熱行程S2と、終了報知行程S3と、加熱停止行程S4とを具備する。また、本実施形態における発酵乳製造方法は、発酵乳発酵装置1Aを用いて行うものである。
このため、容器3A内に収容された被発酵物2の発酵終了を、発酵乳発酵装置1Aの外観から容易に知ることができ、作業者による作業性を良好なものとさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図。
【図2】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図。
【図3】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図。
【図4】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した平面図。
【図5】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した平面図。
【図6】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した平面図。
【図7】(a)は本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した平面図、(b)は本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した側面図。
【図8】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した平面図。
【図9】(a)は本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図、(b)は本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図。
【図10】(a)は本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した平面図、(b)は本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した側面図。
【図11】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図。
【図12】本発明に係る発酵乳発酵装置の実施形態を示した斜視図。
【図13】本発明に係る発酵乳製造方法のフロー図。
【図14】(a)は本発明に係る発酵乳製造方法の載置行程を示した斜視図、(b)は本発明に係る発酵乳製造方法の載置行程を示した斜視図。
【図15】(a)は本発明に係る発酵乳製造方法の加熱行程を示した側面図、(b)は本発明に係る発酵乳製造方法の終了報知行程を示した側面図。
【図16】(a)は示温テープの表面の色が変色する前の状態を示した斜視図、(b)は示温テープの表面の色が変色した後の状態を示した斜視図。
【符号の説明】
【0043】
1A 発酵乳発酵装置
1B 発酵乳発酵装置
2 被発酵物
3A 容器
10 ヒータ
20 示温テープ
21 温度検知部材
22 温度報知部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被発酵物が収容された容器を上面に載置して、所定の温度に加熱する、ヒータと、
前記ヒータにおける上面に載置され、前記所定の温度に加熱された前記被発酵物が収容された容器における底部が前記所定の温度に達したことを検知する、温度検知部材と、
前記所定の温度に達したことから、前記容器に収容された被発酵物の発酵終了を報知する、温度報知部材と、
を具備する、発酵乳発酵装置。
【請求項2】
被発酵物が収容された容器を上面に載置して、所定の温度に加熱する、ヒータと、
前記ヒータにおける上面の一部もしくは全部に設けられ、前記ヒータの上面に載置された前記被発酵物が収容された容器の底部と接触される、示温部材と、を具備し、
前記示温部材は、前記ヒータにおける上面に載置され、前記所定の温度に加熱された前記被発酵物が収容された容器における底部が前記所定の温度に達したことを検知するとともに、前記所定の温度に達したことから前記容器に収容された被発酵物の発酵終了を報知する、
発酵乳発酵装置。
【請求項3】
被発酵物が収容された容器を、ヒータの上面に載置する、載置行程と、
前記ヒータの上面に載置された前記被発酵物が収容された容器を、所定の温度に加熱して、前記容器に収容された被発酵物を前記容器内にて対流させる、加熱行程と、
前記容器に収容された被発酵物の対流が停止して、前記容器における底部の温度が前記所定の温度に達し、前記容器における底部の温度が前記所定の温度に達したことを前記ヒータの上面に設けられた示温手段が検知するとともに、前記所定の温度に達したことから前記容器に収容された被発酵物の発酵終了を前記示温手段が報知する、終了報知行程と、
前記示温手段が報知する発酵終了に基づいて、前記被発酵物が収容された容器の加熱を停止する、加熱停止行程と、
を具備する、発酵乳製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−119371(P2010−119371A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298563(P2008−298563)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(390029643)株式会社天好社 (1)
【Fターム(参考)】