説明

発酵器

【課題】 衛生的で清掃の手間を省くことができ、さらに、ケースが軽量化され、組立てや収納が簡易である発酵器を提供する。
【解決手段】 被発酵物が格納されるケース2と、ケース2の内側の熱源となるヒーターと、を有してなる組み立て式の発酵器1であって、ケース2は、ヒーターが内蔵される底部4と、底部4に取り付けられる周壁部5および扉6と、周壁部5と扉6に取り付けられる天井部7と、を備え、底部4と周壁部5と扉6と天井部7のそれぞれは、別体であり、周壁部5は、2つの側面部12と、2つの側面部12に挟まれる背面部11とが一体的に成型され、扉6と天井部7と周壁部5それぞれの内部は、中空に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵器に関し、詳しくは、主に自家製パンの調理に用いることができる組み立て式の発酵器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭でも手軽に自家製パンを作るための便利な発酵器として、ボックスタイプの発酵器が開発されている。例えば発酵器は、前面が開放されたケース内の左右に複数段の支持板が設けられている。この支持板には、パン生地を載せたトレイを置くことができる。また、このケースの底部には、ケース内部の熱源となる電熱ヒーターが一体に備えられている。ケースは、底部とは別体に形成した透明のカバーで形成するように構成されたものもある。
【0003】
このようなボックスタイプの発酵器は、広いキッチンを持つ家庭の場合はよいが、とかくスペースの狭いキッチンでは、常時配置したままでは日常的に行う炊事作業に邪魔になることが多かった。それを解消するものとして、折りたたみと組み立てを容易に行うことができる発酵器が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の発酵器は、発熱用底部と、発熱用底部に着脱自在であって取り外し可能な上箱部からなる発酵器で、折りたたみ自在に構成されている。特許文献2に記載の発酵器は、ケースに上板と下板と二枚の側板の連結部を自在に折れ曲げることができるヒンジ連結機構を備えている。裏側開口部に設ける裏板も、上板に蝶番などのヒンジ具で連結して開閉自在とし、かつケースの内側左右には複数段に設けた支持受け棒に棚板を組み合わせてパン生地醗酵器を形成している。ケースの前側開口部には、左右両サイドに設けたファスナーにより開閉自在とする透明カバーの上及び左右端部を、ケースの上板及び左右側板に固定することで、必要な時は、ケースはもとより裏板や透明カバー、棚板等もコンパクトに折りたたむことが可能な構成となっている。また、特許文献3に記載の発酵器は、折りたたみ可能な組み立てケースと透明扉、天板トレイを有し、捏ね台兼用保湿盤を底板とする構成になっている。
【0005】
また、上記各特許文献は、発酵器のケースの両側板と前板と後板、あるいは、両側板と上板と底板の少なくとも4枚の板をコーナー部で折りたたむものである。それゆえ、折りたたみの作業は簡単なものになっている。しかしながら、両側板と前板と後板、あるいは、両側板と上板と底板の少なくとも4枚の板を一体化するまでの製作工程が大がかり、かつ複雑で、結局、コストアップとなる。これらの問題を解決するための1つの方法は、発酵器のケース両側板と前板、後板、上板、底板のそれぞれを別体で製作することであるが、分解や収納や組み立て作業が煩雑になり、かつ時間がかかってしまう。また、それぞれを別体にすると、製作部品数が増えることにより、製作工程数が増えて、これまた結局、コストアップとなってしまう。さらに、内部の湿度が高くなる発酵器においては、器内の結露や外部への熱の発散などを低減する必要があるが、上記各特許文献に記載の発酵器には、それらの対策が全く講じられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭53―32895号公報
【特許文献2】特開2001−346502号公報
【特許文献3】特開2004−242627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の各特許文献のような構成の発酵器は、一応の利便性を有するものの、壁の構造にケース外部との断熱性を設けることに関する工夫が観られず、各発酵器ともケース外部との断熱性に問題がある。そのため、ケースの内側に結露が発生し、周囲温度によっては結露水がケースの内側から滴り落ち、ケース内のパン生地そのものやトレイを濡らしてしまい、パン生地そのものの品質に不具合を起こしたり、ケースの底面などを濡らしてしまうことでバクテリアやカビなどを発生させてしまう問題がある。また、上記各特許文献に記載されているような構成の発酵器は、ケースの重量に対する考慮がなく、ケースが重くなってしまい収納や組み立ての際に困難がある。
【0008】
更にまた、上記した従来技術における問題の内、特に、発酵器の分解や収納や組み立て作業の容易化と、製作の容易化・低コスト化は、実際には相反する問題である。そこで、発明者は、両側板と前板、後板、上板、底板の内、どれとどれを組み合わせて一体的に製作したら、上記相反する問題の全てを同時に解決できるか、実際に様々な組み合わせのパターンにて発酵器を試作した後、モニタリングテストなどを繰り返し実施するなどして、鋭意研究を積み重ねた。その結果、漸く、本発明を完成するにいたった。
【0009】
本発明は、ケース内側で結露が発生するのを防止し、結露によって引き起こされるケースのカビの発生などの衛生面の問題や、パン生地の品質の低下などの不具合を防止し、衛生的で清掃の手間を省くことができ、さらに、分解や収納や組み立て作業の容易化と、製作の容易化や低コスト化が同時に達成できる発酵器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる発酵器は、被発酵物が格納されるケースと、ケース内の熱源となるヒーターと、を有してなる組み立て式の発酵器であって、ケースは、ヒーターが内蔵される底部と、底部に取り付けられる周壁部および扉と、周壁部と扉に取り付けられる天井部と、を備え、底部と周壁部と扉と天井部のそれぞれは、別体であり、周壁部は、2つの側面部と、2つの側面部に挟まれる背面部とが一体的に成型され、扉と天井部と周壁部それぞれの内部は、中空に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成により、発酵器の分解や収納や組み立て作業の容易化と、製作の容易化や低コスト化を同時に達成することができる。又、ケースの内側とケースの外側が断熱され、結露の発生を防止することができ、結露によって引き起こされるカビの発生などの不具合を防止し、衛生的で清掃の手間を省くことができる。
【0012】
また、本発明にかかる発酵器の周壁部は、周壁部と天井部のいずれか一方の端部には溝部を有する弾性凸部が一体的に成型され、他方の端部には突起部を有する弾性凹部が一体的に成型され、溝部及び突起部が嵌め合わされると同時に、弾性凸部及び弾性凹部が嵌め合わされることにより、周壁部と天井部が結合されることを特徴とする。
【0013】
この構成により、発酵器の製作工程を簡素なものにし、製造原価を下げることができる。また、使用者による発酵器の分解あるいは組み立て作業を簡素かつ便利なものにすることができる。
【0014】
また、ケースの内側とケースの外側が断熱されるため、結露の発生を防止することができ、結露によって引き起こされるカビの発生などの不具合を防止し、衛生的で清掃の手間を省くことができると共に、外部への熱の発散を低減できる。
【0015】
また、本発明にかかる発酵器の周壁部は、周壁部には、折りたたみ可能となるように複数のヒンジ部が設けられていて、複数のヒンジ部と、周壁部は一体的に成型され、複数のヒンジ部は、周壁部の外側向きの谷状の窪みを周壁部の一部に形成することで成っていることを特徴とする。
【0016】
この構成により、ケースを簡単に折りたたむことができ、コンパクトに収納することができる。又、ヒンジ部領域における結露の発生を最少限に抑えることができる。
【0017】
また、本発明にかかる発酵器の扉は、その正面視略中央位置に窓部を有し、窓部は、その内部が中空となるように2枚の板を嵌め合わされて成ることを特徴とする。
【0018】
この構成により、使用時に使用者がケース内側を見ることができるように扉に窓部を設けながら、ケース内側とケース外側を断熱することができるため結露の発生を防止することができ、結露によって引き起こされるカビの発生などの不具合を防止し、衛生的で清掃の手間を省くことができる。
【0019】
また、本発明にかかる窓部における2枚の板は、互いに同一形状を有し、板には、片側半分周縁の少なくとも一部領域に少なくとも2本の第1の突起が形成され、他の片側半分周縁の少なくとも一部領域に少なくとも1本の第2の突起が形成されると共に、隣り合う第1の突起の間に溝が形成され、第2の突起と溝が嵌め合わされることにより窓部の内部が中空となることを特徴とする。
【0020】
この構成により、使用時に使用者がケース内側を見ることができるように扉に窓部を設けながら、ケース内側とケース外側を断熱することができるため結露の発生を防止することができ、結露によって引き起こされるカビの発生などの不具合を防止し、衛生的で清掃の手間を省くことができる。加えて、2枚の板を同一形状にすることによって、板の作製時に金型の数を削減することができ、工程数を減らすことができるため製造原価を下げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2つの側面部とこれら2つの側面部に挟まれる背面部を一体成型したため、発酵器の分解や収納や組み立て作業の容易化と、製作の容易化や低コスト化を同時に達成することができる。また、扉と天井部と周壁部それぞれの内部を中空に形成したため、発酵器のケースの内側で結露が発生するのを防止することができると共に、外部への熱の発散を低減できる。さらに、軽量化することができるため、使用者が発酵器の組み立てや収納を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る発酵器の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る発酵器の扉を外した状態の斜視図である。
【図3】本発明に係る発酵器の周壁部と天井部の結合状態を示す断面拡大図である。
【図4】本発明に係る発酵器の周壁部の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る発酵器の周壁部を折りたたんだ例を示す上面図である。
【図6】本発明に係る発酵器の周壁部の例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る発酵器の周壁部を開いた状態の例を示す内側正面図である。
【図8】本発明に係る発酵器の窓の例を示す部分断面図である。
【図9】上記窓を構成する板の例を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る発酵器の底部の例を示す正面図である。
【図11】本発明に係る発酵器の扉の例を示す正面図(a)と、拡大断面図(b)である。
【図12】本発明に係る発酵器の周壁部を折りたたんだ他の態様を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る発酵器の実施例について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例の構成に限定されるものではない。図1、図2に示すように、発酵器1は、被発酵物が格納される略立方体状のケース2と、ケース2内の熱源となる電熱性のヒーターとを有してなる。ケース2は、ヒーターが内蔵されるヒーター部3を有する高さ方向に扁平状で平面形状が略四角形状をした底部4と、底部4に取り付けられるケース2の周壁を形成する周壁部5と、ケース2の正面に設けられている平面形状が略四角形状をした扉6と、周壁部5と扉6に取り付けられる平面形状が略四角形状をした天井部7とを備えている。
【0024】
発酵器1の周壁部5を形成している背面部11及び側面部12の平面形状は、天井部7及び扉6と同様にそれぞれ略四角形状をしている。また、底部4と周壁部5と扉6と天井部7は、それぞれ別体に形成されているため、それぞれを組み立てると図示のように立方体状のケース2を構成することができる。すなわち、ケース2は、収納時には底部4と周壁部5と扉6と天井部7にそれぞれを分解することができ、使用時には、再び立方体状に組み立てることができるように設計されている。
【0025】
ここで、ケース2の組み立て方法の一例を示す。まず、底部4の略四角形状の平面形状周辺に沿うように、すなわち側面部12と背面部11との交わる角度が略90度になるように、側面部12の底部4側を結合部品9によって適宜の方法で底部4に固定する。次いで、底部4の表示部13とスイッチ部14がある正面側に扉6を適宜の方法で、両側面部12側の扉6の開閉を担う両端が合うように取り付ける。そして、詳しくは後述するが、天井部7の周辺を、周壁部5と扉6に嵌合することにより、ケース2を形成することができる。
【0026】
図3、図4、図11(b)に示すように、扉6と天井部7と周壁部5それぞれの内部は、ブロー成型によって中空Aになるように形成されている。そのため、ケース2の内部はケース2の外部と断熱されるため、ケース2の内部、即ち、周壁部5、天井部7、扉6のケース2の内面の表面などにおいて結露が発生することを防止できる。その結果、結露によって引き起こされる発酵器1のケース2内のカビの発生など衛生面の問題や、パン生地の品質の低下などの不具合を防止し、使用者は衛生的で清掃の手間を省くことができる。さらに、扉6と天井部7と周壁部5が中空であるため、ケース2の重量を軽量化することができ、使用者が発酵器1の組み立てや収納を簡易にすることができる。
【0027】
扉6と天井部7と周壁部5を形成する材質は、ポリプロピレンからなりブロー成型によって、扉6と天井部7と周壁部5は、その形状が形成されている。なお、扉6と天井部7と周壁部5の材質は、代替できる他の高分子化合物でもよく、また、扉6と天井部7と周壁部5はそれぞれ材質が違っていてもよい。また、扉6と天井部7と周壁部5は、ブロー成型以外の成型方法によって形成してもよい。図1、図11(a)で示すように、扉6は、片開きタイプになるように設計されていて、その開放側には取手10が取り付けられている。なお、取手10としては、適宜のものを取り付けることができ、扉6と一体化しなくてもよく、あるいは取手10を扉に取り付けなくともよい。
【0028】
図5で示すように周壁部5は、収納時などにコンパクトになるようにM字状に折りたたむことができる。周壁部5は、2つの側面部12と、2つの側面部12に挟まれる背面部11とが一体化されている。図示のようにM字状に折りたたみ可能となるように、周壁部5には3つのヒンジ部5aが設けられている。3つのヒンジ部5aはブロー成型によって周壁部5に一体的に成型されている。3つのヒンジ部5aの厚さは、周壁部5よりも薄く、図4、図5、図6に示すように3つのヒンジ部5aは、周壁部5の外側(ケース2を組み立てた際における外側)向きの谷状の窪みを形成するように周壁部5の内側(ケース2を組み立てた際における内側)に設けられている。3つのヒンジ部5aのそれぞれは、ケース2の高さ方向(底部4から天井部7へ向かう方向)に略平行に設けられている。3つのヒンジ部5aのうち1つは、背面部11の幅方向の略中央位置に設けられている。なお、ヒンジ部5aは、周壁部5よりも薄くなっており、結露しやすい部分となっている。そのため、ヒンジ部5aの谷状の窪みを形成する面に、吸水性のある適宜の接着テープを貼るなどの結露対策を講じるとよい。
【0029】
図3、図5、図6で示すように、周壁部5の背面部11と側面部12の天井部7との接合面には、それぞれ側面部12の弾性凸部12bと、背面部11の弾性凸部11aが設けられている。図3で示すように、天井部7の内周面側(ケース2を組み立てた際における内側の面)には、周壁部5と嵌合できるように、扉6との接合部分を除いた周縁に天井部の弾性凹部7aが設けられている。これらが嵌め合わされることによって天井部7を周壁部5に固定することができる。また、天井部の弾性凹部7aには、周壁部5のケース2内側に接合させるように凸部7cが設けられ、凸部7cと側面部12との接合面には、突起部7bが設けられている。凸部7cと合わせて、弾性凸部12bには、溝部12dが設けられている。したがって、凸部7cと側面部12の接合面において、突起部7bと溝部12dの両者の突起と溝がぴったりと嵌り合う。図7で示すように、同様に背面部11にも溝部11cが設けられており、凸部7cと突起部7bが背面部11にも嵌り込む設計となっている。
【0030】
このように、周壁部5の天井部7との接合面側の端部には、溝部11c、12dを有する弾性凸部11a、12bが成型され、天井部7の周壁部5との接合面側の端部には、突起部7bを有する弾性凹部7aが成型され、溝部11c、12d及び突起部7bが嵌め合わされるのと同時に、弾性凸部11a、12b及び弾性凹部7aがそれぞれ嵌め合わされることにより、周壁部5と天井部7が結合している。なお、上述の形成とは逆に、すなわち周壁部5に弾性凹部と突起部を、天井部7に溝部と凸部を成型することで、周壁部5と天井部7を結合させることもできる。
【0031】
このように設計することにより、天井部7と周壁部5とを簡易に嵌め合わせることができ、さらに収納の際の分解時には、それぞれを取り外しやすい設計となっている。また、発酵器1の製作工程を簡素なものにし、製造原価を下げることができる。また、使用者による発酵器1の分解あるいは組み立て作業を簡素かつ便利なものにすることができる。加えて、発酵器1内の結露や外部への熱の発散などを低減することができる。なお、天井部7と周壁部5との嵌合方法は、上述のものに限らず、適宜のものが選択できる。
【0032】
図2に示すように、ヒンジ部5aが配置された側面部12の内周面には、被発酵物をケース2内に格納する際に用いられるトレイ載置網15を載置するためのトレイ載置網受け12aがケース2の内側に向けて突出するように設けられている。トレイ載置網受け12aは、図6、図7に示すように、トレイ載置網15が収納される際に水平位置を保つことができるように、その上面を(天井部7側の面)を天井部7と底部4とに略水平になるように設計されている。また、トレイ載置網受け12aは、側面部12の両方に、高さ方向において同一の位置に2つで1セットになるように設けられている。トレイ載置網受け12aの数としては、適宜の数を設計することができる。両側面部12の幅は、トレイ載置網15の長さに合わせている。トレイ載置網15は、図示しない一般的なトレイを設置できる大きさに設計されている。したがって、製パン作業の前工程からの余熱を奪わずにケース2の内部に他の装置からそのまま発酵器1に被発酵物を格納することができる。また、このように設計することにより、被発酵物を発酵器1で発酵後に、図示しないトレイをオーブンレンジなどにパン生地に手を触れることなく運搬し、パン生地を焼くことができる。図5に示すように、側面部12をケース2の内側に向けて折りたたむことができるように、背面部11と側面部12のケース2の外周面の接合点Pから、側面部12にあるヒンジ部5aまでの長さCは、トレイ載置網受け12aの側面部12の内周面から突出した長さDより長く設定されている。
【0033】
このように設計することにより、周壁部5を図5のようにM字状に折りたたんでも、トレイ載置網受け12aの突出が折りたたみの邪魔になることを防ぐことができる。また、図7に示すように、側面部12にあるヒンジ部5aまでの上述の長さCと同程度に、背面部11の下部11bが正面側(ケース2を組み立てた際の扉6側)に突出している。したがって、ケース2の組み立て時には、下部11bが底部4の背面部11側に接合する。下部11bと底部4は、そのため簡易な適宜の方法で固定できる構成となっている。また、背面部11の下部11bは、側面部12の下端(結合部品9との結合部12cのある側の端)の位置より、さらに下側(底部4側)に設けられている。従って、上述のようにM字状に周壁部5を折りたたんだときに、下部11bの上記突出が邪魔にならないように設計されている。なお、トレイ載置網15は、平板上のトレイとしてもよい。
【0034】
また、図12で示すように、背面部11にはヒンジ部5aを設けず、周壁部5には、上述の側面部12にあるヒンジ部5aのみを設けてもよい。この場合、図5と同様に、一方の側面部12をケース2の内側に向けて折りたたむことができるように、背面部11と側面部12のケース2の外周面の接合点Pから、側面部12にあるヒンジ部5aまでの長さCは、トレイ載置網受け12aの側面部12の内周面から突出した長さDより長く設定されている。さらに、他方の側面部12をケース2の内側に向けて折りたたむことができるように、背面部11と他方の側面部12のケース2の外周面の接合点Qから他方の側面部12にあるヒンジ部5aまでの長さEは、上述の長さCと長さDを足した長さより長く設定されている。
【0035】
このように設計することにより、ケース2の収納時に、周壁部5の側面部12を折り曲げる際に、トレイ載置網受け12aの突出が折りたたみの邪魔になることを防ぐことができ、周壁部5を折りたたんだ際、その厚みを薄くすることができコンパクトに収納することができる。また、背面部11にヒンジ部がないため、上述の中空構造Aがないヒンジ部5aが少なくなり、この部分での結露発生をなくすことができる。
【0036】
この構成により、ケース2は、簡単にM字状に折りたたむことができ、コンパクトに収納することができるため、使用者が発酵器1の組み立てや収納を簡易にすることができる。また、3つのヒンジ部5aをブロー成型などにより周壁部5と一体化して成型することができるため、より簡易にケース2を製造することができ、例えばヒンジ部5aに蝶番を使用する場合に比べて組み立て工数が下がり、製造費用をコストダウンすることができる。なお、ヒンジ部5aの数としては、上述のものに限らず適宜の数を選択できる。ここでいうM字状とは、アルファベットのM字だけを示さず、ヒンジ部5aを増やして周壁部5を山谷状に折りたたむ回数を増やし、その折りたたみ形状の一部がM字状となっていればよい。すなわち、例えばヒンジ部5aを5つにして、5段階に折りたたみが可能であってもよい。
【0037】
扉6は、その正面視略中央位置に窓部8を有し、図8で示すように、窓部8は、その内部が中空Bとなるように2枚の板8cが嵌め合わされて構成されている。2枚の板8cは同一形状であり、図9で示すように、それぞれの板8cの平面には、その周縁に沿って形成されている複数の突起(8a、8b)が設けられている。複数の突起(8a、8b)は、周縁半分まで2つの凸部が並列して配置されている第1の突起8aと、残りの周縁半分に1つの凸部が配置されている第2の突起8bからなっている。隣り合う第1の突起8aの間には、溝8dが形成されている。2枚の板8cの片方の天地を逆転させると、溝8dに、第2の突起を入りこませることができるため両者を簡単に嵌め合わせることができる。なお、板8cには、片方半分周縁の少なくとも一部領域に少なくとも2本の第1の突起8aが形成され、片方半分周縁の少なくとも一部領域に少なくとも1本の第2の板上突起8bが形成されると共に、隣り合う第1の突起8aの間に溝8dが形成されていれば、第2の突起8bと溝8dが嵌め合わされることにより窓部8の内部を中空とすることができる。
【0038】
この構成により、発酵器1は、その使用時に使用者がケース2の内側を見ることができるように扉6に窓部8を設けながら、ケース2の内側とケース2の外側を断熱することができるため結露の発生を防止することができる。結露によって引き起こされるケース2の内側のカビの発生などの不具合を防止し、衛生的で清掃の手間を省くことができる。また、2枚の板8cが同一形状であるので、2枚の板8cを同一の金型で形成することができ、窓部8を簡単に組み立てることができるので、窓部8の製造コストを削減することができる。また、扉6に窓部8を組み込む際に、扉6が成型後の余熱で柔軟であるときに、窓部8を組み込むと、その後、扉6が冷えて縮み、窓部8に嵌り込む。これにより、窓部8を簡易に固定することができるため、さらに扉6全体の製造工程の短縮やコストダウンを図ることができる。なお、複数の突起(8a、8b)の凸部は、上述の数に限らず、2枚の板8cが同一形状であり、第1の突起8aの2つの凸部の間に、第2の突起8bを入りこませることができる限り、適宜の数を選択できる。すなわち、例えば第1の突起8aの凸部の数を3つにして、第2の突起8bの凸部を2つにしてもよい。
【0039】
図10に示すように、底部4は扁平状で、略四角形状をしている。その平面形状の中心には、略四角形状をしたヒーター部3が設けられている。ヒーター部3の下には、電熱式のヒーターが埋め込まれている。ケース2における正面側(扉6側)には、ヒーター部3の操作部として、スイッチ部14と、表示部13が設けられている。スイッチ部14や表示部13の構成としては、例えばヒーター部3の機能などを考慮しながら適宜の配置や数が選択できる。
【0040】
底部4には、扉6を開放したまま固定するための突起17が設けられている。突起17は、ケース2の内部を乾燥させる場合に、発酵器1の使用後にケース2の内部の湿度を逃がすことができる位置に扉6を開放して固定可能な位置に配置されている。具体的には、ケース2の内側の湿度を逃がすことができる位置をあらかじめ計測して、その位置に扉6の下側(底部4側)が固定されるように、底部4の上に突起17が2つ設けられている。なお、突起17は、上述のケース2の内側の湿度を逃がすという目的を達成することができる適宜の位置に設けることができる。この構成により、ケース2の内側を容易に乾燥させることができ、乾燥時に扉を開き過ぎることがない。そのため、スペースをとらずにケース2の内側を乾燥させ、湿気によって引き起こされるカビの発生などの不具合を防止し、ケース2の内側が衛生的になり、清掃の手間を省くことができる。
【0041】
図10において、底部4のセンサー部16は、温度センサーであって、例えばサーミスタからなる。センサー部16が、底部4に設けられていることで、ヒーター部3に近い位置で温度を感知することができ、配線が長くなることによってセンシングに誤差が生じることを防止することができる。なお、センサー部16の位置は、図示のように底部4の平面上の背面部11側中心に限らず、底部4の上にある限り適宜の場所に配置することができる。ヒーター部3の制御は、センサー部16を用いて適宜の方法を選択することができ、使用時に、ケース2の内側の温度を一定に維持することができる。
【0042】
図11(a)、図11(b)において、扉6には、その内周面側(ケース2を組み立てた際の内周側の面)の周縁にわたって2つの凸部18が並列して形成されている。この2つの凸部18は、シリコンゴムからなり、扉6の内周面側にこの2つの凸部18を有するシリコンゴムを埋め込めるように、扉6の内周面の周縁には凹部が形成されている。この構成により、扉6の内周面側で発生する結露を防止することができる。従ってそのことから引き起こされるカビの発生などの不具合を防止し、ケース2内側が衛生的になり、清掃の手間を省くことができる。なお、扉6の内部は、図11(b)に示すように、上述のごとく中空Aが形成されている。また、図11(a)に示すように、扉6には、片開きタイプに設計されているため、取手10の反対側端面にある、底部4と天井部7との接合する部分に軸6aが設けられている。天井部7と底部4は、これを受け入れる図示しない軸受部が設けられていることによって、軸6aを中心にして扉6の開閉を可能にすることができる。
【0043】
ここで、本発明に係る発酵器1の使用態様の例を示す。ケース2の内部の湿度を高くするため、ケース2の内部に、水を中に入れてある金属製などの皿を入れておく。パン生地を発酵器1内に格納し、例えば、摂氏30℃に発酵器1内側の温度設定をして、適宜の所要時間をセットする。底部4に設けられたスタートキーを押して温度制御を開始し、終了をブザーで使用者に伝える。例えばパン作りの工程の第1発酵の中では、90分間の時間設定をし、第2発酵においては第1発酵よりも短い設定をする。湿度を維持する必要があるため湿度計を内部に設置しておくと好ましい。湿度計は電子化されたものを設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はこの実施例の構成に限られるものではなく、例えば、本発明の上記実施例にかかる発酵器は、パン以外の食品の発酵や、恒温槽として利用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 発酵器
2 ケース
3 ヒーター部
4 底部
5 周壁部
6 扉
7 天井部
8 窓部
9 結合部品
10 取手
11 背面部
12 側面部
13 表示部
14 スイッチ部
15 トレイ
16 センサー部
17 底部の突起
18 2つの凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被発酵物が格納されるケースと、
上記ケース内の熱源となるヒーターと、
を有してなる組み立て式の発酵器であって、
上記ケースは、上記ヒーターが内蔵される底部と、上記底部に取り付けられる周壁部および扉と、上記周壁部と上記扉に取り付けられる天井部と、を備え、
上記底部と上記周壁部と上記扉と上記天井部のそれぞれは、別体であり、
上記周壁部は、2つの側面部と、上記2つの側面部に挟まれる背面部とが一体的に成型され、
上記扉と上記天井部と上記周壁部それぞれの内部は、中空に形成されていることを特徴とする発酵器。
【請求項2】
上記周壁部と上記天井部のいずれか一方の端部には溝部を有する弾性凸部が一体的に成型され、
他方の端部には突起部を有する弾性凹部が一体的に成型され、
上記溝部及び上記突起部が嵌め合わされると同時に、上記弾性凸部及び上記弾性凹部が嵌め合わされることにより、上記周壁部と上記天井部が結合されることを特徴とする請求項1記載の発酵器。
【請求項3】
上記周壁部には、折りたたみ可能となるように複数のヒンジ部が設けられていて、
上記複数のヒンジ部と、上記周壁部は一体的に成型され、
上記複数のヒンジ部は、上記周壁部の外側向きの谷状の窪みを上記周壁部の一部に形成することで成る請求項1記載の発酵器。
【請求項4】
上記扉は、その正面視略中央位置に窓部を有し、
上記窓部は、その内部が中空となるように2枚の板を嵌め合わされて成る請求項1記載の発酵器。
【請求項5】
上記窓部における2枚の板は互いに同一形状を有し、
上記板の上には、片側半分周縁の少なくとも一部領域に少なくとも2本の第1の突起が形成され、
他方片側半分周縁の少なくとも一部領域に少なくとも1本の第2の突起が形成されると共に、隣り合う上記第1の突起の間に溝が形成され、
上記第2の突起と上記溝が嵌め合わされることにより上記窓部の内部が中空となる請求項4記載の発酵器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−234689(P2011−234689A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110606(P2010−110606)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【特許番号】特許第4613253号(P4613253)
【特許公報発行日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(502354524)アシストV株式会社 (7)
【Fターム(参考)】