説明

発電式水栓の電源回路

【課題】リチウムイオンキャパシタの過放電対策をしつつ、常に蓄電することのできる回路を簡易に得ることができる発電式水栓の電源回路を提供する。
【解決手段】給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機60と、発電機60で発電をした電流を蓄電する蓄電手段と、蓄電手段で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部40と、を備える発電式水栓の電源回路1において、蓄電手段としてリチウムイオンキャパシタ75を用い、リチウムイオンキャパシタ75と制御部40との接続と遮断との切替手段としてFET30を有しており、リチウムイオンキャパシタ75と制御部40との遮断時は、FET30が有する寄生ダイオードによって発電機60で発電した電流をリチウムイオンキャパシタ75に流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電式水栓の電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の給水装置では、水栓の吐水口の付近に差し出された手を、吐水口の近傍に設けられるセンサによって検知し、吐水口から自動吐水する自動水栓が増えている。また、このような自動水栓として、吐水経路に設けた水車を水流によって回転させて発電を行う発電機と、発電機で発電した電流を蓄電するコンデンサと、を有し、コンデンサで蓄電した電力を用いて電磁弁を作動させているものがある。さらに、このような自動水栓の中には、電力のバックアップ手段として一次電池を設け、コンデンサの蓄電量が少ない場合にはスイッチング回路によって、電源をコンデンサと一次電池とで切り替えることが可能になっているものもある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の給水制御装置では、発電部材として熱発電素子と、これと切り替えて使用する一次電池と、電源回路を切り替えるスイッチング回路と、を設けている。この給水制御装置では、スイッチング回路はFET等のトランジスタにより構成し、制御部からの信号に基づいてFETを作動させることにより、制御部に接続される電源を熱発電素子と一次電池とで切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−116991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、近年では、電流を蓄電する蓄電手段として、リチウムイオンキャパシタを用いる装置が増加している。このリチウムイオンキャパシタは、蓄電手段として従来より多く用いられている電気二重層コンデンサと比較して、直列等価抵抗が低いため、蓄電した電力を効率良く使用することができ、また、漏れ電流が電気二重層コンデンサと比較して小さいため、自己放電が電気二重層コンデンサと比較して少なくなっている。また、容積当りの蓄電量も、電気二重層コンデンサと比較して大きくなっているため、リチウムイオンキャパシタは、蓄電効率や蓄電した電力の有効利用の性能が、電気二重層コンデンサと比較して高くなっている。
【0006】
しかし、リチウムイオンキャパシタは、使用電圧の上限値と下限値とが、共に制限されており、電圧がその範囲を超えると破損する場合がある。このため、蓄電手段としてリチウムイオンキャパシタを用いる場合、蓄電されている電圧の管理が非常に重要なものとなっている。このように、発電機で発電した電力を効率良く使用することができる蓄電手段であるリチウムイオンキャパシタを使用する場合には過放電対策などが必要で、リチウムイオンキャパシタを高信頼で使用するためのより簡易な回路が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、リチウムイオンキャパシタの過放電対策をしつつ、常に蓄電することのできる回路を簡易に得ることができる発電式水栓の電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る発電式水栓の電源回路は、給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機と、前記発電機で発電をした電流を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部と、を備える発電式水栓の電源回路において、前記蓄電手段としてリチウムイオンキャパシタを用い、前記リチウムイオンキャパシタと前記制御部との接続と遮断とを切替える切替手段として電界効果トランジスタを有しており、前記電界効果トランジスタによる前記リチウムイオンキャパシタと前記制御部との遮断時は、前記電界効果トランジスタが有する寄生ダイオードによって前記発電機で発電した電流を前記リチウムイオンキャパシタに流すことを特徴とする。
【0009】
また、上記発電式水栓の電源回路において、前記電界効果トランジスタはp型であり、ソース電極が前記リチウムイオンキャパシタ側に接続され、ドレイン電極側が前記電圧調整回路側に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発電式水栓の電源回路は、リチウムイオンキャパシタの過放電対策をしつつ、常に蓄電することのできる回路を簡易に得ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施形態に係る発電式水栓の電源回路の構成例を示す摸式図である。
【図2】図2は、図1に示すFETと他の装置との相関関係を示す説明図である。
【図3】図3は、図2に示すFETの詳細図である。
【図4】図4は、図1に示す電源回路を備える電源回路ユニットの斜視図である。
【図5】図5は、図4に示すリチウムイオンキャパシタの斜視図である。
【図6】図6は、FETが非導通の状態を示す説明図である。
【図7】図7は、FETが導通している状態を示す説明図である。
【図8】図8は、切替手段にFETを用いない場合の比較例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る発電式水栓の電源回路の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る発電式水栓の電源回路の構成例を示す摸式図である。同図に示す電源回路1は、水栓の吐水口の付近に差し出された手を、吐水口の近傍に設けられる検出センサ44によって検知し、吐水口から自動吐水する自動水栓の回路として構成されている。また、この自動水栓は、給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機60によって発電した電流で、電磁弁である吐止水弁85を駆動することにより吐水や止水を切り替える発電式水栓になっている。発電機60は、吐水口から吐水する水が流れる給水管内に、水の流れによって回転する水車を有しており、この水の流れによって水車が回転することで発電する。
【0014】
また、この電源回路1は、発電機60で発電をした電流を蓄電する蓄電手段を有しており、蓄電手段にはリチウムイオンキャパシタ75が用いられている。吐止水弁85は、このリチウムイオンキャパシタ75で蓄電した電力によって駆動する。さらに、電源回路1には、リチウムイオンキャパシタ75での蓄電量が低下した場合における補助的な電源として補助電池80が接続されており、リチウムイオンキャパシタ75での蓄電量の低下時は、吐止水弁85は、補助電池80からの電力によって駆動する。
【0015】
これらの発電機60、リチウムイオンキャパシタ75、補助電池80、吐止水弁85は、それぞれ着脱可能なコネクタによって電気回路に接続されている。即ち、発電機60は、発電機用コネクタ61によって回路に対して着脱可能に配設されており、リチウムイオンキャパシタ75は、蓄電素子用コネクタ76によって着脱可能に配設されており、補助電池80は、補助電池用コネクタ82によって着脱可能に配設されており、吐止水弁85は、吐止水弁用コネクタ86によって着脱可能に配設されている。発電機60、リチウムイオンキャパシタ75、補助電池80、吐止水弁85は、これらのようにそれぞれコネクタによって回路に接続されることにより、本実施形態に係る電源回路1の一部として設けられている。補助電池80は、種々の電池が選択可能であるが、本実施形態では、マンガン乾電池2個直列(使用電圧2.0V〜3.0V)を想定している。
【0016】
また、電源回路1は、発電機60で発電した電流を整流する整流回路であるダイオードブリッジ10を有している。つまり、発電機60は交流電流を発電するのに対し、リチウムイオンキャパシタ75は、直流電流を蓄電したり放電したりする。また、吐止水弁85等の各部も、直流電流によって作動する。これらのため、電源回路1には、発電機60で発電した交流電流を整流して直流にする整流回路としてダイオードブリッジ10が設けられている。このダイオードブリッジ10は、電流を整流させる際に一般的に用いられる半導体ダイオードである整流ダイオード12と、金属と半導体とのショットキー接合の整流作用を利用するショットキーバリアダイオード14とを、それぞれ2つずつ用いることにより構成されている。
【0017】
また、リチウムイオンキャパシタ75は、使用電圧が所定の範囲内になる蓄電状態で使用する必要がある。このため、電源回路1は、使用電圧がリチウムイオンキャパシタ75の使用可能電圧の上限値であるか否かを判定する上限側電圧判定部20と、下限値であるか否かを判定する下限側電圧判定部25と、を有している。
【0018】
これらの上限側電圧判定部20と下限側電圧判定部25とは、共に所定の電圧時に信号を切り替えるボルテージディテクタによって設けられている。詳しくは、リチウムイオンキャパシタ75は、使用電圧が概ね2.2V〜3.8Vの範囲内になる蓄電状態で使用する必要がある。このため、本実施形態に係る電源回路1では安全性を考慮して電圧の判定値を余裕を持って設定し、上限側電圧判定部20は3.5Vで出力信号が切り替わるものが使用され、下限側電圧判定部25は2.5Vで出力信号が切り替わるものが使用されている。
【0019】
また、これらの上限側電圧判定部20と下限側電圧判定部25とには、これらの判定部からの信号に基づいて、回路中の電流の流れを切り替える切替部が接続されている。即ち、上限側電圧判定部20には、上限側電圧判定部20からの信号に基づいて電流の流れを切り替える上限側切替部21が接続されており、下限側電圧判定部25には、下限側電圧判定部25からの信号に基づいて電流の流れを切り替える下限側切替部26が接続されている。これらの上限側切替部21と下限側切替部26とは、共にn型のMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)によって設けられており、上限側切替部21と下限側切替部26とにおけるゲート電極が、上限側電圧判定部20や下限側電圧判定部25に接続されている。
【0020】
また、下限側切替部26には、リチウムイオンキャパシタ75と、当該リチウムイオンキャパシタ75で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部40との接続と遮断とを切替える切替手段としてp型のMOS−FET(Field−Effect Transistor:電界効果トランジスタ)30が接続されている。このFET30は、ソース電極がリチウムイオンキャパシタ75側に接続され、ドレイン電極側が整流ダイオード12のカソード側に接続されており、下限側切替部26の出力は、FET30のゲート電極に接続されている。
【0021】
図2は、図1に示すFETと他の装置との相関関係を示す説明図である。図3は、図2に示すFETの詳細図である。詳しくは、FET30は、ソース電極31が、リチウムイオンキャパシタ75の+(プラス)側に接続されている。また、ドレイン電極32は、発電機60で発電した交流電流を直流に整流するダイオードブリッジ10に接続されており、ドレイン電極32は、さらに、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52に接続されている。さらに、FET30のゲート電極33は、下限側切替部26の出力に接続されている。このように設けられるFET30は、p型の半導体とn型の半導体とにより構成されている。さらに、FET30は、当該FET30に内蔵されている内蔵ダイオードである寄生ダイオード35を有している。
【0022】
また、下限側電圧判定部25は、下限側切替部26の他に電圧下限伝達部28に接続されている。この電圧下限伝達部28は、下限側切替部26と同様にn型のMOSFETによって設けられており、下限側電圧判定部25は、電圧下限伝達部28のゲート電極に接続されている。また、電圧下限伝達部28のドレイン電極は制御用マイコン部49に接続されており、これにより、制御用マイコン部49は、下限側電圧判定部25の信号の状態を、電圧下限伝達部28を介して検出可能になっている。
【0023】
また、制御用マイコン部49は、電子制御装置として構成されており、ハード構成は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理部や、RAM(Random Access Memory)等の記憶部等を備えた公知の構成であるため、説明は省略する。
【0024】
この制御用マイコン部49は、リチウムイオンキャパシタ75での蓄電した電力の電圧を調整する電圧調整回路であるリチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52、または補助電池用電圧調整回路50から供給される電力によって駆動する。また、吐止水弁85も、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52、または補助電池用電圧調整回路50から供給される電力によって駆動可能になっている。このうち、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52は、リチウムイオンキャパシタ75から出力される電圧を制御用マイコン部49での吐水の制御に用いる電圧に調整する電圧調整回路になっており、補助電池用電圧調整回路50は、補助電池80から出力される電圧を制御用マイコン部49での吐水の制御に用いる電圧に調整する電圧調整回路になっている。また、制御用マイコン部49、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52、補助電池用電圧調整回路50は、全て制御部40に含まれており、制御部40を構成している。
【0025】
吐止水弁85は、吐止水弁制御回路55により駆動される。この吐止水弁制御回路55は、複数の開閉制御用トランジスタ56より構成されている。また、吐止水弁制御回路55は、逆起電圧吸収用に複数の開閉制御用ダイオード57を有している。開閉制御用トランジスタ56のベース電極には制御用マイコン部49が接続されており、制御用マイコン部49で複数の開閉制御用トランジスタ56を制御することにより、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52から吐止水弁85に流れる電流の流路を切り替えることが可能になっている。これにより、吐止水弁85の開閉を切り替えることが可能になっている。
【0026】
なお、この吐止水弁85は、ラッチ式の電磁弁になっている。このため、開方向、または閉方向の電流を吐止水弁85に供給して吐止水弁85を駆動させた場合、その後に吐止水弁85に対する電流を遮断しても、吐止水弁85は、開状態、または閉状態が維持される。
【0027】
また、制御部40には、水栓の吐水口の付近に差し出された手を検出する検出センサ44が設けられており、この検出センサ44は、発光ダイオードからなるセンサ発光部45と、フォトダイオードからなるセンサ受光部46とを有している。このうち、センサ発光部45は、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52、または補助電池用電圧調整回路50で調整した電圧によって間欠的に発光し、吐水口付近を照射する。また、センサ受光部46は、制御用マイコン部49に接続されており、吐水口付近に差し出された手に照射されたセンサ発光部45からの光が、手で反射した際における反射光を受光することにより電流が流れる。制御用マイコン部49は、この電流を検知することにより、吐水口付近に手が差し出されたことを検知する。
【0028】
この実施形態に係る発電式水栓の電源回路1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。図4は、図1に示す電源回路を備える電源回路ユニットの斜視図である。図5は、図4に示すリチウムイオンキャパシタの斜視図である。電源回路1は、発電機60やリチウムイオンキャパシタ75を含めた1つのユニットである電源回路ユニット5として構成されている。リチウムイオンキャパシタ75は、蓄電素子用コネクタ76を着脱することにより、電源回路ユニット5に対して着脱可能になっている。商品保管時(取付前)は、ほこりや湿気による放電を防ぐため、リチウムイオンキャパシタ75は、電源回路1から分離して防湿性の袋等に梱包される。電源回路1の取付時、即ち施工時に、リチウムイオンキャパシタ75を、梱包された袋等から取り出して回路に接続するが、リチウムイオンキャパシタ75は、ホルダ77で保持し、Oリング78を用いて密閉防湿対策を行って接続する。
【0029】
また、補助電池80は、補助電池用ケース81に対して収容することにより補助の電源として使用可能になっており、補助電池用ケース81も、補助電池用コネクタ82を着脱することにより、電源回路ユニット5に対して着脱可能になっている。リチウムイオンキャパシタ75は、この補助電池用コネクタ82同士を結合しないと、回路に対するリチウムイオンキャパシタ75の電流経路が形成されないようになっている。
【0030】
電源回路ユニット5の取付完了時で、吐水させる前は、下限側電圧判定部25の入力電圧、つまり整流ダイオード12のカソード側電圧は0なので、下限側電圧判定部25は動作せず、下限側電圧判定部25の出力電圧も0になる。そのため、下限側切替部26のドレイン電極からソース電極へは導通がなく、FET30のソース電極からドレイン電極へも導通がないため、リチウムイオンキャパシタ75は回路から切り離されている。従って、この時点では、補助電池80からの電力で補助電池用電圧調整回路50が動作し、制御部40が起動する。以後、最初の吐水までは、制御用マイコン部49及び吐止水弁制御回路55は、補助電池80からの電力により駆動される。
【0031】
また、最初の吐水までは、検出センサ44も補助電池80からの電力により駆動され、自動水栓の使用者が手を吐水口の付近に差し出すと、センサ発光部45からの光が手に当たり、光が手で反射する。このように手で反射した反射光をセンサ受光部46で受光した場合、制御用マイコン部49は、手が差し出されていることを検出する。
【0032】
手が差し出されていることを検出した制御用マイコン部49は、吐止水弁制御回路55の開閉制御用トランジスタ56に対して、吐止水弁85を開く方向の制御信号を送信する。これにより、吐止水弁85には、当該吐止水弁85が開弁する方向の電流が流れる。この場合における電流も補助電池80から供給され、吐止水弁85は、この電流によって駆動して開弁する。吐止水弁85が開かれた場合、給水管内を流れる水の流れ方向における吐止水弁85よりも下流側に水が流れ、この水が自動水栓の吐水口から吐水する。なお、吐止水弁85への電力供給は数10ms後には停止させる制御とする。吐止水弁85にラッチ弁を使用するため、電力供給停止後も吐止水弁85は開を維持する。つまり、止水時にそのための電力が供給されるまで、開を維持する。
【0033】
最初の吐水が始まると、給水管内を流れる水の流れによって、発電機60は水車が回転して発電し、発電機60の発電によって下限側電圧判定部25の入力電圧が上昇する。下限側電圧判定部25の入力電圧が上昇し、下限電圧を超えると、下限側電圧判定部25の出力がHになり、FET30のソース電極からドレイン電極の間が導通する。この時、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧が設定した下限電圧以上あれば、発電機60の停止後も下限電圧判定部25の出力Hは維持され、FET30の導通も継続する。
【0034】
FET30が導通すると、リチウムイオンキャパシタ75からリチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52に電力が供給され、制御用マイコン部49及び吐止水弁制御回路55は、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電力により駆動される。同時に、下限側電圧判定部25からの出力は、電圧下限伝達部28にも伝達され、制御用マイコン部49は、電圧下限伝達部28からの信号によりリチウムイオンキャパシタ75の蓄電が十分なことを検知して、補助電池用電圧調整回路50を停止させる。つまり、補助電池80からの電力供給は停止する。
【0035】
なお、一般的にリチウムイオンキャパシタ75の等価直列抵抗は、補助電池80の等価直列抵抗より小さくなっている。このため、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52の出力電圧が、補助電池用電圧調整回路50の出力電圧と同じかそれ以下であれば、補助電池用電圧調整回路50を停止させなくても、回路の電力のほとんどは、リチウムイオンキャパシタ75から供給される。従って、制御用マイコン部49から補助電池用電圧調整回路50への停止命令は、省略することも可能である。
【0036】
電源回路1での消費電力より発電電力が大きいと、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧は徐々に上昇し、やがて発電機60の発電中に、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧が設定上限を超える。つまり、FET30が導通している場合、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧は、整流ダイオード12のカソード側電圧、即ち、上限側電圧判定部20の入力電圧に等しくなっているため、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧が設定上限を超えたか否かは、上限側電圧判定部20で判定できる。
【0037】
リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧が設定上限を超え、上限側電圧判定部20の出力がHになると、上限側切替部21が導通し、発電機60の電力は、ダイオード15から上限側切替部21を経てショットキーバリアダイオード14に流れる経路で消費され、リチウムイオンキャパシタ75への充電は停止する。この場合、FET30は導通しているので、リチウムイオンキャパシタ75から上限側電圧判定部20や、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52への電力供給は継続される。
【0038】
電源回路1での消費電力より発電電力が小さいと、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧は徐々に下降し、やがて設定下限を下回る。すると下限側電圧判定部25の出力がLになるため、下限側切替部26が非導通となり、FET30のソース電極からドレイン電極の間も非導通となり、リチウムイオンキャパシタ75が回路から切り離される。すると下限側電圧判定部25の入力も失われるから、下限側電圧判定部25の出力はLに保持され、FET30の非導通も継続される。つまり、リチウムイオンキャパシタ75の切り離しは、リチウムイオンキャパシタ75の電力を一切使わずに維持され、たとえ補助電池80の電力が尽きても、この状態は維持される。
【0039】
同時に、制御用マイコン部49は、電源切替伝達部28によってリチウムイオンキャパシタ75が回路から切り離されたことを検知し、補助電池用電圧調整回路50を起動する。これにより、補助電池80から供給される電力によって動作を継続することができる。
【0040】
ここで、下限側切替部26とFET30が非導通の時でも、回路基板の絶縁抵抗や素子の漏れ電流により、ごく僅かな、例えばnAレベルの放電が継続する可能性があるが、電源回路1では、制御用マイコン部49とFET30との間の経路に配設されるダイオード17により、その影響を緩和している。
【0041】
このため、補助電池80が健全であれば、補助電池80の電圧3.0Vから、ダイオード17の順方向電圧降下0.7Vを引いた、約2.3Vがリチウムイオンキャパシタ75に供給される。従って、補助電池80が健全な間は、リチウムイオンキャパシタ75の電圧が、素子の使用下限電圧の2.2Vを割り込むことはなくなる。
【0042】
また、FET30は寄生ダイオード35を有しているため、FET30が非導通の時でも、FET30は、寄生ダイオード35における順方向に対しては電流を流すことができる。図6は、FETが非導通の状態を示す説明図である。下限側切替部26が非導通の場合は、FET30は、ソース電極とゲート電極と間の電位差が無くなり、ソース電極からドレイン電極への方向は非導通になる。つまり、このFET30は、ソース電極の電圧に比べてゲート電極の電圧が十分下がると、ソース電極とドレイン電極との間が導通する素子になっている。このため、下限側電圧判定部25からの出力がLになることにより下限側切替部26が非導通になった場合は、FET30のソース電極とゲート電極との間で大きな電位差が生じないため、FET30は非導通になる。
【0043】
このようにFET30が非導通になると、FET30の導通時の電流の流れによるソース電極のリチウムイオンキャパシタ75とドレイン電極側の制御用マイコン部49とは切り離されるが、このFET30は寄生ダイオード35を有している。このため、この寄生ダイオード35における順方向に対しては、電流を流すことができる。具体的には、寄生ダイオード35は、ドレイン電極側からソース電極側への方向が順方向になっている。従って、非導通時のFET30は、ソース電極側からドレイン電極側の方向には電流を流すことができないが、ドレイン電極側からソース電極側に対しては、寄生ダイオード35を通じて流すことができる。
【0044】
即ち、FET30は、通常の動作を、ドレイン電極とソース電極との接続と遮断とを切り替える開閉スイッチ93によって示すことができ、寄生ダイオード35を、開閉スイッチ93と平行して設けられてドレイン電極側からソース電極側への方向が順方向になるダイオード94によって示すことができる。このため、FET30が非導通の状態を開閉スイッチ93とダイオード94とによって示すと、開閉スイッチ93は開き、この開閉スイッチ93に対して並列に配設されるダイオード94によってドレイン電極とソース電極とを接続した状態になる。この場合、開閉スイッチ93を通じて電流を流すことができないため、開閉スイッチ93はドレイン電極とソース電極とを遮断しているが、ダイオード94によって、ドレイン電極側からソース電極側へは電流を流すことが可能になる。
【0045】
従って、FET30が非導通になった場合、FET30のソース電極側に接続されているリチウムイオンキャパシタ75は、リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52側には放電は行わないため、リチウムイオンキャパシタ75に蓄電されている電流は、回路側には供給されなくなる。一方、FET30のドレイン電極側に接続されているダイオードブリッジ10側からリチウムイオンキャパシタ75に対しては、寄生ダイオード35を介してドレイン電極側からソース電極側へは電流を流すことが可能になる。これにより、FET30が非導通の場合でも、発電機60で発電した電流をリチウムイオンキャパシタ75で蓄電することができる。このように、FET30によるリチウムイオンキャパシタ75とリチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52との遮断時は、FET30が有する寄生ダイオード35によって発電機60で発電した電流をリチウムイオンキャパシタ75に流して蓄電する。
【0046】
FET30のソース電極からドレイン電極の間が非導通の時、補助電池80から供給される電力により回路が駆動して吐止水弁85が開弁し、吐水が行われた場合は、発電機60に出力電圧が発生する。この電圧は整流されて整流ダイオード12のカソード側に生じ、FET30内の寄生ダイオード35(図6中の符号94)を通過し、リチウムイオンキャパシタ75に蓄電される。
【0047】
つまり、FET30のソース電極からドレイン電極の間が非導通の時でも、ドレイン電極からソース電極の間は寄生ダイオード35を介して導通しており、リチウムイオンキャパシタ75に対する充電は行われる。FET30のソース電極からドレイン電極への方向が非導通状態で発電機60からの充電があると、ある時点でリチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧が下限電圧を超えることがある。その場合は、「取り付け完了後の最初の吐水」時と同じ状況が発生し、FET30のソース電極からドレイン電極の間の導通が回復する。
【0048】
図7は、FETが導通している状態を示す説明図である。下限側電圧判定部25の入力電圧が下限電圧を超えた場合には、下限側切替部26が導通し、FET30のゲート電極側をグランドに接続することにより、FET30のゲート電極側の電圧を低下させる。このため、下限側電圧判定部25からの出力がHになることにより下限側切替部26が導通した場合は、FET30のソース電極からドレイン電極の間が導通する。このようにFET30が導通すると、FET30のソース電極側のリチウムイオンキャパシタ75とドレイン電極側のリチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路52とが接続され、リチウムイオンキャパシタ75に蓄電されている電流が回路に供給されることになる。即ち、導通状態のFET30は、閉じている開閉スイッチ93とダイオード94とにより示すことができる。この場合、FET30のドレイン電極側とソース電極側との間は、必要に応じていずれの方向にも電流を流すことができる。
【0049】
これらにより、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧を所定範囲内に収め、リチウムイオンキャパシタ75の過充電と過放電を抑制する。また、電圧が低いことによりリチウムイオンキャパシタ75を回路から遮断する場合でも、リチウムイオンキャパシタ75の充電を行うことが可能になる。
【0050】
また、下限側電圧判定部25からの出力は、電圧下限伝達部28にも伝達される。この電圧下限伝達部28も下限側切替部26と同様に、下限側電圧判定部25からの出力がHの場合は導通し、出力がLの場合は非導通になる。また、下限側切替部26のドレイン電極側は制御用マイコン部49に接続され、ソース電極側はグランドに接続されているため、制御用マイコン部49は、電圧下限伝達部28との間の電位差によって、下限側電圧判定部25の出力状態を検出することができる。このため、電圧下限伝達部28がOFFであることの検出を介して、下限側電圧判定部25で検出した電圧が2.5V以下であることを検出することができる。
【0051】
なお、リチウムイオンキャパシタ75の電源回路1への接続回復時、より厳密には、
1.下限側電圧判定部25のH判定をする。
2.FET30が導通する。
3.FET30の寄生ダイオード35の電圧降下分、下限側電圧判定部25の入力が低下する。
4.下限側電圧判定部25がL判定する。
5.FET30が非導通になる。
6.下限側電圧判定部25の入力が上昇しH判定をする。
ことを繰り返す可能性がある。このため、下限側電圧判定部25の判定には、ヒステリシスを持たせてある。例えば、下限側電圧判定部25は、入力電圧が2.6V以上になった時LからHに判定を移行し、入力電圧が2.4V以下になった時にHからLに移行する。
【0052】
また、電源回路1は、吐止水弁85駆動中など、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧に関わらず回路の制御を中断させたくない時は、制御用マイコン部49によってFET30の導通を維持し、制御動作の信頼性を高める等、種々の制御が可能である。
【0053】
以上の実施形態に係る発電式水栓の電源回路1は、リチウムイオンキャパシタ75と制御用マイコン部49との接続と遮断、即ち、リチウムイオンキャパシタ75と制御部40との接続と遮断とを切替える切替手段としてFET30を使用し、FET30によるリチウムイオンキャパシタ75と制御部40との遮断時は、寄生ダイオード35によって発電機60で発電した電流をリチウムイオンキャパシタ75に流して蓄電するため、蓄電を継続する回路を、容易に得ることができる。
【0054】
図8は、切替手段にFETを用いない場合の比較例を示す模式図である。この例では、発電機60からリチウムイオンキャパシタ75への電流の流れを切り替えるラッチングリレー96と、このラッチングリレー96を制御する切替制御用トランジスタ97とを用いている。この場合、部品点数が増加すると共に、制御部40によって複数の切替制御用トランジスタ97を制御して、電流が流れる状態を切り替える必要があるため、回路が煩雑になる。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る電源回路1では、切替手段としてFET30を使用することにより、部品点数を低減させることができると共に、制御部40で制御することなく、リチウムイオンキャパシタ75の蓄電電圧に応じて放電を抑えつつ、継続して蓄電することができる。これらの結果、リチウムイオンキャパシタ75の過放電対策をしつつ、常に蓄電することのできる回路を簡易に得ることができる。
【0056】
また、リチウムイオンキャパシタ75は、従来、類似用途に使われてきたEDLC(電気二重層コンデンサ)と比べて、直列等価抵抗、漏れ電流が共に低いため、大電流蓄放電時の電圧変動が小さいので、蓄電電圧の正確な測定が可能で、過電圧防止回路等への影響を低減できる。また、出力電圧を安定させる目的で設ける大容量電解コンデンサの削減や省略が可能になる。この結果、簡便な回路で発電電力を、有効に使用することができる。
【0057】
また、リチウムイオンキャパシタ75を施工現場で接続するため、物流中にリチウムイオンキャパシタ75が過放電し、使用不能になることを防ぐことができる。この結果、商品の信頼性を高めることができる。
【0058】
また、リチウムイオンキャパシタ75の結線に、補助電池用コネクタ82を介しているため、補助電池80の取付前は、リチウムイオンキャパシタ75は回路に接続されないため、不用意な取付によるリチウムイオンキャパシタ75の放電の機会を少なくすることができる。つまり、リチウムイオンキャパシタ75が許容下限まで放電しても、電源回路1は補助電池80により動作するが、その場合は吐水による発電でリチウムイオンキャパシタ75の蓄電量が回復するまでは補助電池80が消耗するので、できる限りリチウムイオンキャパシタ75の不要な放電は避けるのが好ましい。このため、例えば補助電池80の取付けない等の不用意な取付によるリチウムイオンキャパシタ75の放電の機会を少なくすることにより、不要な放電は避けることが可能になる。この結果、より確実に商品の信頼性を高めることができる。
【0059】
また、上述した電源回路1では、リチウムイオンキャパシタ75の電圧の低下時は、制御部40側との接続を遮断しているのみであるが、リチウムイオンキャパシタ75の電圧が低下した場合には、使用者に異常を報知するようにしてもよい。これにより、使用者が異常を知らないまま長期間使用を続け、最終的にごくわずかな放電の継続でリチウムイオンキャパシタ75が過放電して破損することを防ぐことができる。
【0060】
なお、上述した電源回路1は、手を差し出したことを検知することにより自動的に吐水する自動水栓用の電源回路1であり、洗面台等で用いられる水栓を想定して説明しているが、電源回路1によって吐水の制御を行う発電式水栓は、これ以外のものでもよい。発電式水栓は、例えば、検出センサ44で人を検知して自動的に洗浄を行う小便器であってもよい。電源回路1で制御する発電式水栓は、検出対象物を検出センサ44で検出し、検出対象物の状態に応じて給水管を流れる水の吐水や止水を切り替えるものであれば、その用途は問わない。
【符号の説明】
【0061】
1 電源回路
5 電源回路ユニット
10 ダイオードブリッジ(整流回路)
12 整流ダイオード
14 ショットキーバリアダイオード
20 上限側電圧判定部
21 上限側切替部
25 下限側電圧判定部
26 下限側切替部
28 電圧下限伝達部
30 FET(電界効果トランジスタ)
31 ソース電極
32 ドレイン電極
33 ゲート電極
35 寄生ダイオード
40 制御部
44 検出センサ
49 制御用マイコン部
50 補助電池用電圧調整回路
52 リチウムイオンキャパシタ用電圧調整回路
55 吐止水弁制御回路
60 発電機
61 発電機用コネクタ
75 リチウムイオンキャパシタ(蓄電手段)
80 補助電池
85 吐止水弁(電磁弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管を流れる水の流れによって発電をする発電機と、
前記発電機で発電をした電流を蓄電する蓄電手段と、
前記蓄電手段で蓄電している電力によって吐水の制御を行う制御部と、
を備える発電式水栓の電源回路において、
前記蓄電手段としてリチウムイオンキャパシタを用い、
前記リチウムイオンキャパシタと前記制御部との接続と遮断とを切替える切替手段として電界効果トランジスタを有しており、
前記電界効果トランジスタによる前記リチウムイオンキャパシタと前記制御部との遮断時は、前記電界効果トランジスタが有する寄生ダイオードによって前記発電機で発電した電流を前記リチウムイオンキャパシタに流すことを特徴とする発電式水栓の電源回路。
【請求項2】
前記電界効果トランジスタはp型であり、ソース電極が前記リチウムイオンキャパシタ側に接続され、ドレイン電極側が前記制御部側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の発電式水栓の電源回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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