説明

発電所のキャリヤ流体を冷却する方法、発電所、及び冷却システム

【課題】凝縮発電所のための冷却プロセスをより最適化する。
【解決手段】キャリヤ流体を冷却する方法において、該キャリヤ流体は、発電所2′においてタービンを駆動するために使用され、冷却プロセスの少なくとも一部が、キャリヤ流体及び/又は該キャリヤ流体を冷却するための冷却流体13を、土壌が実質的に周囲空気よりも低温である深さ41まで地下へ導くことによって実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリヤ流体を冷却する方法に関し、前記キャリヤ流体は、発電所においてタービンを駆動するために使用される。本発明は、キャリヤ流体を有するキャリヤ回路を備えた発電所にも関し、前記キャリヤ流体は、運転中に、発電所のタービンを駆動する。さらに、本発明は、このような発電所のための冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所において、熱から電力をどのように発生するかの典型的な方法は、キャリヤ流体を所定の熱水準にもたらし、これにより、キャリヤ流体に所定の水準の運動エネルギを与えることである。水等のキャリヤ流体は蒸発し、水蒸気になる。約270barというかなりの圧力下にもたらされた水は水蒸気に変換され、これは、キャリヤ流体の体積を付加的に増大させることを意味する。つまり、蒸気は、大型のタービンを駆動するための十分なエネルギを有しており、タービンの運動は発電機を運動させる。タービンを駆動した後、この蒸気は冷却されなければならず、この冷却は通常凝縮器において行われる。このような凝縮器はしばしば、冷却回路を備えた熱交換器であり、前記冷却回路に沿って、キャリヤ流体を有するキャリヤ回路が導かれている。つまり、キャリヤ回路は、タービンに接続された管系であり、冷却回路には冷却液が充填されていて、この冷却液は、キャリヤ流体と間接的に接触させられ、凝縮の前にはキャリヤ流体よりも著しく低温である。キャリヤ流体、すなわち蒸気の熱の一部は、これにより、冷却回路における冷却液に伝達され、これにより、蒸気は再び水になる。
【0003】
このような技術を利用する今日の発電所において、冷却回路内の温度を冷却するために、湿式冷却塔又は乾式冷却塔が使用される。湿式冷却塔において、やはり典型的には水である冷却液の一部は、蒸発させられ、空気中へ解放される。冷却流体の他の部分は、冷却回路内で再利用されるか、又は河川へ解放されてよく、この河川から、河川温度の新鮮な冷却水を冷却回路に再び供給するために、より低温の水が逆に取り入れられてよい。
【0004】
従来技術によるこのような発電所が、図1に示されている。発電所2の幾つかの構成部材が、この図に概略的に示されており、発電所2は、キャリヤ回路1と、冷却回路11とを有している。キャリヤ回路1において、キャリヤ流体5、この場合水5、特に水蒸気が、キャリヤ回路ポンプ3によって、管系を通じて圧送される。水蒸気5を、著しくより低温に冷却して再び液体の水5に変化させるために、熱交換器9が使用される。凝縮された水はキャリヤ回路ポンプ3によって圧送されて排出される。熱交換器9は、冷却流体13、すなわち冷却水13を有する冷却回路11にも接続されている。冷却水13は、河川27から取り込まれ、冷却回路ポンプ23によって熱交換器9へ圧送される。熱交換器9に到達する前には、冷却水13はほぼ河川27の温度である。熱交換器9から出た後、冷却水13は、キャリヤ回路1における水蒸気5から多くの熱を取り出している。従って、冷却水13は、前よりも著しく高温になっており、河川27へ戻すために冷却する必要もある。その目的のために、湿式冷却塔19が使用されている。ここでは、冷却回路11からの高温の冷却水13が塔内に噴霧されながら、空気17が冷却塔19において通流させられる。このプロセスから蒸気雲21が生じるのに対し、冷却水13の残り25は、湿式冷却塔19に進入する前よりも著しく低い温度水準で河川27へ戻される。
【0005】
この原理によれば、熱交換器9において水蒸気5を凝縮させるために使用された冷却水13のかなりの部分が、湿式冷却塔19において空気中へ蒸発する。これは、冷却水13の残りの部分25の著しくより低い温度を生じるので、極めて高い冷却効率を提供する。発電所2の効率は、キャリヤ流体5を冷却するためのこの冷却システムの能力に直接に依存するので、この種の凝縮器システムは、全体的に高い発電所効率を提供する。しかしながら、湿式冷却塔は、大量の水を消費する。周囲の条件によっては、この消費は、500MWの発電所の場合に500kg/sをはるかに超える値の水量に達する。
【0006】
従って、湿式冷却塔に代わるものは、いわゆる乾式冷却塔であり、その原理を図2を参照して説明する。乾式冷却塔33は、キャリヤ回路1内のキャリヤ流体5を直接に冷却する。キャリヤ流体5は、発電所2におけるタービン29から到来する。タービン29は発電機31を駆動し、この発電機31は、タービン29の回転から電力を発生する。乾式冷却塔33内において、水5は管系37内を案内され、管系37は、フィン・管式熱交換器として機能する。管系37を冷却するために、送風機35は、空気17の一定の流れが管系37の周囲に案内されるように、管系37の周囲に通流させられる新鮮な空気を提供する。つまり、キャリヤ流体5は管系37においてゆっくりと冷却され、キャリヤ回路ポンプ3によって加熱ユニット(図示せず)へ再び圧送することができる。このような加熱ユニットは、内部において物質(油、石炭、廃棄物、及びその他の可燃性材料)が燃焼される加熱室を含むか、又は原子炉又は太陽熱フィールドを含んでよい。
【0007】
乾式冷却塔35は必ずしも水供給を必要とするわけではないが、乾式冷却塔の効果は周囲温度によって制限される。周囲温度が高いと、熱力学的プロセスの効率が低くなる。なぜならば、乾式冷却塔35における凝縮器温度、ひいてはタービン29の出口における個々の圧力が、増大するからである。
【0008】
1つの発電所において湿式冷却塔19と乾式冷却塔35とを組み合わせることも可能である。しかしながら、いずれか一方又は両方の冷却技術に基づくあらゆる発電所の運転についてあるジレンマが依然として存在する。幾つかの地域では、水が不足しているか、空気がピーク時に極めて高温であるか、又はその両方である。通常、これらの現象の両方を同時に見ることができる。しかしながら、砂漠のようなこれらの乾燥した場所は、通常は多くの太陽エネルギが容易に利用可能であるという利点がある。つまり、十分な加熱エネルギが理論的に極めて低いコストで利用可能である一方で、有効な冷却システムを提供することが大きな課題であることが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、凝縮発電所のための冷却プロセスをより最適化することである。特に、本発明の課題は、このような冷却プロセスの間に、水、又は実際にはあらゆるその他の冷却流体の消費を好適には低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、請求項1記載の方法、請求項7記載の方法、請求項13及び14記載の発電所によって解決される。
【0011】
本発明の第1の実施の形態によれば、上述の種類の方法は、冷却プロセスの少なくとも一部が、キャリヤ流体及び/又はキャリヤ流体を冷却するための冷却流体を、土壌が実質的に周囲空気よりも低温である深さまで地下へ導くことによって実現されることによって向上させられる。言い換えれば、キャリヤ流体及び/又は冷却流体が冷却される地下領域が利用される。従って、地下土壌の熱慣性が利用される。砂漠においてさえも、地下土壌は、地上の日中周囲温度と比較して比較的低温であり、これは、主に夜間の強い冷却効果によるものである。
【0012】
この実施の形態に関して、2つの原理が用いられてよい。キャリヤ流体の直接冷却は、このキャリヤ流体のキャリヤ回路を地下領域に導くことによって実現することができる。間接的な冷却は、高い熱容量を有する水又は別の流体等の冷却流体が地下の管に導かれることを意味する。次いで、この冷却流体は、熱交換器においてキャリヤ流体を冷却する。
【0013】
本発明による方法は、上述のような蒸発又は送風技術を用いる代わりに又はこのような技術のいずれかを用いることに加えて、実現されてよい。つまり、発電所の地域の土壌の表面レベルよりも低い地下領域が、冷却領域として利用され、この冷却領域においてキャリヤ流体及び/又は冷却流体が少なくとも部分的に冷却される。
【0014】
「地下」の定義については、基本的に、土壌の表面より低いあらゆる領域を地下と考えることができる。本発明の目的のためには、キャリヤ流体及び/又は冷却流体を冷却することが必要であり、地下領域が実質的に周囲空気、すなわち地上の空気よりも低温でなければならない。これは、周囲空気と、冷却が行われる地下領域との間に少なくとも10℃、より好適には20℃の温度差があることを意味する。土壌の表面レベルよりも少なくとも0.5m、より好適には少なくとも1m下の地下領域にキャリヤ流体及び/又は冷却流体を導くことがさらに好ましい。この領域において、流体を搬送するための管がある長さに沿って導かれ、これにより、地下領域の温度は、流体のより高い温度の一部を有効に吸収する。このような管の長さは、好適には、少なくとも10m、より好適には少なくとも20mであるが、管は必ずしも1つの方向だけに導かれる必要はなく、例えば典型的な熱交換器のように湾曲部及び蛇行部を有していてよい。キャリヤ流体及び冷却流体について、これらは、水等の液体及び/又は空気等のガスを含んでよい。キャリヤ流体及び冷却流体は、同じ材料であってもよいが、異なる材料、例えばキャリヤ流体としての水と、冷却流体としての油とであってもよい。冷却流体が搬送される冷却回路は、複数の別の冷却サブ回路を有していてもよく、例えば第1の冷却流体が熱交換器等において第2の冷却流体によって冷却される。
【0015】
発明の第2の実施の形態によれば、このような冷却効果は、上述の種類の方法であって、冷却プロセスの少なくとも一部が、キャリヤ流体の少なくとも一部及び/又はキャリヤ流体を冷却するために使用される冷却流体の少なくとも一部を、流体をタービンにおけるキャリヤ流体の温度よりも著しく低い温度で貯蔵する低温貯蔵部から供給することによって実現されるような方法によって、達成されてもよい。このような低温貯蔵部は、上述のように地下に配置されていてもよいが、地上レベルに配置され、好適には断熱された容器を有していてもよい。この容器には、好適には、地下で冷却されていた液体又はガスが供給される。しかしながら、夜間に流体を低温レベルで受け取り、次いで日中は低温で貯蔵する低温貯蔵部を有することも可能である。例えば、このような低温貯蔵部は、内容物(すなわち流体)が低温になるように夜間に開放され、かつできるだけ長時間低い温度レベルを維持するために日中は閉鎖されて断熱される大型の容器として実現されていてもよい。低温貯蔵部には、(例えば乾式冷却技術を使用することを意味する、空気対液体熱交換による)地上での冷却プロセス及び/又は地下での冷却プロセス(すなわち発明の第1の実施の形態による)によって冷却された流体を供給することもできる。
【0016】
本発明による方法の両方の主要な実施の形態は、1つの共通の原理を有しており、つまり、低温はある場所に貯蔵されるか又は提供される。第1の実施の形態において、低温は、いずれにしても利用可能な低い地下温度により地下領域に貯蔵される。第2の実施の形態において、発明は、特別に設計された容器を利用し、この容器に低温が人工的に保存される。発明の両方の実施の形態において、蒸発技術は不要であり、冷却及び凝縮による水の損失が著しく低減される。本発明による冷却技術に加えて送風技術を利用することができるが、このような送風技術も必須ではない。
【0017】
従って、上述の実施の形態のいずれを利用するかに応じて、上述の種類の発電所は、2つの異なる形態で実現することができ、これらの形態は組み合わされてもよいし、個別に利用されてもよい。
【0018】
本発明による方法の第1の実施の形態によれば、上述の種類の発電所は、キャリヤ回路の少なくとも一部及び/又はキャリヤ流体を冷却するために使用される冷却流体を有する少なくとも1つの冷却回路の一部が、周囲空気よりも実質的に低温である深さまで地下に導かれていることによって向上させることができる。
【0019】
その目的のために、発電所は好適には地下管及び/又は地下タンクを有している。地下領域は、「ヒートシンク」又はある種の低温リザーバとして働く。このような管又はタンは好適には、高い熱伝達率を有する材料から形成されており、これにより、流体から、管又はタンクの外の地下領域への熱伝達が可能な限り有効になる。従って、このような管又はタンクの熱伝達率は、好適には15W/mK超、より好適には100W/mK超、すなわち少なくともステンレス鋼等の金属の熱伝達率の範囲又はそれより高い。つまり、断熱された管又はタンクを利用することは最も好ましい。フィンチューブ等の熱伝達向上手段によって、熱伝達をさらに向上させることができる。
【0020】
第2に、すなわち付加的に又は択一的に、上述の種類の発電所を、キャリヤ流体の少なくとも一部及び/又はキャリヤ流体を冷却するために利用される冷却流体の少なくとも一部が低温貯蔵部においてタービンにおけるキャリヤ流体の温度よりも著しく低い温度で貯蔵されることによって、向上させることができる。
【0021】
このような低温貯蔵部は、地上レベル又は地下レベルの容器又はタンクとして実現されてよい。容器又はタンクは、断熱の必要性を減じるために発電所の建物に組み込まれてよいが、熱プロセスからさらに離すためにこのような建物の外に配置されていてもよい。このような容器は、好適には断熱されており、これにより、容器の内側にほとんど熱が伝達されず、それ自体は、低温貯蔵部の内側に低温が可能な限り長く維持されることを意味する。特に、低温貯蔵部は内容物の温度を、一日の間の最も低いレベルよりも20℃より高くならない所定のレベルに維持する。これは、流体が低温貯蔵部に送入されない又は流体が低温貯蔵部から取り出されない一日の間、低温貯蔵部が所定の流体で充填されている状態における、低温貯蔵部のための好適な値である。
【0022】
上述のように、本発明による発電所の両方の実施の形態は、本発明による方法の2つの実施の形態に関連して説明した共通の原理にも従う。これらの実施の形態の組合せにおいて、低温貯蔵部は、土壌の表面の下の地下に供給され、これにより、必ずしも隔離手段を備える必要がない。なぜならば、隔離は、付加的な隔離材料の代わりに、包囲する土壌によって実際に実現されるからである。
【0023】
最後に、本発明は、発電所のための冷却システムであって、キャリヤ流体を有するキャリヤ回路の少なくとも一部及び/又はキャリヤ流体を冷却するために利用される冷却流体を有する少なくとも1つの冷却回路の一部が、周囲空気よりも実質的に低温である深さまで地下に導かれ、かつ/又はキャリヤ流体の少なくとも一部及び/又は冷却流体の少なくとも一部が、タービンにおけるキャリヤ流体の温度よりも著しく低い温度で低温貯蔵部に貯蔵されるような冷却システムにも関する。
【0024】
上述の実施の形態のいずれかにおける本発明による発電所とするために、発電所に本発明によるこのような冷却システムを再装備することができる。
【0025】
発明の特に有利な実施の形態及び特徴は、以下の説明に表されているように、独立請求項によって与えられる。従って、方法のうちの1つに関連して表された特徴は、そうでないことが明確に述べられない限り、それぞれの他の方法に関連して及び/又は本発明による発電所の実施の形態のうちのいずれか1つに関連して実現されてもよい。
【0026】
冷却は、高温環境における発電所において行われることが特に好ましい。このような高温環境は、特に砂漠環境又は同様に乾燥した環境において与えられる。これらの環境は、一年のうち少なくとも100日の間、40℃の最高温度に達するという特徴を有することができる。このような状況において、水は特に不足している。つまり、発電所の水の消費は、食品製造及び都市生活のための水需要と直接に競合し、地域の生活及び食品製造が発電よりも最も高い優先度を有するであろう。従って、このような地域における発電所は、極めて低い水消費フットプリント、すなわち可能な限り少ない運転中の水損失を有する場合にのみ、問題なく運転することができる。本発明による方法を使用することは、発電のために貴重な水を無駄にしないために特に役立つ。このような水は今や、農業及び家庭での利用のような他の目的のために節約することができる。
【0027】
同時に、このような地域における太陽の影響は特に高レベルである。従って、このような乾燥した環境は、太陽発電所を運転する可能性を提供するが、現在までは、導入部の段落に説明したように効率的な冷却に関するジレンマが存在していた。従って、冷却は、太陽発電所、特に集光型太陽熱発電所におけるキャリヤ流体のために行われることが好ましい。第1に、このような太陽発電所はしばしば上述のように乾燥した地域に配置される。第2に、このような発電所、特に集光型太陽熱発電所は、極めて高い温度のキャリヤ流体を発生する。集光型太陽熱発電所は、太陽からの光線が小さなスポットに集中させられ、これにより、これらのスポットにおいて極めて高い温度が生ぜしめられるという特徴を有している。その結果、集光型太陽熱発電所によって生ぜしめられる温度は、特に高く、発電サイクルのために十分である。しかしながら、サイクルの効率は、コールドエンド(凝縮)の低い温度によって決定される。この温度は、タービン出口において達成可能な最も低い圧力を決定する。圧力がより低いほど、効率はより高くなり、従って発電所の取り出される電力出力も高くなる。これは、本発明による方法によって向上させることができる。
【0028】
流体のいずれかをさらに冷却するために、本発明による方法によって実現される冷却の他に、付加的な冷却が必要である場合がある。第1の可能性は、本発明による冷却が、冷却の一部を行う空気冷却式凝縮器又は乾式冷却塔を有する発電所におけるキャリヤ流体のために行われるということである。前に示したように、送風機を備えた乾式冷却塔は、再び、基本的に冷却流体が空気中へ損失されないという利点を有する。本発明による冷却方法と、空気冷却式凝縮器を用いる冷却方法との組合せは、流体が周囲環境へ損失されない、閉鎖された冷却回路若しくは閉鎖されたキャリヤ回路を可能にする。
【0029】
付加的な冷却をも含む第2の可能性は、本発明による冷却が、冷却の一部を行う湿式冷却システムを有する発電所において行われることである。第1の可能性と第2の可能性とは、実際に3つの冷却系が相俟ってキャリヤ流体及び/又は冷却流体の全体的な冷却効果を提供するように組み合わされてよい。しかしながら、本発明による冷却方法は、湿式冷却システムのみと組み合わされてもよい。これは、湿式冷却塔が、冷却の一部を引き受ける一方で、冷却の残りが本発明による冷却システムによって行われることを意味する。上述のように、湿式冷却は、特に有効なシステムが実現されるように、全体として最も有効な冷却を提供し、その際、本発明による方法は、流体の消費を低減する助けとなる。湿式冷却塔が、本発明による冷却システムの上流に配置されるか又は下流に配置されるかは、技術的な優先度に従って、スペースの利用可能性に従って、及びその他の前提条件に依存して選択することができる。しかしながら、幾つかの特別な場合には、湿式冷却塔を、本発明による冷却システムの下流に配置することが好ましい。これは、特に湿式冷却塔の水の損失が、2つの冷却系のこのような配置によって向上させることができる冷却システムによって低減される場合である。
【0030】
要するに、このような様々な異なる冷却系を本発明による方法と組み合わせることは、効率が高められたシステムを提供する。また、様々な異なる時におけるいずれかの冷却方法の一時的な使用も可能になる。例えば、主たる冷却回路が、乾式冷却塔システムから成り、ピーク時間には本発明による冷却システムが運転される。
【0031】
キャリヤ流体及び/又は冷却流体を地下の管系に単に導くことが可能であるが、キャリヤ流体及び/又は冷却流体は、冷却回路に接続された熱交換器において冷却されることが好ましい。このような冷却回路は冷却流体を含んでいる。キャリヤ流体は熱交換器において直接に冷却されるか、又は冷却流体は、冷却回路において循環する第2の冷却流体によって熱交換器において冷却される。後者は、両方とも冷却流体を含む2つの冷却回路が一緒に使用されることを意味し、この場合、様々な異なる冷却回路における冷却流体は、種類が異なってよいが、必ずしも異なる必要はない。
【0032】
本発明の第2の実施の形態による(すなわち低温貯蔵部を用いる)方法について、低温貯蔵部は、好適には、実質的に周囲空気よりも低温である深さにおいて地下に配置されている。これは、実際には、冷却が地下の低温貯蔵部において地下で行われるように、本発明による方法の両方の実施の形態が組み合わされることを意味する。これは、例えば、通常は低温貯蔵部が地上にあった場合にそうであるように低温貯蔵部をしっかりと隔離するための隔離手段が必要とされないので、特に有利である。
【0033】
このような低温貯蔵部には夜間に流体が補充され、この流体が日中に供給されることは特に好ましい。これは、キャリヤ流体及び/又は冷却流体が夜間に冷却され、低温貯蔵部に収集され、日中、特に天気が特に高温である時の日中に供給することができることを意味する。
【0034】
付加的に、キャリヤ流体の一部及び/又は冷却流体の一部を、複数の低温貯蔵部に貯蔵することができる。例えば、「通常運転」のための1つの主冷却貯蔵部と、極めて高温の天気等の過酷な条件下での運転時間又はピーク電力消費の時間のための第2の付加的な低温貯蔵部とが設けられてよい。しかしながら、それぞれ異なる低温貯蔵部は、それぞれ異なる時間、例えばそれぞれ異なる日に使用されてもよく、これにより、それぞれの低温貯蔵部において低温を回復させるための時間がより長くなる。また、全ての低温貯蔵部は、組み合わされた冷却効果を提供するために、任意の時間に並行して使用されてもよい。
【0035】
本発明による冷却方法は、特に、キャリヤ流体の冷却が特に必要である時間のために有効である。従って、本発明による冷却方法は、最も好適には、極端な熱条件下及び/又はピーク電力消費の時間の間に適用される。
【0036】
このような極端な条件の場合、冷却方法の使用は、温度情報及び/又は電力消費情報に関する可変入力データに従って駆動ユニットによって開始されることがさらに好ましい。このような駆動ユニットは、周囲温度についての情報及び/又は電力供給網内での現在の電力消費についての情報を受け取り、これらの情報から、発電所のこれらの部分を作動又は作動停止させるための命令を引き出し、これらの命令が本発明による冷却システムを作動させる。例えば、本発明による冷却系へ送り込むための及び/又は本発明による冷却系から送り出すための弁を、駆動ユニットのこのような命令に従って開閉させることができる。これは、冷却システムを現在の需要に従って開閉させることができることを意味する。
【0037】
本発明のその他の課題及び特徴は、添付の図面に関連して考慮された以下の詳細の説明から明らかになるであろう。しかしながら、図面は、例示の目的のためだけに描かれたものであり、発明の範囲を規定するものとして描かれていない。
【0038】
図面において、同じ参照符号は、全体を通じて同じ対象を示している。図面における対象は必ずしも実寸で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来技術による第1の冷却システムを備えた発電所の概略図である。
【図2】従来技術による第2の冷却システムを備えた発電所の概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による冷却システムを備えた発電所の概略図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による冷却システムを備えた発電所の概略図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態による冷却システムを備えた発電所の概略図である。
【図6】図5の冷却システムの一部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1及び図2は、従来技術の説明に関連して上記で説明されている。
【0041】
図3は、本発明の第1の実施の形態による発電所2′を示している。この図及び以下の図において、加熱室、タービン、発電機、及び発電システム等の発電所2′のその他の構成部材は、分かりやすくするために示されていない。
【0042】
冷却回路11において、冷却流体13、この場合は冷却水13が、冷却回路ポンプ3によって管系を通って圧送される。第1に、冷却流体13は、図2に関連して説明した種類の乾式冷却塔33を通過する。次いで、冷却水13は、さらに地面よりも下の土壌内へ、地下深さ41まで導かれる。つまり、冷却回路11の一部は地下管40であり、この地下管40において、冷却水13を地下深さ41における低温によって冷却することができる。つまり、地下管40は冷却システム4を構成している。冷却水13はさらに、図1に示した種類の湿式冷却塔19へ導かれる。水蒸気は、蒸気雲21の形態で湿式冷却塔19から出る。次いで、冷却水13の残りは、収集され、発電所2′のキャリヤ流体を冷却するために熱交換器(図示せず)へ圧送される。
【0043】
地下管40及び冷却システム4には、第1の弁59を介して冷却水13を供給することができるのに対し、地下管40を迂回する直接接続部60を第2の弁61によって開閉させることができる。冷却水13が地下管41において冷却される場合、第1の弁59が開放され、第2の弁61は好適には閉鎖される。他方では、乾式冷却塔33及び湿式冷却塔19による冷却が、冷却水13を所望の低温に冷却するためにそれだけで十分であるならば、第2の弁61を開放することができ、地下管への接続を遮断するために第1の弁59を閉鎖することができる。その目的のために、制御ユニット63は第1の弁59及び第2の弁61の両方に命令SBを与え、これらの命令SBによって、2つの弁が操作される。制御ユニット63は、情報データID、例えば発電所2′の周囲温度及び/又は発電所2′によって供給される電力網の現在の電力消費についての情報のための、入力インタフェース64を有している。駆動ユニット57は、これらの情報データIDから命令SBを引き出し、これらの命令は、第1の弁59及び第2の弁61を開閉させる。従って、弁59,61の開閉は、インタフェース64を介して提供されるこれらの情報データIDに依存する。言い換えれば、情報データIDに応じて、地下管40を遮断するか、又はアクセスを提供することができる。例えば、高温天気条件下の日中には、情報データIDは高温についての情報を含んでいる。情報データは、日付及び時間の情報を含んでいてもよく、これらの情報から、乾燥地域においては、何らかの予測される温度レベルを抽出することができる。例えば、日中であるという情報は、砂漠において、余分な温度測定を行うことなく、極めて高温の周囲温度であることを示すものとして十分である。情報データIDから、駆動ユニット57は、地下管40における付加的な冷却が利用可能であるように、第1の弁59を開放しかつ第2の弁61を閉鎖するための命令SBを引き出す。同じことは、電力供給網における極端に高い電力消費の時間における場合であってよい。
【0044】
このような制御ユニット63を、図4及び図5に関連して説明されるように、以下の実施の形態のいずれかにおいて使用することができる。従って、制御ユニット63は、以下の図面には示されていない。
【0045】
図4は、本発明の第2の実施の形態による発電所2′を示している。この場合にも、冷却水13はポンプ3によって冷却回路11を通って圧送される。冷却水は、熱交換器45が配置されている地下深さ41に進入する前に、上述のような乾式冷却塔33を通過する。熱交換器45において冷却水13は冷却され、さらに、図3に関連して説明したように湿式冷却塔19へ導かれる。熱交換器45には、第2の冷却液46が供給され、この第2の冷却液46は、第2の冷却回路ポンプ49によって第2の冷却回路47を通って導かれる。この第2の冷却回路47は、地下土壌によって冷却されるように、地下深さ41に位置している。従って、第2の冷却回路47は、熱交換器45及び第2の冷却回路ポンプ49と相俟って、本発明の第2の実施の形態による冷却システム4を構成している。
【0046】
図5は、本発明の第3の実施の形態による発電所2′を示している。分かりやすくするために、図3及び図4と共通の特徴には改めて言及しない。乾式冷却塔33から出た後、冷却水13は、低温貯蔵部51が配置されている地下深さ41へ再び導かれる。このような低温貯蔵部51は、低温貯蔵部51が好適には外部から熱的に隔離されている場合には、地上に配置することもできる。
【0047】
低温貯蔵部51は、図6にさらに詳細に示されている。低温貯蔵部51は、大量の冷却水13が貯蔵された容器として実現されている。冷却水13を冷却するために、ポンプ55を備えた付加的な管系53は、冷却水13が地下で冷却され、低温貯蔵部51へ戻されるように、地下に導かれている。図5に示したように、冷却水13は低温貯蔵部51から冷却回路11へ戻る。
【0048】
本発明は、好適な実施の形態及び変化態様として開示されているが、発明の範囲から逸脱することなく多数の付加的な変更を加えることができることが理解されるであろう。上述のように、低温貯蔵部は、地上に配置することもでき、本発明による方法を実現するために使用される冷却システムに加えて乾式冷却塔及び/又は湿式冷却塔を使用することが絶対に必要であるわけではない。
【0049】
分かりやすくするために、本願を通じて単数の使用は複数を排除せず、また「含む」との表現は他のステップ又はエレメントを排除しないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0050】
2′ 発電所、 3 冷却回路ポンプ、 4 冷却システム、 11 冷却回路、 13 冷却水、 21 蒸気雲、 33 乾式冷却塔、 40 地下管、 41 地下深さ、 45 熱交換器、 46 第2の冷却液、 47 第2の冷却回路、 49 第2の冷却ポンプ、 51 低温貯蔵部、 53 付加的な管系、 57 駆動ユニット、 59 第1の弁、 61 第2の弁、 63 制御ユニット、 64 入力インタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリヤ流体(5)を冷却する方法において、該キャリヤ流体(5)は、発電所(2′)においてタービン(29)を駆動するために使用され、冷却プロセスの少なくとも一部が、キャリヤ流体(5)及び/又は該キャリヤ流体(5)を冷却するための冷却流体(13,46)を、土壌が実質的に周囲空気よりも低温である深さ(41)まで地下へ導くことによって実現されることを特徴とする、キャリヤ流体(5)を冷却する方法。
【請求項2】
冷却が、高温の環境における発電所(2′)において行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
冷却が、太陽発電所、特に集光型太陽熱発電所におけるキャリヤ流体(5)のために行われる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
冷却が、冷却の一部を行う空冷式凝縮器(35)を有する発電所(2′)におけるキャリヤ流体(5)のために行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
冷却が、冷却の一部を行う湿式冷却システム(19)を有する発電所(2′)において行われる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
キャリヤ流体(5)及び/又は冷却流体(13)が、冷却回路(47)に接続された熱交換器(45)において冷却される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
キャリヤ流体(5)を冷却する方法において、該キャリヤ流体(5)は、発電所(2′)におけるタービン(29)を駆動するために使用され、冷却プロセスの少なくとも一部が、前記キャリヤ流体(5)の少なくとも一部、及び/又は前記キャリヤ流体(5)を冷却するために使用される冷却流体(13)の少なくとも一部を低温貯蔵部(51)から供給することによって実現され、該低温貯蔵部(51)は、流体を、タービン(29)におけるキャリヤ流体(5)の温度よりも著しく低い温度で貯蔵することを特徴とする、キャリヤ流体(5)を冷却する方法。
【請求項8】
前記低温貯蔵部(51)は、実質的に周囲空気よりも低温である深さ(41)において地下に配置されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記低温貯蔵部(51)に、夜間に流体が補充され、該流体は日中に供給される、請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記キャリヤ流体(5)の一部及び/又は前記冷却流体(13)の一部が、複数の低温貯蔵部(51)に貯蔵される、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
冷却方法が、極端な熱条件下で及び/又はピーク電力消費の時間の間に適用される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
冷却方法の使用が、温度情報及び/又は電力消費情報に関する可変の入力データ(ID)に従って駆動ユニット(57)によって開始される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
キャリヤ流体(5)を有するキャリヤ回路(1)を備える発電所(2′)において、前記キャリヤ流体(5)が、運転中に、発電所のタービン(29)を駆動するようになっており、前記キャリヤ回路(1)の少なくとも一部及び/又は前記キャリヤ流体(5)を冷却するために使用される冷却流体(13,46)を有する少なくとも1つの冷却回路(11,47)の一部が、実質的に周囲空気よりも低温である深さ(41)まで地下へ導かれていることを特徴とする、発電所(2′)。
【請求項14】
キャリヤ流体(5)を有するキャリヤ回路(1)を備える発電所(2′)において、前記キャリヤ流体(5)が、運転中に、発電所のタービン(29)を駆動するようになっており、キャリヤ流体(5)の少なくとも一部及び/又は前記キャリヤ流体(5)を冷却するために使用される冷却流体(13,46)の少なくとも一部が、タービン(29)におけるキャリヤ流体(5)の温度よりも著しく低い温度で低温貯蔵部(51)に貯蔵されることを特徴とする、発電所(2′)。
【請求項15】
発電所(2′)のための冷却システム(4)において、キャリヤ流体(5)を有するキャリヤ回路(1)の少なくとも一部及び/又はキャリヤ流体(5)を冷却するために使用される冷却流体(13,46)を有する少なくとも1つの冷却回路(11,47)の一部が、実質的に周囲空気よりも低温である深さ(41)まで地下へ導かれている及び/又はキャリヤ流体(5)の少なくとも一部及び/又は冷却流体(13,46)の少なくとも一部が、タービン(29)におけるキャリヤ流体(5)の温度よりも著しく低い温度で低温貯蔵部(51)に貯蔵されることを特徴とする、発電所(2′)のための冷却システム(4)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97741(P2012−97741A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−235209(P2011−235209)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany